三次元デバイスの製造方法
【課題】テストレチクルを用いて露光システムの伝達関数を導出し、この伝達関数をマスクパターンの設計にフィードバックさせて、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能な三次元デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】テストレチクルを用いて露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程S1と、前記テストレチクルを用いて露光・現像等の露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程S2と、これら伝達関数H1(ξ、η)、H2(ξ、η)及び所望する三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)に基づいて、前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するためのマスクパターンの透過率分布u(x、y)を算出し、このマスクパターンを有するレチクルを製造する工程S3と、前記レチクルを用いて前記三次元形状からなる三次元デバイスを製造する工程S4とを含む。
【解決手段】テストレチクルを用いて露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程S1と、前記テストレチクルを用いて露光・現像等の露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程S2と、これら伝達関数H1(ξ、η)、H2(ξ、η)及び所望する三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)に基づいて、前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するためのマスクパターンの透過率分布u(x、y)を算出し、このマスクパターンを有するレチクルを製造する工程S3と、前記レチクルを用いて前記三次元形状からなる三次元デバイスを製造する工程S4とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置を用いてウエハ基板上に三次元形状を形成する三次元フォトリソグラフィに関し、特に、テストレチクルを用いて、露光装置と露光プロセスとを含む露光システムの伝達関数を導出し、この伝達関数をマスクパターンの設計にフィードバックさせて、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能な三次元デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体等の製造に用いられているフォトリソグラフィ技術を応用し、例えば、レンズ等の光学素子、アクチュエータ、センサー、導波路、各種MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの微小な三次元デバイスをウエハ基板上に形成する三次元フォトリソグラフィが行われている。このような三次元フォトリソグラフィでは、例えば、特許文献1〜3に記載されているようなマスクパターンを有する露光用マスクが用いられていた。
【0003】
特許文献1及び2には、光を遮断する遮光パターンと、光を透過する透過パターンとの対からなるパターンブロックを複数連続して配置し、この連続するパターンブロックのピッチを一定とし、遮光パターンと透過パターンとの比率が徐々に変化する露光用マスクが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、光を遮断する遮光パターンと、光を透過する透過パターンとを同一比率、同一ピッチで形成したパターンサイトを複数配置してブロックエリアを構成し、このブロックエリアを構成する複数のパターンサイトとして、遮光パターンと透過パターンとのピッチが同一で、比率が徐々に変化するような配置とした露光用マスクが記載されている。
【0005】
このような特許文献1〜3の露光用マスクでは、上述したような遮光パターンと透過パターンとからなるパターンブロック又はパターンサイトのピッチを、ウエハ基板上に結像しない最小ピッチPmin以下としてあり、このようなマスクパターンを透過する0次光の光強度分布を制御することで、ウエハ基板上にレンズ等の三次元形状を形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−165248号公報
【特許文献2】特開2005−202170号公報
【特許文献3】特開2005−258387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
<投影光学系に起因する三次元形状の劣化>
従来の露光装置のうち、一般的に普及しているステッパーは、投影光学系として、NA=0.5〜0.6といった比較的高い開口数のレンズを使用していた。開口数の高いレンズは、解像力が高い反面、焦点深度が浅く、従来のステッパーを用いて三次元リソグラフィを行う場合は、せいぜい厚さ10μm程度の薄膜レジストに、高低差の小さい単純な三次元形状を形成することが限界であった。このため、従来のステッパーに、上述した特許文献1〜3露光用マスクを適用したとしても、例えば、厚さ100〜500μmといった厚膜レジストに高低差の大きい複雑な三次元形状を成形することは困難であるという問題があった。
【0008】
一方、投影光学系として、例えば、NA=0.1以下の比較的低い開口数のレンズを使用すれば、その深い焦点深度を利用して、厚さ100〜500μmといった厚膜レジストに高低差の大きい複雑な三次元形状を成形することが理論上可能である。しかし、開口数の低いレンズは、焦点深度が深い反面、解像力が低く、厚さ100〜500μmといった膜厚に複雑な三次元形状を精度よく成形することができず、最終的に形成される三次元形状が劣化してしまう問題があった。したがって、従来のステッパーに、単に開口数の低いレンズを適用しただけでは、厚膜レジストに高低差の大きい三次元形状を成形することは限界があった。
【0009】
<レジストの化学反応分布及び溶解性に起因する三次元形状の劣化>
また、最終的に形成される三次元形状の劣化は、上述した投影光学系の解像力のみに起因するものではない。例えば、露光工程における厚膜レジスト内における化学反応分布、その後の現像工程による厚膜レジストの溶解性によっても、最終的に形成される三次元形状が劣化してしまう問題があった。このような厚膜レジストの化学反応分布及び溶解性に起因する三次元形状の劣化は、投影光学系を使用しない露光装置であるアライナを用いて三次元リソグラフィを行う場合にも生じる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、テストレチクルを用いて露光システムの伝達関数を導出し、この伝達関数をマスクパターンの設計にフィードバックさせて、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能な三次元デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の実施において使用されるテストレチクルは、露光装置と露光プロセスとを含む露光システムの解像力を表す伝達関数を導出するためのテストレチクルであって、該テストレチクルは、複数のテストパターン領域を有し、各テストパターン領域には、前記露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドットからなるテストパターンが描画してあり、各テストパターンは、単位面積当たりの前記未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記未解像ドットの密度分布が少なくとも一方向に周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造となっており、各テストパターンごとに、前記未解像ドットの密度分布の周期性を異ならせ、各テストパターンを透過した光が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈するようにした構成としてある。
【0012】
上記構成からなるテストレチクルの各テストパターンは、未解像ドットの密度分布が周期性を有し、各テストパターンを透過した光が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈する。これら正弦波光強度分布ir(x、y)を「入力パターン情報」とし、この入力パターン情報を用いて、露光システムの解像力を表す伝達関数を導出することができる。
【0013】
すなわち、露光装置を用いたフォトリソグラフィ技術に関係する光学系、プロセス系等の要素を、入力パターン情報の「伝達系」とした場合、このような伝達系を介して、入力パターン情報がどのような「出力パターン」に変化したかを解析すれば、伝達系の伝達関数を導出することができる(図4を参照)。上述したように、テストレチクルの各テストパターンは、未解像ドットの密度分布が周期性を有し、各テストパターンを透過した光が、それぞれ周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈する。このような正弦波光強度分布ir(x、y)は、伝達系によってある伝達関数に従った周波数成分の出力パターンに変換されることになる。ここで、伝達系が線形であるときは、伝達系に入力した周波数成分と、これに対応する伝達系から出力された周波数成分との変化に基づいて導出した関数を、伝達系の周波数領域における伝達関数とみなすことができる。そして、周波数領域の伝達関数に数学的操作であるフーリエ逆変換を施すことで、最終的に空間領域の伝達関数を得ることができる。本明細書の記載においては、空間領域の関数をアルファベット小文字と座標x、yとを用いてf(x、y)と記し、周波数領域の関数をアルファベット大文字と座標ξ、ηを用いてF(ξ、η)と表記する。以下、本発明のテストレチクルを用いた露光システムの伝達関数の導出方法について、具体的に述べる。
【0014】
上記目的を達成するために、上述した本発明のテストレチクルを用いた露光システムの伝達関数の導出方法は、前記露光システムの伝達関数として、マスクパターンをウエハ基板上に投影する投影光学系に起因する光強度分布の劣化に関する露光装置の伝達関数を導出する方法であって、
前記テストレチクルの各テストパターンを透過した光を前記投影光学系に入射させ、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を決定する工程と、
前記投影光学系に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比に基づいて、前記露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0015】
上記方法によれば、正弦波光強度分布ir(x、y)の光を投影光学系に入射させると、投影光学系から正弦波光強度分布iw(X、Y)の光が出射される。これら正弦波光強度分布ir(x、y)の周波数成分と、正弦波光強度分布iw(X、Y)の周波数成分との変化に基づいて、露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出し、この伝達関数H1(ξ、η)にフーリエ逆変換を施すことにより、露光装置の空間領域の伝達関数h1(x、y)を正確かつ容易に導出することができる。
【0016】
そして、ステッパー等を用いた三次元フォトリソグラフィによって所望の三次元形状を成形する場合に、この伝達関数H1(ξ、η)を、マスクパターンの設計にフィードバックさせることで、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能となる。
【0017】
ここで、投影光学系から出射した光の正弦波光強度分布iw(x、y)を決定する方法として、例えば、露光装置の基板テーブル上に検出器を配置して実際に測定を行い、又は投影光学系の諸データを入力したシミュレーションにより算出する。
【0018】
上記目的を達成するために、上述した本発明のテストレチクルを用いた露光システムの伝達関数の導出方法は、前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する方法であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0019】
上記方法によれば、投影光学系を介さずに、正弦波光強度分布ir(x、y)の光でウエハ基板上の感光剤を露光し、その後の現像工程を経ると、正弦波光強度分布ir(x、y)に対応するテスト基板パターン(正弦波の出力パターン)が形成される。そして、正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの周波数成分と、これに対応するテスト基板パターンの周波数成分との変化に基づいて、露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出し、この伝達関数H2(ξ、η)にフーリエ逆変換を施すことにより、露光工程及び現像工程に関する露光プロセスの伝達関数h2(x、y)を正確かつ容易に導出することができる。
