説明

三相電源の結線状態判定方法および三相電源の結線状態判定装置

【課題】短い測定時間で確実に三相電源の結線状態(欠相や活線)を判定できる三相電源の結線状態判定方法を具現化した結線状態判定装置を提供する。
【解決手段】結線状態の判定対象である三相電源のR相,S相,T相の各被測定導体14に近接配置した非接触センサ16で被測定導体14に流れる各相の相関電圧信号を取得し、ローパスフィルタ17a及びバッファ17bを経由した後、R相とS相との差電圧、S相とT相との差電圧、T相とR相との差電圧を差電圧生成手段17cでそれそれ生成してマイクロコンピュータ18のA/Dコンバータ入力ポートAN0〜2へ各々入力し、各差電圧信号の振幅レベルパターンを、予め設定されている結線状態判定条件と対比することで、三相電源の結線状態を判定し、この判定結果を報知回路で報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相電源の欠相及び活線を検出する結線状態判定方法と、この方法を具現化した結線状態判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、三相電源の欠相を検出する方法として、各相の位相差を監視して規定の差を保持しているかどうかを検出する方法が一般に行われている。例えば、三相電源の各相(R相、T相、S相)の各出力を、フォトカプラを介して2値パルスに変換し、マイクロコンピュータの割り込み入力端子へ各々入力し、各相の電圧変化によるON/OFFでマイクロコンピュータに割り込みを行い、各相の割り込み発生タイミングから各相の位相差を検出するものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような位相差検出装置では、三相出力が各々120度の位相差をもった三相パルス電圧となってマイクロコンピュータの各割り込み入力端子へ入力され、三相パルスの立ち下がり(または、立ち上がり)で割り込みを発生するように設定されており、ある相の割り込み入力端子に入力されたパルスで割り込みが発生すると、この割り込みをトリガとして内蔵タイマを作動させ、他の2つの相で割り込みが発生するまでの時間T1,T2を測定し、計測時間T1,T2に基づいて欠相を判定するのである。
【0004】
例えば、交流周波数が50Hzの場合には、T1≒3.3(ms),T2≒6.7(ms)で欠相無しと判定でき、60Hzの場合には、T1≒2.8(ms),T2≒5.6(ms)で欠相無しと判定できる。一方、欠相が1つある場合には、2つの相が同相となり、残りの1相が180°位相のずれた反転波形となる。このとき、どの相が同相となるかは、接続されている負荷によって変わるが、マイクロコンピュータからみれば、特別な差はなく、T1=T2(50Hzの場合、T1=T2=10〔ms〕、60Hzの場合、T1=T2=8.3〔ms〕)となる。
【0005】
また、欠相及び活線の状態を検出する検電器として、被検電部との接触によりその被検電部と電気的に接続される検知子を本体部の先端に設けるとともに、本体部の基端から延びる絶縁性の握り部を具備し、本体部内には、検知回路部のアース端子部と電気的に接続された微小なアース電極を設け、握り部を作業者が把持した状態で本体部の先端にある検知子を被検電部に接触させると、被検電部が活線状態にある場合には、対地電圧Eに対して、検知子→検知回路部→アース電極と人体(作業者)間に形成される浮遊静電容量C1→人体→人体と対地間に形成される浮遊静電容量C2→大地の経路でもって閉回路が形成され、静電誘導電流iが流れるため、その検出信号に基づいて被検電部の結線状態を検知回路部で検出するものがある(例えば、特許文献2を参照)。この検電器では、ブザーによる発音やLED等による発光で、被検電部の活線状態を報知するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−153429号公報
【特許文献2】特開2002−148287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の欠相検出装置では、パルス電圧の立ち下がり(立ち上がり)で各相の位相差を測定するため、マイクロコンピュータに入力する波形にノイズがランダムに重畳すると、ノイズをパルスの立ち下がり(立ち上がり)として誤った位相差を測定してしまい、かつ電圧不平衡による位相のずれが生じた場合にも曖昧な値を測定するため、三相電源の結線状態を適切に判定できないという課題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載された従来の検電器で採用されている活線状態検出技術を使って、三相電源の活線状態を判定しようとした場合には、発生した静電誘導電流が被検電部から対地までの間に人体(作業者)を経由するため、被検電部−作業者−対地間それぞれの接している状態や外的要因により測定される電圧が安定せず、測定値を電圧波形に置き換えた場合に、ノイズが測定波形に重畳する不具合が起こるため、三相電源の活線状態を適切に判定することができないという課題をかかえるものであった。
