説明

下水管内撮影装置および撮影方法

【課題】 下水本管内を迅速に撮影できる撮影装置の提供。
【解決手段】 電源用バッテリー1 、照明装置4、前方撮影装置3、上方撮影装置5を有する浮体6を有し、下水管9の流水10に装置を浮かべて、その自然流により流下させる。このとき、前方撮影装置3、上方撮影装置5により下水管9内を定時間間隔または連続的に撮影記録するとともに、各撮影画像に撮影時の時刻を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の下水管の本管内の故障箇所を発見するための下水管内撮影装置および撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存の下水本管内の故障箇所を発見する装置として、車輪を有する自走式撮影装置と、車輪の代わりに浮きを有する撮影装置とが存在した。前者は、本管の管底に車輪を接地させて、ケーブルを介して駆動モータにより自走させるものである。後者は、本管内の所定区間を堰で区切り、静水状態で浮体を有する撮影装置をワイヤーおよびケーブルで牽引し、ケーブルの繰り出し長さから、撮影する下水管の内部位置を特定して、撮影するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−200983号公報
【特許文献2】特許第2686593号
【特許文献3】特開平2−218907号公報
【特許文献4】特開2006−78396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の管内検査装置は、いずれも制御ケーブル、電源ケーブルを必要とし、その取り扱いが面倒で、迅速に管内を長距離に渡って検査することが困難であった。例えば、自走式のテレビカメラ車で調査する場合、1日にせいぜい300〜500m程度の検査が限度であった。同様に浮体を有する検査装置においても管内を堰き止めて、ワイヤで牽引するため、その準備作業、排水の処理作業、その他が必要であるため、1日に調査できる下水管の距離はさらに短くならざるを得なかった。
なお、本発明者の実験によれば、平均的に本管の故障箇所は、既設管全長の1〜5%程度であり、その故障箇所を発見するのに多くの時間を要していた。
そこで、本発明は迅速に故障箇所の位置を、おおよそ特定し、その特定位置を詳細に調査できるように、効率のよい下水管内撮影装置および撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、電源用バッテリー(1) 、照明装置(4)および前方撮影装置(3) 並びに上方撮影装置(5)を有する浮体(6)を具備し、
下水管(9) の下水流中に浮かべて、その流水(10)の流れ、または推進用スクリュー(25)により流下しつつ、前方撮影装置(3) および上方撮影装置(5)により、下水管(9) 内の前方部および天井部の各部を連続的に、または定時間間隔に撮影記憶すると共に、各撮影画像に撮影時の時刻を記録するように構成したことを特徴とする下水管内撮影装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は請求項1において、
前記浮体(6)が、鍋底形に形成されたもの、または箱状に形成されたケーシング本体(6a)とその下部外周に取付けて浮力を増強する第1浮輪(7)を取り付けたものからなる下水管内撮影装置である。
請求項3に記載の本発明は請求項1又は請求項2のいずれかにおいて、
前記浮体(6)の前または後に連結され、浮体(6)の向きを一定方向に安定させる補助浮輪(8)を有する下水管内撮影装置である。
【0007】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記浮体(6)の上端外周に環状の安定板(11)が配置され、その安定板(11)の上面の両側に前方照明装置(2) が設けられ、安定板の中央部が上蓋(12)により被蔽された下水管内撮影装置である。
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜請求項4に記載のいずれかの下水管内撮影装置(13)を、第1のマンホール(14)から、第2のマンホール(15)の間に流下させつつ、下水管(9) 内の各部の撮像画を連続的にまたは定時間ごとに撮影する工程と、
その第1のマンホール(14)から、第2のマンホール(15)の間の距離と、その間の下水管撮影装置(13)の通過時間と、記録された各撮影画像の撮影時刻との関係から、撮影された撮像画の管内位置を概略特定する工程と、
次いで、被修理対象となる撮像画の管内位置またはその近傍を、車輪を有する自走式撮影装置(23)で、正確に再度撮影する工程と、を具備する下水管内撮影方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の下水管内撮影装置は、下水管9の下水流中に浮かべて、その流水10の流れによりまたは、推進用スクリュー25により流下しつつ、前方撮影装置3および上方撮影装置5により、下水管9内の前方部および天井部の各部を連続的にまたは定時間間隔に撮影記憶すると共に、各撮影画像に撮影時の時刻を記録するように構成したものである。
その際、水流またはスクリューを利用するため、準備作業が簡単となり、下水管内を長距離に渡り、効率良く、バッテリー電源で撮影することができる。また、各撮影画像に撮影時の時刻が記録されているため、被補修箇所の位置および状態を迅速に見つけることができる。
請求項2に記載のように、浮体6を、鍋底形に形成したもの、または箱状に形成したケーシング本体6aとその下部外周に第1浮輪7を取り付けた構造にしたものであるから、浮力を増強することが可能となり、水の存在する状況下で、安定した撮像を行うことができる。
