説明

三次元画像表示装置

【課題】高解像度且つ広視域角でありながら、飛び出し感の大きな三次元画像を表示することができる三次元画像表示装置を提供する。
【解決手段】三次元画像表示装置は、複数の点を有する第1層1と、複数の点を有し、第1層に対向する第2層2と、第1層及び第2層とは別に設けられた変調部材3とを備えている。点像Rは、複数の光線L1,L2が交差した交点上に形成される。複数の光線のそれぞれの向き及び色は、第1層が有する複数の点のうちの一点と第2層が有する複数の点のうちの一点とにより特定される。変調部材は、第1層が有する複数の点と第2層が有する複数の点とを通る複数の光路のうちの一部の光路に沿った光線の強度及び色のうちの少なくとも一方を変調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元画像表示装置に関する。特に、それぞれが複数の光線の交点上に形成される複数の点像を三次元空間内に形成することで三次元画像を表示する三次元画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間内に実在する点物質からは、四方八方に広がる発散光又は散乱光が発射される。人間はこの点物質からの光線群を見ることで、空間内における点物質の存在を認識する。例えば物体の表面は多数の点物質の集合と考えることができる。この多数の点物質のそれぞれからの光線群を見ることで、この物体の三次元形状を認識することができる。
【0003】
従って、それぞれが光線群を発する点像群を人為的に再現すれば三次元画像を表示することが可能となる。このような考え方に基づいて三次元画像を表示する方法として光線再生法が知られており、これを図4を用いて説明する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図示したように、点光源アレイ910と光学フィルタアレイ920とが対向して配置されている。点光源アレイ910上には、それぞれが白色光を発する複数の点光源が格子点状に配置されている。点光源アレイ910の各点光源は無数の光線を光学フィルタアレイ920に向かって放射する。光学フィルタアレイ920の有効領域は微小な画素に碁盤目状に分割され、各画素は、入射する白色光が所望する色に色づけされて通過するように着色されている。図4において、光学フィルタアレイ920に示された個々の複数の微小な矩形は画素を示している。例えば、点像R9は、点光源アレイ910上の点光源P9-1,P9-2,P9-3,P9-4からそれぞれ発せられた光線L9-1,L9-2,L9-3,L9-4の交点上に形成される。光学フィルタアレイ920上の光線L9-1,L9-2,L9-3,L9-4が通過する点(即ち、点像R9と点光源P9-1,P9-2,P9-3,P9-4とを結ぶ直線と光学フィルタアレイ920との交点)を含む画素Q9-1,Q9-2,Q9-3,Q9-4を所望する同一色(例えば赤色)に着色することで、点像R9の色を特定することができる。点像R9のように、向き及び色が特定された複数の光線を交差させて三次元空間内に複数の点像を形成することにより、三次元画像を表示することができる。このような光線再生法により形成された三次元画像は、目の輻輳と調節に矛盾を生じない特徴を有しているため、自然な三次元画像を表示することができる。
【特許文献1】特開平10−239785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
三次元画像表示装置の代表的な表示特性として、三次元画像の飛び出し距離、解像度、視域角がある。
【0006】
飛び出し距離とは、三次元画像表示装置の画面(図4では光学フィルタアレイ920面)とこれより視点側に形成される三次元画像との間の距離をいう。より奥行き感のある三次元画像を表示するためには、飛び出し距離は大きい方が好ましい。
【0007】
解像度とは、三次元画像を構成する画素の密度のことである。当然のことながら、解像度は高い方が好ましい。
【0008】
視域角とは、三次元画像を認識することができる視点の角度範囲をいう。図4に示した従来の三次元画像表示装置では、光学フィルタアレイ920の有効領域は、複数の点光源と同一ピッチで複数の領域(基本単位と呼ぶ)に分割されている。点光源アレイ910の1つの点光源に対して光学フィルタアレイ920の1つの基本単位が割り当てられる。1つの基本単位は複数の画素を含む。1つの点光源P9-Nから発射された光線群のうち、光学フィルタアレイ920上のこの点光源に対応する基本単位ANを通過した光線のみが、三次元画像の形成に寄与するようにカラーフィルタアレイ920が設計されている。従って、視域角は、図4に示すように、点光源P9-Nから見た基本単位ANの見渡し角θで規定される。視域角から外れた位置から画面を斜めに見ると、意図しない三次元画像が観察されてしまう(これを「ニセ像」と呼んでいる)。様々な角度から三次元画像を観察するためには、視域角は大きい方が好ましい。
