説明

不飽和基を含むオルガノポリシロキサン

本発明は、ポリオレフィンと、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンとを含む組成物であって、該不飽和基が式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とする組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和基を含むオルガノポリシロキサンに関する。本発明はまた、オルガノポリシロキサンの少なくとも一部がポリオレフィンにグラフトした安定化ポリマーブレンドを形成することができるオルガノポリシロキサン及びポリオレフィンを含むポリマー組成物に関する。本発明はまた、グラフト法及び該グラフト法によって製造した安定化ポリマーブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第6013715号公報には、ポリオレフィンと、1分子当たり平均少なくとも2つのアルケニルラジカルを有するジオルガノポリシロキサンと、1分子当たり平均少なくとも2つのSi−H基を有するオルガノヒドリドシリコン化合物と、ヒドロシリル化触媒とを混合し、ジオルガノポリシロキサンを動的硬化することにより調製した熱可塑性エラストマーが開示されている。米国特許出願公開第6153691号公報には、ポリオレフィンと、シラノール末端ジオルガノポリシロキサンと、1分子当たり平均少なくとも2つのSi−H基を有するオルガノヒドリドシリコン化合物と、縮合触媒とを混合し、ジオルガノポリシロキサンを動的硬化することにより調製した熱可塑性エラストマーが開示されている。
【0003】
米国特許第6479580号公報には、ポリオレフィンと、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニルラジカルを有するジオルガノポリシロキサンゴムと、ラジカル開始剤とを混合し、ジオルガノポリシロキサンゴムを動的加硫することにより調製した熱可塑性エラストマーが開示されている。
【0004】
特定の化合物をポリマー主鎖にグラフトして特性を改善することによるポリオレフィン樹脂の変性が既知である。ベルギー国特許第652324号公報及び米国特許第3414551号公報には、無水マレイン酸をポリプロピレンと反応させるための方法が開示されている。米国特許第3873643号公報には、溶融条件下かつ過酸化物の存在下での環状エチレン性不飽和カルボン酸及び無水物のポリエチレンへのグラフトが開示されている。
【0005】
米国特許出願公開第3646155号公報には、140℃超の温度でフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらすことができる化合物の存在下ポリオレフィンと不飽和加水分解性シランとの反応(グラフト)によるポリオレフィン、特にはポリエチレンの架橋が開示されている。その後反応生成物の水分及びシラノール縮合触媒への曝露が架橋を行う。このプロセスは、ポリエチレンを架橋するのに商業的に広範に用いられている。欧州特許第809672号公報、欧州特許第1942131号公報、欧州特許第0276790号公報、国際公開第2007/14687号公報、英国特許第2134530号公報、米国特許第6864323号公報及び米国特許第7041744号公報は、かかるグラフト法及び架橋プロセスを開示する特許のさらなる例である。米国特許第6177519号公報、米国特許第6590036号公報、米国特許第6380316号公報、米国特許第5373059号公報、米国特許第5929127号公報、米国特許第6590039号公報及び国際公開第2009/073274号公報の全ては、他のポリオレフィン及びオレフィンコポリマーの不飽和加水分解性シランでのグラフトを開示している。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0287300号公報には、放射線硬化コーティング用添加剤としてSiOC基を介して懸垂的に結合したアクリル酸エステル基またはメタクリル酸エステル基を有するオルガノポリシロキサンが記載されている。
欧州特許第1022302号公報には、シラノール基を重合可能なエチレン性不飽和基を含むアルコキシシランと反応させるための触媒系が開示されている。この触媒系は、有機リチウム試薬及びヒドロキシアミンを含む。
【0007】
欧州特許第0581150号公報には、ヒドロキシル基またはエポキシ基を有するオルガノポリシロキサンを、エチレン性不飽和ジカルボン酸グラフト化ポリオレフィンまたはかかるグラフト化ポリオレフィンの反応生成物並びにアルコール、アミン及びアミノアルコールからなる群より選択した活性水素原子含有化合物と反応させることによって得た解除剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第6013715号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第6153691号公報
【特許文献3】米国特許第6479580号公報
【特許文献4】ベルギー国特許第652324号公報
【特許文献5】米国特許第3414551号公報
【特許文献6】米国特許第3873643号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第3646155号公報
【特許文献8】欧州特許第809672号公報
【特許文献9】欧州特許第1942131号公報
【特許文献10】欧州特許第0276790号公報
【特許文献11】国際公開第2007/14687号公報
【特許文献12】英国特許第2134530号公報
【特許文献13】米国特許第6864323号公報
【特許文献14】米国特許第7041744号公報
【特許文献15】米国特許第6177519号公報
【特許文献16】米国特許第6590036号公報
【特許文献17】米国特許第6380316号公報
【特許文献18】米国特許第5373059号公報
【特許文献19】米国特許第5929127号公報
【特許文献20】米国特許第6590039号公報
【特許文献21】国際公開第2009/073274号公報
【特許文献22】米国特許第出願公開2005/0287300号公報
【特許文献23】欧州特許第1022302号公報
【特許文献24】欧州特許第0581150号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
シリコーンをポリオレフィンにグラフトするための本発明による方法は、ポリオレフィンにフリーラジカルサイトをもたらし得る手段の存在下でポリオレフィンを不飽和基を含むケイ素化合物と反応させる工程を備え、該ケイ素化合物は、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンであることを特徴とする。
【0010】
本発明はまた、ポリオレフィンと、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンとを含む組成物を含む。
【0011】
他の態様によれば、本発明は、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンからなり、前記不飽和基は式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とする。
【0012】
他の態様によれば、本発明は、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンからなり、前記不飽和基は式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、かつC−Si結合によってポリオルガノシロキサンに結合し、またR”は水素または−CH=CH−若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とする。
【0013】
本発明は、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンの製造方法を含み、前記不飽和基は式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(Xは、−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、かつC−Si結合によってポリオルガノシロキサンに結合し、またR”は水素または−CH=CH−若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であり、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つのSi−OH基を含むポリオルガノシロキサンを式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の不飽和基を含むアルコキシシランと反応させることを特徴とする。
【0014】
