説明

三次元多孔質構造体

多孔質ポリマー構造体と、場合により前記ポリマーの細孔内に微粒子とを含む三次元多孔質ポリマー構造体であって、前記細孔は狭い孔径分布をもつ前記多孔質ポリマー構造体。本構造体は、領域に微粒子を最密充填して、微粒子の三次元配列を提供する、組成物が前記粒子の間の隙間を充填するように、重合可能なモノマーと前記配列とを接触させる、モノマーの重合を実施し、それによって前記微粒子の周りにポリマー構造体を形成する、及び場合により、前記微粒子を前記構造体から除去することによって作ることができる。三次元多孔質構造体は、固相合成、固定化、細胞培養及び、クロマトグラフィー分利用の固定相で、吸収剤、絶縁材料としてまたは組織再生で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造体(porous structure)、前記構造体を製造する方法、及び固相プロセスにおける前記構造体の使用に関する。本構造体は、特に固相合成、固相抽出、固相試薬、種(species)の固定、細胞培養、触媒、クロマトグラフィーなどの基質との相互作用が求められる、多様な物理的及び化学的プロセス並びに医療診断機器(medical diagnostic)において有用である。
【背景技術】
【0002】
三次元マクロポーラス(macroporous)構造体は、クロマトグラフィー用の固定相、種を濾過するための多孔質ディスク、電気浸透性ポンプ(electroosmotic pump)用の多孔質材料、固相合成及び他の化学的転換用固体担体、絶縁材料、燃料電池用途で使用するための多孔質膜並びに再生医療用の多次元骨格(scaffold)などの多様な用途で製造されてきた。三次元(3D)構造体は、ポリスチレンなどの有機ポリマー及び、シリカなどの無機ポリマーを含む様々な材料に製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、多様なポリマーに十分に画定された(well-defined)細孔寸法及び相互接続するチャネルを製造するには問題が発生する。細孔寸法を適度に制御できるポリマーの種類は限られている。様々な種類のポリマーで十分に画定された細孔寸法及びチャネルを製造することができれば、非常に有用であろう。
【0004】
クロマトグラフィー用途において、3D構造体はモノリスと称されることが多い。クロマトグラフィー用途でモノリスを使用するとき、その3D構造体は従来の微粒子状固定相の代わりに使用される。微粒子状固定相の細孔内での物質移動の典型的な駆動力は拡散である。モノリス細孔内の対流により、拡散と比較してタンパク質などの大きな分子の分離速度を実質的に増加させることができる。3Dモノリスは、この点において慣用の固定相よりも好都合である。
【0005】
通常、モノリス材料は、フラットまたはチューブ状のモールド、モールドから外されたシートまたはシリンダー、並びにディスクを得るために打ち抜かれたり薄切りされたりした多孔質ポリマーに製造される。これらのモノリス内の細孔は、ポロゲン(porogen)を加えることによって組み込まれる。たとえばシリカベースのモノリスの場合には、ポロゲンは通常、ポリエチレングリコールなどの大きな分子である。たとえばポリスチレンベースのモノリスの場合には、ポロゲンはトルエンである。現在使用されているポロゲンは、輪郭がはっきりしない(ill-defined)連結性の広範な孔径分布を導入し、これはモノリスのクロマトグラフィー性能にとって不利である。
【0006】
濾過に使用される3D構造体は、粒子を焼結することによって製造されることが多い。たとえばガラスフィルターは、微粒子状ガラスを焼結することによって製造する。生成した焼結物の多孔性は、出発物質であるあまり境界のはっきりしない(poorly defined)ガラス粉末の粒径により制御され、広範囲な粒径分布となる。これらの焼結3D構造体は電気浸透ポンプなどの他の様々な用途で使用することができ、3D構造体の細孔分布及び相互接続しているチャネルは、背圧及びポンプ内の流速に影響を及ぼす。孔径が小さすぎると流速は早くなりうるが、続いて背圧も高い。燃料電池などの用途を提供するこれらのポンプの効率は、効率的な対流を促進するためにより制御された細孔を提供することによって大いに改良することができるだろう。
【0007】
ポリマー電解質膜(PEM)燃料電池としても公知のプロトン交換膜燃料電池は、輸送用途などの様々な用途に開発されている。PEM燃料電池は、膜を通して効率的な対流を望ましくは可能にするポリマー電解質膜を使用する。
【0008】
固相合成プロセスで有用な固相材料は公知である。多様な種類の物理的化学的プロセスでは、たとえば有機分子、特にペプチド及びオリゴヌクレオチドの合成、種の固定化、触媒の担持、イオン交換、材料からの種の抽出、診断及びクロマトグラフィーなど、固体担持材料を使用する。
【0009】
固相合成は、液相合成よりも好都合な点が多い。たとえば単離手順は簡便化できるか、またはこれを避けることができ、手順を実施する時間の短縮も確実であり、生成物は本質的に定量的に回収することができる。ポリマー担体は、医学及び診断用途において生物学的高分子の固定化並びに、化学及び生物触媒などの従来の有機化学で使用する触媒の固定化にも一般的に使用される。
【0010】
固相抽出及び固相試薬の製造で3D構造体を使用することは、化学、薬学及びバイオテクノロジー業界でも公知である。
公知の固相担体は通常、用途に合うように特定のサイズ及び物理的性質のポリマー微粒子を含む。使い易さに関しては、これらのポリマー微粒子は球形であることが多く、規定の粒径分布をもつ。微粒子が球形の性質をもつと、ポリマーの流動性及び濾過特性が改善する。固体担体を使用することは好都合であるが、固相アプローチに対しては不都合な点がある。たとえば、ペプチド及びオリゴヌクレオチドの固相合成に通常使用される市販の担体は、複雑な製造プロセスなどのため高価なことがよくある。これらのプロセスは、重合、面倒な粒径分類、たとえば篩分け及び空気分級(air classification)の間に、連続相に対しモノマー損失、様々な粒径の生成、及び面倒な微細粒子の生成などの幾つかの点において不都合な点がある。
【0011】
製造及び製造の間の損失という不都合なコストに加えて、公知のポリマー微粒子の物理的特性に関して特定の不都合な点が発生しえる。マイクロポーラスポリマー(microporous polymer)は担体として使用することができ、架橋剤が比較的低レベルであるので、ポリマー粒子は好適な溶媒中で溶媒和して膨潤するので、流路を制約してしまいうる。マイクロポーラスポリマー微粒子は通常軟質であり、通常、充填カラム床で高い流速でクロマトグラフィー用途で使用するのに適していない。さらに、軟質微粒子は、濾過の間などで不都合なことに圧縮されて、付着してしまい、カラム底部で使用されている焼結またはメッシュに圧縮貫入してしまうことが多い。マクロポーラスポリマーはポリマーマトリックスに高レベルの架橋剤を有しており、大きな細孔を含むので、硬質マクロポーラス及び巨大網状(macroreticular)微粒子は、充填カラム床での高い流速により適している。しかしながら、硬質という性質のため、微粒子は物理的ストレスの下では脆性で、分解し易い。
【0012】
これらの問題は、ポリマー微粒子が不都合な大きな応力に暴露される、従来のカラム充填法により悪化する。
