説明

下水の処理方法

【課題】 下水の一次処理において凝集汚泥の発生量が少なく、かつ良好な水質の処理水を得ることができる下水の処理方法を提供する。
【解決手段】 下水のコロイド値が正の値にならない量の無機凝集剤を下水に添加した後、さらに、カチオン系有機高分子凝集剤を添加して凝集処理する下水の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水は、通常、一次処理と呼ばれる最初沈殿池での自然沈降により、粒子の粗い懸濁物質(SS)を除去した後、二次処理と呼ばれる活性汚泥処理等の生物処理により、有機物を除去し、浄化される。
自然沈降による一次処理では、(i)広大な敷地面積が必要である、(ii)一次処理された処理水における濁度、COD(化学的酸素要求量)等の除去率は30%程度に留まり二次処理への負担が大きく、二次処理で膨大なエネルギーが消費される、という問題がある。
近年、下水処理の効率を向上させる高度な処理システムの一つの方法として、一次処理において凝集処理を行う方法が検討されている。
【0003】
下水の凝集処理の場合、通常、無機凝集剤を加え懸濁物質を凝結させた後、有機高分子凝集剤を加え、橋架け効果により大きな凝集フロックを生成させ、これを沈降(または浮上)させ、凝集汚泥として分離することにより行われる。
有機高分子凝集剤には、大別してアニオン・ノニオン系、カチオン系、両性系の3種類がある。
【0004】
下水の一次処理における凝集処理の方法としては、下水に無機凝集剤を添加した後、さらにアニオン系有機高分子凝集剤を添加し、懸濁物質を凝集させ、凝集汚泥として分離する方法が、数多くの文献に記載されている(例えば非特許文献1、2、特許文献1参照)。さらに、アニオン系有機高分子凝集剤を用いて分離された凝集汚泥は脱水性が悪いという理由で、両性系有機高分子凝集剤を添加し、懸濁物質を凝集させ、凝集汚泥を分離する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、何れの方法も、無機凝集剤の添加量が多いため、多量の凝集汚泥が発生し、凝集汚泥の処理コストが高くなり、しかも、一次処理された処理水の水質も満足されるものではない。また、カチオン系有機高分子凝集剤を用いる方法が、特許文献2に比較例として例示されているが、凝集性が劣り、処理水の濁度が劣ると記載されている。
以上、下水の一次処理において、凝集汚泥の発生量が少なく、かつ良好な水質の処理水を得る方法はなかった。
【非特許文献1】吉野正章、他3名,「前凝集と担体を用いた下水の高度処理システム」,第39回下水道研究発表会講演集,社団法人日本下水道協会,2002年,p.578−580
【非特許文献2】木下巌、他4名,「前凝集処理を用いた活性汚泥処理法の窒素除去特性に関する研究」,第35回下水道研究発表会講演集,社団法人日本下水道協会,1998年, p.597−599
【特許文献1】特開平3−98699号公報
【特許文献2】特開平7−328644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、下水の一次処理において凝集汚泥の発生量が少なく、かつ良好な水質の処理水を得ることができる下水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の下水の処理方法は、下水のコロイド値が正の値にならない量の無機凝集剤を下水に添加した後、さらにカチオン系有機高分子凝集剤を添加して凝集処理することを特徴とする。
さらに、無機凝集剤の添加量は、無機凝集剤を加えた後のコロイド荷電の中和度(N)が10〜100%になる範囲が好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の下水の処理方法によれば、下水の一次処理において、無機凝集剤の添加量が低減することにより凝集汚泥の発生量が少なく、かつ濁度、COD等が大幅に低減された良好な水質の処理水を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、下水のコロイド値が正の値にならない量の無機凝集剤を下水に添加した後、さらにカチオン系有機高分子凝集剤を添加して凝集処理する方法である。
【0010】
無機凝集剤としては、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄等が挙げられる。
【0011】
通常、下水中には濁度、CODの要因となるSS、コロイド粒子、溶解性有機物等が含まれているため、下水のコロイド値はマイナスを示し、その荷電量は−0.1〜0meq/Lの場合が多い。
無機凝集剤を添加することにより、下水のマイナス荷電は中和され、コロイド値は0に近づく。さらに、コロイド粒子、溶解性有機物等に起因するコロイド荷電が充分に中和され過剰になると、コロイド値は正の値になるプロフィールを示す。
無機凝集剤を加えた後のコロイド荷電の中和度(N)は、下記のように算出し、本発明においては該中和度(N)が10〜100%になる量の無機凝集剤を添加することが好ましい。
【0012】
【数1】

