説明

不凍液、及びそれに用いうる防錆剤

本発明は、熱交換機器用熱媒体、特に自動車エンジン等の内熱機関用ラジエータ液に添加して使用される不凍液、また、道路等の凍結防止等に用いられ得作業性および環境性に優れ、環境庁が指定する有害物質であるエチレングリコール等の化学物質を使用せず、廃液も環境に悪影響を与える物質を含まず、廃液処分が簡便である不凍液を提供することを目的とし、グリセリンを含み、水を主成分とし、常圧における原液の凝固点が−20℃以下である、一定の成分比で構成される不凍液を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、熱交換機器用熱媒体、自動車エンジン等の内燃機関用ラジエータ液に添加して使用される、また、道路等の凍結防止等にも用いられ得る低温でも凍らない不凍液に関する。
【背景技術】
水は、0℃以下になると氷結して体積が約1割膨張する。熱交換機器、例えば、自動車用エンジンの冷却を目的とする冷却液は、水のように凍ると、ラジエータやシリンダー・ブロックを破壊してしまう。このため、従来、自動車エンジンの冷却を目的とする冷却液には、氷点の低い薬品を添加し、希釈して使用され凍結を防止している。このような冷却液に添加される薬品としては、凍結を防止するため凝固点を低下させるグリコール類、アルコール類が主成分とされている。さらに、これらに金属類の腐食防止のため、防錆剤、腐食防止剤、酸化抑制剤などが添加され、長寿命化が図られている(例えば、特開平7−157886号公報(特許請求の範囲)、特開2002−97461号公報(特許請求の範囲))。ラジエータ液に用いられるグリコール類は、従来エチレングリコールが多量に使用されてきている。
また、冬季、特に寒冷地においては、道路上の降水や積雪、霜等による水分が道路表面で凍結し、または積雪が踏み固められた圧雪となり、通行する通行人や車両がスリップしてスリップ事故や交通渋滞が発生する。このため、円滑な交通、輸送確保、危険防止の観点から、道路の融雪対策、凍結防止対策が必須であり、国または各地方自治団体、道路整備事業関連業界において、種々の凍結防止剤を散布して、凍結を防止している。具体的には、塩化ナトリウムや、塩化カルシウムを主体とする凍結防止剤(例えば、特開平11−061095号公報(特許請求の範囲)、特開2000−204343号公報(特許請求の範囲)、特開2002−060726号公報(特許請求の範囲)参照)を散布し、路面の水分に凍結防止剤が溶解し、水分中の塩分濃度を上昇させて凝固点を低下させ、また融解熱により圧雪や凍結路面の氷を融解させている。
しかし、このような凍結防止剤に添加されている添加剤は、環境への影響の観点、および人体や動物への影響の観点等から、使用が規制されつつある趨勢となってきた。規制される物質としては、有害大気汚染物質等に該当する可能性のある物質として、硫黄系、塩素系添加剤、ホウ素化合物、亜硝酸塩およびその誘導体、ホルムアルデヒドおよびその誘導体、ヒドロキシルアミン、ジエタノールアミン、ニトロソアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、PCP,PCB等、その他ダイオキシン含有物質、重金属類、エチレングリコール等の物質が挙げられる。
上記従来技術の不凍液には、上記物質が含有されている。従って、環境を汚染しない物質を用いた不凍液の開発が待たれていた。
一方、道路凍結防止のための凍結防止剤は、塩化物を含んでいるので、金属が錆びやすく、車体を構成する金属、電気系統を保護する被膜、タイヤを劣化させてしまう。さらに、コンクリート、アスファルト等のスケーリングなどの劣化につながる。水分により溶解すると、道路周辺の土壌を汚染し、動植物の生態に影響を与える。上記影響から、自治体によっては、塩化物の使用を停止しているところもあり、酢酸を代替物として用いている場合もある。酢酸は、上記塩化物に比較し高価であるため、大量使用ができない。このため、凍結した道路は、通行禁止としている自治体もある。従って、安価で環境に優しい凍結防止剤の開発が待たれていた。
また、屋根等への積雪を除去するための融雪剤は、温湯等を用いていたが、気温の低下とともに凝固し、除雪することができない場合があった。
そこで、本発明者らは、ラジエータ液、凍結防止剤、融雪剤等種々の用途に用いうる不凍液を提供することを目指し鋭意研究の結果、本発明に想到した。本発明の不凍液は、上記使用材料の法的規制に対応し、かつ環境保全、衛生面、動植物に対し悪影響を与えない成分で構成され、金属類の防錆をかねつつ、低温の環境下にあっても凍らない特性を有する。また、排水の際複雑な処理を必要としない、環境に優しいものである。
【発明の開示】
本発明の不凍液は、熱交換機器用熱媒体、自動車エンジン等の内燃機関用ラジエータ液に添加して使用され得る。また、道路等の凍結防止剤、また融雪剤等としても用いられることができる。
すなわち、本発明の不凍液は、グリセリンを含有し、エチレングリコールを使用しないことを特徴とする。
また、本発明の不凍液は、凝固点が、マイナス20℃以下、さらにはマイナス50℃でありうる。
さらに、本発明の不凍液の実施態様としては、エチレングリコールを含まず、凝固点がマイナス20℃以下であり、以下のA液、B液を混合しうる。
(A液)グリセリンを含有する液
(B液)以下の成分を含む、混合液
主成分としての水
ジカルボン酸
金属水酸化物水溶液
トリアゾール類、キレート剤、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸からなる群より選択される1以上の物質。
さらに、本発明の不凍液は、プロピレングリコール類を含みうる。
ここで、ジカルボン酸は、ドデカン二酸、またはセバチン酸から選択されうる。水酸化金属塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムから選択される1または2以上でありうる。
また、トリアゾール類は、トリルトリアゾール、またはベンゾトリアゾールでありうる。
