説明

一軸偏心ねじポンプ

【課題】流動性の悪い液体を圧送する一軸偏心ねじポンプにおいて、ステータの吸込み口近傍にまで押し込みスクリューの押し込み力を効率良く作用させる。
【解決手段】この一軸偏心ねじポンプ1は、ねじポンプ部10が、回転可能に支承されるステータ11と、駆動軸31に直結されるロータ12とを備え、ロータ12の回転軸線L2がステータ11の回転軸線L1よりも下方に所定距離Eだけ偏心して配置される。押し込みスクリュー部20は、ケーシング28内に回転可能に支承され、駆動軸31とは別個に駆動される押し込みスクリュー23が、ステータ11の回転軸線L1よりも上方に、且つその先端部23sが駆動軸31に近接してステータ11の吸込み口4に臨むように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性の悪い液体を圧送する上で好適な一軸偏心ねじポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の一軸偏心ねじポンプは、図2に例示する一軸偏心ねじポンプ100のように、吐出口103側に設けられたねじポンプ部110と、このねじポンプ部110の吸込み側であって、ねじポンプ部110と駆動部130との間に設けられた押し込みスクリュー部120とを備えている(例えば特許文献1参照)。
詳しくは、ねじポンプ部110は、雌ねじ状の内面を有する固定されたステータ111と、このステータ111内で回転駆動される雄ねじ状のロータ112とを備えている。一方、押し込みスクリュー部120は、ロータ112の軸線方向に沿ってコネクチングロッド123がケーシング125内に配設され、このコネクチングロッド123の両端が、二つのユニバーサルジョイント121,122によって、ロータ112の基端部と駆動軸131の先端部とをそれぞれ繋いでいる。そして、押し込みスクリュー部120は、コネクチングロッド123の外周面に、押し込みスクリュー124が形成されており、また、押し込みスクリュー部120のケーシング125の上部には吸入口102が形成されている。
【0003】
この一軸偏心ねじポンプ100によれば、押し込みスクリュー部120の外周面に形成された押し込みスクリュー124の作用で吸入口102から導かれた液体は、押し込みスクリュー124の力でねじポンプ部110のステータ112の吸込み口に押し込まれ、更に、ねじポンプ部110にてステータ111の開口部から液体を吸引し、吐出口103に向けて吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−126276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した構成の一軸偏心ねじポンプ100は、押し込みスクリュー部120が、二つのユニバーサルジョイント121,122を連結するコネクチングロッド123の外周面の押し込みスクリュー124の力でステータ111の吸込み口に液体を押し込む構成なので、コネクチングロッド123が偏心運動をしつつ押し込みスクリュー124が回転駆動されることになる。そのため、特に流動性の悪い液体を圧送する場合、ケーシング125の内周面と押し込みスクリュー124外周部分相互のクリアランスが、常に周方向片側においてロータ112の偏心量よりも大きくなり(例えば二倍以上)、十分な押し込み力を得ることが困難であった。また、ユニバーサルジョイントを用いてロータの基端部と駆動軸の先端部とを連結する構成であると、吸込み側のケーシング内に長大なスペースができてしまうため、特に、流動性の悪い液体の圧送での滞留も発生しやすく、被送液の腐敗の原因ともなる。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ねじポンプ部と、このねじポンプ部よりも吸込み側に配設された押し込みスクリュー部とを備える一軸偏心ねじポンプにおいて、ステータの吸込み口近傍にまで押し込みスクリューの押し込み力を効率良く作用させ得る一軸偏心ねじポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、押し込みスクリュー部とねじポンプ部とを吸込み側から吐出側に向けてこの順に備える一軸偏心ねじポンプであって、前記ねじポンプ部は、雌ねじ状の内面を有する回転可能に支承されたステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるとともに直線状の基端部が水平な駆動軸に直結されたロータとを備え、前記ロータの回転軸線が前記ステータの回転軸線に対して所定距離だけ偏心して配置されるとともに、前記ロータの回転力で前記ステータを前記ロータの二分の一の回転数で追従回転させるように構成されており、前記押し込みスクリュー部は、前記ステータの吸込み口に連通するケーシングと、該ケーシング内に回転可能に支承されるとともに前記ロータの駆動軸とは別個に駆動される押し込みスクリューとを備え、前記押し込みスクリューは、前記ステータの回転軸線に対して前記ロータの回転軸線が配置された側とは反対の側に配置されるとともに、前記押し込みスクリューの先端部が前記駆動軸に近接して且つ前記ステータの吸込み口に臨むように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る一軸偏心ねじポンプによれば、ねじポンプ部は、駆動軸に直結したロータを、その回転軸線がステータの回転軸線から所定距離だけ偏心するように構成するとともに、ロータの回転力でステータをロータの二分の一の回転数で追従回転するように構成したので、従来の一軸偏心ねじポンプで必要とされたユニバーサルジョイントが不要である。そのため、吸込み側のケーシングの回転軸線に沿った方向のスペースをコンパクトにでき、これにより、特に、流動性の悪い液体の圧送での滞留を抑制または防止できるため、被送液の腐敗を防ぐ上で好適である。そして、ロータと一体の駆動軸は、ステータの回転軸線に対して所定距離だけ偏心した位置で回転する構成であり、さらに、ステータの回転軸線に対してロータの回転軸線が配置された側とは反対の側に、押し込みスクリューの先端部を、駆動軸に近接して且つステータの吸込み口に臨むように配置したので、押し込みスクリューの押し込み力でステータの吸込み口近傍にまで直接、流動性の悪い液体を押し込むことが可能となる。さらに、上述した従来の一軸偏心ねじポンプでは、固定されたステータの開口部から液体を吸引する構成であったのに対し、本発明によれば、ステータが回転しつつ液体を吸引する構成なので、吸引領域が広くなり、そのため、流動性の悪い液体であっても効率良く吸引することができる。
【0009】
ここで、前記ロータの回転軸線が、前記ステータの回転軸線よりも下方に配置され、前記押し込みスクリューが、前記ステータの回転軸線よりも上方に配置されていれば、特に、流動性の悪い液体を圧送するに際し、重力を効果的に被送液に作用させる上で一層好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上述のように、本発明によれば、ステータの吸込み口近傍にまで押し込みスクリューの押し込み力を効率良く作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る一軸偏心ねじポンプの一実施形態を説明する図である。
【図2】従来の一軸偏心ねじポンプの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この一軸偏心ねじポンプ1は、水平に配置された駆動軸31を回転自在に支承するブラケット30を有している。ブラケット30には、駆動軸31の先端側(同図の左側)の面に装着部32が形成されており、この装着部32に、押し込みスクリュー部20のケーシング28が不図示の締めねじによって連結されている。そして、このケーシング28の吐出側(同図の左側)に、ねじポンプ部10のハウジング18が、へルールクランプ40によって更に連結されている。また、ハウジング18の吐出側には吐出部19が締めねじ19aによって装着されている。これにより、この一軸偏心ねじポンプ1は、押し込みスクリュー部20とねじポンプ部10とを吸込み側2から吐出側3に向けてこの順に備えている。
【0013】
上記ねじポンプ部10は、円筒状のハウジング18内に、雄ねじ状のロータ12と、雌ねじ状の内面をもつステータ11とを備えている。
ロータ12は、先端側の螺旋部12aと、直線状の基端部12bとから構成されている。基端部12bは、ユニバーサルジョイントを用いることなく駆動軸31の先端に一体形成されることで直結している。螺旋部12aは、自身の回転軸線L2に対して偏心した長円形断面を有しており、この螺旋部2aが、雌ねじ状の内面を形成したステータ11に内挿されている。そして、このステータ11の回転軸線L1に対して、上記ロータ2の回転軸線L2は、所定の偏心量Eだけ偏心して下方に配置されている。
