説明

ワーク水切り乾燥装置

【課題】フッ素系溶剤の噴射打力を利用してワークから付着水分を高効率・高精度に除去できるワーク水切り乾燥装置の提供。
【解決手段】水系洗浄剤により被洗浄物として洗浄された後のワークを載置すべく槽本体13内に配置されるワーク載置台15と、該ワーク載置台15のワークベースに向けて少なくとも上方または斜め上方から気化温度以下にまで冷却されたフッ素系溶剤46を噴射する上部噴射ノズル18とを少なくとも備えてなる溶剤噴射水切り槽12と、槽本体23内に貯溜させたフッ素系溶剤58の沸点温度にまで加温して該槽本体23の上部空間34内に発生させたベーパー層37により、水切り後に持ち込まれたワークをベーパー洗浄・乾燥させるベーパー洗浄・乾燥槽32とで少なくとも構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系洗浄剤で洗浄された後のガラスやレンズを含む光学部品、電子部品、金属部品および精密機械部品等の各種精密部品から付着水分を高効率・高精度に除去するワーク水切り乾燥装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
通常、製造工程後の各種精密部品には、種々の汚染物質が付着しており、該汚染物質を洗浄・除去した上で組み立てや製品として出荷する必要がある。
【0003】
この場合、従前においては、洗浄を要する各種精密部品に付着している汚染物質を純水あるいは界面活性剤を含有させた水系洗浄剤を用いて洗浄し、または水でリンスした後の被洗浄物(本明細書では、該被洗浄物を「ワーク」と称する。)であるワークをフロン溶剤を貯溜させた水切り槽内に浸漬して付着水分を分離・水切りする処理が行われていた時期もあった。
【0004】
しかし、主にオゾン層保護の目的で、フロン溶剤は、モントリオール議定書により1995年を以て生産が禁止された。
【0005】
このような背景もあって、水系洗浄剤を用いて洗浄した後のワークに付着している水分を水切りするためには、フロン溶剤の代替溶剤であるHFE(ハイドロフルオロエーテル)やHFC(ハイドロフルオロカーボン)などのフッ素系溶剤が主に用いられるようになってきている。
【0006】
このため、本出願人は、上記したようにフロン溶剤の代替溶剤であるフッ素系溶剤を用いるようにした水切り乾燥システムを特許文献1として既に提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2010−279866号公報 すなわち、特許文献1の水切り乾燥システムは、フッ素系溶剤とアルコール系溶剤との混合液である本水切り溶液中に洗浄後のワークを直に浸漬せずに、粗水切りした上で浸漬させることで、本水切り溶液中に含まれるアルコール系溶剤の濃度低下を遅延化させて水切り作業を効率的に行うことができるようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に開示されている水切り乾燥システムによる場合には、その全体が4槽構成となっていることもあって作業効率が煩雑となるほか、メンテナンスコストもそれだけ上昇して全体のランニングコストを引き上げてしまう不都合があったほか、ワークに対する水切りもより高効率で高精度に行うことができる水切り乾燥装置が求められていた。
【0009】
本発明は、上記従来技術にみられた課題に鑑み、フッ素系溶剤を噴射と次段の超音波キャビテーションとの組み合わせのもとでワークから水分を高効率で高精度に除去して乾燥させることができるワーク水切り乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、水系洗浄剤により被洗浄物として洗浄された後のワークを載置すべく槽本体内に配置されるワーク載置台と、該ワーク載置台のワークベースに向けて少なくとも上方または斜め上方から気化温度以下にまで冷却されたフッ素系溶剤を噴射する上部噴射ノズルとを少なくとも備えてなる溶剤噴射水切り槽と、槽本体内に貯溜させたフッ素系溶剤の沸点温度にまで加温して該槽本体の上部空間内に発生させたベーパー層により、水切り後に持ち込まれた前記ワークをベーパー乾燥させるベーパー洗浄・乾燥槽とで少なくとも構成したことを最も主要な特徴とする。