さらに、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸錯体であり得る。
また、飽和脂肪酸は、カプロン酸、カプリル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸からなる群から選択される1または2以上であり得る。
また、不飽和脂肪酸は、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸からなる群から選択される1または2以上であり得る。
本発明の不凍液の他の実施態様としては、B液の各成分比が、
キレート剤: 0重量%〜20.0重量%
ジカルボン酸: 0.1重量%〜10.0重量%
トリアゾール類: 0重量%〜10.0重量%
飽和脂肪酸及び/または不飽和脂肪酸:1.0重量%〜50.0重量%
金属水酸化物水溶液: 0.10重量%〜20.0重量%
水: 30.0重量%〜95.0重量%
であり得る。トリアゾール類、キレート剤、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸は、これらより選択した1以上の成分を上記範囲内で用いうる。
本発明の不凍液のさらに他の実施態様としては、エチレングリコールを含まず、凝固点がマイナス20℃以下であり、以下の構成であり得る。
(A液)グリセリンを含有する液
(B液)以下の成分を含む、混合液
エチレンジアミン四酢酸錯体、
トリルトリアゾール、
ドデカン二酸、
カプリル酸および/またはオレイン酸、
金属水酸化物水溶液、
主成分としての水
B液の各成分比としては、
エチレンジアミン4酢酸錯体: 0.5重量%〜20.0重量%
ドデカン二酸: 0.1重量%〜10.0重量%
トリルトリアゾール: 0.1重量%〜10.0重量%
カプリル酸及び/またはオレイン酸:1.0重量%〜50.0重量%
金属水酸化物水溶液: 0.10重量%〜20.0重量%
水: 30.0重量%〜95.0重量%
でありうる。カプリル酸およびオレイン酸を用いる場合は、カプリル酸:1.0重量%〜25.0重量%、オレイン酸:1.0重量%〜25.0重量%であり得る。
更に、他の実施態様としては、B液の各成分比としては、
エチレンジアミン4酢酸錯体: 1.0重量%〜10.0重量%
ドデカン二酸: 0.5重量%〜5.0重量%
トリルトリアゾール: 0.5重量%〜5.0重量%
カプリル酸: 2.0重量%〜20.0重量%
オレイン酸: 2.0重量%〜20.0重量%
金属水酸化物水溶液: 1.0重量%〜15.0重量%
水: 30.0重量%〜90.0重量%
でありうる。
ここで、上記不凍液は、さらに、ジプロピレングリコールを含み得る。
また、上記不凍液は、さらに、多価フェノール類を含み得る。多価フェノール類は、フラボノイド、クマリン類、フェニルプロパノイド、タンニン類から選択される1以上の物質であり得る。
本発明の不凍液における(A液)グリセリンを含む液は、不凍液全量に対し、1重量%〜99重量%であり得る。
また、本発明の不凍液は、A液中、グリセリンとプロピレングリコールの重量比が、99.5:0.5〜0.5:99.5であり得る。
上記不凍液は、さらに、水ガラス水溶液が含まれ、凍結防止剤に用い得る。
本発明の防錆剤は、以下の成分を含むことを特徴とする。
主成分としての水
ジカルボン酸
金属水酸化物水溶液
トリアゾール類、キレート剤、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸からなる群より選択される1以上の物質。
ここで、ジカルボン酸は、ドデカン二酸、セバチン酸から選択されうる。
また、水酸化金属塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムからなる群から選択される1または2以上であり得る。
また、トリアゾール類は、トリルトリアゾール、またはベンゾトリアゾールであり得る。
ここで、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸錯体であり得る。
さらに、飽和脂肪酸は、カプロン酸、カプリル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸からなる群から選択される1または2以上であり得る。
また、不飽和脂肪酸は、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸からなる群から選択される1または2以上であり得る。
本発明の防錆剤の実施態様としては、各成分比が、
キレート剤: 0重量%〜20.0重量%
ジカルボン酸: 0.1重量%〜10.0重量%
トリアゾール類: 0重量%〜10.0重量%
飽和脂肪酸及び/または不飽和脂肪酸:1.0重量%〜50.0重量%
金属水酸化物水溶液: 0.10重量%〜20.0重量%
水: 30.0重量%〜95.0重量%
であり得る。
更に、他の実施態様としては、B液の各成分比としては、
エチレンジアミン4酢酸錯体: 0.5重量%〜20.0重量%
ドデカン二酸: 0.1重量%〜10.0重量%
トリルトリアゾール: 0.1重量%〜10.0重量%
カプリル酸: 1.0重量%〜25.0重量%
オレイン酸: 1.0重量%〜25.0重量%
金属水酸化物水溶液: 0.10重量%〜20.0重量%
水: 30.0重量%〜95.0重量%
でありうる。
本発明の防錆剤のさらに他の実施態様としては、以下の成分を含み得る。
エチレンジアミン4酢酸錯体
ドデカン二酸
トリルトリアゾール
カプリル酸及び/またはオレイン酸
金属水酸化物水溶液

本発明の防錆剤のさらに他の実施態様は、以下の成分を含み得る。
エチレンジアミン4酢酸錯体: 0.5重量%〜20.0重量%
ドデカン二酸: 0.1重量%〜10.0重量%
トリルトリアゾール: 0.1重量%〜10.0重量%
カプリル酸及びまたはオレイン酸:1.0重量%〜50.0重量%
金属水酸化物水溶液 0.1重量%〜20.0重量%
水: 30.0重量%〜95.0重量%
本発明の防錆剤は、さらに、多価フェノール類を含み得る。
