説明

不眠症を治療するための、口腔内、舌下および急速融解製剤を含む、低用量ドキセピン製剤、ならびにその使用

本明細書に開示する発明は一般に、低用量経口ドキセピンの薬学的製剤および睡眠を促進するためのこれらの製剤の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本明細書に開示する発明の態様は、睡眠を促進するための、口腔内、舌下、および急速融解製剤を含む、低用量経口経粘膜ドキセピンの薬学的製剤、製剤の製造法、ならびにこれらの製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
低用量ドキセピンを不眠症などの睡眠障害を治療するために用いることができる。睡眠は健康および生活の質のために必要不可欠である。不眠症は米国において増えつつある健康問題である。1000万〜1500万人以上が慢性不眠症を患っており、その上に毎年7000万人もが不眠症の何らかの形を患っていると考えられる。不眠症は寝つき(入眠)が困難、夜間にしばしば目覚める(分断された睡眠)、目覚めが早すぎる(早期の最終の覚醒)、および/または目覚めたときに元気回復していない感じによって特徴づけられる状態である。米国立睡眠財団(NSF)のSleep in America Poll 2005において、調査回答者の42%が夜間にしばしば目覚めると報告し、成人の22%が目覚めが早すぎ、再び寝つくことができないと報告し、38%が目覚めて元気回復していないと感じると報告した。
【0003】
現在利用可能な催眠薬には多くの制限があり、安全特性に欠点がなく、不眠症に対する有効性の3つの成分(入眠、維持および持続時間)すべてに対処しうる薬物は一つもない。催眠薬の副作用には下記が含まれる:残留鎮静、嗜眠、失見当識;眩暈および転倒を含む精神運動機能障害、健忘、頭痛、激昂、悪夢、口腔乾燥、金属味、複雑な睡眠行動、依存性、退薬症候群ならびに反跳不眠症。副作用は高齢患者で悪化することが多い。これらの薬物は耽溺性および耐性のさらなる問題を起こす可能性もある。現在利用可能な催眠薬の制限は、第一線療法として非薬物治療の選択を推奨し、強調する、現行の医療指針に反映されている。
【0004】
本発明の態様は、ドキセピンおよびドキセピン化合物の低用量経口経粘膜製剤を提供し、睡眠障害の独特の局面に取り組む。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示する発明の態様は、低用量ドキセピン製剤、ならびにその製造および使用法に関する。好ましくは、いくつかの態様は、経口経粘膜製剤に関する。経粘膜送達は経口薬物の1日1回投与を可能にし、少なくとも部分的には、初回通過代謝の影響を回避することができる。
【0006】
以下により詳細に論じるとおり、低用量ドキセピンの、特に睡眠障害を治療する際に用いるための薬物動態の多くは不明であるか、または十分には理解されていない。一例として、ドキセピンは胃内で速やかに溶解するが、肝臓でかなりの初回通過抽出または代謝を受ける。この初回通過抽出は投与したドキセピンの治療効果に影響を与えうる。例えば、薬物の睡眠促進作用の開始を遅らせることもある。したがって、いくつかの態様は、少なくとも部分的には、口および/または腸内で吸収または取り込まれるように投与することができる製剤に関する。
【0007】
睡眠を治療するために用いる際の、これまで認識されていなかったドキセピンの特徴を考慮して、経粘膜薬学的剤形を用いる場合、任意のいくつかの異なる目的を達成することが望ましい。例えば、好ましくは剤形は薬物の含量に関して均質、急速溶解性、安定、美味、およびそれ以外に患者の服薬遵守を最大とするために患者にとって許容されるものでありうる。特定の状況において、薬物作用の早期および/または急速な開始も有利でありうる。例えば、睡眠の状況において、患者が眠る必要のある時間帯は短いため、薬物作用の早期開始は重要でありうる。同様に睡眠の状況において、剤形は好ましくは、翌日に著しい鎮静を残すことなく、7または8時間の全睡眠周期の間睡眠を維持する。
【0008】
患者に投与する薬物の選択される用量レベルは、例えば、投与経路、治療中の状態の重症度、ならびに治療中の患者の状態および病歴に依存しうる。しかし、任意の特定の患者に対する具体的用量レベルは、遺伝的体質、体重、全身の健康、食事、投与の時間および経路、他の薬物との併用、ならびに治療中の特定の状態およびその重症度を含む様々な因子に依存しうることは理解されるであろう。不眠症の治療のために、好ましくは就寝前に1回用量を投与する。
【0009】
選択される用量は、持続的睡眠までの潜時、入眠後の覚醒、総睡眠時間、睡眠効率、睡眠中の覚醒時間、または睡眠後の覚醒時間を含む、一つまたは複数の睡眠ポリグラフの睡眠変数における改善に関連していた平均血漿濃度を標的とすることにより決定することもできる。不眠症治療は時間枠が限られているため、有効な血漿濃度を達成する薬物製剤が望ましい。臨床上有効な薬物血漿濃度およびその薬物血漿濃度の持続時間は、任意の適当な製剤を用い、経口、口腔内、舌下、経粘膜、または腸内を含む任意の適当な投与経路により達成しうる。
【0010】
腸吸収および初回通過代謝の問題は、血漿中の薬物の有効レベル達成を困難にしうる。腸吸収および初回通過代謝の問題を回避するために、口腔で崩壊し、口腔粘膜から吸収される薬物剤形を用いることができる。
【0011】
不眠症治療において、例えば、可能なかぎり速やかに入眠を誘導するために、可能なかぎり早く治療上有効な範囲の薬物血漿濃度を有することが望ましい。加えて、入眠後の覚醒および睡眠持続時間などの他の睡眠パラメーターに対する有益な効果を維持するための血漿中薬物用量を、睡眠期間を通して維持することが望ましい。
【0012】
いくつかの態様において、不眠症の患者を、部分的または実質的に口腔粘膜で吸収されて、睡眠期間を通して維持されうる治療的血漿レベルを提供しうる、ドキセピン、薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の口腔崩壊製剤で治療することができる。いくつかの態様において、ドキセピン、薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の口腔崩壊製剤は、患者が服用すると、60分以内に治療上有効な血漿濃度を提供し、睡眠期間を通して治療上適切な濃度に維持されうる。いくつかの態様において、ドキセピン、薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の口腔崩壊製剤は、患者が服用すると、40分以内に治療上有効な血漿濃度を提供し、睡眠期間を通して治療上適切な濃度に維持されうる。いくつかの態様において、ドキセピン、薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の口腔崩壊製剤は、患者が服用すると、20分以内に治療上有効な血漿濃度を提供し、睡眠期間を通して治療上適切な濃度に維持されうる。いくつかの局面において、口腔粘膜から吸収されるドキセピン、薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物は、血漿中の薬物の治療的レベル以上への速やかな上昇を提供することができ、これはまだ治療的レベル以上に維持されてはいるが、低下し、次いで追加の薬物が腸から吸収されると上昇する。いくつかの局面において、実質的にすべてのドキセピンは口腔粘膜から吸収されて、血漿中の薬物の治療的レベル以上への速やかな上昇を提供することができ、これは睡眠期間を通して治療的レベル以上に維持される。
【0013】
同様に、いくつかの態様は製剤の製造法、ならびに製剤の使用法にも関する。いくつかの局面において、製剤は一つまたは複数の望ましい物理的性質を有し、好ましい機能的特性を有し、かつ/または低用量経口経粘膜ドキセピン剤形の効率的で経済的な製造を可能にする。
【0014】
経済的、効率的、強固、および好ましくは単純である−すなわち最低限の数の段階および/または賦形剤を必要とする製造法を有することが望ましいと考えられる。さらに、活性成分および賦形剤は、好ましくは、効率的な混合を確実にするための適当な流動特性、ならびに最終剤形の許容される含量の均質性、重量の均質性、効力、崩壊、溶解、硬度、および破砕性を有する。良好な流動特性は、鋳型の穴に材料を正確に容積測定して送り込むためにも有益でありうる。しかし、効率的混合および許容される含量の均質性は低用量剤形では達成が困難である。
【0015】
混合粒径粉末は、操作による振動および/または流動化のせいで分離し、最終剤形の薬物または活性薬学的成分(API)含量の均質性が低くなることがある。粒径が大きい賦形剤と混合した粒径が小さい活性物質は、典型的に、製剤工程中に分離または脱混合することになる。小さい粒径および低い流動性の問題は、通常は活性成分の単独または充填剤および/もしくは他の通常の賦形剤との組み合わせのいずれかでの造粒により、活性成分の粒径を大きくして対処することができる。
【0016】
したがって、本明細書に開示する発明の態様は、一つまたは複数の前述の考察に対処し、これを達成する。いくつかの態様は、驚くことに、この考察のいくつか、または多くを達成する。
【0017】
特に、本明細書に開示する態様は、低用量のドキセピン塩酸塩を含む経口経粘膜剤形、これらの剤形の製造法、ならびに製剤および剤形の使用法に関する。好ましくは、低用量のドキセピン塩酸塩は、本明細書に記載のとおり、不眠症治療のために都合よく用いうる、急速に崩壊する剤形として提供することができる。いくつかの局面において、製剤は改善された破砕性、圧縮、溶解、均質性、崩壊、嗜好性などの一つまたは複数を有する。また、いくつかの局面において、製剤は速やかな開始、より高くかつ/またはより速やかな血漿レベルなどの、少なくとも一つまたは複数を可能にしうる。いくつかの局面において、製剤は、他の製剤で見られる低用量ドキセピンの薬物動態特性をそれ以外は著しく変えることなく、より速やかな薬物作用(例えば、入眠)を引き起こしうる。
【0018】
いくつかの態様は、不眠症の治療法であって、患者に経口-粘膜低用量のドキセピン、その薬学的に許容される塩、またはドキセピン関連化合物を投与する段階を含む方法を提供する。投与した物質は、例えば、約0.01から約10ミリグラムの範囲の1日用量で送達することができる。いくつかの態様において、1日用量は、例えば、約0.5から約9ミリグラム、約1から約9ミリグラム、約1から約6ミリグラム、約1から約3ミリグラム、約2から約3ミリグラムなどの範囲でありうる。薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸塩を含む任意の塩でありうる。また、プロドラッグは任意のプロドラッグでありうる。
【0019】
いくつかの態様は、不眠症の治療であって、患者にドキセピン、その薬学的に許容される塩、またはドキセピン関連化合物を、少なくとも部分的には腸吸収および初回通過代謝を避けるために、経口粘膜から実質的に吸収されうる口腔崩壊剤形で投与する段階を含む治療に関する。例えば、いくつかの態様において、ドキセピン、または薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の約1%から99%の間、約5%から95%の間、または約10%から90%の間が口腔粘膜から吸収され、それにより腸吸収および初回通過代謝を避けることができる。また、いくつかの態様において、ドキセピン、または薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の80%よりも多くが口腔粘膜から吸収され、それにより腸吸収および初回通過代謝を避けることができる。いくつかの態様において、ドキセピン、または薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の60%よりも多くが口腔粘膜から吸収され、それにより腸吸収および初回通過代謝を避けることができる。いくつかの態様において、ドキセピン、または薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の40%よりも多くが口腔粘膜から吸収され、それにより腸吸収および初回通過代謝を避けることができる。いくつかの態様において、ドキセピン、または薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の20%よりも多くが口腔粘膜から吸収され、それにより腸吸収および初回通過代謝を避けることができる。いくつかの態様において、口腔粘膜から吸収されないドキセピンはこの薬物の通常の薬物動態に従い腸から吸収されうる。
【0020】
好ましい態様は、不眠症の治療法であって、患者にドキセピン、その薬学的に許容される塩、またはドキセピン関連化合物を、口腔崩壊製剤で投与する段階を含み、ここでドキセピンの血漿レベルが投与の60分以内に治療的レベルに達する方法を提供する。さらに、いくつかの態様において、治療上有効な血漿レベルはドキセピン、またはその薬学的に許容される塩の投与の40分以内に達成される。好ましい態様において、治療上有効な血漿レベルはドキセピン、またはその薬学的に許容される塩の投与の20分以内に達成される。
【0021】
好ましい態様は、入眠不眠症の治療法であって、患者にドキセピン、その薬学的に許容される塩、またはドキセピン関連化合物を、口腔崩壊製剤で投与する段階を含み、ここでドキセピンの血漿レベルが投与の60分以内に治療的レベルに達する方法を提供する。さらに、いくつかの態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン、またはその薬学的に許容される塩の投与の40分以内に達成される。好ましい態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン、またはその薬学的に許容される塩の投与の20分以内に達成される。
【0022】
いくつかの局面において、約6mgのドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の口腔崩壊製剤は実質的に5分以内に溶解し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は60分以内に達成されうる。本明細書において用いられる「実質的に溶解」とは、製剤の約1%から約99%、1%から約75%、または1%から約50%が規定の時間枠内で溶解しうることを意味しうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に5分以内に溶解し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は40分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に5分以内に溶解し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は20分以内に達成されうる。
【0023】
いくつかの局面において、約3mgドキセピン、その薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の口腔崩壊製剤は実質的に5分以内に溶解し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は60分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に5分以内に溶解し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は40分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に5分以内に溶解し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は20分以内に達成されうる。
【0024】
いくつかの局面において、約1mgのドキセピン、その薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の口腔崩壊製剤は実質的に5分以内に溶解し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は60分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に5分以内に溶解し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は40分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に5分以内に溶解し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は20分以内に達成されうる。
【0025】
いくつかの局面において、約6mgのドキセピン、その薬学的に許容される塩の口腔崩壊製剤は実質的に60秒以内に崩壊し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は60分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に60秒以内に崩壊し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は40分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に60秒以内に崩壊し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は20分以内に達成されうる。
【0026】
いくつかの局面において、約3mgのドキセピン、その薬学的に許容される塩の口腔崩壊製剤は実質的に60秒以内に崩壊し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は60分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に60秒以内に崩壊し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は40分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に60秒以内に崩壊し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は20分以内に達成されうる。
【0027】
いくつかの局面において、約1mgのドキセピン、その薬学的に許容される塩の口腔崩壊製剤は実質的に60秒以内に崩壊し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は60分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に60秒以内に崩壊し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は40分以内に達成されうる。いくつかの局面において、口腔崩壊製剤は実質的に60秒以内に崩壊し、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は20分以内に達成されうる。
【0028】
いくつかの局面において、ドキセピン、またはその薬学的に許容される塩は、ドキセピンの約1%から99%の間、または約5%から95%の間、または約10%から90%の間が口腔粘膜から吸収されるように、急速に口腔崩壊する剤形に製剤することができる。いくつかの態様において、ドキセピンまたはその薬学的に許容される塩は、ドキセピンの70%よりも多くが口腔粘膜から吸収されるように、急速に口腔崩壊する剤形に製剤することができる。いくつかの態様において、ドキセピンまたはその薬学的に許容される塩は、ドキセピンの50%よりも多くが口腔粘膜から吸収されるように、急速に口腔崩壊する剤形に製剤することができる。いくつかの態様において、ドキセピンまたはその薬学的に許容される塩は、ドキセピンの30%よりも多くが口腔粘膜から吸収されるように、急速口腔崩壊剤形に製剤することができる。いくつかの態様において、ドキセピンまたはその薬学的に許容される塩は、ドキセピンの10%よりも多くが口腔粘膜から吸収されるように、急速口腔崩壊剤形に製剤することができる。
