説明

三次元超音波画像を生成表示する超音波診断装置

【課題】ボクセル値の影響を受けずに、各部位の奥行きを正しく認識できる三次元超音波画像を生成する。
【解決手段】ボリュームデータに基づいて三次元超音波画像を生成して表示する超音波診断装置において、視線上のボリュームデータの各ボクセルのボクセル値とボクセル値に応じて設定された不透明度に基づいて、ボリュームレンダリングしてボクセル値投影画像データを生成する(202)。一方、視線上のボリュームデータの各ボクセルの投影面からの距離と前記不透明度に基づいてボリュームレンダリングして距離投影画像データを生成する(203)。そして、ボクセル値投影画像データと距離投影画像データに基づいて色調変換した三次元超音波画像を生成することにより(204)、ボクセル値の影響を受けずに、各部位の奥行きを正しく認識できる画像が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元超音波画像を生成表示する超音波診断装置に係り、具体的には視点又は投影面からの距離情報が付与された断層画像、弾性画像、カラー血流画像、又はコントラスト画像などの三次元超音波画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、一般に、超音波探触子により被検体内部の断層面(スキャン面)に超音波を走査し、断層面の生体組織の各部位から還ってくる反射エコー信号を受信処理してディジタル化し、断層面のフレームデータを取得して、超音波断層像を生成して画像表示する機能を備えている。さらに、互いに間隔を有する複数のスキャン面のフレームデータを取得して断層画像のボリュームデータを生成し、ボリュームレンダリングにより三次元断層画像を生成して表示する機能を備えたものがある。また、同様にして弾性画像、カラー血流画像、又はコントラスト画像などのボリュームデータを生成し、ボリュームレンダリングにより三次元弾性画像を生成して画像表示する機能を備えたものが知られている。
【0003】
このように、ボリュームレンダリングにより生成される断層画像などの三次元超音波画像は、視点から見えるボリュームデータの各ボクセルのスカラ値(以下、ボクセル値という。)を投影面に投影して得られる三次元様の超音波画像である。ここで、ボクセル値とは、例えば、断層画像の輝度値、弾性画像の弾性値、カラー血流画像の色相等の血流情報、又はコントラスト画像のコントラスト値である。例えば、断層画像の場合は、視線上のボリュームデータの各ボクセルの輝度値をボリュームレンダリングして、輝度によって濃淡をつけた二次元の投影画像である。また、輝度値に予め設定された不透明度及び陰影の重み付けを行ってボリュームレンダリングすることにより、立体感が出るようにしている。しかし、このような投影画像であっても、各部位の奥行きの程度を読み取ることは難しい。同様に、弾性画像の場合も、輝度値を弾性値に置き換えてボリュームレンダリングして、弾性値に応じて色相付けした二次元の投影画像であるから、各部位の奥行きの程度を読み取ることは難しい。カラー血流画像又はコントラスト画像についても同様である。
【0004】
これに対し、特許文献1に、周知のLevoy合成式を変形した式を用いてボリュームレンダリング処理して、投影画像の各部位の奥行きの程度を読み取れるようにすることが提案されている。すなわち、まず、式(1)に示すように、視線上のN個のボクセルについてボリュームレンダリングによりボクセルスカラ値(例えば、輝度値)Cの投影画像のピクセルデータSを求める。
【数1】

次に、式(2)に示すように、視線上のN個のボクセルについて、ボリュームレンダリングにより、ボクセルの輝度値Cを深さiで重み付けした投影画像データを求め、これを式(1)で除して視線上の二乗平均平方根(RMS)深さを求める。
【数2】

そして、輝度の投影画像データとRMS深さに対応付けて設定された二次元カラーテーブルを参照してカラーリングすることにより、深度に関連付けた色情報が付与された投影画像の三次元超音波画像を生成することができる。この三次元超音波画像によれば、画像上の各部位の奥行きの程度を読み取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−539164公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1によれば、式(2)に示すように、深さの情報であるRMS深さは、輝度の関数になっていることから、輝度が低く不透明度が大きいボクセルについては、RMS深さが低い寄与率で評価されることになる。つまり、RMS深さに輝度が関係することから、正しく深度が評価されない場合がある。