説明

一酸化炭素酸化触媒、一酸化炭素酸化触媒の製造方法、及び、炭化水素改質システム

【課題】低温において高い活性を有する一酸化炭素酸化触媒、一酸化炭素酸化触媒の製造方法、及び、炭化水素改質システムを提供する。
【解決手段】少なくとも白金と銅とからなり、銅の原子割合が5at.%以上25%at.%未満であるCO酸化触媒の製造方法に、少なくとも、水溶液中に担体を分散するステップと、当該水溶液中に白金前駆体及び銅前駆体を添加するステップと、当該水溶液中に還元補助剤を添加するステップと、当該水溶液中に電子線を照射するステップと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素を酸化する反応を促進する一酸化炭素酸化触媒、一酸化炭素酸化触媒の製造方法、及び、当該一酸化炭素を用いる炭化水素改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを陽極燃料とする固体高分子型燃料電池(PEFC, Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、常温で動作し、高出力が得られる。そのため、次世代の電池として期待されている。
燃料電池自動車用のPEFCでは、陽極燃料となる水素ガスが高純度水素ガスボンベから供給される。
一方、1kW級のコジェネレーションシステム用のPEFCでは、都市ガスであるメタン(炭化水素)を改質することにより水素ガスを製造してPEFCの陽極に供給する。
【0003】
そのため、コジェネレーションシステムにおいて、メタンから製造される水素ガスには、一酸化炭素(CO)が含まれている。また、PEFCでは、水素酸化触媒としてPt触媒を使用している。そして、COはPt触媒との相互作用が極めて強い。そのため、COがPt触媒表面に化学吸着して、Pt触媒を被毒させてしまう。従って、コジェネレーションシステムでは、PEFCの陽極に供給される水素ガス中のCOを可能な限り除去することが必要となる。一般的に、水素ガス中に存在するCOの濃度を10ppm、より好ましくは、5ppm以下に制御しなければ、PEFCを安定的に発電させることができない。
【0004】
水素ガス中のCOを除去するためには、COを酸素ガス(O)により二酸化炭素(CO)に酸化することが必要である。COは、Pt触媒を被毒しない。COの酸化反応は、
CO+1/2O2=CO2 ・・・・・・(1)
【0005】
式(1)の反応を促進するためには、一酸化炭素酸化触媒(CO酸化触媒)を用いる。従来、CO酸化触媒の中心金属として貴金属が使用されている。例えば、特許文献1に記載のCO酸化触媒では、ゼオライトの一種であるモデルナイトからなる担体上に白金合金上に担持されている。そして、白金合金における白金以外の金属成分の割合を20〜50at.%としている。これにより、一酸化炭素触媒の性能を向上している。
【特許文献1】特開2006−278217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のCO酸化触媒を用いても、水素ガス中のCO濃度を低減する性能は不十分であった。そのため、CO濃度を低減する性能がより優れたCO酸化触媒が望まれている。触媒を促進する反応の活性は、反応温度を上昇させることにより高めることができる。しかし、水素ガスが大量に共存する環境下でCOを選択的に酸化しなくてはならない。また、一般的に、反応温度が高いほど、水素の酸化反応が活性化してしまう。そのため、反応温度を高くすると、CO濃度を低減する効果が低下するとともに、水素燃料の利用効率が低下してしまう。
また、反応温度が高いほど、COと水素が反応してメタンを生成するメタン化反応が活性化する。メタン化反応の化学式を式(2)に示す。そのため、反応温度を高くすると、水素燃料の利用効率が低下する。従って、CO濃度を低減する性能がより高く、且つ、より低い温度で十分なCO酸化活性を有するCO酸化触媒が望まれている。
CO+3H2=CH4+H2O ・・・・・・(2)
