説明

下地金属の連結材

【課題】 溶接技術を必要としない下地の組み立てを可能にする下地金属の連結材を提供する。
【解決手段】 下地金属の連結材20は、建築物の壁16に固定されている縦材12に取り付ける固定部30と、前記縦材12に横材14を連結し支持する連結部32とを備えるものである。固定部30の金属平板30aを縦材12のフランジ12aの表面に合わせ、鉤爪部30bをその縦材12のフランジ12a、12bの裏面に折って縦材12に掛ける。また、横材14のフランジ14aの表面を連結部32の金属平板32aに合わせ、鉤爪部32bを横材14のフランジ14aの裏面に折ってフランジ14aの端部に掛ける。連結部32に横材14を取り付けることにより、縦材12と横材14の当接部分を溶接することなく、縦材12に横材14を連結でき固定することができる。これにより、溶接技術を有しない作業員であっても、縦材に横材を組み合わせることが可能となり、容易に下地を組むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材を取り付ける下地を組む際に使用される下地金属の連結材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁工事では、建築物を風雨から守る外装用パネル等の外装材を下地に取り付ける工事が行われる。下地は、アングル材(山形鋼)等の下地金属を縦横に組んだ骨組みであり、格子状に組まれる。下地の組み立て作業では、固定された縦材(下地金属)に固定されていない横材(下地金属)を連結し固定する。縦材に横材を連結および固定する場合は、縦材と横材の連結部分(当接部分)を溶接し又は縦材と横材のフランジをボルト等の固定手段を用いて固定し、縦材と横材を一体化する。
たとえば、図8に示すような縦材・横材にアングル材を使用する下地の組み立てにおいて縦材12に2本の横材14を連結固定する場合、縦材12のフランジ12bの表面(平面部分)に一方の横材14のフランジ14a、14bの先端部分(図8のL字形の範囲A)を溶接して固定する。また、縦材12のフランジ12aの端部に他方の横材14のフランジ14aの先端部分(図8の範囲B)を溶接して固定する。
【0003】
図8における縦材12・横材14の溶接では、L字形の範囲Aの溶接は比較的容易ではあるが、当接部分が少ない範囲Bの溶接は高い溶接技能が必要となる。しかし、作業者の溶接技術の能力は一様でないことから、風雨に耐え得るような信頼性の高い下地を常に組むことは困難であった。
【0004】
そこで、従来、溶接を使わずに縦材と横材を一体化できる連結材が用いられている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−7140号公報(第2図、第3図、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の連結材は、外装パネルを壁へ取り付けるための下地を組む際に使用するアングル材の連結材である。特許文献1の下地では、左右の縦材のアングル材の間に横材のアングル材が配された格子状骨組みが構成され、縦材に横材を取付ける連結材が使用されている。連結材は縦材に溶接またはボルトにより固定されている。連結材は、平面視コ字状形状のものであり、その両フランジ上辺から側方に耳片が突設されている。横材は耳片上に配され、ボルトによって耳片に固定される。
特許文献1の連結材によると、連結する横材は連結材の耳片にボルトで固定できることから、横材を溶接する必要がない。これにより、縦材と横材を溶接を使用せずに組み立てることが可能となる。
【0007】
しかし、特許文献1の連結材は、溶接またはボルトを用いて縦材に固定するものである。従って、下地組み立て作業において、溶接技術が必要となる場合があり、十分な溶接技能を有しない作業員が作業を行うと、信頼性の高い下地を提供できないおそれがあった。一方、ボルトを用いた組み立て作業は、時間がかかり作業効率が悪かった。
【0008】
また、図9(特許文献1の第3図の略図)に示すように、特許文献1の下地構造においては、縦材12は、L字状ブラケット50およびアンカーボルト等を用いた固定手段52によって建築物の壁16と所定の幅離間させて固定されていた。しかし、L字状ブラケット50は、縦材12のフランジ12bの表面との当接部分(図9の範囲C)を溶接して縦材12に固定されていたため、組み立て作業は溶接技能を有する作業員によって行われていた。
なお、図示しない外装材は、縦材12のフランジ12aの表面に取り付けられる。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するものであって、溶接技術を必要としない下地の組み立てを可能にする下地金属の連結材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の下地金属の連結材は、建築物の壁又はその壁に固定されている下地金具に取り付ける固定部と、前記建築物の壁又は固定されている下地金具に固定されていない下地金具を連結し支持する連結部とを備えるようにしたものである。
【0011】
また、本発明の下地金属の連結材は、前記固定部及び連結部が前記下地金具に掛かる鉤爪部を備えるようにしたものである。
また、前記下地金具がアングル材であるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の下地金属の連結材は、連結材の固定部を建築物の壁又はその壁に固定されている下地金具に取り付け、その固定部から延出し又は張り出す連結部を用いて固定されていない下地金属を建築物の壁又はその壁に固定されている下地金具に取り付けるものである。すなわち、建築物に固定されている物に連結材の連結部を介して固定されていない下地金属を取り付けるものである。本発明の下地金属の連結材によると、溶接技術を使用することなく、連結材の固定部を建築物の壁又はその壁に固定されている下地金具に固定されていない下地金属を連結し固定できる。これにより、作業員が溶接技術を有しない者であっても、下地の組み立てを容易に行うことができ、常に信頼性の高い下地構造を提供することができる。
