説明

一液型カチオン硬化性組成物の表面促進型硬化

本発明は、表面上で硬化させるためのカチオン硬化性組成物に関し、この組成物は、カチオン硬化性成分と、このカチオン硬化性成分の硬化を開始させることができる開始剤成分とを含む。この開始剤は少なくとも1つの金属塩を含み、この金属塩は、前記表面で還元されるように選択される。開始剤成分の標準還元電位は表面の標準還元電位より高い。さらに、前記組成物を表面に接触して配置すると、組成物の開始剤成分の金属塩がこの表面で還元され、これにより組成物のカチオン硬化性成分の硬化を開始させる。効率的な硬化のために、この組成物中には触媒成分を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面上で硬化させるための、安定な一液型カチオン硬化性組成物、およびそのための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
還元−酸化(レドックス)カチオン重合
レドックスカチオン重合は酸化プロセスと還元プロセスを伴う(Holtzclaw、H.F.;Robinson、W.R.;Odom、J.D.;General Chemistry 1991、第9版、Heath(発行)、44ページ)。遊離原子または分子内原子またはイオン状原子が1個の電子または複数の電子を失うと、この原子は酸化され、その酸化数は増加する。遊離原子または分子内原子またはイオン状原子が1個の電子または複数の電子を得ると、この原子は還元され、その酸化数は減少する。あたかも1つの原子が電子を獲得した後、別の原子は電子を提供し酸化されなければならないかのように、酸化と還元は常に同時に起こる。酸化還元対では、一方の化学種は還元剤として作用し、他方は酸化剤として作用する。レドックス反応が起こると、還元剤は別の反応物に電子を渡すまたは供与する。これにより、還元剤はこの反応物を還元する。したがって、還元剤それ自体は電子を失ったことにより酸化される。酸化剤は電子を受容または獲得し、還元剤を酸化させる。一方、それ自体は還元される。酸化還元対の2つの試薬の力について相対的な酸化力または還元力を比較することにより、どちらが還元剤であり、どちらが酸化剤であるかを決めることができる。還元剤または酸化剤の力は、これらの標準還元(Ered)または酸化(Eox)電位から決めることができる。
【0003】
オニウム塩は、カチオン硬化性配合物で広く使用されている。カチオン重合用光開始剤としてのオニウム塩の使用を広範囲に研究することにより、光化学反応の間にオニウムカチオンが光化学還元を受けることが分かった。特に、ジアリールヨードニウム塩がカチオン硬化性配合物で使用されている。カチオン性重合用光開始剤としてのジアリールヨードニウム塩(1)の使用を広範囲に研究することにより、光化学反応の間にヨウ素が+3から+1まで酸化状態の還元を受けることが分かった。
【0004】
【化1】

【0005】
Crivelloら(J.V.CrivelloおよびJ.H.W.Lam、J.Polym.Sci.1981、19巻、539〜548ページ)は、ジアリールヨードニウム塩への光の作用によりラジカル中間体が生成するという提案を行っている。図式1を参照されたい。結果として起こる一連の段階的反応により、ジアリールヨードニウム塩のヨウ素の酸化状態が還元される。光分解プロセス中に発生したアリールヨウ素カチオンラジカルは非常に反応性の高い化学種であり、溶媒、モノマー、または不純物(図式においてSHと示されている)と反応してプロトニック酸を生成する。プロトニック酸は、次にカチオン硬化性モノマーと反応して重合する。
【0006】
【化2】

【0007】
レドックス型化学反応によるカチオン重合の開始剤としてのジアリールヨードニウム塩も研究の対象であった。ここでの一般的前提は、図式2(下記)に示したように、化学的還元剤の存在下でジアリールヨードニウム塩のヨウ素成分を還元することができ、これによりプロトニック酸化学種HXが生成するということであった。プロトニック酸化学種は次にカチオン重合を開始することになる。
【0008】
【化3】

【0009】
Crivelloとその共同研究者は、アスコルビン酸(J.V.CrivelloおよびJ.H.W.Lam、J.Polym.Sci.1981、19巻、539〜548ページ)、ベンゾイン(J.V.CrivelloおよびJ.L.Lee、J.Polym.Sci.1983、21巻、1097〜1110ページ)、およびスズ(J.V.CrivelloおよびJ.L.Lee、Makromol.Chem.1983、184巻、463〜473ページ)を組み込んだジアリールヨードニウム塩/還元剤対を開発した。還元剤によるヨードニウム塩(オニウム塩)の直接還元は非効率的である。それゆえ、効率的な重合を達成するために銅触媒を組み込む必要がある。したがって、こうしたレドックスカチオン開始パッケージは、塩、還元剤および触媒の3成分系とすることが効果的である。
【0010】
したがって、これらのCrivelloレドックス系には、還元剤による「オニウム」塩の直接還元が非常に非効率的であるという欠点がある。効率的な電子移動には銅塩が必要であった。しかしながら、触媒が存在しない状態でも還元剤とオニウム塩の間の非常に遅い電子移動が認められ、組成物中に還元剤とオニウム塩を一緒に含む組成物は長期間貯蔵に不適当である。したがって、上に述べた従来のオニウム配合物への代替案を提供する適当な硬化性配合物の必要性は依然として満たされていない。
【0011】
カチオン重合用開始剤としてのルイス酸金属塩:
金属塩の形のルイス酸が、カチオン重合の開始剤として使用されている(Collomb、J.ら;Eur.Poly.J.1980、16巻、1135〜1144ページ;Collomb、J.;Gandini、A.;Cheradamme、H.;Macromol.Chem.Rapid Commun. 1980、1巻、489〜491ページ)。多くの強ルイス酸開始剤が、モノマーの直接開始によって作用することが示されている(図式3)(Collomb、J.;Gandini、A.;Cheradamme、H.;Macromol.Chem. Rapid Commun. 1980、1巻、489〜491ページ)。ルイス酸が強ければ強いほど、その開始能力もより顕著である。
【0012】
【化4】

【0013】
すべてのルイス酸金属塩がカチオン重合性モノマーと反応するとは限らない。多くが、貯蔵安定性一液型カチオン重合性の系に開始成分として調合することができる(Castell、P.ら;Polymer 2000、41(24)、8465〜8474ページ)。これらの例では、開始剤の分解および重合の活性化は、通常は熱または電磁放射線硬化プロセスによって達成される(Castell、P.ら;Polymer2000、41(24)、8465〜8474ページ)。
【0014】
したがって、上に述べた従来のルイス酸金属塩配合物への代替案を提供する適当な硬化性配合物の必要性は依然として満たされていない。こうした配合物は、熱または電磁放射線硬化プロセスが存在しない状態で硬化するであろう。
【0015】
既存のコーティング技術
E−コーティング(エレクトロコーティング/電着塗装)は、電流を使用して塗料を堆積させる塗装方法である。このプロセスは「反対物は互いに引きつけ合う」という原理で作用する。このプロセスは電解析出としても知られている。エレクトロコーティングの基本的な物理的原理は、反対の電荷を有する材料が互いに引きつけ合うということである。エレクトロコーティング系では、反対に帯電した塗料粒子の浴に浸漬した金属部品にDC電荷を印加する。塗料粒子は金属部品に引き寄せられ、塗料は部品上に堆積し、エレクトロコーティングが所望の厚さに達するまで、すべての表面上、すべての割れ目およびコーナーに均一な連続皮膜を形成する。この厚みで膜が部品を絶縁するので、引きつけ合う力は止まり、エレクトロコーティングプロセスは完了する。電荷の極性に応じて、エレクトロコーティングは陽極性または陰極性に分類される。この技術の主な欠点は、この技術がファラデーケージ効果の影響を受けるので、金属管内部などをコーティングすることができないことである。塗膜を架橋し硬化するためには材料を焼成することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、代替のコーティング技術としてレドックス化学反応を利用することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一態様では、本発明は、表面上で硬化させるための、安定な一液型カチオン硬化性組成物であって、
(i)カチオン硬化性成分と、
(ii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記組成物の前記開始剤成分の前記金属塩が前記表面で還元され、これにより前記組成物の前記カチオン硬化性成分の硬化を開始させるカチオン硬化性組成物を提供する。
【0018】
本明細書における標準還元電位とは、化学種が電子を獲得することによって還元される傾向を示す。標準還元電位は、以下の標準状態下で測定される:25℃、濃度1M、圧力1気圧、および純粋状態の元素。
【0019】
望ましくは、前記組成物の金属塩は遷移金属カチオンを含む。好適な金属には、銀、銅およびこれらの組合せが含まれる。金属塩は、配位子で置換することができる。金属塩の対イオンは、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CBアニオン、(CGaアニオン、カルボランアニオン、トリフリミド(トリフルオロメタンスルフォネート)アニオン、ビス−トリフリミドアニオン、これらに基づくアニオン、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。さらに望ましくは、金属塩対イオンは、ClO、BF、PF、SbFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0020】
金属塩の溶解度は、対イオンを変えること、金属塩の金属への配位子の付加および/または置換、ならびにこれらの組合せにより調整することができる。これにより、適切な溶解度が得られるので、表面と金属塩との間の効率的な電子移動が見られることになる。
【0021】
カチオン硬化性成分は、望ましくは、エポキシ、ビニル、オキセタン、チオキセタン、エピスルフィド、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、オキサジン、ラクトン、トリオキサン、ジオキサン、スチレンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有し、これらの組合せも本発明に包含される。さらに望ましくは、カチオン硬化性成分は、エポキシ、エピスルフィド、オキセタン、チオキセタン、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する。好ましくは、カチオン硬化性成分は、エポキシ、オキセタンおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する。
【0022】
