説明

不要波除去回路

【課題】不要波成分を精度よく抑圧し、かつ、低コスト化および小型化を図る。
【解決手段】メイン信号ライン1から分配した補助信号ライン2と定数算出ライン3とを設け、定数算出ライン3の不要波除去定数算出回路3bにおいて、外部入力が無い状態で、メイン信号ライン1と補助信号ライン2の両方の信号に共通して重畳されている不要波成分を除去するための重み付け定数を算出し、不要波除去定数保持メモリ3cに記憶させ、その後、外部入力を許可した状態に切り替えて、記憶されている重み付け定数を補助信号ライン2の信号に反映させて、メイン信号ライン1の信号と合成することで、互いに相関のある不要波成分をメイン信号ライン1の信号から除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不要波除去回路に関し、特に、レーダ用および通信用の受信機において受信した受信信号に重畳する定常的な不要波成分の除去を行うための不要波除去回路に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ用受信機および通信用受信機においては、受信信号に所望成分と関係のない不要波成分が重畳していない事が望ましい。レーダ用受信機の場合、受信信号に不要波成分が重畳していると、実際には何も存在していないのに、物が存在しているかのような誤った結果を得てしまう原因となる(虚像の発生)。これらの不要波成分の一つとしては、受信機内部のクロック回路から受信信号ラインへ漏れ込むクロック成分等の受信機内部回路に起因する成分があげられる。これらの漏れ込み電力を十分に低減させるためには、例えば、導電性物質で形成された筐体を用いて電磁界的に被覆したり、吸収帯を用いた不要波成分の除去を行ったり、また、受信周波数帯域外の成分であれば、フィルタを挿入するなど、ハードウェア的な工夫を施して対応していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−134183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、特許文献1等に示された従来技術においては、クロック成分等の受信機の受信信号ラインに定常的に漏れ込む不要波成分を除去するために、シールド特性の優れた筐体やケーブル、及び、吸収帯を使用しなければならず、高コスト化、大型化を招くという問題点があった。
【0005】
また、漏れ込み成分が大きい場合、上記の筐体やケーブル、或いは、吸収帯では、不要波成分を抑圧しきれないという問題点もあった。
【0006】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、不要波成分を精度よく抑圧し、かつ、低コスト化および小型化を図ることが可能な、不要波除去回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、外部から入力された受信信号を送信して、後段装置へ送出するメイン信号ラインと、前記メイン信号ラインから信号を分配する第1および第2の分配手段と、前記第1の分配手段により前記メイン信号ラインから分配された信号が入力され、当該信号を送信する補助信号ラインと、前記補助信号ラインから信号を分配する第3の分配手段と、前記第2の分配手段により前記メイン信号ラインから分配された信号と前記第3の分配手段により前記補助信号ラインから分配された信号との2つの信号が入力され、それらの2つの信号に基づいて、それらの2つの信号に共通して重畳された不要波成分を除去するための演算に用いる重み付け定数を計算する定数算出手段と、前記補助信号ラインによって送信された前記信号に対して、前記定数算出手段で算出された重み付け定数による重み付けを行う不要波除去定数反映手段と、前記メイン信号ラインにより送信された前記信号から、前記不要波除去定数反映手段から出力された前記重み付けされた信号を減算して、前記不要波成分を除去する減算手段とを備え、外部からの前記受信信号の入力を許可しない状態で、前記定数算出手段が前記重み付け定数を算出し、外部からの前記受信信号の入力を許可した状態で、前記不要波除去定数反映手段が前記定数算出手段による前記重み付けを行い、前記減算手段が前記減算を行って、前記不要波成分を除去することを特徴とする不要波除去回路である。