上皮系細胞の重層化培養方法、それから得られる重層化上皮系細胞シート及びその利用方法
【課題】上皮系細胞の新しい重層化培養方法及びそれから得られる重層化上皮系細胞シートを提供すること。
【解決手段】上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されている培養方法とすること。
【解決手段】上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されている培養方法とすること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、医学等の分野における上皮系細胞の重層化培養方法、それから得られる重層化上皮系細胞シート及びその利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療技術の著しい発展により、近年、治療困難となった臓器を他人の臓器と置き換えようとする臓器移植が一般化してきた。対象となる臓器も皮膚、角膜、腎臓、肝臓、心臓等と実に多様で、また、術後の経過も格段に良くなり、医療の一技術としてすでに確立されつつある。一例として角膜移植をあげると、約40年前に日本にもアイバンクが設立され移植活動が始められた。しかしながら、未だにドナー数が少なく、国内だけでも角膜移植の必要な患者が年間約2万人出てくるのに対し、実際に移植治療が行える患者は約1/10の2000人程度でしかないといわれている。角膜移植というほぼ確立された技術があるにもかかわらず、ドナー不足という問題のため、次なる医療技術が求められているのが現状である。
【0003】
このような背景のもと、以前より、人工代替物や細胞を培養して組織化させたものをそのまま移植しようという技術が注目されている。その代表的な例として、人工皮膚及び培養皮膚があげられよう。しかしながら、合成高分子を用いた人工皮膚は拒絶反応等が生じる可能性があり、移植用皮膚としては好ましくない。一方、培養皮膚は本人の正常な皮膚の一部を所望の大きさまで培養したものであるため、これを使用しても拒絶反応等の心配がなく、最も自然なマスキング剤と言える。
【0004】
特許文献1には、ヒト新生児由来表皮角化細胞を、ケラチン組織の膜が容器表面上に形成される条件下で培養し、生成したケラチン組織膜を酵素を用いて剥離させることを特徴とする移植可能な培養細胞膜を製造する方法が記載されている。具体的には、3T3細胞をフィーダーレイヤーとして用いることで、播種した表皮細胞は増殖し、しかもそのまま重層化してしまうというものである。この方法は、今や表皮角化細胞を培養する方法の主流にまでなっている。しかしながら、この方法には欠点があり、すなわち上記3T3細胞がマウス由来の細胞である点がよく指摘される。一般的には、表皮角化細胞を培養している間にこの3T3細胞は消失すると言われているが、未だに100%消失したことを証明することができていないのが現状である。
【0005】
この点を解決すべく、これまでに種々の検討がなされてきた。例えば、別の培養基材上で3T3細胞を培養し、表皮角化細胞に有効な物質を培地中に出させ、その上清だけを表皮角化細胞を培養している系に移す方法があげられる(特許文献2、特許文献3)。しかしながら、この方法でも、異種動物の細胞自身の混入は防げても、異種動物細胞が産生するさまざまな蛋白質を分割している訳でなく、基本的に同様な問題が残されている。その他に、ヒト由来の細胞をフィーダーレイヤーとして利用しようとする試みもなされているが、未だに上記3T3細胞並みの活性を持った細胞が得られておらず、3T3細胞に代わる有効な技術が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−23191号公報
【特許文献2】特開平9−313172号
【特許文献3】特開2001−149070号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決することを意図してなされたものである。すなわち、本発明は、従来技術と全く異なった発想からの新規な上皮系細胞の重層化培養方法及びそれから得られる重層化上皮系細胞シートを提供することを目的とする。また、本発明は、その利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、驚くべくことに、上皮系細胞を多孔膜上で培養させ、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間、常に多孔膜を介して培地が下層から供給されれば上皮系細胞が重層化されることを見出した。また、多孔膜下層部の培養床に細胞外マトリックス層を設け、その内部または上部、或いはその双方にフィーダー細胞を培養しても上皮系細胞が重層化されることを見出した。さらに、多孔膜表面に水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子を被覆し、その上で上皮系細胞が培養され、重層化させた後、培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、培養した角膜上皮細胞シートまたはその重層化シートをキャリアに密着させれば、そのままキャリアと共に剥離させられることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されている上皮系細胞の重層化培養方法を提供する。
また、本発明は、多孔膜下層部の培養床に細胞外マトリックス層を設け、その内部または上部、或いはその双方にフィーダー細胞を培養することを特徴とする上皮系細胞の重層化培養方法を提供する。
さらに、本発明は、多孔膜表面に水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子を被覆し、その上で上皮系細胞が培養され、重層化させた後、
(1)培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、
(2)培養した角膜上皮細胞シートまたはその重層化シートをキャリアに密着させ、
(3)そのままキャリアと共に剥離する
ことを特徴とする上皮系細胞の重層化培養方法を提案する。
加えて、本発明は、上記方法で得られた重層化上皮系細胞シートを提供する。
さらに加えて、本発明は、組織の一部或いは全部を損傷もしくは欠損した患部に対し、上記重層化上皮系細胞シートを移植することを特徴とする治療法を提供する。
具体的には本願は、下記の発明を提供する。
[1]
上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されている上皮系細胞の重層化培養方法。
[2]
上皮系細胞を分化または維持させるためのフィーダー細胞を用いずに培養することを特徴とする[1]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[3]
上皮系細胞が角膜上皮細胞、表皮角化細胞、口腔粘膜細胞、結膜上皮細胞である、[1]または[2]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[4]
上皮系細胞がヒト由来のものである、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[5]