【0020】
そして、ステッパー又はアライナ等を用いた三次元フォトリソグラフィによって所望の三次元形状を成形する場合に、この伝達関数H2(ξ、η)を、マスクパターンの設計にフィードバックさせることで、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能となる。
【0021】
上述したように、ステッパーにより所望の三次元形状を成形する場合は、露光装置の伝達関数H1(ξ、η)及び露光プロセスの伝達関数H2(ξ、η)の両方をフィードバックさせて、所望の三次元形状を成形するためのマスクパターンを設計すればよい。また、アライナにより所望の三次元形状を成形する場合は、露光プロセスの伝達関数H2(ξ、η)のみをフィードバックさせて、所望の三次元形状を成形するためのマスクパターンを設計すればよい。以下、これら伝達関数H1(ξ、η)及び伝達関数H2(ξ、η)を設計にフィードバックさせたレチクルの製造方法について、具体的に述べる。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明のレチクルの製造方法は、上述した本発明のテストレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するためのレチクルの製造方法であって、下記のA:露光装置の伝達関数を導出する工程、B:露光プロセスの伝達関数を導出する工程、及びC:レチクルの製造工程を行う。
【0023】
A:露光装置の伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、マスクパターンをウエハ基板上に投影する投影光学系に起因する光強度分布の劣化に関する露光装置の伝達関数を導出する工程であって、
前記テストレチクルの各テストパターンを透過した光を前記投影光学系に入射させ、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を決定する工程と、
前記投影光学系に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比に基づいて、前記露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0024】
B:露光プロセスの伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する工程であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0025】
C:レチクルの製造工程は、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する工程と、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターンを設計するために、既に取得した前記周波数領域表現D(ξ、η)、露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)及び前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する工程と、
【数1】
前記Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、前記マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する工程と、
前記マスクパターンの透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する工程と、
【数2】
前記投影光学系の限界解像力以下の大きさの未解像ドットにより描画され、単位面積当たりの未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを前記レクチルに形成する工程と、を含む。
【0026】
上記A〜C工程からなる本発明は、投影光学系を用いたステッパー等により、所望の三次元形状を成形する場合に用いるレチクルの製造方法である。本発明の製造方法によれば、レチクルの製造工程Cにおいて、所望する三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)、テストレチクルを用いて導出した周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)及び伝達関数H2(ξ、η)に基づいて、使用する露光システムの伝達関数h1(x、y)及びh2(x、y)を考慮した透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを設計することができる。これにより、投影光学系に開口数の低いレンズを用いた場合でも、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能なレチクルを製造することが可能となる。
【0027】
以下、レチクルの製造工程Cにおいて、マスクパターンの透過率分布u(x、y)を導出する基本原理について、図4を参照しつつ説明する。
【0028】
図4において、一般に、出力信号o(X)は、入力信号i(x)と伝達関数h(x)とのConvolutionで与えられる(下記式(3))。
【数3】
【0029】
出力信号o(X)、入力信号i(x)、伝達関数h(x)のフーリエ変換をそれぞれO(ξ)=F{o(x)}、I(ξ)=F{i(x)}、H(ξ)=F{h(x)}とすると、Convolution定理により、出力信号o(X)のフーリエ変換O(ξ)は、下記式(4)となる。
【数4】
【0030】
したがって、出力信号o(X)と伝達関数h(x)とが既知の場合、それぞれのフーリエ変換O(ξ)、H(ξ)を求めて、下記式(5)の割り算により入力信号i(x)のフーリエ変換I(ξ)を求めることができる。
【数5】
【0031】
上記式(5)により得られたI(ξ)のフーリエ逆変換を求めることで、入力信号i(x)を予測することができる(De−Convolution 下記式(6))。
【数6】
【0032】
上述したレチクルの製造工程Cにおいて、出力信号o(X)は、所望する三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)、伝達関数h(x)は、露光装置の伝達関数h1(x、y)及び露光プロセスの伝達関数h2(x、y)、入力信号i(x)は、マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応する。そして、上述した基本原理に従って算出した光の正弦波光強度分布ir(x、y)から、所望する三次元形状の形成するマスクパターンの透過率分布u(x、y)を算出するのである。
【0033】
投影光学系を必要としないアライナ等により、所望の三次元形状を成形する場合には、本発明のレチクルの製造方法は、上述した本発明のテストレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するためのレチクルの製造方法であって、下記のA:露光プロセスの伝達関数を導出する工程、及びB:レチクルの製造工程を行う。
【0034】
A:露光プロセスの伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する工程であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0035】
B:レチクルの製造工程は、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する工程と、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターンを設計するために、既に取得した前記周波数領域表現D(ξ、η)、露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)及び前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する工程と、
【数7】
前記Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、前記マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する工程と、
前記マスクパターンの透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する工程と、
【数8】
前記露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドットにより描画され、単位面積当たりの前記未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを前記レクチルに形成する工程と、を含む。
【0036】
上記A及びB工程からなる本発明は、投影光学系を必要としないアライナ等により、所望の三次元形状を成形する場合に用いるレチクルの製造方法である。本発明の製造方法によれば、レチクルの製造工程Bにおいて、露光・現像等に関する露光プロセスの伝達関数h2(x、y)を考慮した透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを設計することができる。これにより、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能なレチクルを製造することが可能となる。
【0037】
上記目的を達成するために、本発明の三次元デバイスの製造方法は、上述した本発明の製造方法により製造したレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するようにしてある。
【0038】
上述した本発明の製造方法により製造したレチクルは、ステッパー又はアライナを用いた三次元フォトリソグラフィに広く適用することができ、例えば、レンズ、アクチュエータ、センサー、導波路、各種MEMSなどの微小な三次元デバイスを高精度に製造することができる。
【0039】
また、本発明を実施する際に使用する露光装置の露光波長は、特に限定されるものではなく、例えば、X線露光装置等においても、上記と同様の伝達関数の導出を行うことで、上記と同様の作用効果を奏することが可能である。また、EB(Electron Beam)露光装置においても、上記と同様の伝達関数を導出し、この伝達関数を露光装置のマスクに対応するEB描画データにフィードバックすることで、上記と同様の作用効果を奏することが可能である。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明によれば、テストレチクルを用いて露光システムの伝達関数の導出し、この伝達関数をマスクパターンの設計にフィードバックさせて、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】露光装置を用いた三次元フォトリソグラフィにおける入力パターン情報の伝達を示す概略図である。
【図2】露光装置の限界解像力と未解像ドットとの関係を示す概略図である。
【図3】未解像ドットの個数比率と透過率の関係を示す概略図である。
【図4】入力情報、伝達関数及び出力情報の関係を示す説明図である。
【図5】本発明の三次元デバイスの製造方法の全工程を示すフローチャートである。
【図6】図5における露光装置の伝達関数の導出工程を示すフローチャートである。
【図7】図5における露光プロセスの伝達関数の導出工程を示すフローチャートである。
【図8】図5におけるレチクルの製造工程を示すフローチャートである。
【図9】図5における三次元デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【図10】上記伝達関数を導出する際に用いるテストレチクルを示す平面図である。
【図11】同図(a)及び(b)は上記テストレチクルのマスクパターンを示す概略図である。
【図12】上記露光装置の伝達関数の導出工程を示す概略図である。
【図13】上記露光プロセスの伝達関数の導出工程を示す概略図である。
【図14】上記伝達関数を導出する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態に係る三次元デバイスの製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0043】
<本実施形態における三次元フォトリソグラフィの概説>
まず、本実施形態における三次元フォトリソグラフィについて、図1〜図4を参照しつつ説明する。図1は、露光装置を用いた三次元フォトリソグラフィにおける入力パターン情報の伝達を示すものである。
【0044】
<<レチクル>>
図1において、三次元フォトリソグラフィに使用するレチクル1には、所望する三次元形状を形成するためのマスクパターン10が描画してある。このマスクパターン10は、露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドット11、11、11・・・によって描画してある。
【0045】
