説明

不織布原反

【課題】タイルカーペット地の裏地材等として使用する不織布原反において、タイルカーペット地を正方形等に裁断後のタイルカーペット要素に、後加工により付す経緯方向の識別マークがなくても経緯方向を一目で識別ができる不織布原反を提供すること。
【解決手段】ニードルパンチ加工で形成されるとともに、経(タテ)方向に所定幅の筋模様Mが少なくとも一本、径(タテ)方向に形成されている不織布原反16。該不織布原反は、パイル地原反と貼着一体化させて、タイルカーペット地14の裏地層16Aとする。上記不織布原反16は、ニードルパンチ加工で製造するに際して、前記ウェブシートの送り方向と平行に帯状域を非ロッキング針植針域としたニードルボードを使用して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用に際してタイル状に裁断して使用するタイルカーペット地に適した不織布原反及びその製造方法、さらには、該不織布原反を裏地材とするタイルカーペット地に関する。
【0002】
ここでは、不織布原反を裏地材としてタイルカーペット地に適用する場合を例に採り説明する。本発明の不織布原反の適用は、裁断後、方向性の判別が必要な場合にも及ぶ。
【背景技術】
【0003】
床などに使用されるカーペットには、様々な形態のものが従来から用いられている。
【0004】
それらのうちの1つにタイルカーペットがある。タイルカーペットは、予めタイルカーペット地(カーペット用材料)を正方形に裁断(切断)してカーペット要素12としておいて、該カーペット要素12をカーペット地の経方向と緯方向とが交互に配置されるようにして並べて施工する(図1参照)。施工後のカーペットの表面が本物のタイルのような碁盤状(市松模様)に見えることからこの名がある。
【0005】
このようにカーペット要素を経方向と緯方向に交互に配置する目的は、1)カーペットの表面が有する模様を幾何学的に配置させて市松模様をデリケート(微妙)に顕出させること、及び、2)経方向と緯方向により異なるカーペット材の力学的特性を交互に配置することにより力学的特性を安定的にバランスさせること、にある。
【0006】
しかし、タイルカーペット用にカーペット材を正方形に裁断したカーペット要素では、表層用材からなる表面側からも、又は、ニードルパンチ加工を施して得られる裏地材からなる裏面側からも、経緯方向を一目で識別することができず、現場施工におけるカーペット材としては、不適であった。
【0007】
このため、従来のカーペット材では、樹脂層や不織布層などからなる裏地材の表面(裏面側)に識別マークを、捺染ローラなどを使用してプリント加工することにより、経緯識別を一目でできるようにしていた。しかし、このようなプリント加工は、タイルカーペット地の製造工数(工程)の増大をもたらした。
【0008】
なお、本発明の特許性に影響を与えるものではないが、本発明に係るタイルカーペットに関連する先行技術文献として、例えば、特許文献1・2等が存在する。
【特許文献1】特開平7−279384号公報
【特許文献2】特開平9−276117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記にかんがみて、タイルカーペット地の裏地材等として使用する不織布原反において、タイルカーペット地を正方形等に裁断後のタイルカーペット要素に、後加工により付す経緯方向の識別マークがなくても経緯方向を一目で識別ができる不織布原反を提供することを目的(課題)とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る不織布原反は、「ニードルパンチ加工で形成されるとともに、経(タテ)方向に所定幅の筋模様が少なくとも一本、径(タテ)方向に形成されている」構成により上記課題を解決する。
【0011】
不織布原反に筋模様が形成されているため、該不織布原反をタイルカーペット地の裏地材(裏地層)として使用した場合、裁断後のタイルカーペット要素の経緯識別が一目瞭然である。したがって、タイルカーペットの施工性が良好となる。そして、筋模様は、原反不織布を製造する際のニードルパンチ加工に際して、同時形成でき、従来におけるの識別マーク付与等の余分な工数が不要となる。
【0012】
上記筋模様は、例えば、模様付け針又は本来のロッキング針より短くしたショート針で形成されたものとする。
【0013】
また、筋模様の幅は、通常、3〜20mmとする。筋模様の幅が狭すぎると経緯識別性が低下する。逆に、筋模様の幅が広すぎると、不織布に要求される強度が確保し難い。
【0014】
そして本発明のタイルカーペット地は、意匠側面層(表側層)と裏地層(裏側層)とを備え、裏地層を上記不織布原反で形成した構成となる。
【0015】
裏地層の不織布を形成する短繊維の交絡部分が溶着及び/又は接着により固着されている構成とすることが望ましい。上記の如く、筋模様の形成部位は、強度が相対的に弱く、ニードルロッキング以外の結合手段が通常必要である。