【0009】
ところが、図4に示す従来の三次元画像表示装置では、上記の飛び出し距離、解像度、視域角は互いにトレードオフの関係を有していた。
【0010】
例えば、図5(A)に示す三次元画像表示装置において、飛び出し距離を大きくするためには、図5(B)に示すように点光源アレイ910と光学フィルタアレイ920との間の距離を大きくすればよい。ところが、この場合は、点光源から見た基本単位の見渡し角θが小さくなるので視域角が小さくなるという問題が生じる。
【0011】
飛び出し距離を大きく保ったままで、視域角を大きくするためには、図5(C)に示すように、点光源アレイ910上の点光源のピッチを大きくすればよい。ところが、この場合は、解像度が低下するという問題生じる。
【0012】
本発明は、上記の従来の三次元画像表示装置の問題を解決し、高解像度且つ広視域角でありながら、飛び出し感の大きな三次元画像を表示することができる三次元画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の三次元画像表示装置は、三次元画像を表示する三次元画像表示装置であって、複数の点を有する第1層と、複数の点を有し、前記第1層に対向する第2層と、前記第1層及び前記第2層とは別に設けられた変調部材とを備える。前記三次元画像は、複数の光線が交差した交点により形成される。前記複数の光線のそれぞれの向き及び色は、前記第1層が有する前記複数の点のうちの一点と前記第2層が有する前記複数の点のうちの一点とにより特定される。前記変調部材は、前記第1層が有する前記複数の点と前記第2層が有する前記複数の点とを通る複数の光路のうちの一部の光路に沿った光線の強度及び色のうちの少なくとも一方を変調する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1層が有する複数の点と第2層が有する複数の点とを通る複数の光路のうちの一部の光路に沿った光線の強度及び色のうちの少なくとも一方を変調する変調部材を、第1層及び第2層とは別に設けたことにより、高解像度と広視域角とでありながら、飛び出し感の大きな三次元画像を表示することができる三次元画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の上記の三次元画像表示装置において、前記第1層が有する前記複数の点は、白色光を発し、前記第2層は、前記白色光を色づけして通過させるカラーフィルタアレイであることが好ましい。あるいは、前記第1層が有する前記複数の点は、所定の色光を発し、前記第2層は、前記所定の色光の通過を制御するピンホールアレイ板であることが好ましい。これらにより、簡単な構成で本発明の三次元画像表示装置を実現できる。
【0016】
あるいは、前記第1層が有する前記複数の点は、所定の色光を発し、前記第2層は、前記所定の色光を屈折又は回折するレンズアレイ板であっても良い。これにより、更に広視域角の三次元画像表示装置を実現できる。
【0017】
前記変調部材は、前記一部の光路に沿った光線の通過を制御しても良い。例えば、光線を通過/非通過に二値的に制御することにより、点像を所望する複数の光線のみによって形成することができるので、点像の色を特定することができ、例えば見る方向によって点像の色が変化するなどの問題を防止できる。また、例えば、光線の通過を多段階に制御することにより、所望する明るさを有する点像を容易に形成することができる。
【0018】
前記変調部材は、前記一部の光路に沿った光線を色づけして通過させても良い。これにより、点像の色の特定を、変調部材にも担わせることができる。
【0019】
前記変調部材が、前記第1層と前記第2層との間に設けられていることが好ましい。これにより、第1層と第2層との間に必然的に発生する隙間を有効利用できるので、三次元画像表示装置の全体厚みを薄くすることができる。
【0020】
前記第1層と前記第2層と前記変調部材とのうち少なくとも1つが曲面を有していても良い。これにより、例えば電灯のシェードとして本発明の三次元画像表示装置を用いたり、街頭の円筒面などに沿って三次元画像表示装置を取り付けたりするなど用途範囲が拡大する。
【0021】