【0013】
下水のコロイド値は、コロイド滴定法によって測定される。具体的には、以下の手順にて測定される。
(1)200mlのトールビーカーに下水10mlを採取し、純水を100ml加える。
(2)さらに1/200NのMgch(メチルグリコールキトサン)溶液を2ml加え、攪拌する。
(3)さらに指示薬としてトルイジンブルーを1〜2滴加える。
(4)攪拌しながら1/400NのPVSK(ポリビニル硫酸カリウム)溶液にて滴定し、液の色が青からピンクに変わる滴定量(B ml)を測定する。
(5)同様に純水100mlのみを、1/400NのPVSK溶液にて滴定し、ブランクの滴定量(A ml)を測定する。
(6)下記式でコロイド値(meq/L)を計算する。
【0014】
【数2】

【0015】
無機凝集剤と下水との反応は、充分に行うことが好ましい。したがって、無機凝集剤を下水に添加し、20秒以上混合・反応させた後、カチオン系有機高分子凝集剤を添加することが好ましく、30秒〜5分経過した後、カチオン系有機高分子凝集剤を添加することがより好ましい。反応時間が不充分な場合、濁度、CODの除去性能が低下する。
無機凝集剤を下水に添加した際は、充分に撹拌することが好ましい。撹拌方法としては、機械攪拌、ライン混合等、乱流状態を作り出す方法であればよく、機械攪拌が好ましい。
【0016】
カチオン系有機高分子凝集剤としては、市販されている有機高分子凝集剤を用いればよい。なお、無機凝集剤を添加した後のコロイド値により、最適なカチオン系有機高分子凝集剤の種類は若干異なり、コロイド荷電が中和され、コロイド値が0に近づくほど弱カチオン系の有機高分子凝集剤が適し、荷電未中和でコロイド値のマイナスが多いほど強カチオン系の有機高分子凝集剤が適する傾向がある。
【0017】
カチオン系有機高分子凝集剤としては、例えば、ジアルキルアミノエチルアクリレート類の4級アンモニウム塩に由来する構成単位を有する重合体、ジアルキルアミノエチルメタクリレート類の4級アンモニウム塩に由来する構成単位を有する重合体、アクリルアミド重合体のマンニッヒ変性物、ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン等が挙げられる。カチオン系有機高分子凝集剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
カチオン系有機高分子凝集剤としては、カチオン性モノマーに由来する構成単位として、下記式(a)で表される構成単位(a)および/または下記式(b)で表される構成単位(b)を有する重合体(I)が好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
(式(a)中、R1 は、炭化水素基であり、R2 およびR3 は、炭素数1〜4のアルキル基であり、 R2 およびR3 は、それぞれ同一であっても、異なってもよく、(X1-は、陰イオンである。)
【0021】
【化2】