【0016】
また、意匠側面層は、タフティング加工して得たパイル原反で形成することが意匠性の見地から望ましい。
【0017】
なお、上記各構成の不織布原反の製造方法は、「ウェブシートにニードルパンチ加工を施すニードルパンチ工程を含み、該ニードルパンチ加工に際して、前記ウェブシートの送り方向と平行に帯状域を非ロッキング針植針域としたニードルボードを使用する」構成となる。
【0018】
また、上記各構成のタイルカーペット地を製造する方法は、「意匠側面層を形成する布帛パイル地原反と、不織布原反とを、各繰出しリールから繰り出し、積層後、加熱処理工程を経て接着一体化する」構成となる。
【0019】
また、前記各構成のタイルカーペット地を用いてのタイルカーペットの施工法は、「タイルカーペット地を、所定形状に裁断して調製したカーペット要素を、床面に敷き詰めて施工する」構成となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明で、混合率を示す「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。
【0021】
本実施形態のタイルカーペット地14は、不織布原反を裏地材(裏地層)16Aとし、パイル原反を意匠側面材(意匠側面層)18Aとする二層構造である(図2)。ここでは、二層構造を例に採るが、不織布原反のみの単層構造、裏地層16Aと意匠側面層18Aとの間に樹脂バリア層20等を備えた、三層構造(図3)さらには四層構造等にも本実施形態は適用可能である。
【0022】
そして、裏地層16Aには、ニードルパンチ加工による筋模様Mが一本又は複数本、経(タテ)方向に形成されている。
【0023】
不織布原反は、ニードルパンチ(ロッキング)加工で形成されていることを前提とする。
【0024】
そして、該不織布原反16は、慣用の製造方法により製造する。例えば、図4に示す如く、A.短繊維調合工程、及びB.不織布成形工程を経て製造する。
【0025】
A.単繊維調合工程:
ウェブ(不織布)を形成する短繊維の原綿22を開繊機(オープン機)24で開繊後、調合機26で所定混合比率になるように調合(混合)する。ここで、使用する短繊維の種類としては、特に制限されるものではなく、天然繊維や合成繊維のいずれもが使用できる。
【0026】
例えば、ポリエステル繊維、脂肪族または芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ビニロン、レーヨン、キュプラ、アセテート等の合成繊維(人造繊維)を好適に使用でき、特に、ポリエステル繊維を好適に使用できる。
【0027】
また、短繊維の繊度とカット長は、ニードルパンチ加工で交絡させて不織布が形成されれば、特に限定されるものではない。繊度は、カード機30の通過性も考慮して、1.1〜100dtexが、さらには3.3〜11dtexが好ましい。また、カット長は、21〜200mmが、さらには51〜76mmが好ましい。
【0028】
また、短繊維の交絡部分を溶着結合させる構成とする場合は、単繊維として接着性繊維(低融点ポリマーからなる短繊維であって交絡部溶着作用を奏するものをいう。以下同じ。)を混合する。
【0029】
ここで低融点ポリマーとしては、低融点ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの低融点ポリマーからなる繊維でもよいが、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系エラストマー体、ポリオレフィン系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマーからなる繊維も好適に使用できる。また、このような接着性繊維は、低融点ポリマー100%からなるものでもよく、低融点ポリマーと高融点ポリマーとにより形成される複合繊維であってもよい。該複合繊維としては、低融点ポリマーと高融点ポリマーが、シース・コアー型(さや芯型)に配置されるもの又はサイドバイサイド型に配置されるもののいずれでもよい。
【0030】
このような接着性繊維の混合割合(低融点ポリマー成分としての混合割合)は、短繊維全重量に対して、5〜80%が、さらには20〜40%が好ましい。
【0031】
この混合割合が5%未満では、後で述べるように不織布を構成する短繊維の交絡部分を溶着して固着させることが困難となる。また、該混合割合が80%を超える場合には、得られた不織布が硬くなり過ぎ、不織布独特の弾力性が損なわれ、高級感が低下する。
【0032】
B.不織布成形工程
下記複数のサブ工程からなるものである。
【0033】
I)計量工程:、調合機26からの搬送されてきた開繊・調合後の短繊維原料を計量機28で計量する。
【0034】