図1は、本発明の三次元画像表示装置の一例を概念的に示した斜視図である。この三次元画像表示装置は、互いに対向して配置された第1層1、変調部材3、第2層2をこの順に備える。第1層1及び第2層2上にはそれぞれ複数の点が配置されている。三次元画像5を構成する点像Rは、光線L1と光線L2との交点上に形成される。光線L1の向き及び色は第1層1上の点P1と第2層2上の点Q1とにより特定され、光線L2の向き及び色は第1層1上の点P2と第2層2上の点Q2とにより特定される。同様にして複数の点像が特定され、これら複数の点像によって三次元画像5が表示される。変調部材3は、第1層1上の点と第2層2上の点とを通る光路上に配置され、光路に沿った光線の強度及び色のうちの少なくとも一方を変調する。観察者は、図1の紙面の上方から三次元画像5を観察する。
【0022】
以下に、このように構成された本発明の三次元画像表示装置の具体的な実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1に係る三次元画像表示装置の概略構成を示した断面図である。本実施の形態の三次元画像表示装置は、互いに対向して配置された点光源アレイ(第1層)110及び光学フィルタアレイ(第2層)120と、これらの間に配置された変調部材130とを備える。点光源アレイ110上には、それぞれが白色光を発する複数の点光源が格子点状に配置されている。点光源アレイ110の各点光源は無数の光線を変調部材130に向かって放射する。図2のP1-1〜P1-12は点光源を示す。光学フィルタアレイ120の有効領域は複数の微小な画素に碁盤目状に分割され、各画素は、入射する白色光が所望する色に色づけされて通過するように着色されている。変調部材130は複数の微小領域に碁盤目状に分割され、各微小領域は、光を透過又は遮断するように透明又は黒色に形成されている。点光源アレイ110の点光源の配置ピッチに比べて、光学フィルタアレイ120の画素の配置ピッチは小さく、変調部材130の微小領域の配置ピッチは更に小さい。
【0024】
図4に示した従来の三次元画像表示装置では、点光源アレイ910の1つの点光源P9-Nに対して、点光源と同一ピッチで配置された光学フィルタアレイ920の1つの基本単位ANが割り当てられていた。これに対して、本実施の形態1の三次元画像表示装置では、点光源アレイ110の1つの点光源に対して、光学フィルタアレイ120の1つの基本単位を割り当てるという概念が存在しない。
【0025】
例えば、図2に示す点像R1-1は、点光源アレイ110上の点光源P1-1,P1-5,P1-8からそれぞれ発せられた光線L1-1,L1-5,L1-8の交点上に形成される。変調部材130上の光線L1-1,L1-5,L1-8が通過する点を含む微小領域S1-1,S1-5,S1-8は透明である。光学フィルタアレイ120上の光線L1-1,L1-5,L1-8が通過する点を含む画素Q1-1,Q1-5,Q1-8は所望する同一色(例えば赤色)に着色されている。この結果、点像R1-1の色を特定することができる。
【0026】
このとき、例えば点光源P1-6から発せられた光線L1-60が光学フィルタアレイ120上の画素Q1-7を通過した後、点像R1-1を通過すると、点像R1-1に画素Q1-7の色(例えば青色)が重畳されるので、所望する色の点像R1-1を形成できない。そこで、点光源P1-6と画素Q1-7とを通り点像R1-1に至る光路が交差する変調部材130上の点を含む微小領域S1-60は、光線L1-60の通過を遮断するように黒色に塗られている。
【0027】
一方、上記点光源P1-6から発せられた光線L1-6は、点光源P1-10から発せられた光線L1-10と交差し、この交点上に点像R1-2が形成される。変調部材130上の光線L1-6,L1-10が通過する点を含む微小領域S1-6,S1-10は透明である。光学フィルタアレイ120上の光線L1-6,L1-10が通過する点を含む画素Q1-6,Q1-10は所望する同一色(例えば緑色)に着色されている。この結果、点像R1-2の色を特定することができる。
【0028】
