説明

不安定末端基分解処理剤、それを用いた安定化ポリアセタール樹脂、製造方法、組成物及び成形体

【課題】 不安定末端基の残存量を十分に低下させること、あるいは、処理方法や設備や使用量に制限が生じにくく、得られたポリアセタール樹脂もしくはその成形品に臭気や他樹脂の劣化を生じたりしない不安定末端基分解処理剤及び安定化ポリアセタール樹脂の製造、及び該安定化ポリアセタール樹脂を含む樹脂組成物並びに成形体。
【解決手段】 不安定末端基を有するポリアセタール樹脂を、イソシアヌル酸、ヒダントイン等酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩の存在下に、熱処理し安定化し、その樹脂に特定の添加剤を加えて樹脂組成物とし、さらに、その樹脂組成物より成形体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の四級アンモニウム塩の不安定末端基分解処理剤、該分解処理剤の存在下に熱処理して、不安定末端基を低減させる安定化ポリアセタール樹脂の製造方法、得られた安定化ポリアセタール樹脂、その組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は機械的性質、耐薬品性、摺動性等のバランスに優れ、且つ、その加工が容易であることにより代表的なエンジニアリングプラスチックとして、電気・電子部品、自動車部品、その他の各種機械部品等を中心として広く利用されている。
ポリアセタール樹脂にはホモポリマーとコポリマーがあり、前者はホルムアルデヒド又はその環状多量体を原料として、後者はホルムアルデヒド又はその環状多量体を主モノマーとして環状エーテル及び/又は環状ホルマールをコモノマーとして、触媒の存在下で重合して製造される。しかし、得られるポリアセタール樹脂には、一部の分子末端がヘミアセタール基やホルミル基であるため、熱的に不安定であり、成形時に熱分解してホルムアルデヒドを発生し、環境上問題になる他、発生したホルムアルデヒドが、成形中に酸化されて蟻酸となりポリアセタール樹脂を分解させたり、成形品が発泡したり、ガス抜けによるシルバーラインが発生したりする問題が生じる。
このような熱的に不安定な末端基を有するポリアセタール樹脂を安定化する方法としては、末端をアセチル化、エーテル化、又はウレタン化する方法や、不安定末端部を分解する方法等が知られており、コポリマーでは、不安定末端基を分解して安定化する方法が用いられている。
【0003】
不安定末端基を分解する方法として各種の方法が知られている。
特公昭40−10435号公報には粗ポリアセタール樹脂を不溶性の媒体中で直接加熱処理する方法が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、この方法では不安定な末端基の分解速度を上げるためにポリアセタール樹脂の融点に近い温度で操作する必要があるとともに、長時間の処理が必要であった。
特開昭60−63216号公報には、粗ポリアセタール樹脂を、安定剤及び/又はアルカリ性物質を添加して、溶融処理した後に、不溶性の媒体中で80℃以上で加熱処理する方法が開示されている(特許文献2参照)。
しかし、この方法では、不安定末端基の残存量が多いという問題がある。
【0004】
従来、不安定末端基の分解を促進させるために、アンモニア;トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族アミン;水酸化テトラブチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機弱酸塩または有機酸塩等の存在下に不安定末端部の分解を行うことは公知である。
英国特許1034282号公報には、粗ポリアセタール共重合体を、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの水酸化テトラアルキルアンモニウムの共存下、溶媒中で加熱溶解処理して、重合体の不安定末端部を除去した安定化ポリアセタール共重合体を得る方法が開示されている。(特許文献3参照)
この方法では水酸化四級アンモニウムの粗ポリアセタール共重合体に対する、不安定末端分解処理剤としての有効性を示している。しかしながら、水酸化四級アンモニウムは強塩基であり、ハンドリング性、安定化後の重合体の色相に課題がある。さらには、本特許には水酸化四級アンモニム以外の四級アンモニウム塩は開示されていない。
特開昭57−55916号公報には、ルイス酸を重合触媒としてポリオキシメチレンホモポリマーと環状ホルマールを共重合して粗ポリアセタール共重合体を得る方法が開示されている。その中で、アミンや四級アンモニウム塩などの塩基性物質を加えて反応を終了した後、重合体を水などと共に加熱して、安定化ポリアセタール共重合体を得る方法が記載されている(特許文献4参照)。
しかし、この方法では、四級アンモニウム塩の不安定末端分解処理剤としての有効性を示しているが、四級アンモニウム塩の具体的な物質は例示されていない。
特開昭59−159812号公報には、ルイス酸を重合触媒としてトリオキサンと環状エーテルを重合して粗ポリアセタール共重合体を得るトリオキサンの連続重合法が開示されている。その中で、ルイス酸をアミンや四級アンモニウム塩などの塩基性物質で中和・失活した後、重合体を水などと共に加熱して、重合体の不安定末端部を除去した安定化ポリアセタール共重合体を得る方法が記載されている。(特許文献5参照)
この方法では、四級アンモニウム塩の不安定末端分解処理剤としての有効性を示しているが、四級アンモニウム塩の詳細な物質構造は示されていない。
【0005】
日本国特許第3087912号には、熱的に不安定な末端部を有するオキシメチレン共重合体を、一般式[R1R2R3R4N+]n X-nで表される特定の第四級アンモニウム塩の存在下に熱処理するオキシメチレン共重合体の安定化方法が開示されている(特許文献6参照)。
上記特許に記載された四級アンモニウム塩における対アニオン種としては、脂肪族カルボン酸などの特定の酸性化合物が例示されている。特に、好ましい対アニオン種にはギ酸及び酢酸などの低級脂肪酸が実施例に挙げられている。上記四級アンモニウム塩は、有効な不安定末端分解促進剤の一群であり不安定末端基の分解効率は良い。しかし、対アニオンの典型的な構成成分である低級脂肪酸は酸根として、重合体中に相当量残存するため、酸としての安全性に加え、安定化処理後の重合体の臭気や、特に、ギ酸根では重合体自体の熱安定性に悪影響を与える。さらに、当該特許の四級アンモニウム塩は、ポリカーボネート樹脂などの他樹脂と共存する場合に、他樹脂の劣化を著しく促進する。
【0006】
特開平10−324790号公報には、優れた耐ヒートエージング特性と機械的強度を兼備したポリアセタール樹脂組成物を提供するために、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に、(HO)n-R-(SO3M)mで示される(B)スルホン酸化合物0.001〜2重量部を配合してなるポリアセタール樹脂組成物が開示されている。但し、nは1から3より選ばれる整数。mは1から3より選ばれる整数。Rは炭素数1〜30のアルキレン基またはエーテル結合を1つ以上含む炭素数2〜30のアルキレン基。Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、カルシウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアルキルアンモニウムより選ばれる元素または基である(特許文献7参照)。
しかし、この技術では不安定末端基の残存量及び特定のスルホン酸の四級アンモニウム塩以外に付いては何も記載されていない。
このように、種々の従来の技術では、不安定末端基の残存量の低下が不十分であったり、あるいはバランスのとれた分解処理剤が見あたらなかったり、分解処理剤によっては安全性や分解処理方法や設備に好ましくない制限があった。
【0007】
【特許文献1】特公昭40−10435号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭60−63216号公報(特許請求の範囲1〜9)
【特許文献3】英国特許1034282号公報(特許請求項の範囲、実施例8)
【特許文献4】特開昭57−55916号公報(6ページ、下段左15行〜下段右3行)
【特許文献5】特開昭59−159812号公報(5ページ、下段左、5〜12行)
【特許文献6】日本国特許第3087912号(特許請求の範囲1〜22、第11欄32〜50行、実施例1〜148)