ここで、多価フェノール類は、フラボノイド、クマリン類、フェニルプロパノイド、タンニン類からなる群から選択される1以上の物質であり得る。
さらに、多価フェノール類は、1×10−6重量%〜1重量%含有され得る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の不凍液を融雪剤として用いた場合の屋根面への散布の態様を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の不凍液は、基本的には、グリセリンまたはその誘導体を含み、エチレングリコールを使用せず、環境に悪影響を与えない成分で構成された不凍液であり、従来用いられている不凍液をしのぐ性能を有する。
本発明の不凍液は、日本国環境省環境管理局で指定している「有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質」(改正大気汚染防止法(1997年4月1日施行)第2条第9項掲載)に挙げられているエチレングリコールを一切含まない。本発明の不凍液は、希釈しない濃厚液の状態において、凝固点が、マイナス20℃以下も可能である。これ以下の温度においても、シャーベット状の固体であって、固化しない。成分の調整例によっては、凝固温度が、マイナス50℃以下も可能である。
本発明の不凍液は、グリセリンまたはその誘導体から製造することも可能である。例えば、25%の水/75%のグリセリンからなる混合物は、マイナス90℃まで凍らないことが本発明において実証されている。
本発明の不凍液は、グリセリンまたはその誘導体を含むA液と、特定成分を含むB液とを混合してなる。A液は、グリセリンの他、水可溶のアルコール類またはその誘導体を含み得る。グリセリンの他に含まれ得る成分としては、例えば、グリセリン・カーボネート、グリセリンのアセタール、ソルビトール、グルコース、好ましくは、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピレンアルコール、プロピレングリコールまたはその誘導体類等を含み得る。ここで、「アルコールの誘導体類」とは、アルコールのエステル、エーテルを含む概念である。
グリセリン等は、本発明の不凍液に冷却効果を付与し、さらに使用の態様に応じた適度の粘度を付与する。被着物への不凍液の付着を容易にする効果も有する。さらに、グリセリン等は、他の溶媒との混合液、例えば水溶液とすると、特に不凍液の凝固点低下に貢献する。さらに、これらは、pH安定効果を有する。A液中のグリセリンの成分比は、0.5〜100重量%が好ましい。
グリセリンの他のA液成分として、プロピレングリコールが、好ましく用いられる。グリセリンとプロピレングリコールのA液中での重量比は、好ましくは99.5:0.5〜0.5:99.5である。グリセリンと他のA成分との比率は、用途に応じて、適宜設定し得る。
B液は、基本的には、金属に対する防錆の効果、および凝固点をさらに低下させる効果を担保し得る。B液は、以下の成分を含み得る。すなわち、水を主成分とし、さらに、ジカルボン酸、金属水酸化物水溶液を含む。この他、トリアゾール類、キレート剤、飽和脂肪酸、または不飽和脂肪酸からなる群より選択される1以上の物質から構成される。B液は、本発明の不凍液の構成成分であるが、単独で防錆剤としても用い得る。
ジカルボン酸は、好ましくは、ドデカン二酸、セバチン酸などが用いられ得る。B液中の好ましい成分比は、0.1重量%〜10.0重量%であり得る。
金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが挙げられる。なお、塩素系の金属塩は使用しない。これらは、水に溶解した水溶液として用いることが取り扱い上好ましい。この水溶液は、好ましくは、水で3倍から5倍に希釈して用いることが好ましい。B液中の金属水酸化物水溶液の好ましい成分比は、0.10重量%〜20.0重量%であり得る。
トリアゾール類は、トリルトリアゾール、またはベンゾトリアゾールが例示される。B液中の好ましい成分比は、0重量%〜10.0重量%である。
キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ酢酸、またはこれらの金属塩、イオン等の錯体が挙げられる。B液中の好ましい成分比は、0重量%〜20.0重量%であり得る。
本発明に用いられるB液は、さらに飽和脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸を含む。飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が挙げられ、少なくとも1つが選択され得る。さらに、不飽和脂肪酸は、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸から少なくとも1つ選択され得る。これらの飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸は、1つまたは2以上の組み合わせで用いられ得る。例えば、飽和脂肪酸のカプリル酸と不飽和脂肪酸のオレイン酸が本発明の不凍液の成分として用いられ得る。B液中の飽和脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸の好ましい成分比は、0重量%〜50.0重量%であり、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸を用いる場合は、それぞれ1.0重量%〜25.0重量%であり得る。
水は、主成分として含まれ、基本的には、脱イオン水、精製水、蒸留水、水道水、あるいは鉱泉水等を用い得る。B液に含まれる好ましい成分比としては、30.0重量%〜95.0重量%であり得る。
本発明の不凍液は、上記成分の他、さらにジプロピレングリコールを含み得る。ジプロピレングリコールは、本発明の不凍液に添加すると、不凍液を高温の環境で用いてもpH値が安定し、好ましい。本発明の不凍液において、防錆効果を担うB液中、好ましくは、0.01重量%〜10.0重量%含まれ得る。また、ジプロピレングリコールは、本発明の防錆剤の成分としても、用いることができ、上記成分に加えて用い得る。