【0029】
いくつかの局面において、不眠症は慢性不眠症または非慢性不眠症でありうる。慢性(例えば、3〜4週間よりも長い)または非慢性不眠症のために、患者は入眠、睡眠維持(夜間の睡眠の覚醒期間による中断)、睡眠持続時間、睡眠効率、早期の早朝の覚醒、またはその組み合わせにおける困難を患っていることもある。また、不眠症は、例えば、他の薬剤の併用が原因であることもある。非慢性不眠症は、例えば、短期不眠症または一過性不眠症でありうる。慢性または非慢性不眠症は原発性不眠症または別の状態、例えば、うつもしくは慢性疲労症候群などの疾患の続発する不眠症でありうる。いくつかの局面において、患者は疾患の一成分である不眠症を患っていないものでありえ、またはそれ以外は健康である患者を治療することもできる。前述のとおり、慢性または非慢性不眠症は原発性不眠症、すなわち別の精神障害、全身の医学的状態、または物質が原因ではないものでありうる。多くの場合、そのような状態は慢性不眠症に関連しており、診断可能なDSM-IV障害、不安もしくはうつなどの障害、または生理的睡眠-覚醒システムの障害が原因の不眠症が含まれうるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの局面において、不眠症は非慢性、または持続時間の短い(例えば、3〜4週間未満)ものでありうる。そのような不眠症の原因の例は外因性または内因性であってもよく、不適切睡眠衛生、高地不眠症、または適応性睡眠障害(例えば、死別)などの睡眠障害国際分類(ICSD)によって定義される環境性睡眠障害が含まれるが、それらに限定されるわけではない。また、短期不眠症は交替勤務睡眠障害などの障害によって引き起こされることもある。
【0030】
また、いくつかの態様は、ドキセピン、その薬学的に許容される塩、および/または他のドキセピン関連化合物を含む組成物にも関する。好ましい態様において、ドキセピンまたはその薬学的に許容される塩のそのような組成物は、約0.01から約10ミリグラムの範囲の1日用量および/または単位用量で提供することができる。
【0031】
ドキセピンの薬学的に許容される塩はハロゲン化水素酸塩でありうる。例えば、ドキセピンの薬学的に許容される塩は塩酸塩でありうる。
【0032】
本明細書に開示する発明の態様は、口腔内、舌下、および急速融解低用量ドキセピン製剤に関する。同様に、いくつかの態様は製剤の製造法、ならびに製剤の使用法にも関する。いくつかの局面において、製剤は一つまたは複数の望ましい物理的性質を有し、好ましい機能的特性を有し、かつ/または低用量ドキセピン剤形の効率的で経済的な製造を可能にする。
【0033】
低用量製剤の製造は、高用量製剤にはない技術的および経済的目標を提示しうる。さらに、現在市販されているドキセピン製剤は睡眠障害の独特の局面を考慮に入れていない。
【0034】
本発明の態様はドキセピンおよびドキセピン化合物の口腔崩壊低用量製剤を提供し、また口腔内で崩壊する低用量ドキセピン剤形の製剤および製造に関連する目標および問題に取り組み、これらを克服する。加えて、本発明の態様は、ドキセピン、その薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物は、実質的に口腔粘膜から吸収されて、治療60分以内にドキセピン濃度の治療上有効な血漿レベルとなりうることを提供する。
【0035】
本明細書に開示するさらなる態様は、例えば、大規模のものを含む、ドキセピンの低用量剤形の製剤法に関する。好ましい態様において、この製造法は薬物含量の均質性を達成し、低用量製剤を困らせうる分離の問題を克服することができ、またこれを経済的かつ効率的様式で行うことができる。本発明のいくつかの態様は、直接圧縮することができ、許容される含量均質性、および硬度、および破砕性を有する、高収率の口腔内、舌下、および/または急速融解低用量ドキセピン剤形を生成する、低用量ドキセピン製剤に関する。
【0036】
本明細書に開示する発明はいかなる特定の製剤にも限定されることを意図しないが、好ましい態様において、急速崩壊ドキセピンは口腔崩壊錠剤(ODT)である。好ましい態様において、ODTはドキセピンHClで製剤する。本発明は所与の剤形のドキセピンのいかなる特定の用量にも限定されることを意図しない。しかし、好ましい態様において、ODT 1個あたりのドキセピンの用量は1mgから9mgの間の範囲である。さらに、より好ましい態様において、ODT 1個あたりのドキセピンの用量は1mgまたは3mgまたは6mgである。
【0037】
他の態様において、本発明は、入眠を治療するための治療効果を速やかに発揮するドキセピンの急速崩壊経口経粘膜製剤、例えば、口腔内、舌下、およびODT製剤の投与法にも関する。本発明はいかなる特定の製剤にも限定されることを意図しないが、好ましい態様において、急速崩壊製剤はODT(Orally Disintegrating Tablet)である。
【0038】
いくつかの態様は、約0.1から約9mgのドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物、および約15重量%から約99.9重量%の口腔崩壊製剤用の少なくとも一つの急速溶解送達系または少なくとも一つの直接圧縮可能な賦形剤を含みうる薬学的組成物に関する。いくつかの態様において、口腔崩壊組成物は口腔内で実質的に崩壊し、部分的に溶解する。
【0039】
いくつかの態様において、薬学的組成物は約0.1から約9mgのドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物、および約50重量%から約90重量%のPharmaburst、または他の類似の特別の賦形剤を含みうる。PharmaburstはSPI Pharmaから供給されるODT適用のために特に設計された特別の賦形剤である。組成物はドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を約1mgから約9mgの量でさらに含むことができる。例えば、ドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物は約3mgの量で提供することができる。もう一つの態様において、ドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物は約6mgの量で提供することができる。好ましい態様において、薬学的組成物は約60重量%から約85重量%のPharmaburstを含むことができる。より好ましい態様において、薬学的組成物は約70重量%から約80重量%のPharmaburstを含むことができる。いくつかの態様において、薬学的組成物中のPharmaburstの量は50重量%、60重量%、70重量%、75重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%でありうる。したがって、一例において、薬学的組成物は約83重量%の量のPharmaburst、および約6mgの量のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を含むことができる。もう一つの態様において、薬学的組成物は約83重量%の量のPharmaburst、および約3mgの量のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を含むことができる。さらにもう一つの態様において、薬学的組成物は約83重量%の量のPharmaburst、および約1mgの量のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を含むことができる。いくつかの態様において、薬学的組成物は錠剤、トローチ剤、チューインガム、フィルム、カプセル剤、ゲルキャップ、カプレット、ペレット、またはビーズでありうる。
【0040】
いくつかの態様において、本明細書に開示する薬学的組成物は、約0.1から約9mgのドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物、および約15重量%から約30重量%のRxCIPIENTS(商標) FM1000を含む。RxCIPIENTS(商標) FM1000はHuberから供給されるODT適用のために特に設計されたケイ酸カルシウムからなる特別の賦形剤である。好ましい態様において、薬学的組成物は約18重量%から約27重量%のRxCIPIENTS(商標) FM1000を含む。より好ましい態様において、薬学的組成物は約20重量%から約25重量%のRxCIPIENTS(商標) FM1000を含む。一つの態様において、薬学的組成物は約20〜30重量%の量のRxCIPIENTS(商標) FM1000、および約1mgの量のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を含むことができる。もう一つの態様において、薬学的組成物は約20〜30重量%の量のRxCIPIENTS(商標) FM1000、および約6mgの量のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を含むことができる。さらにもう一つの態様において、薬学的組成物は約20〜30重量%の量のRxCIPIENTS(商標) FM1000、および約3mgの量のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を含むことができる。いくつかの態様において、RxCIPIENTS(商標) FM1000はマンニトール、結晶セルロース、リン酸2カルシウムなどの別の賦形剤との組み合わせで用いる。いくつかの態様において、薬学的組成物は錠剤、トローチ剤、チューインガム、フィルム、カプセル剤、ゲルキャップ、カプレット、ペレット、またはビーズでありうる。
【0041】
いくつかの態様において、本明細書に開示する薬学的組成物は、約0.1から約9mgのドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物、および約25重量%から約60重量%のF-Melt(商標) Type MまたはF-Melt(商標) Type Cを含むことができる。F-Melt(商標)はFuji Chemicals of Japanから供給されるODT適用のために特に設計された特別の賦形剤である。好ましい態様において、薬学的組成物は約30重量%から約55重量%のF-Melt(商標)を含むことができる。より好ましい態様において、薬学的組成物は約40重量%から約50重量%のF-Melt(商標)を含むことができる。一つの態様において、薬学的組成物中のF-Melt(商標)の量は約58重量%でありうる。したがって、一つの態様において、薬学的組成物は約58重量%の量のF-Melt(商標)、および約6mgの量のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を含むことができる。もう一つの態様において、薬学的組成物は約58重量%の量のF-Melt(商標)、および約3mgの量のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を含むことができる。さらにもう一つの態様において、薬学的組成物は約58重量%の量のF-Melt(商標)、および約1mgの量のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を含むことができる。いくつかの態様において、薬学的組成物は錠剤、チューインガム、トローチ剤、フィルム、カプセル剤、ゲルキャップ、カプレット、ペレット、またはビーズでありうる。
【0042】
いくつかの態様において、組成物は錠剤、トローチ剤、チューインガム、カプセル剤、ゲルキャップ、カプレット、ペレット、ビーズなどの形状でありえ、ここで組成物は約50mgから約300mgの総質量を有しうる。好ましい態様において、組成物は約75mgから約100mgの質量を有しうる。いくつかの態様において、組成物は50mg、75mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、200mg、250mg、または300mgの総質量を有しうる。
【0043】
いくつかの態様において、薬学的組成物は約0.1から約9mgのドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物、および少なくとも一つの賦形剤を含むことができる。賦形剤は、例えば、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、F-Melt(商標)、ケイ化結晶セルロース、結晶セルロース、乳糖、圧縮性の糖、キシリトール、ソルビトール、Perlitol 200 SDなどのマンニトール、アルファ化デンプン、マルトデキストリン、第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウムDC、ケイ酸カルシウムなどから選択することができるが、それらに限定されるわけではない。
【0044】
いくつかの態様において、薬学的組成物は約0.1から約9mgのドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物、およびPerlitol 200 SDで構成されうる。いくつかの局面において、Perlitol 200 SDは約20重量%から約85重量%の量で提供することができる。好ましい局面において、Perlitol 200 SDは約15重量%から約45重量%の量で提供することができる。さらに好ましい局面においては、45重量%から約75重量%である。
【0045】
薬学的組成物は、追加の賦形剤、例えば、ケイ化結晶セルロース、結晶セルロース、乳糖、圧縮性の糖、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、アルファ化デンプン、マルトデキストリン、第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウムDCなどをさらに含むことができる。
【0046】
また、いくつかの局面において、薬剤はグリダント(glidant)を含むこともできる。例えば、グリダントはコロイド状二酸化ケイ素などでありうる。いくつかの局面において、コロイド状二酸化ケイ素は約0.1から約6.0重量%の量で提供することができる。好ましい態様において、コロイド状二酸化ケイ素は約0.1から約1.5重量%の量で提供することができる。
【0047】
いくつかの局面において、組成物は滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ナトリウムステアリルフマラート、ステアリン酸、硬化植物油、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコールなどを含むことができる。例えば、滑沢剤はナトリウムステアリルフマラートでありうる。いくつかの態様において、ナトリウムステアリルフマラートは約0.25から約2.0重量%の量で提供することができる。
【0048】
また、いくつかの局面において、組成物は崩壊剤または補助結合剤を含むこともできる。崩壊剤は、いくつかの態様において、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン、アルギン酸、イオン交換樹脂などでありうる。例えば、いくつかの態様において、薬学的組成物はクロスポビドンXL、Ac-Di-Sol」(クロスカルメロースナトリウム)または「Explotab」(デンプングリコール酸ナトリウム)などの「超崩壊剤」を約1重量%から約10重量%の量で含むことができる。加えて、いくつかの態様において、補助結合剤はヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどでありうる。
【0049】
追加の態様において、本明細書に開示する製剤は人工または天然の甘味料、香味料、調味料および着色料を含むこともできる。例えば、甘味料および/または香味料は薬物の味をマスクするために含むことができる。例示的甘味料には、例えば、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、サイクラミン酸ナトリウム、アセスルファムKスクラロースなどが含まれる。いくつかの態様において、選択した香味を補足するために、一つまたは複数の着色料を用いることもできる(例えば、サクランボ用に桃色など)。
【0050】
本明細書に開示する組成物は、錠剤、チューインガム、トローチ剤、フィルム、カプセル剤、ゲルキャップ、カプレット、ペレット、ビーズなどでありうる。ドキセピンは約1から約2mgの量で提供することができる。一つの態様において、ドキセピンは約1mgの量で提供することができる。もう一つの態様において、ドキセピンは約3から約4mgの量で提供する。もう一つの局面において、ドキセピンは約3mgの量で提供することができる。もう一つの態様において、ドキセピンは約6から約7mgの量で提供することができる。本態様の一つの局面において、ドキセピンは約6mgの量で提供することができる。本態様のさらにもう一つの局面において、ドキセピンは約8から約9mgの量で提供することができる。
【0051】
本発明の態様は、少なくとも2Kpの硬度値を有するドキセピン約0.5から約9mgを含む組成物も提供する。他の態様において、組成物は少なくとも4Kp、または少なくとも6Kp以上の硬度値を有する。いくつかの態様は、1%以下の破砕性値を有しうるドキセピン約0.5から約9mgで構成されうる錠剤を提供することができる。他の態様において、錠剤は約0.75%、約0.5%または約0.25%の破砕性値を有しうる。
【0052】
本発明の態様は、USPプロトコルにより1分未満の崩壊時間を有しうるドキセピン約0.5から約9mgで構成されうる薬学的組成物も提供する。他の態様において、組成物は30秒未満、20秒未満、10秒未満または6秒未満の崩壊時間を有しうる。
【0053】
もう一つの態様は、0.1N HClまたは酵素を含まない米国薬局方(USP)記載の人工胃液中でUSP装置Iを100rpmで(または装置IIを50rpmで)用いて30分以内にドキセピンの少なくとも85パーセントが放出される、ドキセピン約0.1から約9mgを含む薬学的組成物を提供する。他の態様において、組成物は15分で少なくとも85パーセントの放出率、10分で少なくとも85パーセントの放出率、5分で少なくとも85パーセントの放出率、30分で少なくとも90パーセントの放出率、30分で少なくとも95パーセントの放出率を有する。本態様の一つの局面において、組成物はpH4.5の緩衝液中で米国薬局方(USP)装置Iを100rpmで(または装置IIを50rpmで)用いて30分以内にドキセピンの少なくとも85パーセントが放出され、かつ/または酵素を含まないUSP記載の人工腸液のpH6.8の緩衝液中で米国薬局方(USP)装置Iを100rpmで(または装置IIを50rpmで)用いて30分以内にドキセピンの少なくとも85パーセントが放出される。
【0054】
本発明のいくつかの態様は、pH4.5の緩衝液中で米国薬局方(USP)装置Iを100rpmで(または装置IIを50rpmで)用いて30分以内にドキセピンの少なくとも85パーセントが放出される、ドキセピン約0.5から約9mgを含む薬学的組成物を提供する。他の態様において、組成物は15分で少なくとも85パーセントの放出率、10分で少なくとも85パーセントの放出率、5分で少なくとも85パーセントの放出率、30分で少なくとも90パーセントの放出率、または30分で少なくとも95パーセントの放出率を有する。
【0055】
もう一つの態様は、pH6.8の緩衝液または酵素を含まない米国薬局方(USP)記載の人工腸液中でUSP装置Iを100rpmで(または装置IIを50rpmで)用いて30分以内にドキセピンの少なくとも85パーセントが放出される、ドキセピン約0.5から約9mgを含む薬学的組成物を提供する。
