説明

一体成形ヒンジを備えた、SFFトランシーバのモノリシックな取っ手付きラッチ解除機構

【課題】組み立てコストを低減した取っ手付きラッチ解除機構を提供すること。
【解決手段】モジュールをケージに挿入するためのモノリシックな取っ手付きラッチ解除機構を提供する。この取っ手付きラッチ解除機構は、一体成形ヒンジによって接続された取っ手とラッチ解除クリップを含むモノリシックな単一部品である。一体成形ヒンジ、取っ手、及び、ラッチ解除クリップは、単一のプラスチック部品として射出成形される。取っ手は、ラッチ位置において取っ手をモジュールに固定するためのカンチレバー・フックを有する。ラッチ解除クリップは、取っ手付きラッチ解除機構をモジュールに固定するための2本のスプリングアームを備えたスプリング機構と、ケージのラッチ・タブからモジュールの突起部を外すためのくさび部分を先端に備えたラッチ解除フォーク手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体成形ヒンジを備えた、SFF(Small Form Factor規格)トランシーバのモノリシックな取っ手付きラッチ解除機構に関する。
【背景技術】
【0002】
SFP(Small Form Factor Pluggable規格)に準拠する光ファイバトランシーバや銅線トランシーバは、トランシーバの取り外しを簡単にするための取っ手付きラッチ解除機構(デラッチ機構又は引っ張り金具機構とも呼ばれる)を備えていることが多い。従来の取っ手付きラッチ解除機構は、金属ワイヤの取っ手と、射出成形された複数のプラスチック製取っ手付きラッチ解除機構とを有する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態は、モジュールをケージに差し込むためのモノリシックな取っ手付きラッチ解除機構である。この取っ手付きラッチ解除機構は、一体成形ヒンジにより接続された取っ手とラッチ解除クリップを含むモノリシックな単一部品である。一体成形ヒンジ、取っ手、及びラッチ解除クリップは、射出成形された単一のプラスチック部品からなる。取っ手は、ラッチ位置において取っ手をモジュールに固定するためのカンチレバー・フックを有する。ラッチ解除クリップは、取っ手付きラッチ解除機構をモジュールに固定するための2つのスプリングアームを有するスプリング機構と、ケージのラッチ・タグからモジュールの突起部を外すための、くさび部分を先端部に備えたラッチ解除フォーク手段とを有する。
【0004】
異なる図面に使用される同じ参照符号は、それらが同様の要素又は同一の要素であることを意味する。
【0005】
図1は、ラッチ構成を成す、差込みモジュール210、ケージ120、及び取っ手付きラッチ解除機構230を含むシステムの一例を示す切り取り斜視図である。図1では、モジュール210と取っ手付きラッチ解除機構230を見やすくするために、ケージ120の半分が切り取られ、取っ手付きラッチ解除機構230を見やすくするために、モジュール210の一部も切り取られている。図を分かり易くするために、モジュール210における光ファイバ及びトランシーバに関連する標準的機能は、図面では単純化されている。
【0006】
ケージ120には、標準的なケージを使用することができ、一般にSFF(スモール・フォーム・ファクタ)規格のINF−8074i「SFPトランシーバ」ドキュメントのようなMSA(マルチ・ソース・アグリーメント)に準拠したものが使用される。具体的には、ケージ120は、穴124を有するラッチ・タブ122(半分だけ描かれている)を備え、穴124は、MSA関連要件に従って配置された突起部214を受け入れることができる。図1においてケージ120は独立したものとして描かれているが、ケージ120は通常、ケージの高密度アレイを成すように配置された実質的に同一の複数のケージのうちの1つであることが望ましい。そのようなケージは、当該技術分野で既知のものであり、Amp/Tyco International、Pico Inc.や、Molex Inc.のようなサプライヤから入手することができる。モジュール210に適した他の既知の適当なケージ構造も、複数(例えば4つ)の隣接したモジュールの行を受け入れることができる。
【0007】