また、上記画素Q1-7を通過する点光源P1-7から発せられた光線L1-7は、点光源P1-4から発せられた光線L1-4と交差し、この交点上に点像R1-3を形成する。変調部材130上の光線L1-7,L1-4が通過する点を含む微小領域S1-7,S1-4は透明である。光学フィルタアレイ120上の光線L1-7,L1-4が通過する点を含む画素Q1-7,Q1-4は所望する同一色(例えば青色)に着色されている。この結果、点像R1-3の色を特定することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態1では、1つの点像を形成する複数の光線のそれぞれの向きは点光源アレイ110上の1つの点光源と光学フィルタアレイ120上の1つの画素とによって特定され、1つの点像を形成する複数の光線のそれぞれの色はその光線が通過する光学フィルタアレイ120上の1つの画素によって特定される。そして、1つの点像が所望する複数の光線のみによって形成され、且つ、この点像を不所望な光線が通過しないように、変調部材130は、点光源アレイ110の各点光源から発せられた光線群のうち、光学フィルタアレイ120の所望する画素に向かう光線のみを通過させ、これ以外の光線を遮断する。即ち、点光源アレイ110上の複数の点光源(例えばM個の点光源)と光学フィルタアレイ120上の複数の画素(例えばN個の画素)とを組み合わせることで得られる複数の光路(M×N本の光路)のうちの一部を変調部材130が遮断する。
【0030】
このような変調部材130を用いることにより、図4に示した従来の三次元画像表示装置のように、1つの点光源P9-Nに対して1つの基本単位ANを割り当てる必要がなくなる。従って、従来の三次元画像表示装置のように、視域角が点光源P9-Nから見た基本単位ANの見渡し角θに依存することもない。本実施の形態1では、従来の三次元画像表示装置の問題であった、飛び出し距離、解像度、視域角間のトレードオフの関係が解消され、飛び出し距離、解像度、視域角を互いに独立して設定することが可能となる。例えば、視域角は、変調部材130の構成を変更することにより自由に設定することができる。従って、点光源及び画素の配置ピッチ、及び点光源アレイ110と光学フィルタアレイ120との間の距離を従来と同じにしたままで、解像度と飛び出し感とが低下することなく、視域角を従来に比べて拡大することができる。
【0031】
三次元画像表示装置の視域角は、点像を形成する光線の光学フィルタアレイ120の表面に対する出射角(ここで、出射角とは、光学フィルタアレイ120の表面の法線に対する出射光線がなす角度である。)が大きくなればなるほど大きくなる。従って、点光源から発せられた光線が、この点光源から遠く離れた画素を通過して点像を形成するように、光学フィルタアレイ120及び変調部材130を設計すれば、三次元画像表示装置の表示面にほぼ沿うほどに大きな視域角を実現することが可能である。
【0032】
図2では、紙面の上下方向に視域角が拡大される原理を示したが、この原理を紙面の垂直方向に同様に適用することにより、紙面の垂直方向に視域角を同時に拡大させることができる。
【0033】
上記の実施の形態では、変調部材130の各微小領域が透明及び黒色のいずれか一方のみに形成されている場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、微小領域が透明及び黒色以外の所望の光線透過率を有していても良い。これにより、微小領域を通過する光線の強度を変調することができるので、例えば所望する明るさを有する点像を容易に形成することができる。
【0034】
また、変調部材130の各微小領域を所望する色に着色して、微小領域を通過する光線の色を変調しても良い。これにより、点像を形成する光線の色の特定を、光学フィルタアレイ120のみならず、変調部材130にも担わせることができる。
【0035】
更に、変調部材130の各微小領域を所望する色に着色し、且つ、その光線透過率を所望する値に設定しても良い。これにより、微小領域を通過する光線の色及び強度を変調することができる。
【0036】
上記の実施の形態では、静止画を表示する例を示したが、動画を表示することも可能である。例えば、変調部材130として透過型液晶パネルを用いて、その各画素(微小領域)を通過する光線の強度を経時的に変化させればよい。更に、光学フィルタアレイ120として、各画素が赤、緑、青の三原色の光をそれぞれ通過させる3つのカラーフィルターが設けられた三種のサブピクセルからなる透過型液晶パネルを用い、各サブピクセルを通過する光線の強度を経時的に変化させても良い。
【0037】
点光源アレイ110としては、白色光を発する面状発光体の前面に、光線を通過する複数のピンホールが形成されたピンホールアレイを用いることもできる。
【0038】
図2では、変調部材130を、点光源アレイ110と光学フィルタアレイ120との間に配置したが、光学フィルタアレイ120に対して点光源アレイ110とは反対側に配置しても良い。しかしながら、図2のように構成することで、三次元画像表示装置の全体の厚みを薄くすることができる。理由は以下の通りである。本実施の形態1の三次元画像表示装置では、視域角を拡大させるためには点光源から発せられた光線がその正面以外の方向に位置する画素に入射する必要があるので、点光源アレイ110と光学フィルタアレイ120との間に隙間を設ける必要がある。従って、この隙間内に変調部材130を収めることで、隙間を有効に活用でき、装置の全体厚みを薄くすることができる。