望ましくは、本発明の組成物が塗布される表面は、金属、金属酸化物または金属合金を含むことができる。さらに望ましくは、この表面は、金属または金属酸化物を含むことができる。好ましくは、この表面は金属を含むことができる。好適な表面は、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択することができる。アルミニウムおよび酸化アルミニウムには、それぞれ、アルクラッドアルミニウム(低銅分)および酸化物除去アルクラッドアルミニウム(低銅分)が含まれる。望ましくは、表面は、鋼およびアルミニウムからなる群から選択することができる。鋼またはアルミニウム表面上で硬化させるための組成物において使用するのに好適な金属塩は、銀塩、銅塩およびその組合せからなる群から選択することができ、但し、銀塩および銅塩の対イオンは、ClO、BF、PF、SbFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0023】
一般に、本明細書に開示された本発明の組成物は、追加のエッチング液または酸化物除去剤の必要なしに、酸化した金属面上で硬化することができる。しかし、本発明の組成物は、任意選択で酸化物除去剤を含むことができる。例えば、エッチング液または酸化物除去剤、例えば塩化物イオンおよび/または亜鉛(II)塩を含むものを本発明の配合物に含有させることにより、任意の酸化物層のエッチングが可能になる。これにより下方の(ゼロ酸化状態)の金属が露出することになる。この金属は、次に遷移金属塩を還元することができる十分な活性を有する。
【0024】
本明細書に記載のレドックスカチオン系は追加の還元剤を必要としない。この系は、レドックス反応に関与することができる基体に塗布されるまで安定であり、したがって従来の還元剤成分の役割を果たすものである。したがって、本発明の組成物は、金属面上での硬化が必要な任意の用途で利用することができる。本発明の組成物は一液型組成物としても貯蔵安定性を有し、多成分型組成物の傾向がある先行技術の組成物とは異なり特別のパッケージングを必要としない。
【0025】
本発明の組成物は、効率的な硬化のために追加の触媒を必要としない。本発明は、組成物が塗布され硬化されることになる表面に対する開始剤成分の適切な選択を利用する。こうして、表面促進型レドックス化学反応を利用してカチオン硬化性組成物の硬化を開始することができる。しかし、表面と組成物の金属塩の間の電子移動をもたらすために、本発明による組成物が任意選択で触媒を含んでもよいことは理解されよう。これは、さらに大きな硬化速度が必要な場合に有用な可能性がある。好適な触媒としては遷移金属塩が挙げられる。
【0026】
本明細書に記述された本発明の組成物は、一般に接着剤、シーラントまたはコーティングとして有用であり、中でも金属接合、ねじロック、フランジ封止、および構造接着を含めた広範囲の工業的用途で使用することができる。
【0027】
本発明の組成物は、望ましい場合にはカプセル化することができる。好適なカプセル化技術としては、それだけに限らないが、コアセルベーション、ソフトゲルおよび共押出成形が挙げられる。
【0028】
あるいは、本発明の組成物は、事前塗布方式で使用することもできる。事前塗布という用語は、カプセル化した形の(通常はマイクロカプセル化されているが、必ずしもそうではない)材料を利用し、所望の基体上で前記カプセルを(例えば、水または有機溶媒を熱で除去すること、あるいはバインダーを光硬化することによって)乾燥させることができる液体バインダー系に分散させること、と解釈されるものであることが理解されよう。硬化性組成物(例えば充填カプセルの形状の例えば接着性液体など)を含有した材料の膜が残る。この硬化性組成物は、使用者がこの組成物を活性化したい場合、材料(例えばカプセル)を物理的に破裂させることにより放出し硬化させることができる。例えば、事前塗布ねじロック剤では、コーティングされたねじ部は、その逆ねじ部(例えばねじ受けまたはナット)と一緒にねじることにより活性化される。
【0029】
本発明は、さらに、2つの基体を接合する方法であって、
(i)i)カチオン硬化性成分と、
ii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含む組成物を少なくとも1つの基体に塗布するステップと、
(ii)前記組成物と結合を形成するように前記第1の基体と第2の基体を合わせるステップと
を含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が、前記基体の少なくとも1つの標準還元電位より高い方法にも及ぶ。
【0030】
特定の一実施形態では、両方の基体とも金属を含む。第2の基体が第1の金属基体とは異なる金属基体を含む場合には、本発明の組成物は2種以上の金属塩を含むことができる。こうして、本発明は、2種以上の金属塩を含有させることを利用して異なる金属基体を接合することができる硬化性組成物も提供する。
【0031】
本発明の発明組成物の金属塩の金属は、その上でこれを硬化することになる金属面より反応性系列が低いことが望ましい。
【0032】
金属基体は、非金属基体にも接合することができる。例えば、軟鋼は、e−コート鋼材(e−コートとは、鋼などの金属面に電流を用いて電着される有機塗料である)に接合することができる。
【0033】
さらに、本発明の発明組成物は、金属部品などの部品上に(ポリマー)コーティングを形成するために利用することができる。
【0034】
本発明は、
a)容器と、
b)本発明のカチオン硬化性組成物と
を含むパックにも関する。但し、この容器は通気性とすることができる。あるいは、この容器は非通気性とすることもできる。
【0035】
別の態様では、本発明は、表面上で硬化させるための、安定な一液型カチオン硬化性組成物であって、
(i)カチオン硬化性成分と、
(ii)少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む促進剤種と、
(iii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記組成物の前記開始剤成分の前記金属塩が前記表面で還元され、これにより前記組成物の前記カチオン硬化性成分の硬化を開始させるカチオン硬化性組成物を提供する。
【0036】
本明細書における標準還元電位とは、化学種が電子を獲得することによって還元される傾向を示す。標準還元電位は、以下の標準状態下で測定される:25℃、濃度1M、圧力1気圧、および純粋状態の元素。
【0037】
少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む促進剤種は、硬化速度を大幅に高める。促進剤種は以下の構造を包含することができる:
【0038】
【化5】

式中、
mは、0または1とすることができ、
nは、0〜5とすることができ、
、R、およびRは、同一でもまたは異なっていてもよく、水素、C〜C20アルキル鎖(直鎖、分岐、または環式)およびC〜C20アリール部分、ならびにこれらの組合せからなる群から選択することができ、
Xは、C〜C30飽和または不飽和、環式または非環式部分とすることができ、
、R、RおよびXは、それぞれ独立に、エーテル結合、硫黄結合、カルボキシル基、およびカルボニル基を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0039】
上記式中のX、R、R、およびRが、これら分子の機能を実質上変えることなく、例えばハロゲン置換、ヘテロ原子置換などの置換変異体およびその誘導体を含んでもよいことは当業者によって理解されよう。
【0040】
望ましくは、ビニルエーテル成分は、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル、ビス−(4−ビニルオキシブチル)アジペート、エチル−1−プロペニルエーテル、ビス−(4−ビニルオキシブチル)イソフタレート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]テレフタレート、ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレート、ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]グルタレート、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、VEctomer(商標)2020(CAS番号143477−70−7)およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0041】
少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む促進剤成分は、カチオン重合の速度を大幅に促進する。促進剤成分は、全組成物の5〜98重量%、例えば全組成物の5〜50重量%、望ましくは全組成物の5〜30重量%存在することができる。
【0042】
望ましくは、組成物の金属塩は遷移金属カチオンを含む。好適な金属には、銀、銅およびこれらの組合せが含まれる。金属塩は、配位子で置換することができる。金属塩の対イオンは、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CBアニオン、(CGaアニオン、カルボランアニオン、トリフリミド(トリフルオロメタンスルフォネート)アニオン、ビス−トリフリミドアニオン、これらに基づくアニオン、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。さらに望ましくは、金属塩対イオンは、ClO、BF、PF、SbFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0043】
金属塩の溶解度は、対イオンを変えること、金属塩の金属への配位子の付加および/または置換、ならびにこれらの組合せにより調整することができる。これにより、適切な溶解度が得られるので、表面と金属塩との間の効率的な電子移動が見られることになる。
【0044】
カチオン硬化性成分は、望ましくは、エポキシ、ビニル、オキセタン、チオキセタン、エピスルフィド、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、オキサジン、ラクトン、トリオキサン、ジオキサン、スチレンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有し、これらの組合せも本発明に包含される。さらに望ましくは、カチオン硬化性成分は、エポキシ、エピスルフィド、オキセタン、チオキセタン、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する。好ましくは、カチオン硬化性成分は、エポキシ、オキセタンおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する。
【0045】
望ましくは、本発明の組成物が塗布される表面は、金属、金属酸化物または金属合金を含むことができる。さらに望ましくは、この表面は、金属または金属酸化物を含むことができる。好ましくは、この表面は金属を含むことができる。好適な表面は、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択することができる。アルミニウムおよび酸化アルミニウムには、それぞれ、アルクラッドアルミニウム(低銅分)および酸化物除去アルクラッドアルミニウム(低銅分)が含まれる。望ましくは、表面は、鋼およびアルミニウムからなる群から選択することができる。鋼またはアルミニウム表面上で硬化させるための組成物において使用するのに好適な金属塩は、銀塩、銅塩およびその組合せからなる群から選択することができ、但し、銀塩および銅塩の対イオンは、ClO、BF、PF、SbFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0046】