同様に、ボクセル値が弾性値、血流情報又はコントラスト値の場合も一般に輝度の場合と同様に処理されるから、RMS深さがボクセル値の関数になり、正しく深度が評価されないことがある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ボクセル値の影響を受けずに、各部位の奥行きを正しく認識できる三次元超音波画像を生成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ボリュームデータに基づいて三次元超音波画像を生成して表示する超音波診断装置において、視線上のボリュームデータの各ボクセルのボクセル値に基づいてボリュームレンダリングしてボクセル値投影画像データを生成し、視線上のボリュームデータの各ボクセルの投影面からの距離に基づいてボリュームレンダリングして距離投影画像データを生成し、前記ボクセル値投影画像データと前記距離投影画像データに基づいて前記三次元超音波画像を生成して表示することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ボクセル値のボリュームレンダリングとは切り離して、距離に基づいてボリュームレンダリングして距離投影画像データを生成し、ボクセル値投影画像データと距離投影画像データのそれぞれに基づいて、例えば色調変換して三次元超音波画像を生成している。そのため、ボクセル値の影響を受けずに、各部位の奥行きを正しく認識できる三次元超音波画像を生成して表示することができる。その結果、検者等の観察者は、三次元超音波画像上の各部位の奥行きの程度を正しく読み取ることができる。
【0010】
上記の場合において、前記ボクセル値投影画像データは、各ボクセルのボクセル値に応じて設定される不透明度で重み付けしてボリュームレンダリングにより生成され、前記距離投影画像データは、前記不透明度で重み付けしてボリュームレンダリングにより生成されることが好ましい。これによれば、ボクセル値(輝度、弾性値、血流情報又はコントラスト値)が低く不透明度が大きいボクセルの場合でも、不透明度に応じて距離が評価されるから、ボクセル値の影響を抑えて適切な深度情報が付加された三次元超音波画像を生成することができる。
【0011】
また、三次元超音波画像は、前記ボクセル値投影画像データと前記距離投影画像データのそれぞれに基づいて色調変換されることが好ましい。この場合において、さらに、前記ボリュームデータに基づいて所望の断面画像を生成して前記三次元超音波画像に並べて表示する機能を備え、前記断面画像は、前記投影面からの距離に応じて色調変換(カラーコード変換)されることが好ましい。これによれば、三次元超音波画像と断面画像とを対比することにより、三次元超音波画像の各部位の奥行きを正しく認識することができる。カラーコード変換の方法としては、よく用いられるように2次元カラーマップをボクセル値投影画像データと距離投影画像データを用いて参照するようにしてもよい。また、ボクセル値投影画像データから明度を、距離投影画像データから色相を決定し、例えばHSV−RGB変換、つまり[(輝度、色相、鮮やかさ)−(赤、緑、青)]変換により決定してもよい。この場合、鮮やかさについてはコントロールパネルより操作者が任意に設定することができ、あるいはシステムの固有値として設定してもよい。さらに、鮮やかさは、ボクセル輝度もしくは距離により算定するようにすることも可能である。
【0012】
また、上記いずれかの超音波診断装置において、前記投影面の位置と、前記投影面からの距離を算出する対象範囲を入力設定可能に形成することができる。これにより、検者が関心を有する生体組織の部位の奥行き等を的確に認識することができる。また、色調変換する距離の範囲を入力設定可能に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボクセル値の影響を受けずに、各部位の奥行きを正しく認識できる三次元超音波画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の超音波診断装置の一実施形態のブロック構成図である。
【図2】本発明の特徴に係るボリュームレンダリング部の実施形態1の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】不透明度テーブルの一例を示す図である。
【図4】色調変換に用いる二次元RGBマップの一例を示す概念図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る断面画像作成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態1による胎児の三次元超音波画像と断面画像の表示例を示す図である。