【特許文献7】特開平10−324790号公報(特許請求の範囲1、段落0006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、不安定末端基の残存量を十分に低下させること、あるいは、処理方法や設備や使用量に制限が生じにくく、得られたポリアセタール樹脂もしくはその成形品に臭気や他樹脂の劣化を生じたりしない不安定末端基分解処理剤を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ヘミアセタール基やホルミル基のような不安定末端基を有するポリアセタール樹脂を、酸性環状アミド化合物(酸性環状尿素化合物を含む)のコリン系四級アンモニウム塩の存在下に熱処理することにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第1は、不安定末端基を有するポリアセタール樹脂を、酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩からなる不安定末端基分解処理剤の存在下に、熱処理して不安定末端基を低減させる安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第2は、不安定末端基分解処理剤が、下記式(1)で示される四級アンモニウム塩:
[R1R2R3R4N+]n Yn- (1)
(上記式中、R1、R2、R3、R4は、各独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルキルアリール基である。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基の種類としては水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、及びハロゲン原子である。nは1〜5の整数を表わす。Yn-は対アニオンであり、対アニオンを与える化合物は酸性環状アミド化合物である。n個の[R1R2R3R4N+]は互いに異なっていてもよい。)
である本発明の第1に記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第3は、不安定末端基分解処理剤が、下記式(2)で示される四級アンモニウム塩:
[R1R2R3R4N+]n Yj-・Wk- (2)
(上記式中、R1、R2、R3、R4は、各独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルキルアリール基である。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基の種類としては水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、又はハロゲン原子である。nは1〜5の整数を表わす。Yj-およびWk-は対アニオンであり、j+k=nであり、j=1〜5の整数を表わす。Yj-は酸性環状アミド化合物に由来するアニオンであり、Wk-は水酸化物アニオン、炭素数1〜20の脂肪酸に由来するアニオン、炭酸アニオン及びホウ酸アニオンからなる群から選ばれた少なくとも一種のアニオンである。n個の[R1R2R3R4N+]は互いに異なっていてもよい。)
である本発明の第1に記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第4は、酸性環状アミド化合物が、酸性環状尿素化合物である本発明の第1〜3のいずれかに記載の方法を提供する。
本発明の第5は、酸性環状アミド化合物が、(イソ)シアヌル酸、5,5−ジメチルヒダントイン、及びフタルイミドからなる群から選ばれた少なくとも一種である本発明の第1〜4のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第6は、R1、R2、R3及びR4が、炭素数1〜4のアルキル基及び/又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基のみからなる本発明の第1〜5のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第7は、R1R2R3R4Nが(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種である本発明の第1〜6のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第8は、ポリアセタール樹脂が、カチオン重合触媒の存在下に、トリオキサンを主モノマーとし、環状エーテル及び/又は環状ホルマールをコモノマーとして共重合して得られたポリオキシメチレンコポリマーである本発明の第1〜7のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第9は、さらに、水、酸化防止剤及び三級アミンからなる群から選ばれた少なくとも1種を添加し、その共存下に熱処理する本発明の第1〜8のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第10は、安定化ポリアセタール樹脂のヘミアセタール末端基量が0.6mmol/kg以下及び/又はホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下である本発明の第1〜9のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第11は、熱処理が、不安定末端基を有するポリアセタール樹脂の溶融状態で行われる本発明の第1〜10のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第12は、不安定末端基を有するポリアセタール樹脂1kgに対し、不安定末端基分解処理剤の使用量が、四級アンモニウムを与える窒素原子に換算して0.005〜3.5mmolである本発明の第1〜11のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第13は、熱処理温度がポリアセタール樹脂の融点〜250℃で、熱処理時間が20秒〜20分である本発明の第1〜12のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法を提供する。
本発明の第14は、本発明の第2及び3に記載の酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種のポリアセタール樹脂用不安定末端基分解処理剤を提供する。
本発明の第15は、本発明の第1〜13のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法により得られた安定化ポリアセタール樹脂を提供する。
本発明の第16は、本発明の第15に記載の安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対し、
(a)酸化防止剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、ギ酸捕捉剤、耐候安定剤、耐光安定剤、離型剤および結晶核剤から成る群から選ばれた少なくとも1種を0.001〜5重量部、
(b)充填剤、補強剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、潤滑剤、摺動剤、導電剤からなる群から選ばれた少なくとも1種を0〜100重量部、および
(c)着色剤を0〜5重量部
を含有してなるポリアセタール樹脂組成物を提供する。
本発明の第17は、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はヒンダードアミン系酸化防止剤を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜1重量部含有してなる本発明の第16記載のポリアセタール樹脂組成物を提供する。
本発明の第18は、ホルムアルデヒド捕捉剤として、アミノトリアジン化合物、尿素化合物、カルボン酸ヒドラジド化合物及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部含有してなる本発明の第16又は17に記載のポリアセタール樹脂組成物を提供する。
本発明の第19は、ギ酸捕捉剤として、水酸基を有していてもよい脂肪酸金属塩及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜0.2重量部含有してなる本発明の第16〜18のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を提供する。
