説明

一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置

一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置は、開口部を底面に設けているホッパーと、このホッパーを揺動させる駆動機構と、揺動するホッパーの開口部を閉塞する底蓋とを備える。底蓋は、上面の形状を、揺動するホッパーの開口部を棒状ワークが漏れないように閉塞する形状とし、かつ、揺動する運動方向に直交する方向に延長するスリットを上面に開口して設けている。このスリットは、棒状ワークの最大外形部を通過できないが、棒状ワークのほぼ全体を通過できる幅としている。駆動機構がホッパーを揺動して、ホッパーに収納している棒状ワークを底蓋のスリットに案内し、スリットで整列して棒状ワークが排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、一端の外形が大きい棒状ワークを整列して排出する装置に関し、とくに、ピペットチップを整列して排出するのに最適な取出装置に関する。
【背景技術】
一端の外形が大きい棒状ワークであるピペットチップは、垂直に立てる姿勢でトレイに縦横に並べて搬送される。トレイに収納する状態で自動の試験機等にセットして使用される。ピペットチップを使用した後、トレイが残るので、これを廃棄する必要がある。ピペットチップは、全国で極めて多く使用されている。このため、廃棄されるトレイも極めて多く、廃棄に多くの経費を必要としているのが実状である。この弊害は、ピペットチップをトレイに特定の姿勢でセットすることなく、たとえば袋や箱に入れて搬送したものを、試験機にセットする方式で解消できる。ただ、トレイはピペットチップを特定の姿勢で、特定の位置に配設しているので、自動の試験機でピペットチップの取出機構を簡単にできる。袋や箱で搬送されるピペットチップは、自動試験機にセットされる状態で、姿勢と位置が特定されず、ばらばらな状態でセットされる。したがって、試験機が種々の姿勢でばらばらに供給されるピペットチップを、ひとつずつ特定の姿勢で取り出す必要がある。
姿勢が特定されないピペットチップを取り出して特定の姿勢に並べる機構は開発されている(特許文献1および2参照)。
特許文献1 特開2000−19182号公報
特許文献2 特開2001−187629号公報
特許文献1の公報に記載されるピペットチップの取出装置は、ランダムに供給されるピペットチップを、ほぼ垂直な姿勢のコンベアで上昇して1個に分離し、コンベアで供給されるピペットチップを、傾斜面に落下させる。傾斜面はスリットに向かって下り勾配に傾斜しており、スリットにピペットチップを落下させる。スリットは、ピペットチップの鍔を通過できない隙間としている。したがって、ピペットチップは、鍔を引っかける姿勢でスリットから排出される。この取出装置は、構造が複雑で製造コストが高くなる。高価な取出装置は、ランダムに供給されるピペットチップをトレイに供給するための装置には使用できる。ただ、試験機には複雑で高価な機構を採用するのが難しい。それは、ピペットチップをトレイに供給する装置に比較して、試験機の数が極めて多くなるからである。したがって、試験機に取出装置を設けてトレイを省略するためには、簡単で安価な取出装置が必要となる。さらに、従来のこの装置は、ピペットチップを傾斜面に落下させるので、この衝撃がピペットチップを損傷させるなどの悪い影響を与える欠点もある。
さらに、特許文献2の公報に記載される取出装置は、ピペットチップをランダムに供給する回転ドラムを備える。この回転ドラムは、内面にピペットチップのすくい樋を設けている。回転ドラムが回転されると、ピペットチップをすくい樋に載せて持ち上げた後、このすくい樋からスライドレールに落下させる。スライドレールのピペットチップは、落下ガイドを通過してトレイの定位置に落下される。この構造の取出装置も構造が複雑で製作コストが高くなる。また、ピペットチップを落下させるので、その衝撃で損傷を受けやすい欠点がある。
本発明は、従来の取出装置が有する以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、極めて簡単な構造で製造コストを低減して、ランダムに供給されるピペットチップ等の棒状ワークを特定の姿勢に並べて取り出しできる一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、棒状ワークの衝撃と損傷を少なくして、ランダムに供給される棒状ワークを並べて取り出しできる一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置を提供することにある。