本明細書に記載のレドックスカチオン系は追加の還元剤を必要としない。この系は、レドックス反応に関与することができる基体に塗布されるまで安定であり、したがって従来の還元剤成分の役割を果たすものである。したがって、本発明の組成物は、金属面上での硬化が必要な任意の用途で利用することができる。本発明の組成物は一液型組成物としても貯蔵安定性を有し、多成分型組成物の傾向がある先行技術の組成物とは異なり特別のパッケージングを必要としない。
【0047】
本発明の組成物は、効率的な硬化のために追加の触媒を必要としない。本発明は、組成物が塗布され硬化されることになる表面に対する開始剤成分の適切な選択を利用する。こうして、表面促進型レドックス化学反応を利用してカチオン硬化性組成物の硬化を開始することができる。しかし、表面と組成物の金属塩の間の電子移動をもたらすために、本発明による組成物が任意選択で触媒を含んでもよいことが理解されよう。これは、さらに大きな硬化速度が必要な場合に有用なことがある。好適な触媒としては遷移金属塩が挙げられる。
【0048】
本明細書に記述された本発明の組成物は、一般に接着剤、シーラントまたはコーティングとして有用であり、中でも金属接合、ねじロック、フランジ封止、および構造接着を含めた広範囲の工業的用途で使用することができる。
【0049】
本発明の組成物は、望ましい場合には、カプセル化することができる。好適なカプセル化技術としては、それだけに限らないが、コアセルベーション、ソフトゲルおよび共押出成形が挙げられる。
【0050】
あるいは、本発明の組成物は、事前塗布方式で使用することもできる。事前塗布という用語は、カプセル化した形の(通常はマイクロカプセル化されているが、必ずしもそうではない)材料を利用し、所望の基体上で前記カプセルを(例えば、水または有機溶媒を熱で除去すること、あるいはバインダーを光硬化することによって)乾燥させることができる液体バインダー系に分散させること、と解釈されるものであることが理解されよう。硬化性組成物(例えば充填カプセルの形状の接着性液体など)を含有した材料の膜が残る。硬化性組成物は、使用者がこの組成物を活性化したい場合、材料(例えばカプセル)を物理的に破裂させることにより放出し硬化することができる。
例えば、事前塗布ねじロック剤では、コーティングされたねじ部は、その逆ねじ部(例えばねじ受けまたはナット)と一緒にねじることにより活性化される。
【0051】
本発明は、さらに、2つの基体を接合する方法であって、
(i)
i)カチオン硬化性成分と、
ii)少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む促進剤種と、
iii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含む組成物を少なくとも1つの基体に塗布するステップと、
(ii)前記組成物と結合を形成するように前記第1の基体と第2の基体を合わせるステップとを含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が、前記基体の少なくとも1つの標準還元電位より高い方法にも及ぶ。
【0052】
特定の一実施形態では、両方の基体とも金属を含む。 第2の基体が第1の金属基体とは異なる金属基体を含む場合には、本発明の組成物は2種以上の金属塩を含むことができる。したがって、本発明は、2種以上の金属塩を含有させることを利用して異なる金属基体を接合することができる硬化性組成物も提供する。
【0053】
本発明の発明組成物の金属塩の金属は、その上でこれを硬化することになる金属面より反応性系列が低いことが望ましい。
【0054】
金属基体は、非金属基体にも接合することができる。例えば、軟鋼は、e−コート鋼材(e−コートとは、鋼などの金属面に電流を用いて電着される有機塗料である)に接合することができる。
【0055】
さらに、本発明の発明組成物は、金属部品などの部品上に(ポリマー)コーティングを形成するために利用することができる。
【0056】
本発明は、
a)容器と、
b)少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む促進剤種を含むカチオン硬化性組成物と
を含むパックにも関する。但し、この容器は通気性とすることができる。あるいは、この容器は非通気性とすることもできる。
【0057】
さらに別の態様では、本発明は、表面をコーティングするための組成物および表面コーティング方法を提供する。架橋と硬化を表面上で直接行うことができ、したがって追加の焼成処理の必要がないことが想定される。さらに、このコーティング方法は、表面(例えば、管などの内部のコーティングを妨げるファラデーケージ効果を示す恐れがある表面)の内部のコーティングを可能にすることが想定される。
【0058】
本発明は、表面をコーティングするための、安定な一液型カチオン硬化性コーティング組成物であって、
(i)カチオン硬化性成分と、
(ii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記組成物の前記開始剤成分の前記金属塩が前記表面で還元され、これにより前記組成物の前記カチオン硬化性成分の硬化を開始させる硬化性コーティング組成物を提供する。
【0059】
本明細書における標準還元電位とは、化学種が電子を獲得することによって還元される傾向を示す。標準還元電位は、以下の標準状態下で測定される:25℃、濃度1M、圧力1気圧、および純粋状態の元素。
【0060】
望ましくは、カチオン硬化性コーティング組成物の金属塩は遷移金属カチオンを含む。好適な金属には、銀、銅およびこれらの組合せが含まれる。金属塩は、配位子で置換することができる。金属塩の対イオンは、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CBアニオン、(CGaアニオン、カルボランアニオン、トリフリミド(トリフルオロメタンスルフォネート)アニオン、ビス−トリフリミドアニオン、これらに基づくアニオン、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。さらに望ましくは、金属塩対イオンは、ClO、BF、PF、SbFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0061】
コーティング組成物のカチオン硬化性成分は、望ましくは、エポキシ、ビニル、ビニルエーテル、オキセタン、チオキセタン、エピスルフィド、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、オキサジン、ラクトン、トリオキサン、ジオキサン、スチレンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有し、これらの組合せも本発明に包含される。さらに望ましくは、カチオン硬化性成分は、ビニルエーテル、エポキシ、オキセタン、チオキセタン、エピスルフィドおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する。好ましくは、カチオン硬化性成分は、ビニルエーテル、エポキシ、オキセタンおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する。
【0062】
好ましい実施形態では、カチオン硬化性成分は、ビニルエーテルと、エポキシ、ビニル、オキセタン、チオキセタン、エピスルフィド、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、オキサジン、ラクトン、トリオキサン、ジオキサン、スチレンおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの他のカチオン硬化性成分とを含む。前記ビニルエーテル官能基と前記少なくとも1つの他のカチオン硬化性官能基は、同じ分子/モノマー上にあってもよい。
【0063】
本発明のカチオン硬化性コーティング組成物は、充填材、染料、顔料および潤滑要素を任意選択で含むことができることが理解されよう。さらに、カチオン硬化性モノマーは、硬化性疎水性モノマー、二官能性モノマー、および加硫剤、硬化剤などを含めた二次的硬化性成分を含むように構成することができる。硬化性モノマーの変性を、堆積した膜の特性を調節するために利用することができる。これにより、以下の制御が容易になる:表面張力および極性、滑らかさ、立体規則性、色、硬度、耐引掻性、その後のコーティングおよび/または接着剤への表面反応性、ならびに、表面に堆積した膜自体の中でのさらなる反応または表面に堆積した膜とこれに接触している材料との間のさらなる反応を促進する、光、熱、湿気への反応性。
【0064】
カチオン硬化性コーティング組成物中の金属塩の溶解度は、対イオンを変えること、金属塩の金属への配位子の付加および/または置換、ならびにこれらの組合せにより調整することができる。これにより、適切な溶解度が得られるので、表面と金属塩との間の効率的な電子移動が見られるようになろう。
【0065】
望ましくは、本発明の組成物が塗布される表面は、金属、金属酸化物または金属合金を含むことができる。さらに望ましくは、この表面は、金属または金属酸化物を含むことができる。好ましくは、この表面は金属を含むことができる。好適な表面は、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択することができる。アルミニウムおよび酸化アルミニウムには、それぞれ、アルクラッドアルミニウム(低銅分)および酸化物除去アルクラッドアルミニウム(低銅分)が含まれる。望ましくは、表面は、鋼およびアルミニウムからなる群から選択することができる。
【0066】
鋼またはアルミニウム表面にコーティングするためのカチオンコーティング組成物において使用するのに好適な金属塩は、銀塩、銅塩およびその組合せからなる群から選択することができ、但し、銀塩および銅塩の対イオンは、ClO、BF、PF、SbFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0067】
本発明の発明コーティング組成物の金属塩の金属は、その上でこれを硬化することになる金属面より反応性系列が低いことがさらに望ましい。したがって、本発明の組成物は多くの異なる金属面上にコーティングすることができる。
【0068】
本明細書における「コーティング」という用語への言及はすべて、ポリマーの膜または表面へのコーティングを含むものと解釈される。さらに、下記の官能化ポリマーの膜またはコーティングへの言及はすべて、架橋および非架橋コーティングの両方に適用される。
【0069】
硬化性成分を官能化して、重合した膜に望ましい特性を付与することができることが理解されよう。モノマーを変性してコーティングの以下の特性を制御することができる;表面張力および極性、滑らかさ、立体規則性、色、硬度、耐引掻性、ならびに、その後のコーティングおよび/または接着剤への反応性。さらに、官能化コーティングに光、熱、湿気などの刺激を与えて、表面に堆積したコーティング自体の中でのさらなる反応または表面に堆積したコーティングとこれに接触している材料との間のさらなる反応を促進することもできる。