本発明の第20は、離型剤として、炭素数12〜36の脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドからなる群から選ばれる1種以上を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部含有してなる本発明の第16〜19のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を提供する。
本発明の第21は、本発明の第16〜20のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形体を提供する。
本発明の第22は、(1)80℃で24時間、密閉空間で保存した時、発生ホルムアルデヒド量が成形体の表面積1cm2当り2μg以下、及び/又は(2)60℃、飽和湿度の密閉空間で3時間保存した時、発生ホルムアルデヒド量が成形体の表面積1cm2当り0.8μg以下である本発明の第21記載の成形体を提供する。
本発明の第23は、成形体が、自動車部品、電気・電子部品、建材・配管部品、生活・化粧品用部品及び医用部品から選択された少なくとも1種である本発明の第21又は22記載の成形体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不安定末端基の残存量を十分に低下させることができたり、あるいは使用したい不安定末端基分解処理剤が見出され、不安定末端基分解処理剤によっては分解処理方法や設備や使用量に好ましくない制限が生じないようにしたり、あるいは又、得られたポリアセタール樹脂もしくはその成形品に臭気やポリカーボネート樹脂などの他樹脂の劣化着色等が生じなくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ポリアセタール樹脂
本発明に用いるポリアセタール樹脂は、その基本的な分子構造が特に限定されるものではなく、ホルムアルデヒド、又はその環状三量体であるトリオキサン等の環状アセタールを重合して得られるオキシメチレンユニットを主たる構成単位としてエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール等のコモノマー成分を含むコポリマー、また、モノ−あるいはジ−グリシジル化合物(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)等を含む多成分系モノマーを共重合して得られる多元共重合体や、分岐・架橋構造を有する多元共重合体(特にターポリマー)、ブロック成分を導入したもの等、従来公知の全てのポリアセタール樹脂が包含されるが、好ましくはコポリマー又はターポリマーである。また、コポリマーと分岐・架橋構造を有する多元共重合体(特にターポリマー)との任意の割合の混合物であってもよい。
コモノマーの含有率はトリオキサンに対し、好ましくは0.01〜20モル%、さらに好ましくは0.1〜10モル%である。
上記原料からポリアセタール樹脂を製造する場合の重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性重合触媒等が挙げられる。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステルまたは無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのパーフルオロアルカンスルホン酸、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、シリコモリブデン酸、シリコタングステン酸などのヘテロポリ酸等が挙げられる。中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;酸素原子または硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物;トリフルオロメタンスルホン酸;及びヘテロポリ酸が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテル、トリフルオロメタンスルホン酸、リンモリブデン酸、リンタングステン酸を好適例として挙げることができる。
これらの重合触媒の使用量はトリオキサンと環状エーテルの合計量に対し好ましくは1×10-4〜1×10-1モル%、さらに好ましくは5×10-4〜1×10-2モル%である。
重合方法としては、特に制限はなく、バッチ式、連続式のいずれであってもよく、また、塊状重合が好ましい。
また、その分子量、或いは溶融粘度は、溶融成形可能なものであれば、何ら限定されるものではない。
【0013】
ポリアセタール樹脂の不安定末端基とは、ヘミアセタール末端基(=ヘミホルマール基(-O-CH2OH))、ホルミル末端基(=ホルミルオキシ基(-OCHO))である。
なお、安定末端基とはメトキシ基(−OCH3)等のアルコキシ基、ヒドロキシエチル基(-CH2CH2OH)、ヒドロキシブチル基(-CH2CH2CH2CH2OH)等の炭素数2以上のヒドロキシアルキル基である。
メトキシ基は、例えば重合段階で添加される分子量調整剤であるホルマール、代表的にはメチラール(=メチレンジメチルエーテル)により形成される。
炭素数2以上の末端ヒドロキシアルキル基は、コモノマーとして用いる環状エーテル又は環状ホルマールに由来し、以下のような過程で形成される。即ち、環状エーテル又は環状ホルマールに由来するオキシアルキレン基がオキシメチレン単位の繰返し中に挿入されたポリアセタール樹脂を重合した際に、まず、原料中の微量な水等により重合が停止して、ヘミアセタール末端基が生成する。ヘミアセタール末端基を有するポリアセタール樹脂を、トリエチルアミン水溶液のようなアルカリ性物質水溶液の存在下で加熱処理すると、不安定末端基が分解する。この分解が、末端から主鎖中へ向かって進行し、炭素数2以上のオキシアルキレン単位の部位に到達すると、その部位のオキシアルキレン単位はヒドロキシアルキル基の安定末端に変わる。
不安定末端基としてヘミアセタール末端基が多く残存すると、安定剤のコンパウンド時や成形時の加熱によりヘミアセタール末端基より次々にホルムアルデヒドが脱離して、ホルムアルデヒドを発生する。
また、ホルミル末端基が多く残存すると、加工条件が厳しい安定剤のコンパウンド時や成形時の加熱により分解してヘミアセタール末端基となり、上記のようにホルムアルデヒドを発生する。
【0014】
本発明により得られる安定化ポリアセタール樹脂は、ヘミアセタール末端基の含有量が、1mmol/kg以下、好ましくは0.8mmol/kg以下、さらに好ましくは0.6mmol/kg以下、特に好ましくは0.5mmol/kg以下であり、ホルミル末端基量が1mmol/kg以下、好ましくは0.8mmol/kg以下、さらに好ましくは0.5mmol/kg以下であり、両者の合計が1mmol/kg以下、好ましくは0.8mmol/kg以下、さらに好ましくは0.6mmol/kg以下である。
【0015】
不安定末端基分解処理剤
本発明において、不安定末端基を低減させるために用いる不安定末端基分解処理剤(以下、誤解を生じない範囲で分解処理剤と略称する場合がある。)は酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩である。なお、本発明に係る酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩には、アミド構造単位を部分構造単位として有する酸性環状尿素化合物も含まれる。
【0016】
酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩
酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩としては下記式(1)で表されるものが挙げられ、これらは複数組み合わせて使用してもよい。
[R1R2R3R4N+]n Yn- (1)
