説明

不揮発性記憶素子およびその製造方法

【課題】抵抗変化型の不揮発性記憶素子において、抵抗変化動作に適したHfを含有する金属酸化物層からなる可変抵抗層を提供する。
【解決手段】第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも2つの異なる抵抗状態に抵抗値が変化する可変抵抗層が挟持されてなる不揮発性記憶素子において、前記可変抵抗層が、少なくともHfとOを含有する金属酸化物層を含む可変抵抗層であって、HfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成を有していることを特徴とする不揮発性記憶素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性記憶素子およびその製造方法に関し、特に抵抗変化型の不揮発性記憶素子およびその製造方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
現在主流であるフローテイングゲートを用いたフラッシュメモリは、メモリセルの微細化に従い、隣接するセル同士のフローテイングゲート間の容量結合による干渉によってしきい値電圧(Vth)変動が生じるという課題がある。
そこで、微細化に適した構成のメモリとして、抵抗変化を生じる層を電極で挟んだ抵抗変化型の不揮発性記憶素子の開発が進められている。この抵抗変化型の不揮発性素子は、抵抗層の電気抵抗を電気的刺激によって2値以上に切り替えられることを特徴としており、素子構造上および動作上の単純さから、微細化や低コスト化が可能である不揮発性素子として期待されている。
【0003】
印加される電圧によって抵抗が変化する層としては、遷移金属から形成される郡から選択される元素の酸化物があり、ニッケル酸化物(NiO)、バナジウム酸化物(V)、亜鉛酸化物(ZnO)、ニオブ酸化物(Nb)、チタン酸化物(TiO)、タングステン酸化物(WO)、チタン酸化物(TiO)、コバルト酸化物(CoO)、タンタル酸化物(Ta)などがある。
【0004】
抵抗変化の動作原理は不明であるが、可変抵抗層に電圧を印加することにより、可変抵抗層中にフィラメントと称される電流経路が形成され、このフィラメントと上下電極間の接続状態により素子の抵抗が変化するという原理や、電極と可変抵抗層の界面における酸素原子の移動により可変抵抗層の抵抗が変化するという原理が報告されている。一般的な抵抗変化型の不揮発性記憶素子(ReRAM:Resistive Random Access Memory)は、下部電極と上部電極の間に、抵抗変化膜を挟み込んだ平行平板型積層構造をしている。上部電極と下部電極の間に電圧を印加すると、抵抗変化膜の抵抗が変化して、2つの異なる抵抗状態(リセット状態、セット状態)をとる。抵抗変化素子の動作メカニズムは、まず2つの抵抗状態間を遷移可能にするための初期動作として、フォーミング電圧を印加する。フォーミング電圧の印加によって、抵抗変化膜に電流パスとなるフィラメントが形成され得る状態にする。その後、動作電圧(セット電圧及びリセット電圧)の印加によって、フィラメントの発生状態を変化させて、セット/リセット動作、即ち、書込みと消去を実行する。
【0005】
例えば、非特許文献1には、上下電極としてPtを用い、可変抵抗層がNiOからなる不揮発性記憶素子が提案されており、Ni酸化物中にフィラメントと称される電流経路が形成され、抵抗が変化すると述べられている。また、非特許文献2には、上下電極としてPtを用い、可変抵抗層がTaOxからなる不揮発性記憶素子が提案されており、Pt電極とTaOxの界面層における酸素原子の移動により抵抗が変化すると述べられている。
【0006】
また、電極材料としてエッチング加工が容易な窒化チタン電極を用いた抵抗変化素子に関する技術が注目されている。例えば、非特許文献3には下部電極としてPtを用い、可変抵抗層としてHfOxやHfAlOxを用い、上部電極としてTiNからなる不揮発性記憶素子が提案されており、可変抵抗層としてHfAlOxを用いることにより、動作電圧のバラツキが抑制できると述べられている。また、非特許文献4には、TiN/Ti/HfO/TiN積層構造を酸素アニールによりTiN/TiOx/HfOx/TiNからなる積層構造を作製することで、抵抗変化動作が実現できると述べられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】APPLIED PHYSICSLETTERS 86, 093509(2005)
【非特許文献2】International electrondevices meeting technical digest, 2008, P293
【非特許文献3】Symposium on VLSItechnology digest of technical papers, 2009.p30
【非特許文献4】International electrondevices meeting technical digest, 2008, P297
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の技術にはそれぞれ以下のような課題が存在する。
【0009】
第1に非特許文献1および非特許文献2のように可変抵抗層としてNiOxやTaOxを用いて良好な抵抗変化特性を得るには上下電極としてPtを用いる必要がある。抵抗変化素子の電極としてPt電極を用いる技術は、電極の酸化により素子特性の動作不安定性を抑制する点では効果的であるが、電極加工プロセスにおけるエッチングが困難性であることや材料コストの低減が困難であるという課題がある。
【0010】
第2に非特許文献3および非特許文献4のように可変抵抗層としてHfとAlが含まれる金属酸化物を用い、電極材料としてTiNを用いる技術は、上述した電極加工プロセスにおけるエッチングが材料コストの低減に効果的であるが、抵抗変化特性を得るための最適な金属酸化膜中の酸素組成の範囲については何も述べられていないという課題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題に対してなされたものであり、その目的とするところは、Hfを含有する金属酸化物膜からなる可変抵抗層を有する不揮発性記憶素子において、抵抗変化特性を得るための最適化なHfとOの組成を有する抵抗変化膜を有する不揮発性記憶素子、ならびにその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0013】