【発明の開示】
上記目的を達成するために本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。本発明の請求項1の取出装置は、一端の外形が大きい棒状ワークWを取り出す装置であって、揺動すると共に、揺動の回転中心軸の方向に延長する開口部11を底面に設けているホッパー10と、このホッパー10を揺動させる駆動機構20と、揺動するホッパー10の開口部11を棒状ワークWが漏れないように閉塞する底蓋30とを備える。底蓋30は、ホッパー10の開口部11を閉塞する上面の形状を、揺動するホッパー10の開口部11が移動する軌跡に沿う形状とし、かつ、揺動する運動方向に直交する方向に延長するスリット31を上面に開口するように設けている。このスリット31は、棒状ワークWの最大外形部を通過できないが、棒状ワークWのほぼ全体を通過できる幅としている。取出装置は、駆動機構20がホッパー10の開口部11を底蓋30の上面に沿って移動するようにホッパー10を揺動して、ホッパー10に収納している棒状ワークWを底蓋30のスリット31に案内し、スリット31で整列して排出する。
本発明の請求項2の取出装置は、底蓋30を振動して、スリット31に案内された棒状ワークWを排出する。
さらに、本発明の請求項9の取出装置は、ホッパー10の開口部11にゴム状弾性体14を固定して、ゴム状弾性体14を底蓋30に接近させる。
また、請求項10の取出装置は、ホッパー10の開口部11に固定しているゴム状弾性体14の幅を、ホッパー10が傾動させると先端縁がスリット31に接近するようにしている。請求項11の取出装置は、ゴム状弾性体に代わって、ホッパー10の開口部11に傾動プレート15を連結している。この傾動プレートは、先端縁が底蓋30に接近するように連結している。請求項12の取出装置は、傾動プレート15に弾性体16を連結して、弾性体15でもって傾動プレート15の先端縁を底蓋30に接近させている。
さらに、本発明の請求項13の取出装置は、棒状ワークWをピペットチップとして、積層して移送されるピペットチップの鍔を引っかけて引き抜く除去アーム50を備える。請求項14の取出装置は、除去アーム50を、ホッパー10と一緒に揺動しない固定部35に傾動できるように設けると共に、除去アーム50を傾動させる傾動機構52を、ホッパー10と除去アーム50との対向部分に固定している永久磁石53としている。
さらに、本発明の請求項15の取出装置は、底蓋30に、スリット31に移送されるピペットチップに積層して移送されるピペットチップの鍔を引っかけて上昇させる傾斜上昇スリット32を設けている。この傾斜上昇スリット32は、ピペットチップの移送方向に向かって上り勾配に傾斜すると共に、この傾斜上昇スリット32に除去アーム50の先端を配設して、傾斜上昇スリット32に沿って移送されるピペットチップを除去アーム50で除去することができる。
請求項16の取出装置は、傾斜上昇スリット32の先端と底蓋30との間に、最下段の棒状ワークWの鍔Tを通過させる隙間33を設けており、この隙間33が棒状ワークの鍔Tの厚さの2倍よりも狭くしている。
本発明の取出装置は、極めて簡単な構造で、製造コストを低減できる機構でもって、ランダムに供給されるピペットチップ等の棒状ワークを特定の姿勢に並べ取り出しできる特長がある。それは、取出装置がホッパーを揺動させて開口部に設けている底蓋のスリットに案内して、スリットから取り出すからである。
また、以上の機構で、棒状ワークを取り出す本発明の取出装置は、棒状ワークの衝撃と損傷を少なくして、特定の姿勢に並べて取り出しできる特長もある。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施例にかかる棒状ワークの取出装置の横断面図であり、図2は、図1に示す棒状ワークの取出装置の縦断面図であり、図3は、スリットの他の一例を示す拡大断面図であり、図4は、ホッパーの他の一例を示す断面図であり、図5は、鍔が二重に積層された棒状ワークが移送される状態を示す拡大断面図であり、図6は、図1に示す棒状ワークの取出装置の傾斜上昇スリットの近傍を示す斜視図であり、図7は、除去アームの先端部分の拡大平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための取出装置を例示するものであって、本発明は取出装置を下記のものに特定しない。
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