モジュール210はMSA関連規格に準拠する寸法を有し、また、取っ手付きラッチ解除機構230の一部を受け入れることが可能な切り欠き部216及びポケット(収容部)212を更に有する。一実施形態において、モジュール210は亜鉛ZA8のような金属から形成され、金属を鋳造することにより、取っ手付きラッチ解除機構230及び光ファイバ、並びにモジュール210に含まれる電気部品(図示せず)に必要とされる微細な特徴を形成することができる。代替実施形態において、モジュール210は、熱可塑性の高い材料を使用して射出成形してもよく、例えば、General Electricから入手できるULTEM系のプラスチック材料のうちの1つを使用してもよい。
【0008】
図1に示すように、取っ手付きラッチ解除機構230は、一体構造240(以下「ラッチ解除クリップ240」)及び取っ手250を含む。ラッチ解除クリップ240は成形により作成してもよいし機械加工により作成してもよく、突出部242,244、スプリングアーム246、及び、くさび部分(ウェッジ)を有する。取っ手250は、ラッチ解除クリップ240の穴を通して摩擦によりラッチ解除クリップ240に装着され、図1に示すように取っ手250を押し下げことにより、取っ手250を邪魔にならない位置に移動させることができ、図2に示すように取っ手250を外側へ向けて押し上げることにより、モジュール210を取り外すときに取っ手付きラッチ解除機構230を引っ張り出すのが容易になる。また、突出部242,244は、取っ手250が下がっているときに取っ手付きラッチ解除機構230(普通なら握りづらい)を引っ張り出すための握りとしての役目をする。取っ手250の中心部を通して、LC(Lucent Connector)ファイバコネクタ(図示せず)をモジュール210に取り付けることができる。
【0009】
スプリングアーム246の端部は、モジュール210の切り欠き部216(図1及び図2には一個しか描かれていない)の中にある。スプリングアーム246は取っ手付きラッチ解除機構230に対する引っ張り力に応じて収縮するため、モジュール210に対する取っ手付きラッチ解除機構230の相対的移動は限られた範囲に制限される。
【0010】
このラッチ構成では、スプリングアーム246が未収縮の状態、又は幾らかの負荷がスプリングに加わっている状態にあり、くさび部分248はモジュール210のポケット212の中にある。上記のくさび部分248はラッチ・タブ122である。ラッチ・タブ122には穴124が形成され、モジュール210がケージ120にラッチされているときは、その穴124の中に突起部214が位置する。
【0011】
ケージ120からモジュール210を取り外すために、オペレータは、取っ手250、又は、突出部242及び/又は244を利用して、取っ手付きラッチ解除機構230を引き出す。まず、スプリングアーム246を曲げ、すなわち収縮させ、くさび部分248をスライドさせてポケット212から出す。くさび部分248が持ち上がり、ポケット212からくさび部分248が出るのに従って、くさび部分248はラッチ・タブ122を押し上げる。
【0012】
図2は、スプリングアーム246がその収縮限界に達し、くさび部分248がラッチ・タブ122を突起部214の上に持ち上げた状態を示している。図1及び図2の例において、スプリングアーム246の角度は、スプリングアーム246がそれぞれの基部を中心として収縮され、スプリングアーム246がラッチ解除クリップ240を引っ張り、スプリングアーム246の端部がモジュール210の切り欠き部216の中に更に延びるような角度になっている。従って、もっと強く引っ張れば、スプリングアーム246は切り欠き部に係合する。図2Bに示す例では、スプリングアーム246が取っ手付きラッチ解除機構230の固定部分247(1つだけ描かれている)に接触しているため、スプリングアーム246がそれ以上収縮することはない。従って、モジュール210に対して働く引っ張り力により、モジュール210はケージ120の外にスライドされる。
【0013】
図3及び図4は、未収縮状態におけるラッチ解除クリップ240の正面図及び側面図をそれぞれ示している。上記のようにオペレータがラッチ解除クリップ240を引っ張ると、モジュール210の切り欠き部にあるスプリングアーム246は、表面247に達するまで収縮し、それによってスプリングアーム246はそれ以上収縮できなくなり、その結果、その引っ張り力がモジュール210に伝達される。図示のように、2つのスプリングアーム246は同じ角度で交差しているので、均一な力がモジュール210に加わる。