II)ウェブ成形工程:計量後の短繊維原料をカード機30へ送り込んで単層ウェブw1を成形する。
【0035】
III)積層(レイヤー)工程:直角コンベヤ32上に、ウェブ(クロス)レイヤー34で折り重ねて所定重量・厚み・幅の積層ウェブw2とする。
【0036】
IV)ドラフト工程:上記積層ウェブw2をドラフト(延伸)機36に送り込み、延伸により繊維の経緯配分を行いニードルパンチに適した構成のウェブシートw3とする。
【0037】
V)ニードルパンチ工程:上記ウェブシートw3をニードルパンチ機38A、38B、38Cへ送り込み、一段又は複数段に配されたニードルボード40A、40B、40Cにより上下からニードル針により突き刺して不織布とする。なお、各ニードルパンチ機38A、38B、38C間には、パンチ直後のウェブから落下する短繊維等のゴミを受けるごみ受けシート41、41が配されている。
【0038】
VI)検査・巻取工程:こうして成形したニードルパンチ(ロック)不織布は、色・風合いを目視により、鉄片を鉄片検出器42により検査して、規格幅にトリマー(耳取り機)44で切り取り、巻き取り機(リーラー)46に巻き取って不織布原反16とする。なお、切除された耳部は回収器48で回収してリサイクルできるようになっている。
【0039】
そして、本実施形態では、上記ニードルパンチ工程(ニードルパンチ加工)に際しては特殊な下記特定ニードルボード40を使用する。ここで、ニードルボード40は、前述の図4に示す不織布の製造工程図において、全てのニードルボードを、上記形態の特定ニードルボード40に置換してもよいが、少なくとも最終段のニードルボードのみ上記特定ニードルボード40とする。
【0040】
図5は、当該特定ニードルボード40を模式的に示した平面図である。特定ニードルボード40は、基本的には、汎用のニードルボード40と同様に、100mm程度の長さを有する一定規格の図6に示すようなロッキング針41をニードルボード本体40aに、植針されて形成されている。このとき、ロッキング針41は不織布の幅方向に沿うように所定ピッチで植針された針列L1〜Lnを、ランダムに幅方向にずらせて複数列形成する。
【0041】
このとき、ここで針列間ピッチPAは、例えば、3〜15mm、列針間ピッチPBは、例えば、2〜20mmとし、ずれ量はランダムで例えば0.5〜10mmの範囲で、不織布要求特性に応じて適宜設定する。
【0042】
そして、上記において、ウェブシートw3の送り方向と平行な帯状域を非ロッキング針植針域Z1、Z2、Z3とされている。この非ロッキング針植針域の幅bは、針列ピッチPAは及び植針ピッチPBが、上記範囲の場合、例えば、5〜15mmとする。
【0043】
ここで、非ロッキング用針とは、本来の図6に示すようなロッキング針(フック針)41とは異なる針形態のものをいい、例えば、図7に示すようなフォーク針41Aやクラウン針等の模様付け針を使用したり、本来のロッキング針41を短くしたショート針(3〜10mm程度短い)を使用したりする。
【0044】
模様付け針41Aを使用した場合は、非ロッキングの筋模様が明瞭なものを形成しやすく、正方形等の所定形状に裁断後して調製したタイルカーペット要素の、施工の際における経緯の目視判別が容易となる。ここでは、裁断形状としては、正方形に限らず、正三角形、正六角形等の、敷き詰めることのできる形状なら特に限定されない。
【0045】
特定ニードルボード40を使用して短繊維からなるウェブシートw3にニードルパンチ加工を行うが、ニードルパンチ加工の条件としては、公知の条件が適用可能である。
【0046】
例えば、ニードルパンチ加工のパンチ数としては、30〜1000本/cm2が、さらには50〜200本/cm2が好ましい。
【0047】
このようなニードルパンチ加工によって不織布の経(タテ)方向に非ロッキングの筋が形成された不織布が得られる。経方向に形成される模様筋(経筋)は、通常の針を用いた部分と種類の異なる模様付け針やショート針を用いた部分では不織布表面の毛羽の状態やニードルパンチ加工による不織布の締まり状態が微妙に異なりこれにより形成されるものと考えられる。
【0048】
さらに、本発明方法により得られるかかる経筋を有する不織布がカーペットの基材としての機能を充分に果すために適度な硬さや弾力性を有するものが好ましい。
【0049】
そのためには不織布を構成する短繊維の交絡部分が、ずれない様に固着されていることが必要である。すなわち通常の不織布は、短繊維ウェブシートを形成する段階やニードルパンチ加工を施した段階で不織布を構成する短繊維同士が絡まりあい交絡部分(交絡点)を形成しているが、不織布の外部から力が加わったときこの交絡点がずれてしまうと弾力性などの機械的性能が低下して好ましくない。このため該短繊維の交絡部分を溶着若しくは接着によりずれない様に固着することが望ましい。
【0050】