【0009】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、短い測定時間で確実に三相電源の結線状態(欠相や活線)を判定できる三相電源の結線状態判定方法と、この方法を具現化した結線状態判定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る三相電源の結線状態判定方法は、三相電源における各相の相関電圧信号を取得し、各相の電圧信号の差である3種類の差電圧信号を生成し、1周期以上の測定期間継続して各差電圧信号を測定し、三相電源の結線状態に応じて生ずる、各差電圧信号の振幅レベルパターンに基づいて、予め設定した結線状態判定条件で、前記測定期間内における各差電圧信号の振幅レベルパターンを判定することにより、三相電源の結線状態を判定するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る三相電源の結線状態判定装置は、三相電源における各相の相関電圧信号を取得する相信号取得手段と、前記相信号取得手段により取得した各相の電圧信号の差である3種類の差電圧信号を生成する差電圧信号生成手段と、前記三相電源の結線状態に応じて生ずる、各差電圧信号の振幅レベルパターンに基づいて、予め設定した結線状態判定条件で、前記測定期間内における各差電圧信号の振幅レベルパターンを判定することにより、三相電源の結線状態を判定する結線状態判定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る三相電源の結線状態判定方法によれば、三相電源における各相の相関電圧信号を取得し、各相の電圧信号の差である3種類の差電圧信号を生成し、1周期以上の測定期間継続して各差電圧信号を測定し、三相電源の結線状態に応じて生ずる、各差電圧信号の振幅レベルパターンに基づいて、予め設定した結線状態判定条件で、前記測定期間内における各差電圧信号の振幅レベルパターンを判定することにより、三相電源の結線状態を判定するので、短い測定時間で高精度に三相電源の結線状態を判定できる。
【0013】
また、請求項2に係る三相電源の結線状態判定装置は、三相電源における各相の相関電圧信号を取得する相信号取得手段と、前記相信号取得手段により取得した各相の電圧信号の差である3種類の差電圧信号を生成する差電圧信号生成手段と、前記三相電源の結線状態に応じて生ずる、各差電圧信号の振幅レベルパターンに基づいて、予め設定した結線状態判定条件で、前記測定期間内における各差電圧信号の振幅レベルパターンを判定することにより、三相電源の結線状態を判定する結線状態判定手段と、を備えるので、短い測定時間で高精度に三相電源の結線状態を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る三相電源の結線状態判定装置の実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】三相電源が正常結線時に取得される差電圧信号の一例を示す波形図である。
【図3】(a−1)は全て活線状態における各相の相関電圧信号、(b−1)は全て活線状態における差電圧信号の振幅レベルパターン、(a−2)はR欠相状態における各相の相関電圧信号、(b−2)はR欠相状態における差電圧信号の振幅レベルパターン、(a−3)はS,T欠相状態における各相の相関電圧信号、(b−3)はS,T欠相状態における差電圧信号の振幅レベルパターンである。
【図4】本実施形態の結線状態判定装置における結線状態判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る三相電源の結線状態判定方法を具現化した結線状態判定装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る結線状態判定装置の概略構成を示す機能ブロック図で、結線状態の判定対象である三相電源のR相,S相,T相の各被測定導体14に接触しない状態で電圧を測定できるように、機器本体15に接続した非接触センサ16を、R相、T相、S相それぞれの被測定導体14に近接配置して、被測定導体14に流れる各相の相関電圧信号を静電誘導方式で取得する。なお、本実施形態では、非接触センサ16を相信号取得手段としたが、これに限定されるものではなく、接触式センサを用いても良い。
【0017】