さらに、本発明の不凍液は、多価フェノールを含み得る。ここで、多価フェノール類は、フラボノイド、クマリン類、フェニルプロパノイド、タンニン類から選択される1以上の物質であり得る。この多価フェノール類は、本発明の不凍液の成分として添加すると、不凍液を高温の環境で用いても、接触している金属に焼きつきがなく、金属表面が変色しにくい。多価フェノール類は、本発明の不凍液において、防錆効果を担うB液中、好ましくは、1×10−6重量%〜1重量%含まれ得る。フラボノイドには、たとえは、バイカリン、クリシン、ミリセチン、ジヒドロミリセチン、モリン、ナリンジン、クエルセチン、クエルシトリン、ルチン、オウゴニンがあげられる。クマリン類には、クマリン、エスクレチン、スコポレチン、スコポレチンがあげられる。フェニルプロパノイドには、カフェ酸、クロロゲン酸、ケイヒ酸、クマル酸等、タンニン類は、エピガロカテキン、没食子酸、タンニン等があげられる。
本発明の不凍液には、さらに、使用の態様によって、消泡剤を添加してもよい。
上記成分の混合の方法および順序は特に限定されない。例えば、B液成分を調整し、これらを水に溶解させて、本発明に用いるB液を調整する。その後、この水溶液とグリセリンを含むA液とを混合する。または、B液成分の一部を水に溶解し、この溶液とグリセリンを含むA液とを混合させた後、B液残余の成分を溶解してもよい。または、B液成分の一部とグリセリン等の一部を混合した後、他の残余の成分およびグリセリン等を含むA液の残余とを混合してもよい。
本発明の実施の態様の1つとしては、A液としてグリセリン、B液として、以下の成分を含む混合液であり得る。すなわち、エチレンジアミン四酢酸錯体、トリルトリアゾール、ドデカン二酸、カプリル酸および/またはオレイン酸、金属水酸化物水溶液、ジプロピレングリコール、多価フェノール類、特にはクロロゲン酸、そして残部が水である。本発明の不凍液は、環境に悪いとされている物質を含まず、A液と相乗して凝固温度をさらに低下させる効果を有する。さらに、防錆、洗浄効果を有する。
A液およびB液の成分は、用途に応じ上述した範囲内において選択し得る。また、A液とB液の重量比は、例えば、ラジエータの不凍液として用いる場合、防錆効果と凝固点を下げる効果を双方効果的に得るためには、99:1から1:99の範囲が好ましい。用途に応じて、本発明の不凍液におけるA液とB液の比率は適宜選択し得る。
本発明の好適な実施態様の1つとして、ラジエータの不凍液として用いる場合、例えば、A液はグリセリンを含む液であり、B液の各成分およびそれらの体積比は、以下のように選択し得る。すなわち、
(1)A液:グリセリンおよびプロピレングリコールを含有する液
(2)B液:以下の成分を含む、混合液
エチレンジアミン四酢酸錯体、
トリルトリアゾール
ドデカン二酸
カプリル酸および/またはオレイン酸
金属水酸化物水溶液
ジプロピレングリコール
クロロゲン酸
主成分としての水
を、成分とし得る。これらの成分からなる不凍液は、防錆効果の点で、特に好ましい。これらの成分比としては、例えば、
(1)A液:グリセリンおよびプロピレングリコールを含有する液
(2)B液:以下の成分を含む、混合液
エチレンジアミン4酢酸錯体:0.5〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、
ドデカン二酸:0.1〜10.0重量%、好ましくは、0.5〜5.0重量%、
トリルトリアゾール:0.1〜10.0重量%、好ましくは、0.5〜5.0重量%、
カプリル酸及び/またはオレイン酸:1.0〜50.0重量%、ただし、双方を用いる場合は、
カプリル酸:1.0〜25.0重量%、好ましくは、2.0〜20.0重量%、
オレイン酸:1.0〜25.0重量%、好ましくは、2.0〜20.0重量%、
金属水酸化物水溶液:0.10〜20.0重量%、好ましくは1.0〜15.0重量%、
水:30.0〜95.0重量%、好ましくは、30.0〜90.0重量%
である。
さらに、ジプロピレングリコールを含む場合、0.01重量%〜10.0重量%程度含むことが好ましい。更に、クロロゲン酸を含む場合、1×10−6重量%〜1重量%が好ましい。
また、本発明の不凍液は、A液にグリセリンのほか、プロピレングリコールを含む態様も挙げられる。グリセリンとプロピレングリコールの重量比は、99.5:0.5〜0.5:99.5であり得る。
上記成分比の本発明の不凍液は、グリセリン等による凝固点の低下の効果、およびB液成分の防錆効果および凝固点のさらなる低下の効果とが相乗して、好ましい効果が証明されている。
本発明の不凍液は、pH7.0〜pH13.0、好ましくは、pH7.0〜pH12.0の範囲内の水素イオン濃度を保持することが好ましい。この範囲において、使用態様に応じて構成成分の配合比率を選択してpH調製し、各種金属、例えば、銅、アルミニウム、鉄、鋼材またはこれらの合金等の各種金属の表面に対する腐食を防止することができる。
防錆の効果として、例えば、上記組成の不凍液を、蒸留水で15倍に希釈した液は、pH9.0〜9.5であるが、この液に鋳鉄を48時間浸漬しても錆を生じない。
また、本発明に係る不凍液の1実施態様において、A液をグリセリン、B液を調整例1の調整で行い、A液75%、B液25%とする場合、マイナス107.8℃の凝固点が測定され、顕著な不凍効果が証明されている。
本発明の不凍液は、防錆の効果の他、洗浄効果も有する。例えば、自動車のラジエータ、エンジン、配管内を循環する不凍液として用いた場合、金属製のラジエータ、エンジン、配管、周囲の機器等を錆びさせることがない。従って、自動車のみならず、気温が零下である対流圏、成層圏を飛行する航空機等のエンジン冷却装置の冷却媒体としても用いる等、航空・宇宙分野においても用いることができる。また、長期間の使用に際しても、沈殿物が生じにくく、優れた不凍効果および、防錆効果も持続する。従って、定期的に液交換する繁雑さがない。