【0022】
(式(b)中、 R4 は、炭化水素基であり、R5 およびR6 は、炭素数1〜4のアルキル基であり、 R5 およびR6 は、それぞれ同一であっても、異なってもよく、(X2-は、陰イオンである。)
【0023】
重合体(I)は、ノニオン性モノマーに由来する構成単位を有していてもよい。ノニオン性モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
重合体(I)におけるカチオン性モノマーに由来する構成単位とノニオン性モノマーに由来する構成単位の組成比(カチオン性モノマーに由来する構成単位/ノニオン性モノマー由来する構成単位)は、100/0〜5/95(質量比)が好ましく、100/0〜10/90(質量比)がより好ましい。
【0024】
カチオン系有機高分子凝集剤は、1N硝酸ナトリウム水溶液中、温度30℃で測定した固有粘度が5dl/g以上であることが好ましく、12〜18dl/gであることがさらに好ましい。固有粘度が5dl/g未満では、凝集力が弱くなり処理水の水質が若干低下する。該固有粘度は、カチオン系有機高分子凝集剤の分子量と相関関係があり、分子量の指標となる。
【0025】
カチオン系有機高分子凝集剤は、沈殿重合法、塊状重合法、分散重合法、水溶液重合法等の公知の重合法により製造される。
カチオン系有機高分子凝集剤の形態としては、粉末、液体、エマルジョン、ディスパージョン等が挙げられる。
カチオン系有機高分子凝集剤には、水溶液の劣化防止のため、固体酸等の添加物を添加してもよい。固体酸としては、スルファミン酸、酸性亜硫酸ソーダ等が挙げられる。
【0026】
〔作用〕
本発明の作用機構は以下のように推定される。
通常、下水中には濁度、CODの要因となるSS、コロイド粒子、溶解性有機物等が含まれるため、下水のコロイド値はマイナスを示す。
本発明者は、特許文献2の追試をするとともに、無機凝集剤の添加量と下水性状の変化、並びに凝集に適した有機高分子凝集剤の種類について詳細に検討した。
下水に無機凝集剤を添加すると、下水中のマイナス荷電を持つコロイド粒子および溶解性有機物等が凝結し、高分子凝集剤により粗大なフロックを形成して凝集分離することにより濁度、CODを低下させることができる。
無機凝集剤を用いて良好な効果を得るためには、充分な量の無機凝集剤を添加して、コロイド粒子および溶解性有機物と反応させる必要があり、結果として下水のコロイド値はプラスになっていることが判った。
その結果、粗大なフロックを形成するにはアニオン系または両性系有機高分子凝集剤が適し、カチオン系有機高分子凝集剤では凝集不良となり、粗大なフロックにならなかった。
また、無機凝集剤による凝結処理には限界があり、無機凝集剤の添加量を増やしても処理水のCOD除去率は50からせいぜい60%程度にしかならなかった。
【0027】
しかし、カチオン系有機高分子凝集剤を用いた場合、たとえ凝集フロックが小さくとも、充分に静置すれば、上澄み液の濁度、CODは充分に低下することが判った。アニオン系有機高分子凝集剤は、凝結した凝集フロックを凝集させることが主な効果であるが、カチオン系有機高分子凝集剤は、さらに無機凝集剤では反応しない成分とも反応し、濁度、CODを低下させていると考えられる。
カチオン系有機高分子凝集剤を用い、凝集状況が良好で、かつ良好な処理水質が得られる無機凝集剤添加量について調査した。また、特定の無機凝集剤の添加範囲でカチオン系有機高分子凝集剤を用い、凝集処理することにより、大幅な処理水質の向上が図ることができると考え処理方法について検討した。
その結果、コロイド値が正の値(プラス)にならない特定の添加量範囲の無機凝集剤を下水に添加した後、さらにカチオン系有機高分子凝集剤を添加して凝集処理することにより、粗大なフロックを形成させ、かつ無機凝集剤とアニオン系有機高分子凝集剤または両性系有機高分子凝集剤との組み合わせに比較して、大幅に濁度、COD値を低下させることができる本発明に到達した。
【0028】
本発明の下水の処理方法は、従来の方法に比べ、無機凝集剤の添加量を大幅に削減できることから、凝集汚泥の発生量が少なく汚泥の処理コストを低下できる。また、PAC、硫酸バンド等のアルミニウム系の無機凝集剤を用いた凝集汚泥は、嫌気性消化に対し、阻害あると報告されている(廣田淳一、他2名,「前凝集沈殿汚泥の嫌気性消化特性」,第36回下水道研究発表会講演集,社団法人日本下水道協会,1999年,p.761−763)が、無機凝集剤としてPACを用いた場合でも、本発明の下水の処理方法により発生した凝集汚泥は、無機凝集剤の添加量が少ないため、凝集汚泥中に含まれるアルミニウム含有量が少なく、嫌気性消化処理においても悪影響がない。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例において、高分子凝集剤は、表1に示す重合体を水に溶解して、0.1〜0.3質量%の水溶液として使用した。無機凝集剤は水で10倍に希釈して使用した。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例における各測定方法は、以下の通りである。
(高分子凝集剤の固有粘度)
固有粘度は、1N硝酸ナトリウム水溶液中、温度30℃の条件で、ウベローデ希釈型毛細管粘度計を用い、定法に基づき測定した。(高分子学会編,「新版高分子辞典」,朝倉書店,p.107)
【0032】
(下水のコロイド荷電量)
下水のコロイド荷電量は、上述のコロイド滴定法によって測定した。
(凝集フロックの平均粒径)
凝集フロックの平均粒径は、目視により測定した。
【0033】
(濁度の測定)
濁度は、JIS K 0101に基づき測定した。
(CODの測定)
CODは、JIS K 0102−17に基づき測定した。
【0034】
〔実施例1〜10〕
M下水処理場における最初沈殿池への流入下水を採取し凝集試験を実施した。
下水の性状はpH=6.5、SS=222mg/L、濁度=157NTU、COD=362mg/L、コロイド値=−0.05meq/Lであった。
まず、500mlのビーカーに下水を500ml採取し、無機凝集剤としてPACを30mg/L添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合した。PAC添加後のコロイド値は−0.03mg/L、コロイド荷電の中和度は40%であった。
ついで、表2に示す種類のカチオン系有機高分子凝集剤を表2に示す量添加し、さらに同様の条件で3分間攪拌し凝集フロックを形成させた。
2分間静置後、表面から5cmの深さより処理水を採取し、濁度、CODを測定し、処理効果を確認した。結果を表2に示す。
【0035】
いずれの実施例もPAC添加量30mg/Lで良好な凝集性能を示し、濁度除去率、COD除去率とも良好な結果が得られた。
後述の比較例1、2で用いられるアニオン系、両性系有機高分子凝集剤に比べ良好な結果であった。
【0036】
〔比較例1、2〕
表2に示す条件にて実施例1〜10と同様にして凝集試験を実施した。結果を表2に示す。
有機高分子凝集剤としてアニオン系または両性系有機高分子凝集剤を用いて凝集試験を行ったところ、処理水の濁度、COD除去率とも実施例1〜10に比較して大幅に劣る結果であった。
【0037】
【表2】

