説明

三次元映像表示装置およびチルト制御方法

【課題】3D視野角の狭さを補償することができる三次元映像表示装置を実現する。
【解決手段】実施形態によれば、三次元映像表示装置は、偏光方式で三次元映像を表示する。三次元映像表示装置は、偏光フィルタが配置された表示面を備えるディスプレイと、前記ディスプレイの表示面のチルト角度を変更するチルト機構と、チルト機構を駆動する駆動部と、検出手段と、判定手段と、制御手段とを備える。検出手段は、ディスプレイの表示面に対する観察者の観察位置の高さを検出する。判定手段は、検出された観察位置の高さが前記三次元映像を知覚可能な三次元観察視域内にあるか否かを判定する。制御手段は、検出された観察位置が前記三次元観察視域内にない場合、前記駆動部を制御して前記ディスプレイの表示面の前記チルト角度を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、三次元映像を表示する三次元映像表示装置および同装置に適用されるチルト制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元(3D)映像を観賞するための様々な三次元(3D)映像表示装置、例えば、三次元(3D)TV、等が提供されている。このような三次元映像表示装置では、例えば、両眼視差に基づく左眼用映像と右眼用映像とを用いて、ユーザに三次元映像(立体映像)を知覚させる。
【0003】
三次元映像を表示する方式としては、3Dグラスを用いるグラス方式と、裸眼立体視方式(裸眼3D方式)とがある。3Dグラスを用いる方式には、シャッター方式(アクティブ方式)と偏光方式(パッシブ方式)とがある。裸眼立体視方式(裸眼3D方式)としては、レンチキュラ方式、バリア方式、インテグラルイメージング方式等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−49630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら三次元映像表示装置では、観察者(ユーザ)が正しい位置からディスプレイ画面を見たときには、観察者は本来の立体映像、すなわち真の立体映像が知覚できる(3D視聴)。しかし、観察位置が正しい位置からずれると、立体視が成立しなくなり、クロストーク(3Dクロストーク)や逆視といった現象が引き起こされる。
【0006】
例えば、偏光方式(パッシブ方式)の三次元映像表示装置では、垂直方向の3D視野角が比較的狭い。このため、観察位置の高さによっては、立体視が成立しなくなる可能性がある。
【0007】
本発明は、垂直方向の3D視野角の狭さを補償することができる三次元映像表示装置およびチルト制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、三次元映像表示装置は、偏光方式で三次元映像を表示する。前記三次元映像表示装置は、偏光フィルタが配置された表示面を備えるディスプレイと、前記ディスプレイの表示面のチルト角度を変更するチルト機構と、前記チルト機構を駆動する駆動部と、検出手段と、判定手段と、制御手段とを具備する。前記検出手段は、前記ディスプレイの表示面に対する観察者の観察位置の高さを検出する。前記判定手段は、前記検出された観察位置の高さが前記三次元映像を知覚可能な三次元観察視域内にあるか否かを判定する。前記制御手段は、前記検出された観察位置が前記三次元観察視域内にない場合、前記駆動部を制御して前記ディスプレイの表示面の前記チルト角度を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る三次元映像表示装置の概略動作を説明するための図。
【図2】同実施形態の三次元映像表示装置の視聴位置(鑑賞位置)の範囲を説明するための図。
【図3】同実施形態の三次元映像表示装置内のディスプレイの構成を示す断面図。
【図4】同実施形態の三次元映像表示装置におけるクロストークを説明するための図。
【図5】同実施形態の三次元映像表示装置に設けられたチルト調整機構を示す図。
【図6】同実施形態の三次元映像表示装置のディスプレイを垂直方向に対して後方に傾けた様子を示す図。
【図7】同実施形態の三次元映像表示装置のディスプレイを垂直方向に対して前方に傾けた様子を示す図。
【図8】同実施形態の三次元映像表示装置のシステム構成を示すブロック図。
【図9】同実施形態の三次元映像表示装置によって表示される第1のOSDを示す図。
【図10】同実施形態の三次元映像表示装置によって表示される第2のOSDを示す図。
【図11】同実施形態の三次元映像表示装置によって表示される3Dチェックパターン画像を示す図。