さらに、潜熱蓄熱に応用することができ、床暖房、氷蓄熱器等の熱媒体として用いることができる。
本発明の不凍液は、特殊な廃液処理を要する原材料を用いていないので、使用後、廃液は環境に悪影響を与えず、通常の処理で排水することができる。
さらに、本発明の他の実施態様として、上記調整した不凍液を凍結防止剤としても用いうる。凍結防止剤として用いる場合は、道路や駐車場等のアスファルトやコンクリート、タイル等による舗装面に散布して、凍結を防止することができる。
凍結防止剤として使用する場合、散布した道路等への付着性を高めるために、不凍液に増粘剤を添加すると好ましい。増粘剤としては、低温であっても増粘効果を付加することができる範囲で特に限定されず、たとえばベントナイト、アルミノシリケート、非イオン系セルロース誘導体であるヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースや、水ガラスなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらを水溶液として、本発明の不凍液と混合した混合液は、凍結防止剤として好適に用いられ得る。
水ガラスの水溶液は、例えば、水ガラスを水で2〜10倍に希釈したものを用いる。上記調整した不凍液と水ガラス水溶液との体積比率は、好ましくは、1:2〜2:1である。この調整液を原液とし、気温により、好適な凝固範囲を選択して、適宜水で希釈度を調整し、道路や駐車場の表面に散布して用いる。なお、上記凍結防止剤に用いる調整液は、原液を用いても、走行車両を用いたスリップ試験において、水と同等の評価を得ている。
また、上記調整した凍結防止剤に用いる不凍液は、凍結した道路の表面に散布すると、凍結していた道路表面の水が解凍する。上記液は、30℃〜40℃程度の温水とすると特に解凍効果が大きい。
また、本発明の不凍液は凝固点が低いので、融雪効果が大きく、融雪剤として好ましく用い得る。融雪剤として使用した場合、経時的に雪が解けて水となり本発明に混合して不凍液を希釈することとなる。本発明の不凍液は、A液の濃度が低くなっても、0℃よりはるかに低い凝固点を保持しうる。従って、長時間にわたって融雪効果を持続することができる。
本発明の不凍液はグリセリンを含むA液の割合が大きいと、凝固点が低くなる特徴を有する。A液を70%、好ましくは75%、特には80%含む不凍液は、マイナス100℃以下の凝固点を有する特異な特徴を有する。従って、このようなA液を多く含む不凍液を融雪剤として散布すると、短時間で融雪効果が得られ、さらに融けた水で希釈されても長時間優れた融雪効果を持続することができる。
本発明の不凍液は、融雪剤として、降雪時に家屋の屋根に散布することにより、屋根の上への積雪を減少させることもできる。従来から、屋根に水や温水を散布する技術は知られている。しかし、降雪時には気温は0℃以下となるが、水は0℃以下で凍結するため、屋根の温度が0℃以下であれば、屋根に接触した部分から水が凍結する可能性がある。また、散布を継続していなければ屋根で水が凍結してしまうという問題がある。しかし、本発明の不凍液は0℃を下回っても凍結しないので、散布の途中で凍結することはない。また、散布を停止しても、乾燥が水に比較して遅いので、水を含んだ湿潤状態を持続することができる。上述のように希釈されても融雪効果を持続することができるので、断続的な散布で足りる。
例えば、図1(a)(b)(c)に示すような装置の設置例により、本発明の不凍液を屋根面に散布することができる。図1において、2は本発明の不凍液を貯蔵するためのタンク、4は、屋根の上まで不凍液を揚水するための加圧ポンプであり、6は、本発明の不凍液を屋根に散布するための、有孔管である。有孔管6の孔10は、屋根面双方に向けて設置されている。12は、有孔管を屋根に取り付ける固定器具である。図中、矢印は、不凍液の流れ方向を示す。
上記不凍液に用いられ得るB液は、本発明の不凍液の防錆効果を担う必須成分として含まれる。
さらに本発明の防錆剤は、成分が、上述したB液成分と同様であってよく、言い換えれば、上記B液は、単独で防錆剤として用いうる。
具体的には、本発明の防錆剤は、主成分としての水、ジカルボン酸、金属水酸化物水溶液を必須成分とし、さらにトリアゾール類、キレート剤、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸からなる群より選択される1以上の物質を含み得る。
ジカルボン酸、トリアゾール類、飽和脂肪酸、キレート剤、不飽和脂肪酸、水酸化金属塩は、上記不凍液に例示したものと同様のものが用いられ得る。
また、これらの成分比も、本発明の不凍液に例示した、成分比を用い得る。
さらに、本発明の防錆剤の実施態様としては、
エチレンジアミン4酢酸錯体
ドデカン二酸
トリルトリアゾール
カプリル酸
オレイン酸
金属水酸化物水溶液
水を含み得る。このような組成の本発明の防錆剤は、環境に悪いとされている物質を含まず、防錆、洗浄効果を有する。
ここで、上記実施態様の成分比の1例としては、
エチレンジアミン4酢酸錯体:0.5重量%〜20.0重量%、好ましくは1.0重量%〜10.0重量%
ドデカン二酸:0.1重量%〜10.0重量%、好ましくは0.5重量%〜5.0重量%、
トリルトリアゾール:0.1重量%〜10.0重量%、好ましくは0.5重量%〜5.0重量%、
カプリル酸:1.0重量%〜25.0重量%、好ましくは2.0重量%〜20.0重量%、
オレイン酸:1.0重量%〜25.0重量%、好ましくは2.0重量%〜20.0重量%、
金属水酸化物水溶液:0.01重量%〜20.0重量%、好ましくは1.0重量%〜15.0重量%
水:30.0重量%〜95.0重量%、好ましくは30.0重量%〜90.0重量%が好ましく挙げられる。