【0070】
例えば、二重硬化系を形成するためにラジカル硬化性モノマーで官能化したカチオン硬化性モノマー;加硫剤、硬化剤などを含む第二の硬化性成分で官能化したカチオン硬化性モノマー;ならびに、表面張力および極性、滑らかさ、立体規則性、色、硬度、耐引掻性、その後のコーティングおよび/または接着剤への反応性、表面に堆積した膜自体の中でのさらなる反応または表面に堆積した膜とこれに接触している材料との間のさらなる反応を促進する、光、熱、湿気への反応性を制御するために官能化したコーティングが挙げられる。
【0071】
本明細書に記載のレドックスカチオン硬化性コーティング組成物は追加の還元剤を必要としない。この組成物は、レドックス反応に関与することができる金属基体(またはレドックス反応に関与することができるその他の表面)に接触するまで安定であり、したがって従来の還元剤成分の役割を果たすものである。本発明のレドックスカチオン硬化性コーティング組成物は、一液型組成物として貯蔵安定性を有し、多成分型組成物の傾向がある先行技術の組成物とは異なり特別のパッケージングを必要としない。
【0072】
本発明のコーティング組成物は、効率的な硬化のために追加の触媒を必要としない。本発明は、コーティング組成物が塗布され硬化されることになる表面に対する金属塩成分の適切な選択を利用する。しかし、表面と組成物の金属塩の間の電子移動をもたらすために、本発明によるコーティング組成物が任意選択で触媒を含んでもよいことが理解されよう。これは、さらに大きな硬化速度が必要な場合に有用なことがある。好適な触媒としては遷移金属塩が挙げられる。
【0073】
重合/フィルム形成の速度は、表面と組成物中の金属塩の間の標準還元電位の差に比例する。架橋は、直接表面上で行われる。しかし、後重合焼成処理を行うことができることが理解されよう。
【0074】
本発明はさらに、基体をコーティングする方法であって、
i)カチオン硬化性成分と、
ii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含むコーティング組成物を前記基体に塗布するステップを含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高い方法にも及ぶ。
【0075】
基体をコーティングする方法は、
i)コーティング組成物を塗布する前に基体を洗浄するステップと、
ii)本発明の前記コーティング組成物または前記コーティング組成物のエマルションに基体を浸漬するステップと、
iii)重合が完了した後、コーティングされた基体を洗い流すステップと
をさらに含むことができることが理解されよう。
【0076】
基体を洗浄するステップは、酸、塩基、洗剤、水溶液、水、脱イオン水、有機溶媒およびこれらの組合せを用いて洗うステップを含むことができる。ステップ(ii)で言及された、本発明のコーティング組成物のエマルションは、水性または有機エマルションを含むことができる。コーティングされた基体を洗い流すステップは、水で洗い流すステップ、および/またはコーティング/膜の特性に有利なリンス液で洗い流すステップを含むことができる。
【0077】
本発明は、
a)容器と、
b)本発明のカチオン硬化性組成物と
を含むパックにも関する。
【0078】
この容器は通気性とすることができる。あるいは、この容器は非通気性とすることもできる。
【0079】
本発明は、上記の方法を利用して基体に塗布されたコーティングにも及ぶ。この基体は金属とすることができる。
【0080】
別の態様では、本発明は、上記の方法を利用して基体に塗布されたコーティングを含む塗装物品にも及ぶ。この基体は金属とすることができる。本発明は、基体に塗布されたコーティングを含む塗装物品をさらに提供する。この基体は金属成分を含むことができる。
【0081】
さらに、この塗装物品は、これに塗布された硬化性組成物を有することができる。したがって、第2の基体と合わせることが容易になる。この塗装物品は、これに付着された第2の基体を有することができる。
【0082】
当業者によって理解されるように、本発明の組成物の金属塩は、金属塩のアニオンが重合/硬化プロセスの失活をもたらさないように選択されるであろう。
【0083】
適切な場合には、本発明の一実施形態の任意選択の特徴および/または追加の特徴のすべてを、本発明のもう1つの/その他の実施形態(複数可)の任意選択の特徴および/または追加の特徴と組み合わせることができることが理解されるであろう。
【0084】
本発明の追加の特徴および利点は、本発明の詳細な説明に記載されており、かつ本発明の詳細な説明および図面から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】温度25℃において、エポキシ樹脂中に酸化還元対である6−パルミチン酸アスコルビル:ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを含む二液系の重合発熱を時間(日)の関数として示したグラフである。
【図2】25℃におけるグリットブラスト仕上げ軟鋼上の表面促進型エポキシ重合のFTIR−ATRスペクトル(3100cm−1〜600cm−1)である。
【図3】25℃におけるグリットブラスト仕上げ軟鋼上の表面促進型エポキシ重合のFTIR−ATRスペクトル(1190cm−1〜760cm−1)である。
【図4】図2および図3に示したカチオン硬化性コーティング組成物についての重合率と時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
Crivello型酸化還元対「6−ヘキサデカン酸アスコルビル:ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート」を含む脂環式エポキシ樹脂Cyracure6110に塗布された市販の銅下塗りエアロゾルの使用によって、適当なタイムスケール(<24時間)で使用可能な硬化強度を生ずる室温重合を行うことができることが分かった。
【0087】
Crivello型酸化還元対の中で、6−ヘキサデカン酸アスコルビル:ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートは最も不安定であり、信頼できる2成分構成で使用することができなかった。基体に銅下塗り剤を塗布しないと重合は起こらなかった。このオニウム型塩およびその代替物に基づく他のすべての可能な酸化還元対は、基体に銅を下塗りしても表面硬化接着剤として効果がなかった。Crivelloの論文(Crivello,J.V.;Lee,J.L.;J.Polym.Sci.Part A:Polm.Chem.1983,21巻,1097〜1110ページ)では、これらのレドックスカチオン系成分の二液構成が可能であるという考え方が提案された。我々の研究では、これがありそうもないことが分かった。何故ならば、二液構成におけるこれら3成分の任意の組合せは実用的なタイムスケールで貯蔵が不安定だからである(図1参照)。
【0088】
図1は、試料10gの重合発熱で測定した、エポキシ樹脂Cyracure6110中に6−パルミチン酸アスコルビル:ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート酸化還元対を含む二液系の安定性のグラフである。組成物の安定性は、貯蔵時間を変化させた上記の二液系の試料10gの重合発熱の測定により評価した。このグラフは、放出された熱とこの系が使用前に貯蔵された日数との間の逆相関を明らかに示している。112日後には、測定された重合発熱の著しい減少を観察することができたが、これは組成物の反応性がかなり低下していることを示すものである。さらに、配合物粘度が著しく上昇したため、この配合物の調合および取扱いは困難であった。
【0089】
電気化学列は、その標準電位に基づいた、物質の酸化および還元力の尺度である。物質の標準電位は、水素電極に対する大きさである。負の標準(還元)電位を有する金属は、溶液中の水素イオンを減少させる熱力学的傾向がある。一方、正の標準電位を有する金属のイオンは、水素ガスによって還元される傾向がある。図式4(下記)に示した反応性列は電気化学列を拡張したものである。
【0090】
【化6】

【0091】
通常、反応性列でより高い位置に置かれた金属または元素だけが、反応性列において下位である別の金属または元素を還元することができる。例えば、鉄はスズを還元することができるが、カリウムを還元することはできない。反応性列の順序を、図式4に示したものと(変える)逆にすることができることを理解されたい。しかしながら、「より高い」および「より低い」という用語は、図式4に示した順序で最も反応性が高いものを一番上に有し、最も反応性が低いものを一番下に有する反応性列のことであると理解されたい。本発明の文脈においていかなる場合も、金属塩の金属は、それが塗布される表面で還元されうるように選択されることを理解されたい。
【実施例】
【0092】
以下に記載の調製はすべて暗部で行われた。これらの塩は感光性であることが分かっているからである。配合物はすべて、均質性を確保するために使用前16時間完全に混合した。
【0093】
配合物を試験するための基本手順:
すべての接着剤配合物の試験について、ASTM E177およびASTM E6に基づく標準試験法を用いた。
装置
適切なロードセルを装備した引張試験機。
試験片
品質規格、製品または試験プログラムで指定される、重ね剪断片。
アセンブリ手順
1.5本の試験片がそれぞれの試験に使用された。
2.必要な場合には試料表面を調製した。例えば、軟鋼重ね剪断片は炭化ケイ素でグリットブラストした。
3.試験片は、アセンブリ前にアセトンまたはイソプロパノールで拭くことにより洗浄した。
4.それぞれの重ね剪断片上の接着面は322.6mmまたは0.5inであった。接着剤試料を塗布する前、これにマーキングする。
5.十分な量の接着剤を1つの重ね剪断片の調製された表面に塗布した。
6.第2の重ね剪断片を接着剤の上に置き、アセンブリは接着面のそれぞれの側部をクランプした。
試験方法
試験プログラムで指定したように硬化させた後、剪断強さを以下のようにして求めた。
1.試験片を、それぞれの端部の外側25.4mm(1インチ)をジョーが握るように、試験機のグリップに置いた。試験片の長軸は、グリップアセンブリの中心線を通って加えられる引張力の方向と一致させた。
2.アセンブリは、別段の定めがない限り、2.0mm/分または0.05インチ/分のクロスヘッド速度で試験した。
3.破断荷重を記録した。
以下の情報を記録した:
1.名称または番号を含めた接着剤の識別、およびロット番号。
2.基体および寸法を含めた、使用した試験片の識別。
3.試験片の調製に用いた表面処理。
4.硬化条件(通常は周囲の室温のみ、20〜25℃)。
5.試験条件(標準温度および圧力、すなわち室温)。
6.必要があれば状態調節(なし、接着する基体はすべて使用前に新たに調製された)。
7.5本以外の場合、試験片の数(通常は、それぞれの引用結果について5本の結果の平均)。
8.それぞれの試験片の結果。
9.すべての重複測定について平均剪断強さ。
10.品質規格、製品紹介または試験プログラムで必要な場合、それぞれの試験片の破損形態。
11.この方法から外れているものすべて。
【0094】
ビニルエーテル成分を含まないレドックスカチオン系:
配合物調製のための基本手順