図2に示すように、未解像ドット11は、限界解像のパターンピッチP以下の大きさWとしてある。一般に、限界解像のパターンピッチPとは、マスクパターンを形成するドットがウエハ基板上に結像し得る最小ピッチをいう。限界解像のパターンピッチPは、例えば、投影光学系2を用いたステッパーならば、投影光学系2の開口数NA及び露光光の波長λにより、P=λ/NAで規定される。
【0046】
例えば、NA=0.06、λ=0.36μmの場合、ドットのパターンピッチPが6μm以下のパターンは、ウエハ基板3上で結像しない。回折光である±1次光が投影光学系2の開口絞りに遮断されるからである。そして、未解像ドット11の大きさWを、限界解像のパターンピッチPの1/2以下とした場合、この未解像ドット11はウエハ基板3上で結像しない。
【0047】
このような未解像ドット11からなるマスクパターン10は、図3に示すように、単位面積当たりの未解像ドット11の個数に応じた透過率で、この透過率に応じた強度の光を透過する。そして、所望する三次元形状の凹凸、傾斜、湾曲等の各部形状に応じて、マスクパターン10各部を形成する未解像ドット11の単位面積当たりの個数を連続的に変化させ、マスクパターン10が所定の透過率分布u(x、y)となるようにしてある。これにより、マスクパターン10を透過した光が、所望する三次元形状を形成するような所定の光強度分布ir(x、y)を呈するようになる。
【0048】
なお、本実施形態において、単に「レチクル」という場合は、最終的な所望の三次元形状を形成するためのマスクパターンが描画されたものを指し、後述する「テストレチクル」と区別する。
【0049】
<<投影光学系>>
図1において、投影光学系2は、レチクル1上のマスクパターン10をウエハ基板3に投影させるレンズ、開口絞り等によって構成してある。従来の三次元フォトリソグラフィでは、投影光学系にNA=0.5〜0.6といった比較的高い開口数のレンズを使用し、厚さ10μm程度の薄膜レジストに、高低差の小さい単純な三次元形状を形成していた。これに対して、本実施形態では、投影光学系2にNA=0.1以下の比較的低い開口数のレンズを使用し、その深い焦点深度を利用して、厚さ100〜500μmといった厚膜レジストに高低差の大きい複雑な三次元形状を成形するようにしている。
【0050】
このような投影光学系2は、レクチル1を透過した光強度分布ir(x、y)の光を入射して、ウエハ基板3上に光強度分布iw(x、y)の光を照射する。但し、ウエハ基板3上に照射された光の光強度分布iw(x、y)は、レクチル1を透過した光の光強度分布ir(x、y)と同一にはならず、投影光学系2の伝達関数h1(x、y)による劣化を生じる(以下、投影光学系2の伝達関数h1(x、y)を「露光装置の伝達関数h1(x、y)」という場合がある。)。
【0051】
<<ウエハ基板の露光・現像>>
上述したように、図1に示すウエハ基板3上には、厚さ100〜500μmといった厚膜レジストが塗布してある。ウエハ基板3上の厚膜レジストは、投影光学系2から照射された光によって露光される。投影光学系2から照射された光は、その光強度分布ir(x、y)に応じて厚膜レジスト内を所定の深さまで透過し、厚膜レジスト内の光開始剤を化学反応させる。その後、露光した厚膜レジストを現像し、その他のフォトリソグラフィ処理を経て、ウエハ基板3上に所望する三次元形状の基板パターン3aが形成される。
【0052】
但し、露光・現像4などの露光プロセスを経て、最終的にウエハ基板3上に形成された基板パターン3aの形状プロファイルd(X、Y)は、投影光学系2から照射された光強度分布iw(x、y)により形成される理論上の基板パターンの形状プロファイルと同一にはならない。露光工程における厚膜レジスト内の化学反応分布、その後の現像工程による厚膜レジストの溶解性の影響を受けて、最終的に形成される基板パターン3aは、これら露光プロセスの伝達関数h2(x、y)による劣化を生じる。
【0053】
<露光装置の装置関数をフィードバックしたマスクパターンの設計>
上述のように、マスクパターン10を透過した光の光強度分布ir(x、y)を「入力パターン情報」とすると、この入力パターン情報は、露光装置の伝達関数h1(x、y)及び露光プロセスの伝達関数h2(x、y)による劣化を生じ、最終的に所望する三次元形状を精度よく形成することができない。
【0054】
そこで、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法では、後述するテストレチクルを用いて、露光装置の伝達関数h1(x、y)及び露光プロセスの伝達関数h2(x、y)を導出し、これらの伝達関数をレチクル1のマスクパターン10の設計にフィードバックさせ、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することとしている。本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法の基本原理については、段落[0027]〜[0032]及び図4において既に説明した。以下、三次元デバイスの製造方法について具体的に詳述する。
【0055】
<三次元デバイスの製造方法>
まず、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法の全工程について、図5のフローチャートを参照しつつ概説する。
【0056】
図5において、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法は、主として、ステップS1の露光装置の伝達関数の導出工程と、ステップS2の露光プロセスの伝達関数の導出工程と、ステップS3のレチクルの製造工程と、ステップS4の三次元デバイスの製造工程とからなっている。
【0057】
三次元デバイスの製造方法の全工程の流れを簡単に説明すると、まず、ステップS1及びS2では、後述するテストレチクルを用いて、露光装置の伝達関数及び露光プロセスの伝達関数を導出する。次いで、ステップS3では、導出したこれらの伝達関数を用いて、所望する三次元形状を形成するためのレチクル1を製造する。すなわち、これらの伝達関数をフィードバックしたマスクパターン10を設計するのである。その後、ステップS4において、ステップS3で製造したレチクル1を用いて、所望の三次元形状を有する三次元デバイスを製造する。
【0058】
なお、ステップS1の露光装置の伝達関数の導出工程と、ステップS2の露光プロセスの伝達関数の導出工程とは、互いに別個独立の作業工程であり、いずれの工程を先に行ってもよいし、両工程を同時平行して行ってもよい。また、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法は、投影光学系2を用いたステッパー等の使用を前提としているが、投影光学系2を必要としないアライナ等を使用する場合には、ステップS1の露光装置の伝達関数の導出工程を省略する。
【0059】
<<テストレチクル>>
ここで、上述した三次元デバイスの製造方法の各工程を詳述する前に、図5のステップS1及びS2において用いるテストレチクルについて、図10、図11(a)及び(b)を参照しつつ説明する。なお、以下に説明するテストレチクルは、4つのテストパターンを備えた構成となっているが、これは一例にすぎず、テストレチクルは、4つ以上のテストパターンを有するものであってもよい。
【0060】
図10において、本実施形態に係るテストレチクル20は、図中斜線で示す遮光領域22内に、透光性を有する4つのテストパターン領域(図中の四角形の枠を参照)を設けた構成となっている。各テストパターン領域には、上述した4つのテストパターン21A〜21Dがそれぞれ描画してある。
【0061】
図11(a)に示すように、各テストパターン21A〜21Dは、露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドット11、11、11・・・からなり、単位面積当たりの未解像ドット11の個数を連続的に変化させることで、未解像ドット11の密度分布がx、yの二方向に周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造となっている。
【0062】
各テストパターン21A〜21Dごとに、未解像ドット11の密度分布の周期性を異ならせてあり、各テストパターン21A〜21Dを透過した光が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈するようにしてある。これら正弦波光強度分布ir(x、y)を「入力パターン情報」とし、この入力パターン情報を用いて、露光装置の伝達関数及び露光プロセスの伝達関数を導出することができる。
【0063】
すなわち、投影光学系2、露光・現像4等のプロセスといった伝達系を介して、入力パターン情報がどのような「出力パターン」に変化したかを解析すれば、これら伝達系の伝達関数を導出することができる。上述したように、テストレチクル20の各テストパターン21A〜21Dは、それぞれ周期性を有し、テストレチクル20を透過した正弦波光強度分布ir(x、y)が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分により構成される。このような正弦波光強度分布ir(x、y)は、伝達系によってある伝達関数に従った出力パターンに変換されることになる。そして、伝達系に入力した周波数成分と、これに対応する伝達系から出力された周波数成分との変化に基づいて導出した関数を、周波数領域における伝達関数H(ξ)とみなすのである(図14を参照)。
【0064】
なお、テストレチクルのテストパターンは、図11(a)に示すようなx、yの二方向に周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造に限定されるものではない。例えば、図11(b)に示すテストレチクル30のように、x方向のみに周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造のテストパターン31A、31B、31C・・・としてもよい。
【0065】
<<投影光学系の伝達関数h1(x、y)の導出工程>>
次に、図5のステップS1に示した露光装置の伝達関数の導出工程について、図6、図12及び図14を参照しつつ詳述する。
【0066】
露光装置の伝達関数を導出する場合には、図12に示すように、露光装置でウエハ基板3を露光するときと同じ配置関係で、テストレチクル20を投影光学系2の上方に配置する。但し、投影光学系2の共役面にウエハ基板3は配置せず、代わりに二次元CCDセンサー等の光ディテクタ5を配置する。この光ディテクタ5は、多数の撮像素子5a、5a、5a・・・を格子状やその他の配列で平面状に敷き詰めた構成となっており、投影光学系2を通過した光の光強度分布を測定する。
【0067】
図6のステップS11において、図示しない光源からの露光光でテストレチクル20を照明し、各テストパターン21A〜21Dを透過した正弦波光強度分布ir(x、y)の光を投影光学系2に入射させる。
【0068】
次いで、ステップS12に進み、投影光学系2を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を測定する。投影光学系2を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)は、共役面に配置した光ディテクタ5によって測定され、各テストパターン21A〜21Dごとに、図12に示すような光の強度分布を表す正弦波波形が得られる。
【0069】
次いで、ステップS13に進み、各テストパターン21A〜21Dごとに、投影光学系2に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、投影光学系2を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比を求め、図14に示すように、周期性ピッチp1〜p4とコントラスト比との関係をプロットする。そして、これにより得られた関数を、露光装置の周波数領域における伝達関数H1(ξ、η)とする(ステップS14)。
【0070】
なお、本実施形態では、光ディテクタ5を用いて、投影光学系2を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を実際に測定することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、投影光学系2の諸データを入力したシミュレーションにより、正弦波光強度分布iw(X、Y)を算出するようにしてもよい。
【0071】
<<露光プロセスの伝達関数の導出工程>>
次に、図5のステップS2に示した露光プロセスの伝達関数の導出工程について、図7、図13及び図14を参照しつつ詳述する。
【0072】
図7及び図13に示すように、まず、ステップS21において、露光・現像4等の露光プロセスの伝達関数を導出する場合には、投影光学系2を介さずに、テストレチクル20をウエハ基板3に重ね合わせる。次いで、ステップS22に進み、図示しない光源からの露光光でテストレチクル20を照明し、各テストパターン21A〜21Dを通過した正弦波光強度分布ir(x、y)の光によって、ウエハ基板3上の厚膜レジストを露光する。
【0073】
