説明

上塗材料

【課題】スキー、スノーボード、スティック、バット、ラケットなどのスポーツ用品、家庭用機器、電気機器、家具、機械などの機器のハウジング用の保護層または印刷支持体として用いることができる透明性、寸法安定性、耐ブロッキング性に優れる上塗材(フィルム)の提供。
【解決手段】当該上塗材は、PA6/12を基礎とする層の単層フィルムまたはPA6/12を基礎とする少なくとも一つの層を有する多層フィルムからなり、PA6/12を基礎とする層はまたPA6、PA12、PA610、および/またはPA612のグループより選択される少なくとも一つのポリアミド・ホモポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスキー、スノーボード、スティック、バット、ラケットなどのスポーツ用品用の、または家庭用機器、電気機器、家具、機械などの装置のハウジング用の保護層および/または印刷支持体として用いることのできる上塗材に関する。当該上塗材は、PA6/12を基礎とする単層でできている単層フィルムまたはPA6/12を基礎とする少なくとも一つの層を備えた多層フィルムからなる。
【背景技術】
【0002】
保護フィルムは上塗材として用いられ、装飾用品、スキーパス、ディスプレーカバー、またはその他のスキーやスノーボードの表側などの目的物の表面保護をする。これらの保護フィルムは、保護すべき領域に対してラミネート加工されるが、一般的にプラスチック材料からなり、具体的要求に合致する必要がある。そのプラスチック材料は、例えば引っかき抵抗性、耐衝撃性および弾性係数(E係数)などの適当な機械的特性を具備する必要がある。さらには、全処理過程中、適当な寸法安定性を保持することが必要であり、保管場所に光沢カットフィルムを保管する間は、材料を阻害することはできない。材料はさらに透明であり、裏面印刷でも印刷可能であり、その色彩は無色であることが望ましい。ここでプラスチック材料は単層から構成することができるが、多層構造を具備することもまた可能である。さらに、処理中に耐熱性があり、昇華印刷に適しており、引き抜き性が良好かまたは熱成形可能性が良好であり、UV抵抗性が良好である必要がある。
【0003】
スキー製造部門では、例えば国際公開第2004/020054号パンフレットにおいて、スキーの製造方法が知られており、この種の方法では多層フィルムの使用もまた知られる。この多層構造はここでは、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)などの非常に多種のポリ高分子材料からなり、この種のフィルムが印刷され、次に運転面に対向するスキーの側部に添付される。多層フィルムはここでは第一に、押出し加工、印刷加工、およびラミネート加工など多様に製造され、次にスキーの主要部に接着される。例えば、射出成形加工により裏面被覆したハウジングなどの他の品目では、多層フィルムはまず熱成形されて望ましい形状になり、次に射出成形加工により構成要素に接着され、後部噴射または裏面被覆される。
【0004】
ミシェル・ベーヤー(Michael Beyer)およびイェーク・ローマー博士(Dr.Joerg Lohmar)の出版物「魅力的で頑丈な−保護装飾ポリアミドフィルム」(プラスチック1/2000、カールハンサー出版社(Kunststoffe 1/2000、Carl−Hanser Verlag))では、とりわけマウンテンスポーツ分野用に保護・装飾フィルムを使用することが概説される。同著には、半結晶ポリアミド−12の使用が記載され、例えばスキー、スノーボード、特殊スポーツシューズ、またはさまざまな種類のスポーツのバット、ラケット、そして繊維製品、家具、宣伝領域、自動車部門、または食卓用食器類、もしくは家庭用機器、プラカード、床、住居用建物の外観などに使用することが記載されている。
【0005】
この種のフィルムを使用する最終品の製造方法として、さまざまな技術が提案され、例として、フィルムを射出成形加工(インモールド装飾、IMD、およびインモールド標識化、IML)により裏面被覆または後部射出することが挙げられる。
【0006】
最も重要なことは、最も重大な工程がいつも装飾フィルムを基底構造に溶接することであるという事実にある。接着を向上させるためには、フィルムは時々複雑な研磨、フレーム処理、コロナ処理、またはプラズマ処理により接着加工のために適切に準備される。
【0007】