本発明はさらに、ポリオレフィンと、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であるポリオルガノシロキサンとを含み、該ポリオルガノシロキサンが、該ポリオルガノシロキサン中の式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の不飽和基のフリーラジカル重合によって形成した結合により少なくとも部分的に該ポリオレフィンにグラフトした安定化ポリマーブレンドを含む。
【0015】
本発明者らは、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合または−C≡C−結合に対して電子求引効果を有する二価の有機結合を表す)の不飽和基を含むポリオルガノシロキサンが、フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る手段の存在下でポリオレフィンに容易にグラフトして、高いグラフトを付与することを見出した。この高いグラフトは、より高い割合のポリオルガノシロキサンをポリオレフィンにグラフトしたポリマーブレンドを形成する。かかるブレンドは、高い安定性及び機械的特性を有する。
【0016】
電子求引性部分は、反応中心から電子を引き離す化学基である。電子求引性結合Xは、一般にMichael B. Smith and Jerry March; March’s Advanced Organic Chemistry, 5th edition, John Wiley & Sons, New York 2001,15-58 章(1062ページ)においてジエノフィルとして列挙された基のいずれかとすることができる。結合Xは、特にC(=O)R結合、C(=O)OR結合、OC(=O)R結合、C(=O)Ar結合とすることができ、ここでArはアリーレンを表し、Rは二価の炭化水素部分を表す。また、XはC(=O)−NH−R結合とすることができる。C(=O)R結合、C(=O)OR結合、OC(=O)R結合、C(=O)Ar結合またはC(=O)−NH−R結合で表される電子求引性のカルボキシル、カルボニルまたはアミド結合は、C(=O)R結合、C(=O)OR結合、OC(=O)R結合、C(=O)Ar結合またはC(=O)−NH−R結合XをSi原子から分離する少なくとも1つの炭素原子を含む二価の有機スペーサー結合により直鎖のオルガノポリシロキサンに結合することができる。
【0017】
電子供与基、例えばアルコール基またはアミノ基等は、電子求引効果を低下させ得る。一実施形態において、ポリオルガノシロキサンはかかる基がない。立体効果、例えばメチルのような末端アルキル基の立体障害は、オレフィン結合またはアセチレン結合の反応性に影響を与え得る。一実施形態において、ポリオルガノシロキサンはかかる立体障害をもたらす基がない。グラフト反応時に形成したラジカルの安定性を高める基、例えば−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基の不飽和と共役した二重結合または芳香族基は、(I)または(II)中に存在するのが好ましい。後者の基は、−CH=CH−結合または−C≡C−結合に対して活性化効果を有する。
【0018】
例えば上述した特許文献に記載されているようなシラングラフトは、ポリエチレンを官能化及び架橋するのに効率的である。しかしながら、フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る手段の存在下でグラフトすることによってポリプロピレンを官能化しようとする場合、グラフトはβ位での鎖の切断、いわゆるβ切断によるポリマーの分解により達成される。本発明者らは、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役している)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンが、最小限のβ切断による分解で、効率的にポリプロピレンと、3〜8の炭素原子を有するα−オレフィン単位を少なくとも50重量%含む他のポリオレフィンとにグラフトすることを見出した。
【0019】
式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合または−C≡C−結合に対して電子求引効果を有する二価の有機結合を表すが、芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含まない)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンは、後述するようにポリオルガノシロキサンを適切な助剤と組み合わせれば、効率的にポリプロピレンと、3〜8の炭素原子を有するα−オレフィン単位を少なくとも50重量%含む他のポリオレフィンとにグラフトすることができる。
【0020】
シリコーンとしても既知のオルガノポリシロキサンは、一般にRSiO1/2(M単位)、RSiO2/2(D単位)、RSiO3/2(T単位)及びSiO4/2(Q単位)(式中の各Rは有機基、水素またはヒドロキシル基を表す)から選択されるシロキサン単位を含む。本発明のポリオルガノシロキサンは、シロキサン単位の少なくとも50モル%がD単位であるオルガノポリシロキサンである。一実施形態において、ポリオルガノシロキサンは、D単位の鎖を含む実質的に直鎖のポリジオルガノシロキサンであり、末端M単位並びにT及び/またはQの分枝単位が存在しないか、または少量でのみ存在する。或いはまた、ポリオルガノシロキサンは分岐させることができる、すなわちこれはT及び/またはQの分枝単位並びにD単位及びM単位を含むことができるが、但しシロキサン単位の少なくとも50モル%がD単位である。
【0021】
ポリオルガノシロキサンは、一般に2以上で任意の数のシロキサン単位を含むことができ、例えば2〜10000のシロキサン単位、好ましくは10〜2000のシロキサン単位を含むことができる。
【0022】
ポリオルガノシロキサン中のD単位は、一般に任意の−RSiO−単位(式中の各Rは同一または異なってもよく、任意の一価の有機基、例えば1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアミノアルキル基のような1〜18個の炭素原子を有する置換アルキル基、またはアリール基若しくはアラルキル基を表すことができる)から選択することができる。各Rは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル基を表すのが好ましく、例えば−RSiO−単位は、任意にメチルフェニルシロキサン単位を有するとともにジメチルシロキサン単位とすることができる。ポリオルガノシロキサンは、例えば式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基を含むポリジメチルシロキサン(PDMS)とすることができる。
【0023】
式−X−CH=CH−R”(I)(式中のXは−CH=CH−結合に対して電子求引効果を有する二価の有機結合を表す)の基の例としては、3−アクリルオキシプロピルまたはアクリルオキシメチルのようなアクリルオキシ基が挙げられる。本発明者らは、アクリルオキシアルキル基を含むポリオルガノシロキサンが、メタクリルオキシアルキル基を含むポリオルガノシロキサンよりもポリオレフィンに一層容易にグラフトすることを見出した。
【0024】
ここで芳香族環とは、不飽和であり、いくらかの芳香族の性質またはπ結合を示すあらゆる環状部分を意味する。芳香族環は、ベンゼン若しくはシクロペンタジエン環のような炭素環、またはフラン、チオフェン、ピロール若しくはピリジン環のような複素環とすることができ、また単環またはナフタレン、キノリン若しくはインドール部分のような縮合環系とすることができる。式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役している)の基の例としては、式CH=CH−C−A−またはCH≡C−C−A−(式中のAは直接結合またはスペーサー基を表す)の基が挙げられる。−X−CH=CH−R”(I)の基は、例えばスチリル(CCH=CH−または−CCH=CH)、スチリルメチル、2−スチリルエチルまたは3−スチリルプロピルとすることができる。スペーサー基Aは、任意にヘテロ原子、特に酸素、硫黄または窒素のヘテロ原子の連結基を含むことができ、例えば−X−CH=CH−R”(I)の基は、ビニルフェニルメチルチオプロピルとすることができる。
【0025】
式−X−CH=CH−R”(I)(式中のXは−CH=CH−結合に対して電子求引効果を有する二価の有機結合を表し、また芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含み、前記芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役している)の基の例としては、ソルビルオキシプロピルCH−CH=CH−CH=CH−C(=O)O−(CH−のようなソルビルオキシアルキル基、シンナミルオキシプロピルのようなシンナミルオキシアルキル基及び3−(2−フリル)アクリルオキシプロピルのような3−(2−フリル)アクリルオキシアルキル基が挙げられる。