【図12】同実施形態の三次元映像表示装置によって実行される映像表示処理の手順を示すフローチャート。
【図13】同実施形態の三次元映像表示装置によって実行されるチルト調節処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、一実施形態に係る三次元映像表示装置の概要について説明する。この三次元映像表示装置は、例えば、三次元(3D)映像(立体映像)を表示可能なデジタルテレビジョン(TV)10として実現される。このデジタルTV10は、所定の視域から観察すると立体映像として知覚される三次元映像を、映像コンテンツデータに基づいて表示するように構成されている。映像コンテンツデータとしては、放送信号によって放送される放送番組データ、記憶メディアに格納されたコンテンツデータ、等が用いられる。
【0011】
デジタルTV10は、偏光方式(パッシブ方式)で三次元映像を表示するように構成されている。偏光方式(パッシブ方式)は、3Dグラスを使用して立体映像を知覚させるグラス方式の一つである。偏光方式では、表示面に対して上下方向の3D視野角が制限される。
【0012】
本実施形態においては、デジタルTV10は、上下方向の3D視野角の狭さを補償するためのチルト制御機能を有している。このチルト制御機能は、三次元映像の表示中に、ディスプレイの表示面に対する観察者の観察位置の高さを自動的に検出する。そして、チルト制御機能は、観察位置の高さが三次元観察視域内にない場合に、ディスプレイの表示面のチルト角度を変更する動作を実行する。デジタルTV10は、ディスプレイの表示面のチルト角度を変更するチルト機構と、このチルト機構を駆動する駆動部とを備えている。チルト制御機能は、駆動部を制御し、これによってディスプレイの表示面のチルト角度を変更する。チルト機構は、ディスプレイを、その表示面の水平ラインと平行な軸100の回りで回動させるように構成されている。
【0013】
チルト制御機能においては、オートチルト調節処理または対話型調節処理が実行される。オートチルト調節処理では、三次元映像の表示中に、観察位置に応じてディスプレイのチルト角度が自動的に調節される。したがって、たとえ三次元映像の表示中に観察位置の高さが変化しても、その観察位置の高さの変化に追従してチルト角度が調整される。観察者は、ソファに座った状態でデジタルTV10の三次元映像を見るかもしれないし、あるいはソファに寝そべった状態で三次元映像を見るかもしれない。オートチルト調節処理により、どちらの観察状態においても、観察者は三次元映像を正常に知覚することができる。
【0014】
対話型調節処理では、観察位置の高さが三次元観察視域内にないことが判定されたことをトリガに、観察者にチルト角度の調節を促すための表示項目がディスプレイに表示される。そしてふ、観察者によるリモコンユニットの操作に応じて、ディスプレイのチルト角度が調節される。
【0015】
偏光方式(パッシブ方式)のデジタルTV10では、左眼用画像と右眼用画像とを用いて得られる所定の3D表示用画像がデジタルTV10のディスプレイに表示される。偏光方式(パッシブ方式)においては、3D表示用画像としては、左眼用画像と右眼用画像とが水平ライン単位で交互に配置されたインタリーブ画像が用いられる。ディスプレイの表示面には偏光フィルタが配置されている。このディスプレイは液晶表示装置(LCD)のようなフラットパネルディスプレイであってもよい。この偏光フィルタは、ディスプレイの水平ラインごとに偏光方向を異ならせるフィルタである。この偏光フィルタは、LCDの画面上の例えば奇数番目のライン群に表示される右眼用画像と偶数番目のライン群に表示される左眼用画像とを異なる方向に偏光する。
【0016】
3Dグラス20は偏光グラスである。3Dグラス20の左眼眼鏡部20Lに配置された偏光フィルタは、左眼用画像に対応する偏光方向の光だけを通過させる。一方、3Dグラス20の右眼眼鏡部20Rに配置された偏光フィルタは、右眼用画像に対応する偏光方向の光だけを通過させる。ユーザは、3Dグラス20を用いることにより、LCDの画面上に表示される左眼用画像を左眼で、LCDの画面上に表示される右眼用画像を右眼で見ることができる。
【0017】
デジタルTV10は、ライブ再生処理、録画処理、再生処理等を実行する。ライブ再生処理では、デジタルTV10は、デジタルTV10内のチューナによって受信された放送番組データ内の映像データを再生する。録画処理では、デジタルTV10は、受信された放送番組データをHDDのような記憶媒体に記録する。再生処理では、デジタルTV10は、記憶媒体に記録された映像コンテンツデータ(放送番組データ、ビデオタイトル等)を再生する。デジタルTV10は、二次元表示モード(2D表示モード)と、2つの三次元表示モード(3D表示モード)とを有している。