モノマー(10g)に所定量の開始剤塩を加えた。室温で連続撹拌(16時間)して塩をモノマーに完全に溶解した。試料はすべて、調製および貯蔵中に光を遮断するためにカバーされていた。
【0095】
<実施例1>
(ジフェニルヨードニウム)PF(0.20g)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(10g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:硬化せず
ガラス重ね剪断片:硬化せず
【0096】
<実施例2>
[Ag(シクロヘキセン)]SbF(0.19g、0.47mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(10g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:3.5N/mm
【0097】
<実施例3>
[Ag(シクロドデセン)]SbF(0.27g、0.47mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(10g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:4N/mm
【0098】
<実施例4>
[Ag(ヘキサジエン)n]SbF(0.19g、0.47mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(10g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:2.5N/mm
【0099】
<実施例5>
[Ag(1,9−デカジエン)n]SbF(0.24g、0.47mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(10g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:2.5N/mm
【0100】
<実施例6>
[Ag(1,7−オクタジエン)n]SbF(0.21g、0.47mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(10g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:3.5N/mm
【0101】
<実施例7>
[Ag(15−クラウン−5)]SbF(0.32g、0.47mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(10g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:5.5N/mm
【0102】
<実施例8>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.47mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(10g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:5.5N/mm
アルミニウム:3.5N/mm
アルミニウム(アルクラッド−低銅分):2.0N/mm
アルミニウム(酸化物を除去するために引っ掻いた):5.0N/mm
ステンレス鋼:3.0N/mm
【0103】
ビニルエーテル成分を含むカチオン系:
配合物調製のための基本手順
所定量のモノマーに、所定量の開始剤塩と所定量の促進剤とを加えた。室温で連続撹拌(16時間)して塩をモノマーに完全に溶解した。試料はすべて、調製および貯蔵中に光を遮断するためにカバーされていた。
【0104】
<実施例1>
[対照A]
ジフェニルヨードニウムPF(0.20g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:硬化せず
ガラス重ね剪断片:硬化せず
【0105】
<実施例2>
[対照B]
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)2]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式モノマーCyracure6110(10g、40mmol)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:4N/mm
【0106】
<実施例3>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
普通の軟鋼重ね剪断片:7N/mm
アルクラッドアルミニウム(低銅分)2.5N/mm
アルクラッドアルミニウム(酸化物除去)5.0N/mm
標準アルミニウム 10N/mm
銅 5.2N/mm
ステンレス鋼 6.2N/mm
重クロム酸亜鉛 5.0N/mm
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片にE−コーティングした鋼:20N/mm
ガラス重ね剪断片:硬化せず
25℃で4時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:9N/mm
【0107】
<実施例3a>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.12g、0.215mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
25℃で4時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:9N/mm
【0108】
促進剤および促進剤濃度
<実施例4>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:5N/mm
【0109】
<実施例5>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤1,4−ブタンジオールビニルエーテル(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0110】
<実施例6>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤VEctomer(商標)4060:ビス−(4−ビニルオキシブチル)アジペート{CAS#135876−36−7}(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:12N/mm
【0111】
<実施例7>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤VEctomer(商標)4060:ビス−(4−ビニルオキシブチル)アジペート{CAS#135876−36−7}(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:15N/mm
【0112】
<実施例8>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、促進剤VEctomer(商標)4060:ビス−(4−ビニルオキシブチル)アジペート{CAS#135876−36−7}(10.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:7N/mm
【0113】
<実施例9>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0114】
<実施例10>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0115】
<実施例11>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤エチル−1−プロペニルエーテル(シスとトランスの混合物)(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:18N/mm
【0116】
<実施例12>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤エチル−1−プロペニルエーテル(シスとトランスの混合物)(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:18N/mm
【0117】
<実施例13>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤VEctomer(商標)4010:ビス−(4−ビニルオキシブチル)イソフタレート{CAS#130066−57−8}(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:9N/mm
【0118】
<実施例14>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤VEctomer(商標)4010:ビス−(4−ビニルオキシブチル)イソフタレート{CAS#130066−57−8}(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:18N/mm
【0119】
<実施例15>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、促進剤VEctomer(商標)4010:ビス−(4−ビニルオキシブチル)イソフタレート{CAS#130066−57−8}(10.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:15N/mm
【0120】
<実施例16>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤VEctomer(商標)4030:ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート{CAS#135876−32−3}(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:23N/mm
【0121】
<実施例17>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤VEctomer(商標)4030:ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート{CAS#135876−32−3}(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:11N/mm
【0122】
<実施例18>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、促進剤VEctomer(商標)4030:ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート{CAS#135876−32−3}(10.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:10N/mm
【0123】