三次元で細胞を培養及び分化させるために、組織形成を支持しえる人工構造体に細胞を播種することが必要である。通常、骨格と称されるこれらの構造体は、ex-vivo及びin-vivoの両方でそれ自体の微環境(microenvironment)に影響を与えられるようにするのに重要である。この骨格はまず、細胞付着及び移動(migration)でき、細胞栄養素及び圧搾された廃棄物(expressed waste)を拡散させることができ、必要な機械的及び生物学的特性を提供することができなければならない。流動下での多孔性及び特性は、マクロポーラス構造体を設計する際に考慮する重要な因子である。今まで使用されてきたマクロポーラス骨格は境界のはっきりしない細孔構造であり、細孔は通常小さすぎるか、広い孔径分布を有している。栄養素及び廃棄物の移動が容易で、細胞を迅速に且つ制約なく拡散させられる構造体が望ましい。
【0013】
多孔質ポリマーは公知であるが、これらは通常、孔径分布が広い。ポリマーが水滴の周りに形成する水性エマルション中でモノマーを重合させることは公知である。水滴サイズが広範囲であること、通常、少なくとも1オーダーの大きさとは、ポリマーの細孔が広いサイズ分布でもあることを意味する。さらに、水を除去して多孔質ポリマーを提供するが、これではポリマー中に形成したボイド(空隙)または細孔に材料が容易に残すことはできない。
【0014】
広範な用途において、細孔サイズが広範囲であること及び細孔間の経路の寸法の均一性が比較的ないことが原因で問題が発生する。本発明は、現行の技術に関連する問題を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願人は、公知ポリマー微粒子に関連するこれら及び他の問題は、狭い孔径分布をもつ3Dマクロポーラス構造体を提供することにより改善しえることを知見した。この狭い孔径分布は、特定の粒径の微粒子を最密充填(closely packing)し、たとえばモノマー溶液などの流動可能な組成物で微粒子間の隙間(interstitial space)を充填し、事実上粒子が重合物(polymerized mass)用のモールドを提供するように、モノマーの重合を実施することにより得られる。形成する際、ポリマーは通常、収縮するので、これにより微粒子とポリマーとの間に経路ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、中空ポリアクリロニトリル球を含む架橋マクロポーラスポリアクリルアミドの走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図2】図2は、架橋マクロポーラスポリアクリル酸の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図3】図3は、スーパーマクロポーラスポリスチレンの走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図4】図4は、中空ガラス球を含むスーパーマクロポーラスポリスチレンの走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図5】図5は、スーパーマクロポーラスシリカの走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図6】図6は、スーパーマクロポーラスシリカの走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図7】図7は、中空ガラス球を含むマクロポーラスシリカの走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図8】図8は、ガラスシードビーズ内に封入された中空ポリアクリロニトリル球を含む架橋3Dマクロポーラスポリアクリルアミドの走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第一の側面において、本発明は、微粒子の三次元配列を提供するように領域内に微粒子を最密充填し、重合可能なモノマー、好ましくはニート(neat)のモノマーまたは重合可能なモノマーを含む組成物を、微粒子間の隙間にモノマーまたはモノマーを含む組成物が充填するように配列と接触させて、モノマーを重合させ、これによって微粒子の周りにポリマー構造体が形成し、場合により微粒子を構造体から取り除く、各工程を含む三次元多孔質構造体を製造するプロセスを提供する。
【0018】
三次元マクロポーラス構造体を作るために、複数の微粒子を微粒子の間の隙間に詰め、続いて重合させるモノマーを含む組成物で一緒に充填することができる。最終的な用途に依存して、マクロポーラス構造体を形成するのに使用する微粒子は、溶解、化学分解、酵素分解、融解または、微粒子を除去し、マクロポーラス構造体を適所に残すように設計された他のプロセスにより除去することができるか、マクロポーラス構造体内に保持することができる。
【0019】
本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、当業者に公知のプロセスによって開始された重合により製造することができる。たとえば、フリーラジカル開始剤含むモノマーまたはモノマーの溶液と混合した微粒子を加熱して重合を実施することができる。
【0020】
好ましい態様において、3D構造体の製造プロセスは、液体中に微粒子のスラリーを形成することを含み、ここで前記液体はモノマーを含む組成物であるか、またはニートのモノマーである。好適には、溶液は、モノマーが溶解性である溶媒、たとえばモノマーの親水性に依存して水またはトルエンを含む。好ましくは、スラリーは、一緒に充填する際に微粒子間の隙間を充填するのに必要な最低限度まで液体成分を維持するために濃縮する。六方最密充填の場合には、隙間は容積の約24%であると計算され、好適には液体成分は30%以下、好ましくは24または25%で存在して隙間を充填し、微粒子間には少量が潤滑作用のために残されて、最密充填配置に移動し易くする。スラリー中の液体成分レベルを高めると、3D構造体の構造を変化させることができ、ユーザーに所望通りの条件に調整する余地を提供する。
【0021】
微粒子は中空であり、液体中で浮揚性でありえる。この場合、大量の液体成分を使用することができるので、微粒子は浮き、液体表面で密に詰められる。
液体と微粒子とを接触させる際、使用したモノマーに依存して慣用法にて重合を開始する。フリーラジカルまたは触媒を液体成分に添加して、重合を開始または実施することができる。
【0022】
第二の側面において、本発明は多孔質ポリマー構造体を含み、場合により前記ポリマーの細孔内に微粒子をもつ3次元多孔質ポリマー構造体を提供し、ここで前記細孔は狭い孔径分布を有する。
【0023】
3D構造体の多孔質ポリマーは任意の無機または有機ポリマーであり得る。好適なポリマーの例としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレン-ジビニルベンゼン、シリカ、ポリスチレン、セルロース、寒天、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリ尿素、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール、シリカ、ポリベータヒドロキシエステル及びポリアクリロニトリルが挙げられる。
【0024】
構造体中の細孔は、構造体が、構造体中の平均孔径の1/10〜10倍、より好ましくは1/5〜5倍、望ましくは平均孔径の1/2〜2倍の孔径範囲をもつようであると好ましい。場合により、孔径範囲は平均孔径の75〜125%、特に90〜110%である。