また、本発明の連結材の固定部及び連結部に下地金具に掛かる鉤爪部を備えることにより、固定されていない下地金具を確実に取り付けることができる。鉤爪部を下地金具に掛ける作業は溶接作業に比べ容易であることから、作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の下地金属の連結材を用いた下地構造を表わす図である。
【図2】図1の縦材の左右に横材を取り付けるための連結材の実施形態を表わす図である。
【図3】図2の連結材で固定された下地の斜視図である。
【図4】図1の下地構造のコーナーを組み立てるための連結材の実施形態を表わす図である。
【図5】図4の連結材で固定された下地の斜視図である。
【図6】図1の縦材を支持するための連結材の実施形態を表わす図である。
【図7】図6の連結材で固定された下地構造を表わす図である。
【図8】縦材の左右に横材を取り付ける従来の下地構造を表わす図である。
【図9】建築物の壁と縦材とを離間させる従来の下地構造を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、溶接を利用せずに下地金具を組み立てることを実現するものである。
【実施例1】
【0015】
本発明の下地金属の連結材の実施例を図に基づいて説明する。図1は、本発明の下地金属の連結材を用いた下地構造を表わす図である。図2は、 図1の縦材の左右に横材を取り付けるための連結材の実施形態を表わす図である。図3は、図2の連結材で固定された下地の斜視図である。
図1の下地10は、下地金具12、14を縦横に組み立て格子状に形成されている。建築物の壁16又はその壁16に固定された下地金具12(建築物に固定されている物)に対し横材の下地金具14(固定されていない下地金具)が水平に取り付けられている。縦材12および横材14は、本発明の連結材20、22、24、26を用いて連結され固定されている。
なお、図1の下地金具12、14はアングル材(山形鋼)である。また、図1に表れるアングル材のフランジ12a、14aの表面に図示しない外装パネル等の外壁材が取り付けられる。
【0016】
下地金属の連結材20は、建築物の壁16に固定されている縦材12に取り付ける固定部30と、前記縦材12に横材14を連結し支持する連結部32とを備えるものである。連結材20は、金属平板からなり、1本の縦材12の左右に2本の横材14を組み、縦材12と横材14を十字に組み立てる場合に使用するものである。
連結材20の固定部30は、建築物の壁16に固定されている縦材12に固定されるものである。固定部30は、縦材12のフランジ12aの表面に配置する矩形の金属平板30aと、その金属平板30aの左右の長辺からに張り出される鉤爪部30bとを備える。図2において、鉤爪部30bは、金属平板30aの上部と下部の2か所に設けられており、固定部30は略H形に形成されている。
縦材12に固定部30を取り付ける場合、固定部30の金属平板30aを縦材12のフランジ12aの表面に合わせ、鉤爪部30bをその縦材12のフランジ12a、12bの裏面に折って縦材12に掛ける(図3)。これにより、連結材20は縦材12に取り付けられ固定される。
なお、縦材12のフランジ12bに掛かる鉤爪部30bには、鉤爪部30bをフランジ12bの裏面まで導く金属平板30cが設けられている。
【0017】
連結材20の連結部32は、建築物の壁16に固定されている縦材12に固定されていない横材14を連結し固定するための金属平板である。
連結部32は、固定部30の中央部から左右張り出される金属平板32aと、その金属平板32aの2つの辺を延出させて形成される鉤爪部32bとを備える。
連結部32に横14を取り付ける場合、横材14のフランジ14aの表面を連結部32の金属平板32aに合わせ、鉤爪部32bを横材14のフランジ14aの裏面に折ってフランジ14aの端部に掛ける(図3)。このとき、縦材12のフランジ12bに取り付けられる一の横材14は、縦材12のフランジ12bの表面に横材14のL字の先端部(図9の範囲Aの部分)が当接された状態で支持され固定される。他の横材14は、その横材14のフランジ14aの先端部(図9の範囲Bの部分)が縦材12のフランジ12aの端部に当接された状態で支持され固定される。すなわち、連結部32に横材14を取り付けることにより、従来縦材12と横材14の当接部分(図9の範囲A、B)を溶接することなく、縦材12に横材14を連結でき固定することができる。これにより、溶接技術を有しない作業員であっても、縦材に横材を組み合わせることが可能となり、容易に下地を組むことができる。
なお、連結材20は、縦材12、横材14を十字に組むものであり、固定部30に2つの連結部32を設けている。図1の連結材22は、連結材20の固定部30に一つの連結部32を設けたものであり、縦材12に1本の横材をT字に組む場合に使用する連結材である。連結材22は連結材20と同様の構成部を有するため、説明を省略する。
【実施例2】
【0018】
次に、下地構造のコーナー(角部)に使用する連結材を図に基づいて説明する。図4は、図1の下地構造のコーナーを組み立てるための連結材の実施形態を表わす図である。図5は、図4の連結材で固定された下地の斜視図である。
連結材24は、縦材12と横材14をL字に組み立てる場合に使用する金属平板である。連結材24は、建築物の壁16に固定されている縦材12に取り付ける固定部34と、縦材12に横材14を連結し支持する連結部36とを備えるものである。