多孔膜下層部の培養床に細胞外マトリックス層を設け、その内部または上部、或いはその双方にフィーダー細胞を培養することを特徴とする、[1]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[6]
フィーダー細胞を変性させることなく培養することを特徴とする、[5]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[7]
細胞外マトリックスがコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンであることを特徴とする[5]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[8]
フィーダー細胞が線維芽細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞であることを特徴とする[5]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[9]
上皮系細胞及びフィーダー細胞が同一種の動物由来のものである、[5]〜[8]のいずれか1つに記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[10]
上皮系細胞及びフィーダー細胞がヒト由来のものである、[5]〜[9]のいずれか1つ記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[11]
多孔膜表面に水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子を被覆し、その上で上皮系細胞が培養され、重層化させた後、
(1)培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、
(2)培養した角膜上皮細胞シートまたはその重層化シートをキャリアに密着させ、
(3)そのままキャリアと共に剥離する
ことを特徴とする、[1]〜[10]のいずれか1つ記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[12]
温度応答性高分子が、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である、[11]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[13]
キャリアの形状が中心部を切り抜いたリング状のものである、[11]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[14]
剥離が蛋白質分解酵素による処理が施されていない、[11]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[15]
多孔膜がセルインサートであることを特徴とする、[1]〜[14]のいずれか1つ記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[16]
[1]〜[15]のいずれか1つ記載の方法で得られたフィーダー細胞を含まない重層化上皮系細胞シート。
[17]
組織の一部或いは全部を損傷もしくは欠損した患部を治療するための、[16]の重層化上皮系細胞シート。
[18]
組織が前眼部組織、皮膚組織、粘膜組織である、[17]記載の重層化上皮系細胞シート。
[19]
患部に被覆する際、患部の大きさ、形状に沿って切断された、[17]または[18]記載の重層化上皮系細胞シート。
[20]
治療が両眼性の難治性角結膜疾患であることを特徴とする、[19]記載の重層化上皮系細胞シート。
[21]
治療が角膜びらん、角膜潰瘍であることを特徴とする、[19]記載の重層化上皮系細胞シート。
[22]
治療がRK法、PRK法、LASIK法による屈折矯正であることを特徴とする、[19]記載の重層化上皮系細胞シート。
[23]
治療がLASEK法による屈折矯正であることを特徴とする、[19]記載の重層化上皮系細胞シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明に記載される方法であれば、上皮系細胞を多孔膜上で培養することでフィーダー細胞を用いることなく重層化させられる。また、フィーダー細胞を細胞外マトリックスと共に培養することでフィーダー細胞を何ら変性させることなく上皮系細胞を重層化させられる。さらに、上記多孔膜上に温度応答性高分子を被覆すれば、冷却のみで重層化させた上皮系細胞を剥離させることができ、そのため生体組織への生着性が極めて高い高生着性の重層化上皮系細胞シートが得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1、2に示す実施方法を示すものである。
【図2】実施例1の培養13日後のウサギ重層化角膜上皮細胞のようすを示す写真である。
【図3】実施例の培養13日後のウサギ重層化角膜上皮細胞のようすを示す写真である。
【図4】実施例1のウサギ重層化角膜上皮細胞シートを剥離したようすを示す写真である。
【図5】実施例2のウサギ重層化角膜上皮細胞シートを剥離したようすを示す写真である。
【図6】実施例1のウサギ重層化角膜上皮細胞シート切片をH&E染色ときのようすを示す写真である。
【図7】実施例2のウサギ重層化角膜上皮細胞シート切片をH&E染色ときのようすを示す写真である。
【図8】実施例3、4に示す実施方法を示すものである。
【図9】実施例3の培養14日後のヒト重層化角膜上皮細胞のようすを示す写真である。
【図10】実施例4の培養14日後のヒト重層化角膜上皮細胞のようすを示す写真である。
【図11】実施例4のヒト重層化角膜上皮細胞シートを剥離したようすを示す写真である。
【図12】実施例3のヒト重層化角膜上皮細胞シート切片をH&E染色ときのようすを示す写真である。
【図13】実施例4のヒト重層化角膜上皮細胞シート切片をH&E染色ときのようすを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されていることを特徴とする上皮系細胞の重層化培養方法を提供する。その際、下層部に上皮系細胞を分化または維持させるためのフィーダー細胞を培養しても、或いは培養しなくても特に制約されるものではないが、本発明の方法に従えばフィーダー細胞を用いずに培養でき、製造上の効率、或いはフィーダー細胞のコンタミネーションを防ぐことができ好ましい。
【0013】
本発明に使用される好適な上皮系細胞として、たとえば角膜上皮細胞、表皮角化細胞、口腔粘膜細胞、結膜上皮細胞のいずれかもしくは2者以上の混合物が挙げられるが、その種類は、何ら制約されるものではない。また、その上皮系細胞の由来は特に制約されるものではないが、たとえばヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ブタ、ヒツジなどが挙げられるが、本発明の重層化上皮系細胞シートをヒトの治療に用いる場合はヒト由来の細胞を用いる方が望ましい。
【0014】
本発明における細胞培養のための培地は培養される細胞に対し通常用いられるものを用いれば特に制約されるものではないが、得られた重層化上皮系細胞シートをヒトの治療に用いる場合は用いる培地の成分は由来が明確なもの、もしくは医薬品として認められているものが望ましい。本発明ではこの培地を上皮系細胞が培養される多孔膜を介して上層及び下層に満たして行われる。この方法であれば、多孔膜上の上皮系細胞は上層にある培地だけでなく、下層部の培地も供給されることとなる。現時点では、詳細な理由は明らかになっていないが、この下層部からの十分な培地の供給が上皮系細胞の重層化に有用であるものと考えられる。