【図7】図6の本発明の表示例と対比するための従来技術による胎児の三次元超音波画像と断面画像の表示例を示す図である。
【図8】図6の本発明の実施形態1による表示例の変形例を示す図である。
【図9】本発明の特徴に係るボリュームレンダリング部の実施形態2の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態2に係る断面画像作成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態3に係る循環器の断面画像と設定深度区間の概念を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態3による循環器の三次元超音波画像と断面画像の表示例を示す図である。
【図13】図12の本発明の表示例と対比するための従来技術による循環器の三次元超音波画像と断面画像の表示例を示す図である。
【図14】本発明の実施形態3による循環器の三次元超音波画像と断面画像の他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
本発明を適用してなる超音波診断装置の実施形態1について図を用いて説明する。本実施形態は、断層像のボリュームデータに基づいて三次元超音波像を生成する例であるが、本発明はこれに限られず、弾性像、カラー血流画像又はコントラスト画像のボリュームデータに基づいて三次元超音波像を生成する超音波診断装置にも適用することができる。
【0016】
図1に示すように、実施形態1の超音波診断装置001は、被検体との間で超音波を送受信する二次元走査可能な探触子002と、探触子002に超音波信号を送信する送信部011と、探触子002により受信された反射エコー信号を受信処理する受信部012を備えて構成されている。また、送信部011と受信部012は、超音波送受信制御部013により制御されるようになっている。受信部012で受信処理された反射エコー信号は、整相加算部014において整相加算され、RF信号に変換されて画像処理部015に出力される。画像処理部015は、入力されるRF信号に対して対数圧縮、フィルタ処理、画像処理を行ってRF信号フレームデータからなる断層画像データを生成し、磁気ディスク装置及びRAMとからなる記憶装置に蓄積するようになっている。
【0017】
三次元座標変換部016は、画像処理部015から出力される複数の断層画像データに対して直交三次元の座標変換を行ってボリュームデータを作成する。すなわち、探触子002を操作して取得される互いに間隔を有する複数のスキャン面のRF信号フレームデータを入力して、三次元座標変換に変換することにより、複数枚の2次元断層像データから構成されるボリュームデータを生成して記憶する。ボリュームレンダリング部017は、三次元座標変換部016に記憶されたボリュームデータを用いて、例えば、視線方向に輝度と不透明度の積算値の積和演算により二次元の投影画像である三次元超音波像を作成するようになっている。一方、断面画像作成部018は、画像処理部015で処理された断層画像データを画像処理部015の記憶装置から読み出して二次元座標変換を行うことにより、任意の角度における断面画像を作成するようになっている。
【0018】
ボリュームレンダリング部017と断面画像作成部018にて作成される三次元超音波像と断面画像は、画像合成部019に入力され、画像合成部019はそれらの画像を合成して画像表示器020に表示するようになっている。画像表示器020は、図示していない表示制御部を備えており、画像合成部019で作成された合成画像を入力し超音波画像として表示する。画像表示器020は、例えばCRTモニタ、液晶モニタを用いて構成できる。さらに、超音波診断装置001には、制御部003とコントロールパネル004が備えられ、制御部003は上述した各構成要素を制御するようになっている。また、制御部003にはコントロールパネル004から必要に応じて指示等が入力されるようになっている。具体的には、制御部003は、ユーザインターフェースを有する制御用コンピュータシステムより構成されている。そして、ユーザインターフェースから入力される指令及び情報等に従って、送信部011および受信部012を制御する。また、受信部012で受信した反射エコー信号の画像処理部015への転送、画像化した超音波画像の画像表示器020への伝送などの制御を行うようになっている。
【0019】
