説明

一方向間欠送りユニット

【課題】スプロケット、一方向クラッチ型トルクリミッタ、ラチェット送り機構を組み合わせた一方向間欠送りユニットにおいては、トルクリミッタ空転状態からロック状態に移行する際、スプロケットが若干逆回転するバックラッシュが発生するが、そのバックラッシュ量を減少させて送り精度を向上させることである。
【解決手段】固定軸部材5の内径面にトルクリミッタ11の複数のポケット6が形成され、その固定軸部材5の内径面にスプロケット軸部4が嵌合され、特定の一対のポケット6、6間に一対のラジアル受け部17、17が設けられた構成によって、各ポケット6内に収納された付勢ばね9のばね力のラジアル分力を前記ラジアル受け部17、17に作用させ、スプロケット3に対する制動トルクを発生させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インデックステーブル等の部品供給装置等における送りユニットとして使用される一方向間欠送りユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の一方向間欠送りユニットとして、従来から、次のようなものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
即ち、図10から図12に示したように、フレーム1に固定された固定軸部材5の内径面にスプロケット3のスプロケット軸部4が回転自在に嵌合される。スプロケット軸部4はフレーム1に固定された支持軸2によって回転自在に支持される。前記固定軸部材5の内径面に周方向に間隔をおいてポケット6が設けられ、各ポケット6の底面に周方向に傾斜したカム面7が形成されるとともに該カム面7とスプロケット軸部4とにより一定のクサビ角θが形成される。前記ポケット6に転動体8と該転動体8をクサビ角θの狭小方向に付勢する付勢ばね9が収納される。
【0004】
上記の構成により、前記スプロケット3の回転方向に応じて転動体8がクサビ角θの狭小方向に移動してロックする状態と、反対にクサビ角θの拡大方向に移動してロックが解除され空転状態となる一方向クラッチ式のトルクリミッタ11が構成される。
【0005】
また、前記スプロケット3にこれと一体に、かつ同軸状態にラチェット12が設けられ、前記支持軸2に支持された揺動部材13に前記ラチェット12に係脱する送り爪14が設けられる。
【0006】
上記構成の一方向間欠送りユニットは、揺動部材13が矢印aの方向に揺動された際に、送り爪14によってラチェット12を回転させる。このとき、トルクリミッタ11は、空転状態となり一定の空転トルクを発生させる。ラチェット12と一体のスプロケット3の回転によりフレーム1のガイド溝15に供給された搬送テープ16に1ピッチの送りが与えられる。次に、揺動部材13が前記と反対の矢印bの方向に揺動されると、送り爪14が元の位置に戻るが、このときトルクリミッタ11は、ロック状態となりスプロケット3の逆回転を防止する。
【特許文献1】特開2005−98490号公報(図5から図7及びこれに対応する説明、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の一方向間欠送りユニットにおいて、揺動部材13が矢印b方向に戻る際、トルクリミッタ11がロック状態になるまでの時間遅れ、即ちバックラッシュが発生し、スプロケット3に対する揺動部材13の揺動トルクによってスプロケット3が若干逆転することがある(この逆転量をバックラッシュ量と称する。)。これによりスプロケット3の静止位置が変動するため位置決め精度が悪化し、送り精度低下の原因となる。
【0008】
そこで、この発明は、トルクリミッタ11のバックラッシュを解消してバックラッシュ量を減少せしめ、スプロケット3の位置決め精度を高めて送り精度の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の基本的な構造は前述の従来例と変わらない。即ち、図1に示したように、フレーム1に固定された固定軸部材5にスプロケット3が回転自在に嵌合され、前記固定軸部材5の嵌合面に周方向に間隔をおいてポケット6が設けられ、各ポケット6の底面に周方向に傾斜したカム面7が形成されるとともに該カム面7と他方の嵌合面とにより一定のクサビ角θが形成される。前記ポケット6に転動体8と該転動体8をクサビ角θの狭小方向に付勢する付勢ばね9が収納される。上記のスプロケット3と固定軸部材5の相対回転の方向によって前記転動体8がクサビ角θの狭小方向に移動してロックする状態と、反対にクサビ角θの拡大方向に移動してロックが解除された空転状態をとる一方向クラッチ式のトルクリミッタ11が構成される。また、前記スプロケット3にこれと一体に、かつ同軸状態に外歯形式のラチェット12が設けられ、前記支持軸2に支持された揺動部材13に前記ラチェット12に係脱する送り爪14が設けられる。