(上記式中、R1、R2、R3、R4は、各独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、炭化水素基は直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルキルアリール基である。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基の種類としては水酸基、ホルミル基やアセチル基などのアシル基、アセチルオキシ基などのアシルオキシ基、メトキシ基やエトキシ基などのアルコキシ基、メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ビニル基、アリル基、2−ヒドロキシエチルオキシ基などのヒドロキシアルキルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基などのアルコキシアルキルオキシ基、及びハロゲン原子である。nは1〜5の整数を表わす。Yn-は対アニオンであり、対アニオンを与える化合物は酸性環状アミド化合物である。n個の[R1R2R3R4N+]は互いに異なっていてもよい。)
【0017】
四級アンモニウムは、上記構造であれば特に制限はないが、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリプロピルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリ−n−ブチルアンモニウム、(2−ヒドロキプロピル)トリメチルアンモニウム、(2−ヒドロキシプロピル)トリエチルアンモニウム、(3−ヒドロキプロピル)トリメチルアンモニウム、(3−ヒドロキシプロピル)トリエチルアンモニウム、(4−ヒドロキブチル)トリメチルアンモニウム、(4−ヒドロキブチル)トリエチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジエチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシプロピル)エチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)オクタデシルアンモニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)アンモニウム、テトラキス(メトキシメチル)アンモニウム、テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アンモニウム、(ポリ(エチレンオキシド))トリメチルアンモニウム、(ポリ(プロピレンオキシド))トリメチルアンモニウム、(ポリ(エチレンオキシド))トリエチルアンモニウム、(ポリ(プロピレンオキシド))トリエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0018】
n-は対アニオンで、対アニオンを生じる化合物Yとしては、酸性環状アミド化合物が挙げられ、これらは組み合わせて用いられてもよい。
酸性環状アミド化合物としては、環構成する部分構造にアミド単位を有する酸性アミド化合物であれば任意に使用でき、具体的には、イソシアヌル酸、バルビツール酸、アロキサン、グリコールウリル、ベンゾイミダゾロン、尿酸、ウラシル、チミン、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、アラントインなどの酸性環状尿素化合物、フタルイミド、ピロメリット酸ジイミドなどの芳香族系酸性環状アミド化合物、サッカリン、アセスルファームなどの酸性環状スルホンアミド化合物などが挙げられる。
【0019】
また、本発明の酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩としては、下記式(2)で示される四級アンモニウム塩:
[R1R2R3R4N+]n Yj-・Wk- (2)
(上記式中、R1、R2、R3、R4は、各独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルキルアリール基である。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基の種類としては水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、又はハロゲン原子である。nは1〜5の整数を表わす。
j-およびWk-は対アニオンであり、j+k=nであり、j=1〜5の整数を表わす。Yj-は酸性環状アミド化合物に由来するアニオンであり、Wk-は水酸化物アニオン、炭素数1〜20の脂肪酸に由来するアニオン、炭酸アニオン及びホウ酸アニオンからなる群から選ばれた少なくとも一種のアニオンである。)
のような複塩又は錯塩でもよい。
本発明では、上記式(1)及び(2)で示される四級アンモニウム塩を、酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩と総称する。
【0020】
上記酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩は、通常、溶媒中で、酸性環状アミド化合物と水酸化四級アンモニウムとの中和反応などによって簡便に調製することができ、例えば、溶媒中での中和反応により、均一な溶液として得ることができる。塩は必ずしも等モル塩でなくてもよく、等モル塩から10%以下、好ましくは5%以下ずれていてもよい。
上記溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル/ホルマール類、ハロゲン化炭化水素類などの有機溶媒、水とメタノールなどの親水性有機溶媒との水系混合溶媒、有機溶媒同士の混合溶媒などが挙げられる。
酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩としては、例えば、(イソ)シアヌル酸のモノないしトリス[(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム]塩、(イソ)シアヌル酸のモノないしトリス(テトラメチルアンモニウム)塩、5,5−ジメチルヒダントインの(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム塩、ベンゾイミダゾロンの(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム塩、ベンゾイミダゾロンのテトラメチルアンモニウム塩、5,5−ジメチルヒダントインのテトラメチルアンモニウム塩、フタルイミドの(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム塩、フタルイミドのテトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0021】
不安定末端基の処理方法
本発明のポリアセタール樹脂の安定化方法は、前記で重合されたポリアセタール樹脂を上記分解処理剤の少なくとも1種の存在下に熱処理して、不安定末端基を低減させる方法である。
ポリアセタール樹脂1kgに対する分解処理剤の添加量は、含まれる不安定末端基の種類と量、分解処理剤の種類、処理状態、処理条件(温度、時間、接触速度など)によるが、ポリアセタール樹脂の溶融状態で処理する場合には、四級アンモニウムを与える窒素原子に換算して、0.005〜3.5mmol、好ましくは0.01〜3mmol、特に好ましくは0.1〜2.5mmolである。
なお、必要に応じて、従来公知の分解処理剤と併用することができる。
【0022】
加熱処理は、重合後のポリアセタール樹脂に残留している重合触媒を失活後、または、失活前に行ってもよいし、本発明以外の安定化処理を行って不安定末端基が多く残留しているポリアセタール樹脂に適用することも可能である。
重合触媒の失活を行う場合は、重合後のポリアセタール樹脂を、アンモニア、アルキルアミン等のアミン類、又はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の各水酸化物、無機酸塩、有機酸塩等の触媒失活剤の少なくとも一種を含む水溶液または有機溶媒中に投入し、スラリー状態で一般的には1分ないし6時間、静置ないし撹拌して行われる。触媒失活後のスラリーは濾過、洗浄により、未反応モノマーや触媒失活剤等を除去した後、そのまま、または乾燥して使用する。
また、上記アミン類等の蒸気とポリアセタール樹脂を接触させて重合触媒を失活させる方法や、ヒンダードアミン類、トリフェニルホスフィン、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等から選ばれた少なくとも1種とポリアセタール樹脂を混合、撹拌して触媒を失活させてもよい。
また、重合触媒の失活を行わない場合は、重合後のポリアセタール樹脂の融点以下の温度で、不活性ガス雰囲気下において加熱することによって、重合触媒が揮発低減されたポリアセタール樹脂を用いることもできる。重合触媒の失活や重合触媒の揮発低減処理は、重合後のポリアセタール樹脂を粉砕後、行ってもよい。