【0038】
〔実施例11、12〕
H下水処理場における最初沈殿池への流入下水を採取し凝集試験を実施した。
下水の性状はpH=6.8、SS=204mg/L、濁度=133NTU、COD=158mg/L、コロイド値=−0.06meq/Lであった。
他は実施例1〜10と同様に実施した。下水のコロイド値が表3に示す値となる量のPACを添加し、カチオン系有機高分子凝集剤K5により凝集処理を行った。結果を表3に示す。
濁度除去率87%以上、COD除去率70%以上と良好な結果が得られた。
【0039】
〔実施例13〕
表3に示す条件にて実施例11と同様にして凝集試験を実施した。結果を表3に示す。 無機凝集剤として鉄系のポリ硫酸鉄を用いた場合でも、PAC同様、濁度除去率88.9%、COD除去率71.6%と良好な結果が得られた。
【0040】
〔実施例14〕
表3に示す条件にて実施例11と同様にして凝集試験を実施した。結果を表3に示す。
カチオン系有機高分子凝集剤K5とK7を50/50(質量比)で混合したものを用いた場合でも、濁度除去率88.0%、COD除去率71.8%と良好な結果が得られた。
【0041】
〔比較例3〕
無機高分子凝集剤をまったく添加せず、カチオン系有機高分子凝集剤K5単独で凝集処理を行った。結果を表3に示す。
凝集フロックは生成するものの、濁度除去率63.8%、COD除去率53.1%となり、実施例11〜14に比較して大幅に劣る結果であった。
【0042】
〔比較例4〕
PACを200mg/L添加し、下水のコロイド値が0.02meq/Lとプラス荷電になる条件で、カチオン系有機高分子凝集剤K5を用い凝集処理を行った。結果を表3に示す。
特許文献2に記載された結果と同様、この条件では凝集フロックは1mm以下と小さく不良であった。また、処理水の濁度除去率71.1%、COD除去率59.4%となり、実施例11〜14に比較して大幅に劣る結果であった。
【0043】
〔比較例5〕
比較例4と同様にPACを200mg/L添加し、下水のコロイド値が0.02meq/Lとプラス荷電になる条件で、有機高分子凝集剤としてアニオン系有機高分子凝集剤A1を用い、凝集試験を行った。結果を表3に示す。
下水のコロイド物質が充分に荷電中和された本条件では、特許文献1等に記載されている結果と同様に良好な凝集フロックを生成した。しかし、濁度除去率84.2%、COD除去率60.6%となり、実施例11〜14に比較して大幅に劣る結果であった。
【0044】
【表3】