本発明の防錆剤の他の実施態様としては、さらに、ジプロピレングリコールを含みうる。ジプロピレングリコールは、本発明の防錆剤に成分として添加すると、例えば金属加工工程において高温の環境で用いてもpH値が安定し、好ましい。ジプロピレングリコールは、本発明の防錆剤において、好ましくは、0.01重量%〜10.0重量%含まれ得る。本発明の防錆剤は、さらに他の実施態様としては、さらに、多価フェノール類を含み得る。ここで、多価フェノール類は、フラボノイド、クマリン類、フェニルプロパノイド、タンニン類から選択される1以上の物質であり得る。この多価フェノール類は、本発明の防錆剤として用いると、例えば金属加工工程において、高温の環境で用いても、接触している金属に焼きつきがなく、金属表面が変色しにくい。多価フェノール類は、本発明の防錆剤の成分中、好ましくは、1×10−6重量%〜1重量%含まれ得る。フラボノイドには、たとえは、バイカリン、クリシン、ミリセチン、ジヒドロミリセチン、モリン、ナリンジン、クエルセチン、クエルシトリン、ルチン、オウゴニンがあげられる。クマリン類には、クマリン、エスクレチン、スコポレチン、スコポレチンがあげられる。フェニルプロパノイドには、カフェ酸、クロロゲン酸、ケイヒ酸、クマル酸等、タンニン類は、エピガロカテキン、没食子酸、タンニン等があげられる。
上述した本発明の防錆剤は、銅、アルミニウム、鉄、鋼材またはこれらの合金等種々の金属の加工工程に用いる金属加工液あるいは金属部品等の保管、ラジエータ用冷却液等にも使用されうる。
以上、本発明について説明したが、本発明は、これらの実施の形態のみに限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々の変更、修正、改変を加えた態様で実施しうる。
以下、本発明の実施の態様について,説明する。
【調製例1(B−1液)】
EDTA・Na塩(商品名クレワット 帝国化学産業株式会社製)50g,ドデカン二酸14.5g,トリルトリアゾール(商品名TT−130 城北化学工業株式会社製)12.5g、カプリル酸130g,オレイン酸125g,水450g、水酸化ナトリウム水溶液(33%希釈、pH11〜13)150g,ポリアルキレングリコール(商品名ディスホームLE−120R)68gを調製し、混合する。これをB−1液とする。
【実施例1】
A(グリセリン100重量%)液:上記調製例1で調製したB−1液の重量比を、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、50:50、75:25で混合し、実施例1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8とした。それぞれ調整した液について、示差走査熱量計(セイコーインスツルメント製:走査速度5℃/min)にて測定し、凝固点を得た。表1に、A液とB液の配合比と凝固温度を示した。
【表1】

【調整例2(不凍液原液(1)】
A(グリセリン100重量%)液:調製例1で調製したB液=7:3の混合比で、本発明の不凍液を調整した。
【実施例2】
調整例2で調整した不凍液原液(1)を精製水で希釈した、液の凝固温度を測定した。
調整例2で調整した不凍液原液(1)と水の重量比が、100:0、50:50、30:70、20:80の割合で混合し、実施例2−1、2−2、2−3、2−4とした。それぞれ調整した液の、凝固温度を測定した。表2に、配合比とpH、凝固温度を示した。
【表2】

【実施例3】
調整例2で調整した不凍液原液(1)を、蒸留水で重量比で、5%、10%、15%、20%、25%、30%にそれぞれ希釈した液を調整し、それぞれ、実施例3−1、3−2,3−3,3−4、3−5とした。冷凍庫(ホシザキ(株)HPFDOMFT3)を用いて、−15℃で6時間放置後の状態を観察した。結果を、表3に各液の目視観察による状態を示した。
【表3】

【実施例4】
(防錆試験)
鋳鉄、鉄、銅合金、アルミニウム4000、アルミニウム5000、アルミニウム6000、アルミニウム7000の各金属片を、調整例2で調整した本発明の不凍液を15倍に蒸留水で希釈した液(pH9.0〜9.5)に、50℃で48時間浸漬した。鋳鉄、鉄には錆が発生しなかった。銅合金、アルミニウム片は変色がなかった。
【調整例3 不凍液原液(2)】
グリセリンを30重量%、プロピレングリコールを61重量%、調製例1で調製したB−1液を9重量%の割合で混合した。
【実施例5】
上記調整例3の不凍液原液(2)液を30重量%、蒸留水70重量%で希釈した。この液に、アルミ7000番、エンジン用アルミ合金、銅、黄銅、鋳鉄、鉛−スズはんだ、の各金属片を浸漬し、60.0℃の保温庫(東洋製作所株式会社製:CI−410)内で、420時間放置した。結果を表4に示す。変化のあったものについては記載し、変化がないものは○とした。
【表4】

【比較例1】
市販の不凍液(日石三菱株式会社製:クーラント補充液グリーン)に、実施例5と同様の条件で、アルミ7000番、銅、黄銅、鋳鉄の各金属片を浸漬した結果を表4に示す。
本発明にかかる不凍液は、アルミ7000番、銅、黄銅に関しては、市販の不凍液が変色したのに対し、変化はみられなかった。鋳鉄については、市販の不凍液と比較し、同様に変化はみられなかった。
【実施例6】
上記調整例3で調整した不凍液原液(2)と蒸留水を重量比で、50:50、および30:70の割合で、希釈した液を調整した。また、グリセリン90重量%B液10重量%を混合した液と蒸留水を重量比で50:50の割合で液を調整した。それぞれ、実施例6−1,6−2,6−3とした。
これらを、−24℃で900時間放置した。表5に各サンプルの配合比と希釈率、目視観察の状態を示した。
【表5】

【調製例4(B−2液)】
EDTA・Na塩(商品名クレワット 帝国化学産業株式会社製)30g,ドデカン二酸10g,トリルトリアゾール(商品名TT−130 城北化学工業株式会社製)7g、カプリル酸110g,オレイン酸50g,水酸化カリウム水溶液(33%希釈、pH11〜13)130g、水663gを調製し、混合する。これをB−2液とする。
【調製例5 不凍液原液(3)】
プロピレングリコール95重量%、グリセリン1重量%、上記調製例4で調製したB−2液4重量%とした。
【実施例7】