即ち、請求項1記載の発明は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも2つの異なる抵抗状態に抵抗値が変化する可変抵抗層が挟持されてなる不揮発性記憶素子において、前記可変抵抗層が、少なくともHfとOを含有する金属酸化物層を含む可変抵抗層であって、HfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成を有していることを特徴とする不揮発性記憶素子である。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の電極と前記第2の電極の少なくともどちらか一方の電極が、少なくともTiとNを含有する金属窒化物層を含む電極であって、前記金属窒化物層の少なくとも前記可変抵抗層と接する部分のTiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上である金属窒化物層からなることを特徴とする不揮発性記憶素子である。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記金属窒化物層の少なくとも前記可変抵抗層と接する部分の結晶配向性Xが1.2<Xの範囲を有していることを特徴とする不揮発性素子である。なお、結晶配向性Xは、それぞれTiとNを含有する金属窒化物層のX線回折スペクトルにおける(200)ピーク強度と(111)ピーク強度の比を表す。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記2つの異なる抵抗状態が、低抵抗から高抵抗に変化するリセット状態と高抵抗から低抵抗に変化するセット状態であることを特徴とする不揮発性記憶素子である。
【0017】
また、請求項5記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記不揮発性記憶素子が抵抗変化型のメモリであることを特徴とする不揮発性記憶素子である。
【0018】
また、請求項6記載の発明は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも2つの異なる抵抗状態に抵抗値が変化する可変抵抗層が挟持されてなる不揮発性記憶素子の製造方法であって、前記可変抵抗層が、少なくともHfとOを含有する金属酸化物層を含む可変抵抗層であり、HfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成を有する金属酸化物層を形成する工程を含むことを特徴とする不揮発性記憶素子の製造方法である。
【0019】
また、請求項7記載の発明は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも2つの異なる抵抗状態に抵抗値が変化する可変抵抗層が挟持されてなり、かつ前記第1の電極と前記第2の電極が、少なくともTiとNを含有する金属窒化物層を含む電極であり、前記可変抵抗層が少なくともHfとOを含有する金属酸化物層を含む可変抵抗層である不揮発性記憶素子の製造方法であって、前記第1の電極として、TiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲である金属窒化物層を形成する工程と、HfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成を有する金属酸化物層を形成する工程と、前記第2の電極として、TiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲である金属窒化物層を形成する工程と、を含むことを特徴とする不揮発性記憶素子の製造方法である。
【0020】
また、請求項8記載の発明は、請求項6又は請求項7記載の発明において、前記可変抵抗層を形成する工程が、真空容器内で、酸素からなる反応性ガスと不活性ガスの混合雰囲気下においてHfターゲットをマグネトロンスパッタする工程であり、金属酸化物層のHfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90の範囲を満たすように反応性ガスと不活性ガスの混合比を設定することを特徴とする不揮発性素子の製造方法である。
【0021】
また、請求項9記載の発明は、請求項6〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の電極と前記第2の電極を形成する工程が、真空容器内で、窒素からなる反応性ガスと不活性ガスの混合雰囲気下においてTiターゲットをマグネトロンスパッタする工程であり、金属酸化物層のTiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲を満たすように反応性ガスと不活性ガスの混合比を設定することを特徴とする不揮発性素子の製造方法である。
【0022】
また、請求項10記載の発明は、請求項6〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の電極を形成する工程と、前記可変抵抗層を形成する工程と、前記第2の電極を形成する工程を、被処理基板を大気暴露させることなく実施することを特徴とする不揮発性素子の製造方法である。
【0023】
また、請求項11記載の発明は、請求項6〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記2つの異なる抵抗変化状態が、低抵抗から高抵抗に変化するリセット状態と高抵抗から低抵抗に変化するセット状態であることを特徴とする不揮発性記憶素子の製造方法である。
【0024】
また、請求項12記載の発明は、請求項6〜10のいずれか1項に記載の前記不揮発性記憶素子が抵抗変化型のメモリであることを特徴とする不揮発性記憶素子の製造方法である。