【0026】
好適な実施形態において、組成物は、ポリオルガノシロキサン及びポリオレフィンに加えて、Siと結合した少なくとも1つの加水分解性基またはその加水分解物を有する不飽和シランを含み、当該シランは、式R”−CH=CH−Z(I)またはR”−C≡C−Z(II)(式中のZは−SiRR’(3−a)の基によって置換された電子求引性部分を表し、ここで、Rは加水分解性基を表し、R’は1〜6の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、aは1〜3の範囲の値を有し、R”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)を有することを特徴とする。かかる不飽和シランは、国際公開第2010/000478号公報に記載されている。
【0027】
式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基を、様々な技術によってポリオルガノシロキサンに導入することができる。好適な一方法においては、少なくとも1つのSi−OH基を含むポリオルガノシロキサンを式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基を含むアルコキシシランと反応させる。アルコキシシランは、式(R’O)Si−X−CH=CH−R”または(R’O)Si−X−C≡C−R”(式中のX及びR”は上記の意味を有し、R’はアルキル基、好ましくはメチルまたはエチルを表す)のトリアルコキシシランとすることができるが、或いはまた式(R’O)RSi−X−CH=CH−R”若しくは(R’O)RSi−X−C≡C−R”のモノアルコキシシランまたは式(R’O)Si−X−CH=CH−R”若しくは(R’O)Si−X−C≡C−R”のジアルコキシシランとすることができる。アルコキシシランはSi−OH基と縮合して、Si−OH基がSi−O−Si−X−CH=CH−R” の基またはSi−O−Si−X−C≡C−R”の基によって置換される。縮合は、酸または塩基により触媒される。トリフルオロメタンスルホン酸または塩酸のような強酸触媒が好適である。
【0028】
3−アクリルオキシプロピル基またはアクリルオキシメチル基を、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランまたはアクリルオキシメチルトリメトキシシランの反応によりポリオルガノシロキサンに導入することができる。3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランは、アリルアクリレート及びトリメトキシシランから米国特許出願公開第3179612号公報に記載された方法により調製することができる。アクリルオキシメチルトリメトキシシランは、アクリル酸及びクロロメチルトリメトキシシランから米国特許出願公開第3179612号公報に記載された方法により調製することができる。
【0029】
スチリル基、スチリルメチル基、2−スチリルエチル基または3−スチリルプロピル基を、例えば4−(トリメトキシシリル)スチレンまたはスチリルエチルトリメトキシシランの反応によりポリオルガノシロキサンに導入することができる。4−(トリメトキシシリル)スチレンは、欧州特許第1318153号公報に記載されているように、マグネシウムの存在下4−ブロモスチレン及び/または4−クロロスチレンとテトラメトキシシランとのグリニャール反応によって調製することができる。スチリルエチルトリメトキシシランは、メタとパラ及びα異性体とβ異性体の混合物としてGelest社から市販されている。
【0030】
CH−CH=CH−CH=CH−C(=O)O−(CH−(ソルビルオキシプロピル)のようなソルビルオキシアルキル基は、下式のようなトリアルコキシシランの縮合によりポリオルガノシロキサンに導入することができる。
【化1】

シンナミルオキシプロピルのようなシンナミルオキシアルキル基は、下式のようなトリアルコキシシランの縮合から得ることができ、その調製が米国特許出願公開第3179612号公報に記載されている。
【化2】

3−(2−フリル)アクリルオキシプロピルのような3−(2−フリル)アクリルオキシアルキル基は、下式のようなトリアルコキシシランの縮合から得ることができる。
【化3】

【0031】
一般に、不飽和酸のシリルアルキルエステルである全ての不飽和シランは、不飽和酸、例えばアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ソルビン酸若しくはケイ皮酸、プロピオン酸又はブチン二酸から、対応するカルボン酸塩と対応するクロロアルキルアルコキシシランとの反応により調製することができる。第一段階においては、例えば米国特許出願第4946977号公報に記載されているようなカルボン酸とアルカリアルコキシドとのアルコール中での反応か、例えば国際公開第2005/103061号公報に記載されているようなカルボン酸と塩基水溶液との反応及びその後の共沸蒸留による水の除去のいずれかによりカルボン酸のアルカリ塩を形成する。カルボン酸のトリアルキルアンモニウム塩は、米国特許出願公開第3258477号公報または米国特許出願公開第3179612号公報に記載されているように、遊離カルボン酸とトリアルキルアミン、好ましくはトリブチルアミンまたはトリエチルアミンとの直接反応により形成することができる。第二段階においては、副生物としてのアルカリ塩化物またはトリアルキルアンモニウム塩化物の形成下、カルボン酸塩を求核置換反応によりクロロアルキルアルコキシシランと反応させる。この反応は、ストレートな条件下またはベンゼン、トルエン、キシレン若しくは類似の芳香族溶媒のような溶媒若しくはメタノール、エタノール又はその他のアルコール系溶媒中でクロロアルキルアルコキシシランを用いて実施することができる。反応温度は、30〜180℃の範囲、好ましくは100〜160℃の範囲であるのが好ましい。この置換反応を加速するためには、様々な種類の相間移動触媒を用いることができる。好適な相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、Aliquat(登録商標)336(Cognis社)若しくは類似の第4級アンモニウム塩(例えば、米国特許第4946977号にて用いられたもの)、トリブチルホスホニウムクロリド(例えば、米国特許第6841694号にて用いられたもの)、グアニジン塩(例えば、欧州特許第0900801号にて用いられたもの)または1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、例えば、国際公開第2005/103061号にて用いられたもの)のような環状不飽和アミンである。所要に応じて、以下の重合防止剤を調製工程及び/又は精製工程の間中用いることができる;ハイドロキノン、メトキシフェノール及び2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノールのようなフェノール化合物、フェノチアジン、p−ニトロソフェノール、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンのようなアミン系化合物、または限定しないが上述の特許文献に記載されたような硫黄含有化合物。
【0032】
−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基を含むアルコキシシランと反応するSi−OH基を含むポリオルガノシロキサンは、ポリマー鎖の末端基としてSi−OH基を有することができ、これが反応してSi−O−Si−X−CH=CH−R”またはSi−O−Si−X−C≡C−R”の末端基を有するポリオルガノシロキサンを形成する。ポリオルガノシロキサンは、単一のSi−OH基を有することができるか、またはポリジオルガノシロキサン分子の両端にSi−OH末端基を有する直鎖状ポリジオルガノシロキサンとすることができるか、若しくは2個以上のSi−OH末端基を有する分枝状ポリオルガノシロキサンとすることができる。或いはまたはさらに、Si−OH基を含むポリオルガノシロキサンは、ポリマー鎖に沿って非末端基としてSi−OH基を有することができ、これが−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基を含むアルコキシシランと反応して−O−Si−X−CH=CH−R”または−O−Si−X−C≡C−R”のペンダント基を形成する。
【0033】
−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基を含むポリオルガノシロキサンを製造するための別の方法においては、米国特許出願公開第2005/0287300号公報に記載されているように、ルイス酸触媒またはカルボン酸とカルボン酸塩とからなる触媒を用いて、Si−H基を含むポリオルガノシロキサンを式HO−X−CH=CH−R”またはHO−X−C≡C−R”のアルコールと反応させる。Si−H基をSi−O−X−CH=CH−R”またはSi−O−X−C≡C−R”の基に変換する。Si−H末端基を有するポリオルガノシロキサンは、Si−O−X−CH=CH−R”またはSi−O−X−C≡C−R”の末端基を形成する。ポリシロキサン鎖に沿ってSi−H基を含むポリオルガノシロキサンは、ポリマー鎖に沿ってSi−O−X−CH=CH−R”またはSi−O−X−C≡C−R”のペンダント基を生成する。