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、低温において高い活性を有する一酸化炭素酸化触媒、一酸化炭素酸化触媒の製造方法、及び、炭化水素改質システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる一酸化炭素酸化触媒は、少なくとも一酸化炭素と酸素とを含有する混合気体中の一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する一酸化炭素酸化触媒である。また、本発明にかかる一酸化炭素酸化触媒は、少なくとも白金と銅とからなる。そして、当該一酸化炭素酸化触媒に含まれる銅の原子割合が5at.%以上25%at.%未満である。
【0009】
本発明にかかる一酸化炭素酸化触媒の製造方法は、少なくとも一酸化炭素と酸素とを含有する混合気体中の一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する一酸化炭素酸化触媒の製造方法であって、少なくとも、水溶液中に担体を分散するステップと、前記水溶液中に白金前駆体及び銅前駆体を添加するステップと、前記水溶液中に還元補助剤を添加するステップと、前記水溶液中に電子線を照射するステップと、を備える。
【0010】
また、前記電子線を照射することにより、白金と銅とからなる触媒粒子を前記担体上に析出させるものである。
【0011】
また、単位時間に照射する前記電子線の量は、0.01kGy/s以上10kGy/s以下であることが好ましい。
【0012】
本発明にかかる炭化水素改質システムは、炭化水素を改質して水素ガスを生成する炭化水素改質システムであって、炭化水素を改質して水素ガスを生成する際に発生する一酸化炭素を酸化する一酸化炭素酸化装置を有し、前記一酸化炭素酸化装置は、少なくとも白金と銅とからなり、銅の原子割合が5at%以上25%at%未満である一酸化炭素酸化触媒を用いて一酸化炭素を酸化するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温において高い活性を有する一酸化炭素酸化触媒を製造することができ、炭化水素改質システムにおいて低温において一酸化炭素を効率よく酸化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明にかかるCO酸化触媒(一酸化炭素触媒)は、少なくとも白金(Pt)と銅(Cu)からなる触媒粒子を担体上に担持した触媒である。具体的には、本発明にかかるCO酸化触媒は、白金前駆体、銅前駆体、還元補助剤及び担体を添加した水溶液中に、電子線を照射することによって合成される。このようにして合成されたCO酸化触媒は、従来のCO酸化触媒に比べて、常温付近の比較的低温領域において高いCO酸化活性を有した。
【0016】
白金前駆体及び銅前駆体は、水溶液中において、白金イオン、銅イオン、前駆体由来のイオンとして存在する。また、水溶液に電子線を照射すると、大部分の水分子から、水和電子とハイドロラジカルとが生成する。そして、これら水和電子とハイドロラジカルにより、水溶液中の白金イオン及び銅イオンが還元され、白金及び銅が、担体上に析出する。これにより、触媒粒子が生成される。
【0017】
また、本発明にかかるCO酸化触媒における銅の含有量は、5at.%以上25at.%以下であることが好ましい。銅含有量が5at.%未満或いは25at.%を超えると、十分なCO酸化活性が得られない。
【0018】
現時点では、本発明にかかるCO酸化触媒が低温領域において高いCO酸化活性を有する原因は明確ではない。
従来、白金に、白金よりも卑な遷移金属を添加してCO酸化触媒が合成される。そして、一般的に、CO酸化触媒をCO酸化反応の触媒として用いる前に、CO酸化触媒を水素ガスで還元処理する。これにより、CO酸化触媒に含まれる白金よりも卑な遷移金属をいったん酸化されていない状態(金属に近い状態)にする。
一方、本発明にかかるCO酸化触媒は、銅含有量が5at.%以上25at.%以下である場合に、当該還元処理を行わなくても、高いCO酸化活性を有した。このことから、本発明にかかるCO酸化触媒に含まれる銅は、還元された状態(金属に近い状態)で存在していると考えられる。そのため、本発明にかかるCO酸化触媒は、低温領域においても、高いCO酸化活性を有すると推測される。
【0019】
本発明にかかるCO酸化触媒は、白金前駆体、銅前駆体、還元補助剤及び担体を添加した水溶液中に、電子線を照射することによって合成される。具体的には、電子線を照射することにより、水溶液中の白金イオン及び銅イオンを還元し、白金及び銅からなる触媒粒子が、担体上に析出する。