【0014】
一実施形態において、ラッチ解除クリップ240は、成形により必要な形状を作り込むことができ、また、モジュール210に対して指定された温度範囲の温度に耐えることが可能なポリマー材料から形成される。適当な材料の1つは、デュポン社から入手できるZytel FR15 NC010である。ただし、他にも種々の材料を使用することができる。例えば、ラッチ解除クリップ240の材料は、3000〜5000MPaの範囲の曲げ弾性率、及び、60MPaの最小引っ張り強度を有し、少なくとも8.5%の引き延ばしに耐え、少なくとも摂氏70度の熱変形温度を有し、速度UL−V0の燃焼特性を有するものでなければならない。
【0015】
図5は、モジュール210の取っ手付きラッチ解除機構230に関する部分を示す平面図である。図示のように、モジュール210は、ラッチ解除クリップ240の動きを誘導するガイドレールを両側に備えたチャネル430を有する。チャネル430及びそれに関連するガイドレールの寸法は従来のモジュールにおける対応する構造と同じ寸法であり、モジュール210は、本発明によるプル・デラッチ機構にも、一般的なプッシュ・デラッチ機構にも使用することが可能である。ただし、モジュール210はチャネル430に沿って切り欠き部216を有する。切り欠き部216は互いにずらして配置され、ラッチ解除クリップ240(図3)のスプリングアーム246を受け入れる。
【0016】
図5のモジュール210と図3のラッチ解除クリップ240を組み合わせると、図1のアセンブリが構成される。スプリングアーム246をモジュール210の上に持ち上げながらラッチ解除クリップ240をスライドさせ、チャネル430の中に入れることができる。ラッチ解除クリップ240がラッチ位置に達すると、スプリングアーム246は切り欠き部216の中に落ちる。
【0017】
また、モジュール210はポケット212を更に有し、ラッチ位置にあるときは、くさび部分248が対応するポケット212に入っている。例えばポケット212は、くさび部分248の底面の角度(例えば30度)以下の角度の斜面を有し、ラッチ・タブ122を持ち上げるデラッチ操作の際に、くさび部分248がそのかかと部分に沿ってスライドするように構成される。
【0018】
図1の説明の際に述べたように、取っ手付きラッチ解除機構230は取っ手250及び突出部242,244を有し、それによってオペレータは、取っ手付きラッチ解除機構を引っ張り、モジュール210を取り外すことができる。取っ手250は摩擦によりラッチ解除クリップ240に装着されるため、取っ手250はオペレータが望む任意の位置(例えば上や下)に留めておくことができる。代替実施形態において、デラッチ機構は種々の他のタイプの取っ手を有する場合がまる。例えば、モジュール210を取り外すときに取っ手250しか使用しないシステムでは、突出部242,244を省略してもよい。
【0019】
図6は、本発明の一実施形態における、ケージ120からモジュール210を取り外すのに使用されるモノリシックな取っ手付きラッチ解除機構630を示す図である。一実施形態において、取っ手付きラッチ解除機構630は、ナイロンやポリプロピレンのような材料を使用して、プラスチック射出成形によって形成される。
【0020】
取っ手付きラッチ解除機構630は、ラッチ解除クリップ640と取っ手650の間に一体成形ヒンジ632を有する。一体成形ヒンジ632はプラスチックの薄い部分であり、それにより、ラッチ位置と非ラッチ位置の間で、取っ手650を旋回させることができる。
【0021】
ラッチ解除クリップ640はラッチ解除クリップ240(図3及び図4)と同様である。一実施形態において、ラッチ解除クリップ640は、スプリングアーム246を備えたスプリング機構と、先端部にくさび部分248を備えたラッチ解除フォーク手段とを有する。
【0022】
取っ手650は取っ手250(図1及び図2)と同様である。一実施形態において、取っ手650は、取っ手650をラッチ位置に維持するためのカンチレバー・フック652を有する。図7に示すように、ラッチ位置において、取っ手650は一体成形ヒンジ632の位置で上向きに旋回する。そして、カンチレバー・フック652はモジュール210の切り欠き部654(一方だけ図示されている)に係合し、取っ手650がラッチ位置に固定される。代替実施形態において、取っ手付きラッチ解除機構630は、ラッチ位置(例えば、ラッチ解除クリップ640に対して垂直な位置)にある取っ手650と共に形成され、その結果、取っ手650はモジュール210に対して自然に静止しようとする。