【0045】
〔実施例15〜17〕
N下水処理場における最初沈殿池への流入下水を採取し凝集試験を実施した。
下水の性状はpH=7.1、SS=651mg/L、濁度=568NTU、COD=243mg/L、コロイド値=−0.12meq/Lであった。
他は実施例1〜10と同様に実施した。結果を表4示す。
【0046】
実施例15においては、PACを30mg/L添加した。下水のコロイド値は−0.10meq/L(コロイド荷電の中和度:16.7%)となり、強カチオン系の有機高分子凝集剤であるK1が最も良好な凝集フロックを生成した。処理水も濁度除去率94.1%、COD除去率70.7%と良好な結果であった。
実施例16においては、PACを50mg/L添加した。下水のコロイド荷電量は−0.05meq/L(コロイド荷電の中和度:58.3%)となり、中カチオン系の有機高分子凝集剤であるK3が最も良好な凝集フロックを生成した。処理水も濁度除去率92.8%、COD除去率71.5%と良好な結果であった。
実施例17においては、PACを100mg/L添加した。下水のコロイド荷電量は−0.02meq/L(コロイド荷電の中和度:83.3%)となり、弱カチオン系の有機高分子凝集剤であるK5が最も良好な凝集フロックを生成した。処理水も濁度除去率95.8%、COD除去率73.8%と良好な結果であった。
【0047】
〔比較例6〕
実施例15〜17で用いたものと同一の下水を用い、有機高分子凝集剤としてアニオン系有機高分子凝集剤であるA1を用い凝集試験を行った。結果を表4に示す。
PAC添加量300mg/L、下水のコロイド荷電量が0.03meq/Lとプラス荷電になる条件で良好な凝集フロックを生成したが、濁度除去率86.1%、COD除去率54.3%となり、実施例15〜17に比較してPAC添加量も多く、処理水質も劣位であった。
【0048】
【表4】

【0049】
〔実施例18〜20〕
実施例11〜14と同一の下水を用い、無機凝集剤添加後の攪拌混合時間(反応時間)を変更した以外は、実施例11〜14と同様に実施した。結果を表5に示す。
実施例18はPAC添加後30秒、実施例19は300秒間攪拌混合した後、カチオン系有機高分子凝集剤K5により凝集処理を行った。濁度除去率86%以上、COD除去率70%以上と良好な結果が得られた。また、PAC添加後に反応時間を充分取った実施例19の方が良好な結果が得られた。
実施例20は、PAC添加後15秒間攪拌混合した後、カチオン系有機高分子凝集剤K5により凝集処理を行った。凝集フロックが不均一で、濁度除去率76.9%、COD除去率61.5%となり、実施例18、19より若干劣る結果であった。
【0050】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の下水の処理方法は、下水の凝集処理に好適であり、一次処理施設の水質向上、処理コストの抑制に効果的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水のコロイド値が正の値にならない量の無機凝集剤を下水に添加した後、
さらに、カチオン系有機高分子凝集剤を添加して凝集処理する下水の処理方法。
【請求項2】
無機凝集剤を加えた後のコロイド荷電の中和度(N)が10〜100%である請求項1記載の下水の処理方法。

【公開番号】特開2006−297299(P2006−297299A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123541(P2005−123541)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】