以下、本発明の一実施例として、一端の外形が大きい棒状ワークをピペットチップとする取出装置について詳述する。ただし、本発明の取出装置は、ピペットチップ以外の一端の外形が大きい棒状ワークを整列することもできる。
図1と図2に示す取出装置は、揺動する回転中心軸の方向に延長する開口部11を底面に設けているホッパー10と、このホッパー10を揺動させる駆動機構20と、揺動するホッパー10の開口部11を閉塞するように配設している底蓋30と、底蓋30のスリット31に案内された棒状ワークWを搬送する搬送機構40と、スリット31に案内された積層状態の棒状ワークWを除去する除去アーム50とを備える。
ホッパー10は、上に棒状ワークWを供給する供給口12を開口して、底面には底蓋30で閉塞される開口部11を設けている。図1のホッパー10は、平面状の底板13の中央に開口部11を設けている。底板13を平面状とするホッパー10は、スリット31で棒状ワークWがブリッジにならないようにスリット31に案内できる。ただし、棒状ワークは、底板を開口部に向かって傾斜させることもできる。図のホッパー10は、開口部11の幅をホッパー10全体の幅よりも狭くしている。このホッパー10は、多量の棒状ワークWを収納して、底蓋30のスリット31に案内できる。ただし、ホッパーは、底全体を開口部とすることもできる。ホッパー10に設けている開口部11の幅は、ホッパー10が最も傾いた姿勢で、開口部11の側縁が底蓋30のスリット31の近傍にあって、スリット31を閉塞しないようにする。したがって、ホッパー10が揺動する最大傾斜角度と、底蓋30の太さを考慮して最適値とする。
揺動するホッパー10の最大傾動角度は、好ましくは約30度とする。ただし、ホッパー10は、最大傾動角度が5〜60度、より好ましくは10〜45度となるように揺動させることもできる。また、ホッパー10が揺動する周期は、好ましくは約3秒とする。ただし、揺動する周期は0.5〜10秒、より好ましくは1〜5秒とすることもできる。ホッパー10を揺動させる周期を長くすると、棒状ワークWがホッパー10内でゆっくりと移動するので、損傷を著しく少なくできる。ただ、ホッパー10の周期が長すぎると、棒状ワークWをスリット31に案内するのにかかる時間が長くなる。したがって、ホッパー10が揺動する周期は、棒状ワークWを排出する時間を考慮して最適値とする。
棒状ワークWは、ホッパー10内で底蓋30に設けているスリット31の方向に向いてスリット31に入れられる。棒状ワークWは、最大外形がスリット31の幅よりも大きいので、この最大外形部(ピペットチップにおいては鍔)がひっかかってスリット31に垂直の姿勢で供給される。図3に示すように、スリット331は、下方に向かって次第に幅が狭くなる形状として、棒状ワークWの最大外形部を通過できないが、棒状ワークWのほぼ全体を通過できる幅とすることもできる。この図において、330は、底板を示している。
棒状ワークWをスリット31の方向に向けることができるように、ホッパー10は長さを棒状ワークWよりも長くしている。ホッパー10は、揺動できるように、片側あるいは両側を底蓋30又はフレーム60に連結する。ただし、ホッパーは底蓋の上に載せて揺動させることもできるので、必ずしも底蓋やフレームに連結する必要はない。また、駆動機構でもってホッパーを支持しながら揺動させることもできる。
ホッパー10は、傾動する状態で、開口部11が底蓋30で閉塞される。ホッパー10は、開口部11にゴム状弾性体14を固定して、ゴム状弾性体14を底蓋30に接近させている。このホッパー10は、開口部11の先端縁を底蓋30に隙間ができないように接近できると共に、開口部分が底蓋30の表面をスムーズに摺動して、摩耗を少なくできる。また、このゴム状弾性体14は、好ましくは交換できるように固定される。このゴム状弾性体14は、摩耗すると交換して開口部11と底蓋30との間に隙間ができないようにできる。
底蓋30は、揺動するホッパー10の開口部11から棒状ワークWが漏れないように開口部11を閉塞する。ホッパー10は揺動するので、底蓋30の上面形状は、揺動するホッパー10の開口部11が移動する軌跡に沿う形状として、ホッパー10が揺動しても棒状ワークWが開口部11と底蓋30との間から漏れないようにしている。図の取出装置は、ホッパー10を円弧に沿う軌跡に揺動させるので、底蓋30の上面形状を円弧に沿う形状としている。ただ、底蓋は、上面形状を楕円に沿う形状として、揺動するホッパーの開口部を閉塞することもできる。上面を円形ないし楕円形に沿う形状とする底蓋30の取出装置は、ホッパー10の開口部11をスムーズに移動できる。とくに、開口部11にゴム状弾性体14を設けているホッパー10は、ゴム状弾性体14を底蓋30の上面に摺動させてスムーズに移動できる。ただ、底蓋は、上面を多角形に沿う形状として、揺動するホッパーの開口部を棒状ワークが漏れないように閉塞することもできる。多角形に沿う形状の上面の底蓋は、ホッパーが揺動するときに、開口部と底蓋との間の隙間の幅が変化する。ただ、開口部と底蓋との最大隙間を、棒状ワークの漏れない幅にすれば、棒状ワークが漏れないようにホッパーを揺動できる。さらに、ホッパーの開口部のゴム状弾性体を固定し、ゴム状弾性体を変形させて、開口部と底蓋との隙間を閉塞することもできる。
