説明

一体化した液体区画を有するサンプル採取・計量デバイス

【課題】
本発明の課題は、新規なサンプル採取・計量デバイスを提供することにある。また、サンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムおよびその目的のためのその使用ならびにサンプル液体中のアナライトを測定するための方法を提供することも課題である。
【解決手段】
課題を解決するため、上記システムは、支持体、およびサンプル液体の所定容量を取り込むため支持体に一体化されている計量素子、ならびに液体の所定容量を収容している支持体上に位置する密閉液体区画から構成されるサンプル採取・計量デバイスであって該支持体上の液体区画が開放可能であることを特徴とする本発明によるサンプル採取・計量デバイスを含み、このサンプル採取・計量デバイスが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液体を採取して計量するためのデバイスに関し、またサンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムに関する。そのシステムは、そのようなサンプル液体を採取して計量するためのデバイスに加えて、アナライトを測定するのに必要な反応を行うための反応キュベットを有している。
【0002】
さらに本発明は、サンプル液体中のアナライトを測定するためのそのような分析試験システムの使用、およびそのような分析試験システムを用いるサンプル液体中のアナライトを測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、サンプル採取およびサンプル計量の分野、ならびに分析試験を行ってサンプル液体中のアナライトを測定する分野に属する。特に本発明は、液体の試薬または緩衝剤を必要とする検出方法に適した分析試験デバイスおよび方法、あるいは複数の連続的な個別ステップおよび反応を含む検出方法に適した分析試験デバイスおよび方法に関する。
【0004】
サンプル液体中のアナライトの測定は、多くの工業分野および科学分野で、例えば環境や食品の分析調査や、また医療や診断上の検査に非常に重要であり、過去には数多くの分析方法および試験デバイスが開発されてきた。測定方法の多くは、様々な試薬による複数の連続的な分析反応を必要とし、また所定のプロトコルに従い、工程ステップの形式で逐次実施しなければならない反応条件を必要とする。通常そのような分析方法を実施するためには、ピペッティング、混合、他の反応空間やインキュベーション段階もしくは遠心分離への移送、または分離ステップなど、多くの手動の工程ステップが必要である。これらのステップはしばしば、エラーを生ずる傾向があり、その結果、誤ったアナライト測定となる可能性がある。過去には、そのような工程ステップを単純化し自動化しようとする様々な試験システムが開発されてきたが、そのような試験システムは、多くの場合なお複雑であり、それゆえ生産コストが高い。さらに、そのような試験システムは通常、アナライト測定を行うためには、特別な訓練を受けたオペレーターおよび/または複雑で高価な実験装置を必要とする。そのようなシステムにおける多くの工程ステップを自動化するのは多くの場合可能であるが、サンプル収集、サンプル調製、および/またはシステム中へサンプルを計量導入するステップは、通常なお手動で行わなければならず、その結果、エラーを生じやすくなる。最近、マイクロ流体試験システム、特に国際公開第96/07919号パンフレットまたは欧州特許出願公開第1445020号明細書に記載されているようなシステムを用いて、加えたサンプルを、特別に設計された流路とチャンバーを介して輸送し、そこで所定部位にある検出試薬と接触させることが試みられている。この方法では、サンプル液体または反応混合物は、複数の反応領域、インキュベーション領域、および/または検出領域を逐次的に通過する。つまり、空間的および/または時間的に離れた反応ステップを順番に行うことが可能となる。しかしながら、この方法は、製造が非常に複雑で、それゆえ高価なデバイスを必要とする。また多くの場合、このようなマイクロ流体デバイスは、製造および安定性の理由から多くの場合ドライケミストリー試薬のみを備えることができるため、希釈ステップや混合ステップのようなデバイスの外部で通常行わなければならないさらなる工程ステップも必要とする。そのようなマイクロ流体デバイスでは、液体が、通常は毛管力によって輸送される。これは言い換えると、毛細管流路の精度と形状に対する要求が高くなり、その結果、それに対応して製造プロセスが高価で複雑なものとなる。遠心分離、回転あるいはまたポンプのような外部から加えられる力による液体輸送では、試験デバイスそのものに対する要求は通常低いが、これらの技術は遠心分離器やポンプのようなコストのかかる付加的な装置を必要とする。
【0005】
欧州特許出願公開第1445020号明細書には、ドライケミストリー試薬を用いた比濁法によりHbA1cを測定するための試験素子が記載されている。この試験素子は、サンプル輸送のための複雑な流路構造を有しており、検出反応を行うためにサンプル液体以外のさらなる液体は必要としない。この試験素子の流路は、様々な特別の区画に分断されており、これらの区画は例えば、細胞内コンパートメントを分離したり、所定の希釈比を達成する役割を果たし、あるいは試薬チャンバーおよび混合チャンバーとして、反応空間として、検出キュベットとして、もしくは廃棄物空間として機能する。このように複雑な流路構造は、その製造方法、特に精度と再現性に関する要求を高くする。
【0006】
国際公開第96/07919号パンフレットに記載されているように、もしこれらのマイクロ流体デバイスが、液体の試薬溶液または緩衝溶液を収容することも目的とする場合、これらの液体を入れるさらなる内部区画が必要であり、言い換えると、システムの複雑さが増し、その結果その製造コストも相当に高くなる。
【0007】
米国特許第3,799,742号明細書にも、液体で満たされた区画を有する分析試験素子が記載されている。この区画には、例えば希釈溶液または試薬溶液を収容することが可能である。この液体区画は試験素子と一体化した構成要素であり、外側の領域とは第1の膜で、そして他の区画または液体接続流路とは第2の膜で隔てられている。サンプルを入れるには、第1の膜に穴を開けることでサンプル液体が液体区画の中に導入される。このようにして試薬で希釈または混合したサンプル液体は、次に他の反応空間または検出空間の中へ運ばれ、そこで第2の膜に穴を開けることによりアナライト検出を行うことができるようになっている。これらの試験素子では、外部の穴開けデバイス中に場合により計量機能を設けることができる。それは、試験素子およびその試験素子に一体化した液体区画とは別に存在し、また別に用いることができる1つの構成要素として設計される。
【0008】
米国特許第5,162,237号明細書には、一体化した構成要素として液体容器を有している分析試験素子が記載されている。この液体容器には試薬液体が貯蔵されており、試薬溶液は液体容器が開放された後に反応チャネルの中へ導入される。この反応チャネルには、試験素子中にサンプル注入デバイスを導入するための注入開口部も結合しており、この注入開口部も計量機能を持つことができる。このサンプル注入・計量デバイスは、この場合、別個のデバイスとして存在しており、試験素子の適切な開口部の中へ手動で挿入されてサンプルが注入される。試験システムの各構成要素を結合させた後、且つ試験素子中に一体化されている液体容器を開放した後に、その中に収容されている試薬液体が反応チャネルの中へリリースされ、結果として、サンプル注入・計量デバイス中に存在する液体サンプルと接触し、この液体サンプルと反応混合物を形成する。またこの試験素子は特別な形状をした内部液体通路およびチャンバーを有しており、この中にはドライケミストリー検出試薬が所定の部位に配置され、反応混合物が、協調した回転運動と液体通路の形状によって他の検出試薬と接触し、そしてまた最終的には検出部位に輸送される。従ってこれらの試験素子はいくつかの構成要素からなる非常に複雑な構造を有し、これがその製造を複雑、高価にしている。さらに、これらの試験素子でアナライト測定を行うには複雑な外部機器が必要であり、検出デバイスに加えて、試験素子の複雑な運動のための機械的なデバイスおよび電気制御も必要となる。
【0009】
分析試験素子の別のグループは担体結合型試験体であり、例えば欧州特許出願公開第1522343号明細書に記載されている、ドライケミストリーに基づく試験担体または試験ストリップのようなものである。この場合、試薬、特に特異的検出試薬および補助試薬は、固体状担体の適切な検出素子中に埋め込みまたは固定化されている。古典的な試験ストリップ方式では、全ての試薬は試験ストリップ上にドライケミカルとして存在しており、試薬はサンプル液体によってのみ溶解し、それによって反応する状態となる。しかしながら、全ての試薬がドライケミストリーの形態での安定な貯蔵に適しているわけではないので、そのようなドライケミストリー試験ストリップの用途は、全ての反応パートナーがドライケミストリーの形態で貯蔵可能であるような検出反応に限定される。また担体結合型試験体の場合では、サンプルは、通常、一定のサンプル容量をピペッティングすることにより、または不確定サイズの一滴の血液のような、計量されていない多量のサンプル液体と接触させることにより手動で加えられる。大部分の試験ストリップ方式では、必要となり得る希釈ステップもまた、サンプルを加える前に手動で行わなければならない。試験ストリップ上に液体試薬も貯蔵しようとする試みもまた、その上部構造部位の複雑さが増すので、ユーザーにとってはより使いにくいものとなり、また高価な試験システムになってしまう。
【0010】