【0023】
本発明では、従来の各種の製造方法やそれに応じた装置を選択することができる。
不安定末端基を分解処理する方法は、重合後触媒中和などの必要な処理を行った上で、分解処理剤による加熱分解処理が、ポリアセタール樹脂の溶融状態で行われる。
【0024】
ポリアセタール樹脂の溶融状態で処理する方法は、例えば1軸もしくは2軸スクリュー押出機等により樹脂を溶融し、ポリアセタール樹脂の融点〜260℃、好ましくはポリアセタール樹脂の融点〜250℃で、樹脂滞留時間5秒〜30分、好ましくは20秒〜20分で処理する。上記処理条件の下限界未満では樹脂の安定化が不十分となり、上限界を超えると、樹脂の分解や着色が生ずる恐れがある。なお、分解処理剤の添加は、ポリアセタール樹脂の溶融前又は溶融後のいずれの段階で行ってもよく、その両方の段階で行ってもよい。また、添加する分解処理剤の添加量を分割し、多段で供給してもよい。
なお、溶融前のポリアセタール樹脂に分解処理剤を添加する方法としては、分解処理剤の水溶液、又はメタノール、エタノールなどの有機溶媒溶液やアルコール水溶液などを、粗ポリアセタール樹脂に対して所定量、できるだけ均一に添加した後に混合する。混合には、水平円筒型、V型、リボン型、パドル型、高速流動型等の一般的な混合機を用いることができる。なお、混合物は乾燥処理を行わずそのまま溶融処理しても、加熱、減圧などにより溶媒を留去した後溶融処理してもよい。また、分解処理剤溶液を、押出機のフィード口及び/又は途中からインジェクションなどにより供給したりしてもよい。この際、分解処理剤溶液を、多段で分割供給してもよい。
また、上記溶液中に、樹脂を加えてスラリーとし、濾過、乾燥して樹脂に分解処理剤を付着させる方法で処理剤を添加することもできる。
また、ポリアセタール樹脂を溶融させた後に、分解処理剤を溶融状態のポリアセタール樹脂に添加する方法としては、上記分解処理剤と溶媒を別々にもしくは溶液にしてフィード及び/又はインジェクションすることができる。
溶融状態で分解処理する際に、必要に応じて分解促進剤として従来公知の水、メタノール、アミン類、及び/又は他の第四級アンモニウム化合物等を、樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜2重量部添加してもよい。
不安定な末端部が分解除去されたポリアセタール樹脂は、分解して生じたホルムアルデヒド、未反応モノマー、オリゴマー、分解処理剤等を押出機のベント部より減圧下で除去され、冷却後、ストランドカット又はダイフェイスカットにより、ペレット化される。
【0025】
また、本発明は、数平均分子量が5000以上であり、ヘミアセタール末端基量が0.6mmol/kg以下及び/又はホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下である安定化ポリアセタール樹脂を提供するものである。
このように、不安定末端基の少ないポリアセタール樹脂は、従来にないものであり、ホルムアルデヒドの発生の大幅な低減や異臭の低減が求められる新規用途に使用可能である。
【0026】
また、本発明は、上記分解処理剤を、不安定末端基を有するポリアセタール樹脂の不安定末端基分解用処理剤として提供するものである。この分解処理剤の形態は、特に制限はなく、粉状、粒状、液状のいずれであってもよい。
【0027】
得られた安定化ポリアセタール樹脂は、必要に応じて、下記の添加剤など:
(a)酸化防止剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、ギ酸捕捉剤、耐候安定剤、耐光安定剤、離型剤および結晶核剤から成る群から選ばれた少なくとも1種を0.001〜5重量部、
(b)充填剤、補強剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、潤滑剤、摺動剤、導電剤からなる群から選ばれた少なくとも1種を0〜100重量部、および
(c)着色剤を0〜5重量部
を加えて押出機等で混合されてポリアセタール樹脂組成物にした後、成形用に用いることができる。
捕捉剤、酸化防止剤、安定剤などの添加剤は、一般的には安定化処理後のポリアセタール樹脂に添加し、溶融混練してポリアセタール樹脂組成物を調製するのが好ましいが、重合反応、触媒失活化、安定化処理等で、それらの効率を阻害しない範囲であれば、原料モノマーやコモノマーに添加して重合に供することも可能であり、重合段階や安定化処理段階で添加してもよい。
【0028】
詳述すると、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上記酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はヒンダードアミン系酸化防止剤を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜1重量部含有するのが好ましい。
ホルムアルデヒド捕捉剤としては、アミノトリアジン化合物、尿素化合物、カルボン酸ヒドラジド化合物及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部含有するのが好ましい。
上記アミノトリアジン化合物としては、メラミン、ベンゾグアナミン、CTU−グアナミンなどが挙げられる。
上記尿素化合物としては、ホルム窒素、ビウレア、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、アラントイン、アラントインのアルミニウム塩などが挙げられる。
上記カルボン酸ヒドラジド化合物としては、アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
上記ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−66−610などが挙げられる。
【0029】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ギ酸捕捉剤として、水酸基を有していてもよい脂肪酸金属塩及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部含有するのが好ましい。
上記脂肪酸金属塩としては、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、離型剤として、炭素数12〜36の脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドからなる群から選ばれる1種以上を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部含有するのが好ましい。
上記脂肪酸エステルとしてはエチレングリコールジステアレートやグリセリンモノないしトリステアレート、及び脂肪酸アミドとしては、エチレンビスステアリルアミドなどが挙げられる。
【0030】
本発明の安定化ポリアセタール樹脂又はポリアセタール樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形または発泡成形などにより成形体とすることができる。
本発明の成形体は、(1)80℃で24時間、密閉空間で保存した時、発生ホルムアルデヒド量が成形体の表面積1cm2当り2μg以下、好ましくは1.5μg以下、及び/又は(2)60℃、飽和湿度の密閉空間で3時間保存した時、発生ホルムアルデヒド量が成形体の表面積1cm2当り0.8μg以下、好ましくは0.6μg以下である。
本発明の成形体は、自動車部品、電気・電子部品、建材・配管部品、生活・化粧品用部品又は医用部品に用いられる。
【0031】
(実施例)
以下、(1)安定化ポリアセタール樹脂の実施製造例及び比較製造例と、
(2)安定化ポリアセタール樹脂を用いた組成物及びその成形品の実施例及び比較例とに分けて説明する。
【0032】
(1)安定化ポリアセタール樹脂(共重合体)の実施製造例及び比較製造例
〔安定化処理用の粗ポリアセタール共重合体(A)の調製〕
二つの円が一部重なった断面形状を有するとともに、外側に熱(冷)媒を通すジャケットを備えたバレルと、このバレル内部の長手方向において、それぞれ撹拌及び推進用パドルを備えた2本の回転軸とを有する連続式混合反応機を用いて、以下のように重合反応を行った。