電子線照射による還元速度はきわめて速く、γ線照射による還元速度の1000倍である。そして、電子線照射法では、きわめて速い還元速度により、白金前駆体と銅前駆体との間の標準還元電位差の影響を受けることなく、白金イオン及び銅イオンを還元することができる。これにより、CO酸化触媒に含まれる銅は、還元された状態(金属に近い状態)で存在することができると推測される。
【0020】
本発明にかかるCO酸化触媒の製造において、白金前駆体としては、水溶性の前駆体を用いることができる。例えば、六塩化白金酸(HPtCl)、六塩化白金酸塩(KPtCl)、四塩化白金酸(HPtCl)、四塩化白金酸塩(KPtCl)等を白金前駆体として用いることができる。これらの白金前駆体は、単独で使用されても良い。また、2種類以上の白金前駆体が併用されても良い。
【0021】
また、本発明にかかるCO酸化触媒の製造において、銅前駆体としては、水溶性の前駆体を用いることができる。例えば、硝酸銅(II)(Cu(NO)、硫酸銅(II)(CuSO)、塩化銅(CuCl)、酢酸銅(II)(Cu(CHCOO))等を銅前駆体として用いることができる。これらの銅前駆体は、単独で使用されても良い。また、2種類以上の銅前駆体が併用されてもよい。
【0022】
電子線照射によりCO酸化触媒を合成する際、還元補助剤として、メタノール、エタノール、2−プロパノール、及びエチレングリコール等のアルコールを添加することが好ましい。これらのアルコールに電子線が照射されると、還元力を有する化学種が生成される。そして、これらの化学種により、白金と銅の還元反応が促進される。アルコールの添加量は、特に限定されないが、0.05〜10vol.%であるとよい。
【0023】
本発明のCO酸化触媒において使用される担体としては、α−Fe、γ−Fe、Fe、γ−Al、CeO、ZrO等の金属酸化物、或いは、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素素材等を使用することができる。金属酸化物の粒径は、特に限定されないが、数nm〜数百nmであることが好ましい。
【0024】
以下、図1を参照しながら、本発明にかかるCO酸化触媒の製造方法について説明する。
まず、図1(a)に示すように、100mlのバイアル瓶1に、イオン交換水50mlを入れる。
次に、図1(b)に示すように、100mlのバイアル瓶1に入れられたイオン交換水に、担体、白金前駆体(Pt供給源)、銅前駆体(Cu供給源)、及び、還元補助剤を、この順番で添加する。これにより、イオン交換水に担体が分散される。また、イオン交換水に、白金前駆体、銅前駆体、及び、還元補助剤が溶解される。
【0025】
次に、図1(c)に示すように、トレイ2にバイアル瓶1を載置する。
次に、図1(d)に示すように、電子線照射装置3に、当該トレイ2とバイアル瓶1とを設置して、高強度の電子線をバイアル瓶1に照射する。単位時間に照射する電子線の量は、0.01kGy/s以上10kGy/s以下が好ましい。また、0.1kGy/s以上5kGy/s以下がより好ましい。また、電子線の照射時間は、30秒以下であることが好ましい。溶液の温度上昇を抑えるため、電子線の照射時間は10秒以下であることがより好ましい。
【0026】
電子線照射装置3の構成及び動作について簡単に説明する。図1(d)に示すように、電子線照射装置3は、電子線発生室4及び照射室5を有する。また、照射室5は、搬送機構50などを有する。搬送機構50は、ロータ52〜57及びベルト51などを有している。なお、電子線発生室4と照射室5とは、金属薄膜42により隔てられている。
【0027】
電子線発生室4内には、電子線発生源41が設けられている。照射室5には、上述の搬送機構50のベルト51上に被照射物が配置される。電子線発生源41から放出された電子は、電子線発生室4内に形成された電界によって加速され、被照射物に照射される。このようにして、被照射物に高強度の電子線が照射される。
なお、還元反応を均一に行う必要性から、一度に被照射物の全体に電子線を照射させる照射方法が好ましい。
【0028】
本発明にかかるCO酸化触媒の製造においては、バイアル瓶1が載置されたトレイ2を搬送機構50により照射室5の所定部分まで搬送する。そして、電子線発生源41から放出された電子線がバイアル瓶1全体に照射される。
【0029】