欧州特許第0863401号明細書には、試験ストリップ方式の分析試験素子が記載されている。この分析試験素子は、サンプル適用領域、検出領域、および液体で満たされたブリスターを有する担体上に吸収性物質を含有している。この支持体は、支持体表面内に、ブリスターを開くための特別な形状をしたカット部、例えばV字状先端部のようにデザインされたカット部を有し、支持体が曲げられた場合に、ブリスターを開くのに用い得る先端部がそこに形成される。これにより、ブリスター中に収容されている液体が流出して吸収性物質と接触することができる。ブリスター中に収容されている液体は、溶離液、あるいは試薬を含有する液体であってもよい。これらの試験素子が機能するためには、一定量のサンプル液体を、手動で行わなければならない先行するステップで吸収性物質に加えること、およびブリスター中に収容されている液体が、アナライト測定に必要とされる試薬をサンプル液体に供給すること、および/またはブリスター液体が、サンプル液体によって、やはり試験素子上に位置する検出部位まで輸送されることが重要である。
【0011】
先行技術に記載されているサンプル採取デバイスおよび分析試験システムは、複雑な設計であり、あるいはドライケミストリー試薬に限定されるという特徴がある。そのような複雑な試験素子の製造および組み立ては、また一方で、一般に非常に複雑でコスト高である。場合によっては、試験素子を遠心分離または回転させるなどの、アナライト測定を行うためのさらなる複雑な機器が必要であり、これも分析システム全体の複雑さとその購買コストを高くする。従って、試験を1回行う毎のコストも高くなる。
【0012】
このように先行技術では、できるだけ簡単且つ最もコスト効率の良い方法で製造可能であり、可能な限りシンプル且つエラーを生じない方法で操作でき、ドライケミストリー試薬の使用に限定されず、さらには試験をするサンプル液体の正確な計量、および/または試験をするサンプル液体の緩衝溶液、希釈溶液または試薬溶液による正確な希釈を可能にするような、サンプル液体を採取・計量するためのデバイスは知られていないし、サンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムも知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の課題は、このような既存デバイスの先行技術における欠点を大幅に回避するような、サンプル液体を採取・計量するためのデバイス、およびサンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムを提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの課題は、できるだけ簡単に製造・操作することができ、また計量素子中に収容されているサンプル液体をこの素子から別の区画中へ移すことを可能にする、サンプル液体を採取・計量するためのデバイスを提供することである。
【0015】
本発明のさらなる課題は、可能なかぎり簡単且つエラーがないように操作することができる、サンプル液体を採取・計量するためのデバイスを提供することである。このデバイスは、計量素子中に収容されているサンプル液体を、さらに希釈溶液または試薬溶液と所定の希釈比で混合することを可能にするものである。
【0016】
本発明の別の課題は、できるだけ簡単且つコスト効率の良い方法で製造でき、可能なかぎり簡単にユーザーが操作可能であり、非常に正確な計量と、場合によってサンプル液体の希釈をも可能にする、サンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムを提供することである。
【0017】
本発明のさらなる課題は、ユーザーが所望のアナライトを多数のあり得るアナライトから簡単且つコスト効率の良い方法で選択・測定することを可能にする、サンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムの組み合わせを提供することである。
【0018】
本発明のさらなる課題は、特にマルチステップの検出方法を、手動の工程ステップが可能なかぎり少なく、および/または複雑な機器が少ないユーザーフレンドリーな方法で行うことができる、サンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムおよび方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる課題は、ドライケミストリー試薬の使用に限定されない、サンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらの課題を解決するために、本発明は、特許請求の範囲の独立請求項に記載されているように、サンプル採取・計量デバイス、ならびにサンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムおよびその目的のためのその使用、およびサンプル液体中のアナライトを測定するための方法を提供する。従属する請求項には好ましい実施形態が記載されている。
【0021】
これらの課題を解決するために、本発明は、特に、所定容量のサンプル液体を採取するための計量素子と、所定容量の液体が収容されている少なくとも1つの密閉液体区画を含む支持体とを有するサンプル採取・計量デバイスであって、該計量素子が支持体と一体化した構成部品であり、支持体上の該液体区画が開放可能であることを特徴とするデバイスを開示する。
【0022】
本発明によれば、計量素子と、所定容量の液体を収容している少なくとも1つの開放可能な液体区画とを共通の支持体に一体化することにより、試験をするサンプル液体を採取・計量し、また供給するのに必要なデバイスおよび材料を単一の構造体ユニット中に兼ね備えたサンプル採取・計量デバイスが初めて提供され得ることとなる。これにより、今度は特にそのようなサンプル採取・計量デバイスの工業規模での簡単且つコスト効率の良い製造が可能になる。さらに、構造体ユニット中への一体化により、サンプル液体の採取・計量とともにそのようにして計量されたサンプル液体をその後の目的のために供給するのに必要な全てのデバイスと機能が組み合わされているので、ユーザーによるこれら本発明によるデバイスの簡単な操作が可能になる。本発明によるデバイスは、ユーザーが所定容量のサンプル液体を採取しそれをさらなるアナライト測定のために指定されている区画の中に供給することを可能にしているので、そのようなデバイスは、分析試験システムで用いるのに特に適している。特に、本発明によるデバイスは、サンプル液体と液体区画中に収容されている所定容量の液体とを混合すること、つまりサンプル液体の所定の希釈を行うこと、および/または試薬を加えることを可能にしている。本発明による計量素子と液体区画との共通支持体上での一体化により、所定の反応混合物を簡単な方法で且つ少ない工程ステップでアナライト測定のために供給することが可能となる。これは、可能なかぎり正確且つエラーのない方法でアナライトを測定するための基礎である。特に、本発明によるサンプル採取・計量デバイスの使用は、本来であれば手動で行わなければならないサンプル採取・計量のステップ(例えばピペッティング)、サンプル希釈のステップ、および反応区画中へのサンプル移送のステップの実質的な標準化および/または自動化を可能にする。言い換えると、これらのステップ、従ってそれに続くアナライト測定の精度と再現性を相当に高くすることができる。
【0023】
本発明のサンプル採取・計量デバイスは、少なくとも1つの計量素子と液体区画とを一体構成部品として含む支持体から構成される。支持体は、それぞれの意図する用途の特別な要求事項を満たすように設計することができる。つまり、支持体は、サンプル採取・計量デバイスの取扱い性を改善する、あるいは分析試験システムにそれを組み込むことを可能にする他の任意付加的なデバイスを有することができる。例えば、支持体は、分析試験システムに組み込むための、溝、スロット、または固定用接続部のような、特別のグリップ用成型部、もしくはマーク、または特別なガイド用もしくは取り付け用の要素を有し得る。本発明によるデバイスが自動化方式で用いられる場合、支持体は、このために、誘導用もしくはキャッチ用の要素のような特別のデバイスを有することができる。これらは、支持体または支持体の個々の部分を、例えば液体区画を開放するため機器によって移動させることを可能にする。支持体はまた、アルファベットや数字の番号、バーコード、二次元コード、REIDトランスポンダのような任意付加的な識別素子を含んでいてもよい。これにより、支持体に特有のデータ、例えばその計量素子のタイプとサイズについてのデータやその液体区画中に収容されている液体の容量と組成についてのデータ、あるいは有効期限日、ロット番号、検定情報などのデータを、ユーザーまたは機器の読み取り装置に伝達することが可能となる。
【0024】
本発明によれば支持体は構成要素として少なくとも1つの密閉液体区画を有している。この中には所定容量の液体が収容されており、またこの液体区画は開放可能である。支持体の構成要素としての液体区画は、例えば支持体自体の特別な形状にされたサブ領域、例として支持体に形成した凹部であってそれ以外は実質的に平坦としたものとして設計することができる。これを所定容量の液体で満たし、続いてカバー層により液密状態で密封することで、支持体上に密閉液体区画が存在することになる。支持体上のそのような凹部は、使用される材料にもよるが、当業者に知られている種々の方法により、例えば射出成型法または深絞り法によって設計・製造することができる。例えば凹部の幾何形状それ自体がそこに収容される容量を規定すること、あるいは計量された液体の容量が凹部の中に配置されることで、そのような凹部を所定容量の液体で満たすことが可能である。密閉液体区画を得るには、凹部は、液体で満たされた後、液密状態で密封されなければならない。これは、カバー層、例えば液密且つ気密のプラスチックホイルまたは金属ホイルを適用することによって達成される。支持体上の液体区画のその他の実施形態については、特に米国特許第5,272,093号明細書を参照されたい。支持体の中に直接一体化されるこのような液体区画の他にも、所定容量の液体を収容していて最初から密閉されている液体区画を作り、追加の製造工程において、例えば所定位置に固定または接着することによりそれらを支持体に接合させ、共通の構造体ユニットを形成することも可能である。支持体上の液体区画のそのような実施形態は、特に欧州特許第0863401号明細書に開示されており、それにはプラスチックでコートされたアルミニウムホイル製の液体充填ブリスターを製造するための方法およびあり得る材料、ならびにそれらとドライケミストリーの試験ストリップとを組み合わせることが記載されている。このような液体充填ブリスターの他にも、支持体に付けるガラスアンプルまたはプラスチックアンプルのような、その他の密閉液体区画を用いることも可能である。本発明にとって重要な液体区画の特性は、それらが開放可能であり、特にその中に収容されている液体がリリースされることである。液体区画は様々な方法およびデバイスを用いて開放することができ、それら方法およびデバイスは、特に、その液体区画を密封した材料および方法に依存する。