【0023】
取っ手付きラッチ解除機構630は、金属ワイヤの取っ手と、射出成形された複数のプラスチック製取っ手付きラッチ解除機構とを含む従来の取っ手付きラッチ解除機構に比べて、多数の利点を有する。モノリシック構成によれば、部品数と組み立て回数を最小限に抑えることにより、取っ手付きラッチ解除機構630のコストを低減することができる。また、全てのプラスチック構成において、取っ手付きラッチ解除機構630によれば、剥き出しの金属製の取っ手が接触静電気の影響を受けたときに静電気(ESD)エネルギーがモジュールに伝達される問題もなくなる。
【0024】
開示した実施形態の特徴の他の変更や組み合わせも、本発明の範囲内である。特許請求の範囲は、種々の実施形態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】取っ手付きラッチ解除機構の例を示す図である。
【図2】取っ手付きラッチ解除機構の例を示す図である。
【図3】ラッチ解除クリップの一例を示す図である。
【図4】ラッチ解除クリップの一例を示す図である。
【図5】図1及び図2のベイルデラッチ機構を有するモジュールの例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態によるデラッチ機構を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態における、モジュールに挿入された図6の取っ手付きラッチ解除機構を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケージに挿入されたモジュールのためのモノリシックな取っ手付きラッチ解除機構であって、
取っ手と、
ラッチ解除クリップと、
前記取っ手と前記ラッチ解除クリップを接続する一体成形ヒンジと
を含み、前記取っ手、前記ラッチ解除クリップ、及び、前記一体成形ヒンジが、モノリシックな単一部品からなる、取っ手付きラッチ解除機構。
【請求項2】
前記取っ手、前記ラッチ解除クリップ、及び、前記一体成形ヒンジは、射出成形された単一のプラスチック部品からなる、請求項1に記載の取っ手付きラッチ解除機構。
【請求項3】
前記一体成形ヒンジは、前記取っ手と前記ラッチ解除クリップの間のプラスチックの薄い部分からなる、請求項2に記載の取っ手付きラッチ解除機構。
【請求項4】
前記取っ手は、ラッチ位置において前記ラッチ解除クリップに対して垂直に形成される、請求項2に記載の取っ手付きラッチ解除機構。
【請求項5】
前記取っ手は、ラッチ位置において前記取っ手を固定するためのカンチレバー・フックを含み、該カンチレバー・フックは前記モジュールの切り欠き部に係合するように構成される、請求項1に記載の取っ手付きラッチ解除機構。
【請求項6】
前記ラッチ解除クリップは、
前記ラッチ解除クリップを前記モジュールに固定するための2本のスプリングアームを有するスプリング機構を有し、該スプリングアームが前記モジュールの切り欠き部に係合することにより、前記ラッチ解除クリップを前記モジュールに対して固定するまでに前記ラッチ解除クリップが移動しなければならない距離が短縮され、
前記ケージのラッチ・タブから前記モジュールの突起部を外すためのくさび部分を先端に備えたラッチ解除フォーク手段を更に有し、該くさび部分が前記モジュールの傾斜付きポケットにぴったりと収まり、前記ケージから前記ラッチ解除クリップを引っ張り出すときに前記くさび部分が持ち上がって前記ラッチ・タブを押し上げ、前記突起部を外すように構成される、請求項1に記載の取っ手付きラッチ解除機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−316999(P2006−316999A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131014(P2006−131014)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】