【0025】
また、請求項13記載の発明は、請求項6〜10のいずれか1項に記載の不揮発性記憶素子の製造方法を制御するためのプログラムを搭載した記憶媒体を有することを特徴とする、不揮発性記憶素子の製造装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、少なくともHfとOを含有する金属酸化物層を含む不揮発性記憶素子の可変抵抗層のHfとOの膜組成を最適化することで、抵抗変化型不揮発性半導体素子に適した可変抵抗層を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る素子構造の断面を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る窒化チタン膜の形成工程に用いられる処理装置の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る可変抵抗層の膜組成による抵抗変化素子の電流電圧特性を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る可変抵抗層の膜組成による抵抗変化素子の抵抗変化比とO/Hf比の関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るHfOx膜のXRD回折スペクトルを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る窒化チタン膜の膜組成(N/Ti比:図中の●に対応)および膜組成(O/Ti比:図中の□に対応)と膜密度の関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る窒化チタン膜のXRD回折スペクトルにおけるピーク強度比と膜組成の関係を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る窒化チタン膜のXRD回折スペクトルにおけるピーク強度比と膜組成の関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る窒化チタン膜のSEMによる観測像を示す図である。
【図10】本発明の実施例1に係る素子の製造装置の概略説明図である。
【図11】本発明の実施例1に係る素子の可変抵抗素子のプロセスフローを示す図である。
【図12】本発明の実施例1に係る素子の断面構造を示す図である。
【図13】本発明の実施例1に係る素子の電流-電圧特性を示す図である。
【図14】本発明の実施例1に係る素子の抵抗変化現象の書き換え耐性を示す図である。
【図15】図2記載の処理装置を制御する制御装置の模式図である。
【図16】本発明の実施形態に係る処理装置に使用する制御機構の内部構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0029】
本発明者らは、HfとOを含有する金属酸化膜からなる可変抵抗層と、第1および第2の電極としてTiとNを含有する金属窒化物層からなる電極を有する抵抗変化型不揮発性半導体素子において、抵抗変化に適した金属酸化膜構造を鋭意検討した結果、HfとOを含有する可変抵抗層においてHfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成範囲に設定することにより高い抵抗変化比を有する抵抗変化型の不揮発性半導体素子を実現できることを発見した。更に、電極の一部を構成する窒化チタン膜のTiとNのモル比率(N/Ti比)を1.15以上であり、かつ結晶配向性Xを1.2<Xの範囲に設定することにより、抵抗変化現象の耐久性(エンヂュランス特性)に優れた抵抗変化型の不揮発性素子を実現できることを発見した。ここで、本発明において「結晶配向性」とは、TiとNを含有する金属窒化物層のX線回折スペクトルにおける(200)ピーク強度と(111)ピーク強度の比(c(200)/c(111))をいう。
【0030】
本発明における抵抗変化素子に適した可変抵抗層ならびに窒化チタン電極層の形態について、図1の抵抗変化素子を例に取り説明する。図1に示すように、表面にシリコン酸化膜を有する下地基板上に第1の電極である窒化チタン膜2と、窒化チタン膜2上にHfとOを含有する可変抵抗層3と、可変抵抗層3上に第2の電極である窒化チタン膜4が形成されている。
【0031】
図2に、本発明における可変抵抗膜および第1、第2の電極を構成する窒化チタン膜の形成工程に用いられる処理装置の概略を示す。
【0032】
成膜処理室100はヒータ101によって所定の温度に加熱できるようになっている。被処理基板102は、基板支持台103に組み込まれた、サセプタ104を介して、ヒータ105によって所定の温度に加熱できるようになっている。基板支持台103は、膜厚の均一性の観点から所定の回転数で回転できることが好ましい。成膜処理室内には、ターゲット106が被処理基板102を望む位置に設置されている。ターゲット106は、Cu等の金属から出来ているバックプレート107を介してターゲットホルダー108に設置されている。なお、ターゲット106とバックプレート107を組み合わせたターゲット組立体の外形を一つの部品としてターゲット材料で作成し、これをターゲットとして取り付けても構わない。つまり、ターゲット106がターゲットホルダー108に設置された構成でも構わない。Cu等の金属製のターゲットホルダー108には、スパッタ放電用電力を印加する直流電源110が接続されており、絶縁体109により接地電位の成膜処理室100の壁から絶縁されている。スパッタ面から見たターゲット106の背後には、マグネトロンスパッタリングを実現するためのマグネット111が配設されている。マグネット111は、マグネットホルダー112に保持され、図示しないマグネットホルダー回転機構により回転可能となっている。ターゲットのエロージョンを均一にするため、放電中には、このマグネット111は回転している。ターゲット106は、基板102に対して斜め上方のオフセット位置に設置されている。すなわち、ターゲット106のスパッタ面の中心点は、基板102の中心点の法線に対して所定の寸法ずれた位置にある。ターゲット106と処理基板102の間には、遮蔽板116が配置され、電力が供給されたターゲット106から放出されるスパッタ粒子による処理基板102上への成膜を制御している。