その後、ステップS23に進み、露光したウエハ基板3上の厚膜レジストを現像し、各テストパターン21A〜21Dを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターン3bを形成する。そして、テスト基板パターン3bの縦断形状プロファイルと、各テストパターン21A〜21Dを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターン(図示せず)の縦断形状プロファイルとのコントラスト比を求め、図14に示すように、周期性ピッチp1〜p4とコントラスト比との関係をプロットする。そして、これにより得られた関数を、露光プロセスの周波数領域における伝達関数H2(ξ、η)とする(ステップS24)。
【0074】
<<レチクルの製造工程>>
次に、図5のステップS3に示したレチクルの製造工程について、図8を参照しつつ詳述する。
【0075】
図8のステップS31において、まず、最終的に製造される三次元デバイスの三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する。
【0076】
次いで、ステップS32に進み、三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターン10を設計するために、既に取得した周波数領域表現D(ξ、η)、露光装置の伝達関数H1(ξ、η)及び露光プロセスの伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターン10を透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する。
【数9】
【0077】
次いで、ステップS33に進み、ステップS33で算出した周波数領域表現Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、マスクパターン10を透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する。その後、ステップS34に進み、ステップS34で算出したマスクパターン10の透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する。
【数10】
【0078】
ステップS35において、ステップS34で算出した透過率分布u(x、y)のマスクパターン10をレクチル1に形成する。図1を参照して説明したように、三次元形状を形成するためのマスクパターン10は、投影光学系2の限界解像力以下の大きさの未解像ドット11により描画され、単位面積当たりの未解像ドット11の個数を連続的に変化させることで、所望の透過率分布u(x、y)となるようにする。
【0079】
<<三次元デバイスの製造工程>>
次に、図5のステップS4に示した三次元デバイスの製造工程について、図1及び図9を参照しつつ詳述する。ここで、本工程では、図5のステップS1及びS2を経て、露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)と、露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)とを導出した露光装置を用いて三次元デバイスを製造する。すなわち、本工程で三次元デバイスを製造するに際し、投影光学系2、露光・現像4等のプロセスの条件は、図5のステップS1及びS2の場合と同一にする。
【0080】
まず、図9のステップS41では、上述した図5のステップS3で製造した透過率分布u(x、y)のマスクパターン10を形成したレチクル1で、ウエハ基板3上の厚膜レジストを露光する。
【0081】
このステップS41について詳述すると、図1に示すように、光源からの露光光でレチクル1を照明し、透過率分布u(x、y)のマスクパターン10を透過した光強度分布ir(x、y)の光を投影光学系2に入射させる。本工程では、厚膜レジストに高低差の大きい三次元形状を形成するため、投影光学系2に焦点深度が深いレンズを用いており、マスクパターン10を透過した光強度分布ir(x、y)の光は、投影光学系2の伝達関数h1(x、y)によって、光強度分布iw(x、y)の光に変化され、ウエハ基板3上の厚膜レジストに投影される。
【0082】
このような光強度分布の変化に対処すべく、本実施形態では、あらかじめ露光装置の伝達関数h1(x、y)を考慮してマスクパターン10の透過率分布u(x、y)を定めている(図8のステップS32の伝達関数H1(ξ、η)を参照)。これにより、マスクパターン10を透過した光の光強度分布ir(x、y)は、露光装置の伝達関数h1(x、y)によって、最終的な所望の三次元形状の精度をより向上させる光強度分布iw(x、y)に変化されるのである。
【0083】
次いで、ステップS42に進み、露光したウエハ基板3上の厚膜レジストを現像する。その後、ステップS43に進み、その他のフォトリソグラフィ処理を経て、ウエハ基板3上に所望の三次元形状を形成する。
【0084】
露光・現像4等の露光プロセスを経て、最終的にウエハ基板3上に形成される三次元形状は、上述したステップS41の露光工程における厚膜レジスト内における化学反応分布、及び本ステップS42の現像工程における厚膜レジストの溶解性などの影響を受け、これら露光プロセスの伝達関数h2(x、y)による形状変化を生じる。
【0085】
このような形状変化に対処すべく、本実施形態では、あらかじめ露光プロセスの伝達関数h2(x、y)を考慮してマスクパターン10の透過率分布u(x、y)を定めている(図8のステップS32の伝達関数H2(ξ、η)を参照)。これにより、投影光学系2を通過した光強度分布iw(x、y)の光で露光された厚膜レジストは、露光・現像4等の露光プロセスの伝達関数h2(x、y)によって、最終的な所望の三次元形状の精度をより向上させる方向に形状変化することになる。
【0086】
<むすび>
以上のように、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法によれば、テストレチクル20を用いて、露光装置の伝達関数と、露光プロセスの伝達関数とを導出し、これら伝達関数をマスクパターン10の設計にフィードバックさせて、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1 レチクル
2 投影光学系
3 ウエハ基板
3a 基板パターン
3b テスト基板パターン
4 露光・現像等のプロセス
5 光ディテクタ
5a 撮像素子
10 マスクパターン
11 未解像ドット
20 テストレチクル
21A〜21D テストパターン
22 遮光領域
30 テストレチクル
31A〜31C テストパターン
p1〜pn 周期性ピッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置を用いてウエハ基板上に三次元形状を形成する三次元フォトリソグラフィに関し、特に、テストレチクルを用いて、露光装置と露光プロセスとを含む露光システムの伝達関数を導出し、この伝達関数をマスクパターンの設計にフィードバックさせて、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能な三次元デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体等の製造に用いられているフォトリソグラフィ技術を応用し、例えば、レンズ等の光学素子、アクチュエータ、センサー、導波路、各種MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの微小な三次元デバイスをウエハ基板上に形成する三次元フォトリソグラフィが行われている。このような三次元フォトリソグラフィでは、例えば、特許文献1〜3に記載されているようなマスクパターンを有する露光用マスクが用いられていた。
【0003】
特許文献1及び2には、光を遮断する遮光パターンと、光を透過する透過パターンとの対からなるパターンブロックを複数連続して配置し、この連続するパターンブロックのピッチを一定とし、遮光パターンと透過パターンとの比率が徐々に変化する露光用マスクが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、光を遮断する遮光パターンと、光を透過する透過パターンとを同一比率、同一ピッチで形成したパターンサイトを複数配置してブロックエリアを構成し、このブロックエリアを構成する複数のパターンサイトとして、遮光パターンと透過パターンとのピッチが同一で、比率が徐々に変化するような配置とした露光用マスクが記載されている。
【0005】
このような特許文献1〜3の露光用マスクでは、上述したような遮光パターンと透過パターンとからなるパターンブロック又はパターンサイトのピッチを、ウエハ基板上に結像しない最小ピッチPmin以下としてあり、このようなマスクパターンを透過する0次光の光強度分布を制御することで、ウエハ基板上にレンズ等の三次元形状を形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−165248号公報
【特許文献2】特開2005−202170号公報
【特許文献3】特開2005−258387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
<投影光学系に起因する三次元形状の劣化>
従来の露光装置のうち、一般的に普及しているステッパーは、投影光学系として、NA=0.5〜0.6といった比較的高い開口数のレンズを使用していた。開口数の高いレンズは、解像力が高い反面、焦点深度が浅く、従来のステッパーを用いて三次元リソグラフィを行う場合は、せいぜい厚さ10μm程度の薄膜レジストに、高低差の小さい単純な三次元形状を形成することが限界であった。このため、従来のステッパーに、上述した特許文献1〜3露光用マスクを適用したとしても、例えば、厚さ100〜500μmといった厚膜レジストに高低差の大きい複雑な三次元形状を成形することは困難であるという問題があった。
【0008】
一方、投影光学系として、例えば、NA=0.1以下の比較的低い開口数のレンズを使用すれば、その深い焦点深度を利用して、厚さ100〜500μmといった厚膜レジストに高低差の大きい複雑な三次元形状を成形することが理論上可能である。しかし、開口数の低いレンズは、焦点深度が深い反面、解像力が低く、厚さ100〜500μmといった膜厚に複雑な三次元形状を精度よく成形することができず、最終的に形成される三次元形状が劣化してしまう問題があった。したがって、従来のステッパーに、単に開口数の低いレンズを適用しただけでは、厚膜レジストに高低差の大きい三次元形状を成形することは限界があった。
【0009】
<レジストの化学反応分布及び溶解性に起因する三次元形状の劣化>
また、最終的に形成される三次元形状の劣化は、上述した投影光学系の解像力のみに起因するものではない。例えば、露光工程における厚膜レジスト内における化学反応分布、その後の現像工程による厚膜レジストの溶解性によっても、最終的に形成される三次元形状が劣化してしまう問題があった。このような厚膜レジストの化学反応分布及び溶解性に起因する三次元形状の劣化は、投影光学系を使用しない露光装置であるアライナを用いて三次元リソグラフィを行う場合にも生じる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、テストレチクルを用いて露光システムの伝達関数を導出し、この伝達関数をマスクパターンの設計にフィードバックさせて、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能な三次元デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の実施において使用されるテストレチクルは、露光装置と露光プロセスとを含む露光システムの解像力を表す伝達関数を導出するためのテストレチクルであって、該テストレチクルは、複数のテストパターン領域を有し、各テストパターン領域には、前記露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドットからなるテストパターンが描画してあり、各テストパターンは、単位面積当たりの前記未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記未解像ドットの密度分布が少なくとも一方向に周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造となっており、各テストパターンごとに、前記未解像ドットの密度分布の周期性を異ならせ、各テストパターンを透過した光が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈するようにした構成としてある。
【0012】
上記構成からなるテストレチクルの各テストパターンは、未解像ドットの密度分布が周期性を有し、各テストパターンを透過した光が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈する。これら正弦波光強度分布ir(x、y)を「入力パターン情報」とし、この入力パターン情報を用いて、露光システムの解像力を表す伝達関数を導出することができる。
【0013】