【0025】
好適には3D構造体の孔径は、走査電子顕微鏡で測定するが、他の公知の方法も所望により使用することができる。
構造体内の孔径対孔径出現率(occurrence)のグラフをプロットする際に、公知の多孔性ポリマーは、通常広い“ベル型”ガウシアン分布(Gaussian distribution)を示すであろうが、本発明の構造体は、もっと狭い“スパイク”を示し、狭い孔径分布を示す。
【0026】
三次元構造体はポリマー構造体の細孔内に微粒子を保持することができるか、または微粒子は、一度ポリマー構造体が形成したら取り除くことができる。組成物からポリマーを重合する際、組成物によって占められた隙間と比較して、形成時に収縮するため、形成したポリマーは微粒子から後退するだろう。この収縮により隙間に迷路のような経路が作り出され、これを用途で使用して、ポリマー構造体内に全体にわたって比較的均一な流れを提供することができる。次いで微粒子はその場(in situ)に残ったままにして、場合によりさらなる機能を果たすことができるか、または取り除かれて、隙間の経路により結合している微粒子によって先に占められていた空間に細孔をもつ多孔質3D構造体を残すことができる。
【0027】
好ましい態様では、「骨格」と本明細書中で参照する3D構造体は、マクロポーラス構造体内に封入されたポリマー微粒子または連続性ポリマーゲル(continuous polymer gel)を含むことができる。あるいは、細孔内に何も含まない3D構造体はそれ自体、用途に応じて使用することができる。
【0028】
好都合には、本発明は、比較的安価な方法で狭い孔径分布をもつ新規3D構造体の製造手段を提供し、以前は達成できなかった化学的及び物理的特徴を備えた多様な用途で使用するのに適した3D構造体を提供する。
【0029】
本明細書中で使用する「ポリマー」なる用語は、シリカなどの無機ポリマー及び、ポリスチレンなどの有機ポリマーを包含する。ポリマー微粒子は通常、分散重合またはエマルション重合プロセスによって製造することができ、ここでモノマーの溶液は、重合を開始する前に非混和性溶媒(連続相)に分散する。次いで、通常、形成したポリマー微粒子を濾過し、洗浄し、必要な粒径分布を単離するために分級する。
【0030】
本明細書中で使用する「マクロポーラス」及び「スーパーマクロポーラス(supermacroporous)」なる用語は、細孔のサイズまたは多孔性の程度またはその他に関しては、制限的な意味では使用しない。本発明の3D構造体は多孔質であり、この用語の一般的な概念は、本明細書中、「マクロポーラス」及び「スーパーマクロポーラス」なる用語によって限定されない。
【0031】
微粒子は、最密充填配置を形成し得る任意の好適な材料でありえ、これは比較的均一粒径をもつ。好ましい態様では、微粒子はガラスまたはポリマーから予備成形される。細胞は3D構造体の孔径を画定するために微粒子としても使用することができる。微粒子は中空または固体でありえる。中空ガラス微粒子及び中空ポリマー微粒子は、広く入手可能であり、多くの業界で一般的に使用され、路面標識、爆発物、化粧品及び建設材料などの用途がある。好都合には、これらは安価にラージスケールで製造され、様々な寸法が利用可能であり、許容可能な物理的及び化学的特徴である。
【0032】
3D構造体を形成するのに使用される微粒子は、任意の好適な材料であり得るが、好都合には安価な容易に入手可能な材料を含む。
3D構造体の細孔サイズは、粒径により示され、例えば、0.1μm〜1mmなどのサブミクロンサイズからミリメートルスケールでありえる。たとえば、酵母細胞(パン酵母)を使用して、1〜10μmなどの小さな細孔を生成することができ、コーティング業界で使用される球状ワックス微粒子を使用して、5〜50μm範囲のやや大きな細孔を生成することができる。ガラス及びポリマー微粒子は、多様なサイズで入手可能であるので、1〜500μm、特に10〜300μmのサイズをもつ細孔を作るのに所望の粒径を選択することができる。重要な留意事項は、微粒子は、3D構造体の孔径を決定するので狭いサイズ分布をもつということである。
【0033】
本発明は、3D構造体も想定し、ここで、それぞれ狭い粒径分布を持つ、様々な粒径の二つ以上の微粒子を使用する。ポリマー構造体は大きな微粒子の周りに形成することができ、小さな微粒子はその間の隙間または経路を占めるだろう。3D多孔質構造体はより大きな細孔のポリマー構造体を含み、ここで前記細孔を画定している前記ポリマーはそれ自体、より小さな細孔も含む。
【0034】
好適には、本発明の微粒子状担体は球状であるか、球状に近いか、または楕円体である。担体が球状であると、多くの用途で好都合であり、その周りに3D構造体を形成するより規則正しく配列された最密充填を形成し易い。しかしながら、不規則な、楕円及び他の形状の微粒子を使用することができる。
【0035】
外径と、シェルの内壁の直径である内径とが異なる、中空ガラス及び中空ポリマー微粒子の多くのグレードが利用可能である。利用可能な粒径としては、10μmの範囲の平均直径を持つ小さな微粒子と、200μmの範囲のずっと大きな平均粒径をもつ大きな微粒子が挙げられる。これらの様々なグレードは、具体的な用途で有用であり、たとえば、10μmの範囲のサイズをもつ微粒子は高圧液体クロマトグラフィーのモノリス製造で有用であろうし、200μm粒子の範囲のサイズの微粒子は、幹細胞培養の3D骨格の生成に有用であろう。
【0036】
好都合なことに、中空微粒子を使用して製造するときには、3D多孔質構造体は浮揚性である。中空微粒子のそれぞれのグレードの密度は、容易に制御され、中空微粒子の内径対外径の比によって異なる。この比が高くなれば高くなるほど、最終製品の密度は低くなり、より浮揚性が高くなる。
【0037】
好適な中空ガラス微粒子は、Potters Industries Inc,Malvern,ペンシルバニア州、アメリカなどから市販品を入手することができる。好適な中空ポリマー微粒子は、Akzo Nobel、Expancel、Box 300、S-850 13、Sundsvall、スウェーデンなどの市販品を入手することができ、これらはExpance(登録商標)のもと販売されている。
【0038】
PCT国際特許出願国際公開第WO2008/012064号は、ポリマーを浸透させたビーズを含む固体担体について記載しており、ここで前記ビーズには穴があり、ポリマーはその穴の中に配置されている。このビーズは全体にわたって固体であり、穴の中のポリマーを支持するための骨組みとして作用する。固体担体を製造する際、ポリマーはビーズ上と穴の中に形成し、ビーズ外側のポリマーは磨耗などによって除去されると言われている。
【0039】
さらなる側面では、本発明は、穴を持つビーズと、穴の中に配置された本発明に従った3D構造体とを含む固体担体を提供する。このビーズは全体にわたって固体であり、穴の中の3D構造体を支持するための骨組みとして作用する。固体担体を製造する際、3D構造体はビーズ上と穴の中に形成し、ビーズ外側の3D構造体は好適に除去される。本発明に従った3Dマクロポーラス構造体を含むビーズは、対流及び物質輸送(mass transport)を改善する。
【0040】