【0034】
Si−OH基を含むポリオルガノシロキサンと−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基を含むアルコキシシランとの反応により形成した−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基を含むポリオルガノシロキサンは、その−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基がC−Si結合によってポリオルガノシロキサンに結合するので、好適とすることができる。C−Si結合及びSi−O−Si結合は、Si−O−C結合よりも加水分解的に安定である。
【0035】
いくつかの用途においては、ポリオルガノシロキサンが加水分解性基を含むことが好適である場合があり、その場合グラフト生成物を水の存在下加水分解性基の加水分解及び縮合によりさらに架橋することができる。好適な加水分解性基は、Si−結合のアルコキシ基、特にSi−OR’基(式中のR’は1〜4の炭素原子を有するアルキル基を表す)である。かかるSi−OR’基は、少なくとも1つのSi−OH基を含むポリオルガノシロキサンを式(R’O)Si−X−CH=CH−R”または(R’O)Si−X−C≡C−R”(式中のX、R’及びR”は上記の意味を有する)のトリアルコキシシランと反応させることによりポリオルガノシロキサンに都合よく導入することができる。
【0036】
ポリオレフィンは、例えば2〜10の炭素原子を有するオレフィンのポリマー、特に式CH=CHQ(式中のQは水素または1〜8の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状のアルキル基である)のαオレフィンのポリマーとすることができ、一般に2〜10個の炭素原子を有するオレフィン単位を少なくとも50モル%含むポリマーである。
【0037】
ポリオレフィンは、例えばエテン(エチレン)、プロペン(プロピレン)、ブテン若しくは2−メチル−プロペン−1(イソブチレン)、ヘキセン、ヘプテン、オクテンまたはスチレンのポリマーとすることができる。プロピレン及びエチレンのポリマー、特にポリプロピレン及びポリエチレンは、重要なポリマーのクラスである。ポリプロピレンは、広く利用可能で安価な商品ポリマーである。これは密度が低く、容易に加工でき、用途が広い。最も市販されているポリプロピレンはイソタクチックポリプロピレンであるが、本発明の方法は、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びイソタクチックポリプロピレンに適用可能である。イソタクチックポリプロピレンは、例えばチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いるプロペンの重合により調製される。ポリエチレンは、例えば密度が0.955〜0.97g/cmの高密度ポリエチレン、密度が0.935〜0.955g/cmの中密度ポリエチレン(MDPE)、若しくは超低密度ポリエチレン、高圧低密度ポリエチレン及び低圧低密度ポリエチレンを含む密度が0.918〜0.935g/cmの低密度ポリエチレン(LDPE)、または微孔ポリエチレンとすることができる。ポリエチレンは、例えばチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒またはメタロセン触媒を用いて生成することができる。或いはまた、ポリオレフィンは、ブタジエンまたはイソプレンのような4〜18個の炭素原子及び少なくとも1つの末端二重結合を有するジエン等のジエンのポリマーとすることができる。ポリオレフィンは、コポリマーまたはターポリマーとすることができ、例えばプロピレンとエチレンとのコポリマー、プロピレン若しくはエチレンと4〜18個の炭素原子を有するα−オレフィンとのコポリマー、エチレン若しくはプロピレンと、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、若しくは例えばエチルアクリレート、メチルアクリレート若しくはブチルアクリレートのようなアクリル酸若しくはメタクリル酸と、1〜16の炭素原子を有するアルキル基若しくは置換アルキル基とのエステルといったアクリルモノマーとのコポリマー、または酢酸ビニルとのコポリマーとすることができる。ポリオレフィンは、ターポリマー、例えばプロピレン・エチレン・ジエン・ターポリマーとすることができる。或いはまた、ポリオレフィンは、ポリブタジエン、ポリイソプレンのようなジエンポリマー、ブタジエンとスチレンのコポリマー、ブタジエンとエチレン及びスチレンとのターポリマー、またはブタジエンとアクリロニトリル及びスチレンとのターポリマーとすることができる。ポリオレフィンは、ヘテロ相、例えばプロピレン・エチレン・ブロックコポリマーとすることができる。
【0038】
生成するブレンドの安定性及び/または物理的性質を改善する程度までポリオルガノシロキサンをポリオレフィンにグラフトするには、一般にフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る手段を要する。フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらすための手段は、フリーラジカルをもたらし得る、従ってフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る化合物を含むのが好ましい。その他の手段は、せん断、加熱または電子ビーム放射のような照射を加えることを含む。溶融押出法によって発生した高温及び高せん断速度は、フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらすことができる。
【0039】
フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る化合物は、好ましくは有機過酸化物であるが、アゾ化合物のような他のフリーラジカル開始剤を用いることもできる。フリーラジカル開始剤の分解により形成するラジカルは、酸素系のフリーラジカルであるのが好ましい。ヒドロペルオキシド、カルボン酸ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド及びジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ジアリールペルオキシド、アリール−アルキルペルオキシド、ペルオキシジカルボネート、ペルオキシ酸、アシル・アルキル・スルホニルペルオキシド及びモノペルオキシジカルボネートを用いるのがより好ましい。好適な過酸化物の例としては、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)へキサン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソナン、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシアセテート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキシルカルボネート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカルボネート、ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ジ−tert−アミルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、tert−ブチルα−クミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,3−または1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、及びtert−ブチルペルベンゾエートが挙げられる。アゾ化合物の例は、アゾビスイソブチロニトリル及びジメチルアゾジイソブチレートである。上記ラジカル開始剤は、単独または少なくとも2つの組み合わせで用いることができる。
【0040】
ポリオレフィンとポリオルガノシロキサンとがフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る化合物の存在下で反応する温度は、一般に120℃超、通常140℃超えであり、ポリオレフィンを溶融し、またフリーラジカル開始剤を分解するのに十分高い。ポリプロピレン及びポリエチレンにとっては、170℃〜220℃の範囲の温度が通常好適である。過酸化物またはフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る他の化合物は、120〜220℃の範囲の分解温度を有するのが好ましく、160〜190℃の間が最も好ましい。好適な一手順においては、ポリオレフィンと、ポリオルガノシロキサンと、フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る化合物と、必要に応じビニル芳香族助剤とを共に二軸押出機にて120℃超で混合し、ポリオルガノシロキサンをポリマーにグラフトする。