【0015】
また、本発明は、多孔膜下層部の培養床に細胞外マトリックス層を設け、その内部または上部、或いはその双方にフィーダー細胞を培養する上皮系細胞の重層化培養方法を提供する。この方法に従えば、フィーダー細胞を何ら変性させなくてもフィーダー細胞は増殖しなくなり、多孔膜上に培養された上皮系細胞が重層化する際に有用な物質を生産し続けることを見いだした。この方法は、従来、フィーダー細胞の増殖性を抑えるために行われていたマイトマイシンC処理やエックス線、ガンマ線処理を必要とせず、培養時の操作性が簡便になること、マイトマイシンCなどの本来細胞培養で使われないような薬物のコンタミネーションがなくなること、或いはエックス線、ガンマ線処理などといった大掛かりな作業も不要となり好ましい。本発明に使用される細胞外マトリックスとして、たとえばコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンのいずれかもしくは2者以上の混合物が挙げられるが、その種類は、何ら制約されるものではない。本発明に使用される細胞外マトリックスの被覆量及びその被覆方法は特に制約されたものではなく、常法に従って、ゲル化させたり、細胞外マトリックス溶液を乾固させれば良い。
【0016】
本発明で使用されるフィーダー細胞としては、たとえば線維芽細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞などが挙げられるが、特に制約されるものではない。また、上皮系細胞とフィーダー細胞は必ずしも同一種の動物由来のもので良いが、得られた重層化上皮系細胞シートを移植に用いる場合は上皮系細胞とフィーダー細胞を同一種の動物由来のものとした方が望ましい。また、この重層化上皮系細胞シートをヒトの治療に用いる場合は上皮系細胞とフィーダー細胞をヒト由来の細胞を用いる方が望ましい。
【0017】
多孔膜表面において被覆に用いられる温度応答性ポリマーは、水溶液中で上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度0℃〜80℃、より好ましくは20℃〜50℃を有する。上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度が80℃を越えると細胞が死滅する可能性があるので好ましくない。また、上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度が0℃より低いと一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細胞が死滅してしまうため、やはり好ましくない。
【0018】
本発明に用いる温度応答性高分子はホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このような高分子としては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。
【0019】
温度応答性高分子の多孔膜への被覆方法は、特に制限されないが、例えば、特開平2−211865号公報に記載されている方法に従ってよい。すなわち、かかる被覆は、基材と上記モノマーまたは高分子を、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理、有機重合反応のいずれかにより、または塗布、混練等の物理的吸着等により行うことができる。温度応答性高分子の被覆量は、0.4〜4.5μg/cm2の範囲が良く、好ましくは0.7〜3.5μg/cm2であり、さらに好ましくは0.9〜3.0μg/cm2である。0.2μg/cm2より少ない被覆量のとき、刺激を与えても当該高分子上の細胞は剥離し難く、作業効率が著しく悪くなり好ましくない。逆に4.5μg/cm2以上であると、その領域に細胞が付着し難く、細胞を十分に付着させることが困難となる。
【0020】
本発明における多孔膜の形態は特に制約されるものではないが、例えばセルインサートのような形態のもの、或いは平膜状のものなどが挙げられる。その際、上皮系細胞は多孔膜上層で培養される必要性がある。
【0021】
本発明において、上皮系細胞の培養は上述のようにして製造された多孔膜上で行われる。培地温度は、多孔膜表面に被覆された前記高分子が上限臨界溶解温度を有する場合はその温度以下、また前記高分子が下限臨界溶解温度を有する場合はその温度以上であれば特に制限されない。しかし、培養細胞が増殖しないような低温域、あるいは培養細胞が死滅するような高温域における培養が不適切であることは言うまでもない。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。
【0022】
本発明の方法において、重層化した上皮系細胞を多孔膜から剥離回収するには、培養された上皮系細胞シートをキャリアに密着させ、細胞の付着した支持体材料の温度を支持体基材の被覆高分子の上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることによって、そのままキャリアとともに剥離することができる。なお、シートを剥離することは細胞を培養していた培養液中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。また、その重層化シートを高収率で剥離、回収する目的で、細胞培養支持体を軽くたたいたり、ゆらしたりする方法、更にはピペットを用いて培地を撹拌する方法等を単独で、あるいは併用して用いてもよい。加えて、必要に応じて培養細胞は等張液等で洗浄して剥離回収してもよい。
【0023】
そのキャリアとは、例えば、高分子膜または高分子膜から成型された構造物、金属性治具などを使用することができる。例えば、キャリアの材質として高分子を使用する場合、その具体的な材質としてはポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース及びその誘導体、紙類、キチン、キトサン、コラーゲン、ウレタン等を挙げることができる。
【0024】
キャリアの形状は、特に限定されるものではないが、例えば得られた重層化上皮系細胞シートを移植する際に、キャリアの一部に移植部位と同程度もしくは移植部位より大きく切り拔いたものを利用すると、重層化上皮系細胞シートは切り拔かれたの周囲の部分だけに固定され、切り抜かれた部分にある細胞シートを移植部位に当てるだけで良く、好都合である。
【0025】
本発明における重層化上皮系細胞シートは培養時にディスパーゼ、トリプシン等で代表される蛋白質分解酵素による損傷を受けていないものである。そのため、基材から剥離された重層化上皮系細胞シートは、細胞−細胞間のデスモソーム構造が保持され、構造的欠陥が少なく、強度の高いものである。また、本発明のシートは培養時に形成される細胞−基材間の基底膜様蛋白質も酵素による破壊を受けていない。このことにより、移植時において患部組織と良好に接着することができ、効率良い治療を実施することができるようになる。以上のことを具体的に説明すると、トリプシン等の通常の蛋白質分解酵素を使用した場合、細胞−細胞間のデスモソーム構造及び細胞、基材間の基底膜様蛋白質等は殆ど保持されておらず、従って、細胞は個々に分かれた状態となって剥離される。その中で、蛋白質分解酵素であるディスパーゼに関しては、細胞−細胞間のデスモソーム構造については10〜60%保持した状態で剥離させることができることで知られているが、細胞−基材間の基底膜様蛋白質等を殆ど破壊してしまうため、得られる細胞シートは強度の弱いものである。これに対して、本発明の細胞シートは、デスモソーム構造、基底膜様蛋白質共に80%以上残存された状態のものであり、上述したような種々の効果を得ることができるものである。