【0025】
好ましい実施形態では、液体区画は、剥離可能または穴開け可能な液密且つ気密のホイルで密閉されている。このホイルをこの後に引き剥がしまたは穴開けして液体区画を開放し、その中に収容されている液体をリリースすることができる。例えば液体区画は、液密且つ気密のプラスチックホイルまたは金属ホイルのようなカバーホイルで接着または溶着して密閉することができる。ホイルは、支持体上に、液体区画の凹部の部分で接着または溶着される。ホイルは、例えば米国特許第5,272,093号明細書に記載されているように、手動で、または機器を用いて取り外しでき、その中に収容されている液体をリリースすることができるようになっている。開放するその他の方法は、例えば、液体区画と境界を接するカバーホイルその他の面を、特別なデバイス、あるいは例えば支持体中の尖った先端部の形態のような、支持体の特別なデザインを用いて穴開けする方法である。そのような方法は、例えば欧州特許第0863401号明細書に記載されている。
【0026】
支持体のもう1つの発明構成要素は、所定容量のサンプル液体を採取するための一体型計量素子である。この計量素子は、支持体の製造の際にすでに一体化され得るか、または後の製造工程で一体化され得る。前者のケースでは、支持体が射出成型法で製造されるプラスチック製である場合、射出成型の際に、計量機能を、支持体の特別に成型された部分として、例えば計量毛細管の形態または計量流路の形態に成型することで行うことができる。後者のケースでは、例えば、先ず、別個の構造体素子の形態にある計量素子を作り、これを後の製造工程で支持体に接合することで、例えば支持体に接着するかまたは射出成型法で支持体材料の中に成型することで行うことができる。基本的には、所定の液体容量を貯蔵および/または計量するように機能するいかなる構造体素子も、本出願の意味するところにおいては計量素子とみなされ得る。これらの構造体素子は、この目的に設計されているその幾何形状寸法と構造、例えば所定容量の液体を取り込みそれを再びさらなる使用に対して利用可能にすることができる、特性的な寸法と直径をもつ毛細管流路または開口部により特徴付けられる。計量素子はまた微細構造体として実現化することもでき、特に、半導体、プラスチック、ガラス、セラミック、金属などからも製造することができる。
【0027】
本発明によるデバイスの好ましい実施形態では、計量素子は毛細管または流路として設計されている。そのような計量素子の例は米国特許第3,799,742号明細書や米国特許第5,162,237号明細書に開示されており、そこには計量毛細管または計量流路または計量ノッチの形態にある計量素子が記載されている。しかしながら、これらの好ましい実施形態に加えて、例えば所定の液体容量を取り込み且つ開放することができるフリース様またはスポンジ様材料のような吸収性材料の形態にある当業者には知られている他の計量素子の実施形態も可能である。そのような実施形態は、例えば独国特許出願公開第19744550号明細書に記載されている。未処理血液サンプルのような未処理液体に加えて、既に事前処理された液体、例えば抗血液凝固剤または他の試薬を混合した血液サンプルおよび/または希釈された血液サンプルも、本出願の特許請求の範囲内にある計量素子によって取り込むことができるサンプル液体として使用することが可能である。
【0028】
本発明によるサンプル採取・計量デバイスのもう1つの好ましい実施形態では、液体区画中に収容されている液体の少なくとも1つは緩衝溶液または希釈溶液である。これは、計量素子中に取り込まれたサンプル液体を次の工程ステップにおいて所定の希釈比で先ず希釈してその後この希釈されたサンプル液体で分析測定を行わなければならない場合に特に有利である。この目的のためには、所定容量の緩衝溶液または希釈溶液が支持体の少なくとも1つの液体区画中に入れられ、この液体区画が開放された後、支持体の計量素子中に含まれている所定容量のサンプル液体と接触し、所定の希釈比でこのサンプル液体と混合することになる。従って、例えば、1:200の希釈比は、支持体の計量素子が5μLのサンプル液体容量を取り込むことができ且つ支持体の液体区画が995μLの緩衝溶液または希釈溶液容量を収容している場合に達成することができる。基本的には、サンプル液体と混和性であり且つ形成された希釈混合物中でサンプル液体の実質的に均質な分布を確実なものとする全ての液体は緩衝溶液または希釈溶液として用いることができる。特に、水、または無機または有機の安定性緩衝物質および/または塩を含有している水溶液は、緩衝溶液または希釈溶液として用いることができる。緩衝溶液または希釈溶液は、通常、サンプル溶液の構成成分、特に分析されることになるサンプル構成成分と特異的に相互作用または反応する物質は含有していないものとする。これらの例としては、生理食塩水、リンゲル溶液、あるいは有機緩衝溶液、例えばHEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジノ]エタンスルホン酸)緩衝液がある。
【0029】
本発明によるサンプル採取・計量デバイスのさらなる好ましい実施形態では、液体区画中に収容されている少なくとも1つの液体は試薬溶液である。これは、サンプル液体を、例えばアナライト測定を行うために特定の試薬と混合して反応混合物を形成させなければならない場合に特に有利である。この目的のためには、所定容量の試薬溶液を支持体の少なくとも1つの液体区画中に入れることができ、この液体区画が開放された後、支持体の計量素子中に含まれている所定容量のサンプル液体と接触して混合され、その結果、必要とされる反応混合物がアナライト測定のために調製される。この場合、試薬溶液は、サンプル液体中のアナライトを測定するのに必要とされる全ての試薬またはその個々の試薬のみを、および場合によっては他の補助的な物質も含有することができる。分析分野における専門家にはそのようなアナライト特異的試薬や補助薬剤は公知である。酵素的に測定しなければならないアナライトの場合は、それらは、例えば、酵素、酵素基質、指示薬などであってよい。免疫的な検出方法の場合は、それらはアナライトの特異的結合パートナー、例えば抗体や抗原であってよく、また光学的または電気化学的な検出方法の場合は、それらは例えば染料や電気化学伝達物質であってよい。
【0030】
本発明によるサンプル採取・計量デバイスのそのほかの好ましい実施形態では、支持体は、互いに離間する液体区画を数個含んでいる。特に好ましい実施形態では、これらの液体区画は、同時または順次に開放することができる。この場合、液体区画は、同一もしくは異なる液体を収容することができる。同じ液体が数個の液体区画中に存在している実施形態は、例えばサンプル液体を数ステップで希釈するのに用いることができる。この目的のためには、第1の所定容量の液体を収容している第1の液体区画を先ず開放することができ、その結果サンプル液体が先ずこの第1の液体容量で希釈される。もし液体サンプル中のアナライトの濃度が、信頼できる測定をするにはなお高すぎるということが分かった場合は、第2の所定容量の液体を収容している第2の液体区画を第2の希釈ステップで開放することができ、それによって液体サンプルのもう1回の希釈が行われる。従って液体サンプルを連続的に希釈することができる。例えば、10μLのサンプル液体を保持できる計量素子を有している本発明によるデバイスでは、90μLの液体を収容している第1の液体区画と900μLの液体を収容している第2の液体区画とを用いて、第1の液体区画を開けることで先ず1:10の比で、そしてさらに第2の液体区画を開けることで最終的に1:100の比でサンプル液体を希釈することができる。さらなる実施形態では、液体区画中に収容されている液体が、少なくとも一部異なっていてもよい。そのような実施形態は、サンプル液体に異なる試薬を加えなければならない場合に特に有利である。これらの試薬はそれぞれの区画中にウェットケミストリーの形態で存在していてもよく、本発明によるデバイスにより、それぞれの液体区画を開放することで、サンプル液体に順次あるいはまた同時に加えることができる。例えば、もし試薬液体の成分が一緒に貯蔵されると互いに望ましくない反応が起こるような試薬液体をサンプル液体に加えなければならない場合は、いくつかの液体区画を同時に開放することが有利である。試薬液体の成分を本発明によるいくつかの液体区画中に分けることで、それらを、一方では、互いに影響されることなく安定に貯蔵することができ、他方では、液体区画を同時に開放することでそれらを1回の操作ステップでサンプルに同時に加えることができる。そのような実施形態の液体区画は、互いに隣り合って配置し、1つの共通のカバーホイルで密閉すると特に有利である。このカバーホイルは、同一の操作工程において上方への移動により引き剥がすことができ、それによって、カバーホイルで封止されている全ての液体区画が同時に開放される。一方、液体区画を順次に開放するのは、アナライトを測定するのにマルチステップの検出反応が必要とされる場合に特に有利である。そのような実施形態では、液体区画は、互いの上部に配置され、1つの共通のカバーホイルで密閉されていると特に有利である。このカバーホイルは、先ず第1のステップで所定の距離だけ上の方へ引っぱられ、それによって、液体区画を順次に開けるため、先ず底部の液体区画を開放することができ、その後、第2のステップでさらなる距離分だけ上の方へ引っぱられ、それによって、さらに上部にある液体区画を開放することができる。本発明による試験支持体には、さらなる反応工程のためのさらなる試薬溶液を収容するさらなる液体区画を、同様にして、含むことができる。本発明の支持体上には、緩衝溶液または希釈溶液を収容している1つまたは複数の液体区画と、試薬溶液を収容している1つまたは複数の液体区画とを組み合わせることも可能である。