【0018】
2D表示モードは、通常の2D映像データに対応する二次元映像をディスプレイに表示するための表示モードである。2D表示モードにおいては、デジタルTV10は、表示対象の映像コンテンツデータのフレーム画像それぞれをディスプレイに表示する。3D表示モードは、3D映像表示モードと、2D/3D(2Dto3D)表示モードとを含む。
【0019】
3D映像表示モードは、三次元フォーマットの三次元映像データに対応する三次元映像を表示するための3D表示モードである。三次元フォーマットの三次元映像データとしては、例えば、サイドバイサイドフォーマットの三次元映像データまたはトップアンドボトムフォーマットの三次元映像データが用いられる。サイドバイサイドフォーマットは、左眼画像が各フレームの左半分に配置され、右眼画像(R)が各フレームの右半分に配置された3D映像フォーマットである。3D放送番組データの多くは、サイドバイサイドフォーマットの映像コンテンツデータである。
【0020】
三次元フォーマットの三次元映像データを受信した場合、デジタルTV10は、その受信された三次元映像データの各フレームに含まれる左眼画像と右眼画像とを用いて得られる3D表示用画像をディスプレイに表示することによって、受信された映像コンテンツデータの各フレームに対応する三次元映像を表示する。
【0021】
より詳しくは、デジタルTV10は、各フレーム画像の左半分の領域上の画像(左眼画像)と右半分の領域上の画像(右眼画像)とが水平ライン単位で交互に配置されたインタリーブ画像を3D表示用画像として生成し、そのインタリーブ画像をディスプレイに表示する。例えば、右眼画像R内の1ライン目の画像R1がディスプレイの1ライン目に表示され、左眼画像L内の2ライン目の画像L2がディスプレイの2ライン目に表示され、右眼画像R内の3ライン目の画像R3がディスプレイの3ライン目に表示され、左眼画像L内の4ライン目の画像L4がディスプレイの4ライン目に表示される。
【0022】
2D/3D(2Dto3D)表示モードは、二次元映像データを三次元映像データに変換することによって三次元映像を表示するための3D表示モードである。2D/3D(2Dto3D)表示モードにおいては、デジタルTV10は、表示対象の映像コンテンツデータを三次元映像データにリアルタイムに変換し、その三次元映像をディスプレイに表示する。つまり、デジタルTV10は、二次元映像データの各フレーム画像の画素毎に奥行きを推定することによって、各フレーム画像から左眼画像と右眼画像とを生成する。そして、デジタルTV10は、各フレーム画像から生成された左眼画像と右眼画像とを用いて上述のインタリーブ画像を生成し、そのインタリーブ画像をディスプレイに表示する。
【0023】
偏光方式においては、ディスプレイに偏光フィルタを配置するという構造上、垂直方向の3D視野角が比較的狭い。3D視野角は立体映像を正しく知覚できる視野角である。3D視野角以外の領域で三次元映像を観察すると、クロストークや逆視といった現象が発生する可能性がある。
【0024】
ここで、図2から図4を参照して、デジタルTV10の3D視野角について説明する。
【0025】
図2はデジタルTV10を左側面側から見た側面図であり、図3、図4はデジタルTV10のディスプレイ(LCD)2103内におけるある垂直ライン(縦方向ライン)の画素配列を示す断面図である。
【0026】
デジタルTV10のディスプレイ2103は、偏光方式で3D映像を表示する3Dディスプレイである。ディスプレイ2103は、LCD2103Aと、LCD2103Aの表示面上に配置された偏光フィルタ2103Bとを備える。図3および図4の各々においては、各奇数ラインに右眼画像(R)が表示され、各偶数ラインに左眼画像(L)が表示される場合が想定されている。この場合、LCD2103Aの表示面上の各奇数ラインに対応する位置には、右眼画像(R)に対応する偏光フィルタ(R)が配置される。表示面上上の各偶数ラインに対応する位置には、左眼画像(L)に対応する偏光フィルタ(L)が配置される。
【0027】
図2において、記号「θ」は垂直方向の3D視野角を示している。この3D視野角によって規定される範囲が三次元映像(立体映像)を正常に知覚できる3D視域(3D観察視域)である。3D視域よりも上方向にまたは下方向にずれた領域は、クロストークが発生するクロストーク領域となる。観察位置がクロストーク領域よりもさらに上方向にまたは下方向にずれた領域は、逆視が発生する逆視領域となる。逆視領域も一種のクロストーク領域である。
【0028】