【0033】
可変抵抗層の形成には、ターゲット106にHfの金属ターゲットを用いた。HfとOを含有する金属酸化膜の堆積は、金属ターゲット106に、それぞれ直流電源110より、ターゲットホルダー108およびバックプレート107を介して電力を供給することにより実施される。この際、不活性ガスが、不活性ガス源201から、バルブ202、マスフローコントローラ203、バルブ204を介してターゲット付近から処理室100に導入される。また、酸素からなる反応性ガスは、酸素ガス源205から、バルブ206、マスフローコントローラ207、バルブ208を介して処理室100内の基板付近に導入される。導入された不活性ガスおよび反応性ガスは、コンダクタンスバルブ117を介して、排気ポンプ118によって排気される。
【0034】
本発明における金属酸化膜の堆積は、スパッタリングガスとしてアルゴン、反応性ガスとして酸素を用いた。基板温度は、27〜600°、ターゲットパワーは50W〜1000W、スパッタガス圧は0.2Pa〜1.0Pa、Ar量は0sccm〜100sccm(Standard
Cubic Centimeter per Minute)、酸素ガス流量は0sccm〜100sccm、の範囲で適宜決定することができる。ここでは、基板温度30℃、Hfのターゲットパワー600W(100kHz、1us)、スパッタガス圧0.24Paとしアルゴンガス流量を20sccm、酸素ガス流量を0sccm〜30sccmの範囲で変化させて堆積した。金属酸化膜中のHf元素とO元素のモル比率はスパッタリング時に導入するアルゴンと酸素の混合比率により調整した。尚、明細書中における「モル比率」とは、物質量の基本単位であるモル数の比率をいう。モル比率は、例えば、X線光電子分光法により物質内にある固有の電子の結合エネルギー、電子のエネルギー準位と量から測定することができる。なお、sccm=一分間当たり供給されるガス流量を0℃1気圧で表したcm数=1.69×10−3Pa・m/s(0℃において)である。
【0035】
窒化チタン膜からなる電極の形成には、ターゲット106にTiの金属ターゲットを用いた。金属ターゲット106に、それぞれ直流電源110より、ターゲットホルダー108およびバックプレート107を介して電力を供給することにより実施される。この際、不活性ガスが、不活性ガス源201から、バルブ202、マスフローコントローラ203、バルブ204を介してターゲット付近から処理しつ100に導入される。また、窒素からなる反応性ガスは、窒素ガス源205から、バルブ206、マスフローコントローラ207、バルブ208を介して処理室100内の基板付近に導入される。導入された不活性ガスおよび反応性ガスは、コンダクタンスバルブ117を介して、排気ポンプ118によって排気される。
【0036】
本発明における窒化チタン膜の堆積は、スパッタリングガスとしてアルゴン、反応性ガスとして窒素を用いた。基板温度は、27℃〜600℃、ターゲットパワーは50W〜1000W、スパッタガス圧は0.2Pa〜1.0Pa、Ar流量は0sccm〜100sccm、窒素ガス流量は0sccm〜100sccm、の範囲で適宜決定することができる。ここでは、基板温度30℃、Tiのターゲットパワー1000W、アルゴンガス流量を0sccm、窒素ガス流量を50sccmで堆積した。窒化チタン膜中のTi元素とN元素のモル比率はスパッタリング時に導入するアルゴンと窒素の混合比率により調整した。
【0037】
次に、本発明における可変抵抗膜、第1の電極および第2の電極を構成する窒化チタン膜の形成工程に使用する図2記載の処理装置の制御装置400について説明する。図15は、図2記載の処理装置を制御する制御装置400の模式図である。バルブ202、204、206、208はそれぞれ制御用入出力ポート500、501、502、503を介して制御装置400によって開閉制御ができる。また、マスフローコントローラ203、207はそれぞれ制御用入出力ポート504、505を介して制御装置400によって流量の調節ができる。また、コンダクタンスバルブ117は、制御用入出力ポート506を介して制御装置400によって開度の調節ができる。また、ヒータ105は、入出力ポート507を介して制御装置400によって温度の調節ができる。また、基板支持台103の回転状態は、入出力ポート508を介して制御装置400によって回転数の調節ができる。また、直流電源110は、入出力ポート509を介して制御装置400によって周波数ならびに供給電力が調節できる。
【0038】
本発明においては、制御機構400により、可変抵抗層としてHfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成を有する金属酸化物層を形成するように、スパッタリング成膜時に導入するアルゴンガスと酸素ガスの混合比率を制御している。また、金属窒化物層の少なくとも可変抵抗層3と接する部分のTiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ膜密度が4.7g/cc以上になるように、スパッタリング成膜時に導入するアルゴンガスと窒素ガスの混合比率を制御している。
【0039】
図16は、制御機構400の内部構成を示した図である。制御機構400は、入力部401、プログラム及びデータを有する記憶部402、プロセッサ403及び出力部404からなり、基本的にはコンピュータ構成であり、図2記載の処理装置を制御している。
また、記憶部402内には、コンピューターに、第1の電極と第2の電極との形成行程を制御させる指令を出すプログラムと、第1の電極と第2の電極との間に可変抵抗層の形成工程を制御させる指令を出すプログラムとが格納されている。
なお、記憶部402内の具体的なプログラムは、第1の電極として、TiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲である金属窒化物層を形成する工程と、可変抵抗層としてHfとOのモル比率(O/Hf比)が0.03から1.90で表される組成を有する金属酸化物層を形成する工程と、前記第2の電極として、TiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲である金属窒化物層を形成する工程と、を実施する個々のプログラムより構成されている。