【0039】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る三次元画像表示装置の概略構成を示した断面図である。本実施の形態の三次元画像表示装置は、互いに対向して配置された液晶パネル(第1層)210及びピンホールアレイ(第2層)220と、これらの間に配置された変調部材230とを備える。液晶パネル210のピンホールアレイ220とは反対側の面には、白色光を発するバックライト211が配置されている。液晶パネル210の有効領域は複数の微小な画素に碁盤目状に分割され、各画素は、赤、緑、青の三原色の光をそれぞれ通過させる3つのカラーフィルタが設けられた三種のサブピクセルからなる。バックライト211から発せられた白色光の透過率をサブピクセルごとに制御することにより、液晶パネル210の各画素は所望する色の無数の光線を変調部材230に向かって放射する。ピンホールアレイ220上には、光線を通過させる複数のピンホールが格子点状に配置されている。図3のP2-1〜P2-12はピンホールを示す。変調部材230は複数の微小領域に碁盤目状に分割され、各微小領域は、光を透過又は遮断するように透明又は黒色に形成されている。ピンホールアレイ220のピンホールの配置ピッチに比べて、液晶パネル210の画素の配置ピッチは小さく、変調部材230の微小領域の配置ピッチは更に小さい。
【0040】
例えば、図3に示す点像R2-1は、ピンホールアレイ220上のピンホールP2-2,P2-5,P2-7を通過した光線L2-2,L2-5,L2-7の交点上に形成される。変調部材230上の光線L2-2,L2-5,L2-7が通過する点を含む微小領域S2-2,S2-5,S2-7は透明である。光線L2-2,L2-5,L2-7を出射する液晶パネル210上の画素Q2-2,Q2-5,Q2-7が所望する同一色(例えば赤色)を発するように液晶パネル210を制御する。この結果、点像R2-1の色を特定することができる。
【0041】
このとき、例えば画素Q2-8から発せられた光線L2-80がピンホールアレイ220上のピンホールP2-6を通過した後、点像R2-1を通過すると、点像R2-1に画素Q2-8の色(例えば青色)が重畳されるので、所望する色の点像R2-1を形成できない。そこで、画素Q2-8とピンホールP2-6とを通り点像R2-1に至る光路が交差する変調部材230上の点を含む微小領域S2-8は、光線L2-80の通過を遮断するように黒色に塗られている。
【0042】
一方、上記画素Q2-8から発せられピンホールP2-8を通過した光線L2-8は、画素Q2-10から発せられピンホールP2-10を通過した光線L2-10と交差し、この交点上に点像R2-2が形成される。変調部材230上の光線L2-8,L2-10が通過する点を含む微小領域S2-8,S2-10は透明である。光線L2-8,L2-10を出射する液晶パネル210上の画素Q2-8,Q2-10が所望する同一色(例えば青色)を発するように液晶パネル210を制御する。この結果、点像R2-2の色を特定することができる。
【0043】
また、画素Q2-6から発せられ上記ピンホールP2-6を通過した光線L2-6は、画素Q2-3から発せられピンホールP2-3を通過した光線L2-3との交点上に点像R2-3を形成する。変調部材230上の光線L2-6,L2-3が通過する点を含む微小領域S2-6,S2-3は透明である。光線L2-6,L2-3を出射する液晶パネル210上の画素Q2-6,Q2-3が所望する同一色(例えば緑色)を発するように液晶パネル210を制御する。この結果、点像R2-3の色を特定することができる。
【0044】
以上のように、本実施の形態2では、1つの点像を形成する複数の光線のそれぞれの向きは液晶パネル210上の1つの画素とピンホールアレイ220上の1つのピンホールとによって特定され、1つの点像を形成する複数の光線のそれぞれの色はその光線を発する液晶パネル210上の1つの画素によって特定される。そして、1つの点像が所望する複数の光線のみによって形成され、且つ、この点像を不所望な光線が通過しないように、変調部材230は、液晶パネル210の各画素から発せられた光線群のうち、ピンホールアレイ220の所望するピンホールに向かう光線のみを通過させ、これ以外の光線を遮断する。即ち、液晶パネル210上の複数の画素(例えばM個の画素)とピンホールアレイ220上の複数のピンホール(例えばN個のピンホール)とを組み合わせることで得られる複数の光路(M×N本の光路)のうちの一部を変調部材230が遮断する。