【0056】
本発明の態様は、以下の特徴を二つ以上有するドキセピン約0.5から約9mgを含む薬学的組成物も提供する:少なくとも2Kpの硬度値、1%以下の破砕性値、USPプロトコルにより1分未満の崩壊時間、0.1N HClまたは酵素を含まないUSP記載の人工胃液中で米国薬局方(USP)装置Iを100rpmで(または装置IIを50rpmで)用いて30分以内にドキセピンの少なくとも85パーセント放出、pH4.5の緩衝液中で米国薬局方(USP)装置Iを100rpmで(または装置IIを50rpmで)用いて30分以内にドキセピンの少なくとも85パーセント放出、およびpH6.8の緩衝液または酵素を含まない米国薬局方(USP)記載の人工腸液中でUSP装置Iを100rpmで(または装置IIを50rpmで)用いて30分以内にドキセピンの少なくとも85パーセント放出。
【0057】
もう一つの態様は、ラベル記載の約85%から115%の間の含量均質性値を有し、それぞれドキセピン約0.5から約9mgを含む、単位用量剤形のバッチを提供する。他の態様において、単位用量剤形のバッチはラベル記載の約90%から110%の間、またはラベル記載の約95%から105%の間の含量均質性値を有する。
【0058】
いくつかの態様において、単位用量剤形のバッチは約100,000から約10,000,000単位、約500,000から約5,000,000単位、約1,000,000から約4,000,000単位、または約3,000,000から約4,000,000単位を含む。単位は錠剤、チューインガム、トローチ剤、フィルム、カプセル剤、カプレット、丸剤、ゲルキャップ、ペレット、ビーズなどの形状でありうる。
【0059】
本発明の態様は、5%未満の含量均質性パーセント相対標準偏差を有し、それぞれドキセピン約0.5から約9mgを含む、単位用量剤形のバッチも提供する。他の態様において、単位用量剤形のバッチは4%未満、3%未満、2%未満または1%未満の含量均質性パーセント相対標準偏差を有する。
【0060】
本発明の態様は、複数のドキセピン単位用量剤形の調製法も提供する。この方法は、例えば、それぞれ約0.1mgから9mgのドキセピンを含む複数のドキセピン錠剤を得るための量のドキセピンを提供する段階;一つまたは複数の賦形剤を提供する段階;ドキセピンと賦形剤とを複数のドキセピン剤形がラベル記載の約85%から115%の間の含量均質性値または5%未満の含量均質性パーセント相対標準偏差の少なくとも一つを含むように混合する段階を含みうる。他の態様において、複数の剤形はラベル記載の約90%から110%の間、またはラベル記載の約95%から105%の間の含量均質性値を含む。他の態様において、複数の剤形は5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の含量均質性パーセント相対標準偏差を含む。いくつかの態様において、少なくとも一つの賦形剤は、例えば、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、F-Melt(商標)などの急速溶解送達系でありうる。また、いくつかの局面において、第二の賦形剤は結晶セルロース、乳糖、圧縮性の糖、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、アルファ化デンプン、マルトデキストリン、第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウムDC、ケイ酸カルシウムなどからなる群より選択されうる。
【0061】
いくつかの態様において、本発明は、ドキセピンがRxCIPIENTS(商標) FM1000と混合される、複数のドキセピン単位用量剤形の調製法を提供することができる。好ましい態様において、RxCIPIENTS(商標) FM1000は約15重量%から30重量%の間の量で提供される。複数の剤形は約100,000から約10,000,000単位、約500,000から約5,000,000単位、約1,000,000から約4,000,000単位、または約3,000,000から約4,000,000単位を含みうる。
【0062】
いくつかの態様において、本発明は、ドキセピンがPharmaburstと混合される、複数のドキセピン単位用量剤形の調製法を提供することができる。好ましい態様において、Pharmaburstは約50から約90重量%の間の量で提供される。
【0063】
いくつかの態様において、本発明は、ドキセピンがF-Melt(商標)と混合される、複数のドキセピン単位用量剤形の調製法を提供することができる。好ましい態様において、F-Melt(商標)は約25重量%から約65重量%の間の量で提供されうる。複数の剤形は約100,000から約10,000,000単位、約500,000から約5,000,000単位、約1,000,000から約4,000,000単位、または約3,000,000から約4,000,000単位を含みうる。
【0064】
本発明のもう一つの態様は、ドキセピン塩酸塩約9mgと同等の量のドキセピンまたはその薬学的に許容される塩;一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤;および任意にカプセルまたはコーティングで構成されうる、薬学的単位用量剤形を目的とする。いくつかの態様において、賦形剤および任意のカプセルまたはコーティングは、少なくとも外部では固体でありかつ70kgのヒトに投与した後に剤形が約60分以下の時間枠内でドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供しうるような溶解特性および生物学的利用能特性を有する急速口腔崩壊単位用量剤形を提供するように、選択することができる。剤形は錠剤、チューインガム、トローチ剤、フィルム、カプセル剤、丸剤、カプレット、ゲルキャップ、ペレット、ビーズ、または糖衣錠でありうる。一つの態様において、剤形は口腔崩壊錠剤でありうる。もう一つの態様において、剤形はカプセル剤でありうる。もう一つの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠は約40分未満でありうる。さらにもう一つの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠は約20分未満でありうる。
【0065】
本発明のもう一つの態様は、ドキセピン塩酸塩約6mgと同等の量のドキセピンまたはその薬学的に許容される塩;一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤;および任意にカプセルまたはコーティングで構成されうる、薬学的単位用量剤形を目的とする。いくつかの態様において、賦形剤および任意のカプセルまたはコーティングは、少なくとも外部では固体でありえかつ70kgのヒトに投与した後に剤形が約60分以下の時間枠内でドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供しうるような溶解特性および生物学的利用能特性を有しうる急速口腔崩壊単位用量剤形を提供するように、選択することができる。剤形は錠剤、チューインガム、トローチ剤、フィルム、カプセル剤、丸剤、カプレット、ゲルキャップ、ペレット、ビーズ、または糖衣錠でありうる。一つの態様において、剤形は口腔崩壊錠剤でありうる。もう一つの態様において、剤形はカプセル剤でありうる。もう一つの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠は約40分未満でありうる。さらにもう一つの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠は約20分未満でありうる。
【0066】
本発明のもう一つの態様は、ドキセピン塩酸塩約3mgと同等の量のドキセピンまたはその薬学的に許容される塩;一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤;および任意にカプセルまたはコーティングで構成されうる、薬学的単位用量剤形を目的とする。いくつかの態様において、賦形剤および任意のカプセルまたはコーティングは、少なくとも外部では固体でありかつ70kgのヒトに投与した後に剤形が約60分以下の時間枠内でドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供しうるような溶解特性および生物学的利用能特性を有する急速口腔崩壊単位用量剤形を提供するように、選択することができる。剤形は錠剤、チューインガム、トローチ剤、フィルム、カプセル剤、丸剤、カプレット、ゲルキャップ、ペレット、ビーズ、または糖衣錠でありうる。一つの態様において、剤形は口腔崩壊錠剤でありうる。もう一つの態様において、剤形はカプセル剤でありうる。もう一つの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠は約40分未満でありうる。さらにもう一つの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠は約20分未満でありうる。
【0067】
本発明のもう一つの態様は、ドキセピン塩酸塩約1mgと同様の量のドキセピンまたはその薬学的に許容される塩;一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤;および任意にカプセルまたはコーティングで構成されうる、薬学的単位用量剤形を目的とする。いくつかの態様において、賦形剤および任意のカプセルまたはコーティングは、少なくとも外部では固体でありかつ70kgのヒトに投与した後に剤形が約60分以下の時間枠内でドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供しうるような溶解特性および生物学的利用能特性を有する急速口腔崩壊単位用量剤形を提供するように、選択することができる。剤形は錠剤、チューインガム、トローチ剤、フィルム、カプセル剤、丸剤、カプレット、ゲルキャップ、ペレット、ビーズ、または糖衣錠でありうる。一つの態様において、剤形は口腔崩壊錠剤でありうる。もう一つの態様において、剤形はトローチ剤でありうる。もう一つの態様において、剤形はフィルムでありうる。もう一つの態様において、剤形はチューインガムでありうる。もう一つの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠は約40分未満でありうる。さらにもう一つの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠は約20分未満でありうる。
【0068】
いくつかの態様は、不眠症を有する患者において入眠までの時間を減らすための口腔崩壊可能な薬剤の調製における、ドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物の使用を含む。いくつかの局面において、口腔崩壊可能な薬剤は、患者の口中で水を加えることなく60秒未満で崩壊するように製剤することができる。好ましい局面において、口腔崩壊可能な薬剤は、患者の口中で水を加えることなく30秒未満で崩壊するように製剤することができる。いくつかの態様において、口腔崩壊可能な薬剤は、U.S.P.に従って試験した場合に、約2%未満の破砕性を有しうる。好ましい態様において、口腔崩壊可能な薬剤は、U.S.P.に従って試験した場合に、約0.8%の破砕性を有しうる。さらに、いくつかの態様において、口腔崩壊可能な薬剤は約15ニュートン以上の硬度を有しうる。好ましい態様において、口腔崩壊可能な薬剤は約20ニュートンから約60ニュートンの範囲の硬度値を有しうる。さらに好ましい態様において、口腔崩壊可能な薬剤は約30ニュートンの硬度を有しうる。
【0069】
いくつかの態様は、ドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物および実質的にドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物を囲む保護物質の複数の微粒子を含みうる、ドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物の使用を含む。例えば、いくつかの局面において、微粒子は本質的に約75ミクロンから約600ミクロンの粒子で構成されうる。さらに、いくつかの態様において、微粒子は約0.01から約75重量%の口腔崩壊可能な薬剤を含みうる。加えて、口腔崩壊可能な薬剤は非直接圧縮充填剤および滑沢剤のマトリックスをさらに含みうる。例えば、非直接圧縮充填剤は非直接圧縮糖または非直接圧縮糖アルコールでありうる。いくつかの態様において、非直接圧縮充填剤は約90ミクロン以下の平均粒径を有しうる。また、いくつかの態様において、口腔崩壊薬剤は発泡剤をさらに含みうる。
【0070】
いくつかの態様において、ドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物の口腔崩壊剤形は、不眠症の治療中の患者における入眠を軽減する際に用いるためのものでありえ、ここで口腔崩壊剤形は、患者の口中で水を摂取することなく約60秒未満で崩壊するように製剤することができ;かつ口腔崩壊剤形は口腔崩壊しない経口剤形よりも速いドキセピンの血漿濃度達成に関連しうる。いくつかの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は60分未満で達成しうる。いくつかの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は40分未満で達成しうる。いくつかの態様において、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度は20分未満で達成しうる。いくつかの局面において、口腔崩壊剤形は、患者の口中で約5秒から約30秒の範囲で崩壊するように製剤することができる。いくつかの態様において、口腔崩壊薬剤は、U.S.P.試験を行った場合に、約2%未満の破砕性を有しうる。好ましい態様において、口腔崩壊薬剤は、U.S.P.試験を行った場合に、約0.8%の破砕性を有する。さらに、いくつかの態様において、口腔崩壊薬剤は約20ニュートン以上の硬度を有しうる。好ましい態様において、口腔崩壊薬剤は約20ニュートンから約60ニュートンの範囲の硬度値を有しうる。さらに好ましい態様において、口腔崩壊薬剤は約30ニュートンの硬度を有しうる。
【0071】
いくつかの態様において、口腔崩壊剤形は発泡剤をさらに含みうる。いくつかの局面において、発泡剤は約5cm3から約30cm3の体積を有しうる発生ガスを生じる。いくつかの態様において、発泡剤は、それによりガスを発生する酸供給源および炭酸塩供給源を含むことができるが、それらに限定されるわけではない。ガスは二酸化炭素または酸素でありうる。
【0072】
もう一つの態様は、不眠症の治療法であって、そのような治療を必要としている個人を特定する段階、および本明細書に開示の組成物のいずれかを個人に投与する段階を含む方法を提供する。
【0073】
さらにもう一つの態様は、睡眠維持を増強する方法であって、そのような増強を必要としている個人を特定する段階、および本明細書に開示の組成物のいずれかを個人に投与する段階を含む方法を提供する。
【0074】
いくつかの態様は、不眠症の治療法であって、通常の睡眠補助物質(sleep aid)の製剤で治療した患者を提供する段階、および患者をドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物の急速崩壊剤形で、入眠までの時間が減りうるように治療する段階を含みうる方法に関する。
【0075】
いくつかの態様は、不眠症の治療法であって、通常の睡眠補助物質の製剤で治療した患者を提供する段階、患者をドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物の急速崩壊製剤で、睡眠持続時間が8時間目まで維持されうるような条件下で治療する段階を含みうる方法に関する。
【0076】
いくつかの態様は、不眠症の治療法であって、通常の睡眠補助物質の製剤で治療した患者を提供する段階、および患者をドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物の急速崩壊製剤で、入眠後の覚醒が減少する条件下で治療する段階を含みうる方法に関する。
【0077】
いくつかの態様は、不眠症の治療法であって、患者をドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物の急速崩壊製剤で、睡眠持続時間が8時間目まで維持されうるような条件下で治療する段階から構成されうる方法に関する。
【0078】
いくつかの態様は、不眠症の治療法であって、患者をドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物の急速崩壊製剤で、入眠後の覚醒が減少しうる条件下で治療する段階から構成されうる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】血漿中の2時間にわたるドキセピンの吸収を模擬するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
発明の詳細な説明
本発明の態様は、一般には、新しく、驚くほど有効なドキセピン製剤、および例えば不眠症の治療における使用を含む、ドキセピンの低用量剤形の使用法に関する。例えば、いくつかの好ましい態様は、口腔内、舌下および急速融解ドキセピン製剤、ならびにその使用法に関する。また、本発明のいくつかの態様は、ドキセピン、その薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物の低用量剤形の新規かつ経済的な製造法に関する。
【0081】
睡眠障害を治療するためのドキセピン、特に低用量ドキセピンの使用は、投与した薬物の血流に入る能力によって行いうることは最近になって認識されたばかりである。ドキセピンを経口(例えば、錠剤およびカプセル剤)で服用して嚥下すると、薬物の大部分は血流に入ることができる前に肝に直接輸送される。その結果、薬物の一部は血流または体内の意図する部位に到達する前に肝で代謝される。さらに、嚥下したドキセピンは胃腸管でも分解されうる。したがって、初めて本明細書において、初回通過肝効果および胃における分解効果を回避するために、睡眠のためにドキセピンを処方することが好ましい可能性があることが認められた。したがって、いくつかの態様は、より多くの薬物が肝で代謝されるか、または胃で分解される前に血流に取り込まれるように、経口、舌下、口腔内投与することができるドキセピン製剤に関する。
【0082】
ドキセピンはうつまたは不安の治療用に、1日用量75mgから300mgで現在認可されている三環系化合物である。ドキセピンはSINEQUAN(登録商標)なる商品名およびジェネリック型で市販されており、米国では一般に10、25、50、75、100および150mg用量のカプセル型、ならびに10mg/mLの濃縮液型で薬局から入手することができる。カプセル製剤はドキセピンHClをトウモロコシデンプンおよびステアリン酸マグネシウム/ラウリル硫酸ナトリウムと共に含む。カプセルの殻はゼラチン、ラウリル硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウムおよび着色料も含むことができる。
【0083】
不眠症治療のための低用量ドキセピンの使用は米国特許第5,502,047号および第6,211,229号に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。前述のとおり、多くの個人は現在不眠症などの睡眠障害を患っている。そのような個人を治療するための改善された組成物および方法が必要とされている。
【0084】
化合物
ドキセピン:
ドキセピンHClはうつおよび不安の治療用に、現在認可されており、入手可能な三環系化合物である。ドキセピンは下記の構造を有する。