【0010】
以上の構成は従来例と同様であるが、この発明においては、前記ポケット6のうち特定の隣接した2箇所のポケット6間の柱部10(図3、図4参照)が他のポケット6間の間隔より大きく形成され、その間隔部分に前記スプロケット3の嵌合面に接触する一対のラジアル受け部17、17が構成される。該ラジアル受け部17、17の位置は前記特定2箇所のポケット6間の中間と前記固定軸部材5の中心を通る基準線B1−B2(図4参照)の両側に同一中心角δ(5度〜40度)だけ離れた位置に設けられる。
【0011】
前記の構成によると、図4に示したように、前記特定の2箇所のポケット6、6間の中間点においてスプロケット軸部4の外径面に引いた接線A1−A2に対して垂直な線B1−B2を基準線としたとき、各ポケット6内の転動体8が付勢ばね9に押圧されてスプロケット軸部4に作用する押圧力P〜Pの基準線方向の分力P11〜P51の総和力、即ち総合ラジアル力P(=P11+P21+P31+P41+P51)がラジアル受け部17、17に作用する。ラジアル受け部17、17の範囲においてはポケット6が存在しないため、その部分においてはラジアル力が発生しない。このため前記のPはプラス(基準線B1−B2に沿ったラジアル受け部17の方向をプラス方向とする。)の一定量となり、ラジアル受け部17、17に一定のラジアル力を及ぼす。このラジアル力がスプロケット軸部4に作用する結果、スプロケット軸部4には制動トルクが作用しバックラッシュ量が減少する。
【0012】
さらに、前記構成に加えて、前記ラジアル受け部17の位置が前記スプロケット3に作用する搬送テープ16の張力等の負荷のラジアル力Pを受ける範囲に形成された構成をとることができる。この構成によると、スプロケット軸部4に作用する負荷ラジアル力Pが前記の総合ラジアル力Pに加算されるので、一層大きなラジアル力がラジアル受け部17に作用する。
【0013】
前記のような一対のラジアル受け部17、17を設けた場合と、図5に示したように、ラジアル受け部17を前記間隔の中間に1箇所設けた場合を比較例として、バックラッシュ量を測定した結果を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
上記表1に示したように、図4の構造の場合は、図5の場合に比べバックラッシュ量が半減する効果が認められる。
【0016】
これは、図4の場合は、スプロケット軸部4のロック方向(白抜き矢印参照)に位置するラジアル受け部17(基準線B1−B2の左側のラジアル受け部17)における接線と、基準線B1−B2上の転動体8aの接点における接線が角度αを持って交差するクサビをなし、前記ラジアル受け部17に作用する総合ラジアル力Pの力成分の反力が前記転動体8aの部分に作用し、図5のようにクサビが形成されない場合に比べ、該転動体8aがロックするまでの時間が早められることによるものと考えられる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明によるとトルクリミッタの転動体を収納したポケットが周方向に偏って配置されることにより、特定の2箇所のポケット間の柱部により相手嵌合面に接触するラジアル受け部が構成され、そのラジアル受け部に作用するラジアル力Pにより制動トルクが作用するため、スプロケットのバックラッシュ量が減少し送り精度が向上する。
【0018】
また、前記ラジアル受け部の位置が特定2箇所のポケット間の中間と前記固定軸部材の中心を通る基準線B1−B2の両側に同一中心角度δだけ離れた2箇所に設けられた構成をとることにより、一層バックラッシュ量を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1から図4に示した実施例1の一方向間欠送りユニットは、フレーム1の板面に設けられた欠円形の凹部21(図3参照)に組み付けられる。フレーム1はその上端面にガイド溝15が設けられ、前記の凹部21の一部がそのガイド溝15に開放される。
【0021】
前記の凹部21に組み付けられるものは、図3に示したように、一方向クラッチ型のトルクリミッタ11を構成する固定軸部材5、その固定軸部材5の内径面に回転自在に嵌合された部分を有するスプロケット3及び揺動部材13であり、これらの中心部に支持軸2が貫通される。支持軸2は凹部21の底面に貫通されナット22により固定される(図2参照)。