【0041】
フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る化合物は、一般に全組成の少なくとも0.01重量%の量で存在し、最大5または10%の量で存在することができる。例えば、有機過酸化物はグラフト反応中ポリオレフィンに対して0.01〜2重量%で存在するのが好ましい。有機過酸化物は全組成の0.01%〜0.5重量%で存在するのが最も好ましい。
【0042】
或いはまた、フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらすための手段は電子ビームとすることができる。電子ビームを用いれば、フリーラジカルをもたらし得る過酸化物のような化合物が必要とならない。不飽和シラン(I)または(II)の存在下で少なくとも5Mevのエネルギーを有する電子ビームをポリオレフィンに照射する。電子ビームの加速電位またはエネルギーは、好ましくは5MeV〜100MeV、より好ましくは10〜25MeVである。電子ビーム発生器の電力は、好ましくは50〜500kW、より好ましくは120〜250kWである。ポリオレフィン/グラフト化剤の混合物に施す放射線量は、0.5〜10Mradであるのが好ましい。ポリオレフィンと分枝状シリコーン樹脂との混合物をエンドレスベルトのような連続移動式コンベアに堆積させ、混合物を照射する電子ビーム発生器の下を通過させることができる。所望の照射量を達成するためには、コンベアの速度を調節する。
【0043】
ポリエチレン、主にエチレン単位からなるポリマーとは、通常フリーラジカルサイトがポリエチレンに発生する際に分解しない。効率的なグラフトは、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXが−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和若しくは−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役した芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含むか否かにかかわらず、Xは−CH=CH−結合または−C≡C−結合に対して電子求引効果を有する二価の有機結合を表す)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンで達成することができる。
【0044】
ポリオレフィンが3〜8個の炭素原子を有するオレフィン単位を少なくとも50重量%含む場合、例えばポリプロピレンが熱可塑性樹脂の大部分を占める場合には、Xが−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和若しくは−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役した芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含んでいなければ、β切断が起こり得る。この場合、例えば−X−CH=CH−R”がアクリルオキシアルキル基であれば、グラフト反応をβ切断によるポリマーの分解を抑制する助剤の存在下で行うのが好ましい。
【0045】
ポリマーの分解を抑制する助剤は、オレフィンの−C=C−不飽和結合またはアセチレンの−C≡C−不飽和結合と共役した芳香族環を含む化合物であるのが好ましい。ここで芳香族環とは、不飽和であり、いくらかの芳香族の性質またはπ結合を示すあらゆる環状部分を意味する。芳香族環は、ベンゼン若しくはシクロペンタジエン環のような炭素環、またはフラン、チオフェン、ピロール若しくはピリジン環のような複素環とすることができ、また単環またはナフタレン部分、キノリン部分若しくはインドール部分のような縮合環系とすることができる。最も好適な助剤は、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、2,4−ビフェニル−4−メチル−1−ペンテン、フェニルアセチレン、2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジ(4−イソプロピルフェニル)−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジ(3−メチルフェニル)−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−4−メチル−1−ペンテンのようなビニル芳香族化合物またはアセチレン芳香族化合物であり、また例えばジビニルベンゼン、o−,m−またはp−ジイソプロペニルベンゼン、1,2,4−または1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、5−イソプロピル−m−ジイソプロペニルベンゼン、2−イソプロピル−p−ジイソプロペニルベンゼンのように2つ以上のビニル基を含んでもよく、また例えばトランス−及びシス−スチルベン、1,1−ジフェニルエチレン若しくは1,2−ジフェニルアセチレン、ジフェニルイミダゾール、ジフェニルフルベン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン、ジシンナマルアセトン、フェニルインデノンのように2つ以上の芳香族環を含んでもよい。或いはまた、助剤は2−ビニルフランのようなフラン誘導体とすることができる。好適な助剤はスチレンである。
【0046】
ポリマーの分解を抑制する助剤は、オレフィンの−C=C−不飽和結合またはアセチレンの−C≡C−不飽和結合と共役したオレフィンの−C=C−またはアセチレンの−C≡C−を含む化合物とすることができる。例えば、ソルビン酸エステルまたは2,4−ペンタジエノエート若しくはその環状誘導体がある。好適な助剤は、下式のソルビン酸エチルである。
【化4】

【0047】
或いはまた、ポリマーの分解を抑制する助剤は、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート若しくはエチレングリコールジメタクリレートまたはラウリルアクリレート及びステアリルアクリレートのような多官能アクリレートとすることができる。
【0048】
ポリマーの分解を抑制する助剤は、ポリオルガノシロキサン及びフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る過酸化物のような化合物と共に加えるのが好ましい。助剤、例えばスチレンのようなビニル芳香族化合物は、全組成の0.1〜15.0重量%で存在するのが好ましい。
【0049】
ポリオルガノシロキサンが式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役している)の少なくとも1つの基を含む場合、ポリオレフィンが3〜8個の炭素原子を有するオレフィン単位を少なくとも50重量%含んでいたとしても、効率的なグラフトを相当なβ切断なしに達成することができる。
【0050】
ポリオルガノシロキサンが例えばシリル−アルコキシ基のような加水分解性基を含む場合、これらは水分の存在下多数の充填剤及び基質、例えば鉱物および天然産物の表面に存在するヒドロキシル基と反応することができる。本発明の組成物は、一種以上の有機または無機の充填剤及び/または繊維を含むことができる。水分は環境湿度とすることができ、または水和塩を加えることができる。本発明に係る加水分解性基を含むポリオルガノシロキサンを用いたポリオレフィンのグラフトでは、充填剤及び繊維補強剤との改善した相溶性を有するポリオレフィン/ポリオルガノシロキサンブレンドを形成し、従って改善した物性の充填剤入りポリオレフィン/ポリオルガノシロキサンブレンドを形成することができる。かかる改善した物性は、例えば補強充填剤または繊維由来の改善した物理的特性、または顔料により改善した着色特性のような充填剤由来の他の特性とすることができる。
【0051】
本発明に係る一方法においては、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンを、ポリオレフィンと反応させる前に充填剤上に堆積させる。或いはまた、充填剤及び/または繊維を、グラフト反応中にオルガノポリシロキサン及び有機過酸化物とともにポリオレフィンに都合よく混合することができるか、または後でグラフトポリマーブレンドと混合することができる。
【0052】