【0026】
本発明では、重層化上皮系細胞シートを患部に当てた後、細胞シートをキャリアからはがせば良い。そのはがし方は、何ら制約されるものではないが、例えば、キャリアを濡らしてキャリアと細胞シートの密着性を弱めてはがす方法、或いはメス、はさみ、レーザー光、プラズマ波などの治具を用いても切断する方法でも良い。例えば上述したような一部を切り抜いたキャリアに密着した細胞シートを用いた場合、レーザー光などを用いて患部の境界線に沿って切断すると患部以外の余計なところへの細胞シートの付着を避けられ好都合である。
【0027】
本発明で示すところの重層化上皮系細胞シートと生体組織との固定方法は特に限定されるものではなく、細胞シートと生体組織を縫合しても良く、或いは本発明で示すところの重層化上皮系細胞シートは生体組織と速やかに生着するため、患部に付着させた細胞シートは生体側と縫合しなくても良い。
【0028】
本発明で示される重層化上皮系細胞シートの用途は、何ら制約されるものではないが、例えば火傷、瘢痕、あざ、角膜びらん、角膜潰瘍などの治療、或いはエキシマレーザーを中央部に照射して角膜表面を削り、角膜の屈折力を減少させて近視を矯正するピーアールケー(PRK)法、マイクロケラトームによって160μmの厚さで角膜実質層を切断しフラップを作製した後、フラップをめくり、エキシマレーザーで角膜実質層を削り取り、表面を整え、最後にフラップを元の位置に戻すレーシック(LASIK)法、アルコールを点眼し角膜表面を柔らかくさせ、マイクロケラトームを使わずに角膜上皮の50μmの厚さで切除してフラップを作製し、エキシマレーザーで角膜実質層を削り取り、表面を整え、最後にフラップを元の位置に戻すレーゼック(LASEK)法などの屈折矯正に有効である。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
[実施例1、2]
【0030】
深麻酔下のウサギ角膜輪部から常法に従って角膜上皮組織を採取し、0.05%トリプシン処理することで得られた細胞を、図1に示すような温度応答性高分子が2.0μg/cm2被覆されたセルカルチャーインサート上に播種した。細胞播種数及び使用した培地組成を図1に示す(37℃、5%CO2下)。実施例1では、インサート下層にフィーダー細胞としてマイトマイシンC処理したNIH−3T3細胞を播種した。実施例2ではフィーダー細胞を使用しなかった。培養13日後のウサギ重層化角膜上皮細胞のようすをそれぞれ図2(実施例1)、図3(実施例2)に示す。いずれの場合もウサギ角膜上皮細胞はコンフルエントに達するまで増殖し、重層化した。次に、セルインサートを20℃、30分間冷却し、リング状のキャリアを用いてセルカルチャーインサート上のウサギ重層化角膜上皮細胞シートを剥離することを試みたところ、いずれの場合も剥離させることができた。ウサギ重層化角膜上皮細胞シートを剥離した際のようすをそれぞれ図4(実施例1)、図5(実施例2)に示す。さらに、剥離した細胞シートが重層化していることを確認するために、得られたウサギ重層化角膜上皮細胞シート切片を常法(H&E染色)に従い染色した。染色した結果をそれぞれ図6(実施例1)、図7(実施例2)に示す。いずれの場合も重層化していることが確認できた。
[比較例1]
【0031】
深麻酔下のウサギ角膜輪部から常法に従って角膜上皮組織を採取し、0.05%トリプシン処理することで得られた細胞を、温度応答性高分子が2.0μg/cm2被覆された培養皿上に播種したこと以外は実施例1と同様に行った。その際、フィーダー細胞は使用しなかった。培養13日後にウサギ重層化角膜上皮細胞のようすを確認したが、ウサギ重層化角膜上皮細胞はコンフルエントに達するまで増殖したが重層化していなかった。
[実施例3、4]
【0032】
献眼ヒト角膜輪部から常法に従って角膜上皮組織を採取し、0.05%トリプシン処理することで得られた細胞を、図8に示すような温度応答性高分子が1.9μg/cm2被覆されたセルカルチャーインサート上に播種した。細胞播種数及び使用した培地組成を図8に示す(37℃、5%CO2下)。実施例3では、インサート下層にフィーダー細胞としてマイトマイシンC処理したNIH−3T3細胞を播種した。実施例4ではフィーダー細胞を使用しなかった。培養14日後のヒト重層化角膜上皮細胞のようすをそれぞれ図9(実施例3)、図10(実施例4)に示す。いずれの場合もヒト角膜上皮細胞はコンフルエントに達するまで増殖し、重層化した。次に、セルインサートを20℃、30分間冷却し、リング状のキャリアを用いてセルカルチャーインサート上のヒト重層化角膜上皮細胞シートを剥離することを試みたところ、いずれの場合も剥離させることができた。ヒト重層化角膜上皮細胞シートを剥離した際のようすを図11(実施例4)に示す。さらに、剥離した細胞シートが重層化していることを確認するために、得られたヒト重層化角膜上皮細胞シート切片を常法(H&E染色)に従い染色した。染色した結果をそれぞれ図12(実施例3)、図13(実施例4)に示す。いずれの場合も重層化していることが確認できた。
[比較例2]
【0033】
献眼ヒト角膜輪部から常法に従って角膜上皮組織を採取し、0.05%トリプシン処理することで得られた細胞を、温度応答性高分子が1.9μg/cm2被覆された培養皿上に播種したこと以外は実施例3と同様に行った。その際、フィーダー細胞は使用しなかった。培養14日後にヒト重層化角膜上皮細胞のようすを確認したが、ヒト重層化角膜上皮細胞はコンフルエントに達するまで増殖したが重層化していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に記載される方法であれば、上皮系細胞を多孔膜上で培養することでフィーダー細胞を用いることなく重層化させられる。また、フィーダー細胞を細胞外マトリックスと共に培養することでフィーダー細胞を何ら変性させることなく上皮系細胞を重層化させられる。さらに、上記多孔膜上に温度応答性高分子を被覆すれば、冷却のみで重層化させた上皮系細胞を剥離させることができ、そのため生体組織への生着性が極めて高い高生着性の重層化上皮系細胞シートが得られるようになる。この方法で得られる重層化上皮系細胞シートは、たとえば角膜移植、皮膚移植、角膜疾患治療、近視治療等の臨床応用が強く期待される。したがって、本発明は細胞工学、医用工学、などの医学、生物学等の分野における極めて有用な発明である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、医学等の分野における上皮系細胞の重層化培養方法、それから得られる重層化上皮系細胞シート及びその利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療技術の著しい発展により、近年、治療困難となった臓器を他人の臓器と置き換えようとする臓器移植が一般化してきた。対象となる臓器も皮膚、角膜、腎臓、肝臓、心臓等と実に多様で、また、術後の経過も格段に良くなり、医療の一技術としてすでに確立されつつある。一例として角膜移植をあげると、約40年前に日本にもアイバンクが設立され移植活動が始められた。しかしながら、未だにドナー数が少なく、国内だけでも角膜移植の必要な患者が年間約2万人出てくるのに対し、実際に移植治療が行える患者は約1/10の2000人程度でしかないといわれている。角膜移植というほぼ確立された技術があるにもかかわらず、ドナー不足という問題のため、次なる医療技術が求められているのが現状である。