上記のように非接触センサ16により取得した各相の相関電圧信号を結線状態判定回路17へ入力し、この結線状態判定回路17にて行った判定結果が、報知回路によって報知(機器本体15の適所に設けたLEDの点灯/消灯による可視表示やスピーカによる音声出力など)される。
【0018】
結線状態判定回路17に入力された各相の相関電圧信号は、ローパスフィルタ17a及びバッファ17bを経由した後、各相の電圧信号の差である3種類の差電圧信号を生成する差電圧信号生成手段としての差電圧生成手段17cで、R相とS相との差電圧、S相とT相との差電圧、T相とR相との差電圧をそれぞれ生成し、結線状態判定手段たるマイクロコンピュータ18のA/Dコンバータ入力ポート(AN0〜2)へ入力する。図2は、前記被測定導体14の各相に約200Vの電圧を印加した場合に、AN0〜2にて測定できるそれぞれの差電圧信号をモニタした差電圧信号の一例を示す波形図である。正常な結線時には、それぞれの信号振幅が等しく揃い、波形の歪みも見られない。
【0019】
ここで、上記マイクロコンピュータ18にて行う結線状態判定方法について順を追って説明する。
【0020】
図3は、被測定導体14に印加する電圧による、それぞれの相関電圧信号と差電圧信号との相関関係を示すもので、図3(a−1),(b−1)は、3相全てが活線状態における各相の相関電圧信号波形と差電圧の振幅レベルパターンを示し、図3(a−2),(b−2)は、R欠相状態における各相の相関電圧信号波形と差電圧の振幅レベルパターンを示し、図3(a−3),(b−3)は、S,T欠相状態における各相の相関電圧信号波形と振幅レベルパターンを示す。
【0021】
図3(a−1)のように、各被測定導体14のR相、S相、T相の相関電圧信号の全てに電圧Eが印加されていた場合、三相電源の各相と相との電圧位相差は120°であるため、図3(b−1)に示すように、それぞれの差電圧信号は全てE×√3の電圧として、マイクロコンピュータ18のAN0〜2に入力される。すなわち、三相電源の全相が活線状態のとき、マイクロコンピュータ18は全ての差電圧信号を同じ信号振幅(E×√3)として測定することとなる。
【0022】
しかし、図3(a−2)のように、S相、T相の被測定導体14の相関電圧信号のみに電圧Eが印加されていた場合(R相が欠相である場合)、活線状態である三相電源のS相とT相との電圧位相差は120°であるため、図3(b−2)に示すように、S相−T相の差電圧信号のみ、E×√3となり、R相−S相の差電圧信号とT相−R相の差電圧信号は、共にR相に電圧が印加されていないため、Eの電圧としてマイクロコンピュータ18に入力される。すなわち、三相電源のある1相が欠相となっているとき、マイクロコンピュータ18は、2信号を同じ信号振幅Eとして、残りの1信号を信号振幅√3E(他の2信号の√3倍の振幅)として測定することとなる。
【0023】
また、図3(a−3)のように、R相の被測定導体14の相関電圧信号のみに電圧Eが印加されていた場合(S,Tの2相が欠相である場合)、図3(b−3)に示すように、S相とT相共に電圧が印加されていないため、S相−T相の差電圧信号には、電圧は生成されず、R相−S相の差電圧信号とT相−R相の差電圧信号は、共にEの電圧としてマイクロコンピュータ18に入力される。すなわち、三相電源の2相が欠相となっているとき、マイクロコンピュータ18は、2信号を同じ信号振幅Eとして、残り1信号は電圧のない状態として測定することとなる。
【0024】
上述したように、三相電源の結線状態は、各相の差電圧信号の、振幅レベルパターンの組み合わせによって判定することが出来る。すなわち、1周期以上の測定期間継続して各差電圧信号を測定し、三相電源の結線状態に応じて生ずる、各差電圧信号の振幅レベルパターンに基づいて、予め設定した結線状態判定条件で、前記測定期間内における各差電圧信号の振幅レベルパターンを判定することにより、三相電源の結線状態を判定できるのである。
【0025】
これを踏まえて、結線状態判定手段たるマイクロコンピュータ18にて実行される結線状態判定処理の一具体例を図4に基づき説明する。なお、前処理にて全ての差電圧信号振幅に対して一定の振幅電圧閾値を設定し、全ての差電圧信号に電圧が存在しない条件は除かれているものとする。また、振幅電圧閾値および結線状態判定処理で用いる規定値については、サンプリング周期やノイズの発生形態に応じて適宜決めれば良い。
【0026】
先ず、各相の差電圧信号(R相−S相、S相−T相、T相−R相)を測定し(ステップS1)、その結果から各測定差電圧信号の信号振幅を演算し、各信号振幅値と各信号振幅の大小関係とをマイクロコンピュータ18内の記憶領域に格納しておく(ステップS2)。例えば、最小振幅値:MINVpp、中間振幅値:MIDVpp、最大振幅値:MAXVppにそれぞれ保存する。このとき、信号振幅値が同じであった場合には、予め定めた格納順に従って、MAXVpp,MIDVpp,MINVppへ格納するものとし、必ずしもMAXVpp>MIDVpp>MINVppの大小関係があるわけではない。