固定部34は、縦材12のフランジ12aの表面に配置される矩形の金属平板34aと、その金属平板34aの上部の長辺から左右に張り出される鉤爪部34bとを備える。図4において、鉤爪部30bは、金属平板30aの上部に設けられており、固定部34は略T形に形成されている。
縦材12に固定部34を取り付ける場合、固定部34の金属平板34aを縦材12のフランジ12aに合わせ、鉤爪部34bを縦材12のフランジ12a、12bの裏面に折ってフランジ12a、12bに掛ける(図5)。これにより、連結材24は縦材12に取り付けられ固定される。なお、縦材12のフランジ12bに掛かる鉤爪部34bには、鉤爪部34bをフランジ12bの裏面まで導く金属平板34cが設けられている。
【0019】
連結部36は、縦材12に横材14を連結し固定するための金属平板である。連結部36は、固定部34の金属平板34aの下部の長辺から左右のいずれか一方に張り出される金属平板36aと、その金属平板36aの長辺から上下に張り出される鉤爪部36bとを備える。
横材14のフランジ14aを連結部36の金属平板36aに合わせ、鉤爪部36bを横材14のフランジ14a、14bの裏面に折ってフランジ14a、14bの端部に掛ける(図5)。このとき、横材14は、横材14の先端部が縦材12のフランジ12bの表面に当接された状態で支持され固定される。なお、横材14のフランジ14bに掛かる鉤爪部36bには、鉤爪部36bをフランジ14bの裏面まで導く金属平板36cが設けられている。
【実施例3】
【0020】
次に、他の連結材を図に基づいて説明する。図6は、図1の縦材を支持するための連結材の実施形態を表わす図である。図7は、図6の連結材で固定された下地構造を表わす図である。
連結材26は、建築物の壁16に取り付ける固定部38と、建築物の壁16に縦材12を連結し支持する連結部40とを備えるものである。
固定部38は、建築物の壁16の表面に配置される金属平板38aと、その金属平板38aから所定の長さに延出されるスペーサー部38bとを備える。スペーサー部38bは、壁16の表面から縦材12を所定の間隔だけ離間させるものである。
建築物の壁16に固定部38を取り付ける場合、固定部38の金属平板38aを建築物の壁16にビス42等の固定手段を用いて固定し、スペーサー部38bを縦材12のフランジ12bの表面に当接させる(図7)。これにより、連結材26は建築物の壁16に固定される。
【0021】
連結部40は、固定部38の一辺を延出して形成される金属平板40aと、その金属平板40aから張り出される鉤爪部40bとを備える。図6の連結部40は、固定部38の金属平板38a、スペーサー部38b、金属平板40a、鉤爪部40bの順に一連一体に形成されている。
縦材12のフランジ12aを連結部40の金属平板40aに合わせ、鉤爪部40bを縦材12のフランジ12aの裏面に折ってフランジ12aに掛ける(図7)。このとき、縦材12は、連結部40に保持された状態で壁16の表面と縦材12とを所定の間隔だけ離間させて固定される。
【0022】
なお、実施例1乃至3における本発明の連結材20、24、26の鉤爪部30b、32b、34b、36b、40bは、略矩形のものを複数個設けるものであるが、鉤爪部の形状は実施例1乃至3に記載する形状に限定されるものではない。幅の広い1個の鉤爪部としてもよい。但し、アングル材のフランジに鉤爪部を掛ける作業を容易にするには、幅の狭い、複数個からなる鉤爪部を設けるのが好ましい。
また、連結材の金属平板30a、32a、38a、40aには、固定手段であるビス42の打ち込み位置を示す穴部44が設けられている。ビスで縦材12及び/又は横材14に連結材を固定することにより、縦材と横材の連結強度を高めることができる。また、これにより、高度な溶接技術を用いた溶接による強度と同等の連結強度を得ることできる。さらに、固定手段を取り付ける位置を示す穴部を予め設けておくことにより、固定手段であるビス等の打ち込み作業が容易となり、作業効率を高めることができる。なお、図4および図5の連結材24の金属平板34a、36aには穴部44が図示されていないが、穴部44を設けてもよい。なお、図1に表れる連結材は、連結材の固定部および連結部の金属平板の部分である。
【符号の説明】
【0023】
10 下地
12 縦材
14 横材
16 壁
20、22、24、26 連結材
30、34、38 固定部
32、36、40 連結部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁又はその壁に固定されている下地金具に取り付ける固定部と、前記建築物の壁又は固定されている下地金具に固定されていない下地金具を連結し支持する連結部とを備えることを特徴とする下地金物の連結材。
【請求項2】
前記固定部及び連結部が前記下地金具に掛かる鉤爪部を備えることを特徴とする請求項1記載の下地金物の連結材。
【請求項3】
前記下地金具がアングル材であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の下地金物の連結材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−256539(P2011−256539A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129596(P2010−129596)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(595073498)勝又金属工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】