好適には、微粒子表面は、特定の用途で使用するために共有結合的に変性することができる。ポリマーを使用して微粒子外側をコーティングすることもできる。ポリマーは微粒子に直接または間接的に共有結合することができる。微粒子が活性部位をもつ材料でできている場合、ポリマーは直接結合することができる。微粒子がより不活性な材料、たとえばガラスでできている場合、ポリマーが結合できる活性部位を提供するように微粒子を処理するのが望ましいかもしれない。微粒子がガラスを含む場合、好適にはフッ化水素ベースの溶液で好適に処理して、誘導体との反応に好適な活性部位を提供する。微粒子がポリマーを含む場合、任意の好適な化学反応を使用して表面を変性することができる。たとえば、中空ポリアクリロニトリルベースのポリマー球を水素化リチウムアルミニウムで処理すると、表面に一級アミン官能基を与えるだろう。
【0041】
ポリマーは、所望の用途に従って任意の好適な材料でありえる。好ましい態様では、表面ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、セルロース、寒天、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリ尿素、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール、シリカ、ポリベータヒドロキシエステル及びポリアクリロニトリルなどの様々な種類のポリマーから選択されるが、これらに限定されない。
【0042】
ポリマーは、さらに所定の用途のために特定の官能基性を提供するために反応することができる。好適には、ポリマーは、一つはポリマーと反応するためのもので、もうひとつは所望の用途で使用するために自由な官能基性(free functionality)を提供するためのものである、少なくとも二つの官能基をもつ化合物と反応する。好ましい態様では、ポリマー、たとえばポリジメチルアクリルアミドと、N-アクリロイルサルコシンメチルエステルとのポリアクリロイルモルホリンコポリマーは、ジアミン化合物、たとえばエチレンジアミンと反応する。たとえば、アミン官能基化担体(amine functionalized support)は、ペプチド合成、オリゴヌクレオチド合成、固相有機化学、酵素固定化及び細胞培養で使用するのに適している。
【0043】
アミン官能基化担体はさらに、たとえば所望によりコハク酸を使用してカルボン酸に転換することにより、さらに官能基化することができる。たとえば、アミン官能基化担体は、プロテインAなどのタンパク質を固定化するための調製で、N-ヒドロキシスクシンイミド及び1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩で処理することができる。
【0044】
さらなる態様において、担体は、それ自体がマクロポーラスポリマーであるポリマーと微粒子とを含む。特に好ましい不活性材料は、ポリハイプ(PolyHIPE)である。ポリハイプは多孔質であり高度吸収剤である。この材料は、物質が3Dマクロポーラスポリマーにより吸収される用途に特に好ましい。
【0045】
別の態様では、担体は、微粒子と、従来のポロゲンにより細孔が形成される、それ自体がマクロポーラスであるポリマーとを含む。この材料は、物質が3Dマクロポーラスポリマーにより吸収される用途に特に好ましい。
【0046】
本発明に従った3Dマクロポーラスポリマーは、ポリマーにより担持された機能性材料も含むことができる。好適な機能性材料の例としては、触媒、ペプチド合成用の開始種、薬学的活性剤、農業化学的活性剤、高分子(macromolecule)、酵素、核酸配列及びタンパク質が挙げられる。
【0047】
本発明は、貴金属触媒、たとえばパラジウム触媒を担持する際に特に有用である。特に好都合な例は、ポリ尿素に担持された酢酸パラジウムである。
好ましい場合には、3Dマクロポーラスポリマーは、重合の間または重合後のいずれかで担体微粒子に共有結合することができる。あるいは、一種以上の構成要素のモノマーは、重合開始前に微粒子表面に共有結合することができる。
【0048】
本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、固体担体を使用する任意の化学的または物理的プロセスで使用することができる。
3Dマクロポーラスポリマーは、電子伝導及び発光ポリマーを含む用途で使用することができる。発光ポリマーを含む微粒子体はディスプレイパネル上に配置することができる。
【0049】
3Dマクロポーラスポリマーは、有機種、特に高分子の固相合成で特に有用である。好ましい態様では、3Dマクロポーラスポリマーは、ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはオリゴ糖の合成で使用することができる。ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール及びポリスチレンは、ペプチド合成で特に好都合なポリマー担体の例である。
【0050】
固相合成において、ペプチド合成などの用途で固体ポリマー微粒子を使用するプロセスは通常、多孔質フィルタープレート上で好適な溶媒中に微粒子を懸濁させ、及び前記微粒子に機械的に損傷を与えないように静かに微粒子を攪拌する、各工程を含む。公知の微粒子は密であり、通常使用される溶媒中、フィルター上に積もる。微粒子の製造プロセスでは、フィルタープレートを閉塞させる微細粒子(fine)が生成することが多く、濾過が遅くなったり、フィルターを取り替えたり、掃除したりする必要性が生じる。さらに、固体微粒子を攪拌すると、破砕してしまい、フィルターの閉塞問題を拡大する微細粒子が生成してしまいうる。
【0051】
薬学及び関連する業界では、現行の良好な製造工程(cGMP)の元での厳格な品質規制は、フィルタープレートから除去した材料で続くバッチが汚染されないように、各製造バッチ後にフィルタープレートを交換することを求めている。
【0052】
本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、通常用いられるものよりも単純な装置を使用することにより固相合成を単純化する。3Dマクロポーラスポリマーは、カラムベースのシステムでそれ自体をモノリス形で使用することができる。この場合には、3Dマクロポーラスポリマーを形成しているポリマーは、固相合成用の支持体を提供する。
【0053】
3Dマクロポーラスポリマーが固相合成用の従来のポリマー担体の周りに形成する場合、3Dマクロポーラスポリマーは不活性であり、固相合成用の従来のポリマーを支持するために機械的骨格を単に提供するにすぎない。
【0054】
上記の二つの例において、3Dマクロポーラスポリマーは、PCT国際特許出願国際公開第WO2008/012064号に記載されているシードビーズ内に封入することができる。
本発明はさらに、クロマトグラフィープロセスでモノリスとしての本発明に従った3Dマクロポーラスポリマーの使用を提供する。
【0055】
クロマトグラフィー分離における固体担体または固定相の適用は、非常に広範囲に及び、たとえば医薬及びバイオテクノロジー業界で使用される複雑な最先端技術の分離並びに、鉱業で使用されるラージスケールのプロセスがある。医薬業界で最も高価な薬剤の幾つかは、分取クロマトグラフィーにより精製され、優れたクロマトグラフィー分離は、技術的に有益で経済的に有利である。鉱業及び貴金属回収業界では、世界のパラジウムの大部分、触媒変換体(catalyst converter)及び高付加価値製品の製造を含む広範囲の工業用途及びプロセスで重要な成分は、固定化クラウンエーテルを使用して精錬することができる(Traczyk,F.P.; Bruening, R. L.; Izatt,N.E. "The Application of Molecular Recognition Technology (MRT) for Removal and Recovery of Metal Ions from Aqueous Solutions"; In Fortschritte in der Hydrometallurgie; 1998, Vortrage beim 34. Metallurgischen Seminar des Fachausschusses fuer Metallurgische Aus-und Weiterbildung der GDMB; 18-20 1998年11月; Goslar)。本発明の3d構造体は、これらの用途で使用することができる。