【0027】
三相電源の結線状態が3線活線(全て活線)の状態であれば、図3を用いて説明したように、差電圧信号の振幅値は全て“E×√3”となるので、MAXVpp=MIDVpp=MINVpp=E×√3となり、それぞれ差電圧信号振幅の差は“0”のみ(MAXVpp−MIDVpp=MAXVpp−MINVpp=MIDVpp−MINVpp=0)となる。
【0028】
三相電源の結線状態が2線活線の状態であれば、図3を用いて説明したように、振幅は“E”が2線、“E×√3”が1線のため、MAXVpp=E×√3、MIDVpp=MINVpp=Eとなり、それぞれ差電圧信号振幅の差は最小で“0”、最大で“(E×√3)−E≒E×0.732”となる。
【0029】
三相電源の結線状態が1線活線の状態であれば、図3を用いて説明したように、振幅は“E”が2線、“0”が1線のため、MAXVpp=MIDVpp=E、MINVpp=0となり、それぞれ差電圧信号の差は最小で“0”、最大で“E”となる。
【0030】
つまり、上述の振幅レベルパターンを用いれば、次のように差電圧信号振幅を判定することで、各相の結線状態を特定することができる。
【0031】
そこで、上記ステップS2で保存した各差電圧信号振幅が第1相対振幅判定条件を満たすか否かを判定する(ステップS3)。この第1相対振幅判定条件は、3線活線状態を判定するもので、MAXVppとMIDVppとMINVppそれぞれの差(MAXVpp−MIDVpp,MAXVpp−MINVpp,MIDVpp−MINVpp)が、全て{MINVpp×√3−MINVpp}÷2未満であるとする。
【0032】
具体的に説明すると、1線活線の状態であれば、MINVpp=0であるため、{0×√3−0}÷2=0となり、それぞれ差電圧信号の差の最大は“E”であるため、第1相対振幅判定条件を満たさず、2線活線の状態であれば、MINVpp=Eであるため、{E×√3−E}÷2≒E×0.366となり、それぞれ差電圧信号振幅の差の最大は“(E×√3)−E≒E×0.732”であるため、第1相対振幅判定条件を満たさない。
【0033】
しかしながら、3線活線の状態であれば、MINVpp=E×√3であるため、{(E×√3)×√3−(E×√3)}÷2≒E×0.634となり、差電圧信号振幅それぞれの差は全て“0”であるため、第1相対振幅判定条件を満たす。すなわち、ステップS3で第1相対振幅判定条件を満たすと判定された場合には、R相、S相、T相全ての相が活線状態であると判定することができ、その旨を報知する(ステップS4)。
【0034】
一方、上記ステップS3で第1相対振幅判定条件を満たさないと判定された場合には、上記ステップS2で保存した各差電圧信号振幅が第2相対振幅判定条件を満たすか否かを判定する(ステップS5)。この第2相対振幅判定条件は、MIDVpp−MINVpp≦(MINVpp×√3−MINVpp)÷2、または、MAXVpp−MIDVpp≧(MIDVpp×√3−MIDVpp)÷2であるとする。
【0035】
具体的に説明すると、1線活線の状態であれば、MAXVpp=MIDVpp=E、MINVpp=0であるため、E−0≦(0×√3−0)÷2=E≦0、または、E−E≧(E×√3−E)÷2≒0≧E×0.366となり、第2相対振幅判定条件を満たさない。
【0036】
しかしながら、2線活線の状態であれば、MAXVpp=E×√3、MIDVpp=MINVpp=Eであるため、E−E≦(E×√3−E)÷2≒0≦E×0.366、または、E×√3−E≧(E×√3−E)÷2≒E×0.732≧E×0.366となり、第2相対振幅判定条件を満たす。そして、活線相同士の差電圧信号振幅が最大振幅値となることから、MAXVppがS相−T相の差電圧信号振幅であった場合は、R相が欠相、S相とT相が活線と判断でき、MAXVppがT相−R相の差電圧信号振幅であった場合は、S相が欠相、R相とT相が活線と判断でき、MAXVppがR相−S相の差電圧信号振幅であった場合は、T相か欠相、R相とS相が活線と判定することができ、その旨を報知する(ステップS6)。
【0037】
一方、上記ステップS5で第2相対振幅判定条件を満たさないと判定された場合には、上記ステップS2で保存した各差電圧信号振幅が第3相対振幅判定条件を満たすか否かを判定する(ステップS7)。この第3相対振幅判定条件は、MIDVpp−MINVpp≧(MINVpp×√3−MINVpp)÷2、かつ、MAXVpp−MIDVpp≦(MIDVpp×√3−MIDVpp)÷2であるとする。
【0038】