【0003】
このような背景のもと、以前より、人工代替物や細胞を培養して組織化させたものをそのまま移植しようという技術が注目されている。その代表的な例として、人工皮膚及び培養皮膚があげられよう。しかしながら、合成高分子を用いた人工皮膚は拒絶反応等が生じる可能性があり、移植用皮膚としては好ましくない。一方、培養皮膚は本人の正常な皮膚の一部を所望の大きさまで培養したものであるため、これを使用しても拒絶反応等の心配がなく、最も自然なマスキング剤と言える。
【0004】
特許文献1には、ヒト新生児由来表皮角化細胞を、ケラチン組織の膜が容器表面上に形成される条件下で培養し、生成したケラチン組織膜を酵素を用いて剥離させることを特徴とする移植可能な培養細胞膜を製造する方法が記載されている。具体的には、3T3細胞をフィーダーレイヤーとして用いることで、播種した表皮細胞は増殖し、しかもそのまま重層化してしまうというものである。この方法は、今や表皮角化細胞を培養する方法の主流にまでなっている。しかしながら、この方法には欠点があり、すなわち上記3T3細胞がマウス由来の細胞である点がよく指摘される。一般的には、表皮角化細胞を培養している間にこの3T3細胞は消失すると言われているが、未だに100%消失したことを証明することができていないのが現状である。
【0005】
この点を解決すべく、これまでに種々の検討がなされてきた。例えば、別の培養基材上で3T3細胞を培養し、表皮角化細胞に有効な物質を培地中に出させ、その上清だけを表皮角化細胞を培養している系に移す方法があげられる(特許文献2、特許文献3)。しかしながら、この方法でも、異種動物の細胞自身の混入は防げても、異種動物細胞が産生するさまざまな蛋白質を分割している訳でなく、基本的に同様な問題が残されている。その他に、ヒト由来の細胞をフィーダーレイヤーとして利用しようとする試みもなされているが、未だに上記3T3細胞並みの活性を持った細胞が得られておらず、3T3細胞に代わる有効な技術が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−23191号公報
【特許文献2】特開平9−313172号
【特許文献3】特開2001−149070号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決することを意図してなされたものである。すなわち、本発明は、従来技術と全く異なった発想からの新規な上皮系細胞の重層化培養方法及びそれから得られる重層化上皮系細胞シートを提供することを目的とする。また、本発明は、その利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、驚くべくことに、上皮系細胞を多孔膜上で培養させ、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間、常に多孔膜を介して培地が下層から供給されれば上皮系細胞が重層化されることを見出した。また、多孔膜下層部の培養床に細胞外マトリックス層を設け、その内部または上部、或いはその双方にフィーダー細胞を培養しても上皮系細胞が重層化されることを見出した。さらに、多孔膜表面に水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子を被覆し、その上で上皮系細胞が培養され、重層化させた後、培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、培養した角膜上皮細胞シートまたはその重層化シートをキャリアに密着させれば、そのままキャリアと共に剥離させられることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されている上皮系細胞の重層化培養方法を提供する。
また、本発明は、多孔膜下層部の培養床に細胞外マトリックス層を設け、その内部または上部、或いはその双方にフィーダー細胞を培養することを特徴とする上皮系細胞の重層化培養方法を提供する。
さらに、本発明は、多孔膜表面に水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子を被覆し、その上で上皮系細胞が培養され、重層化させた後、
(1)培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、
(2)培養した角膜上皮細胞シートまたはその重層化シートをキャリアに密着させ、
(3)そのままキャリアと共に剥離する
ことを特徴とする上皮系細胞の重層化培養方法を提案する。
加えて、本発明は、上記方法で得られた重層化上皮系細胞シートを提供する。
さらに加えて、本発明は、組織の一部或いは全部を損傷もしくは欠損した患部に対し、上記重層化上皮系細胞シートを移植することを特徴とする治療法を提供する。
具体的には本願は、下記の発明を提供する。
[1]
上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されている上皮系細胞の重層化培養方法。
[2]
上皮系細胞を分化または維持させるためのフィーダー細胞を用いずに培養することを特徴とする[1]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[3]
上皮系細胞が角膜上皮細胞、表皮角化細胞、口腔粘膜細胞、結膜上皮細胞である、[1]または[2]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[4]
上皮系細胞がヒト由来のものである、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[5]
多孔膜下層部の培養床に細胞外マトリックス層を設け、その内部または上部、或いはその双方にフィーダー細胞を培養することを特徴とする、[1]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[6]
フィーダー細胞を変性させることなく培養することを特徴とする、[5]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[7]
細胞外マトリックスがコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンであることを特徴とする[5]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[8]
フィーダー細胞が線維芽細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞であることを特徴とする[5]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[9]
上皮系細胞及びフィーダー細胞が同一種の動物由来のものである、[5]〜[8]のいずれか1つに記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[10]