【0056】
ペプチド、オリゴヌクレオチド、触媒(化学及び生物学的)などのクロマトグラフィーまたは固相合成において適用するモノリスカラムにおいて、均一な流れは非常に望ましく、それによってカラム内を流れるにつれてカラムに適用した物質の帯が均一且つ狭い帯で流れる。この狭い帯は、試薬がカラム内を通過して、帯がカラム内を通過するにつれて反応点において高濃度に維持される反応化学に関して、混合物の成分を分離するためのクロマトグラフィー分離に関して重要である。比較的狭い孔径分布をもつ本発明の3D構造体は、比較的均一な流速を提供するのに特に有用である。
【0057】
ポリハイプなどの公知の多孔質材料は、材料内の孔径が広範囲であるので、クロマトグラフィーカラムを離れるときに比較的広い帯(band)を生じるので、小さな細孔では、帯はより入り組んだ経路をとり、より大きな細孔では、帯はずっと迅速に移動するだろう。本発明では、狭い細孔分布のため、帯はより一定速度で移動する。
【0058】
JJ van Deemterは、充填床JJ van Deemter (van Deemter, J.J, Zuiderweg, F.J.及びKlinkenberg, A. Chem. Eng. Sci. (1956) 5, 271-289)を含むカラムを通る様々な種類の流れを定義するための等式を開発し、帯の広がりに関して、流速対カラム効率をプロットすることにより、充填床を通る最適流速を設計するためのプロセスを開発した。本発明の3D構造体は、最小の帯の広がりを好都合に提供する。
【0059】
これまでは、クロマトグラフィーカラムは通常、好適な溶媒中に微粒子のスラリー、または固定相(stationary phase)を製造し、これをカラムに移すことにより充填している。クロマトグラフィーカラムに床が不均一に充填(settle)されると、固定相が不均一及び均一にひびが入り、劣悪及び再生不可能な分離となってしまうことがある。必要な性能を達成するには、カラムをたびたび空にして、数回再充填しなければならない。これではプロセススケール操作では特に不都合な面倒な稼動停止時間の原因となってしまうことがある。
【0060】
本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、従来のカラムを充填するためのPCT国際特許出願国際公開第WO2008/012064号に記載されているような封入体として、または直接使用することができるディスクなどの他の好適な媒体またはモノリスの形状でクロマトグラフィー分離をするための再生可能な固定相を提供する。
【0061】
本発明の3Dマクロポーラス構造体は、たとえばイオン抽出及びイオン交換、どのバッチ式であれ3Dマクロポーラスポリマー上の流れとしてであれ、担体と接触する液体から種を除去するための固相抽出でも有用である。固相抽出は通常、抽出下で混合物から固相を分離するためのフィルタープレートを備えたシステムまたはカラム内で実施される。本明細書中で引用した固相合成及びクロマトグラフィーに関して観察された問題点は、同様に固相抽出でも観察される。本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、クロマトグラフィー及び固相合成で提供されるのと同様の好都合な点を提供する。
【0062】
本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、抗体、オリゴヌクレオチド、酵素、全細胞または蛍石(fluor)などの種を固定化するのに使用することができ、列に配置することができ、配列中のそれぞれの3Dマクロポーラスポリマーは溶液の異なる成分をアッセイする。その表面、またはその表面に結合したポリマーを介して共有結合したリガンドを持つ3Dマクロポーラスポリマーは、「ウエル」として使用することができる。抗原または相補DNAまたはRNA配列などの標的リガンドの特異的結合は、確立された方法を使用して検出することができる。固定化酵素は、二級アルコールの分離(resolution)に関して固定化ペニシリンアミダーゼを使用するなど、有機化学反応またはキラル分割を実施するために使用することができ(E. Baldaroら、Tet. Asym.4, 1031, (1993))、及び固定化ペニシリンGアミダーゼは、アモキシリンの製造においてベンジルペニシリンの加水分解にも使用される(Carleysmith, S.W.及びLilly, M.D. Biotechnol. Bioeng., 21, 1057-73, 1979)。
【0063】
本発明の3D構造体は、医療及び診断用途用に生物学的高分子を固定化するのにも有用である。これにはタンパク質、モノクローナル及びポリクローナル抗体の固定化が挙げられる。細胞培養は、比表面積特徴(specific surface characteristics)及びモルフォロジーを備えた固体担体上で通常実施される。微粒子に固定化された酵素は、シグナルを生成するためのセンサとして使用することができる。一例としては、グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ結合酵素系によるグルコースの検出があり、ここでグルコースが存在すると過酸化水素が生成し、これが様々な基質を酸化するためのペルオキシダーゼの基質であり、着色、蛍光または発光シグナルを与える。
【0064】
本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、生体触媒を固定化するのにも使用することができる。生体触媒は、抽出下、混合物から固相を分離するためのフィルタープレートのついたシステムまたはカラムで使用することが多い。本明細書中で引用される固相合成及びクロマトグラフィーで観察される問題点は、固相抽出で観察されるものと同様である。本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、クロマトグラフィー及び固相合成で提供されるのと同様の好都合な点を提供する。
【0065】
固体担体上の固定化酵素などの慣用の固定化生体触媒は、反応器の基部に不都合に定着して、生体触媒と基質との接触を減じてしまうことがある。本発明の微粒子状担体は、生体触媒の最大有効面積が基質に対して利用可能なままであるようにモノリスまたは微粒子状で使用することができる。
【0066】
本発明は、同一カラムまたは反応器で二種以上の様々な固定化生体触媒または補因子の系も想定する。本発明において、一構成要素(entity)は3Dマクロポーラスポリマーに固定化され、別の構成要素は球状粒子上に構造体を作るのに使用されうる。
【0067】