すなわち、露光装置を用いたフォトリソグラフィ技術に関係する光学系、プロセス系等の要素を、入力パターン情報の「伝達系」とした場合、このような伝達系を介して、入力パターン情報がどのような「出力パターン」に変化したかを解析すれば、伝達系の伝達関数を導出することができる(図4を参照)。上述したように、テストレチクルの各テストパターンは、未解像ドットの密度分布が周期性を有し、各テストパターンを透過した光が、それぞれ周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈する。このような正弦波光強度分布ir(x、y)は、伝達系によってある伝達関数に従った周波数成分の出力パターンに変換されることになる。ここで、伝達系が線形であるときは、伝達系に入力した周波数成分と、これに対応する伝達系から出力された周波数成分との変化に基づいて導出した関数を、伝達系の周波数領域における伝達関数とみなすことができる。そして、周波数領域の伝達関数に数学的操作であるフーリエ逆変換を施すことで、最終的に空間領域の伝達関数を得ることができる。本明細書の記載においては、空間領域の関数をアルファベット小文字と座標x、yとを用いてf(x、y)と記し、周波数領域の関数をアルファベット大文字と座標ξ、ηを用いてF(ξ、η)と表記する。以下、本発明のテストレチクルを用いた露光システムの伝達関数の導出方法について、具体的に述べる。
【0014】
上記目的を達成するために、上述した本発明のテストレチクルを用いた露光システムの伝達関数の導出方法は、前記露光システムの伝達関数として、マスクパターンをウエハ基板上に投影する投影光学系に起因する光強度分布の劣化に関する露光装置の伝達関数を導出する方法であって、
前記テストレチクルの各テストパターンを透過した光を前記投影光学系に入射させ、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を決定する工程と、
前記投影光学系に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比に基づいて、前記露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0015】
上記方法によれば、正弦波光強度分布ir(x、y)の光を投影光学系に入射させると、投影光学系から正弦波光強度分布iw(X、Y)の光が出射される。これら正弦波光強度分布ir(x、y)の周波数成分と、正弦波光強度分布iw(X、Y)の周波数成分との変化に基づいて、露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出し、この伝達関数H1(ξ、η)にフーリエ逆変換を施すことにより、露光装置の空間領域の伝達関数h1(x、y)を正確かつ容易に導出することができる。
【0016】
そして、ステッパー等を用いた三次元フォトリソグラフィによって所望の三次元形状を成形する場合に、この伝達関数H1(ξ、η)を、マスクパターンの設計にフィードバックさせることで、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能となる。
【0017】
ここで、投影光学系から出射した光の正弦波光強度分布iw(x、y)を決定する方法として、例えば、露光装置の基板テーブル上に検出器を配置して実際に測定を行い、又は投影光学系の諸データを入力したシミュレーションにより算出する。
【0018】
上記目的を達成するために、上述した本発明のテストレチクルを用いた露光システムの伝達関数の導出方法は、前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する方法であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0019】
上記方法によれば、投影光学系を介さずに、正弦波光強度分布ir(x、y)の光でウエハ基板上の感光剤を露光し、その後の現像工程を経ると、正弦波光強度分布ir(x、y)に対応するテスト基板パターン(正弦波の出力パターン)が形成される。そして、正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの周波数成分と、これに対応するテスト基板パターンの周波数成分との変化に基づいて、露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出し、この伝達関数H2(ξ、η)にフーリエ逆変換を施すことにより、露光工程及び現像工程に関する露光プロセスの伝達関数h2(x、y)を正確かつ容易に導出することができる。
【0020】
そして、ステッパー又はアライナ等を用いた三次元フォトリソグラフィによって所望の三次元形状を成形する場合に、この伝達関数H2(ξ、η)を、マスクパターンの設計にフィードバックさせることで、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能となる。
【0021】
上述したように、ステッパーにより所望の三次元形状を成形する場合は、露光装置の伝達関数H1(ξ、η)及び露光プロセスの伝達関数H2(ξ、η)の両方をフィードバックさせて、所望の三次元形状を成形するためのマスクパターンを設計すればよい。また、アライナにより所望の三次元形状を成形する場合は、露光プロセスの伝達関数H2(ξ、η)のみをフィードバックさせて、所望の三次元形状を成形するためのマスクパターンを設計すればよい。以下、これら伝達関数H1(ξ、η)及び伝達関数H2(ξ、η)を設計にフィードバックさせたレチクルの製造方法について、具体的に述べる。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明のレチクルの製造方法は、上述した本発明のテストレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するためのレチクルの製造方法であって、下記のA:露光装置の伝達関数を導出する工程、B:露光プロセスの伝達関数を導出する工程、及びC:レチクルの製造工程を行う。
【0023】
A:露光装置の伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、マスクパターンをウエハ基板上に投影する投影光学系に起因する光強度分布の劣化に関する露光装置の伝達関数を導出する工程であって、
前記テストレチクルの各テストパターンを透過した光を前記投影光学系に入射させ、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を決定する工程と、
前記投影光学系に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比に基づいて、前記露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0024】
B:露光プロセスの伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する工程であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0025】
C:レチクルの製造工程は、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する工程と、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターンを設計するために、既に取得した前記周波数領域表現D(ξ、η)、露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)及び前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する工程と、
【数1】
前記Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、前記マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する工程と、
前記マスクパターンの透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する工程と、
【数2】
前記投影光学系の限界解像力以下の大きさの未解像ドットにより描画され、単位面積当たりの未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを前記レクチルに形成する工程と、を含む。
【0026】
上記A〜C工程からなる本発明は、投影光学系を用いたステッパー等により、所望の三次元形状を成形する場合に用いるレチクルの製造方法である。本発明の製造方法によれば、レチクルの製造工程Cにおいて、所望する三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)、テストレチクルを用いて導出した周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)及び伝達関数H2(ξ、η)に基づいて、使用する露光システムの伝達関数h1(x、y)及びh2(x、y)を考慮した透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを設計することができる。これにより、投影光学系に開口数の低いレンズを用いた場合でも、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能なレチクルを製造することが可能となる。
【0027】
以下、レチクルの製造工程Cにおいて、マスクパターンの透過率分布u(x、y)を導出する基本原理について、図4を参照しつつ説明する。
【0028】
図4において、一般に、出力信号o(X)は、入力信号i(x)と伝達関数h(x)とのConvolutionで与えられる(下記式(3))。
【数3】
【0029】
出力信号o(X)、入力信号i(x)、伝達関数h(x)のフーリエ変換をそれぞれO(ξ)=F{o(x)}、I(ξ)=F{i(x)}、H(ξ)=F{h(x)}とすると、Convolution定理により、出力信号o(X)のフーリエ変換O(ξ)は、下記式(4)となる。
【数4】
【0030】
したがって、出力信号o(X)と伝達関数h(x)とが既知の場合、それぞれのフーリエ変換O(ξ)、H(ξ)を求めて、下記式(5)の割り算により入力信号i(x)のフーリエ変換I(ξ)を求めることができる。
【数5】
【0031】
上記式(5)により得られたI(ξ)のフーリエ逆変換を求めることで、入力信号i(x)を予測することができる(De−Convolution 下記式(6))。
【数6】
【0032】
上述したレチクルの製造工程Cにおいて、出力信号o(X)は、所望する三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)、伝達関数h(x)は、露光装置の伝達関数h1(x、y)及び露光プロセスの伝達関数h2(x、y)、入力信号i(x)は、マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応する。そして、上述した基本原理に従って算出した光の正弦波光強度分布ir(x、y)から、所望する三次元形状の形成するマスクパターンの透過率分布u(x、y)を算出するのである。
【0033】
投影光学系を必要としないアライナ等により、所望の三次元形状を成形する場合には、本発明のレチクルの製造方法は、上述した本発明のテストレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するためのレチクルの製造方法であって、下記のA:露光プロセスの伝達関数を導出する工程、及びB:レチクルの製造工程を行う。
【0034】
A:露光プロセスの伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する工程であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
【0035】
B:レチクルの製造工程は、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する工程と、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターンを設計するために、既に取得した前記周波数領域表現D(ξ、η)、露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)及び前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する工程と、
【数7】
前記Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、前記マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する工程と、
前記マスクパターンの透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する工程と、
【数8】
前記露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドットにより描画され、単位面積当たりの前記未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを前記レクチルに形成する工程と、を含む。