【0011】
この場合、前記溶剤噴射水切り槽は、前記槽本体のワーク出入口を開操作可能に密閉する蓋体と、前記ワークベースに向けて下方から気化温度以下にまで冷却されたフッ素系溶剤を噴射すべく前記槽本体の内底面側に配置される下部噴射ノズルとを有するものであってもよい。また、前記蓋体には、前記上部噴射ノズルを具備させておくこともできる。さらに、溶剤噴射水切り槽が槽本体内に備える前記ワーク載置台は、支軸に対し揺動可能に支持させておくのが望ましい。
【0012】
また、前記ベーパー洗浄・乾燥槽には、槽本体内に貯溜させたフッ素系溶剤の沸点温度にまで加温して該槽本体の上部空間内に発生させたベーパー層をさらに追加熱する追加熱ヒーターを具備させておくのが好ましい。
【0013】
さらに、前記溶剤噴射水切り槽と前記ベーパー洗浄・乾燥槽との間には、前記溶剤噴射水切り槽から取り出された前記ワークを槽本体内に貯溜されているフッ素系溶剤中に浸漬して超音波キャビテーションを与えつつ、前記ワークに同種のフッ素系溶剤を噴出させて付着水分を微小化して剥離する仕上げ洗浄のための超音波洗浄槽を介在させ、該超音波洗浄槽から取り出された前記ワークを前記ベーパー乾燥槽内でのベーパー洗浄・乾燥を可能とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、溶剤噴射水切り槽とベーパー洗浄・乾燥槽との2段構成のもとでワーク水切り乾燥装置を構成することができるので、それだけ作業効率を高めることができるほか、メンテナンスコストも低減させて全体のランニングコストを低下させることができる。
【0015】
しかも、溶剤噴射水切り槽は、ワーク載置台と上部噴射ノズルとを備えているので、ワークス載置のワークベースに対しフッ素系溶剤を気化させることなく満遍なく吹き付けることができる結果、ワークから付着水分の95%以上を除去することができる。
【0016】
また、ベーパー洗浄・乾燥槽は、上部空間内に発生させたベーパー層内にワークを配置することで残存水分を蒸発させながらベーパー洗浄・乾燥させることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、溶剤噴射水切り槽は、槽本体のワーク出入口を開操作可能に密閉する蓋体と、ワークベースに向けて下方から気化温度以下にまで冷却されたフッ素系溶剤を噴射すべく前記槽本体の内底面側に配置される下部噴射ノズルとを備えているので、フッ素系溶剤を外部への飛散を防止しながらワークに対しさらに満遍なく吹き付けることができ、ワークから付着水分をより確実に除去することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、上部噴射ノズルが蓋体に配設されているので、該蓋体でワーク出入口を密閉して外部に飛散させることなくフッ素系溶剤をワーク側に向けて噴射させることができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、溶剤噴射水切り槽が槽本体内に備えるワーク載置台は、支軸に対し揺動可能に支持させてあるので、ワーク載置台を前後または左右に揺動させながらワークに対しより確実にフッ素系溶剤を吹き付けることができ、ワークから付着水分をさらに確実に除去することができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、槽本体の上部空間内に発生させたベーパー層をさらに追加熱することができるので、追加熱されたベーパー層内にワークを配置することで残存水分を蒸発させながらより確実にベーパー洗浄・乾燥させることができる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、溶剤噴射水切り槽と超音波洗浄槽とベーパー洗浄・乾燥槽との3段構成のもとでワーク水切り乾燥装置を構成することができるので、付着水分の95%以上が除去された状態のワークを超音波洗浄槽の槽本体内に持ち込んで仕上げ洗浄をすることで、アルコールが添加されている場合にはその濃度低下もより遅くできる結果、水切り性能の劣化を防止して効率よくワークの仕上げ洗浄を行うことができる。