充填剤入りポリマー組成物を形成する場合、グラフトポリマーが組成物における唯一のポリマーとすることができるか、または加水分解性基を含むポリオルガノシロキサンでグラフトしたポリオレフィンを、充填剤/ポリマーの接着を改善するカップリング剤として用いることができる;例えば、本発明によりグラフトしたポリプロピレンを充填剤入り組成物における未修飾ポリプロピレン用のカップリング剤として用いることができる。従って、グラフトポリマーは、充填剤入り組成物のポリマー含量の1または10重量%〜100重量%までとすることができる。水分及び任意にシラノール縮合触媒を組成物に加えて、充填剤及びグラフトポリマー間の結合を促進することができる。好適には、グラフトポリマーは充填剤入りポリマー組成物の全重量の2%〜10%とすることができる。また、加水分解性基は水分の存在下で互いに反応して、ポリマー鎖の間にSi−O−Si結合を形成することができる。
【0053】
グラフトポリマーに混入し得る無機充填剤または顔料の例としては、二酸化チタン、三水酸化アルミニウム、二水酸化マグネシウム、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、無水和、部分水和若しくは水和のフッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムのクロム酸塩、炭酸塩、水酸化物、リン酸塩、リン酸水素、硝酸塩、酸化物及び硫酸塩;酸化亜鉛、酸化アルミニウム、五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酸化ベリリウム、酸化クロム、酸化鉄、リトポン、ホウ酸またはホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム若しくはホウ酸アルミニウムのようなホウ酸塩、アルミノケイ酸塩のような混合金属酸化物、バーミキュライト、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、沈殿シリカ、石英、砂及びシリカゲルを含むシリカ;もみ殻灰、セラミックビーズ及びガラスビーズ、ゼオライト、アルミニウムのフレーク若しくは粉末、ブロンズ粉、銅、金、モリブデン、ニッケル、銀の粉若しくはフレーク、ステンレス鋼の粉及びタングステン等の金属、水和ケイ酸カルシウム、チタン酸バリウム、シリカ−カーボンブラック複合物、機能化カーボンナノチューブ、セメント、フライアッシュ、スレート粉、ベントナイト、クレイ、タルク、無煙灰、リン灰石、アタパルジャイト、窒化ホウ素、クリストバライト、珪藻土、ドロマイト、フェライト、長石、黒鉛、焼成カオリン、二硫化モリブデン、パーライト、軽石、パイロフィライト、セピオライト、スズ酸亜鉛、硫化亜鉛または珪灰石が挙げられる。
【0054】
好適な充填剤としては、ジオルガノポリシロキサンを補強するのに既知の補強充填剤、例えば少なくとも約50m/gの比表面積を有するヒュームド状及び沈殿状のシリカ、シリカエアロゲル及び酸化チタンのような微細で、熱に安定な無機物が挙げられる。ヒュームド状のシリカは、最大700m/gとすることができる高い表面積を基にした好適な補強充填剤であり、より好ましくは50〜400m/g、最も好ましくは200〜380m/gの表面積を有するヒュームドシリカである。ヒュームドシリカ充填剤は、シリコーンゴム技術において通常行われるように処理して、その表面を疎水性にするのが好ましい。これは、シリカをシラノール基またはシラノール基の加水分解性前駆体を含む液体有機ケイ素化合物と反応させることにより達成することができる。
【0055】
グラフトポリマーに混入し得る繊維の例としては、木粉、木質繊維、綿花、セルロース系繊維のような天然繊維、麦わら、麻、亜麻、ケナフ、カポック、ジュート、ラミー、サイザル、ヘネッケン、トウモロコシ繊維若しくはコイアのような農産物繊維、木の実の殻若しくはもみ殻、またはポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維のような合成繊維、若しくはガラス繊維が挙げられる。有機充填剤の例としては、リグニン、でんぷん、セルロース及びセルロース含有製品、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリエチレンのプラスチックミクロスフェアが挙げられる。充填剤は、アゾ染料、インジゴイド染料、トリフェニルメタン染料、アントラキノン染料、ヒドロキノン染料またはキサンチン染料を混入したもののような固形有機顔料とすることができる。
【0056】
かかる充填剤入り組成物における充填剤または顔料の濃度は様々であり、例えば、充填剤または顔料は、全組成の1または2重量%〜70重量%とすることができる。
【0057】
また、本発明のグラフトポリオレフィンを用いてポリプロピレンのような低極性ポリマーと極性ポリマーとの相溶性を改善することができる。低極性ポリマー、極性ポリマー及びグラフトポリオレフィンを含む組成物は、充填剤及び/または繊維強化とするか、または非充填とすることができる。
【0058】
多くの用途に対し、グラフトポリマーは少なくとも一種の酸化防止剤を含むのが好ましい。適当な酸化防止剤の例としては、Ciba Irgafos(登録商標)168の商標で市販されるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、Ciba Irganox(登録商標)1010の商標で市販されるテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−プロピオナート)]メタン加工安定剤、及びCiba Irganox(登録商標)1330の商標で市販される1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが挙げられる。また、グラフトポリマーが紫外線放射及び光放射に対する安定剤、例えば4−置換−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペラジンのようなヒンダードアミン系光安定剤、例えばTinuvin(登録商標)770、Tinuvin(登録商標)622、Uvasil(登録商標)299、Chimassorb(登録商標)944及びChimassorb(登録商標)119の商標で市販されるものを含むことが望ましい場合がある。酸化防止剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤をグラフト反応中に不飽和シラン及び有機過酸化物とともにポリオレフィンに都合よく混入することができる。架橋ポリオレフィン中の酸化防止剤及び光安定剤の全濃度は、通常全組成の0.02〜0.15重量%の範囲である。
【0059】
本発明のグラフトポリマー組成物は、染料または加工助剤のような他の添加剤を含むこともできる。
【0060】
本発明により生成したグラフトポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン及びポリオルガノシロキサンの安定化ポリマーブレンドであり、様々な製品に用いることができる。グラフトポリオレフィン組成物をブロー成形または回転成形して、ビン、缶若しくはその他の液体容器、送液部品、空気ダクト部品、液体タンクを含むタンク、波形ベローズ、カバー、ケース、チューブ、パイプ、パイプ継手または搬送トランクを形成することができる。グラフトポリオレフィン組成物をブロー押出して、パイプ、波形パイプ、シート、繊維、プレート、コーティング、シュリンクラップフィルムを含むフィルム、プロファイル、床張り材、チューブ、導管またはスリーブを形成するか、または電気絶縁層としてのワイヤーまたはケーブルに押出することができる。グラフトポリオレフィン組成物を射出成形して、チューブ及びパイプの継手、梱包容器、ガスケット及びパネルを形成することができる。また、グラフトポリオレフィン組成物を発泡または熱成形することができる。ポリオルガノシロキサンが加水分解性基を含む場合、その造形品は、いずれの場合もシラノール縮合触媒の存在下水分にさらすことにより架橋することができる。
【0061】
ポリオレフィン及びポリオルガノシロキサンの安定化ポリマーブレンドから形成した製品は、グラフトまたは架橋なしに同一ポリオレフィンから形成した製品比べてより増強した物理的特性/機械的特性や、耐熱性及び難燃性を有する。
【0062】
本発明は、ポリオレフィン5〜95重量%と、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサン95〜5重量%とを含む組成物を提供するもので、前記不飽和基は式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、該芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とする。
・ポリオルガノシロキサンは、2〜2000のシロキサン単位を含み、シロキサン単位の少なくとも90モル%がD単位であるのが好ましい。
・ポリオルガノシロキサンは、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の少なくとも1つの末端基を有するポリジメチルシロキサンであるのが好ましい。