本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、全細胞及びポリマーなどの固相試薬、金属及び他の触媒、生体触媒、酵素、タンパク質、抗体などの種を固定化するのに特に有用である。本発明は酵素を担持するのに特に好適であり、たとえば、リパーゼCal Aは、特にポリジメチルアクリルアミド及び他の同様の親水性ポリマーと組み合わせると効果がある。リパーゼCal Bは、バイオディーゼルの製造で通常使用され、ポリスチレンなどの疎水性ポリマー上でよく担持される。本発明の3Dマクロポーラスポリマー内のさらに改善された対流は、マトリックス内の粘稠な植物油の流れに特にあっているので、バイオディーゼル製造のための特に応用される。
【0068】
本発明は、生物医薬品の工業スケールでの精製に使用される、プロテインAなどのアフィニティリガンドの固定化でも特に有用である。
さらなる用途では、本発明の微粒子状担体は、たとえば遷移金属触媒及びリガンドを固定化することにより、化学触媒でも使用することができる。
【0069】
さらなる用途では、本発明は細胞培養で使用することができる。動物細胞系の大量培養は、ウイルスワクチン及びバイオテクノロジーの多くの製品の製造になくてはならない。動物細胞培養における組換えDNA技術により製造されたバイオ製品としては、酵素、合成ホルモン、免疫生物学的物質(モノクローナル抗体、インターロイキン、リンホカイン)及び抗がん剤が挙げられる。多くのより単純なタンパク質は、細菌培養物中でrDNAを使用して産生することができる;グリコシル化(炭水化物変性)されているより複雑なタンパク質は現在、動物細胞中で製造しなくてはならない。そのような複雑なタンパク質の重要な例としては、ホルモン・エリトロポイエチンがある。哺乳類細胞培養を成長させるコストは高いので、各社とも絶えず技術改良をしている。
【0070】
細胞は、懸濁液中または接着培地(adherent culture)として成長することができる。しかし接着細胞は、接着特性を高め、成長及び分化に必要な他のシグナルを提供するために細胞外マトリックス成分でコーティングすることができる表面が必要である。通常、固体組織から誘導した細胞は接着性である。器官型培地(organotypic culture)は、二次元培養皿と反対に三次元環境で細胞を成長させることを含む。この3D培地システムは生化学的及び生理学的にin vivo組織に似ているが、多くの因子(たとえば拡散)により、保持するのは技術的に課題がある。
【0071】
さらなる側面において、本発明は、単純若しくは複雑な特性の細胞、または無細胞系により分泌または排出(excrete)されるモノクローナル抗体または他の生物活性分子を連続生成するためのプロセスであって、前記生産ユニット(production unit)は、本発明に従った3D構造体上で培養されるか、またはこれに可逆的若しくは不可逆的に結合される。
【0072】
別の態様では、3Dマクロポーラスポリマーを形成している粒子の間の隙間は、細胞培地栄養素などの追加の成分を充填することができる。この例において、細胞は、3Dマクロポーラスポリマーを形成するために使用されるポリマー微粒子上で、または3Dマクロポーラスポリマーそれ自体の上で培養することができる。好適には3D構造体は、スリーブ、カセットなどの保持装置内に含まれるか、またはその中にキャストされるか、あるいは所望の形状及び材料、たとえば栄養素を含む溶液若しくは蒸気の形状に形成することができるか、あるいは他の活性成分は、多孔質構造体の上に、その上にわたって、若しくはその中を全体にわたって通すことなどによって、3D構造体と接触させることができる。本発明の3D構造体は、幹細胞、臓器及び骨などの有機体の生産ユニットとして、及び再生医療で使用するのに好適である。
【0073】
好都合には、分泌または排出物を含む廃棄物は、生産ユニットの効率を損なったり、損害を与えたり、制限することなく効率的に除去することができる。好適には、保持装置(retaining device)は、活性成分及び廃棄材料の導入及び除去ができるように、不浸透性、半浸透性または浸透性である。
【0074】
本発明の3D構造体は、3D構造体を含むマトリックスの二つ以上の成形表面の製造プロセスでも使用することができる。好適には、マトリックスは、同一または異なるポリマーを含むことができ、好ましくは所望の形状にキャストまたは押出される。マトリックスは好適には、同一若しくは異なる孔径、段階的に変化した孔径、または空間的に分離された孔径をもつ。
【0075】
ヒト若しくは非ヒト由来の細胞、または無細胞成分は、隣接、連続的または空間的に分離された様式で一つの表面または全ての表面に播種することができる。このプロセスの目的は、任意の生化学的またはモルフォロジー的手段により、細胞の生物学的、生化学的及び生物物理学的特徴を、個別または集団、及びそれらの相互作用関係として調査することである。
【0076】
本発明は、細胞培地の構造物及び再生医療としての3D構造体の使用も提供する。本発明により、傷ついた筋肉を治療するなど既存の臓器または体の一部を治療または置き換えるように組織を作り、腎臓及び心臓などのヒト臓器全体を培養し、骨を置き換えることができる。
【0077】
本発明の3D構造体は、細胞を成長且つ分化させる、スーパーマクロポーラス構造体を提供する。3D構造体中の狭い孔径分布により、構造体の中で全体にわたって細胞、栄養素及び廃棄物が比較的一様に流れることが可能になる。好適なサイズの微粒子を使用すると、ユーザーは特定の用途に従って3D構造体をわたる孔径を測定することができる。たとえば、骨はその全長で全体にわたって一様ではないので、二種以上の異なるサイズの微粒子であって、それぞれが狭い粒径分布を持つ異なるサイズの微粒子を使用すると、3D構造体を調整して異なる密度または多孔性の骨を提供し、元の骨の構造をまねることができる。
【0078】
本発明の3D構造体は、陰圧または正圧下、浮遊(air-borne)有機体の回収のためのキャストマトリックスまたは押出しマトリックスとして使用するなど、他の生物学的用途でも使用することができる。3D構造体をバイオセンサとしてチップ及び/または光ファイバへの適用する、指、腕、足;家畜用などの特別に成形した、不活性創傷/火傷、保護/クロージャとして外傷または火傷治療で使用する、クロージャを通して局所殺菌、抗生物質、抗真菌性製剤などの治療薬を局所適用し、空気を交換する。
【0079】
本明細書に記載の発明により、再生医療に関して従来達成されていたものよりも、より正確に制御された細孔構造、細孔容積、細孔連結性及び細孔寸法が可能になる。このプロセスにより、生分解性、生体適合性、有機または無機などの実質的に任意のポリマーに3D構造体の製造が可能になる。100μmよりも大きい細孔が作られると、スーパーマクロポーラスと通常称されるこれらの3Dマクロポーラスポリマー構造体は、静止状態及び対流条件下で迅速な細胞及び栄養素移動を受け易い。本発明の3Dマクロポーラスポリマー構造体は、殆ど任意の形状またはサイズに製造またはキャストすることができるので、再生医療用の重要な骨格を提供する。
【0080】
さらなる側面において、本発明は、細孔を作るのに使用された球状の微粒子の表面または細孔の表面で細胞を培養するために、本発明に従った3Dマクロポーラスポリマーの使用を提供する。好適には、幹細胞を本発明の微粒子状担体上で培養して、無制御分化を減らし、所望の分化を制御することができる。微粒子状担体の取り扱い特性、表面積の高い利用度及び3Dマクロポーラスポリマーの孔径は、本出願で好都合である。
【0081】