また、3段構成とすることで、ワークに対しより高効率で高精度な水切り乾燥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示す装置構成例からも明らかなように、水切り乾燥装置11は、水系洗浄剤により被洗浄物として洗浄・すすぎ処理された後のワーク(図示せず)を持ち込み、該ワークから水分を吹き飛ばして水切りを行う溶剤噴射水切り槽12と、該溶剤噴射水切り槽12内で予め水切りして取り出されたワークを持ち込んで仕上げ洗浄をする超音波洗浄槽22と、該超音波洗浄槽22内で仕上げ洗浄して取り出されたれワークを持ち込んでベーパー乾燥させるベーパー洗浄・乾燥槽32とを備えて構成されている。
【0024】
このうち、溶剤噴射水切り槽12は、持ち込まれたワークを載置して揺動すべく槽本体13内に配置されるワーク載置台14と、該ワーク載置台15のワークベースに向けて上方からフッ素系溶剤46を噴射する上部噴射ノズル18を具備させて槽本体13が備えるワーク出入口14を、可動構造や開閉構造を備えて開操作可能に密閉する蓋体17と、ワーク載置台15に向けて下方からフッ素系溶剤を噴射すべく槽本体13の内底面13a側に配置される下部噴射ノズル19とを備えている。
【0025】
この場合、ワーク載置台15は、これに載置されているワークに対し少なくとも上方または斜め上方から、必要により下方または斜め下方からもフッ素系溶剤46を噴射してワークに吹き付けることができるように格子状の構造が付与されて形成されている。
【0026】
しかも、ワーク載置台15は、槽本体13内に支軸16を介して取り付けられている。この場合、ワーク載置台15は、支軸16に固定的に取り付けておくことができるほか、必要により槽本体13の外側に配置した図示しない駆動モータを介して支軸16を揺動回転させることで、前後または左右への揺動を自在に取り付けておくこともできる。
【0027】
また、ワーク出入口14を開操作可能に覆う蓋体17は、パッキン20を介してワーク出入口14を密閉できるようにして配置されており、その下面側には、下方に位置するワーク載置台15に向けてフッ素系溶剤46を上方および/または斜め上方から噴射する上部噴射ノズル18が複数箇所に配設されている。
【0028】
さらに、槽本体13の内底面13a側には、上方に位置するワーク載置台15に下方および/または斜め下方からフッ素系溶剤46を噴射する下部噴射ノズル19が複数箇所に配設されている。
【0029】
しかも、槽本体13の内底面13aに溜まった水分を含んだフッ素系溶剤46は、冷却コイル43を備える第1貯溜槽42へと導入され、気化を防止するために固有沸点以下に冷却して水分を分離除去することによりフッ素系溶剤46単体成分とした上で、ポンプ44により加圧し、かつ、フィルタ45を経させて上部噴射ノズル18と下部噴射ノズル19とから圧力調整弁47による圧力調整を可能にして噴射させる循環方式のもとで再使用できるように配管されている。
【0030】
超音波洗浄槽22は、溶剤噴射水切り槽12から取り出して持ち込まれたワークを槽本体23内に貯溜されているフッ素系溶剤58中に浸漬した状態でフッ素系溶剤58単体を、また、必要があればアルコール液を添加したフッ素系溶剤58を噴流させつつ超音波キャビテーションを与えることで、さらに付着水分を微小化して剥離する仕上げ洗浄を行うことができるようになっている。
【0031】
すなわち、超音波洗浄槽22は、槽本体23内に貯溜されているフッ素系溶剤58を沸点未達の例えば15〜70℃程度にまで加温するためのヒーター24と、フッ素系溶剤58を持ち込まれたワークへと噴射させた際に噴射エネルギーで水をさらに分離させることができる複数個の噴流パイプ25とを槽本体23内の適位置に備えるほか、その内底面23aにはワークに超音波キャビテーションを与えて付着水分を分離するための超音波振動子26を備えて形成されている。
【0032】
しかも、超音波洗浄槽22側からオーバーフローした水分混じりのフッ素系溶剤58は、冷却コイル53を備える第2貯溜槽52へと導入して水分が分離除去され、フッ素系溶剤58単体、必要によりアルコール液が添加されたフッ素系溶剤58成分とした上で、ポンプ55により加圧し、かつ、フィルター56,57を経させて槽本体23内と各噴流パイプ25へと還流させる循環方式のもとで再使用できるように配管されている。なお、図中の符号54は、アルコール濃度計や比重計などからなる濃度計測具を示す。