・ポリオルガノシロキサンは、ポリジオルガノシロキサン分子の両端に式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の末端基を有する直鎖状ポリジオルガノシロキサンであるのが好ましい。
・ポリオルガノシロキサンは、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の少なくとも1つのペンダント基を有するのが好ましい。
・式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基は、C−Si結合によりポリオルガノシロキサンに結合しているのが好ましい。
・式−X−CH=CH−R”(I)の基は、アクリルオキシアルキル基であるのが好ましい。
【0063】
本発明は、ポリオレフィンが3〜8の炭素原子を有するオレフィン単位を少なくとも50重量%含み、またフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る化合物の存在下β切断によるポリオレフィンの分解を抑制する助剤を含むことを特徴とする組成物を提供する。
・助剤は、ビニル芳香族化合物であるのが好ましく、好適にはスチレンまたはソルビン酸エステル、好適にはソルビン酸エチルである。
・助剤は、全組成の0.1〜15.0重量%で存在するのが好ましい。
・式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基は、式CH=CH−C−A−(III)またはCH≡C−C−A−(IV)(式中のAは直接結合または1〜12の炭素原子を有する二価の有機基を表し、任意に−O−、−S−及び−NH−から選択される二価のヘテロ原子の連結基を含む)を有するのが好ましい。
・式−X−CH=CH−R”(I)の基は、式R−CH=CH−CH=CH−X−(V)(式中のRは水素または1〜12の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表す)を有するのが好ましい。
・式−X−CH=CH−R”(I)の基は、ソルビルオキシ基であるのが好ましい。
・組成物は、1〜99重量%のポリオレフィン及び99〜1重量%のポリオルガノシロキサンを含むのが好ましく、5〜95重量%のポリオレフィン及び95〜5重量%のポリオルガノシロキサンを含むのがより好ましい。
・フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る有機過酸化化合物は、全組成の0.01〜2重量%で存在するのが好ましい。
【0064】
本発明は、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンを提供するもので、該不飽和基は式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、かつC−Si結合によって該ポリオルガノシロキサンに結合し、またR”は水素または−CH=CH−若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とする。
・好適には、本発明はポリオルガノシロキサンの製造方法を提供するもので、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つのSi−OH基を含むポリオルガノシロキサンを、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の不飽和基を含むアルコキシシランと反応させることを特徴とする。
・好適には、本発明はフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る手段の存在下ポリオレフィンを不飽和基を含むケイ素化合物と反応させる工程を備えるシリコーンをポリオレフィンにグラフトする方法を提供するもので、該ケイ素化合物はシロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンであることを特徴とし、また前記不飽和基が式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とする。
・式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンを、ポリオレフィンと反応させる前に充填剤上に堆積させるのが好ましい。
・式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンと充填剤とを、現場で反応させるのが好ましい。
【0065】
本発明は、ポリオレフィン5〜95重量%と、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であるポリオルガノシロキサン95〜5重量%とを含み、該ポリオルガノシロキサン中の式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の不飽和基のフリーラジカル重合によって形成した結合により前記ポリオルガノシロキサンを少なくとも部分的に前記ポリオレフィンにグラフトした安定化ポリマーブレンドを提供する。
【0066】
本発明は、シリコーン部分をポリオレフィンにグラフトして−X−CH=CH−R”または−X−C≡C−R”の基を含まない不飽和シリコーンに比べて増強したグラフトを付与する際へのシロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合または−C≡C−結合に対して電子求引効果を有する二価の有機結合を表し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンの使用を含む。
【0067】
本発明は、シリコーン部分をポリオレフィンにグラフトして−X−CH=CH−R”または−X−C≡C−R”の基を含まない不飽和シリコーンに比べてポリオレフィンの分解が少ないグラフトを付与する際へのシロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンの使用を含む。
【実施例】
【0068】
以下の実施例により、本発明を説明する。
【0069】
原材料
使用したポリマーは以下の通りとした。
・PP=Borealis(登録商標)HB 205 TFとして供給されるイソタクチックポリプロピレンのホモポリマー(メルトフローインデックスMFRは、ISO1133に従って測定して230℃/2.16kgで1g/10分)
・PPH=PPH 7060としてTotal Petrochemicals(登録商標)により販売されるポリプロピレンのホモポリマー(MFRは、230℃/2.16kgで12g/10分);多孔性PPは、Accurel(登録商標)XP100としてMembranaにより提供される微孔性ポリプロピレンであった。この微孔性ポリマーを液体成分の吸収のために用いた。Accurel(登録商標)XP100の特性として、MFR(2.16kg/230℃)は2.1g/10分(ISO1133の方法)、融点(DSC)は156℃である。
【0070】
使用した充填剤は以下の通りとした。
・木粉=American Wood Fibers(登録商標)により販売される松の木粉。
【0071】
使用した参考用のカップリング剤は以下の通りとした。
・MAg−PP=Orevac(登録商標)CA100、Arkema(登録商標)により販売される無水マレイン酸ポリプロピレン(MFRは230℃/2.16kgで150〜200g/10分)。
【0072】
使用した過酸化物は以下の通りとした。
・DHBPは、Arkema Luperox(登録商標)101 の過酸化物として販売される2.5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンペルオキサイドであった。
【0073】
使用した他の原材料は以下の通りとした。
・スチレンは、Sigma−Aldrich Reagent Plus(登録商標)により販売される純度99%以上のものであった(ref.S4972)。
・ソルビン酸エチルは、Sigma−Aldrich Reagent Plus(登録商標)により供給される純度98%以上のものであった(ref.177687)。
・nの値が様々、すなわち様々な重合度(DP)であるα、ω−ジ−ヒドロキシ官能化ポリジメチルシロキサン HO−[Si(Me)−O]−Hは、Dow Corning(登録商標)から内部的に供給された。
【0074】
使用した酸化防止剤は以下の通りとした。
・Irgafos 168は、Irgafos(登録商標)168としてCibaにより供給されるトリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの酸化防止剤であった。
・Irganox 1010は、Irganox(登録商標) 1010としてCibaにより供給されるテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−プロピオナート)]のメタンフェノール系酸化防止剤であった。
【0075】