電子線が照射されると、バイアル瓶1内に電子線から直接的に電子が供給される。これにより、バイアル瓶1内の水溶液中の白金イオンと銅イオンは瞬時に還元される。そして、担体に白金原子と銅原子が析出する(次の式(3)、(4))。
H2PtCl6+4e-=Pt+2H++6Cl- ・・・・・・(3)
CuSO4+2e-=Cu+SO42- ・・・・・・(4)
【0030】
次に、図1(e)に示すように、バイアル瓶1内の溶液を洗浄、濾過する。そして、濾物(残渣)6をシャーレ7上に塗布し、ヒータ8内に配置して、濾物6を乾燥させる。
上述の手順により、本発明にかかるCO酸化触媒が合成される。
【0031】
次に、本発明にかかる炭化水素改質システム100について図2を参照しながら説明する。図2に示すように、炭化水素改質システム100は、脱硫装置101、水蒸気改質装置102、高温水蒸気シフト装置103、低温水蒸気シフト装置104、CO選択酸化装置105(一酸化炭素酸化装置)などを有している。
そして、本発明にかかるCO酸化触媒は、CO選択酸化装置105において用いられる。
【0032】
炭化水素改質システム100の動作について簡単に説明する。
まず、メタン、ガソリン、LPG等の炭化水素ガスを脱硫装置101において脱硫する。脱硫反応の化学式を式(5)に示す。なお、脱硫反応は、約800℃、Ni/Al触媒下で行われる。
CH4+H2O=3H2+CO ・・・・・・(5)
【0033】
次に、水蒸気改質装置102、高温水蒸気シフト装置103、低温水蒸気シフト装置104において、水蒸気から水素ガス(H)を取り出す。当該水蒸気改質反応の化学式を式(6)に示す。なお、水蒸気改質反応は、高温水蒸気シフト装置103では約400℃、Fe,Cr系触媒下で行われ、低温水蒸気シフト装置104では約200℃、Cu,Zn系触媒下で行われる。
CO+H2O=H2+CO2 ・・・・・・(6)
【0034】
次に、CO選択酸化装置105において、水素ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)が酸化される。CO酸化反応の化学式を式(7)に示す。なお、CO酸化反応は、常温付近の比較的低温領域の温度で、本発明にかかるCO酸化触媒下で行われる。
CO+1/2O2=CO2 ・・・・・・(7)
そして、CO選択酸化装置105において、一酸化炭素が酸化された水素ガスは、燃料電池のアノードに供給される。
【0035】
本発明の実施の形態にかかるCO酸化触媒は、少なくとも一酸化炭素と酸素とを含有する混合気体中の一酸化炭素を二酸化炭素に酸化するCO酸化触媒である。また、本発明の実施の形態にかかるCO酸化触媒は、少なくとも白金と銅とからなり、当該一酸化炭素酸化触媒に含まれる銅の原子割合が5at.%以上25%at.%未満である。
【0036】
これにより、本発明の実施の形態にかかるCO酸化触媒は、CO酸化反応の触媒として用いる前に還元処理しなくても、高いCO酸化活性を有する。CO酸化触媒における銅含有量が5at.%未満或いは25at.%を超えると、十分なCO酸化活性が得られない。
【0037】
また、本発明の実施の形態にかかるCO酸化触媒の製造方法は、少なくとも一酸化炭素と酸素とを含有する混合気体中の一酸化炭素を二酸化炭素に酸化するCO酸化触媒の製造方法であって、水溶液中に担体を分散するステップと、当該水溶液中に白金前駆体及び銅前駆体を添加するステップと、当該水溶液中に還元補助剤を添加するステップと、当該水溶液中に電子線を照射するステップと、を備える。
【0038】
そして、電子線を照射することにより、白金と銅とからなる触媒粒子を担体上に析出させるものである。
【0039】
本発明の実施の形態にかかるCO酸化触媒の製造方法では、電子線照射により、水溶液中の白金イオンと銅イオンとを極めて速い還元速度で還元することができる。これにより、合成されたCO酸化触媒は、低温において高いCO酸化活性を有する。
【0040】
また、単位時間に照射する前記電子線の量は、0.01kGy/s以上10kGy/s以下であることが好ましい。
これにより、溶液の温度上昇を抑えることができる。
【0041】
本発明にかかる炭化水素改質システム100は、炭化水素を改質して水素ガスを生成する炭化水素改質システム100であって、炭化水素を改質して水素ガスを生成する際に発生する一酸化炭素を酸化するCO選択酸化装置105を有し、CO選択酸化装置105は、少なくとも白金と銅とからなり、銅の原子割合が5at%以上25%at%未満であるCO酸化触媒を用いて一酸化炭素を酸化する。