【0031】
本発明のもう1つの態様は、サンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システムの提供である。この分析試験システムは、構成要素として、上述した実施形態による本発明のサンプル採取・計量デバイス、および追加として反応キュベットを含む。
【0032】
本発明によれば、少なくとも1つのそのようなサンプル採取・計量デバイスと反応キュベットとを組み合わせることで、簡単にまた経済的に製造することができ、且つユーザーが簡単にまた実質的にエラーのない方法で操作することができ、且つ可能な限り正確であるサンプル液体の計量と希釈を可能にする分析試験システムを提供することができる。さらに、本発明による分析試験システムにおける少なくとも2つの異なる構成要素(サンプル採取・計量デバイスおよび反応キュベット)の使用は、測定すべき全てのアナライトに対する1つの共通の構成要素とそれぞれのアナライトに対する特定的な構成要素とのモジュール的な使用を可能にするものである。これは、分析試験システムをビルディングブロックの原理に従って組み合わせることを可能にするもので、これによりユーザーは、所望のアナライトを多数の考えられ得るアナライトの中から簡単且つ経済的な方法で選択・測定することができる。特に、本発明による分析試験システムはまた、手動で、または複雑でない機器により行われなければならない、且つ特にドライケミストリー試薬を専ら使用することには限定されないアナライト測定のための多ステップ検出反応を、可能な限りの最も少ない工程ステップで行うことを可能にするものである。少なくとも1つの本発明によるサンプル採取・計量デバイスと反応キュベットとを組み合わせることにより、簡単な方法で製造と操作ができ、またアナライト検出に必要とされる全ての消耗品と試薬を中に含むことができる試験システムが提供される。このような分析試験システムを用いることで、サンプル採取、計量、ならびにサンプル供給、サンプル希釈、およびサンプルへの試薬の添加の工程ステップ、およびアナライト測定に必要とされる反応を行う工程ステップを、1つの反応空間の中で行うことができる。
【0033】
本発明によれば、分析試験システムの反応空間は、反応キュベットにより形成され、この中で、計量素子中に採取されたサンプル液体および支持体の液体区画中に収容されている液体ならびに場合によってはその他の試薬が一緒にされて混合される。反応キュベットはさらに反応空間としても機能し、この中で、アナライトを検出するのに必要とされる反応の少なくとも一部を行うことができる。反応キュベットは、多くの幾何形状をとることができる。キュベット形状は、角型キュベットや丸型キュベットのような古典的なキュベット形状のほかにも、支持体の構造や用いられる検出方法に合わせてつくることもできる。反応キュベットは、場合により他の区画を含んでいてもよい。これらの区画は他の機能をもつことができ、例えば、特定のサンプルまたは試薬成分を分離するための流体通路として、あるいは反応混合物をさらに希釈するための流体通路として、あるいは試薬チャンバーおよび混合チャンバーまたは反応空間として、あるいは検出キュベットとして、あるいは廃棄物空間として機能する。そのような複雑な実施形態の例は、例えば欧州特許出願公開第1445020号明細書、または米国特許第4,990,075号明細書、または米国特許第5,162,237号明細書に流体試験モジュールおよび流体試験カセットの形態で記載されている。サンプル液体の計量容量と他の液体の計量容量とを組み合わせること、および検出反応の少なくとも一部を行うことに加えて、さらに他の機能も果たすようなもっと複雑な実施形態もまた本出願の特許請求の範囲内にある反応キュベットとみなされる。この関連で、反応キュベットの材質は、基本的には、例えばアナライトに結合することで、あるいは検出試薬または反応に関わっている溶媒と相互作用することで、アナライト測定に必要とされる反応に大きく悪影響を及ぼさないものであれば、どのような材料からできていてもよい。光学的検出方法の場合では、透明な反応キュベット、または少なくともアナライトを検出するための透明な部分領域がある透明な反応キュベットが特に適している。そのようなキュベットは、特にガラスや透明プラスチックからできていてもよい。アナライトを検出するのに、例えば電気化学的な検出方法が用いられる場合は、反応キュベットは、有利には、プラスチックやガラスなどの絶縁材料からできていてもよい。支持体と同じように、反応キュベットは、それぞれの意図される用途の特別な要求事項を満たすように設計することができる。例えば、反応キュベットの取り扱い性、または他の構成要素例えば支持体とのその相互作用を改善する任意付加的なデバイスが存在していてもよい。特に反応キュベットは、特別なガイドまたは取り付け素子、例えば支持体を保持し固定するための溝、スロット、または固定用接続部を有していてもよい。また本発明による試験システムを自動で使用することが意図されている場合は、反応キュベットは、このための特別なデバイス、例えば反応キュベットひいては本発明による分析システム全体を例えば分析器のような機器によってグリップしそして移動させることができるガイドまたは取り付け素子を有することができる。さらに、反応キュベットは、支持体と同じように、識別素子および/または特別なグリップ用成型部を含むことができる。
【0034】
アナライト検出に必要とされる反応を行うためには、支持体に一体化されている計量素子を、先ず、試験をするサンプル液体と接触させ、所定容量のサンプル液体をこの計量素子中に取り込み、この素子中に保持する。次のステップで支持体を反応キュベットの中に導入し、それによって計量素子を反応キュベット内に配置する。さらなるステップで、支持体上に位置する少なくとも1つの液体区画を開放し、それによってこの液体区画中に収容されている液体を反応キュベットの中に流す。この液体の量は、計量素子中に含まれているサンプル液体にその液体が接触するような程度の量である。その結果、計量素子中に位置しているサンプル液体が、例えば米国特許第5,162,237号明細書にも記載されているように、同時に希釈され、そして反応キュベット内で起こる検出反応に供される。支持体の液体区画中に収容されている液体が試薬を含有している場合は、それらもまたこの工程ステップでサンプル液体に加えられ、検出反応を開始させるのに必要な反応混合物が形成される。場合によっては、さらなる工程ステップ、例えばアナライトの測定に必要なさらなる試薬を加えることおよび/またはこの反応混合物を混合することも可能である。最後のステップで、反応混合物の特性的な測定可能変数が検出デバイスを用いて測定され、この測定値の大きさからサンプル液体中のアナライト濃度が推定される。
【0035】
1つの好ましい実施形態では、本発明による分析システムはさらに混合デバイスを含む。計量素子中に含まれているサンプル液体と支持体の液体区画からリリースされる液体とが混合して反応混合物を形成するのは、拡散過程にのみ基づくものではなく混合動作によって相当に促進されるものであるので、反応キュベット内に存在する液体の混合は、計量素子中に含まれるサンプル液体を可能なかぎり完全にリリースすることを確実にすることができる。これによって、サンプル液体つまり反応混合物中のアナライトの非常に均質な分布も達成され、アナライト測定には有利である。この混合は、反応キュベットまたは分析試験システム全体を、例えば揺らすまたは震盪する(手動、または機器によっても行うことができる)ことによって行い得る。この混合はまた特別な混合デバイス、例えばパドルミキサーやマグネチックスターラーによっても行うことができる。特に好ましい実施形態では、反応混合物はマグネチックスターラーによって混合され、この場合マグネチックスターラーのバーが反応キュベットの中に混合デバイスとして存在する。このスターラーバーは、反応キュベットの中に、支持体を導入する前あるいは支持体上に位置している液体区画を開放する前に既に存在していてもよく、また例えば反応キュベットと一緒に既にパッケージされていてもよい。他の実施形態では、マグネチックスターラーバーは、支持体上に位置している液体区画が開放される際またはその後に反応キュベットの中に混合デバイスとして配置することができる。これは好ましくはマグネチックスターラーバーを液体と一緒に液体区画中に入れておくことで達成することができ、その場合液体区画を例えばカバーホイルを取り外すことで開放すると、スターラーバーがその開放された液体区画の液体と一緒に反応キュベットの中に入る。