また、請求項3に記載のように、浮体6の前または後に浮体6の向きを一定方向に安定させる補助浮輪8を連結した場合には、装置の向きを一定方向に向け、さらに安定した画像を撮像することができる。
【0009】
次に、本発明の下水管内撮影方法によれば、下水管内撮影装置13により、下水管9内の各部の撮像画を連続的にまたは定時間ごとに、撮影する工程と、撮影された撮像画の管内位置を概略特定する工程と、次いで、被修理対象となる撮像画の管内位置およびその近傍を、車輪を有する自走式撮影装置で、正確に再度撮影する工程と、の2段階調査をするものであるから、先ず、水流またはスクリューで移動しつつ、迅速に被補修位置を特定し、次いでその位置または近傍を、車輪を有する自走式撮影装置で正確に撮影するようにしたから、被補修位置の下水管内の状態および、その位置を迅速且つ正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例の下水管内撮影装置の使用状態を示す平面図。
【図2】同正面図。
【図3】同使用方法の説明図。
【図4】同装置の分解斜視図。
【図5】同装置の横断面略図。
【図6】同装置による撮影画の一例を示す説明図。
【図7】自走式撮影装置の使用状態を示す説明図。
【図8】本発明の第2実施例の下水管内撮影装置の分解斜視図。
【図9】同正面図。
【図10】同使側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
[第1実施例]
本発明の第1実施例の下水管内撮影装置13は、図4に示す如く、方形箱型のケーシング本体6aと、その外周に取付けられる環状の安定板11と、その安定板11下面に固定される第1浮輪7および第1浮輪7の後に固定される補助浮輪8を有する。安定板11上には一対の前方の照明装置2が固定され、ケーシング本体6a内には一対のバッテリー1および前方撮影装置3、上方撮影装置5、並びに一対の上方の照明装置4が収納され、ケーシング本体6aの上端に上蓋12が水密に着脱自在に被蔽される。上蓋12の少なくとも上面には透明体が配置され、上方の照明装置4によって下水本管の天井面及び側面を照明する。
【0012】
前方撮影装置3、上方撮影装置5の各レンズ3a、5aは浮体6の前端および上蓋12に露出または透明体に被嵌される。そして、第1浮輪7は一例として安定板11に図1の如く、締結具17を介して固定され、その第1浮輪7とケーシング本体6aとにより浮体6を構成する。また、補助浮輪8と第1浮輪7も締結具17を介して固定される。この補助浮輪8は、第1浮輪7の前後に配置されることにより、浮体6の前側が常に下水本管の流水方向に向くように安定させるものである。
即ち、図1に示す如く、浮体6に設けた前方撮影装置3のレンズ3aが常に前方を向くように補助浮輪8が浮体6の前または後に配置され、浮体6自体がその中心の周りに回転しないようにしている。なお、ケーシング本体6aの外周は方形に限らず、多角形、円形、楕円形であってもよい。
【0013】
バッテリー1は上方の照明装置4の電源であると共に、前方撮影装置3、上方撮影装置5の電源ともなる。前方撮影装置3、上方撮影装置5はCCDカメラであり、画像をSDカードに収録する。このSDカードは一例としてメモリー容量が8GBのものを使用し、連続使用でも1時間程の記録容量がある。また一対の上方の照明装置4はバッテリー1によって一例として3時間程度使用可能である。なお、前方の照明装置2は一例として単二電池3本を収納し、連続使用で20時間程度点灯可能である。
この例で使用しているCCDカメラによる撮影画像は静止画を定間隔に撮影するものであるが、これに代えて動画を連続的に撮影することによっても目的を達成することはできる。
【0014】
(使用方法)
図1〜図3に示す如く、下水管9の水面18上に本撮影装置を浮かべる。なお、下水管9の流水10の流量が不十分なときは下流側のみに堰を設け、その堰の高さまで水面18が達するようにし、それ以上の流水10をオーバーフローさせる。そして、準備段階として上蓋12を取外し、前方撮影装置3、上方撮影装置5の録画を開始し、上方の照明装置4、前方の照明装置2のスイッチをONにする。このとき前方撮影装置3、上方撮影装置5は共に動画の如く連続的に撮影される。或いは、一例として1秒間に数回程度撮影するようにセットする。次いで、上蓋12を取付ける。
【0015】
そして、図3に示す如く、一方の第1のマンホール14から本装置を流水10により流下させ、下水管9内の前方および上方を撮影する。上方の撮影範囲は図2に示す如く上方撮影装置5のレンズ5a(魚眼レンズ)により天井部および側部が撮影され、レンズ3aにより前方の下水管9内面が撮影される。そのレンズ3aの撮影範囲は45度程度の範囲である。
このときの撮影画像は一例として、図6に示す如く録画され、水面18の中心に円弧状の管口22が存在し、その外側に放射状に下水管9が広がる。そして、この例では下部の左側に撮影日付20(一例として2009年7月15日)が記録され、右側にその撮影時刻19(一例として11時43分46秒)が記録される。また、左上には連続番号21が記録される。そして、本装置が他方の第2のマンホール15に達したら、それを回収し、そのデータを回収する。
【0016】
この多数の録画を一例としてパーソナルコンピュータの画面に映し出し、下水管9の故障箇所を発見する。その故障箇所の位置を特定する方法、即ち、その位置の第1のマンホール14からの距離は、次のようにして求めることができる(図3を参照のこと)。
第1のマンホール14からの概算距離S=故障箇所までの経過時間×全長L÷全調査時間。ここに故障箇所までの経過時間は、当該録画時刻−装置流下開始時刻である。また全調査時間は、装置の回収時刻−流下開始時刻である。
【0017】