デジタルTV10はディスプレイ2103の表示面(画面)のチルト角度を変更可能なチルト機構11を備えている。表示面のチルト角度は、垂直方向に対する表示面の角度である。表示面のチルト角度を変更することにより、表示面中心の法線の水平方向に対する角度を調整すること、つまり表示面の向きを上方向または下方向に調整することができる。このチルト機構11は上述のオートチルト調節処理、または上述の対話型調節処理で利用される。
【0029】
チルト機構11はディスプレイ2103のたとえば背面または底部に接合されおり、ディスプレイ2103が軸100の回りで回動するようにディスプレイ2103を支持する。図2の例においては、チルト機構11は、台座部12から上方に延在する支持部材13に回動可能に取り付けられており、チルト機構11自体が軸100の回りで回動し、これによってディスプレイ2103の表示面のチルト角度が変更される。軸100は、チルト機構11を支持部材13に回動可能に支持する連結部の軸心に対応する。なお、チルト機構11としては、ディスプレイの分野でよく知られている他の様々な機構を用いることができる。
【0030】
次に、図3、図4を参照して、クロストークおよび逆視が発生するメカニズムについて説明する。図3では、観察者の観察位置の高さ、つまり3Dグラス20の高さが、本来の立体映像を知覚可能な視域である3D視域内に位置している場合を想定している。左眼画像の光は左眼画像用の偏光フィルタを通して観察者に送られ、右眼画像の光は右眼画像用の偏光フィルタを通して観察者に送られる。したがって、観察者は、3Dグラス20を用いることにより、左眼画像を左目で、右眼画像を右目でみることができる。
【0031】
図4では、観察位置の高さ、つまり3Dグラス20の高さが、逆視領域内に位置している場合を想定している。通常、偏光フィルタ2103BはLCD2103Aから比較的離れて配置されている。このため、表示面を斜め方向(下方または上方)から観察すると、ある左眼画像表示用ラインの画素が、右眼画像表示用ライン上に配置された右眼画像用の偏光フィルタを通して観察者に送られ、さらに、ある右眼画像表示用ラインの画素が、左眼画像表示用ライン上に配置された左眼画像用の偏光フィルタを通して観察者に送られる。この場合、左眼画像表示用ラインの画素の光が、3Dグラス20の右眼眼鏡部20Rを通過して観察者の右目に送られてしまい、さらに右眼画像表示用ラインの画素の光が、3Dグラス20の左眼眼鏡部20Lを通過して観察者の左目に送られてしまう。これにより、観察者は、左眼画像を右目で、右眼画像を左目で見てしまうことになり、正常に立体映像を知覚することができなくなる。
【0032】
次に、図5、図6、図7を参照して、デジタルTV10のチルト制御機能について説明する。
【0033】
図5に示すように、デジタルTV10は、チルト機構11を駆動するように構成されたチルト機構駆動部11aを備えている。チルト機構駆動部11aはモータを内蔵していてもよい。チルト機構11およびチルト機構駆動部11aは、ディスプレイ2103を軸100の回りで回動させるためのアクチュエータとして機能する。
【0034】
チルト角度は、垂直方向(図5のz軸)に対するディスプレイ2103の表示面の角度である。図5では、ディスプレイ2103の表示面のチルト角度が0度である場合を想定している。この場合、画面中心法線Lの水平方向(x軸方向)に対する角度も0度となる。3Dグラス20の高さが3D視域内に入っているならば、たとえば3Dグラス20の位置が画面中心法線Lの延長線上付近であるならば、観察者は三次元画像を正常に知覚することができる。
【0035】
図6は、画面中心法線Lが3Dグラス20の位置に向けて延びるように、ディスプレイ2103の表示面のチルト角度が上向きに調整された状態を示している。図6では、ディスプレイ2103の表示面が後方にチルト角度=α度だけ傾斜されている。
【0036】
このように、観察位置が比較的高い位置にある場合には、画面中心法線Lの延在が観察位置に向くように、ディスプレイ2103の表示面の上部が垂直方向に対して後方に傾斜される。
【0037】
図7は、画面中心法線Lが3Dグラス20の位置に向けて延びるように、ディスプレイ2103の表示面のチルト角度が下向きに調整された状態を示している。図7では、ディスプレイ2103の表示面が前方にチルト角度=β度だけ傾斜されている。このように、観察位置が比較的低い位置にある場合には、画面中心法線Lの延在が観察位置に向くように、ディスプレイ2103の表示面の上部が垂直方向に対して前方に傾斜される。
【0038】
次に、図8を参照して、デジタルTV10のシステム構成について説明する。
【0039】