【0036】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明による分析システムは、アナライトを反応キュベットの中で測定することができるデバイスを含む。このようなデバイスは、基本的には、アナライトに特性的である測定可能な変数を測定し得る反応キュベット中の特別な検出デバイスまたは反応キュベットの特別な構造体である。しかしながら、この目的のためには、アナライトを測定するのに必要とされる全てのデバイスが反応キュベットの中に存在している必要はなく、むしろこれに必要とされる一部のデバイスが反応キュベットの中に存在していることまたは反応キュベットがそれに従った構造をしていることで十分であり、そうすることによって、反応キュベットの中に存在している反応混合物についてのアナライトに特性的な測定可能な変数を測定することができる。アナライトが、比色法、光度測定法、濁度測定法、スペクトル光度測定法、蛍光または発光測定法、蛍光偏光測定法、赤外・ラマン分光測定法のような光学的な方法によって測定される場合は、反応キュベットの少なくとも一部の領域は、反応混合物の光学特性の測定を可能にするために、透明でなければならない。この目的のために、反応キュベットの全体が透明材料からできていてもよく、あるいはキュベットの特定の一部領域だけを例えば測定窓の形態で透明な構造としてもよい。そのような反応キュベットの実施形態もまた、反応キュベットの中でのアナライトの測定を可能にするデバイスとして、本出願の特許請求の範囲内にあるとみなされる。アナライトが電気化学的な方法例えば電位差測定法、電流測定法、電量測定法、あるいは電気伝導度測定法によって測定される場合は、反応キュベットは検出デバイスとして適切な電極を含む必要がある。この電極では、電気化学的な検出反応が進行する。および/または電極は、反応混合物中の電気化学的変化を検出するよう機能する。アナライトの測定がその他の検出方法によって行われる場合は、当業者に知られているその目的のための検出デバイスを反応キュベットの中に存在させることができる。アナライト測定に必要とされる検出デバイスの一部は、例えば分析器の1つの構成要素として特別な検出ユニットの形態で本発明による試験システムの外部に存在し得る。この分析器には、本発明による分析試験素子が挿入されてアナライト測定が実施され、および/または評価が行われる。光学的な検出方法の場合は、そのような検出ユニットは、例えば光源、フィルター、光検出器などを収容することができ、電気化学的な検出方法の場合は、そのような検出ユニットは、例えば反応キュベットの中に位置する電極に接触させるための接続器、電源、電気的パラメーターを検出するための測定機器などを収容し得る。そのような分析器はさらに、上記のようにして測定された一次的な測定可能変数を所望のアナライト濃度値にさらに処理するためのデバイス、およびこれらの値を伝送または表示するためのデバイスを収容することができる。
【0037】
本発明による分析試験システム中での少なくとも2つの異なる構成要素(サンプル採取・計量デバイスと反応キュベット)の使用は、測定する全てのアナライトに対する標準的な構成要素とそれぞれのアナライトについての特定の構成要素とのモジュール的な使用を可能にするものである。従って、この本発明の解決策は、多数の異なるアナライトのための多様なモジュール式分析システムを提供するものであり、それにもかかわらず、経済的に製造でき、また取り扱いも簡単である。さらに、アナライト測定に必要な試薬を本発明による分析試験システムの1つの構成要素中へ一体化すると、異なるアナライト測定を簡単な方法、従ってよりエラーを生じない方法で行うことが可能となる。
【0038】
第1の好ましい実施形態では、アナライトを測定するのに必要とされる特異的な試薬が、試薬液体の形態で、サンプル採取・計量デバイスの支持体上にある1つまたは複数の液体区画中に収容されることで達成される。これにより、あらゆる試験に対して標準化されている一般的な反応キュベットを使用することが可能になる。この反応キュベットの中には、各アナライト測定に対応する特異的な試薬を収容する、それぞれ特異的な支持体が配置される。これにより、ユーザーが適切な支持体を選ぶことで、アナライト特異的試験を迅速にまた柔軟に行うことが可能になる。好ましい実施形態では、支持体上には、異なる試薬液体を収容する、また異なる時間で開放することができるいくつかの液体区画が存在する。その結果、そこに収容されている試薬液体は、反応混合物に、異なる時間で加えることができ、つまり順次的な検出反応を行うことが可能となる。このように、例えば第1の液体区画を開放することで、第1の試薬溶液を反応キュベットの中に入れることができ、その試薬溶液は、そこで、計量素子中に含まれているサンプル液体と接触し、このサンプル液体と反応混合物を形成する。この反応混合物中で、第1の検出反応が起こるのである。第2の液体区画および場合により他の液体区画を開放することで、第2の試薬溶液および場合により他の試薬溶液を反応キュベットの中に導入すること、およびそれらをそこで前の反応混合物と混合することが可能である。このようにして、これらの試薬液体中に含有されている試薬が反応混合物に加えられ、その結果、第2の検出反応および場合により他の検出反応を行うことが可能となる。これにより、順次的な検出反応によるアナライト測定を、簡単で、ユーザーにとって使いやすい、そしてエラーの生じにくい方法で行うことが可能となる。さらなる実施形態では、計量素子中に含まれているサンプル液体は、最初に、アナライト特異的な試薬が入っていない緩衝溶液または希釈溶液を収容する支持体上の液体区画を開放することで供給することができる。この実施形態では、アナライト測定に必要とされる試薬は、この後、必要とされる試薬が入っている試薬溶液を収容する支持体上の1つまたは複数の液体区画を開放することで加えられる。異なる液体区画を、ユーザーが、例えば支持体の各液体区画を特定の時間において手動で開放することができその結果、規定された試薬添加の順序および反応時間に従うことができる。好ましい実施形態では、異なる液体区画が、適切に制御された、且つ支持体上にある各液体区画を特定の時間で自動的に開放するような機械式のデバイスによって開放される。つまりこれもまた、複雑な順次的検出反応を、エラーを生じやすい手動のステップなしに、規定された精密な方法で行うことが可能となる。これは、例えば、支持体上の数個の液体区画を別の区画の上部に配置し、それらを共通のカバー層、例えば一枚の封止用ホイルで密閉することによって実現することができる。このホイルには、上記のような機器機構が係合することができる特別な形状物を含み得る。これらは、例えば、そのような機構によってグリップ・保持可能な封止用ホイルの特別なラグであり得る。このカバー層は、次に、例えば機器機構を適切に動作させることで、所定の距離だけ段階的に上の方へ引き剥がすことにより液体区画を順次開放することができ、その結果、下側にある液体区画を最初に開放することができ、続いて次々に上にある液体区画を開放することができる。そのような支持体上の液体区画を開放するための制御可能な機器機構は、本発明による分析試験システムが上記アナライト測定を行うために用いられ得る分析機器の1つの構成要素とすることができる。
【0039】
第2の好ましい実施形態では、これは、アナライトを測定するのに必要とされる特定の試薬を反応キュベットの中に存在させることによって達成される。これにより、あらゆる試験に対して標準化されていて、且つ反応キュベットの中でサンプル液体を調製および希釈するための1つまたは複数の液体区画(この場合この区画には一般的な緩衝溶液または希釈溶液が収容されている)を有する汎用のサンプル採取・計量デバイスを用いることができる。アナライト測定の特異性は、適切な試薬を収容しているそれぞれの特異的な反応キュベットによってもたらされるので、アナライト特異的試薬を含有していないそのような汎用の緩衝溶液または希釈溶液を使用することにより、多くの異なるアナライト測定に対して単一形態のサンプル採取・計量デバイスを用いることが可能となる。これにより、ユーザーが、適切な反応キュベットを選択することで、アナライト特異的な試験を迅速且つ柔軟に行うことを可能にするものである。この場合、試薬は、反応キュベットの中に液体試薬として存在させることができる。しかしながら、特に好ましい実施形態では、試薬は、反応キュベットの中にドライケミストリーの形態で存在させることができる。この場合、試薬は、様々なドライケミストリー形態、例えば粉末として、タブレットの形態で、あるいはペーパーまたはフリースに含浸させる等、担体マトリックス中に存在させることもできる。この場合、アナライトを測定するのに必要とされる特異的試薬は、反応キュベットの中で共通の試薬スポットの形態で存在させることもできるし、あるいは反応キュベットの中で異なる試薬スポットに分配し、これを同時または順次に反応混合物と接触させること、つまり反応性の形態にすることができる。反応キュベットの数箇所にドライケミストリー試薬を分配し、反応混合物と同時に接触させて溶解させる態様は、互いに望ましくない様式で反応し得るが反応混合物には同時に加えなければならないドライケミストリー試薬を用いる場合に特に適している。反応キュベットの数箇所にドライケミストリー試薬を分配し、反応混合物と順次に接触させて溶解させる態様は、順次的な検出反応がある分析方法に特に適している。このように、例えば、反応混合物は、分析試験システムの第1の位置で第1のドライケミストリー試薬と接触して反応することができ、その後に反応混合物は第2の位置に移動し、そこで反応混合物が第2のドライケミストリー試薬と接触し、次の検出反応のステップを、分析試験システムを移動することにより、または緩衝溶液もしくは希釈溶液をさらに加えることにより行うことができる。これは、同様に他の反応ステップにも当てはまる。このような試験システムは、例えば米国特許第4,990,075号明細書、米国特許第5,162,237号明細書および米国特許第5,372,948号明細書に記載されている。試験システムは、好ましくは外部機器デバイス(例えば、分析器の構成要素である)によって移動され、適切な制御により、決められた時間での反応混合物の各試薬スポットへの正確な輸送が保証され、これにより、反応順序とインキュベーション時間に正確に従うことができる。他の実施形態では、ドライケミストリー試薬が配置されている反応キュベットの個々の領域が別の領域の上に配置されていて、最初に一番下の試薬スポットが、支持体上にある第1の液体区画を開放することで第1の容量の液体が加えられて接触することも可能である。反応キュベット中の反応混合物の液面は、次に、支持体上にある第2の液体区画および場合によってはさらなる液体区画を開放し、第2の容量の液体および場合によっては他の容量の液体を加えることによって上昇させることができる。その結果、上にある試薬スポットもまた反応混合物と接触し、それによってそこに含まれている試薬をリリースすることができる。他の実施形態では、反応混合物の液面の少なくとも一時的な上昇、つまり他の反応スポットに接触する可能性が、例えばスターラーの動きを強くすることよって達成することができる。
【0040】
他の実施形態では、上述した2つの実施形態を組み合わせることも可能であり、この場合、例えば、アナライトの検出に必要とされる試薬は、支持体上の液体区画中に存在する試薬液体、および反応キュベットの中に存在するドライケミストリー試薬に分けられる。