短繊維の交絡部分を固着する方法は、前述の如く、短繊維の中に予め低融点のポリマーからなる繊維を混合させておき、不織布とした後に該不織布に熱処理(固着処理)を施して低融点成分を溶融させて交絡部分を固着させる方法や、接着性樹脂からなるエマルションを含浸法やスプレー法などにより経筋を有する不織布に付与して熱処理(固着処理)を施して該接着性樹脂により交絡部分を固着させる方法などがある。
【0051】
このように短繊維の交絡部分を接着する接着性樹脂の種類は、特に制限はなく接着性樹脂であれば特に限定されない。例えば、スチレンブタジエン(SBR)、高スチレンブタジエン(SB)、アクリロニトリルブタジエン(NBR)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のラテックス等を好適に使用できる。このような接着性樹脂のエマルションの付与量(固形分換算)は、乾燥後の不織布全重量に対して、5〜50%が、さらには20〜40%が好ましい。
【0052】
短繊維に低融点ポリマーを混合した場合、若しくは、不織布に接着性樹脂を付与した場合のいずれも不織布とした後に、乾燥処理若しくは熱処理を施す。この熱処理の条件としては、温度:110℃〜200℃の範囲、時間:1〜10minの範囲で行うことが好ましい。
【0053】
このようにして得た経筋(非ロッキングの筋模様)を有する不織布原反16は、タイルカーペット14の裏地材(裏地層)16Aとして使用する。
【0054】
すなわち、図8に示す如く、不織布原反16を別に調製したパイル地原反18とともに各繰出リール52、52Aから同時的に繰り出して、積層しながら、加熱処理炉54内を通過させて、両者を接着一体化させる。
【0055】
すなわち裏地用材料となる不織布原反(裏地材)16とパイル地原反(表層材)18とは、経筋Mを有する不織布原反12の上にパイル地原反18が積層されるようにして同時に加熱処理炉(乾燥・熱処理室)54に供給される。実際の工程では、パイル地原反18と不織布原反16との間に接着剤(図示せず)を介在させるが、該接着剤はパイル地原反18と不織布原反16とが積層される前、すなわち、加熱処理炉(乾燥・熱処理室)54に入る前に両者の間に接着剤を供給すること(図示せず)により行われる。なお、56は冷却ローラを示す。
【0056】
また、ここに使用される接着剤は、接着性樹脂エマルションを塗布する方法が使用できる。該接着性樹脂エマルションの種類は特に制限はないが、前述の短繊維の交絡部分を接着に使用した各種ラテックスを好適に使用できる。なお、接着性樹脂エマルションの塗布量は、500〜3000g/m2の範囲で使用するものが例示され、さらに好ましい範囲としては1000〜2000g/m2である。
【0057】
なおパイル原反(意匠側面材)18としては、タフティング加工して得たものが望ましいが、編織物やそのパイル原反でもよい。ここで、タフティング加工とはタフティング機で基布にパイルを差し込んでパイルを形成する加工方法及びそれに類するものを意味する(JIS用語「タフテッドカーペット」の項参照)。
【0058】
上記意匠側面層18Aの形成材であるパイル地原反を形成する繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、脂肪族または芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ビニロン、レーヨン、キュプラ、アセテート等の合成繊維を使用することができる。
【0059】
こうして調製したタイルカーペット地14は、正方形等に裁断して、通常、部屋に敷き詰めて施工する。この施工の際、裏面側には縦筋模様を備えているため、従来の如く、裏側面にプリント加工をする必要がなくなり一目で経緯の判断ができ、施工作業性が良好である。
【0060】
また、本実施形態のタイルカーペット地は、裏地材(裏地層)を不織布原反としたため、厚みがある割に重量が軽く、コストパフォーマンスが高い。またクッション性が高い為に歩行感が良好で、床に響き難い。
【0061】
なお、模様付けを不織布原反の一面(裏面側)のみ形成した場合は、そのままタイルカーペット地として使用できる可能性も有する。例えば、ウェブシートを貫通しない模様付け針又は極端に短いロック針を使用して筋模様を形成する。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例中の各特性は下記の方法により評価した。
(1)圧縮率
JIS L 1022に規定される「圧縮率」に準じて測定した。
(2)圧縮弾性率
JIS L 1022に規定される「圧縮弾性率」に準じて測定した。
【0063】
<不織布原反の調製>
1)実施例1