【0036】
上記A及びB工程からなる本発明は、投影光学系を必要としないアライナ等により、所望の三次元形状を成形する場合に用いるレチクルの製造方法である。本発明の製造方法によれば、レチクルの製造工程Bにおいて、露光・現像等に関する露光プロセスの伝達関数h2(x、y)を考慮した透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを設計することができる。これにより、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能なレチクルを製造することが可能となる。
【0037】
上記目的を達成するために、本発明の三次元デバイスの製造方法は、上述した本発明の製造方法により製造したレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するようにしてある。
【0038】
上述した本発明の製造方法により製造したレチクルは、ステッパー又はアライナを用いた三次元フォトリソグラフィに広く適用することができ、例えば、レンズ、アクチュエータ、センサー、導波路、各種MEMSなどの微小な三次元デバイスを高精度に製造することができる。
【0039】
また、本発明を実施する際に使用する露光装置の露光波長は、特に限定されるものではなく、例えば、X線露光装置等においても、上記と同様の伝達関数の導出を行うことで、上記と同様の作用効果を奏することが可能である。また、EB(Electron Beam)露光装置においても、上記と同様の伝達関数を導出し、この伝達関数を露光装置のマスクに対応するEB描画データにフィードバックすることで、上記と同様の作用効果を奏することが可能である。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明によれば、テストレチクルを用いて露光システムの伝達関数の導出し、この伝達関数をマスクパターンの設計にフィードバックさせて、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】露光装置を用いた三次元フォトリソグラフィにおける入力パターン情報の伝達を示す概略図である。
【図2】露光装置の限界解像力と未解像ドットとの関係を示す概略図である。
【図3】未解像ドットの個数比率と透過率の関係を示す概略図である。
【図4】入力情報、伝達関数及び出力情報の関係を示す説明図である。
【図5】本発明の三次元デバイスの製造方法の全工程を示すフローチャートである。
【図6】図5における露光装置の伝達関数の導出工程を示すフローチャートである。
【図7】図5における露光プロセスの伝達関数の導出工程を示すフローチャートである。
【図8】図5におけるレチクルの製造工程を示すフローチャートである。
【図9】図5における三次元デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【図10】上記伝達関数を導出する際に用いるテストレチクルを示す平面図である。
【図11】同図(a)及び(b)は上記テストレチクルのマスクパターンを示す概略図である。
【図12】上記露光装置の伝達関数の導出工程を示す概略図である。
【図13】上記露光プロセスの伝達関数の導出工程を示す概略図である。
【図14】上記伝達関数を導出する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態に係る三次元デバイスの製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0043】
<本実施形態における三次元フォトリソグラフィの概説>
まず、本実施形態における三次元フォトリソグラフィについて、図1〜図4を参照しつつ説明する。図1は、露光装置を用いた三次元フォトリソグラフィにおける入力パターン情報の伝達を示すものである。
【0044】
<<レチクル>>
図1において、三次元フォトリソグラフィに使用するレチクル1には、所望する三次元形状を形成するためのマスクパターン10が描画してある。このマスクパターン10は、露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドット11、11、11・・・によって描画してある。
【0045】
図2に示すように、未解像ドット11は、限界解像のパターンピッチP以下の大きさWとしてある。一般に、限界解像のパターンピッチPとは、マスクパターンを形成するドットがウエハ基板上に結像し得る最小ピッチをいう。限界解像のパターンピッチPは、例えば、投影光学系2を用いたステッパーならば、投影光学系2の開口数NA及び露光光の波長λにより、P=λ/NAで規定される。
【0046】
例えば、NA=0.06、λ=0.36μmの場合、ドットのパターンピッチPが6μm以下のパターンは、ウエハ基板3上で結像しない。回折光である±1次光が投影光学系2の開口絞りに遮断されるからである。そして、未解像ドット11の大きさWを、限界解像のパターンピッチPの1/2以下とした場合、この未解像ドット11はウエハ基板3上で結像しない。
【0047】
このような未解像ドット11からなるマスクパターン10は、図3に示すように、単位面積当たりの未解像ドット11の個数に応じた透過率で、この透過率に応じた強度の光を透過する。そして、所望する三次元形状の凹凸、傾斜、湾曲等の各部形状に応じて、マスクパターン10各部を形成する未解像ドット11の単位面積当たりの個数を連続的に変化させ、マスクパターン10が所定の透過率分布u(x、y)となるようにしてある。これにより、マスクパターン10を透過した光が、所望する三次元形状を形成するような所定の光強度分布ir(x、y)を呈するようになる。
【0048】
なお、本実施形態において、単に「レチクル」という場合は、最終的な所望の三次元形状を形成するためのマスクパターンが描画されたものを指し、後述する「テストレチクル」と区別する。
【0049】
<<投影光学系>>
図1において、投影光学系2は、レチクル1上のマスクパターン10をウエハ基板3に投影させるレンズ、開口絞り等によって構成してある。従来の三次元フォトリソグラフィでは、投影光学系にNA=0.5〜0.6といった比較的高い開口数のレンズを使用し、厚さ10μm程度の薄膜レジストに、高低差の小さい単純な三次元形状を形成していた。これに対して、本実施形態では、投影光学系2にNA=0.1以下の比較的低い開口数のレンズを使用し、その深い焦点深度を利用して、厚さ100〜500μmといった厚膜レジストに高低差の大きい複雑な三次元形状を成形するようにしている。
【0050】
このような投影光学系2は、レクチル1を透過した光強度分布ir(x、y)の光を入射して、ウエハ基板3上に光強度分布iw(x、y)の光を照射する。但し、ウエハ基板3上に照射された光の光強度分布iw(x、y)は、レクチル1を透過した光の光強度分布ir(x、y)と同一にはならず、投影光学系2の伝達関数h1(x、y)による劣化を生じる(以下、投影光学系2の伝達関数h1(x、y)を「露光装置の伝達関数h1(x、y)」という場合がある。)。
【0051】
<<ウエハ基板の露光・現像>>
上述したように、図1に示すウエハ基板3上には、厚さ100〜500μmといった厚膜レジストが塗布してある。ウエハ基板3上の厚膜レジストは、投影光学系2から照射された光によって露光される。投影光学系2から照射された光は、その光強度分布ir(x、y)に応じて厚膜レジスト内を所定の深さまで透過し、厚膜レジスト内の光開始剤を化学反応させる。その後、露光した厚膜レジストを現像し、その他のフォトリソグラフィ処理を経て、ウエハ基板3上に所望する三次元形状の基板パターン3aが形成される。
【0052】
但し、露光・現像4などの露光プロセスを経て、最終的にウエハ基板3上に形成された基板パターン3aの形状プロファイルd(X、Y)は、投影光学系2から照射された光強度分布iw(x、y)により形成される理論上の基板パターンの形状プロファイルと同一にはならない。露光工程における厚膜レジスト内の化学反応分布、その後の現像工程による厚膜レジストの溶解性の影響を受けて、最終的に形成される基板パターン3aは、これら露光プロセスの伝達関数h2(x、y)による劣化を生じる。
【0053】
<露光装置の装置関数をフィードバックしたマスクパターンの設計>
上述のように、マスクパターン10を透過した光の光強度分布ir(x、y)を「入力パターン情報」とすると、この入力パターン情報は、露光装置の伝達関数h1(x、y)及び露光プロセスの伝達関数h2(x、y)による劣化を生じ、最終的に所望する三次元形状を精度よく形成することができない。
【0054】
そこで、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法では、後述するテストレチクルを用いて、露光装置の伝達関数h1(x、y)及び露光プロセスの伝達関数h2(x、y)を導出し、これらの伝達関数をレチクル1のマスクパターン10の設計にフィードバックさせ、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することとしている。本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法の基本原理については、段落[0027]〜[0032]及び図4において既に説明した。以下、三次元デバイスの製造方法について具体的に詳述する。
【0055】
<三次元デバイスの製造方法>
まず、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法の全工程について、図5のフローチャートを参照しつつ概説する。
【0056】
図5において、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法は、主として、ステップS1の露光装置の伝達関数の導出工程と、ステップS2の露光プロセスの伝達関数の導出工程と、ステップS3のレチクルの製造工程と、ステップS4の三次元デバイスの製造工程とからなっている。
【0057】
三次元デバイスの製造方法の全工程の流れを簡単に説明すると、まず、ステップS1及びS2では、後述するテストレチクルを用いて、露光装置の伝達関数及び露光プロセスの伝達関数を導出する。次いで、ステップS3では、導出したこれらの伝達関数を用いて、所望する三次元形状を形成するためのレチクル1を製造する。すなわち、これらの伝達関数をフィードバックしたマスクパターン10を設計するのである。その後、ステップS4において、ステップS3で製造したレチクル1を用いて、所望の三次元形状を有する三次元デバイスを製造する。
【0058】
なお、ステップS1の露光装置の伝達関数の導出工程と、ステップS2の露光プロセスの伝達関数の導出工程とは、互いに別個独立の作業工程であり、いずれの工程を先に行ってもよいし、両工程を同時平行して行ってもよい。また、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法は、投影光学系2を用いたステッパー等の使用を前提としているが、投影光学系2を必要としないアライナ等を使用する場合には、ステップS1の露光装置の伝達関数の導出工程を省略する。
【0059】
<<テストレチクル>>
ここで、上述した三次元デバイスの製造方法の各工程を詳述する前に、図5のステップS1及びS2において用いるテストレチクルについて、図10、図11(a)及び(b)を参照しつつ説明する。なお、以下に説明するテストレチクルは、4つのテストパターンを備えた構成となっているが、これは一例にすぎず、テストレチクルは、4つ以上のテストパターンを有するものであってもよい。
【0060】
図10において、本実施形態に係るテストレチクル20は、図中斜線で示す遮光領域22内に、透光性を有する4つのテストパターン領域(図中の四角形の枠を参照)を設けた構成となっている。各テストパターン領域には、上述した4つのテストパターン21A〜21Dがそれぞれ描画してある。
【0061】
図11(a)に示すように、各テストパターン21A〜21Dは、露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドット11、11、11・・・からなり、単位面積当たりの未解像ドット11の個数を連続的に変化させることで、未解像ドット11の密度分布がx、yの二方向に周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造となっている。
【0062】
各テストパターン21A〜21Dごとに、未解像ドット11の密度分布の周期性を異ならせてあり、各テストパターン21A〜21Dを透過した光が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈するようにしてある。これら正弦波光強度分布ir(x、y)を「入力パターン情報」とし、この入力パターン情報を用いて、露光装置の伝達関数及び露光プロセスの伝達関数を導出することができる。
【0063】