本発明は特に、イムノアッセイなどの医療診断試験で有用である。本発明はさらに、本発明に従った微粒子状担体と、検出すべき化合物と選択的に反応または結合するための担体中にポリマーにより担持された酵素、たとえば西洋ワサビペルオキシダーゼなどの機能性材料とを含む、化合物の存在を検出するための、医療診断機器を提供する。
【0082】
多くの医療診断機器は、種々の診断用リガンドを固定化するための固体担体に依存している。本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、液相を介して固相を物理的に分離する医薬診断手順で使用することができる。
【0083】
さらなる用途では、3Dマクロポーラスポリマーは吸収剤として使用することができる。この用途では、3Dマクロポーラスポリマーが、不活性、吸収性材料である場合に特に好都合である。ポリハイプは特に好ましい不活性材料である。3Dマクロポーラスポリマーは、家庭内でこぼしてしまったもの、たとえば茶、コーヒー及びワインを吸収するのに使用することができるか、漏出物から油分を吸収するなど、大スケールでの用途に使用することができる。吸収剤担体は、漏出物を吸収するのに使用することができ、次いで水中に油分が漏出した場合には、物理的に除去することができるか、回収及び廃棄のために浮揚性塊(buoyant mass)に油分を効果的に捕捉及び油分を保持する。
【0084】
本発明の3Dマクロポーラスポリマーは、薬学的または農業化学的化合物または組成物など、一定期間にわたって放出すべき化合物を運ぶキャリヤとして使用することができる。この使用により、担体に化合物を充填することに応じて化合物の投薬計画を調整する手段を提供する。薬剤の場合には、化学療法など、患者に定期的に大量摂取させることを要求するのではなく、正確な用量の活性剤を連続的に持続放出し易くするのに好都合であるかもしれない。
【0085】
本発明を実施例及び付記走査電子顕微鏡写真(SEM)を参照して説明する。これらは列記した実施例で参照される。
【実施例】
【0086】
実施例1.ポリアクリルアミド中へのExpancel 920 DEX 30 d30の封入
メチレン-ビス-アクリルアミド(MBA)(123mg,0.8mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(1.26cm3)中に温めながら溶解した。この溶液を室温に冷却し、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEM)(0.43cm3,0.55mmol)、アクリルアミド(2.02g,28.5mmol)、テトラメチレンジアミン(TEMEDA)(0.006cm3,0.05mmol)及び水を添加した。この混合物を全ての成分が溶解するまで攪拌した。Expancel 920 DEX 80 d30(80μmポリアクリルニトリルバルーン)(150mg,10cm3)を添加し、よく攪拌してから、過硫酸アンモニウム溶液(1%w/vの0.285cm3)を添加して重合を開始した。混合物をテフロン(登録商標)型でディスクにキャストした。重合を室温で一晩、放置して完了させて、次いで水でよく洗浄してから凍結乾燥した。
【0087】
生成物の操作電子顕微鏡写真(SEM)を図1に示す。
実施例2.ポリアクリル酸の製造
メチレン-ビス-アクリルアミド(MBA)(240mg,1.55mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(2.5cm3)に温めながら溶解した。この溶液を室温に冷却し、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEM)(0.43cm3,0.55mmol)、アクリルアミド(1.9g,26.8mmol)、テトラメチレンジアミン(TEMEDA)(0.006cm3,0.05mmol)及び水を添加した。この混合物を全ての成分が溶解するまで攪拌した。Expancel 920 DEX 80 d30(80μmポリアクリルニトリルバルーン)(150mg,10cm3)を添加し、よく攪拌してから、過硫酸アンモニウム溶液(1%w/vの0.285cm3)を添加して重合を開始した。混合物をテフロン(登録商標)型でディスクにキャストした。重合を室温で一晩、放置して完了させた。
【0088】
上記で製造したディスクのうち幾つかを、ポリマーマトリックスが透明になるまで、80〜100℃で水酸化ナトリウム水溶液(20%w/v)で処理した。このディスクを希塩酸(1mol/dm3)及び水でよく洗浄してから凍結乾燥した。
【0089】
生成物のSEMを図2に示す。
実施例3.ポリスチレン-ジビニルベンゼンの製造
1,4-ジビニルベンゼン(DVB)(4.6cm3,43mmol)、スチレン(0.92cm3,8.85mmol)及び1,1-アゾビス(シクロヘキサン-カルボニトリル)(100mg)をExpancel 920 DEX 80 d30(150mg,10cm3)に添加し、よく攪拌した。この混合物をテフロン(登録商標)型でディスクにキャストした。重合を80℃で一晩、放置して完了させた。ディスクはジエチルエーテルでよく洗浄してから風乾した。
【0090】
上記で製造したディスクのうち幾つかを、80〜100℃で数時間、DMFで処理してから、ジエチルエーテルでよく洗浄し、風乾した。
生成物のSEMを図3に示す。
【0091】
実施例4.ポリスチレン-ジビニルベンゼンに封入されたポリジメチルアクリルアミド微粒子
1,4-ジビニルベンゼン(DVB)(0.934cm3,8.7mmol)、スチレン(0.19cm3,1.83mmol)、トルエン(1cm3)及び1,1-アゾビス(シクロヘキサン-カルボニトリル)(50mg)をExpancel 920 DEX 80 d30(150mg,10cm3)に添加し、よく攪拌した。この混合物をテフロン(登録商標)型でディスクにキャストし、重合を80℃で一晩、放置して完了させた。ディスクはジエチルエーテルでよく洗浄してから風乾した。
【0092】
上記で製造したディスクのうち幾つかを、80〜100℃で数時間、DMFで処理してから、ジエチルエーテルでよく洗浄し、風乾した。
実施例5.ポリスチレン-ジビニルベンゼンの製造
1,4-ジビニルベンゼン(DVB)(1.63cm3,15mmol)、スチレン(0.92cm3,5.4mmol)、トルエン(1.9cm3)及び1,1-アゾビス(シクロヘキサン-カルボニトリル)(15mg)をQ-Cel 300(〜80μm中空ガラス球)(300mg)に添加した。この混合物をテフロン(登録商標)型でディスクにキャストし、重合を100℃で2.5時間、放置して完了させた。ディスクはジクロロメタンでよく洗浄してから風乾した。
【0093】
生成物のSEMを図4に示す。
実施例6.シリカの製造
テトラメトキシオルトシラン(TMOS)(2.5cm3)及び3-アミノプロピル-トリメトキシシラン(APTS)(0.025cm3)をエタノール-水(5cm3,95:5v/v)に添加し、よく攪拌した。この混合物をExpancel 920 DEX 80 d30(200mg,13cm3)に添加し、よく攪拌した。この混合物をテフロン(登録商標)型でディスクにキャストし、重合を50℃で数時間、放置して完了させた。ディスクはDMFで約60時間かけて処理し、水でよく洗浄してから凍結乾燥した。
【0094】
生成物のSEMを図5及び6に示す。
実施例7.中空ガラス球を含むシリカの製造