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、外部から入力された受信信号を送信して、後段装置へ送出するメイン信号ラインと、前記メイン信号ラインから信号を分配する第1および第2の分配手段と、前記第1の分配手段により前記メイン信号ラインから分配された信号が入力され、当該信号を送信する補助信号ラインと、前記補助信号ラインから信号を分配する第3の分配手段と、前記第2の分配手段により前記メイン信号ラインから分配された信号と前記第3の分配手段により前記補助信号ラインから分配された信号との2つの信号が入力され、それらの2つの信号に基づいて、それらの2つの信号に共通して重畳された不要波成分を除去するための演算に用いる重み付け定数を計算する定数算出手段と、前記補助信号ラインによって送信された前記信号に対して、前記定数算出手段で算出された重み付け定数による重み付けを行う不要波除去定数反映手段と、前記メイン信号ラインにより送信された前記信号から、前記不要波除去定数反映手段から出力された前記重み付けされた信号を減算して、前記不要波成分を除去する減算手段とを備え、外部からの前記受信信号の入力を許可しない状態で、前記定数算出手段が前記重み付け定数を算出し、外部からの前記受信信号の入力を許可した状態で、前記不要波除去定数反映手段が前記定数算出手段による前記重み付けを行い、前記減算手段が前記減算を行って、前記不要波成分を除去することを特徴とする不要波除去回路であるので、不要波成分を精度よく抑圧し、かつ、低コスト化および小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る不要波除去回路の構成を示す構成図である。図1において、1は、外部から入力された受信信号を後段装置(図示せず)へ送出するメイン信号ライン、2は、不要波を除去する際に参照するためにメイン信号ライン1から分配された信号が通過する補助信号ライン、3は、メイン信号ライン1の信号から不要波成分を除去するための重み付け定数を算出する定数算出ライン、4は、メイン信号ライン1から補助信号ライン2へ信号を分配する第1の分配回路、5は、メイン信号ライン1から定数算出ライン3へ信号を分配する第2の分配回路、6は、補助信号ライン2から定数算出ライン3へ信号を分配する第3の分配回路、7は、補助信号ライン2を経由した信号に対して定数算出ライン3で算出された重み付け定数を反映させる不要波除去定数反映回路、8は、メイン信号ライン1を経由した信号から不要波除去定数反映回路7によって重み付け定数が反映された上記信号を減算する減算回路である。また、定数算出ライン3は、定数の算出を行うときはONとなり、定数の算出を行わないときはOFFとなる、定数算出ON/OFF切替スイッチ3aと、メイン信号ライン1から分配された信号と補助信号ライン2から分配された信号とが入力されて、不要波成分を除去するための重み付け定数を算出する不要波除去定数算出回路3bと、算出された重み付け定数を記憶する不要波除去定数保持メモリ3cとから構成される。
【0010】
なお、定数算出ON/OFF切替スイッチ3aには、図のように、2つのスイッチが設けられているが、これらは、メイン信号ライン1と補助信号ライン2から分配した2つの信号に対してそれぞれ1つずつ設けられたものである。
【0011】
また、定数算出ON/OFF切替スイッチ3aの切り替えは、ユーザの手動または信号入力により行う。すなわち、ユーザが、予め用意されている2つのモード(定数の算出を行う定数算出モードと、外部からの受信信号を入力する外部信号受信モード)から1つを選択すると、それにより、定数算出ON/OFF切替スイッチ3aがONまたはOFFされる。あるいは、定数算出ON/OFF切替スイッチ3aの切り替えのタイミングが予め設定されていて、当該タイミングが来たら自動的にON/OFFが切り替わるようにしてもよい。
【0012】
次に動作について説明する。
【0013】
クロック回路からメイン信号ライン1に漏れ込むクロック成分等の受信機内部回路からの漏れ込み成分9に起因して、受信信号に不要波成分が存在する受信機において、分配回路4によりメイン信号ライン1の信号の一部を補助信号ライン2に分配する。このとき、外部からの信号入力を許可しない状態にし(この場合の許可/不許可を切り替えるための切替回路については図示省略。但し、当該切り替えは、定数算出ON/OFF切替スイッチ3aと連動して切り替わることとする。)、定数算出ON/OFF切替スイッチ3aをONとして、メイン信号ライン1と補助信号ライン2から分配した2つの信号を不要波除去定数算出回路3bに入力する。不要波除去定数算出回路3bは、入力された2つの信号に基づいて、それらに共通して定常的に重畳している、互いに相関のある、受信機内部の不要波成分を除去するための重み付け定数を算出する。すなわち、不要波除去定数算出回路3bは、減算回路8でメイン信号ライン1経由の信号から補助信号ライン2経由の信号を減算する際に、2つの信号ライン1,2に共通して重畳した互いに相関のある不要波成分を、メイン信号ライン1を経由した信号から相殺して除去できるような、補助信号ライン2経由の信号に対する振幅及び位相に関する重み付け定数を算出し、不要波除去定数保持メモリ3cに格納する。
【0014】