【0042】
これにより、CO選択酸化装置105において、CO酸化触媒をCO酸化反応の触媒として用いる前に還元処理しなくても、高いCO酸化活性で一酸化炭素を酸化することができる。
また、低温においても高いCO酸化活性で一酸化炭素を酸化することができる。
【0043】
以下、本発明の具体的な実施例を説明する。
[実施例1]
容積100mlのバイアル瓶1にイオン交換水50mlを入れ、担体としてγ−Fe(シーアイ化成(株)NanoTek(登録商標) 平均粒径)26nm)を81.85mg添加し、超音波を印加して担体をイオン交換水中に分散させた。次に、バイアル瓶1内をArガスで置換した後、六塩化白金酸六水和物(HPtCl・6HO)を0.9mmol、硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)を0.1mmol添加した。その後、還元補助剤としてイソプロピルアルコールを0.5ml添加した。次に、バイアル瓶1をトレイ2に載置し、専用のコンベア(搬送機構50)に載せて電子線照射を行った。電子線の照射線量は20kGyであり、単位時間当たりの電子線量は3kGy/sであった。電子線照射終了後、バイアル瓶1内の生成物をろ過し、残渣を洗浄した後、80℃のオーブンで乾燥した。
【0044】
[実施例2]
容積100mlのバイアル瓶1にイオン交換水50mlを入れ、担体としてγ−Fe(シーアイ化成(株)NanoTek(登録商標) 平均粒径)26nm)を72.95mg添加し、超音波を印加して担体をイオン交換水中に分散させた。次に、バイアル瓶1内をArガスで置換した後、六塩化白金酸六水和物(HPtCl・6HO)を0.75mmol、硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)を0.25mmol添加した。その後、還元補助剤としてイソプロピルアルコールを0.5ml添加した。次に、バイアル瓶1をトレイ2に載置し、専用のコンベア(搬送機構50)に載せて電子線照射を行った。電子線の照射線量は20kGyであり、単位時間当たりの電子線量は3kGy/sであった。電子線照射終了後、バイアル瓶1内の生成物をろ過し、残渣を洗浄した後、80℃のオーブンで乾燥した。
【0045】
[比較例1]
容積100mlのバイアル瓶1にイオン交換水50mlを入れ、担体としてγ−Fe(シーアイ化成(株)NanoTek(登録商標) 平均粒径)26nm)を87.75mg添加し、超音波を印加して担体をイオン交換水中に分散させた。次に、バイアル瓶1内をArガスで置換した後、六塩化白金酸六水和物(HPtCl・6HO)を1.0mmol添加した。硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)は添加していない。その後、還元補助剤としてイソプロピルアルコールを0.5ml添加した。次に、バイアル瓶1をトレイ2に載置し、専用のコンベア(搬送機構50)に載せて電子線照射を行った。電子線の照射線量は20kGyであり、単位時間当たりの電子線量は3kGy/sであった。電子線照射終了後、バイアル瓶1内の生成物をろ過し、残渣を洗浄した後、80℃のオーブンで乾燥した。
【0046】
[比較例2]
容積100mlのバイアル瓶1にイオン交換水50mlを入れ、担体としてγ−Fe(シーアイ化成(株)NanoTek(登録商標) 平均粒径)26nm)を58.15mg添加し、超音波を印加して担体をイオン交換水中に分散させた。次に、バイアル瓶1内をArガスで置換した後、六塩化白金酸六水和物(HPtCl・6HO)を0.5mmol、硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)を0.5mmol添加した。その後、還元補助剤としてイソプロピルアルコールを0.5ml添加した。次に、バイアル瓶1をトレイ2に載置し、専用のコンベア(搬送機構50)に載せて電子線照射を行った。電子線の照射線量は20kGyであり、単位時間当たりの電子線量は3kGy/sであった。電子線照射終了後、バイアル瓶1内の生成物をろ過し、残渣を洗浄した後、80℃のオーブンで乾燥した。
【0047】
[比較例3]