デジタルTV10は、チューナ224、デコーダ225、セレクタ226、映像処理部234、制御部235、リモコン信号受信部246、メガネ位置検出部237、画面傾斜制御部238、メモリ239等を備えている。
【0040】
デジタルテレビジョン放送信号は、アンテナ222、入力端子223を介してチューナ224に供給される。このチューナ224は、デジタルテレビジョン放送信号によって放送される映像コンテンツデータ(放送番組データ)を受信する受信部である。このチューナ224は、制御部235によって指定されるチャンネルの放送信号を受信し、その受信した放送信号を復調する。チューナ224から出力されるデジタル映像信号はデコーダ225によってデコードされ、デコードされたデジタル映像信号がセレクタ226に供給される。
【0041】
入力端子233には外部映像機器が接続される。外部映像機器からデジタル信号用の入力端子233に供給されるデジタル映像信号もセレクタ226に供給される。
【0042】
セレクタ226は、制御部235の制御の下、2種類の入力デジタル映像信号から1つのデジタル映像信号を選択し、そして選択したデジタル映像信号を映像処理部234に供給する。この映像処理部234は、入力されたデジタル映像信号に対して所定の信号処理を施す。映像処理部234は、例えば、デジタル映像信号の各フレームに含まれる左眼画像と右眼画像とが水平ライン単位で交互に配置されたインタリーブ画像を生成し、そのインタリーブ画像をディスプレイ2103に表示する。さらに、映像処理部234は、上述の2Dto3D変換を実行する機能も有している。
【0043】
制御部235はデジタルTV10内の各コンポーネントの動作を制御する。制御部235はマイクロコンピュータのようなプロセッサであってもよい。メモリ239は、不揮発性メモリから構成されている。このメモリ239には、現在の鑑賞位置が3D視域に入っているか否かを観察者(ユーザ)に確認させるための3D視聴位置チェックパターン画像データを予め格納してもよい。3D視聴位置チェックパターン画像データは、テスト用3次元映像を表示するためのテスト用三次元静止画像データである。
【0044】
リモコン信号受信部236は、リモコンユニット210からリモコン信号を受信する。リモコン信号は赤外線信号であってもよい。リモコンユニット210は、デジタルTV10を遠隔制御するための各種コマンドをリモコン信号として送信するためのリモコン情報送出部301を内蔵している。このコマンドには、ディスプレイ2103のチルト角度を変更するためのコマンド群も含まれている。
【0045】
メガネ位置検出部237は、ディスプレイ2103の表示面(画面)に対する観察者の観察位置の高さを検出する。観察位置の高さは、ディスプレイ2103の表示面中心の法線に対する3Dグラス20の高さである。本実施形態では、画面の現在の向き(現在のチルト角度)を考慮した状態で観察位置の高さが検出できるようにするために、たとえば、画面の上下方向に対する3Dグラス20の位置、つまり画面中心の法線に垂直で且つ画面と同じサイズの面上における3Dグラス20の位置が、観察位置の高さとして検出される。ディスプレイ2103の表示面に対する観察位置の高さを検出する方法としては、様々な方法を使用することができる。
【0046】
たとえば、ディスプレイ2103上の異なる位置、たとえばディスプレイ2103の上端部および下端部にそれぞれ配置された2つのセンサを用いてもよい。これら2つのセンサは、3Dグラス20に内蔵されたメガネ位置送出部(送信機)302から送信される信号(たとえば、赤外線信号のような光信号、他の各種無線信号等)を検出する。これら2つのセンサからそれぞれ出力される2つの検出信号は制御部235に入力される。制御部235は、それら2つの検出信号の差分を算出し、その差分に基づいて、ディスプレイ2103の表示面に対する観察位置の高さを検出する。2つの検出信号間の差分としては、たとえば、2つの検出信号間の受信タイミングの差、または2つの検出信号間の信号強度間の差、等を利用してもよい。
【0047】
3Dグラス20から信号を送信する代わりに、ディスプレイ2103に設けられた送信機から送信される特定の波長の光に対する3Dグラス20からの反射光を上述の2つのセンサによって検出してもよい。3Dグラス20に上述の特定の波長の光を反射する部材を取り付けたり、上述の特定の波長の光を反射する塗料を3Dグラス20に塗布とてもよい。
【0048】