上記調製例5で調整した本発明の不凍液原液(3)330mlを蒸留水670mlで希釈した。この液に、アルミ7000番、エンジン用アルミ合金、銅、黄銅、鋳鉄、鋼、鉛−スズはんだ、の各金属片を浸漬し、−21℃の冷凍庫(ホシザキ(株)HPFDOMFT3)、360時間放置、および保温槽(タイガーVE真空電動ポット)内で、12時間毎に100℃に沸騰させ、98℃の保温状態を360時間持続させた。結果を表6に示す。○は、変化がないことを示す。
【表6】

【調整例6 不凍液原液(4)】
調製例1で調整したB−1液、
グリセリン、
珪酸ナトリウム(荒川科学工業株式会社製)500gを60gの精製水で20倍に希釈した水溶液、
を、この順で、重量比1:7:1の割合で混合した。
【実施例8】
(スリップ試験)
カローラ(トヨタ自動車株式会社製)を速度50km/hで安定走行させ、急ブレーキをかけた。ブレーキをかけた位置から停止した位置との間の距離を測定した(天候:晴れ、気温25℃)。路面はアスファルト舗装面である。水および、調製例6で調整した本発明の不凍液原液(4)の各種希釈率の希釈液を、路面に散布した。以下の条件におけるアスファルト路面上の車両走行によるテストを行った。
実施例8−1:不凍液なしの路面走行、
実施例8−2:本発明の不凍液の3倍希釈液を散布した路面走行、
実施例8−3:5倍希釈液を散布した路面走行、
実施例8−4:10倍希釈液を散布した路面走行、
実施例8−5:水道水を散布した路面走行、
実施例8−6:タイヤに砂を一面に付着させた車両を用いた、本発明の不凍液の3倍希釈液を散布した路面上の走行、
について、テストを行った。結果を表7に示した。
【表7】

表7により、スリップテストの結果、本発明の不凍液を散布した状態は、不凍液の希釈率に関係なく、水道水を散布した状態と変化ないことが示された。すなわち、通常の自然水による路面のぬれに対するスリップ状態となんら変化のないことがわかる。
【調製例7(B−3液)】
EDTA・Na塩(商品名クレワット 帝国化学産業株式会社製)20g,ドデカン二酸14g,トリルトリアゾール(商品名TT−130 城北化学工業株式会社製)10g、カプリル酸75g,オレイン酸75g,水酸化カリウム水溶液(33%希釈、pH11〜13)130g、ジプロピレングリコール40g、クロロゲン酸水(クロロゲン酸(和光製薬株式会社製)1gを蒸留水4リットルに希釈した液)10g、水626gを調製し、混合する。これをB−3液とする。
【調製例8 不凍液】
A液(プロピレングリコール95重量%グリセリン5重量%の混合液)30重量%、上記調製例7で調製したB−3液3重量%、水67重量%として、不凍液を調製した。
【実施例9】
上記調製例8で調製した不凍液に、この液に、アルミ7000番、エンジン用アルミ合金、銅、黄銅、鋳鉄、鋼、鉛−スズはんだ、の各金属片を浸漬し、−21℃の冷凍庫(ホシザキ(株)HPFDOMFT3)、360時間放置、および保温槽(タイガーVE真空電動ポット)内で、12時間毎に100℃に沸騰させ、98℃の保温状態を1200時間持続させた。結果を表8に示す。○は、変化がないことを示した。
【表8】

【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明にかかる不凍液は、新規な成分の不凍液であり、詳しくは、環境庁が指定する有害物質、エチレングリコール等の化学物質を使用せず、水を主成分とし、種々の特定された成分を含むことにより、原液で常圧で−20℃以下、さらには−50℃以下の条件においても、凍ることなく液状であることが可能である。種々の分野において、不凍効果、防錆効果の要求用途に応じて、水にて希釈することができ、作業性および環境性に優れ、廃液も環境に悪影響を与える物質を含まないので、廃液処理が簡便である。
また、本発明の不凍液は、エンジンに併設されるラジエータの冷却水として特に寒冷地においても使用することができる他、電気エネルギーの負担を軽減することのできる床やビルの冷房のための氷冷却機構にも使用することができ、さらには食品、薬品等の保冷剤等あらゆる不凍液を用いてなる用途に用い得る。また、水ガラスを一定量付加させ、適宜希釈した液を路面に散布することにより、路面上の水分が凍結することを防止することができる。
自動車、航空機等のエンジンの冷却装置の冷却媒体として、また、床暖房、氷蓄熱器等の熱媒体として、また道路等の凍結防止等のあらゆる用途に用いうる。さらには、防錆の効果、洗浄効果も有する。使用後、廃液は、環境に悪影響を与えず、通常の処理で排水することができる。
また、本発明の防錆剤は、上記本発明の不凍液の必須成分として用い得る他、単独で、金属加工液や、金属の保存液としても用いることができ、優れた防錆効果を有する。本発明の防錆剤も、本発明の不凍液同様に、作業性および環境性に優れ、廃液も環境に悪影響を与える物質を含まないので、廃液処理が簡便である。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンまたはその誘導体を含有し、エチレングリコールを使用しない、不凍液。
【請求項2】
凝固点が、マイナス20℃以下である、請求の範囲第1項に記載の不凍液。
【請求項3】
凝固点が、マイナス50℃以下である、請求の範囲第2項に記載の不凍液。
【請求項4】
エチレングリコールを含まず、凝固点がマイナス20℃以下であり、以下のA液、B液を混合してなる、不凍液。
(A液)グリセリンを含有する液
(B液)以下の成分を含む、混合液
主成分としての水
ジカルボン酸
金属水酸化物水溶液
トリアゾール類、キレート剤、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸からなる群より選択される1以上の物質。
【請求項5】
さらにプロピレングリコール類を含む、請求の範囲第4項に記載の不凍液。
【請求項6】
前記ジカルボン酸が、ドデカン二酸、セバチン酸から選択される、請求の範囲第4項または第5項に記載の不凍液。
【請求項7】
前記水酸化金属塩が、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムから選択される1または2以上である、請求の範囲第4項または第5項に記載の不凍液。