<実施例19>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤VEctomer(商標)4050:ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]テレフタレート{CAS#117397−31−6}(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:11N/mm
【0124】
<実施例20>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤VEctomer(商標)4050:ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]テレフタレート{CAS#117397−31−6}(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:12N/mm
【0125】
<実施例21>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤VEctomer(商標)4040:ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレート{CAS#119581−93−0}(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:2N/mm
【0126】
<実施例22>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤VEctomer(商標)4040:ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレート{CAS#119581−93−0}(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:4N/mm
【0127】
<実施例23>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤VEctomer(商標)4020:ビス[4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート{CAS#131132−77−9}(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:3N/mm
【0128】
<実施例24>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤VEctomer(商標)4020:ビス[4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート{CAS#131132−77−9}(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:5N/mm
【0129】
<実施例25>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、促進剤VEctomer(商標)4020:ビス[4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート{CAS#131132−77−9}(10.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:13N/mm
【0130】
<実施例26>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤VEctomer(商標)5015:トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート{CAS#196109−17−8}(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:16N/mm
【0131】
<実施例27>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤VEctomer(商標)5015:トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート{CAS#196109−17−8}(0.5g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:12N/mm
【0132】
<実施例28>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、促進剤VEctomer(商標)5015:トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート{CAS#196109−17−8}(10.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:12N/mm
【0133】
<実施例29>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(9.5g)および促進剤VEctomer(商標)2020:脂肪族ウレタンジビニルエーテルオリゴマー{CAS#143477−70−7}(0.5g)に溶解した。
25℃で72時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:6N/mm
【0134】
<実施例30>
モノマー成分
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式樹脂ビス(3,4エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートCyracure UVR6128(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0135】
<実施例31>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式エポキシ樹脂Cyracure UCB CAT−002(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0136】
<実施例32>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式樹脂PC1000(PolySetから入手)(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:9.0N/mm
【0137】
<実施例33>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、エピクロロヒドリン−4,4’−イソプロピリデンジフェノール樹脂、アラルダイトGY266(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:26N/mm
【0138】
<実施例34>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(6.0g)、OXT−101、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン(2.0g)、および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0139】
<実施例35>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(6.0g)、OXT−121、1,4−ビス[3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(2.0g)、および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0140】
<実施例36>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(6.0g)、OXT−221、3,3’−[オキシビス(メチレン)]ビス(3−エチル−オキセタン)(2.0g)、および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0141】
<実施例37>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(6.0g)、OXT−212、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシロキシ)メチル]オキセタン(2.0g)、および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0142】
金属塩、金属塩の濃度および組合せ
<実施例38>
[Ag(1,5−ヘキサジエン)]SbF(0.22g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0143】
<実施例39>
[Ag(1,9−デカジエン)]SbF(0.26g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0144】
<実施例40>
[Ag(1,7−オクタジエン)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0145】
<実施例41>
[Ag(1,7−オクタジエン)]PF(0.20g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0146】
<実施例42>
[Ag(1,7−オクタジエン)]BF(0.18g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0147】
<実施例43>
[Ag(1,7−オクタジエン)]ClO(0.18g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0148】
<実施例44>
[Ag(15−クラウン−5)]SbF(0.24g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0149】
<実施例45>
[Ag(15−クラウン−5)]SbF(0.20g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0150】
<実施例46>
[Ag(15−クラウン−5)]BF(0.18g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0151】
<実施例47>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]PF(0.22g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0152】
<実施例48>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]BF(0.18g、0.43mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0153】
<実施例49>
[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]ClO(0.18g、0.4mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:20N/mm