短繊維ウェブシートに使用する短繊維として、ポリエステル短繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:51mm、混合割合:50重量%)、同じくポリエステル短繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:51mm、混合割合:35%)、原着(ブラック)ポリエステル短繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:51mm、混合割合:15%)をそれぞれブレンダーに供給して混綿し、さらに、ホッパーに供給して混綿した短繊維を2.3kg/minの速度でカーディング工程に供給し、該カーディング工程にて前記短繊維を開繊後、レイヤー(積層)工程、ドラフト工程を経て短繊維ウェブシートを作成した。
【0064】
ニードルパンチ加工は、幅(送り方向長さ):320mm、針間ピッチ:8mm、列間ピッチ:6〜10mm(ランダム)の基本仕様のニードルボードを装着した2台のニードルパンチ機を通して行った。
【0065】
上記ニードルボードには、通常のニードル針(ロッキング針:レギュラー針)として長さ:4.0インチ(約102mm)のニードル針を植針し、図5で示す短繊維ウェブシートの送り方向に沿った非ロッキング植針域b(10mm)の部分に含まれる針には、上記ロッキング針より短い長さ:3.8インチ(約97mm)の針(非ロッキング針)を植針し、非ロッキング植針域bが100mm毎の間隔Sで配置されるようにしたニードルボードとした。
【0066】
上記ニードルボード使用して、ニードルポイントが125ポイント/cm2の条件となるようにしてニードルパンチ加工を行い、不織布を構成する短繊維に交絡処理を施して、目付量:390g/m2の不織布原反を製造した。該不織布の表面には、毛羽の差異から生じる経方向の筋が見られた。このとき、該不織布原反の圧縮率は74.5%、圧縮弾性率は78.6%であった。
【0067】
2)実施例2
実施例1で得た短繊維ウェブ不織布にスチレンブタジエン共重合体からなるラテックス:100g/m2(固形分:50%)をスプレー装置により塗布し、乾燥温度:170℃、時間:4minの条件にて熱処理し、不織布を構成する短繊維の交絡部が接着固着した不織布原反を得た。このとき、該不織布原反の圧縮率は37.6%、圧縮弾性率は84.8%であった。
【0068】
3)実施例3
短繊維ウェブシートに使用する短繊維として、ポリエステル短繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:51mm、混合割合:30%)、同じくポリエステル短繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:51mm、混合割合:35重量%)、原着(ブラック)ポリエステル短繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:51mm、混合割合:15%)、低融点ポリマー(50%)がシース部分に通常の融点を有するポリマー(50%)がコアー部分に配置されたポリエステル複合繊維からなる短繊維(繊度:4.4dtex、繊維長:51mm、混合割合:20重量%)をそれぞれブレンダーに供給して混綿する以外は実施例1と同様に実施して経方向に筋が見られる不織布原反(目付:390g/m2)を製造した。このとき、該不織布原反の圧縮率は75.2%、圧縮弾性率は79.2%であった。
【0069】
該不織布原反を温度:170℃、時間:4minの条件で熱処理を行い、不織布原反を構成する短繊維の交絡部分が溶着して固着させた不織布原反を得た。このとき、圧縮率は49.3%、圧縮弾性率は82.4%であった。
【0070】
4)実施例4
短繊維ウェブシートに使用する短繊維として、ポリエステル短繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:51mm、混合割合:65%)、原着(ブラック)ポリエステル短繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:51mm、混合割合:25%)、ポリエステル複合繊維(芯さや型:さや部比率50%)の接着性短繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:51mm、混合割合:10%)をそれぞれブレンダーに供給して混綿する以外は実施例1と同様に実施して経方向に筋が見られる不織布原反(目付:200g/m2)を得た。該不織布原反の表面には、毛羽の差異から生じる経方向の筋が見られた。このとき、圧縮率は73.6%、圧縮弾性率は78.2%であった。
【0071】
該不織布原反にスチレンブタジエン共重合体からなるラテックス:25g/m2(固形分)を樹脂発泡装置、スプレー装置により塗布し、乾燥温度:120℃、時間:6minの条件で熱処理し、不織布を構成する短繊維の交絡部分が溶着・接着し固着した不織布原反を製造した。このとき、圧縮率は40.9%、圧縮弾性率は84.6%であった。