【0040】
次に、図1に示した抵抗変化素子の形成方法について説明する。
はじめに、図2に示した成膜装置を用い窒化チタン膜からなる第1の電極2を形成する。
次に、図2に示した成膜装置と同様の成膜装置にてHfとOを含有する金属酸化膜からなる可変抵抗層を形成した。次に、第2の電極として窒化チタン膜を第1の電極の形成工程と同様の方法により堆積した。 次に、リソグラフィー技術とRIE(Reactive Ion Etching)技術を用いてTiN膜を所望の大きさに加工し素子を形成した。堆積したHfとOを含有する金属酸化膜および窒化チタン膜の組成は、X線光電子分光(XPS:X−ray
Photoelectron Spectroscopy)法により分析した。また、堆積した膜の結晶構造は、X線回折(XRD:X−ray Diffraction)法により、膜密度はX線反射率(X−ray
Reflect meter)法により分析した。また、作製した素子の抵抗変化特性をI−V測定により評価した。
【0041】
<HfOx膜のHf/Oの組成・結晶性と抵抗変化特性>
図3は可変抵抗層の各O/Hf比において、抵抗変化素子の電流-電圧特性を示す。可変抵抗層のO/Hf比が0.30以上から抵抗変化素子においてバイポーラ型のswitching動作が得られることを確認した。つまり、抵抗変化素子に負の電圧を印加すると高抵抗状態から低抵抗状態(セット)に、正の電圧を印加すると高抵抗状態から低抵抗状態(リセット)に抵抗が変化することが示される(以下、セット動作のために印加した負の電圧を“セット電圧”、リセット動作のために印加した正の電圧を"リセット電圧"と言う)。一方、O/Hf比が0.30未満(例えば、0.16)、1.90以上(例えば、2.00)ではswitching動作が確認されなかった。図4は電圧0.5Vにおいての素子の抵抗変化比と、O/Hf比の関係を示す図であり、特に、O/Hf比が0.300から1.90に増加するにつれてセット/リセット時の抵抗変化比が1桁から6桁まで増加している様子が分かる。
【0042】
本発明における金属酸化物層のHfとOのモル比率(O/Hf比)と結晶性の関係をXRDにより評価した結果を図5に示す。図5中のHfO(111)、HfO(200)は単斜晶の結晶構造を持つHfOx膜の結晶面(111)面、(200)面を表している。なお、Hf(111), Hf(101)は六方晶の結晶構造を持つ金属Hf膜の結晶面(100)、(101)面を表している。図に示されるように、本発明における抵抗変化動作が得られるHfOx膜は、六方晶の金属Hf
と単斜晶のHfOxの結晶面、なおアモルファスのようなHfOxが含まれている。従って、本発明におけるHfとOを含有する金属酸化物を用いた素子の抵抗変化動作は、結晶構造ではなくHfとOのモル比率に関連していることが考えられる。以上の結果より、本発明におけるHfとOを含有する金属酸化物からなる可変抵抗層を有する素子において、抵抗変化動作を得るためのHfとOのモル比率は1.30〜1.90であることが好ましい。
【0043】
また、上記説明では、可変抵抗層のHf元素とO元素のモル比率はスパッタリング時に導入するアルゴンと酸素の混合比率により調整したことについて述べたが、これに限定されるものではなく、可変抵抗層としてHfの金属膜を形成した後に酸素雰囲気中の熱処理によりHfとOのモル比率を調整する方法を用いてもよい。また、酸素雰囲気中の熱処理温度は、電極層の酸化抑制の観点から、熱処理温度は300℃〜600℃の範囲であることが望ましい。
また、上記説明では、HfとOを含有する金属酸化物からなる可変抵抗層を挟持する電極として窒化チタン膜からなる電極について述べたが、これに限定されるものではなく、Ti、W、Ru、Pt、Taの少なくとも一つからなる金属または金属窒化物を用いてもよい。
【0044】
<窒化チタン膜の組成・結晶性と抵抗変化特性>
次に、本発明のHfとOを含有する金属酸化物からなる可変抵抗層を挟持する電極として最適な窒化チタン膜を用いた場合において、抵抗変化動作を得るための窒化チタン膜の構造(組成・結晶性)について説明する。
【0045】
図6に本発明における窒化チタン膜の膜組成(N/Ti比:図中の●に対応)および膜組成(O/Ti比:図中の□に対応)と膜密度の関係を示す。本実施形態において作製した抵抗変化素子のスイッチング特性を評価した結果、図中に示される膜密度が4.7g/cc以上であり、かつ膜組成N/Ti比が1.15以上の領域において抵抗変化によるスイッチング動作が得られることを確認した。一方、膜密度が4.7g/ccより小さく、かつ膜組成N/Ti比が1.15より小さい領域では、抵抗変化によるスイッチング動作が得られなかった。これは、図中に示される膜組成O/Ti比が膜密度4.7g/ccより小さく、かつ膜組成N/Ti比が小さい領域では増加することに起因していると考えられる。即ち、可変抵抗層中の酸素がある程度窒化チタン膜中に移動すると、電圧印加による抵抗変化が生じなくなることを示唆している。
【0046】
次に、図6中に示される条件A(アルゴンガス流量10sccm、窒素ガス流量10sccm)、条件B(アルゴンガス流量0sccm、窒素ガス流量50sccm)および条件C(アルゴンガス流量13.5sccm、窒素ガス流量6sccm)にて堆積した窒化チタン膜のXRDスペクトルを図7に示す。図7中のC(111)、C(200)およびC(220)はそれぞれ窒化チタン膜の結晶面、(111)面、(200)面、(220)面を表している。図に示されるように、本発明における抵抗変化動作が得られる窒化チタン膜は、(200)面の結晶配向性が高い結晶構造を有している。
【0047】