【0014】
ステータ11は、その両端が、すべり軸受としての、円環状の自己潤滑軸受5、6を介して上記ハウジング18内に回転自在に支承されている。ステータ11は、その雌ねじ状のピッチが、上記ロータ12の螺旋部2aの2倍である。この例では、ステータ11は、ステータ内筒11aと、このステータ内筒11aを軸方向の両側から挟み込むように形成された段付き形状のステータ外筒11d、11eとを有して構成されている。また、ステータ内筒11aは、円筒状の外周部11bと、この外周部11bの内側に焼き嵌めされたゴム製の内周部11cとから構成され、上記雌ねじ状の内面は、内周部11cの内面に形成されている。両端のステータ外筒11d、11eは、それぞれ押しねじ11fによってステータ内筒11aの外周部11bに固定されることで、ステータ外筒11d、11eとステータ内筒11aとが全体として一体で回転するようになっている。そして、ケーシング28とハウジング18とには、相互が軸方向で対向する側の内面に、ステータ11を収容するための、凹の段部がそれぞれ形成されている。さらに、ステータ11の外周面には、ステータ外筒11d、11eによって凸の段部が形成されている。そして、ステータ外筒11d、11eの凸の段部の両端部に対して、自己潤滑軸受5、6の端面を当接させつつ自己潤滑軸受5、6の径方向にて外嵌され、ケーシング28とハウジング18とをへルールクランプ40によって組み付けることでケーシング28とハウジング18相互の内面に形成された凹の段部の内側面が自己潤滑軸受5、6の軸方向への移動を拘束しつつ、ステータ11を回転自在に支持するように構成されている。
【0015】
そして、このねじポンプ部10は、駆動軸31に連結された不図示のモータを駆動すると、駆動軸31と一体のロータ12が回転する。このとき、ロータ12はその回転軸線L2を中心として回転し、ロータ12の螺旋部12aの動きに伴ってステータ11もその回転軸線L1を中心としてロータ12の回転と同期してロータ12の二分の一の回転数で従動回転することにより、圧送流体を吸込み口4から吐出口3へ圧送するようになっている。
【0016】
一方、上記押し込みスクリュー部20は、ケーシング28の上部が、吸込み側2となる上部に向けて拡幅する漏斗状に形成されることによって圧送流体の吸込口25を兼ねて形成されている。そして、ケーシング28の上部内(つまり、上記漏斗状に形成された吸込口25内)に、回転可能に押し込みスクリュー23が支承されている。この押し込みスクリュー23は、その回転軸線L3がステータ11の回転軸線L1に対して交差して配設され、基端部に設けられた不図示のモータにより、ねじポンプ部10のロータ12の駆動軸31とは別個に駆動されるようになっている。ここで、この押し込みスクリュー23全体は、ステータ11の回転軸線L1よりも上方に配置されるとともに、押し込みスクリュー23の先端部23sが駆動軸31に近接して且つステータ11の吸込み口4に臨むように配置されている。このような構成により、図2に示した従来例と比較して、押し込みスクリュー23の回転軸線L3が偏心運動をしないことから、ケーシング28の漏斗状に形成された吸込口25内周面とスクリュー24外周部分相互のクリアランスが常に一定に保たれる。これにより、ステータ11の吸込み口4に向けて、十分な押し込み力を得ることが可能となっている。
【0017】
次に、この一軸偏心ねじポンプ1の作用・効果について説明する。
この一軸偏心ねじポンプ1によれば、ねじポンプ部10は、駆動軸31に直結したロータ12を、その回転軸線L2がステータ11の回転軸線L1から所定距離Eだけ偏心するように構成するとともに、ロータ12の回転力でステータ11をロータ12の二分の一の回転数で追従回転するように構成したので、従来の一軸偏心ねじポンプ(例えば上述の一軸偏心ねじポンプ100)で必要とされたユニバーサルジョイント(例えば上記ユニバーサルジョイント121,122)が不要である。そして、ロータ12と一体の駆動軸31は、ステータ11の回転軸線L1からロータ12の偏心量E分だけ下方の位置で回転する構成なので、押し込みスクリュー23の先端部23sを、駆動軸31に近接して且つステータ11の吸込み口4に臨むように配置することができる。
【0018】