あるいは、TV10にディスプレイ2103の表示面の正面側を撮影するカメラ(ビデオカメラ)を取り付け、このカメラによってキャプチャされた映像を用いてディスプレイ2103の表示面に対する3Dグラス20の位置を検出してもよい。この場合、制御部235は、キャプチャされた映像内から3Dグラス20の形状に合致する所定形状のオブジェクトを検出し、映像内におけるそのオブジェクトの位置に基づいて、ディスプレイ2103の表示面に対する鑑賞位置、つまり表示面に対する3Dグラス20の高さを検出する。また、3Dグラス20の形状に合致する形状のオブジェクトを検出する代わりに、キャプチャされた映像内から人物の顔または目を検出し、映像内におけるその顔または目の位置に基づいて、ディスプレイ2103の表示面に対する鑑賞位置を検出してもよい。
【0049】
画面傾斜制御部238は、チルト機構駆動部11aを制御してディスプレイ2103の表示面のチルト角度を変更する。チルト角度の変更は、検出された観察位置(3Dグラス20の位置)の高さが3D観察視域内にない場合に実行される。上述のオートチルト調節処理においては、制御部235は、画面傾斜制御部238と共同して、検出された観察位置の高さが3D観察視域内に入るように、検出された観察位置の高さに応じてディスプレイ2103の表示面のチルト角度を変更する。
【0050】
上述したようにオートチルト調節処理は三次元映像の表示中に自動的に行うようにしてもよい。この場合、制御部235は、三次元映像の表示中に観察位置の高さを検出する。観察位置の高さが3D観察視域内にない場合には、制御部235は、検出された観察位置の高さに応じて、ディスプレイ2103の表示面のチルト角度を自動的に変更する。
【0051】
ここまでは、検出対象の3Dグラスが1つである場合について説明したが、複数の3Dグラスを検出対象としてもよい。この場合、制御部235は、検出された観察位置(複数の3Dグラスの位置)全ての高さが3D観察視域内に入るように、ディスプレイ2103の表示面のチルト角度を変更する。たとえば、TV10の垂直方向の3D視野角が20度である場合には、制御部235は、表示面中心から20度の範囲に全ての3Dグラス位置が入るように表示面のチルト角度を調整する。もし表示面のチルト角度を調整してもいずれかの3Dグラスがその20度の範囲内に入らない場合には、制御部235は、映像コンテンツデータに対応する3D映像を表示する処理を中断し、代わりに、その映像コンテンツデータに対応する2D映像を表示する処理を開始してもよい。2D映像を表示する処理においては、例えば、右眼用の映像を全ての水平ラインに表示してもよい。
【0052】
次に、図9、図10、図11を参照して、上述の対話型調節処理について説明する。
【0053】
図9は、対話型調節処理においてディスプレイ2103の画面の少なくとも一部に表示されるオンスクリーンディスプレイOSDの例を示している。このOSD401は、観察者にチルト角の調整を促すために用いられる。検出された観察位置の高さが3D観察視域内にない場合、制御部235は、OSD401を表示して、観察者にチルト角の調整を促す。OSD401は、観察者によるチルト角の調整操作を支援するための画面としても用いられる。制御部235は、リモコンユニット2104から受信される信号(コマンド)に応じてディスプレイ2104の表示面のチルト角度を変更する。例えば、3D視野角が20度の場合には、制御部235は、20度単位で、あるいは20度の1/2または1/4などの単位で、ディスプレイ2103の表示面のチルト角度を変更する。リモコンユニット2104から上方向へのチルト調整を示すコマンドが受信された場合、制御部235は、表示面のチルト角度を所定角度(たとえば20度)だけ上向きに変更する。リモコンユニット2104から上方向へのチルト調整を示すコマンドが受信された場合、制御部235は、表示面のチルト角度を所定角度(たとえば20度)だけ下向きに変更する。
【0054】
図10は、対話型調節処理においてディスプレイ2103の画面の一部に表示されるオンスクリーンディスプレイOSDの他の例を示している。図10のOSD402は、あらかじめ決められた複数種(ここでは3種類)のチルト角度候補を表示する。ユーザは、あらかじめ、3種類のチルト角度を変更先候補としてTV10に登録しておくことができる。ユーザは、3種類のチルト角度(“1”、“2”、“3”)内の任意の一つをリモコンユニット2104の操作によって指定することができる。制御部235は、表示面のチルト角度を、リモコンユニット2104から受信された信号によって指定される変更先候補に対応する角度に変更する。
【0055】
対話型調節処理においては、図11に示されているように、ディスプレイ2103の画面に上述のテスト用3次元映像(3Dチェックパターン画像)を表示してもよい。図11においては、ディスプレイ2103の画面にテスト用3次元映像が表示され、さらに、図9のOSD401が3Dチェックパターン画像上に表示されている。