上皮系細胞及びフィーダー細胞がヒト由来のものである、[5]〜[9]のいずれか1つ記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[11]
多孔膜表面に水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子を被覆し、その上で上皮系細胞が培養され、重層化させた後、
(1)培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、
(2)培養した角膜上皮細胞シートまたはその重層化シートをキャリアに密着させ、
(3)そのままキャリアと共に剥離する
ことを特徴とする、[1]〜[10]のいずれか1つ記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[12]
温度応答性高分子が、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である、[11]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[13]
キャリアの形状が中心部を切り抜いたリング状のものである、[11]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[14]
剥離が蛋白質分解酵素による処理が施されていない、[11]記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[15]
多孔膜がセルインサートであることを特徴とする、[1]〜[14]のいずれか1つ記載の上皮系細胞の重層化培養方法。
[16]
[1]〜[15]のいずれか1つ記載の方法で得られたフィーダー細胞を含まない重層化上皮系細胞シート。
[17]
組織の一部或いは全部を損傷もしくは欠損した患部を治療するための、[16]の重層化上皮系細胞シート。
[18]
組織が前眼部組織、皮膚組織、粘膜組織である、[17]記載の重層化上皮系細胞シート。
[19]
患部に被覆する際、患部の大きさ、形状に沿って切断された、[17]または[18]記載の重層化上皮系細胞シート。
[20]
治療が両眼性の難治性角結膜疾患であることを特徴とする、[19]記載の重層化上皮系細胞シート。
[21]
治療が角膜びらん、角膜潰瘍であることを特徴とする、[19]記載の重層化上皮系細胞シート。
[22]
治療がRK法、PRK法、LASIK法による屈折矯正であることを特徴とする、[19]記載の重層化上皮系細胞シート。
[23]
治療がLASEK法による屈折矯正であることを特徴とする、[19]記載の重層化上皮系細胞シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明に記載される方法であれば、上皮系細胞を多孔膜上で培養することでフィーダー細胞を用いることなく重層化させられる。また、フィーダー細胞を細胞外マトリックスと共に培養することでフィーダー細胞を何ら変性させることなく上皮系細胞を重層化させられる。さらに、上記多孔膜上に温度応答性高分子を被覆すれば、冷却のみで重層化させた上皮系細胞を剥離させることができ、そのため生体組織への生着性が極めて高い高生着性の重層化上皮系細胞シートが得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1、2に示す実施方法を示すものである。
【図2】実施例1の培養13日後のウサギ重層化角膜上皮細胞のようすを示す写真である。
【図3】実施例の培養13日後のウサギ重層化角膜上皮細胞のようすを示す写真である。
【図4】実施例1のウサギ重層化角膜上皮細胞シートを剥離したようすを示す写真である。
【図5】実施例2のウサギ重層化角膜上皮細胞シートを剥離したようすを示す写真である。
【図6】実施例1のウサギ重層化角膜上皮細胞シート切片をH&E染色ときのようすを示す写真である。
【図7】実施例2のウサギ重層化角膜上皮細胞シート切片をH&E染色ときのようすを示す写真である。
【図8】実施例3、4に示す実施方法を示すものである。
【図9】実施例3の培養14日後のヒト重層化角膜上皮細胞のようすを示す写真である。
【図10】実施例4の培養14日後のヒト重層化角膜上皮細胞のようすを示す写真である。
【図11】実施例4のヒト重層化角膜上皮細胞シートを剥離したようすを示す写真である。
【図12】実施例3のヒト重層化角膜上皮細胞シート切片をH&E染色ときのようすを示す写真である。
【図13】実施例4のヒト重層化角膜上皮細胞シート切片をH&E染色ときのようすを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されていることを特徴とする上皮系細胞の重層化培養方法を提供する。その際、下層部に上皮系細胞を分化または維持させるためのフィーダー細胞を培養しても、或いは培養しなくても特に制約されるものではないが、本発明の方法に従えばフィーダー細胞を用いずに培養でき、製造上の効率、或いはフィーダー細胞のコンタミネーションを防ぐことができ好ましい。
【0013】
本発明に使用される好適な上皮系細胞として、たとえば角膜上皮細胞、表皮角化細胞、口腔粘膜細胞、結膜上皮細胞のいずれかもしくは2者以上の混合物が挙げられるが、その種類は、何ら制約されるものではない。また、その上皮系細胞の由来は特に制約されるものではないが、たとえばヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ブタ、ヒツジなどが挙げられるが、本発明の重層化上皮系細胞シートをヒトの治療に用いる場合はヒト由来の細胞を用いる方が望ましい。
【0014】
本発明における細胞培養のための培地は培養される細胞に対し通常用いられるものを用いれば特に制約されるものではないが、得られた重層化上皮系細胞シートをヒトの治療に用いる場合は用いる培地の成分は由来が明確なもの、もしくは医薬品として認められているものが望ましい。本発明ではこの培地を上皮系細胞が培養される多孔膜を介して上層及び下層に満たして行われる。この方法であれば、多孔膜上の上皮系細胞は上層にある培地だけでなく、下層部の培地も供給されることとなる。現時点では、詳細な理由は明らかになっていないが、この下層部からの十分な培地の供給が上皮系細胞の重層化に有用であるものと考えられる。
【0015】
また、本発明は、多孔膜下層部の培養床に細胞外マトリックス層を設け、その内部または上部、或いはその双方にフィーダー細胞を培養する上皮系細胞の重層化培養方法を提供する。この方法に従えば、フィーダー細胞を何ら変性させなくてもフィーダー細胞は増殖しなくなり、多孔膜上に培養された上皮系細胞が重層化する際に有用な物質を生産し続けることを見いだした。この方法は、従来、フィーダー細胞の増殖性を抑えるために行われていたマイトマイシンC処理やエックス線、ガンマ線処理を必要とせず、培養時の操作性が簡便になること、マイトマイシンCなどの本来細胞培養で使われないような薬物のコンタミネーションがなくなること、或いはエックス線、ガンマ線処理などといった大掛かりな作業も不要となり好ましい。本発明に使用される細胞外マトリックスとして、たとえばコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンのいずれかもしくは2者以上の混合物が挙げられるが、その種類は、何ら制約されるものではない。本発明に使用される細胞外マトリックスの被覆量及びその被覆方法は特に制約されたものではなく、常法に従って、ゲル化させたり、細胞外マトリックス溶液を乾固させれば良い。