欧州特許出願公開第0442262号明細書もまた、スキーの製造方法を記載し、この場合、スキーの全体構造は鋳型で製造され、同様に透明プラスチックからなる保護層が上側に設けられる。前記保護層はここでは、熱に触れる際に硬化、すなわち重合するポリマーからなる。
【0008】
これらのスポーツ用品の魅力的外観を達成するために、この種のフィルムは、あらかじめ印刷される。そういうわけで、欧州特許出願公開第0774365号明細書は保護フィルムの印刷方法を記載するが、その保護フィルムは例えばポリアミド(PA)、またはその他のポリカーボネートまたはABSから構成することができる。
【0009】
国際公開第00/23512号パンフレットは、そのような利用に適した機械的性質を具備するポリアミドを基礎とする半結晶熱成形材料について記載する。同公報には、少なくとも直径が100nm未満の分散無機固体粒子を有する半結晶ポリマーについて記載する。そのような材料として記載されるポリマーは、とりわけポリアミドであり、多数のポリアミドのうち、例えばPA6、PA12、PA6I、PA610、PA66、PA612が挙げられ、またその共重合体または混合物である。当該発明において、こうして製造される成形品は極めて透明であり、人工降雨剤としてのナノ粒子の動作が強調される。
【0010】
欧州特許出願公開第0734833号明細書は、一例としてスキー用の透明フィルムとして用いられる熱可塑性材料を記載する。しかしながら、そのような透明フィルムとして提案された材料は、とりわけポリアミドからなるフィルムであり、射出成形加工により熱可塑性材料からなる追加層が生成されるので、スキーの表面上に配置されることは意図されていない。このフィルムは、例えばとりわけPA6、PA66、PA12、PA11のホモポリアミドだけでなく、または代替的に例えばポリオレフィンの混合物、または例えばPA6/12のコポリアミドの混合物から製造される。
【0011】
さらに、米国特許出願公開第2005/0084685号明細書は、ポリアミドおよび熱可塑性ポリウレタン(TPU)を基礎とする多層構造を記載する。ここでは、透明PA層とTPU層からなる多層システムが保護され、PAは、半芳香族のポリアミド、半脂環式のポリアミド、または脂肪族のポリアミド、具体的にはとりわけPA11とPA12、PA612、PA69乃至PA1212、またPA11またはPA12を少なくとも90%含有するPA11/12またはPA12/11の中から選択される。装飾品、具体的にはPU発泡体および成形PU、特にスキーおよびシューズに利用することが記載される。
【0012】
国際公開第2004/037898号パンフレットは、Mn=200−4000g/molの場合にPTMGブロック(ポリテトラメチレン・グリコール・ブロック)を具備し、例えばPA612、PA912、PA1010、PA1012などの適量のコモノマーを有する半結晶線形脂肪族PA(環状PAと分岐PAは除く)を具備して、結晶化度を最小限にし、PEBAとの互換性を提供するようにする透明PEBA(ポリエーテル・ブロック・アミド)について記載する。ショアD硬度は、20乃至70の間である。スポーツシューズに用いられる。
【0013】
米国特許出願公開第2002/0173596号明細書もまた、最も外部の上部層としてスキーに適した透明材料を記載する。透明PAは、脂環式の構成要素(5乃至40%)(B)を少なくとも一つ具備することが記載されている。さらに次の構成を備える。すなわち、0乃至40%のPEBA(C)、0乃至20%の適合材(D)、0乃至40%の修飾因子(M)から構成され、C+D+M=0〜50%である。100%を構成する残りの要素は、一般的に半結晶PA、具体的にはPA11およびPA12、またPA612である。ここで用いる構成要素Cもまたコポリアミドを含む。ここでは、具体的にはスキー用のフィルム/シートとして、特に透明保護フィルムとして使用することを記載する。
【0014】
欧州特許出願公開第1227132号明細書は同様に、ポリアミドを基礎とする透明材料を記載する。透明ポリアミドは、少なくとも一つの芳香族ジカルボン酸(5乃至40%)(B)を具備する。さらに次の構成を備える。すなわち、0乃至40%のPEBA(C)、0乃至20%の適合材(D)から構成され、C+D=2〜50%で、B+C+D>=30%である。100%を構成する残りの要素は、一般的に半結晶PA、具体的にはPA11およびPA12、またPA612である。具体的にはスキー用のフィルム/シートとして、特に透明保護フィルムとしての利用を記載する。