【0056】
放送番組のような映像コンテンツデータは動画像であり、且つ絵柄も複雑な場合がある。このため、ユーザ(観察者)は、たとえクロストークまたは逆視に起因する2重像が発生していても、それが2重像であるのか、絵柄であるのかが判断しにくい場合がある。3Dチェックパターン画像は、3D観察視域から観察すると所定のオブジェクトの立体映像が知覚され、3D観察視域以外から観察すると当該所定のオブジェクトの2重像が知覚されるような静止映像を含んでいる。したがって、ユーザは、3Dチェックパターン画像を見ながらリモコン操作を行うことにより、チルト角度を現在の観察位置に合った適正な角度に容易に調整することができる。
【0057】
次に、図12のフローチャートを参照して、本実施形態のTV10によって実行される3D映像表示処理の手順の例を説明する。
【0058】
映像処理部234は、受信された映像コンテンツデータの各フレームに含まれる左眼画像と右眼画像とが水平ライン単位で交互に配置された三次元表示用画像を生成し、その三次元表示用画像をディスプレイ2103に表示する。これにより、受信された映像コンテンツデータに対応する三次元映像が表示される。三次元映像の表示中に、制御部235は、以下の処理を実行する。
【0059】
制御部235は、ディスプレイ2103の表示面に対する観察者の観察位置の高さを検出する(ステップS11)。そして、制御部235は、観察者の観察位置の高さが3D観察視域内であるか否かを判定する(ステップS12)。観察者の観察位置の高さが3D観察視域内でないならば(ステップS12のNO)、制御部235は、チルト角度調節処理を開始する(ステップS13)。ステップS13では、制御部235は、チルト機構駆動部11aを制御することによって、ディスプレイ2103の表示面のチルト角度を変更する。
【0060】
次に、図13のフローチャートを参照して、チルト角度調節処理の手順を説明する。制御部235は、まず、現在の動作モードがオートモードか否かを判定する(ステップS21)。オートモードでないならば(ステップ21のNO)、制御部235は、上述の対話型調節処理を開始する。
【0061】
対話型調節処理では、制御部235は、観察者にチルト角の調整を促すための表示項目をディスプレイ2103に表示する(ステップS22)。ステップS22では、上述の表示項目として、所定のメッセージ、図9のOSD401、または図10のOSD402が表示される。さらに、制御部235は、3Dチェックパターン画像を表示してもよい(ステップS23)。そして、制御部235は、リモコンユニット2104から信号を受信し、その受信した信号に応じてディスプレイ2103の表示面のチルト角度を変更する(ステップS24)。
【0062】
現在の動作モードがオートモードであるならば(ステップ21のYES)、制御部235は、上述のオートチルト調節処理を開始する。オートチルト調節処理では、制御部235は、検出された観察位置に応じて、ディスプレイ2103の表示面のチルト角度を変更する(ステップS24)。ステップS24では、たとえば、ディスプレイ2103の表示面中心の法線Lが3Dグラス20の位置を通るように、ディスプレイ2103の表示面のチルト角度が制御される。これにより、3Dグラス20の位置は3D観察視域内に入る。
【0063】
なお、チルト角度調節処理が実行されるタイミングは3D映像処理中に限られない。たとえば、ユーザによるリモコンユニット2104の操作によって3D観察位置チェック機能が呼び出された場合に、図12の処理が開始されるようにしてもよい。
【0064】
たとえば、ユーザによるリモートユニット2104の操作によって「3D視聴位置チェック」メニューが選択されると、制御部235は、3D視聴位置(鑑賞位置)のチェックを要求するイベントが発生したことを検出する。制御部235は、ディスプレイ2103の表示面に対する観察者の観察位置の高さを検出し、観察者の観察位置の高さが3D観察視域内であるか否かを判定する。観察者の観察位置の高さが3D観察視域内でないならば、制御部235は、観察者にチルト角の調整を促すための表示項目をディスプレイ2103に表示するとともに、メモリ239に格納されている3D視聴位置チェックパターン画像データに基づいて3Dチェックパターン画像を表示する。そして、制御部235は、リモコンユニット2104から受信した信号に応じてディスプレイ2103の表示面のチルト角度を変更する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、ディスプレイ2103の表示面に対する観察者の観察位置の高さが検出され、検出された観察位置の高さが三次元映像を知覚可能な三次元観察視域内にあるか否かが判定される。検出された観察位置が三次元観察視域内にない場合には、チルト機構駆動部11aを制御してディスプレイ2103の表示面のチルト角度を変更する処理が実行される。よって、偏光方式の三次元映像表示装置における垂直方向の3D視野角の狭さを補償することができ、観察位置によらずに、正常な三次元映像を観察者に知覚させることができる。