細長い棒状ワークは、スリットの近傍で絡まり状態、すなわちジャミング状態となることがある。棒状ワークのジャミングは、板状のゴム状弾性体の幅を広くして解消できる。このことを実現するゴム状弾性体は、ホッパーが最大傾斜角度に傾動する状態で、その先端縁をスリットに接近させる幅を有する。このゴム状弾性体は、ホッパーが傾動される毎に、その先端縁をスリットの近傍まで移動させる。スリットの近傍まで移動するゴム状弾性体は、その先端縁で、スリットの近傍で絡まり状態となっている棒状ワークを移動させてジャミングを解消する。このことを実現するゴム状弾性体は、ホッパーがもっとも大きく傾斜する最大傾斜状態で、その先端縁をスリットの内側に、あるいはスリットの側縁に、あるいはまたスリットの外側に位置させる。ホッパーの最大傾斜状態で先端縁をスリットの内側あるいは側縁まで移動させるゴム状弾性体は、スリットに垂直な姿勢で案内されている棒状ワークの鍔を押圧する。したがって、このゴム状弾性体は、スリットに案内されている棒状ワークの鍔を押圧してそれ自体が弾性変形する。この構造のゴム状弾性体は、スリットの近傍における棒状ワークのジャミングを有効に解消できる。ホッパーの最大傾動位置において、先端縁をスリットの外側に位置させるゴム状弾性体は、スリットに案内される棒状ワークの鍔を押圧しない。このため、このゴム状弾性体は、スリットに正常に案内されている棒状ワークの鍔は押圧せず、スリットの近傍でジャミング状態となっている棒状ワークのみを移動してジャミングを解消する。このため、スリットに案内された棒状ワークをスムーズに移動できる特徴がある。ただ、ホッパーの最大傾斜状態において、先端縁をスリットの外側に位置させるゴム状弾性体は、スリットに案内された棒状ワークの鍔を軽く押圧することもあるので、このゴム状弾性体は、鍔を押圧してそれ自体が弾性変形する。
ホッパーは、図4に示すように、ゴム状弾性体に代わって傾動プレート415を連結することもできる。傾動プレート415は、ホッパー410の開口部411に傾動できるように連結される。傾動プレート415は、その先端縁を底蓋430に接近させて、揺動するホッパー410から棒状ワークが漏れないように閉塞する。傾動プレート415は、自重で傾動して先端を底蓋430に接近させる。ただ、図に示すように、傾動プレート415に弾性体416を連結し、弾性体416でもって傾動プレート415の先端縁を底蓋430に接近させることもできる。
底蓋30は、ホッパー10が揺動する運動方向に直交する方向に延長してスリット31を設けている。このスリット31は、底蓋30の上面に開口するように設けている。スリット31は、棒状ワークWの最大外形部を通過させず、最大外形部以外の部分であるほぼ全体を通過させる幅としている。棒状ワークWをスリット31に入れて、最大外形部である鍔をスリット31の上面に係止する垂直姿勢でスリット31に沿って搬送して排出するためである。スリット31は、底蓋30の端部まで延長して設けている。ここに案内している棒状ワークWをスリット31で底蓋30の外部に排出するためである。棒状ワークWは垂直の姿勢でスリット31で排出される。したがって、スリット31は、垂直な方向に開口されるように底蓋30に設けられる。ただ、スリットは、多少傾斜する姿勢で棒状ワークを排出することもできるので、必ずしも垂直な姿勢で設ける必要はなく、傾斜する姿勢とすることもできる。棒状ワークWであるピペットチップは、鍔を設けて最大外形部としている。したがって、スリット31は鍔を通過できないが、鍔以外の部分を通過できる幅としている。ただし、スリットに移送される棒状ワークは、必ずしも鍔を設けた形状とする必要はなく、たとえば、円錐状ないし角錐状として一端を最大外形部とすることもできる。