【0085】
本明細書に開示するすべての化合物について、特に記載がないかぎり、炭素-炭素二重結合が示されている場合、シスおよびトランス両方の立体異性体、ならびにその混合物が含まれる。
【0086】
ドキセピンは下記のとおりに示すことができる。

【0087】
ドキセピンはジベンゾキセピン三環系化合物として公知の精神治療薬のクラスに属し、うつおよび不安を治療するための抗うつ薬として用いるために現在認可され、処方されている。ドキセピンは十分に確立された安全特性を有し、35年以上にわたって処方されている。
【0088】
本明細書に記載の組成物および方法において用いるためのドキセピンは、任意の適当な供給源から入手するか、または任意の適当な方法により調製しうることが企図される。例えば、ドキセピンHClはPlantex Ltd. (DMF No. 3230)から入手可能である。Biopharmaceutic Classification Systemにおいて、USP記載のドキセピンHClは高い溶解性と高い浸透性を有するクラス1化合物に指定されている(Wu-Benet, 2005)。Plantexが供給するUSP記載のドキセピンHClは、Air Jet Sieve法で測定して、80%以上が38ミクロンよりも小さく、90%以上が125ミクロンよりも小さいという粒径の規格を有する。また、ドキセピンは米国特許第3,438,981号、米国特許第3,420,851号、および米国特許第3,420,851号に記載の方法に従って調製することができ、この開示はすべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に記載の態様の多くは「ドキセピン」について具体的に言及しているが、例えば、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、代謝産物、投与後に生成されるドキセピンのインサイチュー塩、および多形や水和物を含む固体型を含む、他のドキセピン関連化合物も用いうることに留意し、理解すべきである。
【0089】
代謝産物:
加えて、ドキセピン代謝産物を調製し、用いることができる。例示のために、ドキセピンの代謝産物のいくつかの例には、ドキセピン、ヒドロキシドキセピン、ヒドロキシル-N-ドキセピン、ドキセピンN-オキシド、N-アセチル-N-ドキセピン、N-デスメチル-N-ホルミルドキセピン、4級アンモニウム連結グルクロニド、2-O-グルクロニルドキセピン、ジドキセピン、3-O-グルクロニルドキセピン、またはN-アセチルジドキセピンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ドキセピンの代謝産物は、ドキセピンについて前述した方法を含む、任意の適当な方法により入手または調製することができる。
【0090】
ドキセピンは下記の構造を有する。

【0091】
ドキセピンは法医学上の標準物質として市販されている。例えば、Cambridge Isotope Laboratories, Inc. (50 Frontage Road, Andover, MA)から入手可能である。本明細書に記載の方法において用いるためのドキセピンは、任意の適当な方法により調製することができる。例えば、ドキセピンは臭化3-メチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウム臭化水素酸塩および6,11-ジヒドロジベンズ(b,e)オキセピン-11-オンから米国特許第3,509,175号に教示される方法に従って調製することができ、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。もう一つの例として、ドキセピンは米国特許第5,332,661号に教示されるとおりドキセピン塩酸塩からのものでありえ、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0092】
ヒドロキシドキセピンは下記の構造を有する。

【0093】
2-ヒドロキシドキセピンはShu et al. (Drug Metabolism and Disposition (1990) 18:735-741)によって教示されるものを含む、任意の適当な方法によって調製することができ、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0094】
ヒドロキシル-N-ドキセピンは下記の構造を有する。

【0095】
2-ヒドロキシ-N-ドキセピンは任意の適当な方法によって調製することができる。
【0096】
ドキセピンN-オキシドは下記の構造を有する。

【0097】
ドキセピン-N-オキシドは任意の適当な方法によって調製することができる。例えば、ドキセピン-N-オキシドはHobbs (Biochem Pharmacol (1969) 18:1941-1954)によって教示されるとおりに調製することができ、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0098】
N-アセチル-N-ドキセピンは下記の構造を有する。

【0099】
N-アセチル-N-ドキセピンは任意の適当な手段によって調製することができる。例えば、N-アセチル-N-ドキセピンはMoody et al. (Drug Metabolism and Disposition (1999) 27:1157-1164)によって教示されるとおり、ドキセピンと共にインキュベートした糸状菌において産生されており、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0100】
N-デスメチル-N-ホルミルドキセピンは下記の構造を有する。

【0101】
N-デスメチル-N-ホルミルドキセピンは任意の適当な手段によって調製することができる。例えば、N-デスメチル-N-ホルミルドキセピンはMoody et al. (Drug Metabolism and Disposition (1999) 27:1157-1164)によって教示されるとおり、ドキセピンと共にインキュベートした糸状菌において産生されており、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0102】
N-アセチルジドキセピンは下記の構造を有する。

【0103】
N-アセチルジドキセピンは任意の適当な手段によって調製することができる。例えば、N-アセチルジドキセピンはMoody et al. (Drug Metabolism and Disposition (1999) 27:1157-1164)によって教示されるとおり、ドキセピンと共にインキュベートした糸状菌において産生されており、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0104】
ジドキセピンは下記の構造を有する。

【0105】
ジドキセピンは任意の適当な手段によって調製することができる。例えば、ジドキセピンはDeuschle et al. (Psychopharmacology (1997) 131:19-22)によって教示されるとおり、ドキセピンを服用しているうつ患者の血漿および脳脊髄液から単離されており、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0106】
3-O-グルクロニルドキセピンは下記の構造を有する。

【0107】
3-O-グルクロニルドキセピンは任意の適当な手段によって調製することができる。例えば、3-O-グルクロニルドキセピンはShu et al. (Drug Metabolism and Disposition (1990) 18:1096-1099)によって記載されているとおり、ドキセピンを投与したラットの胆汁から単離されており、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0108】
2-O-グルクロニルドキセピンは下記の構造を有する。

【0109】
2-O-グルクロニルドキセピンは任意の適当な手段によって調製することができる。例えば、2-O-グルクロニルドキセピンはShu et al. (Drug Metabolism and Disposition (1990) 18:1096-1099)によって記載されているとおり、ドキセピンを投与したラットの胆汁、およびドキセピンを投与したヒトの尿から単離されており、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0110】
ドキセピンの4級アンモニウム連結グルクロニド(ドキセピンN+-グルクロニド)は下記の構造を有する。