容積100mlのバイアル瓶1にイオン交換水50mlを入れ、担体としてγ−Fe(シーアイ化成(株)NanoTek(登録商標) 平均粒径)26nm)を43.35mg添加し、超音波を印加して担体をイオン交換水中に分散させた。次に、バイアル瓶1内をArガスで置換した後、六塩化白金酸六水和物(HPtCl・6HO)を0.25mmol、硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)を0.75mmol添加した。その後、還元補助剤としてイソプロピルアルコールを0.5ml添加した。次に、バイアル瓶1をトレイ2に載置し、専用のコンベア(搬送機構50)に載せて電子線照射を行った。電子線の照射線量は20kGyであり、単位時間当たりの電子線量は3kGy/sであった。電子線照射終了後、バイアル瓶1内の生成物をろ過し、残渣を洗浄した後、80℃のオーブンで乾燥した。
【0048】
[比較例4]
容積100mlのバイアル瓶1にイオン交換水50mlを入れ、担体としてγ−Fe(シーアイ化成(株)NanoTek(登録商標) 平均粒径)26nm)を34.5mg添加し、超音波を印加して担体をイオン交換水中に分散させた。次に、バイアル瓶1内をArガスで置換した後、六塩化白金酸六水和物(HPtCl・6HO)を0.1mmol、硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)を0.9mmol添加した。その後、還元補助剤としてイソプロピルアルコールを0.5ml添加した。次に、バイアル瓶1をトレイ2に載置し、専用のコンベア(搬送機構50)に載せて電子線照射を行った。電子線の照射線量は20kGyであり、単位時間当たりの電子線量は3kGy/sであった。電子線照射終了後、バイアル瓶1内の生成物をろ過し、残渣を洗浄した後、80℃のオーブンで乾燥した。
【0049】
[比較例5]
容積100mlのバイアル瓶1にイオン交換水50mlを入れ、担体としてγ−Fe(シーアイ化成(株)NanoTek(登録商標) 平均粒径)26nm)を28.6mg添加し、超音波を印加して担体をイオン交換水中に分散させた。次に、バイアル瓶1内をArガスで置換した後、硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)を1.0mmol添加した。六塩化白金酸六水和物(HPtCl・6HO)は添加しなかった。その後、還元補助剤としてイソプロピルアルコールを0.5ml添加した。次に、バイアル瓶1をトレイ2に載置し、専用のコンベア(搬送機構50)に載せて電子線照射を行った。電子線の照射線量は20kGyであり、単位時間当たりの電子線量は3kGy/sであった。電子線照射終了後、バイアル瓶1内の生成物をろ過し、残渣を洗浄した後、80℃のオーブンで乾燥した。
【0050】
実施例1、2及び比較例1〜5にかかる触媒について、Cu組成分析を行った結果を表1に示す。
【表1】

【0051】
実施例1において得られた触媒の電子顕微鏡写真を図3に示す。図3において、黒い粒子状の部分がPtとCuとからなる触媒粒子である。また、灰色の部分が担体のγ−Feである。PtとCuからなる触媒粒子の粒径は、2nmから3nmであることが確認できる。
【0052】
実施例1、2及び比較例1〜5にかかる触媒のCO酸化活性を以下のように測定した。容積100mlのバイアル瓶に触媒20mgと、直径5mmのジルコニアビーズを入れ、ゴム栓で密閉した。ジルコニアビーズは、バイアル瓶内の気体を攪拌するためのものである。その後、25℃に保った恒温層にバイアル瓶を1時間静置した。
【0053】
次に、シリンジでバイアル瓶内にCOを1ml注入し、直ちに、恒温層内に設置した攪拌機を用いて、100rpmで攪拌した。一定時間ごとにシリンジでバイアル瓶内の気体を採取し、ガスクロマトグラフにより、採取した気体中に含まれるCO及びCOの量を測定した。測定結果を図4に示す。図4において、縦軸はCOへの転化率(%)、横軸は反応時間を示す。COへの転化率(%)は、ガスクロマトグラフにより定量したCOの量により決定した。ガスクロマトグラフにより定量したCOの減少量からもCO2への転化率を求めることはできるが、COは、CO酸化触媒のPtに対して吸着するため、吸着によるCO濃度減少の影響が避けられない。COの酸化反応の化学式を式(8)に示す。
CO+1/2O2=CO2 ・・・・・・(8)