すなわち、投影光学系2、露光・現像4等のプロセスといった伝達系を介して、入力パターン情報がどのような「出力パターン」に変化したかを解析すれば、これら伝達系の伝達関数を導出することができる。上述したように、テストレチクル20の各テストパターン21A〜21Dは、それぞれ周期性を有し、テストレチクル20を透過した正弦波光強度分布ir(x、y)が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分により構成される。このような正弦波光強度分布ir(x、y)は、伝達系によってある伝達関数に従った出力パターンに変換されることになる。そして、伝達系に入力した周波数成分と、これに対応する伝達系から出力された周波数成分との変化に基づいて導出した関数を、周波数領域における伝達関数H(ξ)とみなすのである(図14を参照)。
【0064】
なお、テストレチクルのテストパターンは、図11(a)に示すようなx、yの二方向に周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造に限定されるものではない。例えば、図11(b)に示すテストレチクル30のように、x方向のみに周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造のテストパターン31A、31B、31C・・・としてもよい。
【0065】
<<投影光学系の伝達関数h1(x、y)の導出工程>>
次に、図5のステップS1に示した露光装置の伝達関数の導出工程について、図6、図12及び図14を参照しつつ詳述する。
【0066】
露光装置の伝達関数を導出する場合には、図12に示すように、露光装置でウエハ基板3を露光するときと同じ配置関係で、テストレチクル20を投影光学系2の上方に配置する。但し、投影光学系2の共役面にウエハ基板3は配置せず、代わりに二次元CCDセンサー等の光ディテクタ5を配置する。この光ディテクタ5は、多数の撮像素子5a、5a、5a・・・を格子状やその他の配列で平面状に敷き詰めた構成となっており、投影光学系2を通過した光の光強度分布を測定する。
【0067】
図6のステップS11において、図示しない光源からの露光光でテストレチクル20を照明し、各テストパターン21A〜21Dを透過した正弦波光強度分布ir(x、y)の光を投影光学系2に入射させる。
【0068】
次いで、ステップS12に進み、投影光学系2を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を測定する。投影光学系2を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)は、共役面に配置した光ディテクタ5によって測定され、各テストパターン21A〜21Dごとに、図12に示すような光の強度分布を表す正弦波波形が得られる。
【0069】
次いで、ステップS13に進み、各テストパターン21A〜21Dごとに、投影光学系2に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、投影光学系2を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比を求め、図14に示すように、周期性ピッチp1〜p4とコントラスト比との関係をプロットする。そして、これにより得られた関数を、露光装置の周波数領域における伝達関数H1(ξ、η)とする(ステップS14)。
【0070】
なお、本実施形態では、光ディテクタ5を用いて、投影光学系2を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を実際に測定することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、投影光学系2の諸データを入力したシミュレーションにより、正弦波光強度分布iw(X、Y)を算出するようにしてもよい。
【0071】
<<露光プロセスの伝達関数の導出工程>>
次に、図5のステップS2に示した露光プロセスの伝達関数の導出工程について、図7、図13及び図14を参照しつつ詳述する。
【0072】
図7及び図13に示すように、まず、ステップS21において、露光・現像4等の露光プロセスの伝達関数を導出する場合には、投影光学系2を介さずに、テストレチクル20をウエハ基板3に重ね合わせる。次いで、ステップS22に進み、図示しない光源からの露光光でテストレチクル20を照明し、各テストパターン21A〜21Dを通過した正弦波光強度分布ir(x、y)の光によって、ウエハ基板3上の厚膜レジストを露光する。
【0073】
その後、ステップS23に進み、露光したウエハ基板3上の厚膜レジストを現像し、各テストパターン21A〜21Dを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターン3bを形成する。そして、テスト基板パターン3bの縦断形状プロファイルと、各テストパターン21A〜21Dを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターン(図示せず)の縦断形状プロファイルとのコントラスト比を求め、図14に示すように、周期性ピッチp1〜p4とコントラスト比との関係をプロットする。そして、これにより得られた関数を、露光プロセスの周波数領域における伝達関数H2(ξ、η)とする(ステップS24)。
【0074】
<<レチクルの製造工程>>
次に、図5のステップS3に示したレチクルの製造工程について、図8を参照しつつ詳述する。
【0075】
図8のステップS31において、まず、最終的に製造される三次元デバイスの三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する。
【0076】
次いで、ステップS32に進み、三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターン10を設計するために、既に取得した周波数領域表現D(ξ、η)、露光装置の伝達関数H1(ξ、η)及び露光プロセスの伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターン10を透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する。
【数9】
【0077】
次いで、ステップS33に進み、ステップS33で算出した周波数領域表現Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、マスクパターン10を透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する。その後、ステップS34に進み、ステップS34で算出したマスクパターン10の透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する。
【数10】
【0078】
ステップS35において、ステップS34で算出した透過率分布u(x、y)のマスクパターン10をレクチル1に形成する。図1を参照して説明したように、三次元形状を形成するためのマスクパターン10は、投影光学系2の限界解像力以下の大きさの未解像ドット11により描画され、単位面積当たりの未解像ドット11の個数を連続的に変化させることで、所望の透過率分布u(x、y)となるようにする。
【0079】
<<三次元デバイスの製造工程>>
次に、図5のステップS4に示した三次元デバイスの製造工程について、図1及び図9を参照しつつ詳述する。ここで、本工程では、図5のステップS1及びS2を経て、露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)と、露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)とを導出した露光装置を用いて三次元デバイスを製造する。すなわち、本工程で三次元デバイスを製造するに際し、投影光学系2、露光・現像4等のプロセスの条件は、図5のステップS1及びS2の場合と同一にする。
【0080】
まず、図9のステップS41では、上述した図5のステップS3で製造した透過率分布u(x、y)のマスクパターン10を形成したレチクル1で、ウエハ基板3上の厚膜レジストを露光する。
【0081】
このステップS41について詳述すると、図1に示すように、光源からの露光光でレチクル1を照明し、透過率分布u(x、y)のマスクパターン10を透過した光強度分布ir(x、y)の光を投影光学系2に入射させる。本工程では、厚膜レジストに高低差の大きい三次元形状を形成するため、投影光学系2に焦点深度が深いレンズを用いており、マスクパターン10を透過した光強度分布ir(x、y)の光は、投影光学系2の伝達関数h1(x、y)によって、光強度分布iw(x、y)の光に変化され、ウエハ基板3上の厚膜レジストに投影される。
【0082】
このような光強度分布の変化に対処すべく、本実施形態では、あらかじめ露光装置の伝達関数h1(x、y)を考慮してマスクパターン10の透過率分布u(x、y)を定めている(図8のステップS32の伝達関数H1(ξ、η)を参照)。これにより、マスクパターン10を透過した光の光強度分布ir(x、y)は、露光装置の伝達関数h1(x、y)によって、最終的な所望の三次元形状の精度をより向上させる光強度分布iw(x、y)に変化されるのである。
【0083】
次いで、ステップS42に進み、露光したウエハ基板3上の厚膜レジストを現像する。その後、ステップS43に進み、その他のフォトリソグラフィ処理を経て、ウエハ基板3上に所望の三次元形状を形成する。
【0084】
露光・現像4等の露光プロセスを経て、最終的にウエハ基板3上に形成される三次元形状は、上述したステップS41の露光工程における厚膜レジスト内における化学反応分布、及び本ステップS42の現像工程における厚膜レジストの溶解性などの影響を受け、これら露光プロセスの伝達関数h2(x、y)による形状変化を生じる。
【0085】
このような形状変化に対処すべく、本実施形態では、あらかじめ露光プロセスの伝達関数h2(x、y)を考慮してマスクパターン10の透過率分布u(x、y)を定めている(図8のステップS32の伝達関数H2(ξ、η)を参照)。これにより、投影光学系2を通過した光強度分布iw(x、y)の光で露光された厚膜レジストは、露光・現像4等の露光プロセスの伝達関数h2(x、y)によって、最終的な所望の三次元形状の精度をより向上させる方向に形状変化することになる。
【0086】
<むすび>
以上のように、本実施形態に係る三次元デバイスの製造方法によれば、テストレチクル20を用いて、露光装置の伝達関数と、露光プロセスの伝達関数とを導出し、これら伝達関数をマスクパターン10の設計にフィードバックさせて、厚膜レジストに所望する三次元形状を精度よく形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1 レチクル
2 投影光学系
3 ウエハ基板
3a 基板パターン
3b テスト基板パターン
4 露光・現像等のプロセス
5 光ディテクタ
5a 撮像素子
10 マスクパターン
11 未解像ドット
20 テストレチクル
21A〜21D テストパターン
22 遮光領域
30 テストレチクル
31A〜31C テストパターン
p1〜pn 周期性ピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光装置と露光プロセスとを含む露光システムの解像力を表す伝達関数を導出するためのテストレチクルであって、
該テストレチクルは、複数のテストパターン領域を有し、
各テストパターン領域には、前記露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドットからなるテストパターンが描画してあり、
各テストパターンは、単位面積当たりの前記未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記未解像ドットの密度分布が少なくとも一方向に周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造となっており、
各テストパターンごとに、前記未解像ドットの密度分布の周期性を異ならせ、各テストパターンを透過した光が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈するようにしたことを特徴とするテストレチクル。
【請求項2】
前記露光システムの装置関数として、マスクパターンをウエハ基板上に投影する投影光学系に起因する光強度分布の劣化に関する露光装置の伝達関数を導出する方法であって、
前記テストレチクルの各テストパターンを透過した光を前記投影光学系に入射させ、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を決定する工程と、
前記投影光学系に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比に基づいて、前記露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1記載のテストレチクルを用いた露光システムの装置関数の導出方法。
【請求項3】
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する方法であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1記載のテストレチクルを用いた露光システムの装置関数の導出方法。