ここで、探触子002の構成を具体的に説明する。探触子002は、超音波振動素子が探触子の長軸方向に1〜m(mは、任意の自然数)チャンネル分配列される。ここで、短軸方向にもk(kは、任意の自然数)個に切断されて1〜kチャンネル分配列されている。これにより、短軸方向の各振動素子(1〜kチャンネル)に与える遅延時間を変えることにより、短軸方向にも送波や受波のフォーカスをかけることができるようになっている。また、短軸方向の各振動素子に与える超音波送信信号の振幅を変えることにより送波重み付けを付与することができ、短軸方向の各振動素子からの超音波受信信号の増幅度又は減衰度を変えることにより受波重み付けが付与されるようになっている。さらに、短軸方向のそれぞれの振動素子をオン、オフすることにより、口径制御ができるようになっている。
【0020】
探触子002は、本実施形態では、二次元走査式の超音波探触子を適用している。これにより、探触子ヘッドの曲率に沿った短軸方向、もしくは電子フォーカスによって生成した短軸方向の超音波ビームにより三次元超音波データを収集することが可能である。なお、探触子002は、送信部011から供給される駆動信号に重畳して印加されるバイアス電圧の大きさに応じて送受信感度、つまり電気機械結合係数が変化する例えばcMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer:IEEE Trans. Ultrason. Ferroelect. Freq. Contr. Vol45 pp.678-690 May 1998等)を用いることもできる。cMUTは、半導体微細加工プロセス(例えば、LPCVD:Low Pressure Chemical Vapor Deposition)により製造される超微細容量型超音波振動子である。なお、本発明の探触子002は、二次元走査式の超音波探触子に限られるものではなく、制御部003からの制御信号によりモータ駆動、あるいは手動で短軸方向に移動しながらスキャンを行い、三次元的なデータ収集を行うことが可能である。
【0021】
次に、本実施形態の第1の特徴部であるボリュームレンダリング部017及び第2の特徴部である断面画像作成部018について詳細に説明する。図2に、ボリュームレンダリング部017の処理手順のフローチャートを示す。まず、ステップ201で投影面の位置を設定する。投影面は、検者が設定する視点からボリュームデータを見た視線に直交する平面として設定する。次いで、ステップ202において、投影面上の有効座標に投影される同一視線上に存在するボリュームデータ内のボクセルの輝度値を式(3)、(4)に基づいて積算して、輝度投影画像データを求める。
【0022】
すなわち、ボリュームレンダリング部017は、式(3)、(4)に示すボリュームレンダリング式のように、ボリュームデータを構成する各ボクセルの視線方向の輝度値に、制御部003から指令される輝度毎の不透明度値を乗じて積算して三次元超音波画像データを生成する。
out = Cout-1+(1−Aout-1)・A・C・S (3)
out= Aout-1+(1−Aout-1)・A (4)
ここで、Cは、二次元投影面上のある点からボリュームデータを見た視線上のi番目に存在するボクセルの輝度値である。Coutは、視線上にN(Nは、0を含む任意の整数)個のボクセルが並んだとき、i=0〜Nまでの輝度値を積算した値であり、最終的な投影画像のピクセル値となる。Cout-1は(i−1)番目までの積算値である。
また、Aは、同様に、視線上のi番目に存在するボクセルの輝度値の不透明度であり、予め輝度に対応させて0〜1.0の値をとるように不透明度が設定されている。図3に、ボクセルの輝度値に対応させて不透明度を設定してなる一例のグラフを示す。図示のように、横軸に輝度、縦軸に不透明度をとった不透明度テーブル(オパシティテーブル)として表され、ボクセルの輝度値から不透明度を求める。
Siは、陰影付けのための重み成分であり輝度Ciの傾きより算定される。例えば、光源とボクセルiを中心とした面の法線が一致する場合、もっとも強く反射するため1.0が与えられ、光源と法線が直交する場合には0.0が与えられるなどの強調効果を指し示す。
out、outは、共に0を初期値とし、式(4)に示すように、A outはボクセルを通過するたびに積算され1.0に収束する。よって、式(3)に示されるようにi-1番目までのボクセルの不透明度の積算値Aout-1が≒1.0となった場合、i番目のボクセル値である輝度Ciは出力される投影画像には反映されない。
このようにして、ボリュームレーダリング処理では、不透明度の高いボクセルを表面としてとらえて投影画像データ作成することにより、三次元超音波画像を立体的に表示することができる。
【0023】