前記重み付け定数が不要波除去定数保持メモリ3cに格納された後に、定数算出ON/OFF切替スイッチ3aをOFFし、外部からの信号入力を許可した状態にして、不要波除去定数反映回路7が、不要波除去定数保持メモリ3cから出力される重み付け定数を用いて、補助信号ライン2経由の信号の振幅及び位相に対して重み付けする。この重み付けされた信号を、減算回路8にて、メイン信号ライン1を経由してきた信号から減算することで、メイン信号ライン1経由の信号に含まれる定常的な不要波成分が除去される。なお、この際、外部から入力された信号成分は、上記の重み付け定数を算出する際には入力されておらず、あまり相関がないため、殆ど抑圧されない。
【0015】
以上のように、この実施の形態1によれば、受信機の受信信号ラインに定常的に漏れ込む不要波成分を除去するために、メイン信号ライン1から分配した補助信号ライン2を設け、これらの信号ライン1,2を経由した、それらに共通に重畳している不要波成分を重畳した信号を合成する際に、当該不要波成分を除去するために、定数算出ライン3により、補助信号ライン2の信号に反映させて、それを重み付けするための重み付け定数を、外部入力が無い状態で算出し、当該重み付け定数を算出した後に、外部入力を許可した状態に切り替えて、不要波除去定数反映回路7により補助信号ライン2の信号に対して当該重み付け定数を反映させて、それをメイン信号ライン1の信号に減算回路8により合成させて、メイン信号ライン1の信号から不要波成分を除去するようにしたので、シールド特性の優れた筐体やケーブル等を使用しなくても、相関のある不要波を精度よく除去することができる。このように、本実施の形態1によれば、従来必要であったシールド特性の優れた筐体やケーブル等が不要になったため、受信機の低コスト化、小型化を図ることができる。
【0016】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2に係る不要波除去回路を示す構成図である。1〜8は実施の形態1と同じであるため、ここでは同一符号を付して示し、説明は省略する。10はメイン信号ライン1の減算回路8における演算をON/OFFするための減算ON/OFF切替回路である。すなわち、減算ON/OFF切替回路10がONの場合には、減算回路8における演算を行って不要波成分を除去し、減算ON/OFF切替回路10がOFFの場合には、減算回路8における演算を行わない。本実施の形態2と実施の形態1との構成の違いは、本実施の形態2においては、減算ON/OFF切替回路10が追加されている点である。
【0017】
減算ON/OFF切替回路10の切り替えは、基本的に自動的に行うこととする。すなわち、不要波の有無が時間的に周期を持って変化する場合に、当該周期に従って、減算ON/OFF切替回路10の切り替えのタイミングが予め設定されていて、当該タイミングが来たら自動的にON/OFFが切り替わる(不要波成分の除去を行う不要波除去モードと、不要波成分の除去を行わない不要波除去解除モードとを、切り替える)。あるいは、ユーザの手動または信号入力により、これらのモードの切り替えを行うようにしてもよい。なお、本実施の形態2の説明においては、不要波の有無が時間的に周期を持って変化する場合を例に挙げたが、他の条件により変化する場合には、減算ON/OFF切替回路10が、当該条件に基づいて、ON/OFFの切り替えをすることは言うまでもない。
【0018】
次に動作について説明する。
【0019】
本実施の形態2は、基本的には実施の形態1と同様の動作をするが、不要波の有無が時間的に周期を持って変化する場合に、減算ON/OFF切替回路10で、不要波が存在する場合は減算ONとし、不要波が存在しない場合は減算OFFと切り替える。これにより、不要波が存在しない時間帯においては、補助信号ライン2経由の信号を合成してしまうことにより起因する、外部入力の所望信号成分の劣化を防ぐことができる。
【0020】
以上のように、本実施の形態2においても、上述の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態2によれば、減算ON/OFF切替回路10で、不要波が存在する場合は減算ONとし、不要波が存在しない場合は減算OFFと切り替えできるようにしたので、不要波の有無が時間的に周期を持って変化する場合には、不要波が存在する時間帯のみ、不要波を除去することができるので、不必要に外部入力の所望信号成分を劣化させてしまうことを防ぐことができる。
【0021】
なお、上述の実施の形態1および2に係る不要波除去回路は、レーダや通信等に用いられる受信機に搭載して使用されるものであるが、その場合に限らず、別体で構成して受信機に接続して使用するようにしてもよいものとする。
【0022】