【請求項4】
請求項1記載のテストレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するためのレチクルの製造方法であって、下記のA:露光装置の伝達関数を導出する工程、B:露光プロセスの伝達関数を導出する工程、及びC:レチクルの製造工程を行うことを特徴とするレチクルの製造方法。
A:前記露光装置の伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、マスクパターンをウエハ基板上の感光剤に投影する投影光学系に起因する光強度分布の劣化に関する前記露光装置の伝達関数を導出する工程であって、
前記テストレチクルの各テストパターンを透過した光を前記投影光学系に入射させ、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を決定する工程と、
前記投影光学系に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比に基づいて、前記露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
B:露光プロセスの伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する工程であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
C:レチクルの製造工程は、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する工程と、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターンを設計するために、既に取得した前記周波数領域表現D、前記露光装置の伝達関数H1(ξ、η)及び露光プロセス4の伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する工程と、
【数11】
前記Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、前記マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する工程と、
前記マスクパターンの透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する工程と、
【数12】
前記投影光学系の限界解像力以下の大きさの未解像ドットにより描画され、単位面積当たりの未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを前記レクチルに形成する工程と、を含む。
【請求項5】
請求項1記載のテストレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するためのレチクルの製造方法であって、下記のA:露光プロセスの伝達関数を導出する工程、及びB:レチクルの製造工程を行うことを特徴とするレチクルの製造方法。
A:露光プロセスの伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する工程であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
B:レチクルの製造工程は、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する工程と、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターンを設計するために、既に取得した前記周波数領域表現D、前記露光装置の伝達関数H1(ξ、η)及び露光プロセス4の伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する工程と、
【数13】
前記Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、前記マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する工程と、
前記マスクパターンの透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する工程と、
【数14】
前記露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドットにより描画され、単位面積当たりの前記未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを前記レクチルに形成する工程と、を含む。
【請求項6】
請求項4又は5記載の製造方法により製造したレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成したことを特徴とする三次元デバイスの製造方法。
【請求項1】
露光装置と露光プロセスとを含む露光システムの解像力を表す伝達関数を導出するためのテストレチクルであって、
該テストレチクルは、複数のテストパターン領域を有し、
各テストパターン領域には、前記露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドットからなるテストパターンが描画してあり、
各テストパターンは、単位面積当たりの前記未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記未解像ドットの密度分布が少なくとも一方向に周期性をもって疎密を繰り返すパターン構造となっており、
各テストパターンごとに、前記未解像ドットの密度分布の周期性を異ならせ、各テストパターンを透過した光が、周期性ピッチp1、p2、p3・・・pnの空間周波数成分からなる正弦波光強度分布ir(x、y)を呈するようにしたことを特徴とするテストレチクル。
【請求項2】
前記露光システムの装置関数として、マスクパターンをウエハ基板上に投影する投影光学系に起因する光強度分布の劣化に関する露光装置の伝達関数を導出する方法であって、
前記テストレチクルの各テストパターンを透過した光を前記投影光学系に入射させ、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を決定する工程と、
前記投影光学系に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比に基づいて、前記露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1記載のテストレチクルを用いた露光システムの装置関数の導出方法。
【請求項3】
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する方法であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1記載のテストレチクルを用いた露光システムの装置関数の導出方法。
【請求項4】
請求項1記載のテストレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するためのレチクルの製造方法であって、下記のA:露光装置の伝達関数を導出する工程、B:露光プロセスの伝達関数を導出する工程、及びC:レチクルの製造工程を行うことを特徴とするレチクルの製造方法。
A:前記露光装置の伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、マスクパターンをウエハ基板上の感光剤に投影する投影光学系に起因する光強度分布の劣化に関する前記露光装置の伝達関数を導出する工程であって、
前記テストレチクルの各テストパターンを透過した光を前記投影光学系に入射させ、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)を決定する工程と、
前記投影光学系に入射させた光の正弦波光強度分布ir(x、y)と、前記投影光学系を通過した光の正弦波光強度分布iw(X、Y)とのコントラスト比に基づいて、前記露光装置の周波数領域の伝達関数H1(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
B:露光プロセスの伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する工程であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
C:レチクルの製造工程は、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する工程と、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターンを設計するために、既に取得した前記周波数領域表現D、前記露光装置の伝達関数H1(ξ、η)及び露光プロセス4の伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する工程と、
【数11】
前記Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、前記マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する工程と、
前記マスクパターンの透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する工程と、
【数12】
前記投影光学系の限界解像力以下の大きさの未解像ドットにより描画され、単位面積当たりの未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを前記レクチルに形成する工程と、を含む。
【請求項5】
請求項1記載のテストレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成するためのレチクルの製造方法であって、下記のA:露光プロセスの伝達関数を導出する工程、及びB:レチクルの製造工程を行うことを特徴とするレチクルの製造方法。
A:露光プロセスの伝達関数を導出する工程は、
前記露光システムの伝達関数として、露光工程及び現像工程に起因する基板パターンの劣化に関する露光プロセスの伝達関数を導出する工程であって、
投影光学系を介さずに、前記テストレチクルをウエハ基板に重ね合わせ、各テストパターンを通過した光によって前記ウエハ基板上の感光剤を露光する工程と、
前記ウエハ基板上の感光剤を現像し、前記各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)にそれぞれ対応するテスト基板パターンを形成する工程と、
前記テスト基板パターンの縦断形状プロファイルと、各テストパターンを通過した光の正弦波光強度分布ir(x、y)により形成される理論上の基準基板パターンの縦断形状プロファイルとのコントラスト比に基づいて、前記露光プロセスの周波数領域の伝達関数H2(ξ、η)を導出する工程と、を含む。
B:レチクルの製造工程は、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を、周波数領域表現D(ξ、η)にフーリエ変換する工程と、
前記三次元形状の縦断形状プロファイルd(x、y)を形成するマスクパターンを設計するために、既に取得した前記周波数領域表現D、前記露光装置の伝達関数H1(ξ、η)及び露光プロセス4の伝達関数H2(ξ、η)を用いて、該マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)をフーリエ変換した周波数領域表現Ir(ξ、η)を下記式(1)より算出する工程と、
【数13】
前記Ir(ξ、η)をフーリエ逆変換して、前記マスクパターンを透過する光の正弦波光強度分布ir(x、y)を算出する工程と、
前記マスクパターンの透過率分布u(x、y)を下記式(2)により算出する工程と、
【数14】
前記露光装置の限界解像力以下の大きさの未解像ドットにより描画され、単位面積当たりの前記未解像ドットの個数を連続的に変化させることで、前記透過率分布u(x、y)を有するマスクパターンを前記レクチルに形成する工程と、を含む。
【請求項6】
請求項4又は5記載の製造方法により製造したレチクルを用いて、ウエハ基板上に所定の縦断形状プロファイルd(x、y)を有する三次元形状を形成したことを特徴とする三次元デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−181415(P2012−181415A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45002(P2011−45002)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(501466938)株式会社目白プレシジョン (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(501466938)株式会社目白プレシジョン (31)
【Fターム(参考)】
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