TMOS(2.5cm3)及びAPTS(0.025cm3)をエタノール-水(2.5cm3,95:5v/v)に添加し、よく攪拌した。この混合物をQ-Cel 7014(約100μm中空ガラス球)に添加し、よく攪拌した。この混合物をテフロン(登録商標)型でディスクにキャストし、重合を50℃で48時間、放置して完了させた。ディスクは水でよく洗浄してから凍結乾燥した。
【0095】
生成物のSEMを図7に示す。
実施例8.ガラスシードビーズ内に封入された中空ポリアクリルニトリル球を含むポリアクリルアミド
メチレン-ビス-アクリルアミド(MBA)(240mg,1.55mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(2.5cm3)中に温めながら溶解した。この溶液を室温に冷却し、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEM)(0.43cm3,0.55mmol)、アクリルアミド(1.9g,26.8mmol)、テトラメチレンジアミン(TEMEDA)(0.006cm3,0.05mmol)及び水を添加した。この混合物を全ての成分が溶解するまで丸底フラスコ中で攪拌した。Expancel 920 DEX 80 d30(80μmポリアクリルニトリルバルーン)(150mg,10cm3)を添加し、よく攪拌してから、過硫酸アンモニウム溶液(1%w/vの0.285cm3)を添加して重合を開始した。1mm直径のガラスシードビーズ(30cm3)をこの混合物に添加し、フラスコを一時的に真空にして、重合混合物をシードビーズ内に引き込んだ。重合を室温で一晩、放置して完了させた。
【0096】
シードビーズは水でよく洗浄し、摩擦によりビーズ表面の全てのポリマーを除去した。水で濡れたビーズを凍結乾燥した。
生成物のSEMを図8に示す。
【0097】
実施例9
実施例2で製造したディスクの断面を使用してヒト胎児幹細胞を培養した。細胞集団をディスクに適用し、慣用の栄養素を与えた。幹細胞は、幹細胞が3D構造体の細孔内に産生するように、増殖し、3D構造体内に広がった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場合によりポリマーの細孔内に微粒子を有する多孔質ポリマー構造体を含む三次元多孔質ポリマー構造体であって、前記細孔が狭い孔径分布を有する、前記三次元多孔質ポリマー構造体。
【請求項2】
前記多孔質ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレン-ジビニルベンゼン、シリカ、ポリスチレン、セルロース、寒天、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリ尿素、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール、ポリベータヒドロキシエステル及びポリアクリロニトリル、ポリアルキレングリコール及びポリハイプから選択される、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記構造体の平均孔径の1/10〜10倍の範囲の孔径をもつような構造体中の細孔である、請求項1または2に記載の構造体。
【請求項4】
前記孔径範囲が、前記平均孔径の75〜125%である、請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
前記構造体の細孔内に微粒子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項6】
前記微粒子は、細胞と、ガラス、セラミック、ポリマー、天然産物及び金属から選択される材料とから選択される、請求項5に記載の構造体。
【請求項7】
前記粒子が中空である、請求項5または6に記載の構造体。
【請求項8】
前記微粒子が球状または楕円体である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項9】
前記微粒子が、中空ガラス球、中空ポリマー球、酵母細胞または蝋の球である、請求項5〜8のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項10】
前記微粒子が中空ポリマー含み、多孔質ポリマーに結合するための誘導体と反応するための活性部位をもつ、請求項5〜9のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項11】
触媒、ペプチド合成用の開始剤種、オリゴヌクレオチド合成用開始剤種、固相有機化学用開始剤種、酵素、医薬品、農業化学品、タンパク質若しくは他の生物学的高分子または全細胞から選択されるポリマーで担持された機能性材料をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項12】
領域に微粒子を最密充填して、微粒子の三次元配列を提供する工程、重合可能なモノマーまたはモノマーの溶液と前記配列とを、前記モノマーまたは前記溶液が、前記粒子の間の隙間を充填するように接触させる工程、モノマーの重合を実施し、それによって前記微粒子の周りにポリマー構造体を形成する工程、及び場合により、前記微粒子を前記構造体から除去する工程を含む、三次元多孔質構造体の製造プロセス。
【請求項13】
モノマーを含む液体中に微粒子のスラリーを形成する工程、及び前記モノマーを重合させる工程を含む請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖から選択される種の固相合成;固相抽出;固相有機化学;固相試薬、金属及び他の触媒、生体触媒、酵素、タンパク質、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を含む抗体、全細胞並びにポリマーから選択される種の固定化;細胞培養;クロマトグラフィー分離用固定相の調製から選択されるプロセスにおける;または吸着剤として使用するための;または絶縁材料として若しくは組織再生で使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の三次元多孔質構造体の使用。
【請求項15】
細胞または無細胞系から分泌または排出されたモノクローナル抗体または他の生物活性分子を連続生成するためのプロセスにおける、請求項1〜11のいずれか1項に記載の三次元多孔質構造体の使用であって、前記細胞系または無細胞系は三次元構造体上で増殖するか、または三次元構造体に可逆的若しくは非可逆的に結合している、前記使用。
【請求項16】
有機体用の生産ユニットとしての請求項1〜11のいずれか1項に記載の三次元多孔質構造体の使用。
【請求項17】
前記有機体が幹細胞、臓器及び骨から選択される、請求項16に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−504669(P2013−504669A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529158(P2012−529158)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005699
【国際公開番号】WO2011/032705
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512067115)スフィリテック・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】