【0041】
本発明のもう1つの態様は、順次的な検出反応によってサンプル液体中のアナライトを測定するため、特に血液サンプル中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を測定するための、本発明による分析試験システムの使用に関する。
【0042】
HbA1cは、β鎖のN-末端バリン残基上にグリケート化グルコースが存在するヘモグロビンAとして理解されている。ヘモグロビンA1cを測定することにより、過去数週間の平均のグルコース濃度、つまり糖尿病患者の代謝調節の質を遡及的に推定することが可能である。HbA1cは、通常、全ヘモグロビンのパーセンテージで表される。このために、同じ血液サンプルから、HbA1c含有量に加えてヘモグロビン濃度も測定される。HbA1cは、これまで、主に大型の定置型集中試験機器で測定されてきた。この機器は、多くの場合操作が複雑であり、従ってエラーを生じやすく、またコストも高くなる。HbA1cを測定するのに本発明による分析試験システムを用いると、ユーザーの影響が可能な限り小さくなり、また機器計測がより単純になり、結果そのような試験を経済的に行うことができる。HbA1cを測定するのにはいくつかの方法が知られており、例えば欧州特許出願公開第0989407号明細書および欧州特許出願公開第1445020号明細書に記載されている。
【0043】
本発明による分析試験システムを用いて、例えばHbA1cを免疫反応測定法により簡単且つ経済的な方法で測定することができる。グリケート化ヘモグロビンの免疫反応による測定は、特に、Klin. Lab. 39, 991-996 (1993)に記載されている。この方法では、サンプルのHbA1cは第1の反応ステップでHbA1c抗体と反応する。HbA1c特異的エピトープはグリケート化ヘモグロビンの各β鎖で一度だけしか生じないので、抗原・抗体複合体の凝集は起こらない。数個のHbA1c特異的エピトープを有しているポリハプテンが加えられたときのみ、その分子は、第1の反応での余剰抗体と反応し、不溶解性の免疫複合体を生成する。この複合体は濁度測定法により測定することができる。濁度測定信号は、サンプル中のグリケート化ヘモグロビンの濃度に反比例する。この方法はいくつかの工程ステップを含んでいるので、これまでは、主に専門的な分析ラボラトリーで行われてきた。本発明による分析試験システムを用いることにより、そのような測定を、非集中的に簡単且つ経済的な方法で行うことができる。この目的のために、例えば、第1の液体区画中に、HbA1c特異的抗体および場合によって他の試薬、例としてPEG、界面活性剤、緩衝剤、安定剤などを含有する第1の試薬溶液を収容しているサンプル採取・計量デバイスを用いることができる。第2の液体区画は、HbA1cポリハプテンおよび場合によっては他の試薬、例としてPEG、界面活性剤、緩衝剤、安定剤などを含有する第2の試薬溶液を収容している。場合によっては、赤血球溶血剤が、さらなる液体区画中に入っていてもよい。これは、血液サンプルをサンプル液体として直接使用する場合、そこに含有されている赤血球を溶血し、その結果そこに含有されているヘモグロビンが遊離されて反応混合物中のHbA1cが測定される。この赤血球溶血ステップは、しかしながら、場合によっては、本発明による分析試験システムの外部でサンプル調製ステップとして行うことができる。
【0044】
本発明によるこのような分析試験システムを用いるHbA1c測定の実行手順を、以下に、一例として記載する。
【0045】
本発明によるサンプル採取・計量デバイスの計量素子により赤血球溶血化血液サンプル1μLを取り込み、計量する。このサンプル採取・計量デバイスを、次に、検出反応を行うために反応キュベットの中に導入し、その支持体の第1の液体区画を開放する。この区画には、HbA1c特異的抗体を含有する第1の試薬溶液250μLが入っている。その結果、そこに収容されている第1の試薬溶液が反応キュベットの中に入っていき計量素子中のサンプル液体と接触する、つまり計量素子のサンプル液体が反応キュベットの中に供給されることになる。次に、この反応混合物中で、免疫反応が、サンプル液体中のHbA1cと試薬溶液中のHbA1c特異的抗体との間の第1の検出反応として起こる。この反応では、存在しているHbA1c分子がその抗体に結合する。支持体中の第2の液体区画(ここには、いくつかのHbA1c特異的エピトープを含むポリハプテンを含有する第2の試薬溶液50μLが収容されている)を開放することによって、第2の試薬溶液が反応キュベットの中へ入っていき反応混合物と接触する。その結果、第2の検出反応が起こる。この反応では、ポリハプテンのHbA1c特異的エピトープが、まだふさがれていない反応混合物中のHbA1c抗体と結合する。その結果として、不溶解性の免疫複合体が形成され、これが、反応キュベットの光学的に透明で幾何形状的に画定されている領域(これは、光学的な検出に適しており、例えば、検出窓の構造をしている)で、適当な波長例えば340nmにおける濁度測定により測定される。このようにして測定されたこの特性的な光学測定量は、反応混合物中の免疫複合体の濃度についての指標となる。これは、逆に、血液サンプル中のHbA1cの量に反比例している。なぜなら、HbA1cによってふさがれていない抗体の結合部位だけがポリハプテンと第2の反応ステップで反応することができるからである。つまり、反応に関与する液体の既知容量を用いることで、免疫複合体の濁度測定により、血液サンプル中のHbA1c濃度を測定することができる。場合により、HbA1c値を、全ヘモグロビン濃度に相関させて、全ヘモグロビンに対するHbA1cのパーセンテージの形で表すこともできる。特に好ましい実施形態では、反応キュベットの中にある混合デバイスにより、サンプル液体のより迅速な供給および反応混合物のより良い混合ならびにより信頼性のおける濁度測定が可能になる。
【0046】
本発明のもう1つの態様は、本発明による分析試験システムを用いた、サンプル液体中のアナライトの測定方法に関わるものである。この方法は、以下のステップ:
a) 計量素子中に所定容量のサンプル液体が残るように、分析するサンプル液体に計量素子を接触させるステップ、
b) サンプル採取・計量デバイスを反応キュベットの中に導入するステップ、
c) 支持体上の少なくとも1つの液体区画を開放して、この液体区画中に収容されている液体が反応キュベット中に流れ且つそこで計量素子中に含まれているサンプル液体と接触するようにし、サンプル液体を計量素子中から反応キュベット中に供給して反応混合物を形成するステップ、
d) 場合によりアナライトの測定に必要な追加の試薬を加えるステップ、および/または反応混合物を混合するステップ、
e) 特に光学的な検出方法により、アナライトについて測定される特性量に基づきアナライトを測定するステップ、
を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明を、以下の例および図によりさらに説明する。
【0048】
図1は、1個の液体区画(14)を有している本発明によるサンプル採取・計量デバイス(10)の一実施形態を示す図である。サンプル採取・計量デバイス(10)は、液体区画(14)を有する支持体(15)で構成されている。この液体区画(14)は、この場合、支持体(15)の凹部の形態に設計されており、所定容量の液体を収容している。この場合の凹部は、凹部の中に収容されている液体が完全に排出されることを確実なものとするため底へ向かって平坦な形状となっている。この支持体(15)の凹部は、液体で満たされた後、密閉液体区画(14)を形成するようにホイル(13)で密閉される。ホイル(13)は支持体(15)を超えて上の方へ延びており、その結果、手または機器デバイスによってそれを上の方へ引き剥がすことで液体区画(14)を開放することができるようになっている。支持体(15)には計量素子(16)も一体化されている。この計量素子(16)はこの場合、一体化された計量毛細管の形態であり、サンプル液体の所定容量を採取することができる。
【0049】
図2は、第1の液体区画(5)および第2の流体区画(6)を有している本発明によるサンプル採取・計量デバイス(1)の一実施形態を示す図である。サンプル採取・計量デバイス(1)は支持体(7)で構成されており、この支持体上には液体区画(5)および(6)が形成されている。それぞれは、支持体(7)の凹部の形態であり、所定容量の液体を収容している。これらの支持体(7)の凹部は、それぞれの液体で満たされた後に共通のホイル(4)で密封され、その結果、2つの密閉された別個の液体区画(5)および(6)が形成される。ホイル(4)は支持体を超えて上の方へ延びており、その結果、手または機器デバイスによってホイル(4)を上の方へ引き剥がすことで液体区画(5)および(6)を開放することができるようになっている。支持体(7)には計量素子(8)がさらに一体化されており、この計量素子(8)はこの場合、一体化された計量毛細管の形態であり、サンプル液体の所定容量を採取することができる。
【0050】