【0033】
ベーパー洗浄・乾燥槽32は、槽本体33内に貯溜させたフッ素系溶剤58の沸点温度にまで加温して槽本体33の上部空間34内に発生させたベーパー層37をさらに追加熱させた状態のもとで、超音波洗浄槽22から取り出して持ち込まれた仕上げ洗浄後のワークを配置してベーパー洗浄し、かつ、乾燥させることができるようになっている。
【0034】
すなわち、ベーパー乾燥槽32は、槽本体33内に貯溜されているフッ素系溶剤58を沸点未達の例えば15〜70℃程度にまで加温するためのヒーター35と、槽本体33の上部空間34内に発生させたベーパー層37をさらに例えば水の沸点温度である100℃以上にまで加熱させることもできる追加熱ヒーター38とを槽本体33内の適位置に備えて形成されている。なお、槽本体33は、フッ素系溶剤58が所定の液面58a位置を保持して貯溜しておくことができるように図示しないフロートを備えて形成されている。
【0035】
このため、槽本体33内に貯溜されているフッ素系溶剤58に由来するベーパー層37は、上部空間34内に配置されている追加熱ヒーター38を介して温度が例えば100℃以上となるように追加熱することもできる結果、このように追加熱されたベーパー層37内にワークを配置することで残存水分を蒸発させながらベーパー洗浄・乾燥をすることができることになる。
【0036】
しかも、ベーパー洗浄・乾燥装置32は、ベーパー層37を冷却して結露させるための冷却コイル39を備えている。また、結露させて回収した液滴は、水分分離槽62へと導入し冷却コイル63で冷却することで、該液滴から水分を分離除去してフッ素系溶剤58として再生させ、フィルター64を備える管路を介して超音波洗浄槽22側の槽本体23内へと流下させて再び使用することができるようになっている。なお、図中の符号65,66は、本装置内に発生するベーパーを結露させるために必要な冷却コイルを示す。
【0037】
さらに、溶剤噴射水切り槽12は、蓋体17で密閉された状態にあるときの上昇圧力を逃すために圧力逃し弁40を有する圧力逃し管路の一端と連通されており、該圧力逃し管路の他端をベーパー洗浄・乾燥装置32側に連通させることで、低濃度ガスを高濃度ガスに混ぜ、冷却コイル39で回収することができるので、フッ素系溶剤46の無駄な消耗を低減させることができる。
【0038】
次に、このようにして構成されている本発明の作用・効果を図1を参酌して説明すれば、まず、水系洗浄液で洗浄して水分を付着させた状態にある被洗浄物としてのワークは、水切り乾燥装置11において初段を構成している溶剤噴射水切り槽12がその槽本体13内に備えるワーク載置台15上にワーク出入口14から持ち込まれて載置され、しかる後、該ワーク出入口14が蓋体17により密閉状に施蓋される。
【0039】
ワーク出入口14が蓋体17により密閉された後は、該蓋体17が備える上部噴射ノズル18と、槽本体13の内底面13a側に配置されている下部噴射ノズル18とにより外部に飛散させることなくワーク載置台15に向けてその上下両方向から気化しない温度に冷却された状態にあるフッ素系溶剤46を噴射する。
【0040】
しかも、支軸16が揺動回転自在に配設されている場合には、ワーク載置台15を前後または左右方向に揺動させることができるので、ワークに対しフッ素系溶剤46を満遍なく吹き付けて異物を再付着させることなく確実に水切りを行うことができる。すなわち、ワークに向けて噴射されるフッ素系溶剤46は、その表面張力が極めて低いために迅速な浸透性に優れている結果、該ワークが仮に多量の水分を持ち込んだとしても効率よく分離することで付着水分の95〜97%以上を除去することができる。
【0041】
このようにしてワークに対する初段の水切りが行われた後は、蓋体17を開けてワークを取り出し、次段の超音波洗浄槽22の槽本体23内へと持ち込んでフッ素系溶剤58中に浸漬される。
【0042】