【0015】
欧州特許第0779084号明細書は、単一押出しまたは共押出しされた二層のフィルムで構成されるスキー/スノーボード用上塗材を記載し、当該フィルムは、カプロラクタム含有物を60乃至98mol%の範囲で(カプロラクタムの46重量%乃至97重量%に対応して)備え、任意に改良されるコポリアミドPA6/12からなる。
【0016】
しかしながら、欧州特許第0779084号明細書において保護フィルムは、処理中、時々複数の寸法に変形し、そのため理想的な処理可能性やまたは理想的な保管能力を有しない。フィルムはさらに、大量保管中に付着する傾向を示し、望ましくない阻害効果をもたらす。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、一例として例えばスキー/スノーボードまたは他の用途の上塗材、保護層、および/または印刷支持体用のフィルム材料を発展させるという目的に基づいており、上記の要求全てを少なくとも効果的に満たし、好適にはこれまで用いられたポリマーよりもより効果的で、かつ経済的に有利であり、さらに例えば上塗材用の簡素な製造方法を利用することが可能となる。特に目的には、PA6/12を基礎とする層からなる単層フィルムを含む上塗材を改良し、またはPA6/12を基礎とする少なくとも一つの層を備えた多層フィルムを改良することがある。例えば欧州特許第0779084号明細書に記載される上塗材が挙げられる。
【0018】
この目的は特に、上塗材、および請求項1に記載のフィルム、請求項20に記載の上塗材の製造方法、および請求項22に記載の上塗材の利用のそれぞれにより達成される。
【0019】
この目的は、それゆえ、とりわけPA6/12を基礎とする層が、PA6、PA12、PA610および/またはPA612のグループから選択された少なくとも一つのポリアミド・ホモポリマーを含むことで達成される。本発明に係るフィルムまたは層はそれゆえ、コポリアミド、具体的にはPA6/12と、上述のようなホモポリアミド、好適にはPA612とからなる混合物(ブレンドまたはアロイ(alloy))である。驚くべきことに、純コポリアミドの欠点は、ホモポリアミドの混合によって克服することができる。
【0020】
それゆえ、本発明の中核は、とりわけPA6、PA610、PA612またはPA12のグループから選択したポリアミドを混合し、ジアミン、ジカルボン酸もしくはω-アミノカルボン酸の重縮合によって、またはPA6/12コポリアミドの基質を備えたラクタムの重合により調合され、特に好適には、2ラクタム・カプロラクタムとラウロラクタムの重合により調合される。ここで驚くべき結果として、とりわけフィルムの寸法安定性を改善することができる一方で、意外にも透明性を保持することができる。そのようなPAアロイは、特にこの種の利用との関連では先行技術には記載されていない。先行技術文献は全て、少なくとも一つの脂環式構成要素または芳香族構成要素が含まれることによって透明性を達成している。それゆえ、前記の文献には、透明フィルムを達成するのに従来のアプローチを記載し、例えば非晶質ポリマー用の芳香族構成要素並びに脂環式構成要素の追加または利用によるアプローチを記載する。それに対応して、半結晶ホモポリアミドの混合物が透明性を損なわないということを全く期待できない。
【0021】
要求された性質、とりわけカレンダー加工後に変形しないことと保管中にブロッキングしないことは複合的要件であり、これらのためにここで発見された解決策は、当業者にとって本質的に明らかなものでは全くない。
【0022】
そのような上塗材は、好適には上述のポリアミド・ホモポリマー、例えばPA612やPA6/12などと同時に追加ポリアミドを含まない。
【0023】
第一の好適な実施形態として、PA6/12を基礎とする層は追加ポリアミド構成要素としてPA612のみを含み、例えばPA6/12の85重量%乃至5重量%とPA612の15重量%乃至95重量%が存在するように、好適にはPA6/12の80重量%乃至15重量%とPA612の20重量%乃至85重量%、特に好適にはPA6/12の75重量%乃至25重量%とPA612の25重量%乃至75重量%となるようにする。また、PA6/12を基礎とする層は、PA612の少なくとも10重量%か、またはPA612の少なくとも20重量%を含むことが可能であり、好適にはPA612の少なくとも25重量%、特に好適にはPA612の少なくとも35重量%とし、追加添加物を混合することが適切な場合に、残りの重量部分をPA6/12で形成することが可能である。