【0022】
前記の固定軸部材5は凹部21の欠円形状に合致するようその外周面が欠円形に形成され、相互の嵌合により固定軸部材5がフレーム1に固定される。また、前記のスプロケット3はその片面の中心部にスプロケット軸部4を有し、他面に前記スプロケット3より小径の外歯型のラチェット12が同軸状態に設けられる。前記スプロケット軸部4が前記固定軸部材5の内径面に回転自在に嵌合される。
【0023】
前記スプロケット軸部4及び固定軸部材5の嵌合面のうち一方の嵌合面(この実施例の場合は固定軸部材5の内径面)に周方向に所定の間隔をおいてポケット6が設けられる(図1参照)。各ポケット6の底面に周方向に傾斜したカム面7が形成されるとともに該カム面7と他方の嵌合面(スプロケット軸部4の外径面)とにより一定のクサビ角θが形成される。前記ポケット6にころでなる転動体8と該転動体8をクサビ角θの狭小方向に付勢する付勢ばね9が収納される。
【0024】
以上の構成によって、前記スプロケット3の回転の方向によって転動体8がクサビ角θの狭小方向に移動してロックする状態と、反対にクサビ角θの拡大方向に移動してロックが解除された空転状態となる一方向クラッチ式のトルクリミッタ11が構成される。
【0025】
なお、スプロケット3の一部がガイド溝15に突き出し、搬送テープ16に係合される。
【0026】
前記の揺動部材13は、ラチェット12の前面において支持軸2に揺動自在に取り付けられる。揺動部材13はアーム部24とそのアーム部24の先端に設けられた円板部25、及び円板部25から前記アーム部24と直角方向に突き出した補助アーム部26とからなり、その円板部25の中心部に前記の支持軸2が貫通される。前記の円板部25は抜け止め用の座金27を介して前記支持軸2に揺動自在に取付けられる。
【0027】
前記の補助アーム部26の先端部に送り爪14が回転自在に取り付けられる。送り爪14は付勢ばね28により付勢された状態でラチェット12に対しその送り方向(図1の矢印A参照)に係合される。
【0028】
前記の固定軸部材5の内径面に形成される5箇所のポケット6は、従来の場合は周方向に一定間隔をおいて設けられるのが一般的であったが、この実施例1の場合は、図1、図4に示したように、欠円部29を挟んだ両側のポケット6、6の間の柱部10にポケットは設けられておらず、その柱部10のポケット6間の間隔は他のポケット6間の間隔より広くなり、全体として見ればポケット6は欠円部29以外の部分の5箇所に偏在した配置となっている。
【0029】
図4において、ラジアル受け部17に作用する力の方向の説明等の便宜のため、前記の欠円部29を挟んだ一対のポケット6、6間の柱部10の中間点においてスプロケット軸部4に接線A1−A2を引き、さらに、その中間点において接線A1−A2に垂直に基準線B1−B2を引く。基準線B1−B2は、全部で5個の転動体8のうち中間部分の1箇所の転動体8aの中心を通る。また、接線A1−A2と平行でスプロケット軸部4の中心点Oを通る中心線C1−C2を引く。
【0030】
前記の中心点Oから基準線B1−B2の両側に同一中心角δだけ離れた位置に一対のラジアル受け部17、17が設けられ、そのラジアル受け部17、17以外の部分は、スプロケット軸部4に対して凹入したグリース溜り31となっている。
【0031】
いま、トルクリミッタ11がロック状態から空転状態に移行した時点の状態を考えると、各ポケット6においては、転動体8が付勢ばね9によって押されその転動体8がスプロケット軸部4を押す。各ポケット6ごとの押圧力をP〜Pで示し、それぞれの押圧力の基準線B1−B2の方向の分力をP11、P21、P31、P41、P51で示す。接線A1−A2方向の分力は特に符号は付けていない。前記分力P11、P21、P31、P41、P51を総合した総合ラジアル力Pは、B1からB2の方向をプラスにとると、
=P21+P31+P41−(P11+P51)……(1)
となる。
【0032】
図示の場合、P11=P21、P41=P51であるから、P=P31>0となる。即ち、ラジアル受け部17、17にP(=P31)のラジアル力が作用する。このラジアル力は、スプロケット軸部4をラジアル受け部17、17に押圧し、スプロケット3の回転に対し制動トルクを付与する。これにより、スプロケットのバックラッシュ量が減少される。
【0033】