【0111】
N+-グルクロニドは任意の適当な手段によって得ることができる。例えば、ドキセピンN+-グルクロニドはLuo et al. (Drug Metabolism and Disposition, (1991) 19:722-724)によって教示されるとおりに調製し、単離することができ、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0112】
薬学的に許容される塩:
前述のとおり、本明細書に記載の方法および他の態様はドキセピンの任意の適当な薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、またはドキセピン代謝産物の塩もしくはプロドラッグを用いることができる。したがって、塩およびプロドラッグを組み合わせての置換または使用は本明細書に記載の態様において特に企図される。薬学的に許容される塩およびプロドラッグは任意の適当な方法によって調製することができる。
【0113】
「薬学的に許容される塩」なる用語は、投与される生物に著しい刺激を与えず、化合物の生物活性および特性を抑止しない、化合物のイオン型を意味する。薬学的塩は、本発明の化合物を塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの無機酸と反応させることにより得ることができる。薬学的塩は、本発明の化合物を塩基と反応させて、アンモニウム塩;ナトリウムまたはカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウムまたはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルタミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどの有機塩基の塩;およびアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩を生成することにより得ることもできる。薬学的に許容される塩は以下の段落でさらに詳細に記載する。
【0114】
薬学的に許容される酸付加塩を調製するために用いることができる酸には、例えば、非毒性酸付加塩、すなわち酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシラート、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、ジスリアート(dislyate)、エストラート、エシラート、エチルコハク酸塩、フマル酸塩、グルセプタート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニラート、ヘキシルレゾルシナート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、イソチオナート(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、メチル硫酸塩、ムカート、ナプシラート、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボナート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオドード(triethiodode)、および吉草酸塩などの薬理学的に許容されるアニオンを含む塩を生成するものが含まれる。
【0115】
薬学的に許容される塩基付加塩を調製するために用いることができる塩基には、例えば、非毒性塩基付加塩、すなわちアルカリおよびアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンと生成される塩基塩を生成するものが含まれる。カチオンとして用いられる金属の非限定例には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどが含まれる。同様に含まれるものは、例えば、銀、亜鉛、コバルト、およびセリウムなどの重金属塩である。適当なアミンの非限定例には、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、およびプロカインが含まれる。
【0116】
プロドラッグ:
「プロドラッグ」なる用語は、インビボで活性薬物に変換される薬剤を意味する。プロドラッグは、いくつかの状況において、活性薬物よりも投与が容易でありうるため、有用であることが多い。例えば、プロドラッグは経口投与によって生物利用可能でありうるが、活性薬物はそうではない。プロドラッグは活性薬物よりも薬学的組成物中での溶解性が改善されている場合もある。プロドラッグの一例は、それに限定されるわけではないが、水溶性が移動に有害である場合に細胞膜を通過しての移動を容易にするためにエステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、次いで水溶性が有益である細胞内にいったん入ると、代謝により活性実体であるカルボン酸に加水分解される、本発明の化合物である。プロドラッグのさらなる例は、酸基に結合された短鎖ペプチド(ポリアミノ酸)でありえ、ここでペプチドは代謝されて活性部分を現す。プロドラッグ群の例は、例えば、T. Higuchi and V. Stella, in ''Pro-drugs as Novel Delivery Systems,'' Vol. 14, A.C.S. Symposium Series, American Chemical Society (1975);H. Bundgaard, ''Design of Prodrugs,'' Elsevier Science, 1985;および''Bioreversible Carriers in Drug Design: Theory and Application,'' edited by E. B. Roche, Pergamon Press: New York, 14-21 (1987)において見いだすことができ、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0117】
組成物
剤形の開発は、製剤している薬物の性質に基づき賦形剤の選択を必要とすることがある。本発明のいくつかの好ましい態様を提供する。これらは本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0118】
本発明のいくつかの態様は、均質性および/または効力などの低用量ドキセピン組成物に関連する物理的特徴および課題の新しい発見、ならびにドキセピンを睡眠障害の治療に用いる場合のその薬物動態についての新しい理解に基づいている。例えば、好ましい態様において、標準の経口剤形の薬動力学的性質(すなわち、維持および持続時間)は保存するが、開始がより速やかになるように、口腔崩壊製剤の標的となる薬動力学的性質を設計する。
【0119】
例えば、より用量範囲が低い組成物の製剤は、薬物製品の製造法において一定の効力および均質性を維持する一方で、高収率も維持するのにかなりの問題を示すことがある。例えば、低用量剤形の生成のために粉末混合物の均質性を確保することは、大きな品質保証の問題を意味することもある。用いる特定の一つまたは複数の賦形剤の選択、ならびにいかにして適切に混合し、非均質性および分離を防ぐかは、ドキセピン製剤、特に低用量製剤の、以前は認識されていなかった特徴および必要性に基づいていた。
【0120】
同様に、いくつかの態様において、組成物は睡眠のための低用量ドキセピンの以前は知られていなかった薬物動態に基づいている。ドキセピンは胃内で速やかに溶解するが、肝臓でかなりの初回通過抽出または代謝を受ける。したがって、薬物の睡眠促進作用の開始に幾分時間がかかることがある。以前は、ドキセピンの入眠特性などのドキセピンの睡眠薬物動態を認識していた者はなく、睡眠のために、数分間の誘導時間短縮でさえ莫大な利益をもたらしうる。睡眠の状況において、患者が眠る必要のある時間帯は短い(例えば、8時間)ため、薬物作用の早期開始は重要でありうる。その結果、いくつかの態様は、薬物の作用加速に貢献しうる組成物に関する。この必要性は、特にその性質が進行中で慢性的であるため、速やかに開始する必要がないうつや不安では、これまで認識されていなかった。睡眠を治療するためのドキセピンの独特の必要性は先行技術においては理解されていなかった。
【0121】
したがって、いくつかの態様は、低用量ドキセピンおよび睡眠障害を治療する際に用いるドキセピンの以前は認識されていなかった特徴に取り組むために賦形剤を注意深く選択する、そのような障害の治療のための組成物に関する。新しく、予想外に有効なドキセピン製剤を以下および本明細書中の他所に記載する。
【0122】
USP記載のドキセピンHClは、Plantex Ltdが供給する、わずかなアミン様臭を有する白色結晶性粉末である。Biopharmaceutic Classification Systemにおいて、USP記載のドキセピンHClは高い溶解性と高い浸透性を有するクラス1化合物に指定されている(Wu-Benet, 2005)。Plantexが供給するUSP記載のドキセピンHClは、Air Jet Sieve法で測定して、80%以上が38ミクロンよりも小さく、90%以上が125ミクロンよりも小さいという粒径の規格を有する。
【0123】
好ましい態様において、本明細書に開示する組成物は約0.01mgから約9mgのドキセピン、または約0.5mgから約7mgのドキセピン、または約1mgから約6mgのドキセピンを含みうる。いくつかの態様において、組成物は約0.5mgから約2mgのドキセピン、または約2.5mgから約4mg、または約5.9mgから約7mgのドキセピンを含む。
【0124】
前述のとおり、いくつかの態様において、本明細書に記載の製剤において、低用量のドキセピンの代謝産物、ドキセピンプロドラッグもしくはドキセピンの薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物を、低用量ドキセピンの代わり、またはそれに加えて用いることができる。
【0125】
いくつかの態様は、口腔粘膜から吸収されうる低用量ドキセピンの錠剤、トローチ剤、チューインガム、カプセル剤、カプレット、丸剤、ゲルキャップ、ペレット、ビーズ、または糖衣錠剤形を提供する。いくつかの態様は、一つまたは複数のそのような剤形を特に除外する。
【0126】
好ましくは、本明細書に開示する製剤は、例えば、速い打錠速度、圧縮力の軽減、射出力の軽減、混合の均質性、含量の均質性、色の均質な分散、崩壊時間の加速、急速な溶解、低い破砕性(包装、輸送、集めて包装(pick-and-pack)などの下流工程のために好ましい)および変動が少ない剤形の物理的特徴(例えば、重量、硬度、厚み、破砕性)を含むが、それらに限定されるわけではない、有利な加工品質を提供することができる。これらの品質の多く、特に含量の均質性および混合の均質性は低用量製剤では達成が困難である。
【0127】
一つの態様において、本明細書に記載の発明は経口投与、好ましくは経口経粘膜投与用に適合させた硬く、圧縮された、急速崩壊錠剤を提供する。錠剤は、活性成分および保護材料でできた粒子を含むことができる。これらの粒子は、例えば、錠剤の重量の約0.01から約75重量%の間の量で提供することができる。錠剤は、非直接圧縮充填剤、吸い取り剤(wicking agent)、および疎水性滑沢剤のマトリックスも含みうる。好ましい錠剤マトリックスは、例えば、マトリックス材料の全重量の少なくとも約60%の速やかに水に溶解する成分を含みうる。好ましい錠剤は、例えば、約2Kpから約6Kpの間の硬度、U.S.P.により測定した場合に0.8%未満の破砕性を有することができ、患者の口中で約60秒未満(より好ましくは、約30秒未満)で自然に崩壊し、それにより前記粒子を放出するよう適合させる。好ましくは、錠剤はバルクで保存可能である。
【0128】
もう一つの態様において、本明細書に記載の発明は発泡剤を含む圧縮急速崩壊錠剤を提供する。本発明の態様のいくつかと組み合わせて用い、適合させるのに適した発泡性薬学的組成物の例には、Pather、米国特許第6,200,604号に記載の組成物が含まれ、その開示は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0129】
本明細書に開示の組成物と組み合わせて用い、適合させるのに適した他の薬学的組成物は、Wehlingらの米国特許第5,178,878号、Wehlingらの米国特許第5,223,264号、およびKhankariらの米国特許第6,024,981号に記載されており、これらの開示はそれぞれ全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0130】
一つの態様において、本明細書に記載の発明は、欧州特許EP 0 324 725(参照により本明細書に組み入れられる)に開示のとおり、急速崩壊規則混合物組成物としての剤形を提供する。この態様において、ドキセピンは(微細分散状態で)実質的により大きい担体粒子の表面を覆う。そのような組成物は水中で速やかに崩壊し、それにより顕微鏡的薬物粒子の内容を分散する。
【0131】
一つの態様において、本発明は抗うつ剤と共に製剤し、経口投与用に適合させた硬く、圧縮された、急速崩壊錠剤を記載する。錠剤は、活性成分および保護材料でできた粒子を含むことができる。これらの粒子は、錠剤の重量の約0.01から約75重量%の間の量で提供することができる。錠剤は、非直接圧縮充填剤、吸い取り剤、および滑沢剤のマトリックスも含みうる。好ましい錠剤マトリックスは、マトリックス材料の全重量の少なくとも約60%の速やかに水に溶解する成分を含む。好ましい錠剤は、約20から約60ニュートンの間の硬度、U.S.P.により測定した場合に1%未満の破砕性を有し、患者の口中で約60秒未満(より好ましくは、約30秒未満)で自然に崩壊し、それにより前記粒子を放出するよう適合させ、バルクで保存可能である。
【0132】
一つの態様において、本明細書に記載の発明は入眠までの時間を減らす方法であって、入眠までの時間が減るような条件下でドキセピンの急速崩壊製剤により治療した患者を提供する段階を含む方法を提供する。好ましい態様において、急速崩壊ドキセピン製剤はODTである。
【0133】
もう一つの態様において、本発明は睡眠を8時間維持する方法であって、睡眠持続時間が7から8時間維持されるような条件下でドキセピンの急速崩壊製剤により治療した患者を提供する段階を含む方法を提供する。好ましい態様において、急速崩壊ドキセピン製剤は口腔崩壊錠剤(ODT)である。
【0134】
さらにもう一つの態様において、本明細書に記載の発明は入眠後の覚醒を減らす方法であって、入眠後に覚醒が減るような条件下でドキセピンの急速崩壊製剤により治療した患者を提供する段階を含む方法を提供する。好ましい態様において、急速崩壊ドキセピン製剤はODTである。
【0135】
好ましい態様において、本明細書に記載の口腔崩壊製剤において急速溶解送達系を用いる。好ましくは、急速溶解送達系は口腔崩壊錠剤製剤用の直接圧縮可能な賦形剤である。例えば、急速溶解賦形剤は、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)でありうるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、口腔崩壊錠剤は5分以内に溶解しうる。好ましい態様において、口腔崩壊錠剤は1分以内に溶解しうる。いくつかの態様において、製剤中のドキセピンの量は約0.1から約9mgでありうる。
【0136】
いくつかの態様において、本明細書に開示する組成物は全製剤量の約0.1から20%の量のドキセピン、および全製剤量の約50%から約90%、または約60%から約85%、または約70%から約80%の量のPharmaburstを含みうる。いくつかの態様において、製剤中のドキセピンの量は約0.1から約9mgでありうる。いくつかの態様において、100mg錠剤中のドキセピンの量は3mg(3%)でありえ、Pharmaburstの量は85mg(85%)でありうる。いくつかの態様において、75mg錠剤中のドキセピンの量は3mg(4%)でありえ、Pharmaburstの量は61.8mg(82.4%)でありうる。好ましい態様において、100mg錠剤中のドキセピンの量は1mg(1%)でありえ、Pharmaburstの量は87mg(87%)でありうる。さらに好ましい態様において、75mg錠剤中のドキセピンの量は1mg(1.3%)でありえ、Pharmaburstの量は61.8mg(82.4%)でありうる。
【0137】
いくつかの態様において、本明細書に開示する組成物は全製剤量の約15から約35%、または約20%から約30%の量のRxCIPIENTS(商標) FM1000、および全製剤量の約0.1から20%の量のドキセピンを含みうる。いくつかの態様において、製剤中のドキセピンの量は約0.1から約9mgでありうる。いくつかの態様において、100mg錠剤中のドキセピンの量は3mg(3%)でありえ、RxCIPIENTS(商標) FM1000の量は29.4mg(29.4%)でありうる。いくつかの態様において、75mg錠剤中のドキセピンの量は3mg(4%)でありえ、RxCIPIENTS(商標) FM1000の量は22.05mg(29.4%)でありうる。いくつかの態様において、100mg錠剤中のドキセピンの量は1mg(1%)でありえ、RxCIPIENTS(商標) FM1000の量は32.4mg(32.4%)でありうる。いくつかの態様において、75mg錠剤中のドキセピンの量は1mg(1.3%)でありえ、RxCIPIENTS(商標) FM1000の量は22.05mg(29.4%)でありうる。
【0138】
いくつかの態様において、本明細書に開示する組成物は全製剤量の約25から約65%、または約30%から約62%、または約40%から約60%の量の賦形剤としてのF-Melt(商標)、および全製剤量の約0.1から20%の量のドキセピンを含みうる。いくつかの態様において、製剤中のドキセピンの量は約0.1から約9mgでありうる。いくつかの態様において、100mg錠剤中のドキセピンの量は3mg(3%)でありえ、F-Melt(商標)の量は58mg(58%)でありうる。いくつかの態様において、75mg錠剤中のドキセピンの量は3mg(4%)でありえ、F-Melt(商標)の量は43.4mg(58%)でありうる。いくつかの態様において、100mg錠剤中のドキセピンの量は1mg(1%)でありえ、F-Melt(商標)の量は60mg(60%)でありうる。いくつかの態様において、75mg錠剤中のドキセピンの量は1mg(1.3%)でありえ、F-Melt(商標)の量は43.5mg(58%)でありうる。
【0139】
いくつかの態様において、本明細書に開示するドキセピン組成物は、Drug Delivery to the Oral Cavity: Molecules to Market, Ghosh and Pfister, eds., 2005, Taylor & Francisに開示されるとおりに製剤することができ、その開示は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0140】
いくつかの態様において、ドキセピンは、例えば、FlashDose(登録商標)、Zydis、OraSolv、DuraSolv、FlastTab、AdvaTab(商標)、OraQuick(登録商標)、Lyoc(登録商標)、SATAB、WOWTABなどであるが、それらに限定されるわけではない、任意の市販の口腔崩壊技術を用いて製剤することができる。
【0141】
薬物を吸収可能にし、遅延を最小限に抑えることは、不眠症などの医学的状態の治療において重要でありうる。好ましい態様において、製剤はUSPプロトコルにより1分以下の非常に急速な崩壊時間を生じうる。好ましくは、製剤は60、50、40、30、25秒またはそれ以下の崩壊持間を生じる。
【0142】