図8に、本発明における窒化チタン膜の膜組成(N/Ti比)と図7に示されるXRDスペクトルにおける(111)面と(200)面のピーク強度比比C(200)/C(111)の関係を示す。図8に示されるように、本発明における抵抗変化動作が得られる膜組成N/Ti比が1.15以上の窒化チタン膜は、ピーク強度比が1.2以上を有している。ここで、ピーク強度比が高い窒化チタン膜のモフォロジーをSEMによる断面および表面観測により評価した。図9に、条件Aにより堆積した窒化チタン膜のSEMによる観測像を示す。図に示されるように、本発明における窒化チタン膜は、20nm以下のグレインサイズの柱状構造を有し、表面平坦性に優れていることが確認できる。このグレインサイズが小さく、かつ表面平坦性に優れていることにより、結晶粒界に起因したリーク電流が抑制され、抵抗変化素子に必要な高い抵抗変化比が得られると考えられる。また、グレインサイズが小さく緻密な結晶構造を有していることが、膜密度の向上につながっていると考えられる。
以上の結果より、本発明におけるHfとOを含有する金属酸化物からなる可変抵抗層を有する素子に適した窒化チタン膜は、TiとNのモル比率は1.15以上であることが好ましく、更に膜密度は4.7g/cc以上が好ましい。また、金属窒化物層の結晶配向性を表すXRDスペクトルにおけるC(200)/C(111)のピーク強度比Xは、1.2以上であることが好ましい。
【0048】
また、本発明における窒化チタン膜の堆積工程は、可変抵抗層へのプラズマダメージによる素子特性の悪化を抑制し、かつ組成および結晶配向成を制御するため、図2に示されるような、ターゲットが基板に対して斜め上方のオフセット位置に設置された真空容器内において、窒素からなる反応性ガスと不活性ガスの混合雰囲気下においてTiターゲットをマグネトロンスパッタする工程であり、金属窒化物層のTiとNのモル比率が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲を満たすように窒素ガスと不活性ガスの混合比率を設定することが好ましい。
なお、可変抵抗層を挟持する電極(第1の電極と第2の電極)の少なくともどちらか一方の電極が、少なくともTiとNを含有する金属窒化物層を含む電極であって、前記の金属窒化物層の少なくとも可変抵抗層と接する部分のTiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であればより望ましい。
【0049】
<抵抗変化素子の製造装置>
上述の説明より、本発明におけるHfとOを含有する金属酸化物からなる可変抵抗層を有する素子において抵抗化動作を得るには、HfとOの組成を制御する必要がある。また、可変抵抗層と可変抵抗層を挟持する電極(第1の電極と第2の電極)との界面の酸化を抑制する必要がある。従って、本発明における抵抗変化素子を作製するには、被処理基板上に第1の電極を形成した後、被処理基板を大気暴露させることなく可変抵抗層を形成し、その後、被処理基板を大気に暴露させることなく、第2の電極を形成することが望ましい。尚、第1の電極、可変抵抗層および第2の電極の形成は、同一処理装置内で処理しても良いが、電極層を構成する金属元素と可変抵抗層を構成する元素の相互汚染を防止するため、被処理基板の大気暴露を阻止する搬送装置に接続された電極形成用の処理装置と可変抵抗層形成用の処理装置からなる製造装置を用いて処理することが望ましい。また、可変抵抗層の形成工程として、Hfの金属膜を堆積した後に酸素雰囲気中の熱処理を行う場合、被処理基板の大気暴露を阻止する搬送装置に接続された電極形成用の処理装置と金属膜を堆積する処理装置と酸素雰囲気中で熱処理を行う処理装置からなる製造装置を用いて処理することが望ましい。また、被処理基板として表面に金属膜やシリコン等から構成される薄膜ダイオード層が露出している場合には、コンタクト抵抗を低減することを目的として金属膜やシリコン表面の酸化膜を除去する処理が必要となる。その場合、上述した製造装置に前処理装置を接続しても良い。
【0050】
図10は本発明を実施するために用いる最良形態の抵抗変化素子の製造装置300を示す。製造装置300は、基板搬送のためのロボットを備えた搬送チャンバ306と、搬送チャンバ306とゲートバルブを介して接続された前処理/Pre−etchチャンバ301、第1の電極(下部電極)形成チャンバ302、可変抵抗層形成チャンバ303、熱処理チャンバ304、第2の電極(上部電極)形成チャンバ305、少なくとも1つ以上のロードロックチャンバ307、そして制御装置450から構成されている。搬送チャンバ306の搬送ロボットは搬送チャンバ306を通じてロードロックチャンバ307や前述の各プロセスチャンバ間を大気に暴露することなく基板を搬送することができる。製造装置300は、ロードロックチャンバ307から搬送チャンバ306に搬入される基板11を前処理/Pre−etchチャンバ301に搬送させて前処理を実施する工程と、前処理が終了すると基板11を前処理/Pre−etchチャンバ301から第1の電極(下部電極)形成チャンバ302に搬送させて、成膜条件に基づく窒化チタン膜12を形成させる工程と、下地の成膜処理が終了すると、第1の電極(下部電極)形成チャンバ302の基板11を可変抵抗層形成チャンバ303に搬送させて、可変抵抗層13を形成する工程と、可変抵抗層13の成膜処理が終了すると、可変抵抗層形成チャンバ303の基板11を第2の電極(上部電極)形成チャンバ305に搬送させて、成膜条件に基づく窒化チタン膜14を形成させる工程と、可変抵抗素子が形成されると、第2の電極(上部電極)形成チャンバ305の基板11をロードロックチャンバ307に搬送させて、基板11を搬出させる工程を、被処理基板を大気に暴露することなく実施する装置である。尚、可変抵抗層の形成工程として、可変抵抗層形成チャンバ303を用いてHfからなる金属膜を形成した後、熱処理チャンバ304を用いて酸素雰囲気中で熱処理を実施してもよい。
【0051】