前記の総合ラジアル力Pは、固定軸部材5の姿勢に拘わらず得られる力である。図4の場合欠円部29が接線A1−A2に沿う姿勢であるが、基準線B1−B2の方向に沿う姿勢であっても大きさは不変である。これに対し、スプロケット3に係合された搬送テープ16の張力等の負荷ラジアル力Pは、フレーム1の縦方向(基準線B1−B2の方向)にしか作用しない。このため、固定軸部材5の姿勢を図4のように、欠円部29が接線A1−A2に沿う姿勢でフレーム1に組み付けることにより、前記PとPの方向はプラス方向となり、P+Pのラジアル力をラジアル受け部17、17に及ぼすことができる。これにより、一層大きい制動トルクが得られる。
【0034】
実施例1の一方向間欠送りユニットは以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0035】
いま、揺動部材13のアーム部24が駆動源からの作用によって、矢印aの方向に揺動されると、送り爪14がラチェット12に係合してこれと一体のスプロケット3を送り方向(図1の矢印A参照)に回転させ、そのスプロケット3に係合された搬送テープ16に1ピッチの送りを与える。このとき、スプロケット軸部4に接した転動体8はクサビ角θの拡大方向に移動するためトルクリミッタ11は空転状態となり、同時に空転トルクを発生してスプロケット3の回転、即ち搬送テープ16の送りに一定のトルクを加え、必要以上に前進することが無いようにして送り精度を上げている。
【0036】
次に、アーム部24が逆方向(矢印b方向)に揺動されると、送り爪14がラチェット12上を元の位置まで戻る。このときスプロケット3及びスプロケット軸部4に逆転方向のトルクが作用するが、転動体8がクサビ角θの狭小方向に移動しトルクリミッタ11はロック状態となり、スプロケット3の逆転が防止される。トルクリミッタ11がロック状態になるまで若干の時間を要し(即ちバックラッシュが発生し)、その結果スプロケット3が一定量逆回転してバックラッシュ量が発生するが、この実施例1においては、前述のように、P又はP+Pのラジアル力が制動トルクとしてラジアル受け部17、17に作用するためバックラッシュ量が減少する。バックラッシュ量が減少すると、スプロケット3の停止位置が一定し、送りピッチの精度が高くなる。
【0037】
なお、図5のように、ラジアル受け部17を基準線B1−B2上の1箇所に設けた場合に比べ、図4のように、ラジアル受け部17を中心角δの位置の2箇所に設けた場合の方が一層バックラシュ量が減少することは、先に表1に実験結果を示し説明したとおりである。
【実施例2】
【0038】
次に、図6から図9に基づいて実施例2について説明する。実施例2の一方向間欠送りユニットもフレーム1の板面に設けられた欠円形の凹部21に組み付けられる(図8参照)。フレーム1はその上端面にガイド溝15が設けられ、前記の凹部21の一部がそのガイド溝15に開放される。
【0039】
前記の凹部21に組み付けられるものは、図8に示したように、一方向クラッチ型のトルクリミッタ11を構成する固定軸部材32、その固定軸部材32の外径面に回転自在に嵌合された部分を有するスプロケット3及び揺動部材13であり、これらの中心部に支持軸2が貫通される。支持軸2は凹部21の底面に貫通されねじ孔33により固定される(図7参照)。
【0040】
前記の固定軸部材32は前端面にその中心孔34より大径の凸軸部35が中心位置に設けられ、その中心孔34に挿通した前記支持軸2の軸頭部36が前記の凸軸部35の内部に挿入される。支持軸2の先端ねじ部37が前記のねじ孔33に螺合されるとともに、ねじ頭部36が凸軸部35に係合される。さらに、回り止めピン38が固定軸部材32から凹部21の底面に渡り挿通される。これにより固定軸部材32が凹部21の内部に固定される。
【0041】
また、前記のスプロケット3は全体として環状に形成され、その片面(フレーム1側)に環状のスプロケット軸部4を有し、他面に前記スプロケット3より小径の内歯型のラチェット12が同軸状態に設けられる。前記スプロケット軸部4が前記固定軸部材32の外径面に回転自在に嵌合される。
【0042】
前記固定軸部材32の嵌合面、即ち外径面に周方向に所定の間隔をおいてポケット6が設けられる(図6参照)。各ポケット6の底面に周方向に傾斜したカム面7が形成されるとともに該カム面7と他方の嵌合面(スプロケット軸部4の内径面)とにより一定のクサビ角θが形成される。前記ポケット6に転動体8と該転動体8をクサビ角θの狭小方向に付勢する付勢ばね9が収納される。
【0043】
以上の構成によって、前記スプロケット3の回転方向によって転動体8がクサビ角θの狭小方向に移動してロックする状態と、反対にクサビ角θの拡大方向に移動してロックが解除された空転状態となる一方向クラッチ式のトルクリミッタ11が構成される。
【0044】
なお、スプロケット3の一部がガイド溝15に突き出し、搬送テープ16に係合される。
【0045】