【0024】
さらに好適な実施形態として、PA6/12を基礎とする層は、追加ポリアミド構成要素としてPA610のみを含み、例えばPA6/12の60重量%乃至5重量%とPA610の40重量%乃至95重量%が存在するように、好適にはPA6/12の50重量%乃至10重量%とPA610の50重量%乃至90重量%、特に好適にはPA6/12の30重量%乃至15重量%とPA610の70重量%乃至85重量%とするようにする。
【0025】
さらに好適な実施形態として、PA6/12を基礎とする層は、追加ポリアミド構成要素としてPA6のみを含み、例えば、PA6/12の90重量%乃至5重量%とPA6の10重量%乃至95重量%が存在するようにし、好適にはPA6/12の80重量%乃至10重量%とPA6の20重量%乃至90重量%、特に好適にはPA6/12の75重量%乃至25重量%とPA6の25重量%乃至75重量%とするようにする。
【0026】
さらに好適な実施形態として、PA6/12を基礎とする層は、追加ポリアミド構成要素としてPA12のみを含み、例えばPA6/12の85重量%乃至50重量%とPA12の10重量%乃至50重量%が存在するようにし、好適にはPA6/12の80重量%乃至50重量%とPA12の20重量%乃至50重量%、特に好適にはPA6/12の75重量%乃至60重量%とPA12の25重量%乃至40重量%とするようにする。
【0027】
具体的には、驚くべきことに、特にPA612の場合に、ポリアミド・ホモポリマーの好適な性質のいくつかは、たとえ合金中にかなり低い含有量(例えば25%)を用いたとしても強く反映し、実際には過剰となる。上述の重量%の数値の場合、これらは通常上述のポリアミド・ホモポリマーの中の個別ポリアミド・ホモポリマーの結果である。しかしながら、上述のポリアミド・ホモポリマーの適切な混合物の使用もまた可能である。一例として、PA6/12にPA6およびPA12からなる混合物を混合することも可能であり、二つの構成物質PA6およびPA12の全ては次に、例えば少なくとも10、15または20重量%生成する。しかしながら、上述の重量%の数値はいずれの場合にも上述のポリアミド・ホモポリマーのうち一つのみがPA6/12と一緒に混合物中に存在する状態を表していることが好ましい。
【0028】
さらに好適な実施形態として、添加物は以下のグループより選択される一つ以上の添加物を含む。すなわち、鎖調整器、触媒、潤滑剤、ブロッキング防止剤、安定剤、特に熱安定剤、UV安定剤、顔料、染料および/または衝撃改質剤のグループより選択される。同様に、そのような層を備えたナノ充填剤を混合することが可能である。適切なナノ充填剤はナノメーターの範囲で微粒子を具備する物質であるため、十分な透明性を保持する。本発明で用いられるナノスケール充填剤は、好適にはホウ素、アルミニウム、カルシウム、ガリウム、インジウム、シリコン、ゲルマニウム、錫、チタニウム、ジルコニウム、亜鉛、イットリウムまたは鉄の酸化物または酸化水和物のグループより選択される。
【0029】
コポリマー含有物は好適には、PA6/12のカプロラクタム含有物が60乃至98モル%の範囲となるように調整される。カプロラクタムのモル%は以下の式によりカプロラクタムの重量%に変換することができることに考慮すると、結果の範囲はカプロラクタムの46乃至97重量%である。カプロラクタム含有物は、好適には55乃至98重量%の範囲となる。
【0030】
y=(11 316×X)/(19 732−84.16×X)
y=カプロラクタムの重量%およびx=カプロラクタムのモル%である。
【0031】
加工可能とするために、カプロラクタム含有物は、好適には少なくとも150℃の融点を提供するよう調整される。
【0032】
ここで、相対粘度が1.6乃至2.0の範囲、好適には1.80乃至1.90の範囲となるようにPA6/12を選択することが有利である。いずれの場合にもm−クレゾールの0.5%強度溶液の下で測定する。同じように、PA6の場合、相対粘度が3.0乃至4.0の範囲、好適には3.5乃至3.8の範囲となるようにポリアミド・ホモポリマーを選択することが有利である。いずれの場合にも、硫酸の1.0%強度溶液の下で測定する。PA12の場合、2.0乃至3.0の範囲の相対粘度が有利であり、好適には、2.1乃至2.4の範囲が有利である。いずれの場合にも、m−クレゾールの0.5%強度溶液の下で測定する。PA610の場合、1.5乃至2.5の範囲の相対粘度が有利であり、好適には1.8乃至2.2の範囲が好適であり、いずれの場合にも、m−クレゾールの0.5%強度溶液の下で測定する。PA612の場合には、相対粘度は1.5乃至2.5の範囲であり、好適には2.0乃至2.3の範囲であることが好ましく、いずれの場合にもm−クレゾールの0.5%強度溶液の下で測定する。