【0016】
本発明で使用されるフィーダー細胞としては、たとえば線維芽細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞などが挙げられるが、特に制約されるものではない。また、上皮系細胞とフィーダー細胞は必ずしも同一種の動物由来のもので良いが、得られた重層化上皮系細胞シートを移植に用いる場合は上皮系細胞とフィーダー細胞を同一種の動物由来のものとした方が望ましい。また、この重層化上皮系細胞シートをヒトの治療に用いる場合は上皮系細胞とフィーダー細胞をヒト由来の細胞を用いる方が望ましい。
【0017】
多孔膜表面において被覆に用いられる温度応答性ポリマーは、水溶液中で上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度0℃〜80℃、より好ましくは20℃〜50℃を有する。上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度が80℃を越えると細胞が死滅する可能性があるので好ましくない。また、上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度が0℃より低いと一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細胞が死滅してしまうため、やはり好ましくない。
【0018】
本発明に用いる温度応答性高分子はホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このような高分子としては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。
【0019】
温度応答性高分子の多孔膜への被覆方法は、特に制限されないが、例えば、特開平2−211865号公報に記載されている方法に従ってよい。すなわち、かかる被覆は、基材と上記モノマーまたは高分子を、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理、有機重合反応のいずれかにより、または塗布、混練等の物理的吸着等により行うことができる。温度応答性高分子の被覆量は、0.4〜4.5μg/cm2の範囲が良く、好ましくは0.7〜3.5μg/cm2であり、さらに好ましくは0.9〜3.0μg/cm2である。0.2μg/cm2より少ない被覆量のとき、刺激を与えても当該高分子上の細胞は剥離し難く、作業効率が著しく悪くなり好ましくない。逆に4.5μg/cm2以上であると、その領域に細胞が付着し難く、細胞を十分に付着させることが困難となる。
【0020】
本発明における多孔膜の形態は特に制約されるものではないが、例えばセルインサートのような形態のもの、或いは平膜状のものなどが挙げられる。その際、上皮系細胞は多孔膜上層で培養される必要性がある。
【0021】
本発明において、上皮系細胞の培養は上述のようにして製造された多孔膜上で行われる。培地温度は、多孔膜表面に被覆された前記高分子が上限臨界溶解温度を有する場合はその温度以下、また前記高分子が下限臨界溶解温度を有する場合はその温度以上であれば特に制限されない。しかし、培養細胞が増殖しないような低温域、あるいは培養細胞が死滅するような高温域における培養が不適切であることは言うまでもない。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。
【0022】
本発明の方法において、重層化した上皮系細胞を多孔膜から剥離回収するには、培養された上皮系細胞シートをキャリアに密着させ、細胞の付着した支持体材料の温度を支持体基材の被覆高分子の上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることによって、そのままキャリアとともに剥離することができる。なお、シートを剥離することは細胞を培養していた培養液中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。また、その重層化シートを高収率で剥離、回収する目的で、細胞培養支持体を軽くたたいたり、ゆらしたりする方法、更にはピペットを用いて培地を撹拌する方法等を単独で、あるいは併用して用いてもよい。加えて、必要に応じて培養細胞は等張液等で洗浄して剥離回収してもよい。
【0023】
そのキャリアとは、例えば、高分子膜または高分子膜から成型された構造物、金属性治具などを使用することができる。例えば、キャリアの材質として高分子を使用する場合、その具体的な材質としてはポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース及びその誘導体、紙類、キチン、キトサン、コラーゲン、ウレタン等を挙げることができる。
【0024】
キャリアの形状は、特に限定されるものではないが、例えば得られた重層化上皮系細胞シートを移植する際に、キャリアの一部に移植部位と同程度もしくは移植部位より大きく切り拔いたものを利用すると、重層化上皮系細胞シートは切り拔かれたの周囲の部分だけに固定され、切り抜かれた部分にある細胞シートを移植部位に当てるだけで良く、好都合である。
【0025】
本発明における重層化上皮系細胞シートは培養時にディスパーゼ、トリプシン等で代表される蛋白質分解酵素による損傷を受けていないものである。そのため、基材から剥離された重層化上皮系細胞シートは、細胞−細胞間のデスモソーム構造が保持され、構造的欠陥が少なく、強度の高いものである。また、本発明のシートは培養時に形成される細胞−基材間の基底膜様蛋白質も酵素による破壊を受けていない。このことにより、移植時において患部組織と良好に接着することができ、効率良い治療を実施することができるようになる。以上のことを具体的に説明すると、トリプシン等の通常の蛋白質分解酵素を使用した場合、細胞−細胞間のデスモソーム構造及び細胞、基材間の基底膜様蛋白質等は殆ど保持されておらず、従って、細胞は個々に分かれた状態となって剥離される。その中で、蛋白質分解酵素であるディスパーゼに関しては、細胞−細胞間のデスモソーム構造については10〜60%保持した状態で剥離させることができることで知られているが、細胞−基材間の基底膜様蛋白質等を殆ど破壊してしまうため、得られる細胞シートは強度の弱いものである。これに対して、本発明の細胞シートは、デスモソーム構造、基底膜様蛋白質共に80%以上残存された状態のものであり、上述したような種々の効果を得ることができるものである。
【0026】
本発明では、重層化上皮系細胞シートを患部に当てた後、細胞シートをキャリアからはがせば良い。そのはがし方は、何ら制約されるものではないが、例えば、キャリアを濡らしてキャリアと細胞シートの密着性を弱めてはがす方法、或いはメス、はさみ、レーザー光、プラズマ波などの治具を用いても切断する方法でも良い。例えば上述したような一部を切り抜いたキャリアに密着した細胞シートを用いた場合、レーザー光などを用いて患部の境界線に沿って切断すると患部以外の余計なところへの細胞シートの付着を避けられ好都合である。
【0027】
本発明で示すところの重層化上皮系細胞シートと生体組織との固定方法は特に限定されるものではなく、細胞シートと生体組織を縫合しても良く、或いは本発明で示すところの重層化上皮系細胞シートは生体組織と速やかに生着するため、患部に付着させた細胞シートは生体側と縫合しなくても良い。