次に、上記計算式から下水本管の故障箇所の位置を概算算出した後に、その位置に図7に示す自走式撮影装置23を導入する。この自走式撮影装置23には複数のケーブル24が接続されている。即ち、電源ケーブル、制御ケーブル、通信ケーブルである。それらはまとめて1本のケーブルに収納することも可能である。それらのケーブル24の端部は地上に接続され、通信ケーブルにはモニターが接続される。そして、自走式撮影装置23を故障箇所の位置まで誘導すると、そこに停止して故障箇所の位置およびその近傍を正確に撮影する。このとき、故障位置までの車輪の回転に連動して、撮影装置の走行距離がモニターに表示される。それらにより、故障箇所の正確な位置および故障状況を把握することができる。
【0018】
実験によれば、流水を利用した本発明の撮影装置は、1日に2000〜4000mの距離の調査が可能であった。これは従来の自走式カメラ車に比べて、10倍の距離である。なお、本装置は本管の径に応じて大、中、小の各安定板11,および浮輪7,8のサイズをそろえておくことが望ましい。例えば本管直径が20〜60cmに対しては小のサイズのものに用い、中サイズは直径が70cm〜1.5mのものに用い、大サイズは1.6m〜3mのものに用いることができる。なお、上記実験では本管の流速が1m/secであった。
【0019】
[第2実施例]
次に、図8〜図10は本発明の第2実施例であり、この例は撮影装置の例が前記第1実施例と異なる点は、浮体6が平面円形のなべ型に形成され、その浮体6内部にケーシング本体6aが収納される。浮体6の底部の両側にはスクリュー25が設けられ水面を自走する。また、安定板11の両測には取手26が設けられ、装置の持ち運びを容易としている。
この撮影装置は、特に水流が遅い下水管または、水がほとんど滞留している下水管内部を撮影するのに優れている。その使用の方法は前記実施例の使用方法に準じて行える。それに加えて、この例では、その撮影装置の速度を速くして、撮影の能率をあげることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は既存の下水本管内部を迅速に点検する際に用いることができる。特に本管内部の事前調査において、下水流が存在する状態で使用することができるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 バッテリー
2 前方の照明装置
3 前方撮影装置
3a レンズ
4 上方の照明装置
5 上方撮影装置
5a レンズ
6 浮体
6a ケーシング本体
7 第1浮輪
8 補助浮輪
【0022】
9 下水管
10 流水
11 安定板
12 上蓋
13 下水管内撮影装置
14 第1のマンホール
15 第2のマンホール
【0023】
16 固定ビス
17 締結具
18 水面
19 時間
20 日付
21 連続番号
22 管口
23 自走式撮影装置
24 ケーブル
25 スクリュー
26 取手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源用バッテリー (1) 、照明装置(4)および前方撮影装置(3) 並びに上方撮影装置(5)を有する浮体(6)を具備し、
下水管(9) の下水流中に浮かべて、その流水(10)の流れ、または推進用スクリュー(25)により流下しつつ、前方撮影装置(3) および上方撮影装置(5)により、下水管(9) 内の前方部および天井部の各部を連続的に、または定時間間隔に撮影記憶すると共に、各撮影画像に撮影時の時刻を記録するように構成したことを特徴とする下水管内撮影装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記浮体(6)が、鍋底形に形成されたもの、または箱状に形成されたケーシング本体(6a)とその下部外周に取付けて浮力を増強する第1浮輪(7)を取り付けたものからなる下水管内撮影装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかにおいて、
前記浮体(6)の前または後に連結され、浮体(6)の向きを一定方向に安定させる補助浮輪(8)を有する下水管内撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記浮体(6)の上端外周に環状の安定板(11)が配置され、その安定板(11)の上面の両側に前方照明装置(2) が設けられ、安定板の中央部が上蓋(12)により被蔽された下水管内撮影装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に記載のいずれかの下水管内撮影装置(13)を、第1のマンホール(14)から、第2のマンホール(15)の間に流下させつつ、下水管(9) 内の各部の撮像画を連続的にまたは定時間ごとに撮影する工程と、
その第1のマンホール(14)から、第2のマンホール(15)の間の距離と、その間の下水管撮影装置(13)の通過時間と、記録された各撮影画像の撮影時刻との関係から、撮影された撮像画の管内位置を概略特定する工程と、
次いで、被修理対象となる撮像画の管内位置またはその近傍を、車輪を有する自走式撮影装置(23)で、正確に再度撮影する工程と、を具備する下水管内撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−106177(P2011−106177A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262950(P2009−262950)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(597022975)エスジーシー下水道センター株式会社 (18)
【Fターム(参考)】