【0045】
変調部材230を設けない場合、所望する複数の光線によって形成された点像を、液晶パネル210の意図しない画素から発せられ、ピンホールアレイ220の意図しないピンホールを通過した不要な光線が通過してしまう可能性がある。これを防止するためには以下のような対策が必要である。例えば、1つのピンホールに対して、液晶パネル210上のこのピンホールの正面近傍に配置された複数の画素からなる画素群を割り当てる。そして、観察者は、各ピンホールを介して、そのピンホールに割り当てられた画素群からの光線のみを観察し、そのピンホールに割り当てられていない画素からの光線は観察しないとの前提で、液晶パネル210を駆動する。このような三次元画像表示装置の視域角は、ピンホールから見た、このピンホールに割り当てられた画素群の見渡し角で規定される。
【0046】
変調部材230を設けない上記の三次元画像表示装置において、飛び出し距離を大きくするためには、液晶パネル210とピンホールアレイ220との間の距離を大きくすればよい。ところが、この場合、ピンホールから見た、このピンホールに割り当てられた画素群の見渡し角が小さくなるので視域角が小さくなるという問題が生じる。
【0047】
飛び出し距離を大きく保ったままで、視域角を大きくするためには、ピンホールアレイ上のピンホールのピッチを大きくすればよい。ところが、この場合は、解像度が低下するという問題が生じる。
【0048】
このように、変調部材230を設けない上記の三次元画像表示装置では、図5(A)〜図5(C)で説明した従来の三次元画像表示装置と同様に、像度、視域角、飛び出し距離は互いにトレードオフの関係を有している。
【0049】
これに対して、変調部材230を用いる本実施の形態2にかかる三次元画像表示装置では、1つのピンホールに対して1つの画素群を割り当てる必要がなくなる。従って、変調部材230を用いない上記の三次元画像表示装置のように、視域角がピンホールから見た、このピンホールに割り当てられた画素群の見渡し角に依存することもない。本実施の形態2では、上述した飛び出し距離、解像度、視域角間のトレードオフの関係が解消され、飛び出し距離、解像度、視域角を互いに独立して設定することが可能となる。例えば、視域角は、変調部材230の構成を変更することにより自由に設定することができる。従って、ピンホール及び画素の配置ピッチ、及び液晶パネル210とピンホールアレイ220との間の距離を同じにしたままで、解像度と飛び出し感とが低下することなく、視域角を拡大することができる。
【0050】
三次元画像表示装置の視域角は、点像を形成する光線のピンホールアレイ220の表面に対する出射角(ここで、出射角とは、ピンホールアレイ220の表面の法線に対する出射光線がなす角度である。)が大きくなればなるほど大きくなる。従って、液晶パネル210の画素から発せられた光線が、この画素から遠く離れたピンホールを通過して点像を形成するように、液晶パネル210の表示及び変調部材230を設計すれば、三次元画像表示装置の表示面にほぼ沿うほどに大きな視域角を実現することが可能である。
【0051】
図3では、紙面の上下方向に視域角が拡大される原理を示したが、この原理を紙面の垂直方向に同様に適用することにより、紙面の垂直方向に視域角を同時に拡大させることができる。
【0052】
上記の実施の形態では、変調部材230の各微小領域が透明及び黒色のいずれか一方のみに形成されている場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、微小領域が透明及び黒色以外の所望の光線透過率を有していても良い。これにより、微小領域を通過する光線の強度を変調することができるので、例えば所望する明るさを有する点像を容易に形成することができる。
【0053】
また、変調部材230の各微小領域を所望する色に着色して、微小領域を通過する光線の色を変調しても良い。これにより、点像を形成する光線の色の特定を、液晶パネル210のみならず、変調部材230にも担わせることができる。
【0054】
更に、変調部材230の各微小領域を所望する色に着色し、且つ、その光線透過率を所望する値に設定しても良い。これにより、微小領域を通過する光線の色及び強度を変調することができる。
【0055】
液晶パネル210に代えて、それぞれが入射する光が所望する色に色づけされて通過するように着色された複数の画素が碁盤目状に配置された光学フィルタアレイを用いても良い。
【0056】