【0066】
なお、本実施形態のチルト制御機能はTVに限らず、偏光方式で三次元映像を表示する様々な機器に適用できる。たとえば、偏光方式で三次元映像を表示する機能を有するパーソナルコンピュータのような情報処理装置に適用してもよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
10…デジタルTV、20…3Dグラス(偏光グラス)、11…チルト機構、11a…チルト機構駆動部、235…制御部、238…画面傾斜制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光方式で三次元映像を表示する三次元映像表示装置であって、
偏光フィルタが配置された表示面を備えるディスプレイと、
前記ディスプレイの表示面のチルト角度を変更するチルト機構と、
前記チルト機構を駆動する駆動部と、
前記ディスプレイの表示面に対する観察者の観察位置の高さを検出する検出手段と、
前記検出された観察位置の高さが前記三次元映像を知覚可能な三次元観察視域内にあるか否かを判定する判定手段と、
前記検出された観察位置が前記三次元観察視域内にない場合、前記駆動部を制御して前記ディスプレイの表示面の前記チルト角度を変更する制御手段とを具備する三次元映像表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出された観察位置の高さが前記三次元観察視域内に入るように、前記検出された観察位置の高さに応じて前記ディスプレイの表示面の前記チルト角度を変更するように構成されている請求項1記載の三次元映像表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出された観察位置の高さが前記三次元観察視域内にない場合、前記観察者に前記チルト角の調整を促すための表示項目を前記ディスプレイに表示し、リモコンユニットから受信される信号に応じて前記ディスプレイの表示面の前記チルト角度を変更するように構成されている請求項1記載の三次元映像表示装置。
【請求項4】
テスト用三次元静止画像データを格納する記憶装置をさらに具備し、
前記制御手段は、前記検出された観察位置の高さが前記三次元観察視域内にない場合、前記観察者に前記チルト角の調整を促すための表示項目と、前記テスト用三次元静止画像データに基づくテスト用三次元映像とを前記ディスプレイに表示し、リモコンユニットから受信される信号に応じて前記ディスプレイの表示面の前記チルト角度を変更するように構成されている請求項1記載の三次元映像表示装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記三次元映像の表示中に、前記観察位置の高さを検出するように構成されている請求項1記載の三次元映像表示装置。
【請求項6】
映像コンテンツデータを受信する受信部と、
前記受信された映像コンテンツデータ内の各フレームに含まれる左眼画像と右眼画像とが水平ライン単位で交互に配置された三次元表示用画像を前記ディスプレイに表示する表示制御手段とをさらに具備する請求項1記載の三次元映像表示装置。
【請求項7】
偏光フィルタが配置された表示面を備えるディスプレイを備え偏光方式で三次元映像を表示する三次元映像表示装置に適用されるチルト制御方法であって、
前記ディスプレイの表示面に対する観察者の観察位置の高さを検出し、
前記検出された観察位置の高さが前記三次元映像を知覚可能な三次元観察視域内にあるか否かを判定し、
前記検出された観察位置の高さが前記三次元観察視域内にない場合、前記三次元映像表示装置内のチルト機構を駆動するように構成された駆動部を制御して、前記ディスプレイの表示面のチルト角度を変更するチルト制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−46297(P2013−46297A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183898(P2011−183898)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】