【0033】
上塗材の好適な実施形態として、500μmの厚さの単層フィルムまたは多層フィルムの透明度は、ASTM D1003、光源Cによれば少なくとも90%である。
【0034】
上塗材のさらに好適な実施形態として、上塗材および単層フィルムまたは多層フィルムはそれぞれ透明か、あるいは少なくとも半透明とする。さらに好適には、昇華印刷などの印刷工程において印刷可能である。驚くべきことに、PA612の連続増加混合物を用いた場合、硬度は基本的にそのままであるが、弾性(乾燥)モジュールに調整することが可能である。ポリアミド・ホモポリマー構成要素が非常に少なく追加された場合でさえ、乾燥状態(加工状態)における弾性モジュールは増加するが、調整済みの状態(使用状態)における弾性モジュールはゆっくりしか変化せず、混合物はフィルム製造中、加工状態に調整することができ、例えば1800乃至2200MPaの範囲で調整することができる。これにより、その性質を諸要件に適切かつ柔軟に調整することが可能となる。
【0035】
上塗材の構造には、好適には単層フィルムを含む。しかしながら、多層フィルムもまた可能であり、その場合、この多層フィルムの当該層、例えば二層フィルムの層の少なくとも一つが上述のPA6/12およびPA612のアロイを形成し、さらに例としてTPU、ABS/TPU、PA11、PA12、PA11/12、PA12/11、またはその混合物を基礎とする層が存在しうる。追加的な層の材料は、好適には熱可塑性ポリウレタンおよびそれとABSとの混合物(ブレンド)などの熱可塑性材料を含むことができ、またはポリアミド−11あるいはポリアミド−12およびその混合物と、それぞれにコポリマーを含むことができる。
【0036】
本発明はさらに、上述の上塗材の製造方法を提供する。この方法において、層を200℃以上の温度で複合構成物PA6/12の押出し成形により製造し、PA6、PA12、PA610および/またはPA612、またあらゆる添加物から選択される少なくとも一つのポリアミド・ホモポリマーが存在する。多層フィルムの場合、この層は一つ以上の追加フィルム層と共に押し出されうる。(共)押出し工程の後、フィルムが光沢付けされることが好ましい。この光沢付け工程は加熱ロールの間で行なうことができる。
【0037】
追加層(または複数の層)もまたここに設けられ、特に好適には、顔料の混合物の層を設けることができる。一例として、二酸化チタンを顔料として用いることにより白い背景層を得ることが可能である。例として、この種の層は、機能的な移植(grafted)ポリオレフィンに基づいて形成することができ、接着できるようにする。この追加層は、PA6/12を基礎とする層と印刷物(例えばデジタルプリント、インクジェット、昇華印刷、パッド印刷など)の間に配置することができるが、代わりとして、印刷物がPA6/12を基礎とする層と顔料添加物を有する前記の層との間に配置されることが好ましい。
【0038】
当業者は、そのようなフィルムを条件に合わせたラミネート工程で利用することができ、圧力および/または高温を利用することにより基材が保護されるようにすることができる。基材に上塗材を接着することもまた考えられ、または例えばIMD(インモールド装飾)加工もしくはIML(インモールド標識化)加工などの射出成形加工により裏面被覆または後部射出することが考えられる。
【0039】
本発明はまた、上述の上塗材をスポーツ用品、特にスキー、スノーボード、サーフボード、スケートボード、スティック、バット、ラケットなどや、または家庭用機器、電気機器、家具、食卓用食器、繊維製品、シューズ、看板、床などの機器のハウジング、自動車部門、機械用の表面保護剤および/または印刷支持体として、またはディスプレーカバー用表面保護層として、またはスキーパス、装飾品などの印刷支持体用の表面保護層として使用することができる。
【0040】
従属項は本発明のさらに好適な実施形態について記載する。