ジャケットに80℃の温水を通し、2本の回転軸を100rpmの速度で回転させ、酸化防止剤として0.05重量%のトリエチレングリコール[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、コモノマーとして3.3重量%の1,3−ジオキソラン及び連鎖移動剤として700ppm(重量基準)のメチラールを含有するトリオキサンを連続的に反応機に供給するとともに、並行して三フッ化化ホウ素・ジブチルエーテラートをシクロヘキサンに溶解させた溶液(1重量%濃度)を、全モノマー(トリオキサン及び1,3−ジオキソランの総量)に対して、三フッ化化ホウ素として10ppm(重量基準)の濃度で連続添加して共重合を行った。次いで、反応機の吐出口より排出された粗ポリアセタール共重合体を、0.1重量%のトリエチルアミンを含有する水溶液に添加し、触媒を失活させた。この混合物を遠心分離処理、さらに乾燥して粗ポリアセタール共重合体(A)を得た。
粗ポリアセタール共重合体(A)は、ヘミアセタール末端基量が2.5mmol/kg、ホルミル末端基量が1.7mmol/kg、不安定末端量(末端不安定部分の量)が0.63重量%であった。
【0033】
[実施製造例1〜7]
上記粗ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対して、0.3重量部のトリエチレングリコール[3−(3−t−ブチルー5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]と、分解処理剤として所定濃度に調整した下記の酸性環状アミド化合物の4級アンモニウム塩の水溶液2重量部(4級アンモニウム塩の添加率は、粗ポリアセタール共重合体1kg当たり4級アンモニウム窒素に換算して1.4mmol)を添加して均一に混合した。
ついで、この混合物を脱揮口が1個設けられた2軸押出機(径30mm)に供給し、2.7kPa(20mmHg)のベント真空度、200℃のシリンダー温度、300秒の平均滞留時間で、揮発物を(ベント)脱揮口より除去しながら溶融混練し、ペレット状の安定化ポリアセタール共重合体(実施製造例1(a-1)〜実施製造例7(a-7))を得た。
【0034】
〔分解処理剤〕
実施製造例1〜7で用いた酸性環状アミド化合物の4級アンモニウム塩は、各々、下記(A−1)〜(A−7)である。
(A−1):イソシアヌル酸のトリス[(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム]塩
(A−2):イソシアヌル酸のビス[(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム]塩
(A−3):イソシアヌル酸のモノ[(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム]塩
(A−4):フタルイミドの(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム塩
(A−5):5,5−ジメチルヒダントインの(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム塩
(A−6):イソシアヌル酸のトリス[(2−ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウム]塩
(A−7):イソシアヌル酸のトリス(テトラメチルアンモニウム)塩
【0035】
[実施製造例8]
上記粗ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対して、0.3重量部のトリエチレングリコール[3−(3−t-ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]と、分解処理剤として所定濃度に調整した前記酸性環状アミド化合物の4級アンモニウム塩(A−1)の水溶液2重量部(4級アンモニウム塩の添加率は、粗ポリアセタール共重合体1kg当たり4級アンモニウム窒素に換算して0.7mmol)を添加して均一に混合した。
ついで、前記実施製造例と同様にして2軸押出機で溶融混練し、ペレット状の安定化ポリアセタール共重合体(a-8)を得た。
【0036】
[実施製造例9]
上記粗ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対して、分解処理剤として所定濃度に調整した前記酸性環状アミド化合物の4級アンモニウム塩(A−1)の水溶液1重量部(4級アンモニウム塩の添加率は、粗ポリアセタール共重合体1kg当たり4級アンモニウム窒素に換算して1.4mmol)を添加し、均一に混合して乾燥した。ついで、4級アンモニウム塩の混合された粗ポリアセタール共重合体100重量部に対して0.3重量部のトリエチレングリコール[3−(3−t−ブチルー5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を添加して前記2軸押出機に供給し、さらに、押出機にフィードしている粗ポリアセタール共重合体100重量部あたり0.5重量部の水を押出機のフィード口に注入し、2.7kPaのベント真空度、200℃のシリンダー温度、300秒の平均滞留時間で、揮発物を(ベント)脱揮口より除去しながら溶融混練し、ペレット状の安定化ポリアセタール共重合体(a-9)を得た。
【0037】
[実施製造例10]
上記粗ポリアセタール共重合体(A)100重童部に対して、分解処理剤として所定濃度に調整した前記酸性環状アミド化合物の4級アンモニウム塩(A−1)のメタノール溶液1重量部(4級アンモニウム塩の添加率は、粗ポリアセタール共重合体1kg当たり4級アンモニウム窒素に換算して1.4mmol)を添加し、均一に混合して乾燥した。
ついで、4級アンモニウム塩の混合された粗ポリアセタール共重合体100重量部に対して0.3重量部のトリエチレングリコール[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を添加して前記2軸押出機に供給し、さらに、押出機にフィードしている粗ポリアセタール共重合体100重量部あたり0.5重量部の水を注入し、2.7kPaのベント真空度、200℃のシリンダー温度、300秒の平均滞留時間で、揮発物を(ベント)脱揮口より除去しながら溶融混練し、ペレット状の安定化ポリアセタール共重合体(a-10)を得た。
【0038】
[実施製造例11]
上記粗ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対して、分解処理剤として所定濃度に調整した前記酸性環状アミド化合物の4級アンモニウム塩(A−1)の水溶液1重量部(4級アンモニウム塩の添加率は、粗ポリアセタール共重合体1kg当たり4級アンモニウム窒素に換算して1.4mmol)を添加し、均一に混合して乾燥した。
ついで、4級アンモニウム塩の混合された粗ポリアセタール共重合体100重量部に対して、0.3重量部のトリエチレングリコール[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、0.05重量部のナイロン−6,6(平均粒子径:4μm)、0.1重量部のステアリン酸カルシウム、及び0.2重量部のエチレンビスステアリルアミドを混合した後、前記2軸押出機に供給し、さらに、押出機にフィードしている粗ポリアセタール共重合体100重量部あたり0.5重量部の水を注入し、2.7kPaのベント真空度、200℃のシリンダー温度、300秒の平均滞留時間で、揮発物を(ベント)脱揮口より除去しながら溶融混練し、ペレット状の安定化ポリアセタール共重合体(a-11)を得た。
【0039】
[比較製造例1]
上記粗ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対して、0.3重量部のトリエチレングリコール[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]と、分解処理剤として所定濃度に調整したトリエチルアミン(TEAと表示する)水溶液2重量部(トリエチルアミンは粗ポリアセタール共重合体(A)1kg当たり3級アミンの窒素に換算して1.4mmol)を添加して均一に混合した。ついで、この混合物を前記2軸押出機に供給し、2.7kPa(20mmHg)のベント真空度、200℃のシリンダー温度、300秒の平均滞留時間で、揮発物を(ベント)脱揮口より除去しながら溶融混練し、ペレット状の安定化ポリアセタール共重合体(a-T)を得た。
【0040】
[比較製造例2]