制御機構450は、入力部451、プログラム及びデータを有する記憶部452、プロセッサ453及び出力部454からなり、基本的にはコンピュータ構成であり、搬送チャンバ306の搬送ロボット、各ゲートバルブ、ロードロックチャンバそして前述の各プロセスチャンバを制御することによって前述の抵抗変化素子の製造工程を制御している。記憶部452には、第1の電極の形成行程を制御させる指令を出すプログラム、第1の電極と第2の電極との間に可変抵抗層の形成工程を制御させる指令を出すプログラム、第2の電極との形成行程を制御させる指令を出すプログラムとが格納されている。可変抵抗層の形成工程を制御するプログラムは、可変抵抗層としてHfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成を有する金属酸化物層を形成する工程を実施するプログラムより構成されている。また、第1の電極、第2の電極の形成工程を制御するプログラムは、第1の電極、第2の電極として、TiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲である金属窒化物層を形成する工程と、を実施する個々のプログラムより構成されている。図11は、図10に示す製造装置300を用いて本発明に係る可変抵抗素子を作製するプロセスフローを示した図である。前処理701はDegasを実施しても良いし、表面酸化膜を除去する工程でもよい。前処理後は基板上に第1の電極として窒化チタン膜を形成702する。その後、基板を大気暴露させることなく可変抵抗層を形成703して次に第1の電極と同じ方法で第2の電極の窒化チタン膜を形成704する。
【実施例1】
【0052】
図12は、実施例1に関わる素子構造の断面の概略である。被処理基板として表面に膜厚100nmのシリコン酸化膜を有するシリコン基板11に、図10に示す製造装置300を用いて電極層と可変抵抗層の形成を行った。
製造装置300を構成する下部電極処理チャンバ302において、Ti金属ターゲットを用いてアルゴンガス流量0sccmと窒素ガス流量50sccmにてTiとNのモル比率が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲を有する窒化チタン膜12を10nm堆積した。次に、製造装置300を構成する可変抵抗層形成チャンバ303において、Hf金属ターゲットを用いてアルゴンガス流量20sccmと酸素ガス流量20sccmにてOとHfのモル比率が1.30〜1.90である可変抵抗層HfOx13を20nm堆積した。次に、可変抵抗層13の上に製造装置300を構成する可変抵抗層形成チャンバ305を用いて窒化チタン膜12と同様の方法で窒化チタン膜14を堆積した。次に、リソグラフィー技術とRIE(Reactive Ion Etching)技術を用いてTiN膜を所望の大きさに加工し素子を形成した。
【0053】
堆積したHfOx膜の組成は、X線光電子分光(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)法により分析した。また、作製した素子の抵抗変化動作は、電流-電圧測定により評価した。
図13に、作製した抵抗変化素子の電流-電圧特性を示す。電流-電圧特性は、素子の窒化チタン膜12を接地し、窒化チタン膜14に0V→−1.5Vの電圧を印加して酸化膜中に伝導パスを生成するフォーミング動作を実施した。その後、それぞれ、0V→−1.5V、1.5V→0V、0V→−1.5V、−1.5V→0Vの電圧を印加して測定した。図に示されるように、窒化チタン膜14に0V→−1.5Vの範囲で電圧を印加すると0V→−0.9Vにおいて、高抵抗状態から低抵抗状態の変化(セット動作)による電流値の増加が確認できる。次に、窒化チタン膜14に0V→−1.5Vの範囲で電圧を印加するとV=1.3Vにおいて低抵抗状態から高抵抗状態の変化(リセット動作)による電流値の減少が確認できる。このように、本発明のHfOx膜を有する抵抗変化素子において、低抵抗状態と高抵抗状態におけるOn/Off比が101以上の値を有する抵抗変化素子が形成できることが示された。
【0054】
図14に、作製した抵抗変化素子に、正負のパルス(図中に示す。)を交互に連続して印加し、抵抗変化現象の書き換え耐性(エンデュランス特性)を評価した結果を示す。グラフの縦軸は抵抗値、横軸は正負のパルスの印加回数を示す。図14には、パルスの印加回数が1000回までの測定結果が示されている。図に示されるように、高抵抗状態と低抵抗状態は印加パルスに対応して変化し、1000回のパルスを印加しても高抵抗状態の値(0.1MΩ)と低抵抗状態の値(1kΩ)が維持されていることが確認できる。このように、本発明のHfOx膜を有する抵抗変化素子において、パルスによる連続動作においても素子の劣化に伴う抵抗値の変化は確認されなかった。尚、図14は、1000回のパルスを加えた後に、抵抗変化現象が見られなくなったことを意味しているのではなく、この後も素子は安定して抵抗変化を示した。
【0055】
また、上記実施例では、可変抵抗層の形成方法としてHf金属ターゲットを酸素からなる反応性ガスと不活性ガスの混合ガスを用いた反応性スパッタ法で成膜した場合を述べたが、可変抵抗層の形成工程としてチャンバ303においてHf金属膜を堆積した後、チャンバ304において酸素雰囲気中で300℃〜600℃のアニール処理を実施する方法を用いても上記実施例と同様の効果が得られることを確認した。
また、上記実施例では、被処理基板として表面に膜厚100nmのシリコン酸化膜を有するシリコン基板を用いた場合を述べたが、被処理基板として基板表面の一部にWが露出した基板を用い、製造装置300において、前処理チャンバ301においてWの表面酸化物を除去した後、電極層および可変抵抗層を形成しても上記実施例と同様の効果が得られることを確認した。
【符号の説明】
【0056】
1 基板
2 窒化チタン膜
3 可変抵抗層
4 窒化チタン膜
11 基板
12 窒化チタン膜
13 可変抵抗層
14 窒化チタン膜
100 成膜処理室
101 ヒータ
102 被処理基板
103 基板支持台
104 サセプタ
105 ヒータ
106 金属ターゲット
107 バックプレート
108 ターゲットホルダー
109 絶縁体
110 直流電源
111 マグネット
112 マグネットホルダー
116 遮蔽板
117 コンダクタンスバルブ
118 排気ポンプ
201 不活性ガス源
202 バルブ
203 マスフローコントローラ
204 バルブ
205 反応性ガス源
206 バルブ
207 マスフルーコントローラ
208 バルブ
300 抵抗変化型の不揮発性記憶素子の製造装置
301 前処理/Pre-etchチャンバ
302 下部電極チャンバ
303 可変抵抗層チャンバ
304 アニールチャンバ
305 上部電極チャンバ
306 搬送チャンバ