ワークがフッ素系溶剤58中に浸漬された後は、槽本体23の内底面23aに配設されている超音波振動子26が駆動生成する超音波キャビテーションを浸漬ワークに与えつつ、噴流パイプ25からもフッ素系溶剤58を噴射させることで、ワークの表面に付着している残存水分の97%程度を微細化して剥離する仕上げ洗浄が行われる。なお、ワークが平坦な構造を呈するものであれば、アルコール液を添加していないフッ素系溶剤58単体で仕上げ洗浄しても、次段のベーパー洗浄・乾燥槽32内で例えば100℃以上の温度雰囲気のもとでベーパー洗浄・乾燥がされることなどもあって、必要な水切り効果を得ることができる。
【0043】
このようにワーク表面から付着水分のほとんどが除去された仕上げ洗浄後のワークは、超音波洗浄槽22から取り出されて最終段のベーパー洗浄・乾燥槽32内へと持ち込まれ、槽本体33の上部空間34内に滞留しているベーパー層37内に位置するように配置される。
【0044】
槽本体33の上部空間34内に滞留しているベーパー層37は、追加熱ヒーター38により例えば水の沸点温度よりも高い100℃以上に加熱することができるので、このような温度雰囲気内であれば残存水分のすべてが強制的にベーパー乾燥される結果、乾燥じみのない高精度の水切りが行われた製品として取り出されることになる。なお、ベーパー層37の温度は、必要によっては100℃以下としておくこともできる。
【0045】
すなわち、本発明によれば、ワーク水切り乾燥装置11において初段を構成している溶剤噴射水切り槽12は、ワーク載置台15と上部噴射ノズル18と下部噴射ノズル19とを備えているので、ワーク載置台15に載置させたワークに対しフッ素系溶剤46を気化させることなく満遍なく吹き付けることができる結果、ワークから付着水分の97%以上を除去することができる。
【0046】
また、次段を構成する超音波洗浄槽22では、溶剤噴射水切り槽12を経ることでワークから付着水分の97%以上が除去された状態、つまり、水分の持ち込み量を大幅に減らしたワークを槽本体23内に持ち込んで仕上げ洗浄を行うことができるので、アルコール液が添加されている場合にはその濃度低下も著しく遅くしてフッ素系溶剤58中のアルコール成分を長持ちさせて使用できる結果、液管理もそれだけ効率よく行うことができる。
【0047】
さらに、最終段を構成しているベーパー洗浄・乾燥槽32は、槽本体33の上部空間34内にベーパー層37の温度を例えば水の沸点である100℃以上に追加熱することもできる追加熱ヒーター38を備えているので、ベーパー層37内にワークを配置することで残存水分を蒸発させながら確実にベーパー洗浄・乾燥をすることができる。
【0048】
つまり、本発明によれば、溶剤噴射水切り槽12と超音波洗浄槽22とベーパー洗浄・乾燥槽32との3段構成のもとでワーク水切り乾燥装置11を構成することで、ワークに対しより高効率で高精度な水切り乾燥を良好な仕上がりのもとで行うことができることになる。
【0049】
以上は、本発明を図面に即して説明したものであり、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、図示例では、ワーク水切り乾燥装置11が溶剤噴射水切り槽12と超音波洗浄槽22とベーパー洗浄・乾燥槽32との3段で構成した例が示されているが、所望により溶剤噴射水切り槽12とベーパー洗浄・乾燥槽32との2段で構成することもできる。この場合、ワーク水切り乾燥装11は、その構成をそれだけ簡略化することができるので、乾燥処理工程を減らして作業効率を高めることができるほか、メンテナンスコストを低減させて全体のランニングコストを低下させることもできる。
【0050】
また、溶剤噴射水切り槽12は、蓋体17を備えないものであってもよい。このように蓋体17を備えない溶剤噴射水切り槽12においては、槽本体13のワーク出入口14のやや下側に上部噴射ノズル(図示せず)が配置され、ワーク側に対し斜め上方からフッ素系溶剤46が噴射されることになる。さらに、溶剤噴射水切り槽12には、上部噴射ノズル18のみを具備させ、下部噴射ノズル19の設置を省略することもできる。
【0051】
さらに、ベーパー洗浄・乾燥槽32は、槽本体33の上部空間34内に追加熱ヒーター38を設けることなく、槽本体33内に貯溜させたフッ素系溶剤58の沸点温度にまで加温して該槽本体33の上部空間34内に追加熱することなく発生させたベーパー層37のみでベーパー乾燥させるようにしてもよい。