図3は、2つの液体区画(26)および(27)を有している本発明によるサンプル採取・計量デバイスの別の実施形態を示す図である。この実施形態では、サンプル採取・計量デバイス(23)は第1の支持体部分(21)および第2の支持体部分(22)で構成されており、これらは少なくとも共通のホイル(29)によってひとつにつながっている。2つの支持体部分(21)および(22)は別個の部品として設計することができるか、あるいはホイル(29)なしでもひとつにつながることができるようになっている。つまり2つの支持体部分(21)および(22)は、例えば、その2つの部分が最初は細い棒によってひとつにつながっている共通の射出成型部品として製造することができる。支持体部分の1つ(図の例では、第2の支持体部分(22))は計量素子(28)を有している。これは第2の支持体部分(22)に計量毛細管の形態で一体化されており、所定容量のサンプル液体を採取することができる。場合によっては支持体部分のもう一方(図の例では、第1の支持体部分(21))は収納部(25)を有することができ、組み立てられたサンプル採取・計量デバイス(23)においては、この中に計量素子(28)が収容される。第1の支持体部分(21)は第1の液体区画(26)を有しており、第2の支持体部分(22)は第2の液体区画(27)を有しており、それぞれは凹部の形態である。この例では、凹部には、凹部に収容されている液体が完全に排出されることを確実なものとするため、平らに外へ延びる排出舌部が設けられている。これらの凹部は、それぞれの液体で満たされた後に共通のホイル(29)によって密封され、その結果それぞれの支持体部分(21)および(22)には密閉された別個の液体区画(26)および(27)がそれぞれ形成される。図示する例では、支持体部分(21)および(22)は、2つの液体区画(26)および(27)の排出舌部が互いに向かい合って配置されるように、また支持体部分(22)に一体化されている計量素子(28)が支持体部分(21)の収納部(25)の中に係合するように配置される。この手段により、2つの支持体部分(21)および(22)を共通ホイル(29)の面上でひとつに合わせることでサンプル採取・計量デバイス(23)をつくることができる。そしてそこから、計量素子(28)が下の方へ延びている。サンプル採取・計量デバイス(23)は、図示されていないさらなる取り付け素子、例えば支持体部分の一方または両方にある戻り止め素子によって、あるいは接着剤で固定することによって、この状態に固定しておくことができる。液体区画(26)または(27)は、例えば、この状態で、2つの支持体部分(21)および(22)を互いに対して移動させ、ホイル(29)を少なくとも液体区画の排出舌部の部分で引き剥がすことによって開放することができ、そこに収容されている液体をリリースすることができる。
【0051】
図4は本発明による分析試験システム(12)の一実施形態を示す図であり、このシステムは、図1によるサンプル採取・計量デバイス(10)および反応キュベット(11)を含んでいる。図示する例では、反応キュベット(11)には、アナライトに特性的な測定量を光学的な方法により検出するための、透明測定窓の形態にある検出デバイス(18)が設けられている。反応キュベットの底部分には、さらに、第1のドライケミストリー試薬(19)を収容しており、そしてさらに上部の方にある部分には第2のドライケミストリー試薬(17)を収容している。これらの試薬は、反応キュベット(11)の壁上のこのような部位に、当業者には知られている各種の方法、例えば試薬が含浸されたマトリックスまたはフリース部材を付けることにより、あるいは反応キュベットの製造過程において試薬溶液を塗布し、その後それを乾燥させることにより付与することができる。血液サンプルなどの試験をするサンプル液体がサンプル採取・計量デバイス(10)の計量素子(16)の中に採取された後、反応キュベット(11)およびサンプル採取・計量デバイス(10)をひとつに合わせて分析試験システム(12)を形成させることでアナライト測定を行うことができる。この目的のために、反応キュベット(11)およびサンプル採取・計量デバイス(10)は、場合により例えば溝、スロット、ラッチ接続などの特別なガイドまたは取り付け素子を有することができ、これは2つの部分の組み立てを容易にし、および/または2つの部分を互いに対して一定の空間位置に固定するものであり、これらはユーザーの使い勝手ならびに操作の信頼性を高めるものである。サンプル液体も、液体区画(14)中に収容されている液体も反応キュベット(11)の中に導入されていないこの状態で、最初の光学的な測定を、検出デバイス(18)の領域で例えばブランク値を決定するために行うことができる。液体区画(14)中に収容されている液体(例えば緩衝液である)は、ホイル(13)を上方へ引き剥がすことでリリースされ、反応キュベット(11)の中に流れる。反応キュベット中では、一方、この液体が計量素子(16)中に収容されているサンプル液体と接触し、そしてこのサンプル液体と混合する。この結果このサンプル液体は、反応キュベット(11)中でアナライト測定のために調製され且つ希釈される。他方では、第1のドライケミストリー試薬(19)をこのリリースされた液体に溶解させて、全体としてはサンプル液体と、先に液体区画(14)中に収容されていた液体と、第1のドライケミストリー試薬(19)の物質とからなる反応混合物を形成することができる。ホイルは、この例では、手動または好ましくは機械式デバイス(これは上方へ突き出ているホイルの末端部を掴みそして適切な制御により所定の距離だけ上方へそれを移動させる)によって取り外すことができるようになっている。この反応混合物中では、多ステップ式アナライト測定の1つまたはさらには複数の検出反応が進行可能である。反応混合物は、好ましくは例えばキュベットの中にあるマグネチックスターラーバーによってさらに混合される。この時点では反応混合物はまだ第2のドライケミストリー試薬(17)と接触すべきでないので、この第2のドライケミストリー試薬(17)の反応キュベット(11)中での位置は、反応混合物の液面を考慮し、またスターラーの動きも考慮に入れて、緩やかに撹拌される際にも第2のドライケミストリー試薬の位置の下に液面が維持されるように選択するべきである。この時点で、二回目の光学的な測定を、例えば検出デバイス(18)の領域で、例えば参照値を決定するために行うことができる。続くステップで、反応混合物が第2のドライケミストリー試薬(19)と接触するように、例えば撹拌速度を増すことによって液体表面の外周部分を上方へ移動させることができる。この結果、第2のドライケミストリー試薬が反応混合物に加えられる。これにより、第2のドライケミストリー試薬(19)中に含有されている物質を必要とする多ステップ式アナライト測定の1つまたは複数のさらなる検出反応を進行させることができる。この時点で、三回目の光学的な測定を、例えば検出デバイス(18)の領域で、例えば測定値を決定するために行うことができる。この光学的測定の測定値からアナライトについての特性測定量を決定することができ、これを基にして、関与する液体の容量などの他のパラメーターが分かっている場合は、サンプル液体中のアナライト濃度を決定することができる。
【0052】
図5は、本発明による分析試験システム(3)の一実施形態を示す図である。このシステムは、図2によるサンプル採取・計量デバイス(1)および反応キュベット(2)を有している。図示する例では、反応キュベット(2)には、光学的な方法によってアナライトに特性的な測定量を検出するための、透明な測定窓の形態にある検出デバイス(9)が設けられている。
【0053】
血液サンプルなどの試験をするサンプル液体がサンプル採取・計量デバイス(1)の計量素子(8)の中に取り込まれた後、反応キュベット(2)およびサンプル採取・計量デバイス(1)を、アナライト測定を行うために、ひとつに合わせて分析試験システム(3)を形成することができる。サンプル液体も、液体区画(6)中に収容されている液体も反応キュベット(2)の中に導入されていないこの状態で、一回目の光学的測定を、検出デバイス(9)の領域で例えばブランク値を決定するために行うことができる。第2の液体区画(6)中に収容されている液体(例えば第1の試薬溶液)はホイル(4)を上方へ所定距離だけ引き剥がすことでリリースされ、反応キュベット(2)の中に流れる。反応キュベットの中では、この試薬溶液は、次に、一方では、計量素子(8)中に収容されているサンプル液体と接触し、それによってサンプル液体が調製され、希釈され、そして第1の試薬溶液中に含有されている物質と混合されて、反応キュベットの中でアナライト測定のための反応混合物が形成される。多ステップ式アナライト測定の1つまたはより多数の検出反応もこの反応混合物中で進行可能となる。反応混合物は好ましくは、例えばキュベット中にあるマグネチックスターラーの棒によってさらに混合される。これによって、反応混合物の各成分の良好な混合が確実なものとなる。この時点で、二回目の光学的測定を、例えば検出デバイス(9)の領域で、例えば参照値を決定するために行うことができる。続くステップで、ホイル(4)をさらに所定距離だけ取り外して、第1の液体区画中に収容されている液体(例えば反応キュベット(2)中に流れる第2の試薬溶液)をリリースすることができる。これによって、そこに含まれている試薬が反応混合物に加えられる。その結果、第2の試薬溶液中に含有されているこのような物質を必要とする多ステップ式アナライト測定の1つまたはより多数のさらなる検出反応を起こすことができる。この時点で、三回目の光学的測定を、例えば検出デバイス(9)の領域で、例えば測定値を決定するために行うことができる。この光学的測定の測定値からアナライトに特性的な測定量を決定することができ、これを基にして、関与する液体の容量などの他のパラメーターが分かっている場合は、サンプル液体中のアナライト濃度を決定することができる。この実施形態では、ホイル(4)は、好ましくは個々の液体区画の制御された順次的な開放が可能となるように、底部から上側部分の方に折りたたまれて存在し得る。図4に関連して述べたその他の実施形態も、適宜、図5による分析試験システムに適用される。
【0054】
図6は、本発明による分析試験システムの別の実施形態を示す図である。このシステムは、図3によるサンプル採取・計量デバイス(23)および反応キュベット(20)を有している。図示する例では、反応キュベット(20)には、光学的な方法によってアナライトに特性的な測定量を検出するための透明な検出窓の形態にある検出デバイス(24)が設けられている。反応キュベット(20)は、図示するように、場合により、反応キュベット(20)とサンプル採取・計量デバイス(23)の組み立てを簡単にする、および/または各部分の互いに対しての所定方向への移動を指定する、例えば溝やスロットのような特別なガイドまたは取り付け素子を有し得る。これによって、使いやすさと操作信頼性を高めることができる。
【0055】
図7は、アナライト測定を行う過程における様々なステップにある本発明の図6による分析試験システムを示す図である。
【0056】