【請求項8】
前記トリアゾール類が、トリルトリアゾール、またはベンゾトリアゾールである、請求の範囲第4項または第5項に記載の不凍液。
【請求項9】
前記飽和脂肪酸が、カプロン酸、カプリル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸からなる群から選択される1または2以上である、請求の範囲第4項または第5項に記載の不凍液。
【請求項10】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸錯体である、請求の範囲第4項または第5項に記載の不凍液。
【請求項11】
前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸からなる群から選択される1または2以上である、請求の範囲第4項または第5項に記載の不凍液。
【請求項12】
前記B液の各成分比が、
キレート剤: 0重量%〜20.0重量%
ジカルボン酸: 0.1重量%〜10.0重量%
トリアゾール類: 0重量%〜10.0重量%
飽和脂肪酸及び/または不飽和脂肪酸: 1.0重量%〜50.0重量%
金属水酸化物水溶液: 0.10重量%〜20.0重量%
水: 30.0重量%〜95.0重量%
である、請求の範囲第4項または第5項記載の不凍液。
【請求項13】
エチレングリコールを含まず、凝固点がマイナス20℃以下であり、以下を混合してなる、不凍液。
(A液)グリセリンを含有する液
(B液)以下の成分を含む、混合液
エチレンジアミン四酢酸錯体、
トリルトリアゾール、
ドデカン二酸、
カプリル酸および/またはオレイン酸、
金属水酸化物水溶液、
主成分としての水
【請求項14】
前記B液の各成分比が、
エチレンジアミン4酢酸錯体: 0.5重量%〜20.0重量%
ドデカン二酸: 0.1重量%〜10.0重量%
トリルトリアゾール: 0.1重量%〜10.0重量%
カプリル酸及び/またはオレイン酸: 1.0重量%〜50.0重量%
金属水酸化物水溶液: 0.10重量%〜20.0重量%
水: 30.0重量%〜95.0重量%
である、請求の範囲第13項記載の不凍液。
【請求項15】
前記B液の各成分比が、
エチレンジアミン4酢酸錯体: 0.5重量%〜20.0重量%
ドデカン二酸: 0.1重量%〜10.0重量%
トリルトリアゾール: 0.1重量%〜10.0重量%
カプリル酸: 1.0重量%〜25.0重量%
オレイン酸: 1.0重量%〜25.0重量%
金属水酸化物水溶液: 0.10重量%〜20.0重量%
水: 30.0重量%〜95.0重量%
である、請求の範囲第14項記載の不凍液。
【請求項16】
さらに、ジプロピレングリコールを含む、請求の範囲第14項に記載の不凍液。
【請求項17】
さらに、多価フェノール類を含む、請求の範囲第13項乃至第16項のいずれかに記載の不凍液。
【請求項18】
前記多価フェノール類が、フラボノイド、クマリン類、フェニルプロパノイド、タンニン類から選択される1以上の物質である、請求の範囲第17項に記載の不凍液。
【請求項19】
前記A液が、不凍液全量に対し、1重量%〜99重量%である、請求の範囲第4項、第5項、第13項、第14項のいずれかに記載の不凍液。
【請求項20】
前記A液において、グリセリンとプロピレングリコールの重量比が、99.5:0.5〜0.5:99.5である、請求の範囲第20項記載の不凍液。
【請求項21】
さらに、水ガラス水溶液が含まれる、凍結防止剤に用い得る、請求の範囲第4項、第5項、第13項のいずれかに記載の不凍液。
【請求項22】
以下の成分を含む、防錆剤。
主成分としての水
ジカルボン酸
金属水酸化物水溶液
トリアゾール類、キレート剤、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸からなる群より選択される1以上の物質。
【請求項23】
前記ジカルボン酸が、ドデカン二酸、セバチン酸から選択される、請求の範囲第22項に記載の防錆剤。
【請求項24】
前記水酸化金属塩が、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムからなる群から選択される1または2以上である、請求の範囲第22項に記載の防錆剤。
【請求項25】
前記トリアゾール類が、トリルトリアゾール、またはベンゾトリアゾールである、請求の範囲第22項に記載の防錆剤。
【請求項26】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸錯体である、請求の範囲第22に記載の防錆剤。
【請求項27】
前記飽和脂肪酸が、カプロン酸、カプリル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸からなる群から選択される1または2以上である、請求の範囲第22に記載の防錆剤。
【請求項28】
前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸からなる群から選択される1または2以上である、請求の範囲第22項に記載の防錆剤。
【請求項29】
以下の成分を含む、防錆剤。
エチレンジアミン4酢酸錯体
ドデカン二酸
トリルトリアゾール
カプリル酸および/またはオレイン酸
金属水酸化物水溶液

【請求項30】
さらに、ジプロピレングリコールを含む、請求の範囲第29項に記載の防錆剤。
【請求項31】
さらに、多価フェノール類を含む、請求の範囲第29項または第30項に記載の防錆剤。

【国際公開番号】WO2004/074397
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502670(P2005−502670)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000875
【国際出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(599023820)
【出願人】(599141308)
【Fターム(参考)】