上記粗ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対して、0.3重量部のトリエチレングリコール[3−(3−t−ブチルー5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]と、分解処理剤として脂肪族カルボン酸の4級アンモニウム塩であるギ酸の(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム塩(A-Iと表示する)の水溶液2重量部(4級アンモニウム塩の添加率は、粗ポリアセタール共重合体1kg当たり4級アンモニウム窒素に換算して1.4mmol)を添加して均一に混合した。
ついで、この混合物を前記2軸押出機に供給し、2.7kPa(20mmHg)のベント真空度、200℃のシリンダー温度、300秒の平均滞留時間で、揮発物を(ベント)脱揮口より除去しながら溶融混練し、ペレット状の安定化ポリアセタール共重合体(a-I)を得た。
【0041】
上記実施製造例及び比較製造例で得られた安定化ポリアセタール樹脂(共重合体)は、ヘミアセタール末端基量、ホルミル末端基量、不安定末端量(末端不安定部分の量)、ポリカーボネート劣化特性及び臭気特性をその品質指標として評価し、評価結果をまとめて表1に示す。
【0042】
品質指標とした各特性の測定方法は下記の通りである。
〔評価特性の測定方法〕
1.ヘミアセタール末端基量及びホルミル末端基量
ポリオキシメチレン共重合体をヘキサフルオロイソプロピルアルコール中に溶解し、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドとピリジンを添加して反応させた後、風乾し、続いて40℃で減圧乾燥させることにより残留した溶媒および未反応物を除去した。得られた反応物を重水素化へキサフルオロイソプロピルアルコールを溶媒として濃度5重量%に溶解して、溶液をNMR用サンプル管に充填し、室温で、NMRスペクトルを測定した。
ヘミアセタール末端基量(mmol/kg)及びホルミル末端基量(mmol/kg)は、各々対応するNMR吸収ピークに基づき算出した。
NMR装置:Bruker(株)製、AVANCE400型FT−NMR
測定条件:パルスフリップアングル30゜、積算繰り返し時間10sec、積算回数128回
2.不安定末端量(末端の不安定部分の量)
ポリアセタール共重合体約1gを精秤し、水酸化カルシウム15mgと0.5体積%の水酸化アンモニウムを含む60体積%メタノール水溶液100mlとともに耐圧密閉容器に入れ、170℃で60分間加熱処理した後、冷却、開封して内溶液を取り出した。不安定な末端部分の分解によって生じ、溶液中に溶解したホルムアルデヒド量をJIS K0102、29.1項 アセチルアセトン吸光光度法で定量し、ポリアセタール共重合体に対する割合を重量%として算出した。
3.ポリカーボネート劣化特性(表ではPC劣化と略記)
ペレット状のポリアセタール共重合体1.5g、蒸留水1ml、ポリカーボネート樹脂板(5mm×5mm×1mm)1枚を容量20mlの容器に入れて密閉し、120℃の恒温槽内で24時間加熱した後、恒温槽から取り出して室温まで冷却し、ポリカーボネート樹脂板の表面の劣化状態を目視により観察して下記の規準で評価した。
○:表面が試験前の光沢を保持している。
△:表面が白濁して曇っている。
×:表面が変色溶解している。
4.臭気特性
ペレット状の安定化ポリアセタール共重合体1gを容量20mlの容器に入れて密閉し、温度80℃の恒温槽内で24時間加熱した後に容器を開封し、容器を開封した際の刺激臭(ホルムアルデヒドと酸に由来する臭気)を、嗅覚により下記の規準で評価した。
○:ほとんど刺激臭が無い。
△:若干の刺激臭がする。
×:強い刺激臭がする。
【0043】
【表1】

【0044】
(2)安定化ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体の実施例及び比較例
[実施例1〜8]
前記実施製造例1で調製した安定化ポリアセタール共重合体(a-1)及び実施製造例4で調製した安定化ポリアセタール共重合体(a-4)を用い、これに下記に示すホルムアルデヒド抑制剤、酸化防止剤、加工安定剤及び耐熱安定剤を、表2に示す割合で混合した後、1ケ所に脱揮口を有する30mm径の2軸押出機により溶融混合し、ペレット状の安定化ポリアセタール樹脂(共重合体)組成物を調製した。
【0045】
[比較例1]
前記比較製造例1で調製した安定化ポリアセタール共重合体(a-T)を用い、これに下記に示すホルムアルデヒド抑制剤、酸化防止剤、加工安定剤及び耐熱安定剤を、表2に示す割合で混合した以外は上記実施例と同様にして安定化ポリアセタール樹脂(共重合体)組成物を調製した。
【0046】
実施例及び比較例で使用した安定化ポリアセタール共重合体、ホルムアルデヒド抑制剤、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、加工安定剤、耐熱安定剤は以下のものである。
〔安定化ポリアセタール共重合体a〕
(a−1):実施製造例1で調製した安定化ポリアセタール共重合体
(a−4):実施製造例4で調製した安定化ポリアセタール共重合体
(a−T):比較製造例1で調製した安定化ポリアセタール共重合体
各共重合体の特性は表1に示す通りである。また、ASTM-D1238に準じ、温度190℃、荷重2160gの条件下で測定したメルトインデックスは、いずれも9.0g/10分である。
〔ホルムアルデヒド抑制剤b〕
(b−1):メラミン
(b−2):ベンゾグアナミン
(b−3):CTU−グアナミン[味の素ファインテクノ(株)製]
(b−4):アラントイン
(b−5):ビウレア
(b−6):セバシン酸ジヒドラジド
(b−7):ナイロン66[平均粒子径=3μm]
〔酸化防止剤c〕
(c−1):ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(c−2):トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフフェニル)プロピオネート]
〔加工安定剤d〕
(d−1):エチレンビスステアリルアミド
(d−2):グリセリンモノステアレート
(d−3):エチレングリコールジステアレート
〔耐熱安定剤(有機カルボン酸金属塩、アルカリ土類金属塩)e〕
(e−1):12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム
(e−2):酸化マグネシウム
(e−3):クエン酸カルシウム
(e−4):ステアリン酸カルシウム
【0047】
上記実施例及び比較例で得られたペレット状の安定化ポリアセタール樹脂(共重合体)組成物は、これを射出成形により所定の試験片に成形し、下記の方法で試験片からのホルムアルデヒド発生量を測定することによって評価した。結果をまとめて表2に示す。
【0048】
〔評価特性の測定方法〕
1.湿式でのホルムアルデヒド発生量
容積1リットルのポリエチレン製瓶に蒸留水50mlを入れ、その蓋の内側に平板状試験片(100mm×40mm×2mm;総表面積85.6cm2)の2枚を吊下げて蓋を閉じることにより瓶を密閉する。これを温度60℃の恒温槽内に入れて3時間加温処理した後に恒温槽から取り出し、20℃で1時間静置する。
加温処理により試験片から放出され水に溶解したホルムアルデヒド量を定量し、単位表面積当たりのホルムアルデヒド発生量(単位:μg/cm2)を算出する。
2.乾式でのホルムアルデヒド発生量
試験片(2mm×2mm×50mm)の10個(総表面積約40cm2)を容積20mlの容器に入れて密閉する。これを温度80℃の恒温槽内で24時間加熱処理した後、恒温槽から取り出して20℃で1時間放置し、その後、蒸留水5mlをシリンジで容器内に注入して、加熱処理により試験片から放出されたホルムアルデヒドを水に吸収させる。水に溶解したホルムアルデヒド量を定量し、単位表面積当たりのホルムアルデヒド発生量(単位:μg/cm2)を算出する。
【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不安定末端基を有するポリアセタール樹脂を、酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩からなる不安定末端基分解処理剤の存在下に、熱処理して不安定末端基を低減させる安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項2】
不安定末端基分解処理剤が、下記式(1)で示される四級アンモニウム塩:
[R1R2R3R4N+]n Yn- (1)