式(8)から、バイアル瓶内に注入された1mlのCOが完全に酸化された場合、1mlのCOが発生することがわかる。したがって、生成したCOの量が1mlのとき転化率を100%とすることにより、所定時間ごとに採取した気体に含まれるCOの量から転化率を算出することができる。
【0054】
図4に示すように、実施例1及び実施例2において合成したCO酸化触媒(PtCu−γFe触媒)では、比較例1において合成したCO酸化触媒(白金単独触媒)に比べて短時間で転化率が増加している。これにより、実施例1及び実施例2において合成したCO酸化触媒は、白金単独触媒に比べて高いCO酸化活性を有していることが分かる。
【0055】
また、比較例2〜5において合成した触媒におけるCu含有量は25at.%よりも多い。一方、実施例1、2において合成したCO酸化触媒におけるCu含有量は5at.%以上25at.%以下である。そして、比較例2〜5において合成した触媒は、実施例1、2において合成したCO酸化触媒に比べてCO酸化活性が弱いことが分かる。特に、Cu単独触媒である比較例5にかかる触媒は、CO酸化活性がほぼゼロである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】CO酸化触媒の製造方法を説明するための説明図である。
【図2】本発明にかかるCO酸化触媒の電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明にかかる炭化水素改質システムの一例を示すブロック図である。
【図4】実施例1および実施例2、比較例1乃至比較例5で合成されたCO酸化触媒のCO酸化活性評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1 バイアル瓶
2 トレイ
3 電子線照射装置
4 電子線発生室
5 照射室
50 搬送機構
51 ベルト
52、53、54、55、56、57 ロータ
6 濾物(残渣)
7 シャーレ
8 ヒータ
100 炭化水素改質システム
101 脱硫装置
102 水蒸気改質装置
103 高温水蒸気シフト装置
104 低温水蒸気シフト装置
105 CO選択酸化装置(一酸化炭素酸化装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一酸化炭素と酸素とを含有する混合気体中の一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する一酸化炭素酸化触媒であって、
少なくとも白金と銅とからなり、当該一酸化炭素酸化触媒に含まれる銅の原子割合が5at.%以上25%at.%未満である一酸化炭素酸化触媒。
【請求項2】
少なくとも一酸化炭素と酸素とを含有する混合気体中の一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する一酸化炭素酸化触媒の製造方法であって、少なくとも、
水溶液中に担体を分散するステップと、
前記水溶液中に白金前駆体及び銅前駆体を添加するステップと、
前記水溶液中に還元補助剤を添加するステップと、
前記水溶液中に電子線を照射するステップと、
を備える一酸化炭素酸化触媒の製造方法。
【請求項3】
前記電子線を照射することにより、白金と銅とからなる触媒粒子を前記担体上に析出させる請求項2に記載の一酸化炭素酸化触媒の製造方法。
【請求項4】
単位時間に照射する前記電子線の量は、0.01kGy/s以上10kGy/s以下である請求項2又は3に記載の一酸化炭素酸化触媒の製造方法。
【請求項5】
炭化水素を改質して水素ガスを生成する炭化水素改質システムであって、
炭化水素を改質して水素ガスを生成する際に発生する一酸化炭素を酸化する一酸化炭素酸化装置を有し、
前記一酸化炭素酸化装置は、少なくとも白金と銅とからなり、銅の原子割合が5at%以上25%at%未満である一酸化炭素酸化触媒を用いて一酸化炭素を酸化する炭化水素改質システム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−233479(P2009−233479A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64270(P2008−64270)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】