【発明の実施方法】
【0041】
以下の具体例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。実施例は専ら本発明を支持し説明することのみを意図しており、添付の請求項に定式化された保護範囲を限定するものではない。
【0042】
単層フィルムは、異なる比率の二つの構成要素コポリアミドPA6/12およびホモポリアミドPA612(実験1−7および14−16)、異なる比率のホモポリアミドPA610(実験8、9)、異なる比率のホモポリアミドPA6(実験10、11)および異なる比率のホモポリアミドPA12(実験12、13)を混合することにより製造された。いずれの場合にも、比較のために、混合なしの配合も実施し(C1−C5)、構成要素PA6/12およびPA612は、ある時には、熱/UV安定剤を追加して(C6およびC7)配合した。配合材料は押し出されてフィルムが得られた。
【0043】
ここで用いた6/12コポリアミドは、カプロラクタム含有率が75重量%で相対粘度(RV)が1.85(m−クレゾールの0.5%強度溶液の下で測定)であるコポリアミドを含む。
【0044】
以下のポリマーをホモポリアミドとして用い、RV=3.65(硫酸1%)のポリアミド−6、RV=2.0(m−クレゾール0.5%)のポリアミド−610、RV=2.1(m−クレゾール0.5%)のポリアミド−612、RV=2.25(m−クレゾール0.5%)のポリアミド−12である。
【0045】
比較例C1−C5と本発明の実施例1−10は、コーリン博士ZK25実験室において3kg/h(加熱区域:250℃)の処理能力を有する押出機により混合された。比較例C6−C7と実施例8−10では、追加実施例において、熱安定化装置およびUV安定化装置(コポリアミドおよびホモポリアミドの混合中の追加)を設け、ZSK25二軸押出機において、15kg/hの処理能力を有するワーナー・アンド・フレイダラー(Werner & Pfleiderer)から配合される。
【0046】
表1は、安定化装置のないさまざまな実験装置の重量比率を示し、表2は熱安定化装置およびUV安定化装置を有する実験装置の重量比率を示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
改良型1−10は次に、標準的な測定により比較実験例C1―C7と比較された。表3および4はその結果を示す。
【0050】
結果
かなりの程度、弾性係数はホモPAの割合によりコPA6/12に調整することができる。驚くべきことに、ホモポリアミドをほんの僅か添加するだけで破断点での引っ張りひずみと低温(シャルピー)耐衝撃度を改善し、一方でショアD硬度は実質的には不変であり、透明性もまた保持される(表3を参照)。
【0051】
【表3】

【0052】
さらに好適な材料性質は以下の通りである(表4を参照)。
・加工中/加工後の寸法安定性を増加させた。
・内部圧力レベルを減少させた(偏光フィルターを用いた観測による評価)
・良好な接触透明度
・不粘着/ブロッキングなし
【0053】
【表4】

【0054】
純粋構成要素が十分な透明性を具備している(PA6/12、PA612、PA610、PA6;C1−C4)にもかかわらず、それらはブロッキングする傾向を有し、すなわち、フィルムは相互接触する際に移動することはできないことを意味する。PA12(C5)は、良好なブロッキング能力を示すが、適当な透明性を具備しない。
【0055】
本発明の混合物は、ASTM D1003による90%以上の透明度に表される良好な接触透明性だけでなく、良好なブロッキング能力もまた示す。さらに、寸法安定性および剛性も良好である。
【0056】
本発明のフィルムは、とりわけ以下の利用に適することが分かった。
【0057】
スキー/スノーボードおよび他のウインタースポーツ用品用の上塗材。サーフボード、ウェーブボード、スケートボード、および他のサマースポーツ用品用の上塗材。この目的のため、フィルムは押し出され、光沢付けされてカットされる。昇華印刷、インクジェット、スクリーン印刷、パッド印刷、デジタル印刷などにより後部に印刷された後に、フィルムを場合によっては追加フィルムと共に、印刷面にラミネート加工するため、スキーにラミネート加工し、またはIMDもしくはIML加工をする。保護フィルムの一般的な利用に拡張できる例として、ディスプレーカバー、スキーパス、装飾用品などがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にスキー、スノーボード、スティック、バット、ラケットなどのスポーツ用品、家庭用機器、電気機器、家具、機械などの機器のハウジングに使用し、PA6/12を基礎とする層からなる単層フィルムまたはPA6/12を基礎とする少なくとも一つの層を有する多層フィルムからなる上塗材であり、PA6/12を基礎とする層もまたPA6、PA12、PA610および/またはPA612のグループより選択される少なくとも一つのポリアミド・ホモポリマーを含むことを特徴とする上塗材。