すなわち、1線活線の状態であれば、MAXVpp=MIDVpp=E、MINVpp=0であるため、E−0≧(0×√3−0)÷2=E≧0、かつ、E−E≦(E×√3−E)÷2≒0≦E×0.366となり、第3相対振幅判定条件を満たす。そして、欠相同士の差電圧信号振幅が最小振幅値となるため、MINVppがS相−T相の差電圧信号振幅であった場合は、R相が活線、S相とT相が欠相と判断でき、MINVppがT相−R相の差電圧信号振幅であった場合は、S相が活線、R相とT相が欠相と判断でき、MINVppがR相−S相の差電圧信号振幅であった場合は、T相が活線、R相とS相が欠相と判定することができ、その旨を報知する(ステップS8)。
【0039】
さらに、上記ステップS7で第3相対振幅判定条件の条件にも当てはまらない場合には、ノイズ及び電圧不平衡による影響にて異常な信号が入力されたと判断し、判定異常である旨を報知する(ステップS9)。このように、第1〜第3相対振幅判定条件に基づいて結線状態を判定すれば、欠相を特定できない異常な測定結果を誤判定することも回避でき、信頼性の高いものとなる。そして、この高精度な結線状態判定機能を検電器や検相器に搭載すれば、対地間の電圧及び、測定時の状態に影響されることが少なく、結線状態を正確に判定することができ、検電器や検相器として信頼性の高いものとなる。
【0040】
上述したように、本実施形態の結線状態判定装置によれば、1周期以上という短い測定時間で高精度に三相電源の結線状態を判定できる。なお、1周期の差電圧波形の測定からでも結線状態を判定できるものの、精度を向上させるためには、測定期間を長く設定(例えば、2周期以上の測定期間を設定)したり、複数回に渡る差電圧信号の検出を行い、全ての検出結果が同一の判定結果となったときに、これを最終判定結果として報じたり、するようにすれば、より精度の高い結線状態判定を行うことができる。また、判定に用いる結線状態判定条件は、上述した第1〜第3相対振幅判定条件を用いるものに限らず、適宜に設定すれば良い。例えば、欠相の有無のみを判定できればよい場合には、第1相対振幅判定条件のみを結線状態判定条件に設定すれば良い。
【0041】
また、本実施形態の結線状態判定装置は、スター結線の三相電源に対して結線状態の判定を行うものとしたが、結線状態判定の対象である三相電源はこれに限定されるものではなく、デルタ結線等、他の仕様の三相電源に対して用いることもできる。さらに、本実施形態では、結線状態判定手段の機能をマイクロコンピュータで実現するものとしたが、アナログ回路によって結線状態判定手段の機能を構成しても良い。
【0042】
以上は、本発明に係る三相電源の結線状態判定方法を適用した結線状態判定装置の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明の包摂範囲は、この実施形態に限定されるものではなく、公知既存の手法を適宜転用することで実現しても構わない。
【符号の説明】
【0043】
14 被測定導体(三相電源:R相、S相、T相)
15 機器本体(検電器あるいは検相器)
16 非接触センサ
17 結線状態判定回路
17c 差電圧生成手段
18 マイクロコンピュータ(結線状態判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相電源における各相の相関電圧信号を取得し、各相の電圧信号の差である3種類の差電圧信号を生成し、1周期以上の測定期間継続して各差電圧信号を測定し、三相電源の結線状態に応じて生ずる、各差電圧信号の振幅レベルパターンに基づいて、予め設定した結線状態判定条件で、前記測定期間内における各差電圧信号の振幅レベルパターンを判定することにより、三相電源の結線状態を判定するようにしたことを特徴とする三相電源の結線状態判定方法。
【請求項2】
三相電源における各相の相関電圧信号を取得する相信号取得手段と、
前記相信号取得手段により取得した各相の電圧信号の差である3種類の差電圧信号を生成する差電圧信号生成手段と、
前記三相電源の結線状態に応じて生ずる、各差電圧信号の振幅レベルパターンに基づいて、予め設定した結線状態判定条件で、前記測定期間内における各差電圧信号の振幅レベルパターンを判定することにより、三相電源の結線状態を判定する結線状態判定手段と、
を備えることを特徴とする三相電源の結線状態判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−172120(P2010−172120A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13035(P2009−13035)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(390025623)共立電気計器株式會社 (7)
【Fターム(参考)】