【0154】
<実施例50>
[Cu(1,5−シクロオクタジエン)]BF(0.026g、0.07mmol)および[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.20g、0.35mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で4時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:14N/mm
【0155】
<実施例51>
[Cu(1,5−シクロオクタジエン)]BF(0.052g、0.14mmol)および[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.16g、0.28mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で4時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:13N/mm
【0156】
<実施例52>
[Cu(1,5−シクロオクタジエン)]BF(0.08g、0.21mmol)および[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.12g、0.21mmol)を、脂環式ジエポキシドモノマーCyracure6110、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(8.0g)および促進剤1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)に溶解した。
25℃で4時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:11.5N/mm
【0157】
コーティング実施例
本発明のカチオン硬化性配合物100mLを調製した。この配合物を、適切なサイズの浴に入れた。
典型的なカチオン性配合物:
a.3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(77.6%);
b.1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(20%);および
c.銀(1,5−シクロオクタジエン)ヘキサフルオロアンチモナート(2.4%)
【0158】
上記のコーティング配合物は例示のために挙げた代表的な配合物にすぎないことが、当業者によって理解されよう。このコーティング配合物は、コーティング配合物の最終用途に適したモノマー、金属塩、濃度などに変更することができる。
【0159】
金属基体(10×2.5cm)をアセトンで拭くことにより洗浄し、これらの配合物に浸漬した。金属基体は、これらの配合物を含む浴に沈めた。浸漬時間は、表面と組成物中の金属塩との間の標準電位の差、ならびに所望のコーティング厚み(自己限界厚み未満であることが必要な場合)に応じたものとした。コーティング/重合が完了した後、残存モノマーを洗浄により除去した。生成した膜をFTIR−ATRで分析した。
【0160】
図2は、25℃におけるグリットブラスト仕上げ軟鋼上の表面促進型エポキシドコーティングのFTIR−ATRスペクトルである。エポキシドモノマーは700cm−1に特徴的なIR伸縮を有している。所望のポリエーテルコーティングは1080cm−1に特徴的なIR伸縮を有している。10分間隔で試料を反復走査することにより、ポリエーテル濃度が時間とともに上昇していることが分かる。これは、グリットブラスト仕上げ軟鋼の表面上に高分子コーティングが形成されていることを実証するものである。
【0161】
図2における重要な1190cm−1〜760cm−1領域の拡大図を図3に示す。IRスペクトルは、時間とともにポリエーテル濃度が上昇するにつれて、エポキシドモノマー濃度が低下することを明らかに示している。
【0162】
カチオン硬化性コーティング組成物の重合率と時間のグラフを図4に示す。コーティング組成物は、Cyracure6110(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)(8.0g)、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(2.0g)および[Ag(1,5−シクロオクタジエン)]SbF(0.25mmol)を含み、20℃において基体としてグリットブラスト軟鋼を使用している。重合率は、図1および2(上記)からFTIR−ATRを利用して求めた。スペクトルにおいて1080cm−1のピーク強度が時間とともに変化することは、ポリエーテル形成、すなわち重合を示している。このグラフは、重合の初速度がおよそ30分まで速く、線形であることを示しており、そこから水平域が始まることが徐々に認められる。
【0163】
本発明に関して本明細書で使用された場合、「含む/含んでいる」(comprises/comprising)という用語および「有している/含んでいる」(having/including)という用語は、明示された特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を指定するために使用されるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはこれらの群の存在または付加を排除しない。
【0164】
明確にするために別々の実施形態の文脈で記載された本発明の特定の特徴は、1つの実施形態として組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするために1つの実施形態の文脈で記載された本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の適切な下位の組合せとして提供することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上で硬化させるためのカチオン硬化性組成物であって、
(i)カチオン硬化性成分と、
(ii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記組成物の前記開始剤成分の前記金属塩が前記表面で還元され、これにより前記組成物の前記カチオン硬化性成分の硬化を開始させるカチオン硬化性組成物。
【請求項2】
前記金属塩が遷移金属カチオンを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記遷移金属カチオンが、銀、銅およびこれらの組合せから選択される、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記金属塩が、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフリミド、ビス−トリフリミド、およびこれらの組合せからなる群から選択される対イオンを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記カチオン硬化性成分が、エポキシ、ビニル、オキセタン、チオキセタン、エピスルフィド、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、オキサジン、ラクトン、トリオキサン、ジオキサン、スチレンおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記表面が、金属、金属酸化物または金属合金を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記表面が、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
金属酸化物除去剤をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物除去剤が、塩化物イオン、亜鉛(II)塩およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記表面と前記金属塩の間の電子移動をもたらすための触媒をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
第1の金属基体を別の基体に付着させるための、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
封止のための、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
ねじロック、フランジ封止、構造接着、および/または金属接合における請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項14】
表面上でカチオン硬化性組成物の硬化を開始させるための少なくとも1つの金属塩の使用であって、前記金属塩の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より大きい使用。
【請求項15】
2つの基体を接合する方法であって、
(i)i)カチオン硬化性成分と、
ii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含む組成物を少なくとも1つの基体に塗布するステップと、
(ii)前記組成物と結合を形成するように前記第1の基体と第2の基体を合わせるステップと
を含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が、前記基体の少なくとも1つの標準還元電位より高い方法。
【請求項16】
少なくとも1つの基体が、金属、金属酸化物または金属合金を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの基体が金属を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
i)容器と、
ii)請求項1に記載のカチオン硬化性組成物と
を含むパック。
【請求項19】
前記容器が通気性である、請求項18に記載のパック。
【請求項20】
前記容器が非通気性である、請求項19に記載のパック。
【請求項21】
表面上で硬化させるためのカチオン硬化性組成物であって、
i)カチオン硬化性成分と、
ii)少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む促進剤種と、
iii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記組成物の前記開始剤成分の前記金属塩が前記表面で還元され、これにより前記組成物の前記カチオン硬化性成分の硬化を開始させるカチオン硬化性組成物。
【請求項22】
前記金属塩が遷移金属カチオンを含む、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項23】
前記遷移金属カチオンが、銀、銅およびこれらの組合せから選択される、請求項22に記載の硬化性組成物。
【請求項24】
前記金属塩が、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフリミド、ビス−トリフリミド、およびこれらの組合せからなる群から選択される対イオンを含む、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項25】