計量素子(28)が下方へ延びているこのサンプル採取・計量デバイスは、2つの支持体部分(21)および(22)を共通のホイルの面上でひとつにすることにより作製することができる。2つの支持体部分(21)および(22)は共通のホイルによってフレキシブルにひとつに連結されているので、このサンプル採取・計量デバイスは、その結果、反応キュベットの中に挿入してアナライト測定を行い得る形態にすることができる。このサンプル採取・計量デバイスは、図では示されていないさらなる取り付け素子、例えば2つの支持体部分の一方または両方にある戻り止め部材や、あるいは解除可能な接着接続による取り付け部によってこの状態に固定しておくことができる。液体区画(26)または(27)は、例えば2つの支持体部分(21)および(22)を互いに対して変位させ、それによって、ホイルを少なくとも液体区画の排出舌部の部分で引き剥がすことによって開放することができ、そこに収容されている液体をリリースすることができる。
【0057】
アナライト測定を行うには、試験をするサンプル(例えば血液サンプル)をサンプル採取・計量デバイスの計量素子(28)中に取り込む。その後、反応キュベットとサンプル採取・計量デバイスとを上で述べたように一緒にして分析試験システム(30)を形成させる。サンプル液体も液体区画(26)および(27)中に収容されている液体も反応キュベット中に導入されていないこの状態で、一回目の光学的測定を検出デバイスの領域で例えばブランク値を決定するために行うことができる。第2の支持体部分(22)を押し下げることで(この間、第1の支持体部分(21)はその元の位置に保持される)、第2の液体区画(27)中に収容されている液体(例えば第1の試薬溶液)がリリースされ、反応キュベットの中に流れる。第2の液体区画(27)は、第2の支持体部分(22)を下方へ移動させ、第1の支持体部分(21)に取り付けられている共通のホイルを第2の液体区画(27)の排出舌部の部分で取り外すことで開放される。そこに収容されている第1の試薬溶液が計量素子(28)中に収容されているサンプル液体と接触し、これによってこの液体が調製され、希釈され、第1の試薬溶液中に含有されている物質と混合されて、反応キュベットの中でのアナライト測定のための反応混合物が形成される。この反応混合物中で、多ステップ式アナライト測定の1つまたはより多数の検出反応が進行可能となる。反応混合物は、好ましくは、例えばキュベットの中にあるマグネチックスターラーの棒によってさらに混合され、これによって反応混合物中の各成分の良好な混合が確実に行われる。この時点で、二回目の光学的測定を、検出デバイスの領域で、例えば参照値を決定するために行うことができる。続くステップで、第1の支持体部分(21)を押し下げることにより(この間、第2の支持体部分(22)はその元の位置に保持されるかまたはこの位置に戻される)、第1の液体区画中に収容されている液体(例えば第2の試薬溶液)をリリースすることができる。この液体は反応キュベットの中に流れ、これによってその中に含まれている試薬が反応混合物に加えられる。その結果、第2の試薬溶液中に含有されているこれらの物質を必要とする、多ステップ式アナライト測定の1つまたはより多数の検出反応を起こさせることができる。この時点で、三回目の光学的測定を、例えば検出デバイスの領域で、例えば測定値を決定するために行うことができる。この光学的測定の測定値からアナライトに特性的な測定量を決定することができ、これを基にして、関与する液体の容量などの他のパラメーターが分かっている場合は、サンプル液体中のアナライト濃度を決定することができる。2つの支持体部分(21)および(22)の相対的な移動は、好ましくは、適切に制御されている機器デバイスによって行うことができる。この目的のために、支持体部分の上側部分は、例えば図7に示されているように特別な設計にすることができ、例えば溝を有し、この中に機器デバイスが係合して2つの支持体部分の一方または両方を持ち上げるまたは押し下げることで、支持体部分の互いに対しての適切な変位移動を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】1個の液体区画を有する本発明に係るサンプル採取・計量デバイスの一実施形態を示す図である。
【図2】2個の液体区画を有する本発明に係るサンプル採取・計量デバイスの一実施形態を示す図である。
【図3】2個の液体区画を有する本発明に係るサンプル採取・計量デバイスのさらなる実施形態を示す図である。
【図4】1個の液体区画と1個の反応キュベットとを有するサンプル採取・計量デバイスを含む本発明に係る分析試験システムの一実施形態を示す図である。
【図5】2個の液体区画と1個の反応キュベットとを有するサンプル採取・計量デバイスを含む本発明に係る分析試験システムの一実施形態を示す図である。
【図6】2個の液体区画と1個の反応キュベットとを有するサンプル採取・計量デバイスを含む本発明に係る分析試験システムのさらなる実施形態を示す図である。
【図7】アナライト測定を行う際の、様々な工程ステップにある図6に記載の本発明の分析試験システムを示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 サンプル採取・計量デバイス
2 反応キュベット
3 分析試験システム
4 ホイル
5 第1の液体区画
6 第2の液体区画
7 支持体
8 計量素子
9 検出デバイス
10 サンプル採取・計量デバイス
11 反応キュベット
12 分析試験システム
13 ホイル
14 液体区画
15 支持体
16 計量素子
17 第2のドライケミストリー試薬
18 検出デバイス
19 第1のドライケミストリー試薬
20 反応キュベット
21 第1の支持体部分
22 第2の支持体部分
23 サンプル採取・計量デバイス
24 検出デバイス
25 収納部
26 第1の液体区画
27 第2の液体区画
28 計量素子
29 ホイル
30 分析試験システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定容量のサンプル液体を採取するための計量素子と、所定容量の液体が収容されている少なくとも1つの密閉液体区画を含む支持体と、を有するサンプル採取・計量デバイスであって、
該計量素子が支持体と一体化した構成部品であり、支持体上の該液体区画が開放可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記計量素子が、毛細管または流路の形態に設計されていることを特徴とする請求項1に記載のサンプル採取・計量デバイス。
【請求項3】
前記液体区画中に収容されている少なくとも1種の液体が、緩衝溶液、希釈溶液または試薬溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載のサンプル採取・計量デバイス。
【請求項4】
前記液体区画が、引き剥がしまたは穴開け可能な液密且つ気密のホイルによって密閉されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサンプル採取・計量デバイス。
【請求項5】
前記支持体上に互いに離間していくつかの液体区画が存在し、該区画が特に同時または順次に開放可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサンプル採取・計量デバイス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のサンプル採取・計量デバイス、および反応キュベットを含む、サンプル液体中のアナライトを測定するための分析試験システム。
【請求項7】
前記分析試験システムが、さらに混合デバイスを含むことを特徴とする請求項6に記載の分析試験システム。
【請求項8】
前記反応キュベットが、反応キュベット中のアナライトの測定を可能とするデバイスを含むことを特徴とする請求項6または7に記載の分析試験システム。
【請求項9】
前記アナライトを測定するのに必要とされる特定の試薬液体が、サンプル採取・計量デバイスの支持体上の1つまたは複数の液体区画中に収容されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の分析試験システム。
【請求項10】
前記アナライトを測定するのに必要とされる特定の試薬が、反応キュベット中に特にドライケミストリーの形態で収容されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の分析試験システム。
【請求項11】
特に血液サンプル中のヘモグロビンAlcを測定するため、順次的な検出反応によりサンプル液体中のアナライトを測定する、請求項6〜10のいずれかに記載の分析試験システムの使用。
【請求項12】
請求項6〜10のいずれかに記載の分析試験システムを用いてサンプル液体中のアナライトを測定するための方法であって、
a) 前記計量素子中に所定容量のサンプル液体が残るように、分析するサンプル液体に計量素子を接触させるステップ、
b) サンプル採取・計量デバイスを反応キュベット中に導入するステップ、
c) 前記支持体上の少なくとも1つの液体区画を開放して、この液体区画中に収容されている液体が反応キュベット中に流れ且つそこで前記計量素子中に含まれているサンプル液体と接触するようにし、サンプル液体を計量素子から反応キュベット中へ移送して反応混合物を形成するステップ、
d) 場合によりアナライトの測定に必要な追加の試薬を加えるステップ、および/または反応混合物を混合するステップ、
e) 特に光学的な検出方法により、アナライトについて測定される特性量に基づきアナライトを測定するステップ、
を含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−47170(P2007−47170A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−216736(P2006−216736)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】