前記の揺動部材13は、ラチェット12の前面に接し、固定軸部材32の凸軸部35の回りにおいて揺動自在に嵌合されるとともに、前記支持軸2のねじ頭部36に設けたフランジ部39により抜け止めされる。
【0046】
揺動部材13はアーム部24とそのアーム部24の先端に設けられた円板部25とからなり、その円板部25の内面に送り爪14がピン41により回転自在に取り付けられる。送り爪14は付勢ばね28により付勢された状態でラチェット12に対しその送り方向(図6の矢印A参照)に係合される。
【0047】
前記の固定軸部材32外径面に形成される5箇所のポケット6のうちフレーム1のガイド溝15に面した一対のポケット6、6間の柱部10は、他のポケット6間の柱部10より広くなり、全体として見ればガイド溝15に面した一対のポケット6、6間以外の部分の5箇所に偏在した配置となっている。
【0048】
図9において、ラジアル受け部17、17に作用する力の方向の説明等の便宜のため、ガイド溝15に面した前記一対のポケット6、6間の中間点においてスプロケット軸部4に接線A1−A2を引き、さらに、その中間点において接線A1−A2に垂直の基準線B1−B2を引く。基準線B1−B2は、全部で5個の転動体8のうち中間部分の1箇所の転動体8aの中心を通る。また、接線A1−A2と平行で固定軸部材32の中心点Oを通る中心線C1−C2を引く。
【0049】
前記の中心点Oから前記ポケット6、6に向き、基準線B1−B2の両側に同一中心角δ(5度〜40度)だけ離れた位置に一対のラジアル受け部17、17が設けられ、そのラジアル受け部17、17以外の部分は、グリース溜り31となっている。
【0050】
いま、トルクリミッタ11がロック状態から空転状態に移行した時点の状態を考えると、各ポケット6においては、転動体8が付勢ばね9によって押されその転動体8がスプロケット軸部4を外向きに押す。各ポケット6ごとの押圧力をP〜Pで示し、それぞれの押圧力の基準線B1−B2の方向の分力をP11、P21、P31、P41、P51で示す。接線A1−A2方向の分力は特に符号は付けていない。前記分力P11、P21、P31、P41、P51を総合した総合ラジアル力Pは、B1からB2の方向をプラスにとると、
=P21+P31+P41−(P11+P51
となる。
【0051】
図示の場合、P11=P21、P41=P51であるから、P=P31>0となる。即ち、ラジアル受け部17、17にP(=P31)のラジアル力が作用する。このラジアル力は、スプロケット軸部4をラジアル受け部17、17に押圧し、スプロケット3の回転に対し制動トルクを付与する。これにより、スプロケットのバックラッシュ量が減少される。
【0052】
また、スプロケット3に係合された搬送テープ16の張力等の負荷ラジアル力Pは、フレーム1の縦方向(基準線B1−B2の方向)に作用する。このため、P+Pのラジアル力をラジアル受け部17、17に及ぼすことができ、一層大きい制動トルクが得られる。
【0053】
実施例2の一方向間欠送りユニットは以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0054】
いま、揺動部材13のアーム部24(図6参照)が駆動源からの作用によって、矢印aの方向に揺動されると、送り爪14がラチェット12に係合してこれと一体のスプロケット3を送り方向(矢印A参照)に回転させ、そのスプロケット3に係合された搬送テープ16に1ピッチの送りを与える。このとき、転動体8はクサビ角θの拡大方向に移動するためトルクリミッタ11は空転状態になり、同時に空転トルクを発生してスプロケット3の回転、即ち搬送テープ16の送りに一定のトルクを加え、必要以上に前進することが無いようにして、送り精度を上げている。
【0055】
次に、揺動部材13が逆方向(矢印b方向)に揺動されると、送り爪14がラチェット12上を元の位置まで戻る。このとき転動体8はクサビ角θの狭小方向に移動するためトルクリミッタ11はロック状態となり、スプロケット3の逆転が防止される。トルクリミッタ11がロック状態になるまで若干の時間を要し(バックラッシュ)、その結果スプロケット3が一定量逆回転してバックラッシュ量が発生するが、この実施例2においては、前述のように、P又はP+Pのラジアル力が制動トルクとしてラジアル受け部17、17に作用するためバックラッシュ量が減少する。バックラッシュ量が減少すると、スプロケット3の停止位置が一定し、送りピッチの精度が高くなる。
【0056】