少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む前記促進剤種が、以下の一般構造式を有する、請求項21に記載の硬化性組成物
【化1】

[式中、
mは、0または1とすることができ、
、R、およびRは、同一でもまたは異なっていてもよく、水素、C〜C20アルキル鎖(直鎖、分岐、または環式)およびC〜C20アリール部分、ならびにこれらの組合せからなる群から選択することができ、
Xは、C〜C30飽和または不飽和、環式または非環式部分とすることができ、
、R、RおよびXは、それぞれ独立に、エーテル結合、硫黄結合、カルボキシル基、およびカルボニル基を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい]。
【請求項26】
少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む前記促進剤種が、以下の一般構造式を有する、請求項21に記載の硬化性組成物
【化2】

[式中、
mは、0または1とすることができ、
nは0〜5とすることができ、
は、水素、C〜C20アルキル鎖(直鎖、分岐、または環式)およびC〜C20アリール部分、ならびにこれらの組合せからなる群から選択することができ、
Xは、C〜C30飽和または不飽和、環式または非環式部分とすることができ、
およびXは、それぞれ独立に、エーテル結合、アミン結合、硫黄結合、カルボキシル基、およびカルボニル基を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい]。
【請求項27】
少なくとも1つのビニルエーテル官能基成分を含む前記促進剤種が、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル、ビス−(4−ビニルオキシブチル)アジペート、エチル−1−プロペニルエーテル、ビス−(4−ビニルオキシブチル)イソフタレート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]テレフタレート、ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレート、ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]グルタレート、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、VEctomer(商標)2020、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項28】
少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む前記促進剤種が、全組成物の2〜98重量%存在する、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項29】
少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む前記促進剤種が、全組成物の5〜50重量%存在する、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項30】
少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む前記促進剤種が、全組成物の5〜30重量%存在する、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項31】
前記カチオン硬化性成分が、エポキシ、ビニル、オキセタン、チオキセタン、エピスルフィド、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、オキサジン、ラクトン、トリオキサン、ジオキサン、スチレンおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項32】
前記表面が、金属、金属酸化物または金属合金を含む、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項33】
前記表面が、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択される、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項34】
金属、金属酸化物または金属合金に塗布された、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項35】
前記金属表面と前記金属塩の間の電子移動をもたらすための触媒をさらに含む、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項36】
第1の金属基体を別の基体に付着させるための、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項37】
封止のための、請求項21に記載の硬化性組成物。
【請求項38】
ねじロック、フランジ封止、構造接着、および/または金属接合における、請求項21に記載の組成物の使用。
【請求項39】
カチオン硬化性成分の硬化を開始させるための開始剤パッケージであって、
i)金属塩と、
ii)少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む促進剤種と
を含む開始剤パッケージ。
【請求項40】
2つの基体を接合する方法であって、
i)a)カチオン硬化性成分と、
b)少なくとも1つのビニルエーテル官能基を含む促進剤種と、
c)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含む組成物を少なくとも1つの基体に塗布するステップと、
ii)前記組成物と結合を形成するように前記第1の基体と第2の基体を合わせるステップとを含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が、前記基体の少なくとも1つの標準還元電位より高い方法。
【請求項41】
少なくとも1つの基体が、金属、金属酸化物または金属合金を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つの基体が金属を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
i)容器と、
ii)請求項21に記載のカチオン硬化性組成物と
を含むパック。
【請求項44】
前記容器が通気性である、請求項43に記載のパック。
【請求項45】
前記容器が非通気性である、請求項43に記載のパック。
【請求項46】
表面をコーティングするための硬化性コーティング組成物であって、
(i)カチオン硬化性成分と、
(ii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含み、
前記開始剤成分の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記組成物の前記開始剤成分の前記金属塩が前記表面で還元され、これにより前記組成物の前記カチオン硬化性成分の硬化を開始させる硬化性コーティング組成物。
【請求項47】
前記金属塩が遷移金属カチオンを含む、請求項46に記載のコーティング組成物。
【請求項48】
前記遷移金属カチオンが、銀、銅およびこれらの組合せから選択される、請求項47に記載のコーティング組成物。
【請求項49】
前記金属塩が、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフリミド、ビス−トリフリミド、およびこれらの組合せからなる群から選択される対イオンを含む、請求項46に記載のコーティング組成物。
【請求項50】
前記表面が、金属、金属酸化物または金属合金を含む、請求項46に記載のコーティング組成物。
【請求項51】
前記表面が、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択される、請求項46に記載のコーティング組成物。
【請求項52】
前記カチオン硬化性成分が、エポキシ、ビニル、ビニルエーテル、オキセタン、チオキセタン、エピスルフィド、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、オキサジン、ラクトン、トリオキサン、ジオキサン、スチレンおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する、請求項46に記載のコーティング組成物。
【請求項53】
前記カチオン硬化性成分が、ビニルエーテル成分と、エポキシ、ビニル、オキセタン、チオキセタン、エピスルフィド、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、オキサジン、ラクトン、トリオキサン、ジオキサン、およびスチレンからなる群から選択される少なくとも1つの他のカチオン性硬化性成分とを含む、請求項46に記載のコーティング組成物。
【請求項54】
基体をコーティングする方法であって、
i)カチオン硬化性成分と、
ii)少なくとも1つの金属塩を含む開始剤成分と
を含むコーティング組成物を前記基体に塗布するステップを含み、前記開始剤成分の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高い方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法を利用して基体に塗布されたコーティング。
【請求項56】
i)請求項55に記載のコーティングと、
ii)基体と
を含む塗装物品。
【請求項57】
硬化性組成物が塗布された、請求項56に記載の塗装物品。
【請求項58】
第2の基体と合わせた、請求項56に記載の塗装物品。
【請求項59】
第2の基体が付着した、請求項56に記載の塗装物品。
【請求項60】
i)容器と、
ii)請求項46に記載のカチオン硬化性コーティング組成物と
を含むパック。
【請求項61】
前記容器が通気性である、請求項60に記載のパック。
【請求項62】
前記容器が非通気性である、請求項60に記載のパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−523670(P2011−523670A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510001(P2011−510001)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056257
【国際公開番号】WO2009/141444
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(501194879)ロックタイト (アール アンド ディー) リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】LOCTITE (R & D) LIMITED
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】