これにより、この一軸偏心ねじポンプ1によれば、押し込みスクリュー23の押し込み力でステータ10の吸込み口4の近傍にまで直接、流動性の悪い液体を押し込むことが可能となる。さらに、図2に示した従来の一軸偏心ねじポンプ100では、固定されたステータ111の開口部から液体を吸引する構成であったのに対し、この一軸偏心ねじポンプ1によれば、ステータ12が回転しつつ液体を吸引する構成なので、吸引領域が広くなり、そのため、流動性の悪い液体であっても効率良く吸引することができる。また、ユニバーサルジョイントを用いることなく、ロータ12と駆動軸31とを直結したので、吸込み側のケーシング28の回転軸線L2に沿った方向のスペースをコンパクトにでき、これにより、特に、流動性の悪い液体の圧送での滞留を抑制または防止できるため、被送液の腐敗を防ぐ上でも好適である。
なお、本発明に係る一軸偏心ねじポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【0019】
例えば、本実施形態では、ロータ12の回転軸線L2がステータ11の回転軸線L1よりも下方に所定距離Eだけ偏心して配置され、押し込みスクリュー部20は、ケーシング28内に回転可能に支承され、駆動軸31とは別個に駆動される押し込みスクリュー23が、ステータ11の回転軸線L1よりも上方に、且つその先端部23sが駆動軸31に近接してステータ11の吸込み口4に臨むように配置されている例で説明したが、回転軸線L1とL2との位置関係は、軸方向から見て180度の関係になっていれば良く、上下に限定されるものではない。例えば、押込みスクリュー23をケーシング28の側方に位置させた構成とし、ロータ12の偏心方向を軸方向から見て押込みスクリュー23とは反対側に配置してもよい。しかし、特に、流動性の悪い液体を圧送するに際し、重力を効果的に作用させる上では、上述した本実施形態の構成を採用することは好ましい。
【符号の説明】
【0020】
1 一軸偏心ねじポンプ
2 吸込み側
3 吐出側
4 (ねじポンプ部のステータの)吸込み口
10 ねじポンプ部
11 ステータ
12 ロータ
20 押し込みスクリュー部
23 押し込みスクリュー 23s 押し込みスクリューの先端部
28 (押し込みスクリュー部の)ケーシング
31 駆動軸
E 偏心された所定距離
L1 ステータの回転軸線
L2 ロータの回転軸線
L3 押し込みスクリューの回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し込みスクリュー部とねじポンプ部とを吸込み側から吐出側に向けてこの順に備える一軸偏心ねじポンプであって、
前記ねじポンプ部は、雌ねじ状の内面を有する回転可能に支承されたステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるとともに直線状の基端部が水平な駆動軸に直結されたロータとを備え、前記ロータの回転軸線が前記ステータの回転軸線に対して所定距離だけ偏心して配置されるとともに、前記ロータの回転力で前記ステータを前記ロータの二分の一の回転数で追従回転させるように構成されており、
前記押し込みスクリュー部は、前記ステータの吸込み口に連通するケーシングと、該ケーシング内に回転可能に支承されるとともに前記ロータの駆動軸とは別個に駆動される押し込みスクリューとを備え、前記押し込みスクリューは、前記ステータの回転軸線に対して前記ロータの回転軸線が配置された側とは反対の側に配置されるとともに、前記押し込みスクリューの先端部が前記駆動軸に近接して且つ前記ステータの吸込み口に臨むように配置されていることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。
【請求項2】
前記ロータの回転軸線は、前記ステータの回転軸線よりも下方に配置され、前記押し込みスクリューは、前記ステータの回転軸線よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の一軸偏心ねじポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−11188(P2013−11188A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142943(P2011−142943)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(505328085)古河産機システムズ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】