次に、ステップ203において、本発明の特徴である距離のレンダリング処理を実施して、距離投影画像データを求める。距離のレンダリング処理は、設定された投影面との距離をボリュームデータ内の座標に基づいて算定し、視線上に存在するi番目ボクセルの距離Diを用いて、式(5)により距離Doutを距離投影画像データのピクセル値として算定する。なお、各ボクセルの距離Diは、ボリュームデータ内のボクセルピッチから算定可能である。
out=Dout-1+(1−Aout-1)・Ai・Di (5)
ここで、Aout-1は式(3)で用いた積算不透明度、同様に、Aiも輝度値より参照される不透明度と同一の係数である。
【0024】
つまり、式(5)は距離の値を、式(3)と同一の方法で積算している。したがって、式(3)で算定される投影面上のピクセル値Coutの算定過程において用いられている不透明度と同一の不透明度で重み付けされた距離Doutが算定される。これにより、距離Doutは、投影面上のピクセル値Coutの距離を正しく表すことになる。
【0025】
最後に、図2のステップ204で、式(3)によって算定された輝度投影画像と、式(5)によって算定された距離投影画像から、RGB値へのカラーコード変換を行って、最終的な輝度・距離投影画像を作成する。輝度投影画像と距離投影画像からRGBへの変換を実施する方法は、明度、彩度、色相をパラメータとするHSV−RGB変換を用いる方法、あるいは、予め設定された二次元RGBテーブルを用いる方法がある。HSV−RGB変換を用いる場合は、最大値、もしくは予め設定している基準値を用いて1.0に正規化した輝度を明度として用い、同様に1.0に正規化した距離を色相として用いることにより、輝度が高いほど明るく、投影面からの距離によって色相が変化するRGB値を得ることが可能である。
二次元RGBテーブルを用いる場合、図4に示す様に、縦軸を輝度401、横軸を距離402とする二次元RGBテーブル400を参照することで、テーブルに格納されているR、G、Bの値を得ることが可能である。
【0026】
図5は、第2の特徴部である断面画像作成部018において実施される処理である。まず、ステップ301において、図2のステップ201と同一位置に投影面が設定される。次いで、ステップ302において、コントロールパネル004等から設定されるボリュームデータ内の任意の設定断面における輝度断面画像データを生成する。輝度断面画像データは、設定断面におけるボクセル値を座標変換してリサンプリングすることで作成される。なお、座標変換によりボリュームデータ内に完全に座標の一致するボクセルデータが存在しない場合は、近傍の複数のボクセルデータから内挿処理によって、設定断面の座標上のボクセルデータを作り出すことができる。
【0027】
次に、ステップ303において、リサンプリングされたボクセルの投影面からの法線方向の距離を算定し、ピクセル値に距離情報を含む輝度・距離断面画像データを作成する。最後に、ステップ304において、図2のステップ204と同様の方法を用い、輝度・距離断面画像データの輝度と距離に基づいてRGB値へのカラーコード変換を行って最終的な輝度・距離断面画像を作成する。
【0028】
ここで、本実施形態によって画像表示器020に表示される超音波画像の表示例を図6と図7を参照して説明する。それらの表示例は、胎児を二次元走査して得られたボリュームデータから構成した超音波画像の例であり、図6は本実施形態により生成表示される輝度・距離投影画像604と輝度・距離断面画像(以下、単に断面画像と称する。)601,602,603を並べて表示した例である。図7は、比較のため、従来法によりボリュームデータから構成した輝度投影画像504と輝度断面画像(以下、単に断面画像と称する。)501,502,503を並べて表示した例である。それらの断面画像において、断面画像601と断面画像501は矢状断面像であり、断面画像602と断面画像502は冠状断面像であり、断面画像603と断面画像503は水平断面像である。それらの断面画像の名称は特に限られるものではなく、要は互いに直交する3面で切断した断面画像である。また、図6の輝度・距離投影画像604は、本実施形態のボリュームレンダリング部017で作成された三次元超音波画像であり、図7の輝度投影画像504は、従来の典型的なボリュームレンダリングによって作成された三次元超音波画像である。
【0029】
輝度・距離投影画像604と輝度投影画像504は、いずれも各断面画像に設定された有効領域枠(破線で示す。)605〜607、505〜507によって切り取られた領域の投影画像である。図6の輝度・距離投影画像604は、RGBテーブル608に示す二次元カラーマッピングテーブルにより、輝度及び距離によって色調変調されている。距離の基準となる面は、断面画像601,602上に設定された投影面609及び611である。また、断面画像601,602上には、距離算定終了面610及び612が設定されている。つまり、投影面609(又は611)から距離算定終了面610(又は612)迄の範囲が、距離による色調変調の対象となる範囲である。なお、投影面からボリュームデータ内の各ボクセル迄の距離は、投影面の法線方向の距離として算定される。