【請求項2】
PA6/12を基礎とする層は、追加添加物を混合することが適切な場合に、追加ポリアミドとしてPA612のみを基本的に含むことを特徴とする請求項1に記載の上塗材。
【請求項3】
PA6/12を基礎とする層は、PA6/12の85重量%乃至5重量%とPA612の15重量%乃至95重量%、好適にはPA6/12の80重量%乃至15重量%とPA612の20重量%乃至85重量%、特に好適にはPA6/12の75重量%乃至25重量%とPA612の25重量%乃至75重量%を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の上塗材。
【請求項4】
PA6/12を基礎とする層は、PA612の少なくとも10重量%か、またはPA612の少なくとも20重量%、好適にはPA612の少なくとも25重量%、特に好適にはPA612の少なくとも35重量%を含み、追加添加物を混合することが適切な場合に、残りの重量部分をPA6/12で形成することを特徴とする請求項1または2に記載の上塗材。
【請求項5】
PA6/12を基礎とする層はまた、追加添加物を混合することが適切な場合に、追加ポリアミドとして基本的にPA610のみを含むことを特徴とする請求項1に記載の上塗材。
【請求項6】
PA6/12を基礎とする層は、PA6/12の60重量%乃至5重量%とPA610の40重量%乃至95重量%、好適にはPA6/12の50重量%乃至10重量%とPA610の50重量%乃至90重量%、特に好適にはPA6/12の30重量%乃至15重量%とPA610の70重量%乃至85重量%を含むことを特徴とする請求項1または5に記載の上塗材。
【請求項7】
PA6/12を基礎とする層はまた、追加添加物を混合することが適切な場合に、追加ポリアミドとして基本的にPA6のみを含むことを特徴とする請求項1に記載の上塗材。
【請求項8】
PA6/12を基礎とする層は、PA6/12の90重量%乃至5重量%とPA6の10重量%乃至95重量%、好適にはPA6/12の80重量%乃至10重量%とPA6の20重量%乃至90重量%、特に好適にはPA6/12の75重量%乃至25重量%とPA6の25重量%乃至75重量%を含むことを特徴とする請求項1または7に記載の上塗材。
【請求項9】
PA6/12を基礎とする層はまた、追加添加物を混合することが適切な場合に、追加ポリアミドとして基本的にPA12のみを含むことを特徴とする請求項1に記載の上塗材。
【請求項10】
PA6/12を基礎とする層は、PA6/12の85重量%乃至50重量%とPA12の10重量%乃至50重量%、好適にはPA6/12の80重量%乃至50重量%とPA12の20重量%乃至50重量%、特に好適にはPA6/12の75重量%乃至60重量%とPA12の25重量%乃至40重量%を含むことを特徴とする請求項1または9に記載の上塗材。
【請求項11】
PA6/12を基礎とする層は、添加物の混合物を有し、当該添加物として、ナノ充填剤、鎖調整器、触媒、潤滑剤、ブロッキング防止剤、安定剤、特に熱安定剤、UV安定剤、顔料、染料および/または衝撃改質剤のグループより選択される一つ以上の添加物が挙げられることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の上塗材。
【請求項12】
PA6/12は、46重量%乃至98重量%の範囲、好適には55重量%乃至98重量%または60重量%乃至80重量%の範囲のカプロラクタム含有物を具備し、および/またはPA6/12の融点が少なくとも150℃になることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の上塗材。
【請求項13】