駆動機構20は、ホッパー10を揺動させる。図の駆動機構20は、モーター21で回転されるクランク機構22と、このクランク機構22のクランクアーム23に連結しているコンロッド24とを備える。コンロッド24は下端をクランクアーム23に連結して、上端をホッパー10の片側に、各々球関節25を介して連結している。モーター21がクランクアーム23を回転させると、コンロッド24が往復運動して、ホッパー10を揺動させる。この駆動機構20は、簡単な機構でホッパー10を揺動できる。ただ、本発明の取出装置は、ホッパーを揺動させる駆動機構を図に示す機構には特定せず、ホッパーを揺動できる全ての機構、たとえば伸縮するシリンダーをホッパーに連結し、このシリンダーを伸縮させてホッパーを揺動することもできる。
搬送機構40は、底蓋30のスリット31に案内された棒状ワークWをスリット31に沿って排出する。図の搬送機構40は底蓋30を振動させる振動機である。振動機は、棒状ワークWをスリット31に沿って移送するように底蓋30を振動させる。振動機は、極めて簡単な構造で、棒状ワークWをスリット31に沿って移送できる。ただ、搬送機構は、底蓋を振動させる機構に特定されない。スリットの棒状ワークを排出できる全ての機構、たとえば、スリットの棒状ワークに空気を噴射して移送する構造、あるいは、底蓋を棒状ワークの移送方向に傾斜させる構造、あるいはスリットの内面にコンベアを設ける機構等も使用できる。
内部を空洞としているピペットチップ等の棒状ワークWは、複数本が積層されることがある。内部の空洞に別の棒状ワークWが挿入されて積層されるからである。棒状ワークWを1本に分離してスリット31から排出するために、図の取出装置は、積層して移送される棒状ワークWを除去する除去アーム50と傾斜上昇スリット32を備えている。
傾斜上昇スリット32は、スリット31に沿って搬送される最下段の棒状ワークWを上昇させることなく、その下に通過させて、最下段の棒状ワークWに積層して移送される棒状ワークWを上昇させる。最下段の棒状ワークWに積層されて移送される棒状ワークWは、最大外形部が最下段の棒状ワークWの最大外形部よりも高い位置を移動する。傾斜上昇スリット32は、その先端と底蓋30との間に、最下段の棒状ワークWの最大外形部を通過させる隙間33を設けている。この隙間33は、最下段の棒状ワークWの最大外形部のみを通過できる隙間としている。隙間33は、棒状ワークWの鍔Tの厚さの2倍よりも狭くしている。隙間33をこの間隔とする傾斜上昇スリット32は、図5に示すように、下段の棒状ワークWに挿通されない状態で、鍔Tのみが二重に積層される状態で棒状ワークWが隙間33を通過するのを防止できる。二重に重なる鍔Tを通過させないからである。最下段の棒状ワークWに積層して移送される棒状ワークWの最大外形部は、傾斜上昇スリット32に沿って、移送するにしたがって上昇される。したがって、傾斜上昇スリット32の先端は、最下段の棒状ワークWに積層して移送する棒状ワークWの最大外形部よりも下方に位置している。傾斜上昇スリット32は、棒状ワークWの最大外形部を引っかけて上昇できるように、その幅を棒状ワークWの最大外形部よりも狭くして、最大外形部以外の部分を通過できる幅としている。傾斜上昇スリット32は、棒状ワークWの移送方向に向かって上り勾配に傾斜している。
図6は、取出装置の傾斜上昇スリット32の近傍を示す斜視図である。この図の取出装置は、傾斜上昇スリット32の両側に円錐カバー34を固定している。ホッパー10の開口部11は、この円錐カバー34を貫通させるように、一端に向かって次第に幅を広くしている。円錐カバー34のある取出装置は、傾斜上昇スリット32とホッパー10との間に棒状ワークWが詰まるのを解消できる。
傾斜上昇スリット32は、その途中に除去アーム50の先端を配設している。除去アーム50は、傾斜上昇スリット32に沿って移送される棒状ワークWを引き上げて、最下段の棒状ワークWから除去する。すなわち、除去アーム50は、棒状ワークWであるピペットチップの最大外形部である鍔を引っかけて下の棒状ワークWから引き抜く。傾斜上昇スリット32と除去アーム50のある取出装置は、積層状態の解除された最下段の棒状ワークWのみをスリット31から排出する。傾斜上昇スリットを設けないで、除去アームのみで積層している棒状ワークを除去することもできる。この除去アームは、最下段の棒状ワークに積層して移送される棒状ワークの最大外形部である鍔よりも下方に、降下位置にある先端を位置させる。
除去アーム50は、ホッパー10と一緒に揺動しない固定部35に傾動できるように配設している。図の除去アーム50は、底蓋30を固定部として、ここに傾動できるように連結している。除去アーム50を固定するために、底蓋30に垂直に伸びる支柱36を固定し、この支柱36に、垂直面内で傾動できるように除去アーム50を連結している。除去アーム50は、スリット31を含む垂直面内で傾動できるように、回転軸51を介して支柱36に連結している。除去アーム50は、傾動機構52で傾動されて、積層して移送される棒状ワークWを引き抜く。