また、上述の実施の形態1および2の不要波除去回路においては、不要波除去定数保持メモリ3cに1つの重み付け定数を保持する例について説明したが、その場合に限らず、複数の重み付け定数を保持するようにすれば、さらに精度よく、不要波成分を除去することができる。例えば、受信信号に重畳する不要波成分の種類(種別)が時間的に周期を持って変化する場合に、当該種類(種別)ごとに、予め、重み付け定数を算出して、それらをすべて不要波除去定数保持メモリ3cに格納する。その上で、不要波除去定数反映回路7が、周期および現在時刻の時間帯に基づいて、不要波成分の種類(種別)を判定して、当該種類(種別)に合った重み付け定数を不要波除去定数保持メモリ3cから読み出して、それを用いて、補助信号ライン2の信号に重み付けを行う。なお、受信信号に重畳する不要波成分の種類(種別)が時間的に周期を持って変化する場合を例に挙げたが、他の条件により変化する場合には、不要波除去定数反映回路7が、当該条件に基づいて、不要波成分の種類(種別)を判定することは言うまでもない。このようにすることにより、不要波成分の各々の種類(種別)に対応した重み付け定数を適用することができる。
【0023】
また、上述の実施の形態1および2で示した不要波除去回路は1つだけ設けて使用してもよいが、その場合に限らず、それらを複数個接続して用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態1に係る不要波除去回路を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る不要波除去回路を示す構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1 メイン信号ライン、2 補助信号ライン、3 定数算出ライン、3a 定数算出ON/OFF切替スイッチ、3b 不要波除去定数算出回路、3c 不要波除去定数保持メモリ、4 分配回路、5 分配回路、6 分配回路、7 不要波除去定数反映回路、8 減算回路、9 不要波成分、10 減算ON/OFF切替回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力された受信信号を送信して、後段装置へ送出するメイン信号ラインと、
前記メイン信号ラインから信号を分配する第1および第2の分配手段と、
前記第1の分配手段により前記メイン信号ラインから分配された信号が入力され、当該信号を送信する補助信号ラインと、
前記補助信号ラインから信号を分配する第3の分配手段と、
前記第2の分配手段により前記メイン信号ラインから分配された信号と前記第3の分配手段により前記補助信号ラインから分配された信号との2つの信号が入力され、それらの2つの信号に基づいて、それらの2つの信号に共通して重畳された不要波成分を除去するための演算に用いる重み付け定数を計算する定数算出手段と、
前記補助信号ラインによって送信された前記信号に対して、前記定数算出手段で算出された重み付け定数による重み付けを行う不要波除去定数反映手段と、
前記メイン信号ラインにより送信された前記信号から、前記不要波除去定数反映手段から出力された前記重み付けされた信号を減算して、前記不要波成分を除去する減算手段と
を備え、
外部からの前記受信信号の入力を許可しない状態で、前記定数算出手段が前記重み付け定数を算出し、
外部からの前記受信信号の入力を許可した状態で、前記不要波除去定数反映手段が前記定数算出手段による前記重み付けを行い、前記減算手段が前記減算を行って、前記不要波成分を除去する
ことを特徴とする不要波除去回路。
【請求項2】
前記定数算出手段は、
前記重み付け定数の算出を行うときはONし、行わないときにOFFする、定数算出ON/OFF切替スイッチと、
算出した前記重み付け定数を格納する不要波除去定数保持メモリと
を有していることを特徴とする請求項1に記載の不要波除去回路。
【請求項3】
前記減算手段による前記減算を行うときはONされ、行わないときにOFFする、減算ON/OFF切替回路を
さらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の不要波除去回路。
【請求項4】
前記不要波除去定数保持メモリは、前記不要波成分の種別ごとの複数の重み付け定数を格納しており、
前記不要波除去定数反映手段は、前記不要波成分の種別を判定して、当該種別に対応した重み付け定数を前記不要波除去定数保持メモリから読み出して、前記重み付けを行う
ことを特徴とする請求項2または3に記載の不要波除去回路。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の不要波除去回路を複数個接続して構成したことを特徴とする不要波除去回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−278343(P2009−278343A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127215(P2008−127215)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】