【0052】
また、本発明に用いるフッ素系溶剤としては、メーカーの如何を問わずHFE(ハイドロフルオロエーテル)系を好適に用いることができるが、所望によりハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン等を主成分とする単一溶剤または複合溶剤を用いることもできる。さらに、超音波振動槽22内のフッ素系溶剤58に所望により添加されるアルコール液は、エタノールのほか、例えば沸点82.4℃のイソプロピルアルコール等の溶剤を用いることもできる。
【符号の説明】
【0053】
11 水切り乾燥装置
12 溶剤噴射水切り槽
13 槽本体
13a 内底面
14 ワーク出入口
15 ワーク載置台
16 支軸
17 蓋体
18 上部噴射ノズル
19 下部噴射ノズル
20 パッキン
22 超音波洗浄槽
23 槽本体
23a 内底面
24 ヒーター
25 噴流パイプ
26 超音波振動子
32 ベーパー洗浄・乾燥槽
33 槽本体
34 上部空間
35,36 ヒーター
37 ベーパー層
38 追加熱ヒーター
39 冷却コイル
40 圧力逃し弁
42 第1貯溜槽
43 冷却コイル
44 ポンプ
45 フィルター
46 フッ素系溶剤
47 圧力調整弁
52 第2貯溜槽
53 冷却コイル
54 濃度計測具
55 ポンプ
56,57 フィルター
58 フッ素系溶剤
58a 液面
62 水分分離槽
63 冷却コイル
64 フィルター
65,66 冷却コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系洗浄剤により被洗浄物として洗浄された後のワークを載置すべく槽本体内に配置されるワーク載置台と、該ワーク載置台のワークベースに向けて少なくとも上方または斜め上方から気化温度以下にまで冷却されたフッ素系溶剤を噴射する上部噴射ノズルとを少なくとも備えてなる溶剤噴射水切り槽と、
槽本体内に貯溜させたフッ素系溶剤の沸点温度にまで加温して該槽本体の上部空間内に発生させたベーパー層により、水切り後に持ち込まれた前記ワークをベーパー乾燥させるベーパー洗浄・乾燥槽とで少なくとも構成したことを特徴とするワーク水切り乾燥装置。
【請求項2】
前記溶剤噴射水切り槽は、前記槽本体のワーク出入口を開操作可能に密閉する蓋体と、前記ワーベースに向けて下方から気化温度以下にまで冷却されたフッ素系溶剤を噴射すべく前記槽本体の内底面側に配置される下部噴射ノズルとを有する請求項1に記載のワーク水切り乾燥装置。
【請求項3】
前記蓋体には、前記上部噴射ノズルを具備させた請求項2に記載のワーク水切り乾燥装置。
【請求項4】
溶剤噴射水切り槽が槽本体内に備える前記ワーク載置台は、支軸に対し揺動可能に支持させた請求項1ないし3のいずれかに記載のワーク水切り乾燥装置。
【請求項5】
前記ベーパー洗浄・乾燥槽には、槽本体内に貯溜させたフッ素系溶剤の沸点温度にまで加温して該槽本体の上部空間内に発生させたベーパー層をさらに追加熱する追加熱ヒーターを具備させた請求項1ないし4のいずれかに記載のワーク水切り乾燥装置。
【請求項6】
前記溶剤噴射水切り槽と前記ベーパー洗浄・乾燥槽との間には、前記溶剤噴射水切り槽から取り出された前記ワークを槽本体内に貯溜されているフッ素系溶剤中に浸漬して超音波キャビテーションを与えつつ、前記ワークに同種のフッ素系溶剤を噴出させて付着水分を微小化して剥離する仕上げ洗浄のための超音波洗浄槽を介在させ、該超音波洗浄槽から取り出された前記ワークを前記ベーパー乾燥槽内でのベーパー洗浄・乾燥を可能とした請求項1ないし5のいずれかに記載のワーク水切り乾燥装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−163220(P2012−163220A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21520(P2011−21520)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(505368139)株式会社エー・エスー・ケー (4)
【Fターム(参考)】