【0030】
操作者は、投影面609(又は611)から距離算定終了面610(又は612)の位置を、コントロールパネル004からトラックボールもしくはエンコーダ、スライドバーを用いて調節することにより、距離による色調変調の範囲の設定を変更することも可能である。断面画像における距離情報は、投影面に平行して段階的に変化し、断面画像601では、投影面609からの距離に応じて部位613、614、615、616のように、色相を変えて表示される。断面画像602においても同様に、投影面611からの距離に応じて部位617、618、619、620の色相を変えて表示される。
【0031】
一方、輝度・距離投影画像604は、有効領域枠605、606、607内のボクセルデータを投影面609、611に投影した画像であり、投影面からの距離に応じて部位621、622、623、624の色相を変えて表示される。したがって、輝度・距離投影画像604に示すとおり、表示される画像の各部位の色相が距離によって異なるから、静止している輝度・距離投影画像604であっても、各部位の距離(奥行き)を認識が可能である。つまり、輝度・距離投影画像604上の各部位の奥行き位置が、断面画像ではどの深度に相当しているか断面画像601、602、603を対比して確認することにより、容易に正しく認識することができる。また、RGBテーブル608に距離スケール625を表示することもでき、これによりRGBテーブル608に示された色相から実距離を算定することも可能である。
【0032】
これに対して、図7に示した従来の典型的なボリュームレンダリングによって作成された輝度投影画像504は、一次元のRGBテーブル508によって色調変調される。従来のRGBテーブル508は、主に明度を変化させて投影画像に陰影を付けることで立体的な、つまり三次元的な表示をしている。しかし、輝度の差は画像の勾配と音響インピーダンスを反映した輝度によるものであり、静止している輝度投影画像504から距離の認識を正しく行うことは困難である。
【0033】
図6に示した投影面609,611は、有効領域枠605,606上に設定したが、図8に示すように、投影面は有効領域枠と独立に設定可能である。すなわち、投影面609,611は、コントロールパネル004より、平行移動あるいは回転操作するようにすることができる。図8に示すように、投影面709、711を斜めに設定した場合、輝度・距離投影画像704は、距離断面画像701,702,703に設定された有効領域枠705、706、707によって切り取られた領域の投影画像となる。また、RGBテーブル708に示すように、輝度及び距離によって色調変調されている。
【0034】
図8に示す例によれば、投影面709及び711が有効領域枠705と独立して設定されているため、投影面709及び711からの距離は、距離算定終了面710、712迄算定される。そして、輝度・距離投影画像704としては、図示のとおり、投影面709から見た投影画像が表示される。
【0035】
(実施形態2)
本発明を適用してなる超音波診断装置の実施形態2について図を用いて説明する。本実施形態は、図1に示す実施形態1の超音波診断装置001を用いて実施され、異なる点はレンダリング処理とカラーリング処理の手順を入れ替えたことにある。本実施形態のボリュームレンダリング部017及び断面画像作成部018における処理のフローチャートを図9、図10にそれぞれ示す。
【0036】
図9に示すように、ステップ801において投影面の位置を設定する。次いで、ステップ802において、演算を行うボリュームデータ内の座標に基づき、設定された投影面との距離を算定し、視線上に存在するi番目のボクセルの距離Diを求め、輝度値Ciと距離値DiよりRGB値へのカラーコード変換を行う。この輝度値Ciと距離値DiからRGBへの変換は、明度、彩度、色相をパラメータとするHSV−RGB変換を用いる方法、あるいは予め設定された二次元RGBテーブルを用いる方法によることができる。HSV−RGB変換を用いる場合、最大値、もしくは基準値を1.0に正規化した輝度を明度とし、同様に1.0に正規化した距離を色相とすることにより、輝度が高いほど明るく、投影面からの距離によって色相が変化するRGB値を得ることが可能である。また、予め設定された二次元RGBテーブルを用いる場合、図4に示したように、縦軸を輝度401、横軸を距離402の二次元RGBテーブル400に格納されているR、G、Bの値を得ることができる。