他の態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピン含有剤形の85%よりも多くが5分以内に溶解する。いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピン含有剤形の65%から85%が5分以内に溶解する。いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピン含有剤形の45%から65%が5分以内に溶解する。いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピン含有剤形の25%から45%が5分以内に溶解する。いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピン含有剤形の5%から25%が5分以内に溶解する。
【0143】
いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピン含有剤形の5%から25%が1分以内に溶解する。好ましい態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピン含有剤形の25%から45%が1分以内に溶解する。もう一つの好ましい態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピン含有剤形の45%から85%が1分以内に溶解する。さらに好ましい態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピン含有剤形の85%から99%が1分以内に溶解する。いくつかの局面において、ドキセピンを含む急速に口腔崩壊する剤形のほぼ100%が1分以内に溶解する。
【0144】
他の態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピンの85%よりも多くが5分以内に口腔粘膜から吸収される。いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピンの65%から85%が5分以内に口腔粘膜から吸収される。いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピンの45%から65%が5分以内に口腔粘膜から吸収される。いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピンの25%から45%が5分以内に口腔粘膜から吸収される。いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピンの5%から25%が5分以内に口腔粘膜から吸収される。
【0145】
いくつかの態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピンの5%から25%が1分以内に口腔粘膜から吸収される。好ましい態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピンの25%から45%が1分以内に口腔粘膜から吸収される。もう一つの好ましい態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピンの45%から85%が1分以内に口腔粘膜から吸収される。さらに好ましい態様において、製剤は急速に口腔崩壊する剤形を生じ、ここでドキセピンの85%から99%が1分以内に口腔粘膜から吸収される。いくつかの局面において、ドキセピンのほぼ100%が1分以内に口腔粘膜から吸収される。
【0146】
他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン9mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後40分以内に達成される。他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン9mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後20分以内に達成される。他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン6mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後40分以内に達成される。他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン6mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後20分以内に達成される。他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン3mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後40分以内に達成される。他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン3mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後20分以内に達成される。他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン1mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後40分以内に達成される。他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン1mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後20分以内に達成される。他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン0.5mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後40分以内に達成される。他の態様において、ドキセピンの治療的血漿レベルはドキセピン0.5mgを含む急速に口腔崩壊する剤形を投与した後20分以内に達成される。
【0147】
好ましい態様において、本明細書に記載の低用量剤形を二つ以上の有利な薬物特性が得られるように製剤する。
【0148】
化合物は、例えば、薬物を任意の適当な薬学的に許容される賦形剤、例えば、以下に示すような結合剤、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、充填剤、担体などであるが、それらに限定されるわけではないものと混合することにより容易に製剤することができる。そのような組成物は保存のため、およびその後の加工のために調製することができる。
【0149】
治療的使用のために許容される賦形剤は薬学の技術分野において周知で、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 5th edition (Raymond C Rowe, Paul J Sheskey and Sian C Owen, eds. 2005)、およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition (Lippincott Williams & Wilkins, 2005)に記載されており、これらはそれぞれ全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書における「担体」材料または「賦形剤」なる用語は、それ自体は治療薬ではないが、担体および/もしくは希釈剤および/もしくは補助剤、または治療薬を被験者に送達するための媒体として用いる、あるいは薬学的組成物の取り扱いもしくは保存特性を改善するため、または組成物の用量単位を経口投与に適した錠剤、トローチ剤、チューインガム、カプセル剤、カプレット、ゲルキャップ、丸剤、ペレット、ビーズなどの分離した物品に形成することを可能もしくは容易にするために薬学的組成物に加える、任意の物質を意味しうる。賦形剤には、例示のためであって、限定のためではなく、希釈剤、崩壊剤、結合剤、接着剤、湿潤剤、ポリマー、滑沢剤、グリダント、不愉快な味または臭いをマスクまたは相殺するために加える物質、香味料、着色料、芳香剤、および組成物の外観を改善するために加える物質が含まれうる。
【0150】
許容される賦形剤には、例えば、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、F-Melt(商標)、Starch 1500(登録商標)、結晶セルロース、乳糖、ショ糖、デンプン粉末、トウモロコシデンプンまたはその誘導体、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、および/またはポリビニルアルコール、食塩水、デキストロース、マンニトール、乳糖、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ゼラチン軟カプセルに適した賦形剤の例には、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオールが含まれる。液剤およびシロップ剤の調製に適した賦形剤には、水、ポリオール、ショ糖、転化糖およびグルコースが含まれるが、それらに限定されるわけではない。化合物はミクロカプセル化剤形に調製することもできる。望まれる場合は、吸収増強製剤(例えば、リポソーム)を用いることもできる。
【0151】
急速溶解送達系、または例えば、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、F-Melt(商標)などであるが、それらに限定されるわけではない、口腔崩壊製剤のための特別の賦形剤を用いることが好ましい。他のそのような系または口腔崩壊賦形剤は当業者には明らかであろう。
【0152】
組成物および製剤は、移動、送達、耐容性などを改善する任意の他の物質を含むこともできる。これらの組成物および製剤には、例えば、散剤、ペースト、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、小胞を含む脂質(カチオン性またはアニオン性)(Lipofectin(商標)など)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油および油中水乳剤、乳剤カーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含む半固体混合物が含まれうる。
【0153】
前述の任意の混合物は、製剤中の活性成分が製剤によって不活化されず、製剤が生理的に適合性で、投与経路に耐容性であるとの条件で、本明細書に開示する発明に従っての治療および療法において適切でありうる。薬化学の当業者には周知の製剤、賦形剤および担体に関するさらなる情報については、Baldrick P. ''Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.'' Regul. Toxicol. Pharmacol. 32(2):210-8 (2000)、Charman WN ''Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts.'' J Pharm Sci .89(8):967-78 (2000)、およびその中の引用文献も参照されたい。
【0154】
いくつかの態様において、列挙した賦形剤の一つもしくは複数、または任意の組み合わせは、本明細書に開示する製剤および/または方法に特に含まれる、または除外されることもある。例えば、いくつかの態様において、結晶セルロースは特に除外されることがある。
【0155】
経口投与は、経口投与製剤、例えば、錠剤、チューインガム、トローチ剤、フィルム、カプセル剤、ゲルキャップ、カプレット、ペレット、ビーズ、丸剤などを用いて行うことができる。加えて、安定剤を加えることもできる。経口投与用のすべての製剤はそのような投与に適した剤形であるべきである。
【0156】
当業者には理解されるとおり、賦形剤の量は薬物の用量および剤形のサイズによって決定されることになる。本明細書に開示するいくつかの態様において、剤形のサイズは100mgである。この剤形の重量は任意で、当業者であれば一連の重量を調製することができ、本発明に含まれることを理解するであろう。好ましい剤形の範囲は50mgから200mg、より好ましくは50mgから150mg、より好ましくは75から100mgであり、好ましい剤形の重量は100mgである。
【0157】
好ましい態様において、低用量のドキセピンを、例えば、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)などであるが、それらに限定されるわけではない、任意の市販の急速溶解送達系と組み合わせる。例えば、100mgの剤形重量に対し、薬物の範囲は約0.75重量%から約4.5重量%で、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)の範囲はそれぞれ約15から35重量%、または約50重量%から約90重量%、または約25重量%から約65重量%である。
【0158】
一つの態様において、例えば、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)などであるが、それらに限定されるわけではない、好ましい口腔崩壊賦形剤と、低用量ドキセピン、または低用量ドキセピン関連化合物との乾燥薬学的混合物を用いて、直接圧縮による最終の剤形を生成することができる。典型的には、乾燥混合物は約0.1重量%から約10重量%、または約0.5重量%から約5重量%、または約0.7重量%から約4.5重量%の低用量ドキセピンまたは低用量ドキセピン関連化合物を含みうる。一つの態様において、乾燥混合物中のドキセピンまたはドキセピン関連化合物は非顆粒状でありうる。ドキセピンに加えて、混合物は約15重量%から約30重量%のRxCIPIENTS(商標)、または約25重量%から約65重量%のF-Melt(商標)、または約50重量%から約90重量%のPharmaburstなどを含みうる。
【0159】
いくつかの態様において、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、F-Melt(商標)などの口腔崩壊賦形剤を以下の賦形剤の一つまたは複数と組み合わせるか、またはそれらで置き換えることができる:結晶セルロース、乳糖一水和物(噴霧乾燥)、圧縮性の糖、キシリトール(Xylitab)、ソルビトール、マンニトール、アルファ化デンプン、マルトデキストリン、第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウムDCなど。したがって、一つの態様において、前述の賦形剤の一つまたは複数をRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤と、様々な比率で組み合わせることができる。例えば、全充填剤を100%と仮定して、約80%のRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤を、約20%の一つまたは複数の代替充填剤と組み合わせることができる。あるいは、約70%のRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、もしくはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤を、約30%の一つもしくは複数の代替充填剤と組み合わせることができ、または約60%のRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、もしくはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤を、約40%の一つもしくは複数の代替充填剤と組み合わせることができ、または約50%のRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、もしくはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤を、約50%の一つもしくは複数の代替充填剤と組み合わせることができ、または約40%のRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、もしくはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤を、約60%の一つもしくは複数の代替充填剤と組み合わせることができ、または約30%のRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、もしくはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤を、約70%の一つもしくは複数の代替充填剤と組み合わせることができ、または約20%のRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、もしくはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤を、約80%の一つもしくは複数の代替充填剤と組み合わせることができる。
【0160】
別の態様において、RxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤を一つまたは複数の代替賦形剤で置き換えることができる。好ましくは、代替賦形剤は有利な薬物加工品質を提供するよう選択する。他の有利な急速溶解送達系は当業者には明らかであろう。
【0161】
乾燥混合物は少なくとも一つの追加の薬学的に許容される適当な賦形剤を含むこともできる。追加の賦形剤は、乾燥混合物の直接圧縮錠剤形成特性、および/または粉末の流動性を改善する加工補助物質を含むことができる。乾燥混合物において、直接圧縮で用いるのに適した賦形剤には、前述のとおり、結合剤、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、充填剤、担体などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0162】
一つの態様において、製剤は薬物とRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)などの好ましい賦形剤との混合物を、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよびコロイド状二酸化ケイ素などの追加の加工補助物質、ならびに任意に着色料と共に含む。
【0163】
いくつかの態様において、ステアリン酸マグネシウムを、例えば、粉末の流動を改善し、混合物が錠剤成形器具および穿孔器表面に付着するのを防ぎ、かつ錠剤を錠剤鋳型からきれいに射出できるよう滑らかにするための、滑沢剤として加えることができる。ステアリン酸マグネシウムは典型的には約0.1重量%から約5.0重量%、または約0.25重量%から約2重量%、または約0.5重量%から約 1重量%の範囲の濃度で薬学的製剤に加えることができる。
【0164】
いくつかの態様において、色素添加物も含まれうる。着色料は、剤形の強度を識別するのに十分な量で用いることができる。好ましくは、錠剤の強度を区別するために、薬物における使用が認可されている色素添加物(21 CFR 74)を市販の製剤に加える。他の薬学的に許容される着色料およびその組み合わせの使用は本発明に含まれる。
【0165】
結合剤は、例えば、製剤に粘着性を付与し、したがって得られた剤形が圧縮後に確実に完全なままであるように用いることができる。適当な結合剤の材料には、結晶セルロース、ゼラチン、糖(例えば、ショ糖、グルコース、デキストロースおよびマルトデキストリンを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然および合成ゴム、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0166】