<タイルカーペット地の調製>
意匠側面材として、ポリエステル繊維からなる織物基布(目付:100g/m2)及びパイル糸(ポリエステルBCF加工糸:33dtex)を用いて従来から公知の方法によりタフティング加工及び目止め加工を施して目付量:1000g/m2のパイル地原反を調製した。
【0072】
上記で調製したパイル地原反18が意匠側面層(意匠側面材)18Aとなり、前記各実施例の不織布原反16が裏地層(裏地材)16Aとなるように、図8に示すように各繰出リール52、52Aから各原反18、16を繰り出し、図8に示す加熱処理炉54を通過させる前に、両対向面間に、接着剤として、スチレンブタジエン共重合体からなるラテックスを用い1000g/m2(固形分)の割合で塗布し、温度:180℃、時間:6minの
条件にて熱処理して該両原反を貼合せ接着一体化させて各実施例のタイルカーペット地14を得た。
【0073】
上記各タイルカーペット地14を、正方形(50cm角)に裁断してタイルカーペット要素を製造した。このとき各実施例のタイルカーペット要素の裏には経筋が存在しており、該タイルカーペットの経方向、緯方向を容易に識別することができた。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】正方形に裁断したタイルカーペット要素を縦横交互に敷き詰めた場合のモデル平面図である。
【図2】本発明の不織布を適用する二層構造のタイルカーペット地の概略断面図である。
【図3】同じく二層構造のタイルカーペット地の概略断面である。
【図4】本発明における不織布の製造方法を適用する一態様の工程図である。
【図5】本発明に使用する特殊な特定ニードルボードを模式的に表した平面図である。
【図6】本発明の不織布を製造する際に使用するロッキング針の一例であるフック針の先端形状を示す正面図である。
【図7】同じく模様付け針の一例であるフォーク針の先端形状を示す正面図である。
【図8】本発明のタイルカーペット地の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0075】
14 タイルカーペット地
16 不織布
18 パイル布帛層(表層繊維層、表層用材料)
40 特定ニードル板
41 ロッキング針(フック針)
41A 非ロッキング針(フォーク針:模様付け針)
50 表層用材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードルパンチ加工で形成されている不織布原反であって、所定幅のニードルパンチ加工による筋模様が少なくとも一本経(タテ)方向に形成されていることを特徴とする不織布原反。
【請求項2】
前記筋模様が、模様付け針又はロッキング針より短くしたショート針で形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の不織布原反。
【請求項3】
意匠側面層と裏地層とを備え、前記裏地層が、請求項1又は2記載の不織布原反で形成された不織布層であることを特徴とするタイルカーペット地。
【請求項4】
前記不織布層を形成する短繊維の交絡部分が溶着及び/又は接着により固着されていることを特徴とする請求項3記載のタイルカーペット地。
【請求項5】
前記意匠側面層が、タフティング加工のパイル地原反で形成されていることを特徴とする請求項3又は4記載のタイルカーペット地。
【請求項6】
請求項1又は2のいずれか記載の不織布原反を製造する方法において、
ウェブシートにニードルパンチ加工を施すニードルパンチ工程を含み、
該ニードルパンチ加工に際して、前記ウェブシートの送り方向と平行に帯状域を非ロッキング針植針域としたニードルボードを使用することを特徴とする不織布原反の製造方法。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれか記載のタイルカーペット地を製造する方法であって、
意匠側面層を形成する布帛パイル地原反と、請求項1〜5のいずれか記載の不織布原反とを、各繰出しリールから繰り出し、積層後、加熱処理工程を経て前記両原反を接着一体化することを特徴とするタイルカーペット地の製造方法。
【請求項8】
請求項3〜5のいずれか記載のタイルカーペット地を、所定形状に裁断して調製したカーペット要素を、床面に敷き詰めて施工することを特徴とするタイルカーペットの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−348427(P2006−348427A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176533(P2005−176533)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000149446)株式会社オーツカ (7)
【Fターム(参考)】