上記の実施の形態では、静止画を表示する例を示したが、動画を表示することも可能である。例えば、液晶パネル210をサブピクセル単位で駆動することにより、その各画素を出射する光線の色及び強度を経時的に変化させればよい。このとき、変調部材230として透過型液晶パネルを用い、液晶パネル210の駆動と同期して変調部材230を構成する透過型液晶パネルの各画素(微小領域)を通過する光線の強度を経時的に変化させても良い。
【0057】
上記の実施の形態では、各画素が所定の色光を発するデバイスとして液晶パネル210及びバックライト211を用いたが、本発明はこれに限定されず、例えばプラズマディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの公知の自発光型ディスプレイを用いることもできる。この場合も、静止画及び動画のいずれをも表示可能な三次元画像表示装置を構成できる。
【0058】
図3では、変調部材230を、液晶パネル210とピンホールアレイ220との間に配置したが、ピンホールアレイ220に対して液晶パネル210とは反対側に配置しても良い。しかしながら、図3のように構成することで、三次元画像表示装置の全体の厚みを薄くすることができる。理由は以下の通りである。本実施の形態2の三次元画像表示装置では、視域角を拡大させるためには液晶パネル210の画素から発せられた光線がその正面以外の方向に位置するピンホールに入射する必要があるので、液晶パネル210とピンホールアレイ220との間に隙間を設ける必要がある。従って、この隙間内に変調部材230を収めることで、隙間を有効に活用でき、装置の全体厚みを薄くすることができる。
【0059】
(実施の形態3)
上記の実施の形態2において、ピンホールアレイ220に代えてレンズアレイ板を用いることができる。ここで、レンズアレイ板としては、一平面上に複数の円筒面状(略かまぼこ状)のレンチキュラレンズが一方向に隣接して形成された公知のレンチキュラレンズシートや、一平面上に複数の凸面状のマイクロレンズが縦横方向に隣接して形成された公知のマイクロレンズアレイシートを用いることができる。更には、光線を屈折させるレンズではなく、光線を回折させる回折格子形状が表面に形成された複数の回折レンズが隣接して形成された公知の回折レンズアレイ板であっても良い。更に、屈折レンズ作用と回折レンズ作用とを併せ持つ複数の複合レンズが隣接して形成されたレンズアレイ板であっても良い。
【0060】
図示を省略するが、このような本実施の形態の三次元画像表示装置では、液晶パネル210の各画素から放射された所望する色の光線は、変調部材230で変調され、レンズアレイ板により屈折又は回折されて所定の方向に向かって出射する。点像を形成する光線の光路が、本実施の形態3はレンズアレイ板によって曲げられる点で、一直線である実施の形態2と異なる。即ち、本実施の形態3では、視域角の拡大作用をレンズアレイ板にも担わせる点で、実施の形態2と異なる。
【0061】
本実施の形態3では、点像を形成する光線の向きを特定するレンズアレイ板(第2層)上の点は、この光線のレンズアレイ板に対する入射点又は出射点と考えることができる。
【0062】
本実施の形態3は、上記以外は実施の形態2と同様であり、実施の形態2の説明がそのまま又は自明の変更が適宜加えられて適用される。
【0063】
上記の実施の形態1〜3では、第1層、第2層、及び変調部材が互いに平行に配置されていたが、本発明はこれに限定されず、これらのうちの少なくとも1つが他の1つに対して傾斜していても良い。
【0064】
上記の実施の形態1〜3では、第1層、第2層、及び変調部材のいずれもが平面に沿っている例を示したが、本発明はこれに限定されず、第1層、第2層、及び変調部材の少なくとも1つが曲面を有していても良い。これにより、本発明の三次元画像表示装置を、例えば間接照明を行う電灯のシェードとして利用することができる。この場合、電灯を光源として、所望する形状のシェード上に三次元画像を表示させることができる。あるいは、本発明の三次元画像表示装置を、円筒面状に湾曲させて、街頭の円柱面に密着して取り付けられる広告用ディスプレイとして利用することもできる。
【0065】
上記の実施の形態1〜3では、表示画面の手前(観察者側)に三次元画像を表示する例を示したが、本発明は、表示画面の奥に三次元画像を表示する三次元画像表示装置に適用することもできる。
【0066】