したがって、いくつかの態様において、本明細書に開示する製剤は、主要な賦形剤の圧縮性を増強するために、少なくとも一つの結合剤を含みうる。例えば、製剤は下記の結合剤の少なくとも一つを、下記の好ましい範囲で含みうる:約2から約6重量%のヒドロキシプロピルセルロース(Klucel)、約2から約5重量%のポリビニルピロリドン(PVP)、約1から約5重量%のメチセルロース、約2から約5%のヒドロキシプロピルメチセルロース、約1から約5重量%のエチルセルロース、約1から約5重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウムなど。前述の範囲は例示的な好ましい範囲である。当業者であれば、本明細書に記載の製剤において用いることができる追加の結合剤および/または量を理解するであろう。当業者には理解されるであろうとおり、本明細書に開示する製剤に組み込む場合、錠剤の全体の単位重量が変わらないようにするために、加える結合剤の量を適応させるよう、主要な充填剤および/または他の賦形剤の量を相応に減らすことができる。一つの態様において、結合剤を溶液から噴霧、例えば、湿式造粒して、結合活性を高める。
【0167】
本明細書において、滑沢剤を特定の剤形の製造において用いることができる。例えば、滑沢剤は錠剤を生成する場合にしばしば用いられる。開示する本発明の態様において、錠剤成形段階の直前に加えることができ、最低限の時間、製剤と混合して良好な分散を得ることができる。いくつかの態様において、一つまたは複数の滑沢剤を用いることができる。適当な滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、タルク、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドポリマー(例えば、ポリエチレングリコールではCarbowax(登録商標)およびポリエチレンオキシドではPolyox(登録商標)の登録商標でDow Chemical Company, Midland, Mich.から入手可能)、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、ナトリウムステアリルフマラート、DL-ロイシン、コロイド状シリカ、および当技術分野において公知の他の滑沢剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましい滑沢剤はナトリウムステアリルフマラート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物である。滑沢剤は錠剤重量の約0.25%から約10%、より好ましくは約0.5%から約3%を含みうる。
【0168】
したがって、いくつかの態様において、本明細書に開示する製剤は少なくとも一つの滑沢剤を下記の好ましい範囲で含みうる:約0.25から約2重量%のステアリン酸マグネシウム、約0.25から約2重量%のステアリン酸カルシウム、約0.25から約2重量%のナトリウムステアリルフマラート、約0.25から約2重量%のステアリン酸、約0.25から約2重量%の硬化植物油、約0.25から約2重量%のベヘン酸グリセリル、約0.25から約2重量%のポリエチレングリコール4000-6000など。前述の範囲は好ましい範囲の例である。当業者であれば、本明細書に記載の製剤において用いることができる追加の滑沢剤および/または量を理解するであろう。当業者には理解されるであろうとおり、本明細書に開示する製剤に組み込む場合、錠剤の全体の単位重量が変わらないようにするために、加える滑沢剤の量を適応させるよう、主要な充填剤および/または他の賦形剤の量を相応に減らすことができる。
【0169】
崩壊剤は、例えば、投与後の錠剤崩壊を促進するために用いることができ、一般にはデンプン、クレー、セルロース、アルギン、ゴムまたは架橋ポリマーである。適当な崩壊剤には、架橋ポリビニルピロリドン(PVP-XL)、デンプングリコール酸ナトリウム、およびクロスカルメロースナトリウムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。望まれる場合には、薬学的製剤は湿潤または乳化剤、pH緩衝化剤など、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミンナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの少量の非毒性補助物質を含むこともできる。
【0170】
いくつかの態様において、少なくとも一つの追加の崩壊剤を下記の好ましい範囲で含むことができる:約1から約3重量%のクロスカルメロースナトリウム、約4から約6重量%のデンプングリコール酸ナトリウム、約2から約4重量%のクロスポビドン、約10から約20重量%の結晶セルロース、約5から約10重量%のアルファ化デンプン、約5から約10重量%のトウモロコシデンプン、約5から約10重量%のアルギン酸、約1から約5重量%のイオン交換樹脂(Amberlite 88)など。前述の範囲は好ましい範囲の例である。当業者であれば、本明細書に記載の製剤において用いることができる追加の崩壊剤および/または崩壊剤の量を理解するであろう。当業者には理解されるであろうとおり、本明細書に開示する製剤に組み込む場合、錠剤の全体の単位重量が変わらないようにするために、加える崩壊剤の量を適応させるよう、主要な充填剤および/または他の賦形剤の量を相応に減らすことができる。
【0171】
用量
選択される用量レベルは、例えば、投与経路、治療中の状態の重症度、ならびに治療中の患者の状態および過去の既往歴に依存しうる。しかし、所望の治療効果を得るのに必要とされるよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が許容される安全性と共に得られるまで用量を徐々に増やすことは、当分野の技術範囲内である。しかし、任意の特定の患者に対する具体的用量レベルは、例えば、遺伝的性質、体重、全身の健康、食事、投与の時間および経路、他の薬物との併用、ならびに治療中の特定の状態、およびその重症度を含む様々な因子に依存しうることが理解されるであろう。不眠症の治療のために、好ましくは1回用量を就寝前に投与する。
【0172】
本明細書において用いられる「単位用量剤形」なる用語は、ヒトおよび動物被験者のための単位用量として適当な物理的に分離した単位であって、それぞれ所望の効果を生じるのに十分な量で計算されたドキセピンの所定の量を、薬学的に許容される賦形剤、担体または媒体と共に含む単位を意味する。いくつかの態様において、単位用量剤形は、例えば、錠剤、トローチ剤、チューインガム、フィルム、カプセル剤、丸剤、カプレット、ゲルキャップ、ペレット、ビーズなどである。いくつかの態様において、単位用量剤形は錠剤である。いくつかの態様において、単位用量剤形中のドキセピンの量は約0.5mgから約9mg、または約1mgから約9mg、または約1mgから約6mgである。
【0173】
いくつかの態様において、低用量ドキセピンの1日用量は約1、2、3、4、5、6、7、8、または9ミリグラムでありうる。一つの態様において、約1ミリグラムの初期1日用量を投与しうる。睡眠の所望の改善が得られない場合、用量を所望の効果が得られるまで、または最大の所望の用量に達するまで徐々に増やすことができ、その用量は、例えば、2ミリグラム、3ミリグラム、4ミリグラム、5ミリグラムまたは6ミリグラムでありうる。本明細書に記載の態様においてドキセピンの他の用量を用いうることに留意すべきである。例えば、用量は約0.5から約10ミリグラムでありうる。
【0174】
「低用量」なる用語は、約0.01から9ミリグラムの間の1日用量の範囲、またはさらに低い用量を意味しうる。いくつかの態様において、ドキセピンの好ましい用量は約0.1ミリグラムから9ミリグラムの間でありうる。好ましくは、用量は約0.1ミリグラム、約0.2ミリグラム、約0.3ミリグラム、約0.5ミリグラム、約1ミリグラム、約2ミリグラム、約3ミリグラム、約4ミリグラム、約5ミリグラム、6ミリグラム、約7ミリグラム、約8ミリグラム、または約9ミリグラムでありうる。
【0175】
いくつかの態様において、本明細書に記載の製剤および方法は、うつおよび不安を治療するために用いるより高い用量を含む、ドキセピンの任意の用量に適用しうることに留意すべきである。一例として、製剤および方法は約10ミリグラムから20ミリグラムの間、またはそれ以上の用量に適用することができる。
【0176】
特許請求される組成物の調製法
経口で用いるための薬学的製剤は、一つまたは複数の固体賦形剤を本明細書に記載の薬学的組成物と混合し、得られた混合物を任意に粉砕し、望まれる場合には適当な補助剤を加えた後に顆粒の混合物を加工して錠剤とすることにより得ることができる。一つの態様において、組成物を乾式造粒法を用いて調製する。または、湿式造粒法を用いることもできる。他の態様において、流動床造粒加工技術を用いる。
【0177】
一つのそのような造粒法は「湿式」造粒法であり、ここで乾燥固体(薬物、充填剤、結合剤など)を混合し、水または他の湿潤剤(例えば、アルコール)で湿らせ、湿った固体の塊または顆粒を形成する。所望の均質な粒径が達成されるまで湿った塊の形成を続け、その後に造粒生成物を乾燥する。
【0178】
好ましい態様において、本明細書に開示する組成物を直接圧縮を用いて調製する。本明細書に開示する発明のいくつかの態様において、湿式造粒技術の使用は特に除外される。
【0179】
本明細書において用いられる「直接圧縮」とは、活性成分をより大きい粒子に埋め込み、その流動性を改善するための中間造粒工程にかけることなく、活性薬学的成分と賦形剤との単純混合物の圧縮によって固体単位用量剤形を調製することを意味する。
【0180】
直接圧縮において、活性薬学的成分および加工補助物質を含む製剤成分を流動性混合物中に組み込む。一つの態様において、活性成分、賦形剤、および他の物質を混合し、次いで圧縮して錠剤とする。錠剤は典型的には打錠器内の材料にかけた圧力によって形成される。
【0181】
湿式および乾式造粒法に対する直接圧縮の利点には、例えば、短い加工時間および費用上の利点が含まれる。
【0182】
一つの態様において、重力送り直接圧縮錠剤成形による低用量ドキセピンまたはドキセピン関連化合物の形成において、乾燥混合物を用いる。「重力送り打錠器」とは、薬学的製剤を鋳型に力で送るのではなく、薬学的製剤の流れを重力によって誘導することを意味する。重力送り打錠器の一例はManesty F-pressである。
【0183】
好ましくは、本明細書に開示するドキセピン塩酸塩の錠剤生成物は、市販の薬学的装置を用いて、直接混合および圧縮を含む一般的かつ単純な方法で製造する。これらの操作は容易に利用可能な装置を用い、APIを水分および熱に曝さず、規模の拡大縮小が可能である。好ましくは、商業的製造法は、すべての品質特性に合致した、均一の効力を有する混合物および単位用量剤形を生成し、維持する。好ましい態様において、すべての用量強度製剤の製造法は同じである。
【0184】
製造法は、一つまたは複数の予備混合物を調製する段階を含み、この予備混合物を合わせて最終混合物を生成し、続いて最終の単位用量剤形を形成することができる。方法は、例えば下記を含む、薬物および着色料が均質に分布した完成薬物製品の混合物およびバッチの生成を容易にする、いくつかの技術を任意に含む:(1)混合前に成分の凝集を分離させること;および/または(2)均質な予備混合物を作るために、混合前にRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)の添加の間に薬物および着色料成分を層として挿入すること;および/または(3)均質な最終混合物を作るために、薬物および着色料の予備混合物をRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)および他の製剤賦形剤で連続希釈すること。加えて、方法は、例えば下記を任意に含むことができる:(1)混合物の混合時試験を行い、薬物の均質性を評価すること;および/または(2)混合器の有効な動作能力に関して混合物のバッチサイズを最適化すること。
【0185】
効率的な混合ならびに許容される混合物および含量の均質性は、低用量剤形では達成が困難である。好ましくは、混合器の選択および保存容器から打錠器の粉末移動路への構成を、含量の均質性の最適化および維持に基づいて選択する。加えて、賦形剤および方法のパラメーターを、完成剤形の物理的特性(硬度、破砕性、厚みおよび重量)に対して主な圧縮力および打錠速度を最適化するために選択することができる。
【0186】
加えて、方法は薬物の流動化分離の傾向を補うよう最適化することもできる。例えば、流動化分離を、気流が粉末と接触する工程の段階、例えば、混合物をV-混合器から保存容器に排出する工程における段階、および/または粉末を保存容器から打錠器送りホッパーに送る工程における段階を無くすことにより軽減することができる。
【0187】
好ましい態様において、製剤は単純で、機能的成分をほとんど含まない。
【0188】
好ましくは、製剤はすぐれた圧縮および流動特性を有し、打錠器を非常に速い打錠速度で操作することができ、これは大きいバッチサイズであっても比較的扱いやすい打錠実行時間を可能にする。
【0189】
いくつかの態様において、本明細書に開示する直接圧縮製造法は、複雑な湿式または乾式造粒製造技術を必要とすることなく、低用量薬物製品における薬物の均質な分布を達成する。好ましい態様において、製造法は大資本の装置投資を必要とするもの、長い製造周期時間および関連する低い処理量などの高価な技術を回避する。
【0190】
一つの態様において、複数の混合段階、混合器への添加の特別な順番、ならびに薬物および賦形剤の効果的な分散を促進するためのふるい分け段階を用いることにより、均質な混合物を得るように製造法を設計する。例えば、ふるい分け段階を導入して、薬物の塊がその後の製造段階へと持ち越されることを防ぐことができる。
【0191】
もう一つの態様において、移動段階を最小限にする、例えば、最終混合物を生成するために容器内混合器を用いることにより、また例えば、打錠器への排出口および弁のついた移動路の使用により、錠剤成形まで均質な混合物を維持するように製造法を設計する。
【0192】
低用量ドキセピンまたは代謝産物の使用法
態様は、例えば、低用量ドキセピンまたは低用量ドキセピン関連化合物を、本明細書に開示する錠剤製剤で投与することにより、それを必要としている患者の睡眠を改善する方法に関する。「投与する」なる用語およびその変形は、自己投与(患者による)および第三者による投与の両方を企図する。好ましい態様において、本明細書に記載のRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)含有ドキセピン製剤としての経口薬剤を経口投与する。
【0193】
前述および他所で記載したとおり、本明細書に記載の方法を用いて、不眠症などの睡眠障害を患っている個人を治療することができる。個人は慢性不眠症または非慢性不眠症を患っている。慢性(例えば、3〜4週間よりも長い)または非慢性不眠症のために、患者は入眠、睡眠維持(夜間の睡眠の覚醒期間による中断)、睡眠持続時間、睡眠効率、早期の早朝の覚醒、またはその組み合わせにおける困難を患っていることもある。また、不眠症は、例えば、他の薬剤の併用が原因であることもある。非慢性不眠症は、例えば、短期不眠症または一過性不眠症でありうる。慢性または非慢性不眠症は原発性不眠症または別の状態、例えば、うつもしくは慢性疲労症候群などの疾患の続発する不眠症でありうる。いくつかの局面において、患者は疾患の一成分である不眠症を患っていないものでありえ、またはそれ以外は健康である患者を治療することもできる。前述のとおり、慢性または非慢性不眠症は原発性不眠症、すなわち別の精神障害、全身の医学的状態、または物質が原因ではないものでありうる。多くの場合、そのような状態は慢性不眠症に関連しており、診断可能なDSM-IV障害、不安もしくはうつなどの障害、または生理的睡眠-覚醒システムの障害が原因の不眠症が含まれうるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの局面において、不眠症は非慢性、または持続時間の短い(例えば、3〜4週間未満)ものでありうる。そのような不眠症の原因の例は外因性または内因性であってもよく、不適切睡眠衛生、高地不眠症、または適応性睡眠障害(例えば、死別)などの睡眠障害国際分類(ICSD)によって定義される環境性睡眠障害が含まれるが、それらに限定されるわけではない。また、短期不眠症は交替勤務睡眠障害などの障害によって引き起こされることもある。
【0194】
いくつかの局面においては、方法は前の段落または本明細書の他所に記載する任意の睡眠障害の一つまたは複数を特に除外することもあることに留意すべきである。例えば、それに限定されるわけではないが、いくつかの局面において、方法は慢性不眠症の治療を特に除外することもある。もう一つの例として、それに限定されるわけではないが、いくつかの局面において、方法はうつ、不安または慢性疲労などの状態が原因の不眠症の治療を特に除外することもある。
【0195】
好ましい態様において、方法は患者の不眠症の入眠、持続時間、および維持の局面の治療を含みうる。
【0196】
本明細書に開示する薬学的錠剤製剤は、低用量であっても驚くべき有効性を有し、翌日に著しい鎮静を残すことなく、丸7時間または8時間以上の睡眠を可能にしうる。これらの製剤は安全で、速やかな入眠を提供し、7または8時間の全睡眠周期の夜中睡眠を維持し、後遺症状または安全でないレベルの鎮静なしに翌日の正常な活動を可能にすると考えられる。
【0197】
実施例
実施例1:血漿濃度
睡眠の開始に関連するドキセピン血漿濃度の推定値を、複数の試験からのデータを組み合わせることによって得た。
【0198】
簡単に言うと、平均約70kgで、ドキセピン塩酸塩、高速流動の乳糖一水和物、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸ナトリウムを含む3mgのカプセル剤を服用中のヒト被験者において、入眠は投与の約60分後に起こり、これはプラシーボ投与の場合よりも有意に早かった。別の試験で、平均約70kgで、ドキセピン塩酸塩、高速流動の乳糖一水和物、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸ナトリウムを含む3mgのカプセル剤を服用中のヒト被験者において、60分の時点の平均血漿濃度は約0.1ng/mLであった。
【0199】
限定されるわけではないが、3mg投与の約1時間後に得られたドキセピン血漿濃度は就眠にとって十分であると考えられる。結論は、0.1ng/mL以上のドキセピン血漿濃度は睡眠の開始に関連していたということである。
【0200】
対照的に、本発明の開示の製剤は投与後に血漿濃度の急速な上昇を提供することができ、例えば、3mg投与後60分以内、例えば、50分、45分、40分、35分、30分、20分以内、またはそれよりも短い時間でドキセピンの治療上有効な血漿濃度が得られる。したがって、いくつかの態様は、ドキセピンの有効な血漿濃度のより速やかな達成をもたらし、例えば、1mg、3mgまたは6mgの用量を含む、本明細書に記載の用量でより速やかな薬物発現(例えば、入眠)を引き起こす製剤および剤形に関する。
【0201】
実施例2:ドキセピン経口経粘膜吸収模擬試験
薬物3mg投与の経粘膜およびGI管吸収両方からの経時的なドキセピン血漿レベルを、表1に示すパラメーターを用いて模擬実験した。簡単に言うと、ドキセピン経口経粘膜吸収を0.1mgの5分間注入(合計吸収0.5mg)によって近似させた。残りのドキセピンを嚥下し、胃腸管内で吸収されたとの模擬を行った。図1は、2時間の血漿中のドキセピン濃度を示している。模擬実験の最初の30分間のドキセピン濃度は、経口経粘膜吸収のために血漿中で0.1ng/mLを越えて上昇した。
【0202】
(表1)