なお、図9において、スプロケット3(及びこれと一体のスプロケット軸部4)のロック方向(白抜き矢印参照)に位置するラジアル受け部17(基準線B1−B2の右側のラジアル受け部17)における接線と、基準線B1−B2上の転動体8aの接点における接線が角度αを持って交差するクサビをなし、前記ラジアル受け部17に作用する総合ラジアル力Pの力成分の反力が前記転動体8aの部分に作用する。このため、前記のようなクサビ角αが形成されない場合(1箇所のラジアル受け部17が基準線B1−B2上に形成される場合)に比べ、該転動体8aがロックするまでの時間が早められ、バックラッシュ量が減少する。この点は、実施例1の場合と同様であり、この実施例2の場合も前掲の表1に示したと同様の結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1の縦断正面図
【図2】図1のX−X線の断面図
【図3】実施例1の分解斜視図
【図4】同上のトルクリミッタ部分の力関係の説明図
【図5】同上の比較例の力関係の説明図
【図6】実施例2の縦断正面図
【図7】図6のY−Y線の断面図
【図8】実施例2の分解斜視図
【図9】同上のトルクリミッタ部分の力関係の説明図
【図10】従来例の縦断正面図
【図11】図10のZ−Z線の断面図
【図12】従来例の分解斜視図
【符号の説明】
【0058】
1 フレーム
2 支持軸
3 スプロケット
4 スプロケット軸部
5 固定軸部材
6 ポケット
7 カム面
8 転動体
9 付勢ばね
10 柱部
11 トルクリミッタ
12 ラチェット
13 揺動部材
14 送り爪
15 ガイド溝
16 搬送テープ
17 ラジアル受け部
21 凹部
22 ナット
24 アーム部
25 円板部
26 補助アーム部
27 座金
28 付勢ばね
29 欠円部
31 グリース溜り
32 固定軸部材
33 ねじ孔
34 中心孔
35 凸軸部
36 軸頭部
37 ねじ部
38 回り止めピン
39 フランジ部
41 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに固定された固定軸部材にスプロケットが回転自在に嵌合され、前記固定軸部材の嵌合面に周方向に間隔をおいてポケットが設けられ、各ポケットの底面に周方向に傾斜したカム面が形成されるとともに該カム面と前記スプロケットの嵌合面とにより一定のクサビ角が形成され、前記ポケットに転動体と該転動体をクサビ角の狭小方向に付勢する付勢ばねが収納され、前記スプロケットの回転方向によって前記転動体がクサビ角の狭小方向に移動してロックする状態と、反対にクサビ角の拡大方向に移動してロックが解除され空転状態となる一方向クラッチ式のトルクリミッタが構成され、前記スプロケットにこれと一体のラチェットが同軸状態に設けられ、前記スプロケットの支持軸に取付けられた揺動部材に前記ラチェットに係脱する送り爪が設けられた一方向間欠送りユニットにおいて、前記ポケットのうち特定の隣接した2箇所のポケット間の柱部が他のポケット間の間隔より大きく形成され、その柱部に前記スプロケットの嵌合面に接触するラジアル受け部が構成され、該ラジアル受け部の位置が前記特定2箇所のポケット間の中間と前記固定軸部材の中心を通る基準線の両側に同一中心角だけ離れた2箇所に設けられたことを特徴とする一方向間欠送りユニット。
【請求項2】
前記の各ラジアル受け部が、それぞれ前記ポケット間の柱部に設けた軸方向のグリース溜り溝により区画形成されたことを特徴とする請求項1に記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項3】
前記ラジアル受け部の基準線に対する角度が5度〜40度に設定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項4】
前記の固定軸部材の内径面に前記スプロケットに設けられたスプロケット軸部が嵌合され、前記ポケットが前記固定軸部材の内径面に形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項5】
前記の固定軸部材の外径面に前記スプロケットが嵌合され、前記ポケットが前記固定軸部材の外径面に形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の一方向間欠送りユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−327582(P2007−327582A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159961(P2006−159961)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】