307 ロードロックチャンバ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも2つの異なる抵抗状態に抵抗値が変化する可変抵抗層が挟持されてなる不揮発性記憶素子において、
前記可変抵抗層が、少なくともHfとOを含有する金属酸化物層を含む可変抵抗層であって、HfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成を有していることを特徴とする不揮発性記憶素子。
【請求項2】
前記第1の電極と前記第2の電極の少なくともどちらか一方の電極が、少なくともTiとNを含有する金属窒化物層を含む電極であって、前記金属窒化物層の少なくとも前記可変抵抗層と接する部分のTiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上である金属窒化物層からなることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項3】
前記金属窒化物層の少なくとも前記可変抵抗層と接する部分の結晶配向性Xが1.2<Xの範囲を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の不揮発性素子。
【請求項4】
前記2つの異なる抵抗状態が、低抵抗から高抵抗に変化するリセット状態と高抵抗から低抵抗に変化するセット状態であることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項5】
前記不揮発性記憶素子が抵抗変化型のメモリであることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項6】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも2つの異なる抵抗状態に抵抗値が変化する可変抵抗層が挟持されてなる不揮発性記憶素子の製造方法であって、
前記可変抵抗層が、少なくともHfとOを含有する金属酸化物層を含む可変抵抗層であり、HfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成を有する金属酸化物層を形成する工程を含むことを特徴とする不揮発性記憶素子の製造方法。
【請求項7】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも2つの異なる抵抗状態に抵抗値が変化する可変抵抗層が挟持されてなり、かつ前記第1の電極と前記第2の電極が、少なくともTiとNを含有する金属窒化物層を含む電極であり、前記可変抵抗層が少なくともHfとOを含有する金属酸化物層を含む可変抵抗層である不揮発性記憶素子の製造方法であって、
前記第1の電極として、TiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲である金属窒化物層を形成する工程と、
HfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90で表される組成を有する金属酸化物層を形成する工程と、
前記第2の電極として、TiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲である金属窒化物層を形成する工程と、を含むことを特徴とする不揮発性記憶素子の製造方法。
【請求項8】
前記可変抵抗層を形成する工程が、
真空容器内で、酸素からなる反応性ガスと不活性ガスの混合雰囲気下においてHfターゲットをマグネトロンスパッタする工程であり、金属酸化物層のHfとOのモル比率(O/Hf比)が0.30から1.90の範囲を満たすように反応性ガスと不活性ガスの混合比を設定することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の不揮発性素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1の電極と前記第2の電極を形成する工程が、
真空容器内で、窒素からなる反応性ガスと不活性ガスの混合雰囲気下においてTiターゲットをマグネトロンスパッタする工程であり、金属酸化物層のTiとNのモル比率(N/Ti比)が1.15以上であり、かつ結晶配向性Xが1.2<Xの範囲を満たすように反応性ガスと不活性ガスの混合比を設定することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の不揮発性素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1の電極を形成する工程と、前記可変抵抗層を形成する工程と、前記第2の電極を形成する工程を、被処理基板を大気暴露させることなく実施することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の不揮発性素子の製造方法。
【請求項11】
前記2つの異なる抵抗変化状態が、低抵抗から高抵抗に変化するリセット状態と高抵抗から低抵抗に変化するセット状態であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の不揮発性記憶素子の製造方法。
【請求項12】
前記不揮発性記憶素子が抵抗変化型のメモリであることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の不揮発性記憶素子の製造方法。
【請求項13】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の不揮発性記憶素子の製造方法を制御するためのプログラムを搭載した記憶媒体を有することを特徴とする、不揮発性記憶素子の製造装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−216658(P2011−216658A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83152(P2010−83152)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】