図の傾動機構52は、ホッパー10と除去アーム50との対向部分に固定している永久磁石53である。除去アーム50は、支柱36に連結している部分から上方に駆動アーム54を延長して、この駆動アーム54に第1の永久磁石53Aを固定している。さらに、ホッパー10には、揺動するときに第1の永久磁石53Aと対向する位置に、第2の永久磁石53Bを固定している。この傾動機構52は、ホッパー10が揺動すると、第1の永久磁石53Aに、第2の永久磁石53Bが接近したり離れたりする運動を繰り返す。第1の永久磁石53Aと第2の永久磁石53Bは、互いに対向する面を互いに異なるN極とS極としている。第2の永久磁石53Bは、図1に示すように、第1の永久磁石53Aが移動する軌跡に点在して配設している。したがって、ホッパー10が揺動して、第2の永久磁石53Bが第1の永久磁石53Aに接近するときに、除去アーム50が先端を上昇させる方向に傾動される。ホッパー10が揺動して、第2の永久磁石53Bが第1の永久磁石53Aから離れると、除去アーム50は先端を降下させる方向に自重で傾動する。さらに、図示しないが、第1の永久磁石の移動軌跡に対向する位置に、第1の永久磁石との対向面を同じ磁極とする第2の永久磁石を配設すると、この第2の永久磁石の反発力で除去アームを速やかに、先端を降下させる方向に傾動できる。この傾動機構は、第1の永久磁石が第2の永久磁石の異なる磁極との対向面を移動するときに先端を上昇し、第1の永久磁石が第2の永久磁石と同じ磁極との対向面を移動するときに先端を降下させる。すなわち、永久磁石の磁気的な吸引力と反発力で速やかに除去アームを傾動できる。永久磁石の磁気的な力で除去アームを傾動させる傾動機構は、極めて簡単な構造で除去アームを傾動できる。
磁気的な力で傾動される除去アーム50は、先端を上昇させる方向に傾動して、積層している棒状ワークWを先端で引っかけて最下段の棒状ワークWから引き抜くことができる。除去アーム50は、傾動して積層して移送される棒状ワークWを先端で引っかけて引き抜きできるように、その先端には、図7に示すように、一対の引掛片50Aを有する。引掛片50Aの幅は、棒状ワークWの最大外形よりも狭く、棒状ワークWのその他の部分を通過できるように、傾斜上昇スリット32の幅にほぼ等しくしている。
降下位置にある除去アーム50は、傾斜上昇スリット32の内部、すなわち傾斜上昇スリット32よりも下に配設される。この除去アーム50は、傾斜上昇スリット32で移送される棒状ワークWを引っかけて除去するように上昇して、最下段の棒状ワークWから除去する。したがって、除去アーム50は、その先端を、スリット31を移送される最下段の棒状ワークWは引っかけないが、最下段の棒状ワークWに積層して移送される棒状ワークWを引っかける位置としている。
【産業上の利用可能性】
本発明の取出装置は、血液の分析に使用するピペットチップ等のように、一端に鍔があって一端の外形が大きい棒状ワークを、トレイ等に整列して並べることなく、ランダムな姿勢で供給して、これを整列して取り出す装置に使用できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動すると共に、揺動の回転中心軸の方向に延長する開口部(11)を底面に設けているホッパー(10)と、このホッパー(10)を揺動させる駆動機構(20)と、揺動するホッパー(10)の開口部(11)を棒状ワーク(W)が漏れないように閉塞する底蓋(30)とを備え、
底蓋(30)は、ホッパー(10)の開口部(11)を閉塞する上面の形状を、揺動するホッパー(10)の開口部(11)から棒状ワーク(W)が漏れないように閉塞する形状とし、かつ、揺動する運動方向に直交する方向に延長するスリット(31)を上面に開口するように設けており、このスリット(31)は棒状ワーク(W)の最大外形部を通過できないが、棒状ワーク(W)のほぼ全体を通過できる幅としており、
駆動機構(20)が、ホッパー(10)の開口部(11)を底蓋(30)の上面に沿って移動するようにホッパー(10)を揺動して、ホッパー(10)に収納している棒状ワーク(W)を底蓋(30)のスリット(31)に案内し、スリット(31)で整列して排出するようにしてなる一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項2】
底蓋(30)を振動して、スリット(31)に案内された棒状ワーク(W)を排出する請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項3】