【0028】
本発明で示される重層化上皮系細胞シートの用途は、何ら制約されるものではないが、例えば火傷、瘢痕、あざ、角膜びらん、角膜潰瘍などの治療、或いはエキシマレーザーを中央部に照射して角膜表面を削り、角膜の屈折力を減少させて近視を矯正するピーアールケー(PRK)法、マイクロケラトームによって160μmの厚さで角膜実質層を切断しフラップを作製した後、フラップをめくり、エキシマレーザーで角膜実質層を削り取り、表面を整え、最後にフラップを元の位置に戻すレーシック(LASIK)法、アルコールを点眼し角膜表面を柔らかくさせ、マイクロケラトームを使わずに角膜上皮の50μmの厚さで切除してフラップを作製し、エキシマレーザーで角膜実質層を削り取り、表面を整え、最後にフラップを元の位置に戻すレーゼック(LASEK)法などの屈折矯正に有効である。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
[実施例1、2]
【0030】
深麻酔下のウサギ角膜輪部から常法に従って角膜上皮組織を採取し、0.05%トリプシン処理することで得られた細胞を、図1に示すような温度応答性高分子が2.0μg/cm2被覆されたセルカルチャーインサート上に播種した。細胞播種数及び使用した培地組成を図1に示す(37℃、5%CO2下)。実施例1では、インサート下層にフィーダー細胞としてマイトマイシンC処理したNIH−3T3細胞を播種した。実施例2ではフィーダー細胞を使用しなかった。培養13日後のウサギ重層化角膜上皮細胞のようすをそれぞれ図2(実施例1)、図3(実施例2)に示す。いずれの場合もウサギ角膜上皮細胞はコンフルエントに達するまで増殖し、重層化した。次に、セルインサートを20℃、30分間冷却し、リング状のキャリアを用いてセルカルチャーインサート上のウサギ重層化角膜上皮細胞シートを剥離することを試みたところ、いずれの場合も剥離させることができた。ウサギ重層化角膜上皮細胞シートを剥離した際のようすをそれぞれ図4(実施例1)、図5(実施例2)に示す。さらに、剥離した細胞シートが重層化していることを確認するために、得られたウサギ重層化角膜上皮細胞シート切片を常法(H&E染色)に従い染色した。染色した結果をそれぞれ図6(実施例1)、図7(実施例2)に示す。いずれの場合も重層化していることが確認できた。
[比較例1]
【0031】
深麻酔下のウサギ角膜輪部から常法に従って角膜上皮組織を採取し、0.05%トリプシン処理することで得られた細胞を、温度応答性高分子が2.0μg/cm2被覆された培養皿上に播種したこと以外は実施例1と同様に行った。その際、フィーダー細胞は使用しなかった。培養13日後にウサギ重層化角膜上皮細胞のようすを確認したが、ウサギ重層化角膜上皮細胞はコンフルエントに達するまで増殖したが重層化していなかった。
[実施例3、4]
【0032】
献眼ヒト角膜輪部から常法に従って角膜上皮組織を採取し、0.05%トリプシン処理することで得られた細胞を、図8に示すような温度応答性高分子が1.9μg/cm2被覆されたセルカルチャーインサート上に播種した。細胞播種数及び使用した培地組成を図8に示す(37℃、5%CO2下)。実施例3では、インサート下層にフィーダー細胞としてマイトマイシンC処理したNIH−3T3細胞を播種した。実施例4ではフィーダー細胞を使用しなかった。培養14日後のヒト重層化角膜上皮細胞のようすをそれぞれ図9(実施例3)、図10(実施例4)に示す。いずれの場合もヒト角膜上皮細胞はコンフルエントに達するまで増殖し、重層化した。次に、セルインサートを20℃、30分間冷却し、リング状のキャリアを用いてセルカルチャーインサート上のヒト重層化角膜上皮細胞シートを剥離することを試みたところ、いずれの場合も剥離させることができた。ヒト重層化角膜上皮細胞シートを剥離した際のようすを図11(実施例4)に示す。さらに、剥離した細胞シートが重層化していることを確認するために、得られたヒト重層化角膜上皮細胞シート切片を常法(H&E染色)に従い染色した。染色した結果をそれぞれ図12(実施例3)、図13(実施例4)に示す。いずれの場合も重層化していることが確認できた。
[比較例2]
【0033】
献眼ヒト角膜輪部から常法に従って角膜上皮組織を採取し、0.05%トリプシン処理することで得られた細胞を、温度応答性高分子が1.9μg/cm2被覆された培養皿上に播種したこと以外は実施例3と同様に行った。その際、フィーダー細胞は使用しなかった。培養14日後にヒト重層化角膜上皮細胞のようすを確認したが、ヒト重層化角膜上皮細胞はコンフルエントに達するまで増殖したが重層化していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に記載される方法であれば、上皮系細胞を多孔膜上で培養することでフィーダー細胞を用いることなく重層化させられる。また、フィーダー細胞を細胞外マトリックスと共に培養することでフィーダー細胞を何ら変性させることなく上皮系細胞を重層化させられる。さらに、上記多孔膜上に温度応答性高分子を被覆すれば、冷却のみで重層化させた上皮系細胞を剥離させることができ、そのため生体組織への生着性が極めて高い高生着性の重層化上皮系細胞シートが得られるようになる。この方法で得られる重層化上皮系細胞シートは、たとえば角膜移植、皮膚移植、角膜疾患治療、近視治療等の臨床応用が強く期待される。したがって、本発明は細胞工学、医用工学、などの医学、生物学等の分野における極めて有用な発明である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されている上皮系細胞の重層化培養方法。
【請求項1】
上皮系細胞を多孔膜上で培養させる際、その多孔膜を境に上層部及び下層部の双方を培地で満たし、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下層から細胞に供給されている上皮系細胞の重層化培養方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【公開番号】特開2011−250804(P2011−250804A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193339(P2011−193339)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【分割の表示】特願2003−405201(P2003−405201)の分割
【原出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【出願人】(503105952)
【出願人】(501345220)株式会社セルシード (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【分割の表示】特願2003−405201(P2003−405201)の分割
【原出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【出願人】(503105952)
【出願人】(501345220)株式会社セルシード (39)
【Fターム(参考)】
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