【0203】
実施例3:1mg、3mg、および6mg ODT製剤
急速溶解賦形剤としてPharmaburstを用いての代表的な1mg、3mg、および6mg製剤を表2に示す。
【0204】
(表2)Pharmaburstシステム製剤

【0205】
急速溶解賦形剤としてRxCipients FM1000を用いての代表的な1mg、3mg、および6mg製剤を表3に示す。
【0206】
(表3)RxCipientsシステム製剤

【0207】
急速溶解賦形剤としてF-Meltを用いての代表的な1mg、3mg、および6mg製剤を表4に示す。
【0208】
(表4)F-Meltシステム製剤

【0209】
実施例4:混合物の均質性
これらの製剤中の薬物濃度が非常に低いため、混合法は急速溶解賦形剤の添加の間にドキセピンHClを層として挿入することで作成した薬物の予備混合物の調製と、その後の混合を含みうる。単位用量効力の均質性は、薬物予備混合物を残りの賦形剤で連続的に希釈し、混合することによりさらに促進することができる。
【0210】
当業者には明らかであるとおり、本明細書に記載の態様の多くの改変および変形を範囲から逸脱することなく行ってもよい。本明細書に記載の具体的態様は例示のために示すにすぎない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.1から約9mgのドキセピン、もしくは薬学的に許容される塩、または他のドキセピン関連化合物、および約15重量%から約99.9重量%の口腔崩壊賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項2】
口腔内で実質的に崩壊する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
口腔崩壊賦形剤が約65重量%から約95重量%の量で提供される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
口腔崩壊賦形剤が約83重量%の量で提供されるPharmaburstである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
口腔崩壊賦形剤が約30重量%の量で提供されるRxCIPIENTS(商標) FM1000である、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
口腔崩壊賦形剤が約58重量%の量で提供されるF-Melt(商標)である、請求項3記載の組成物。
【請求項7】
約1から約10重量%のクロスポビドンXLをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
約1から約10重量%のAc-Di-Solをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
約1から約10重量%のExplotabをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
ドキセピンが約1から約3mgの量で提供される、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
ドキセピンが約1mgの量で提供される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
ドキセピンが約3から約4mgの量で提供される、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
ドキセピンが約3mgの量で提供される、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
ドキセピンが約6から約7mgの量で提供される、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
ドキセピンが約6mgの量で提供される、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
錠剤、トローチ剤、チューインガム、またはフィルムの形状である、請求項1〜15のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
錠剤の形状である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
約50mgから約300mgの総重量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
約100mgの総重量を有する、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
約0.5から約9mgのドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは代謝産物、および組成物の口腔崩壊または薬物の経口吸収のための少なくとも一つの賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項21】
少なくとも一つの賦形剤がRxCIPIENTS(商標) FM1000、Pharmaburst、またはF-Melt(商標)から選択される、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
Perlitol 200 SDをさらに含む、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
Perlitol 200 SDが約20重量%から約85重量%の量で提供される、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
Perlitol 200 SDが約15重量%から約45重量%の量で提供される、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
Perlitol 200 SDが約45重量%から約75重量%の量で提供される、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
結晶セルロース、乳糖、圧縮性の糖、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、アルファ化デンプン、マルトデキストリン、第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、および炭酸カルシウムDCからなる群より選択される少なくとも一つの賦形剤をさらに含む、請求項20〜25のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
グリダント(glidant)をさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項28】
グリダントがコロイド状二酸化ケイ素である、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
コロイド状二酸化ケイ素が約0.1から約1.5重量%の量で提供される、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
滑沢剤をさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項31】
滑沢剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ナトリウムステアリルフマラート、ステアリン酸、硬化植物油、ベヘン酸グリセリル、およびポリエチレングリコールから選択される、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
滑沢剤がナトリウムステアリルフマラートである、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
ナトリウムステアリルフマラートが約0.25から約2.0重量%の量で提供される、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
錠剤、チューインガム、トローチ剤、またはフィルムの形状である、請求項20記載の組成物。
【請求項35】
崩壊剤または補助結合剤をさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項36】
崩壊剤がクロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン、アルギン酸、およびイオン交換樹脂から選択される、請求項35記載の組成物。
【請求項37】
補助結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される、請求項35記載の組成物。
【請求項38】
ドキセピンが約1から約2mgの量で提供される、請求項20記載の組成物。
【請求項39】
ドキセピンが約1mgの量で提供される、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
ドキセピンが約3から約4mgの量で提供される、請求項20記載の組成物。
【請求項41】
ドキセピンが約3mgの量で提供される、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
ドキセピンが約6から約7mgの量で提供される、請求項20記載の組成物。
【請求項43】
ドキセピンが約6mgの量で提供される、請求項42記載の組成物。
【請求項44】
不眠症の治療を必要としている個人を特定する段階、および該個人に請求項1〜43のいずれか一項記載の組成物を投与する段階を含む、不眠症の治療方法。
【請求項45】
睡眠維持の増強を必要としている個人を特定する段階、および該個人に請求項1〜43のいずれか一項記載の薬学的製剤を投与する段階を含む、睡眠維持の増強方法。
【請求項46】
約1mg、3mgまたは6mgのドキセピン塩酸塩と同等の量のドキセピンまたはドキセピン関連化合物;
一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤;および任意に
コーティング
を含む薬学的単位用量剤形であって、
賦形剤および任意のコーティングが、少なくとも外部では固体でありかつ70kgのヒトに投与した後に該用量剤形が約60分以下の時間枠内でドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するような溶解特性および生物学的利用能特性を有する急速口腔崩壊単位用量剤形を提供するように選択される、薬学的単位用量剤形。
【請求項47】
錠剤、トローチ剤、チューインガム、およびフィルムから選択される、請求項46記載の単位用量剤形。
【請求項48】
錠剤である、請求項47記載の単位用量剤形。
【請求項49】
トローチ剤である、請求項47記載の単位用量剤形。
【請求項50】
ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠が約50分以下である、請求項46記載の単位用量剤形。
【請求項51】
ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠が約40分以下である、請求項46記載の単位用量剤形。
【請求項52】
ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠が約30分以下である、請求項46記載の単位用量剤形。
【請求項53】
ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を提供するための時間枠が約20分以下である、請求項46記載の単位用量剤形。
【請求項54】
不眠症を有する患者において入眠までの時間を減らすための、口腔崩壊可能な薬剤の調製における、ドキセピン、またはドキセピン関連化合物の使用。
【請求項55】
口腔崩壊可能な薬剤を患者の口中で水を加えることなく約60秒未満で崩壊するように製剤する、請求項54記載のドキセピン、またはドキセピン関連化合物の使用。
【請求項56】
口腔崩壊可能な薬剤を患者の口中で水を加えることなく約30秒未満で崩壊するように製剤する、請求項54から55のいずれか一項記載のドキセピン、またはドキセピン関連化合物の使用。
【請求項57】
ドキセピン、またはドキセピン関連化合物が、ドキセピンまたはドキセピン関連化合物の複数の微粒子、およびドキセピンまたはドキセピン関連化合物を実質的に取り囲む保護材料を含む、請求項54から56のいずれか一項記載のドキセピン、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは代謝産物の使用。
【請求項58】
微粒子が本質的に約75ミクロンから約600ミクロンの粒子からなる、請求項57記載のドキセピン、またはドキセピン関連化合物の使用。
【請求項59】
微粒子が約0.01から約75重量%の口腔崩壊可能な薬剤を含む、請求項57または58のいずれか一項記載のドキセピン、またはドキセピン関連化合物の使用。
【請求項60】
口腔崩壊可能な薬剤が非直接圧縮充填剤および滑沢剤のマトリックスをさらに含む、請求項54から59のいずれか一項記載のドキセピン、またはドキセピン関連化合物の使用。
【請求項61】
非直接圧縮充填剤が非直接圧縮糖または非直接圧縮糖アルコールである、請求項60記載のドキセピン、またはドキセピン関連化合物の使用。
【請求項62】
非直接圧縮充填剤が約90ミクロン以下の平均粒径を有する、請求項60から61記載のドキセピン、またはドキセピン関連化合物の使用。
【請求項63】
口腔崩壊可能な薬剤が発泡剤をさらに含む、請求項54から62のいずれか一項記載のドキセピン、またはドキセピン関連化合物の使用。
【請求項64】
不眠症治療中の患者の入眠までの時間を短縮するための薬剤の調製において用いるための、ドキセピン、またはドキセピン関連化合物の口腔崩壊剤形であって、患者の口中で水を摂取することなく約60秒未満で崩壊するように製剤する、口腔崩壊剤形。
【請求項65】
口腔崩壊剤形が、ドキセピンの治療上有効な血漿濃度を口腔で崩壊しない経口投与よりも速く達成することに関連する、請求項64記載の使用。
【請求項66】
治療上有効な血漿濃度が60分未満で達成される、請求項65記載の口腔崩壊剤形。
【請求項67】
治療上有効な血漿濃度が40分未満で達成される、請求項65記載の口腔崩壊剤形。
【請求項68】
治療上有効な血漿濃度が20分未満で達成される、請求項65記載の口腔崩壊剤形。
【請求項69】
患者の口中で30秒未満で崩壊するように製剤する、請求項64から68のいずれか一項記載の口腔崩壊剤形。
【請求項70】
発泡剤をさらに含む、請求項64から69のいずれか一項記載の口腔崩壊剤形。
【請求項71】
発泡剤が約5cm3から約30cm3の体積を有する発生ガスを生じる、請求項70記載の口腔崩壊剤形。
【請求項72】
発生ガスが一般に二酸化炭素または酸素を含む、請求項71記載の口腔崩壊剤形。
【請求項73】
発泡剤が酸供給源および炭酸塩供給源を含む、請求項70から72のいずれか一項記載の口腔崩壊剤形。
【請求項74】
(a)非ドキセピン睡眠補助物質(non-doxepin sleep aid)で治療された患者を選択する段階;および
(b)該患者にドキセピン、またはドキセピン関連化合物の急速崩壊剤形を、入眠までの時間が非ドキセピン睡眠補助物質による入眠までの時間と比べて減るように投与する段階
を含む、不眠症の治療方法。
【請求項75】
患者にドキセピン、またはドキセピン関連化合物の急速口腔崩壊剤形を提供する段階を含む、不眠症の治療方法。
【請求項76】
約0.1mgから約9mgの間のドキセピンとの混合後、口腔内での該混合物の60秒未満での崩壊を可能にする一つまたは複数の賦形剤を特定する段階;および
該賦形剤を該ドキセピンと混合する段階
を含む、ドキセピン睡眠薬剤の設計方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−537554(P2009−537554A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511110(P2009−511110)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/012107
【国際公開番号】WO2007/142811
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508343191)ソマクソン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】