本発明の三次元画像表示装置は、光線再生法を利用して三次元画像を表示する。この表示方式では、表示画面近傍では、点像を形成する光線の数が少なくなり、実質的に三次元画像を表示することができないという問題が生じる可能性がある。この問題を解決するために、表示画面近傍では公知の多眼パララックス法により立体画像を表示させても良い。即ち、表示画面から離れた領域では上述した光線再生法により自然な三次元画像を表示し、表示画面の近傍の領域では多眼パララックス法により立体画像を表示し、これらの間の領域では両表示方式を混在させることにより、表示画面から遠い位置から近傍に至るまでの広い範囲にわたってシームレスに違和感のない画像を表示させることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の利用分野は特に制限はなく、例えば、立体テレビ、アミューズメント、バーチャルリアリティ、医療などの従来の三次元画像表示装置が用いられていた公知の用途の他、商品ディスプレイ、携帯端末、照明機器、室内装飾、広告看板など広範囲の用途に利用することができる。特に、容易に広視域角を実現できる特徴を生かして、視点位置が広範囲に変化する観察者や、同時に様々な角度から観察する多くの観察者に対して高精細で飛び出し感のある三次元画像を表示させたい場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明の三次元画像表示装置の一例を概念的に示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る三次元画像表示装置の概略構成を示した断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2に係る三次元画像表示装置の概略構成を示した断面図である。
【図4】図4は、従来の光線再生法による三次元画像を表示する原理を説明する断面図である。
【図5】図5(A)〜図5(C)は、従来の三次元画像表示装置において、解像度、視域角、飛び出し距離の関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0069】
1 第1層
2 第2層
3 変調部材
5 三次元画像
110 点光源アレイ(第1層)
120 光学フィルタアレイ(第2層)
130 変調部材
210 液晶パネル(第1層)
211 バックライト
220 ピンホールアレイ(第2層)
230 変調部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元画像を表示する三次元画像表示装置であって、
複数の点を有する第1層と、
複数の点を有し、前記第1層に対向する第2層と、
前記第1層及び前記第2層とは別に設けられた変調部材と
を備え、
前記三次元画像は、複数の光線が交差した交点により形成され、
前記複数の光線のそれぞれの向き及び色は、前記第1層が有する前記複数の点のうちの一点と前記第2層が有する前記複数の点のうちの一点とにより特定され、
前記変調部材は、前記第1層が有する前記複数の点と前記第2層が有する前記複数の点とを通る複数の光路のうちの一部の光路に沿った光線の強度及び色のうちの少なくとも一方を変調することを特徴とする三次元画像表示装置。
【請求項2】
前記第1層が有する前記複数の点は、白色光を発し、
前記第2層は、前記白色光を色づけして通過させるカラーフィルタアレイである請求項1に記載の三次元画像表示装置。
【請求項3】
前記第1層が有する前記複数の点は、所定の色光を発し、
前記第2層は、前記所定の色光の通過を制御するピンホールアレイ板である請求項1に記載の三次元画像表示装置。
【請求項4】
前記第1層が有する前記複数の点は、所定の色光を発し、
前記第2層は、前記所定の色光を屈折又は回折するレンズアレイ板である請求項1に記載の三次元画像表示装置。
【請求項5】
前記変調部材は、前記一部の光路に沿った光線の通過を制御する請求項1に記載の三次元画像表示装置。
【請求項6】
前記変調部材は、前記一部の光路に沿った光線を色づけして通過させる請求項1に記載の三次元画像表示装置。
【請求項7】
前記変調部材が、前記第1層と前記第2層との間に設けられている請求項1に記載の三次元画像表示装置。
【請求項8】
前記第1層と前記第2層と前記変調部材とのうち少なくとも1つが曲面を有する請求項1に記載の三次元画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−265309(P2009−265309A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113700(P2008−113700)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】