PA6/12の相対粘度は、いずれの場合にもm−クレゾールの0.5%強度溶液の下で測定して、1.6乃至2.0の範囲、好適には1.80乃至1.90の範囲であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の上塗材。
【請求項14】
ポリアミド・ホモポリマーの相対粘度は、PA6の場合、いずれの場合にも硫酸の1.0%強度溶液の下で測定し、3.0乃至4.0の範囲、好適には3.5乃至3.8の範囲であり、
PA12の場合、いずれの場合にも、m−クレゾールの0.5%強度溶液の下で測定し、2.0乃至3.0の範囲、好適には、2.1乃至2.4の範囲であり、
PA610の場合、いずれの場合にも、m−クレゾールの0.5%強度溶液の下で測定し、1.5乃至2.5の範囲、好適には1.8乃至2.2の範囲であり、
PA612の場合には、いずれの場合にも、m−クレゾールの0.5%強度溶液の下で測定し、1.5乃至2.5の範囲であり、好適には2.0乃至2.3の範囲であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の上塗材。
【請求項15】
単層フィルムまたは多層フィルムは透明であり、特に好適には、昇華印刷および/またはインクジェット印刷および/またはスクリーン印刷および/またはパッド印刷および/またはデジタル印刷などの印刷工程において印刷可能であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の上塗材。
【請求項16】
500μmの厚さの単層フィルムまたは多層フィルムの透明度は、ASTM D1003、光源Cに対して少なくとも90%であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の上塗材。
【請求項17】
単層フィルムまたは多層フィルムの弾性モジュールは、1800MPa乃至2200MPaであることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の上塗材。
【請求項18】
単層フィルムを含むことを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の上塗材。
【請求項19】
特に好適には顔料混合物を有する追加層で、例えば機能的な移植ポリオレフィンを基礎とする追加層が配置され、この追加層は、PA6/12を基礎とする層と印刷物の間に配置することができ、またはより好適には印刷物は、PA6/12を基礎とする層と顔料混合物を有する前記の層との間に配置されることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の上塗材。
【請求項20】
200℃以上の温度で複合構成要素PA6/12とPA6、PA12、PA610および/またはPA612とあらゆる添加物から選択される少なくとも一つのポリアミド・ホモポリマーの押出し成形により当該層を製造する工程と、多層フィルムの場合には、この層を一つ以上の追加フィルムと共に押し出すことができ、当該フィルムは特に好適には押出工程の後に、光沢付けされる工程を含むことを特徴とする請求項1乃至19に記載の上塗材の製造方法。
【請求項21】
圧力および/または高温を用いたラミネート加工、または射出成形加工における裏面被覆または後部射出を用いてフィルムを基材に貼り付けることにより、保護および/または装飾するようにすることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
特にスキー、スノーボード、スティック、サーフボード、スケートボード、バットなどのスポーツ用品、または家庭用機器、電気機器、家具、機械類などの機器のハウジングの表面保護および/または印刷支持体として、または食卓用食器、繊維製品、シューズ、看板、床、ディスプレーカバー用の表面保護層として、またはスキーパス、または装飾品などの印刷支持体用の表面保護層としての請求項1乃至19のいずれかに記載の上塗材の使用方法。

【公開番号】特開2007−197691(P2007−197691A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−345088(P2006−345088)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(504236983)エムス−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】