(上記式中、R1、R2、R3、R4は、各独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルキルアリール基である。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基の種類としては水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、及びハロゲン原子である。nは1〜5の整数を表わす。Yn-は対アニオンであり、対アニオンを与える化合物は酸性環状アミド化合物である。n個の[R1R2R3R4N+]は互いに異なっていてもよい。)
である請求項1記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項3】
不安定末端基分解処理剤が、下記式(2)で示される四級アンモニウム塩:
[R1R2R3R4N+]n Yj-・Wk- (2)
(上記式中、R1、R2、R3、R4は、各独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルキルアリール基である。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基の種類としては水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、又はハロゲン原子である。nは1〜5の整数を表わす。Yj-およびWk-は対アニオンであり、j+k=nであり、j=1〜5の整数を表わす。Yj-は酸性環状アミド化合物に由来するアニオンであり、Wk-は水酸化物アニオン、炭素数1〜20の脂肪酸に由来するアニオン、炭酸アニオン及びホウ酸アニオンからなる群から選ばれた少なくとも一種のアニオンである。n個の[R1R2R3R4N+]は互いに異なっていてもよい。)
である請求項1に記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項4】
酸性環状アミド化合物が、酸性環状尿素化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
酸性環状アミド化合物が、(イソ)シアヌル酸、5,5−ジメチルヒダントイン、及びフタルイミドからなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項6】
R1、R2、R3及びR4が、炭素数1〜4のアルキル基及び/又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基のみからなる請求項1〜5のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項7】
R1R2R3R4Nが(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項8】
ポリアセタール樹脂が、カチオン重合触媒の存在下に、トリオキサンを主モノマーとし、環状エーテル及び/又は環状ホルマールをコモノマーとして共重合して得られたポリオキシメチレンコポリマーである請求項1〜7のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項9】
さらに、水、酸化防止剤及び三級アミンからなる群から選ばれた少なくとも1種を添加し、その共存下に熱処理する請求項1〜8のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項10】
安定化ポリアセタール樹脂のヘミアセタール末端基量が0.6mmol/kg以下及び/又はホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下である請求項1〜9のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項11】
熱処理が、不安定末端基を有するポリアセタール樹脂の溶融状態で行われる請求項1〜10のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項12】
不安定末端基を有するポリアセタール樹脂1kgに対し、不安定末端基分解処理剤の使用量が、四級アンモニウムを与える窒素原子に換算して0.005〜3.5mmolである請求項1〜11のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項13】
熱処理温度がポリアセタール樹脂の融点〜250℃で、熱処理時間が20秒〜20分である請求項1〜12のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項14】
請求項2及び3に記載の酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種のポリアセタール樹脂用不安定末端基分解処理剤。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の安定化ポリアセタール樹脂の製造方法により得られた安定化ポリアセタール樹脂。
【請求項16】
請求項15に記載の安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対し、
(a)酸化防止剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、ギ酸捕捉剤、耐候安定剤、耐光安定剤、離型剤および結晶核剤から成る群から選ばれた少なくとも1種を0.001〜5重量部、
(b)充填剤、補強剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、潤滑剤、摺動剤、導電剤からなる群から選ばれた少なくとも1種を0〜100重量部、および
(c)着色剤を0〜5重量部
を含有してなるポリアセタール樹脂組成物。
【請求項17】
酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はヒンダードアミン系酸化防止剤を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜1重量部含有してなる請求項16記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項18】
ホルムアルデヒド捕捉剤として、アミノトリアジン化合物、尿素化合物、カルボン酸ヒドラジド化合物及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部含有してなる請求項16又は17に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項19】
ギ酸捕捉剤として、水酸基を有していてもよい脂肪酸金属塩及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜0.2重量部含有してなる請求項16〜18のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項20】
離型剤として、炭素数12〜36の脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドからなる群から選ばれる1種以上を、安定化ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部含有してなる請求項16〜19のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項21】
請求項16〜20のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項22】
(1)80℃で24時間、密閉空間で保存した時、発生ホルムアルデヒド量が成形体の表面積1cm2当り2μg以下、及び/又は(2)60℃、飽和湿度の密閉空間で3時間保存した時、発生ホルムアルデヒド量が成形体の表面積1cm2当り0.8μg以下である請求項21記載の成形体。
【請求項23】
成形体が、自動車部品、電気・電子部品、建材・配管部品、生活・化粧品用部品及び医用部品から選択された少なくとも1種である請求項21又は22記載の成形体。

【公開番号】特開2006−257166(P2006−257166A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73629(P2005−73629)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】