底蓋(30)の上面形状を円弧に沿う形状として、揺動するホッパー(10)の開口部(11)から棒状ワーク(W)が漏れないように閉塞する請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項4】
ホッパー(10)が底板(13)を平面状とする請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項5】
ホッパー(10)が底板(13)を開口部(11)に向かって傾斜する請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項6】
ホッパー(10)が、開口部(11)の幅をホッパー(10)全体の幅よりも狭くしている請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項7】
ホッパー(10)の最大傾動角度が5〜60度である請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項8】
ホッパー(10)がローリングする周期が0.5〜10秒である請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項9】
ホッパー(10)が開口部(11)にゴム状弾性体(14)を固定しており、ゴム状弾性体(14)を底蓋(30)に接近させてなる請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項10】
ホッパー(10)が開口部(11)にゴム状弾性体(14)を固定しており、ゴム状弾性体(14)は、ホッパー(10)が傾動して先端縁をスリット(31)に接近させる幅を有する請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項11】
ホッパー(10)が開口部(11)に傾動プレート(15)を連結しており、この傾動プレート(15)の先端縁を底蓋(30)に接近させてなる請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項12】
ホッパー(10)が開口部(11)に傾動プレート(15)を固定しており、この傾動プレート(15)には弾性体(16)を連結しており、この弾性体(16)でもって傾動プレート(15)の先端縁を底蓋(30)に接近させてなる請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項13】
棒状ワーク(W)がピペットチップで、積層して移送されるピペットチップの鍔を引っかけて引き抜く除去アーム(50)を有する請求項1に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項14】
除去アーム(50)がホッパー(10)と一緒に揺動しない固定部(35)に傾動できるように配設され、除去アーム(50)を傾動させる傾動機構(52)が、ホッパー(10)と除去アーム(50)との対向部分に固定している永久磁石(53)である請求項13に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項15】
底蓋(30)が、スリット(31)に移送されるピペットチップに積層して移送されるピペットチップの鍔を引っかけて上昇させる傾斜上昇スリット(32)を有し、傾斜上昇スリット(32)はピペットチップの移送方向に向かって上り勾配に傾斜すると共に、この傾斜上昇スリット(32)に除去アーム(50)の先端を配設して、傾斜上昇スリット(32)に沿って移送されるピペットチップを除去アーム(50)で除去するようにしてなる請求項13又は14に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。
【請求項16】
傾斜上昇スリット(32)が、その先端と底蓋(30)との間に、最下段の棒状ワーク(W)の鍔(T)を通過させる隙間(33)を設けており、この隙間(33)が棒状ワーク(W)の鍔(T)の厚さの2倍よりも狭い請求項15に記載される一端の外形が大きい棒状ワークの取出装置。

【国際公開番号】WO2004/060780
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564486(P2004−564486)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015909
【国際出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(000116390)阿波エンジニアリング株式会社 (2)
【Fターム(参考)】