【0037】
ステップ803では、ステップ802で分解して付与したR、G、Bのそれぞれの要素に関して、式(3)を用いてそれぞれレンダリング処理を行い、最終的なR、G、Bの値を得ることが可能である。つまり、本実施形態では、輝度値Ciと、距離Diを用いてカラーコード変換を先に実施し、R、G、Bの要素毎にレンダリング処理を行うことが特徴である。
【0038】
図10は、断面画像作成部018において実施される本実施形態の処理であり、ステップ901において、図9のステップ801で設定した同一座標上の位置に投影面が設定される。断面画像は設定されたボリュームデータ内の断面を座標変換によってリサンプリングすることにより作成される。そして、ステップ902では、リサンプリングされたボクセルの輝度値と、投影面からの法線方向のボクセルの距離を算定し、ボクセルごとに輝度と距離からRGB値へカラーコード変換する。ステップ903では、設定断面のボクセルのリサンプリングにより座標変換処理して輝度・距離断面像データを生成する。リサンプルの際に、一致する座標がない場合は内挿処理により、ステップ902で参照されたR、G、Bを別々に処理して最終的な輝度・距離断面像のR、G、B値を得る。
【0039】
(実施形態3)
図11〜図13を参照して、本発明の実施形態3について説明する。本実施形態は、設定する深さの部位のみを色付けすることにより視認性を向上させたものであり、循環器の超音波画像に適用した例で説明する。図11は本実施形態の特徴を説明する概念図であり、図12は本実施形態における直交三断面画像と三次元超音波画像を並べて表示した例、図13は比較のため従来法による直交三断面像と三次元超音波画像を並べて表示した例である。本実施形態は、図11に示すように、断面画像1001に対し、設定された深度区間1002にのみ特徴的な色調変調を行うようにして、視認性を向上させたものである。深度区間1002の色調は、輝度と距離の二次元カラーマップ1004における深度区間1002の深度に対応する深度区間1005に設定された色調で色付けされる。また、有効領域枠1003に対応して投影画像が作成される。
【0040】
本実施形態によれば、図12に示すように、各直交三断面画像1201、1202、1203には、設定された深度区間1209に対応する部位1211、1212、1213が、他と異なる色調変換されて表示されている。輝度・距離投影画像1204は、ボリュームレンダリングによって作成された三次元超音波画像である。輝度・距離投影画像1204は、各断面に設定された有効領域枠1205、1206、1207によって切り取られた領域の輝度・距離投影画像であり、RGBテーブル1208に示すように輝度及び距離によって色調変調されている。つまり、設定された深度区間1209に対応する部位1214,1215が同一の色調で表示される。なお、RGBテーブル1208は、設定された深度区間1209により指定された距離に対応する部位のみが異なる色調1210に設定されている。各断面画像も、設定深度区間1209に相当する領域が特徴的な色調1210に基づいて表示される。
【0041】
一方、比較のために、図13に従来法による直交三断面像1101〜1103と輝度投影画像1104の表示例を示す。これによれば、輝度投影画像1104は、各断面に設定された有効領域枠1105、1106、1107によって切り取られた領域の投影面像であるが、RGBテーブル1108に示す様に色調変調されている。しかし、RGBテーブル1108は、主に明度を変化させ、投影画像に陰影をつけることで三次元表示するようにしているが、輝度の差は画像の勾配と音響インピーダンスを反映した輝度によるものであるから、静止している投影画像から距離の認識を正しく行うことは困難である。さらに、複雑な構造を持つ循環器を三次元化する場合、弁の特定や壁の位置を投影画像で正しく理解するのは特に難しい。
【0042】
これに対して、本実施形態によれば、輝度・距離投影画像1204は、設定された深度区間に相当する弁様構造物1214と壁様構造物1215が、色調1210により表示される。これにより、設定した深度区間1209に含まれる構造物が輝度・距離投影画像1204上のどの位置に対応するかを、正しく容易に識別する事が可能になる。
【0043】
図14に、実施形態3による異なる表示例を示す。断面画像1300は矢状断面である。断面画像1300、1301、1302、1303、1304、1305、1306、1307は、断面画像1300上の複数の参照ライン1309に沿って表示された水平断面像である。本実施形態では、設定深度区間を1本又は複数本の参照ラインにより設定することができる。図示例では、参照ライン1310が設定深度区間の設定ラインとされている。参照ライン1310上の水平断面像1304は、RGBテーブル1311に設定された色調1312で表示される。輝度・距離投影画像1308は、設定深度区間を示す参照ライン1310によって指定された区間のみ、色調1312を用いてレンダリングされており、設定深度区間に含まれる弁様構造物1313と壁様構造物1314が、輝度・距離投影画像1308上でどの位置に存在するかを、正しく容易に識別することが可能になる。
【符号の説明】
【0044】
001 超音波診断装置
002 探触子
003 制御部
004 コントロールパネル
011 送信部
012 受信部
013 超音波送受信制御部
014 整相加算部
015 画像処理部
016 三次元座標変換部
017 ボリュームレンダリング部
018 断面画像作成部
019 画像合成部
020 画像表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボリュームデータに基づいて三次元超音波画像を生成して表示する超音波診断装置において、
視線上のボリュームデータの各ボクセルのボクセル値に基づいてボリュームレンダリングしてボクセル値投影画像データを生成し、視線上のボリュームデータの各ボクセルの投影面からの距離に基づいてボリュームレンダリングして距離投影画像データを生成し、前記ボクセル値投影画像データと前記距離投影画像データに基づいて前記三次元超音波画像を生成して表示することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記ボクセル値投影画像データは、各ボクセルのボクセル値に応じて設定される不透明度で重み付けしてボリュームレンダリングにより生成され、
前記距離投影画像データは、前記不透明度で重み付けしてボリュームレンダリングにより生成されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超音波診断装置において、
前記三次元超音波画像は、前記ボクセル値投影画像データと前記距離投影画像データのそれぞれに基づいて色調変換されてなることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
さらに、前記ボリュームデータに基づいて所望の断面画像を生成して前記三次元超音波画像に並べて表示する機能を備え、
前記断面画像は、前記投影面からの距離に応じて色調変換されてなることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記投影面の位置と、前記投影面からの距離を算出する対象範囲が入力設定されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の超音波診断装置において、
色調変換する距離の範囲を入力設定可能であることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6において、
色調変換する距離の範囲は、画像表示器に投影面と直交して表示されている断面画像から設定可能に形成されてなることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項7において、
色調変換する距離の範囲は、画像表示器に投影面と直交して表示されている断面画像に1つ以上の参照ラインとして設定可能に形成されてなることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項8において、
複数の前記参照ラインにより設定された複数の断面画像と、前記三次元超音波画像が並べて表示されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記断面画像と前記三次元超音波画像に並べて、ボクセル値と距離を軸として設定された二次元RGBマップが表示されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
請求項10の超音波診断装置において、
前記二次元RGBマップは、色調変調を実施した区間に距離の数値が表示されることを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−5593(P2012−5593A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143002(P2010−143002)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】