ソルビン酸塩とクロロプロピルトリメトキシシランの反応により、ソルビン酸からソルビルオキシプロピルトリメトキシシランを調製した。ソルビン酸カリウムをクロロプロピルトリメトキシシランと相間移動触媒としてのテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)の存在下100〜160℃の範囲の反応温度で、ろ過によって副生物の塩化カリウムを除去しながら反応させた。
【0076】
γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(γ−ATM)を米国特許出願公開第3179612号公報に記載された方法によりアリルアクリレート及びトリメトキシシランから調製した。
【0077】
実施例1
DP=4のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(ヒドロキシ−PDMS)を等モル量(ヒドロキシ官能基のモル量に対し)のソルビルオキシプロピルトリメトキシシランと反応させることにより、α,ω−ジ−ソルビルオキシプロピルシリケート官能性ポリジメチルシロキサン(ソルベート−PDMS)Me−CH=CH−CH=CH−(C=O)−O−(CH−Si(OMe)−O−[Si(Me)−O]n−Si(OMe)−(CH−O−(C=O)−CH=CH−CH=CH−Me(式中、n=4である)を調製した。これら材料を窒素下で数分間撹拌し、次いで2gのチタンn−ブトキシドを撹拌下で加えた。生成物が完全に均質になるまで混合を続けた。形成したポリマー生成物の特性から、鎖グループ構造−SiR(OR’)(式中のRはソルビルオキシプロピルであり、R’はそれぞれメチルである)を有するソルビルオキシプロピルシリケート官能性ポリジメチルシロキサンの形成が裏付けられた。
【0078】
10重量部の多孔性PPペレットを6.2重量部の上述したソルベート−PDMS及び0.2重量部のDHBPと液体試薬がポリプロピレンによって吸収されるまで混転して、シランマスターバッチを形成した。
【0079】
100重量部のBorealis(登録商標)HB 205 TF ポリプロピレンペレットを、ローラーブレードを備えたBrabender(登録商標)Plastograph 350Eミキサーに投入し、その中で配合を行った。充填比を0.7に設定した。回転速度を50rpmとし、チャンバーの温度を190℃で維持した。成分の反応プロセスを制御するために溶融物のトルク及び温度を監視した。PPを3回に分けて投入し、それぞれ加えた後に1分間の溶融/混合を行った。次いで、シランマスターバッチを加え、4分間混合してグラフト反応を開始した。その後、0.5部のIrganox 1010及び0.5部のIrgafos 168酸化防止剤を加え、グラフト継続中にさらに1分間混合した。その後、溶融物をミキサーから滴下し、常温になるまで冷却した。生成したグラフトポリプロピレンをAgila(登録商標)PE30 プレス上210℃で5分間成形して厚さ2mmのシートとし、その後さらに押圧しながら15℃/分で常温まで冷却した。
【0080】
実施例2
DP=12のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンから実施例1の方法により、同一式であるがn=12のソルベート−PDMSを調製した。
【0081】
表1に示すように、n=4のソルベート−PDMSを等モル量のn=12のソルベート−PDMSに置き換え、実施例1に記載されている通りにポリプロピレンのグラフト化を行った。
【0082】
実施例3〜5
対応するDPのヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンから実施例1の方法により、表1に示すように様々なシロキサン鎖長を有するソルベート−PDMSを調製した。
【0083】
表1に示すように、n=12のソルベート−PDMSを同量の実施例3の各ソルベート−PDMSに置き換え、実施例2に記載されている通りにポリプロピレンのグラフト化を行った。
【表1】

【0084】
実施例6
DP=12のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを等モル量(ヒドロキシ官能基のモル量に対し)のアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dow Corning(登録商標)Z−6530)と反応させることにより、α,ω−ジ−アクリルオキシプロピルシリケート官能化ポリジメチルシロキサン(アクリレート−PDMS)HC=CH−(C=O)−O−(CH−Si(OMe)−O−[Si(Me)−O]−Si(OMe)−(CH−O−(C=O)−CH(式中、n=12である)を調製した。これら材料を窒素下数分間撹拌し、次いで2gのチタンn−ブトキシドを撹拌下で加えた。生成物が完全に均質になるまで混合を続けた。形成したポリマー生成物の特性から、鎖グループ構造−SiR(OR’)(式中のRはアクリルオキシであり、R’はそれぞれメチルである)を有するアクリルオキシプロピルシリケート官能性ポリジメチルシロキサンの形成が裏付けられた。
【0085】
表2に示すように、ソルベート−PDMSを等モル量のn=12のアクリレート−PDMSに置き換え、実施例2を繰り返した。
【0086】
実施例7及び8
表2に示すように、n=12のアクリレート−PDMSと等モル比で異なるラジカル安定化助剤を加えて実施例6を繰り返した。
【0087】
実施例9
表2に示すように、より高い投入量のn=12のアクリレート−PDMSを用いて実施例6を繰り返した。
【表2】

【0088】
比較例C1及びC2
表3に示すように、過酸化物を省き、ソルベート−PDMSを等モル量(DPがそれぞれ4及び12)の対応するヒドロキシ−PDMSに置き換えて実施例1及び2を繰り返した。
【0089】
比較例C3〜C5
表3に示すように、DP=12のヒドロキシ−PDMSを同量の比較例C3〜C5の各ヒドロキシ−PDMSに置き換えて比較例2を繰り返した。
【0090】
比較例C6
表3に示すように、過酸化物を省き、ソルベート−PDMSを等モル量(DPが12)の対応するヒドロキシ−PDMSに置き換えて実施例9を繰り返した。
【表3】

【0091】
DMA Instrument Metravib 0.1dB(登録商標) Viscoanalyzer DMA50を用いて、ガラス転移温度(Tg)の測定を行った。各試料成形シートから約42mmの長さの試料を切り取り、正確に測定した寸法は高さ37.1mm(応力方向)、幅15mm及び厚さ2mmだった。試料をけん引モード試験用に設計されたグリップを用いるDMA装置に剛体材料用の押さえで取り付けた。−150℃〜+150℃の範囲での温度掃引試験を、10Hzの周波数で5×10−5mの動的変位を適用したけん引モードで行った。ガラス転移温度(Tg)を、前記温度範囲にわたり最大E”モジュラスとして記録した。
【0092】
全ての試料がポリプロピレンのTgを示し、それらのいくつかは加えたポリジメチルシロキサンのTgに対応した低い温度でE”の追加ピークを示す。Tgを表1〜3に示す。
【0093】
熱的安定性をMettler−Toledo(登録商標)TGA851/SDTA計器上で熱重量分析(TGA)により測定した。各化合物を100ml/分の空気流量下加熱による重量損失を正確に監視しながら70μlのアルミナパンにて950℃まで加熱した。同一条件下で空のアルミナパンのバックグラウンドを記録し、各試料のTGAから差し引いた(基線補正)。
【0094】
熱的安定性は2つの温度、すなわち顕著な重量損失が始まる温度(開始点)及び初期の試料重量の50%が損失する温度(50%重量損失)により特徴付けられる。実施例1〜9及び比較例C1〜C6における開始点及び50%重量損失の温度を表1〜3に示す。
【0095】
実施例1〜5と比較例C1〜C5の各々をそれぞれ比較すると、実施例1〜5のポリプロピレンTg全てが、対応する比較例C1〜C5のポリプロピレンTgよりも低いことが観察できる。同様に、加えたポリジメチルシロキサンのTgを検出した際に、実施例1〜5におけるものは、対応する比較例C1〜C5におけるものよりも高いか、または同等である。両ポリマーのTgを互いに近づけると、本発明の配合物におけるポリプロピレン及びポリジメチルシロキサンのより良好な相溶化を証明する。
【0096】
実施例6〜8を比較例C2と比較すると、実施例6のポリプロピレンTgは比較例C2のポリプロピレンTgよりも低く、これはソルベート−PDMSをアクリレート−PDMSに置き換えた際に本発明の配合物におけるポリプロピレン及びポリジメチルシロキサンのより良好な相溶化が観察されることを証明する。実施例7及び8により実証されるように、グラフト中にポリプロピレンの分解を防止するため、アクリレート−PDMSとともに助剤としてスチレンまたはソルビン酸エチルを用いることは、ポリプロピレン及びポリジメチルシロキサンの相溶化に影響を与えず、実際には比較例C2よりも実施例7及び8の方が低いポリプロピレンTgであることが観察それる。
【0097】
実施例9を比較例C6と比較すると、本発明者らは比較例C6よりも実施例9の方が低いポリプロピレンTg及び高いポリジメチルシロキサンTgであることを観察した。このことは、アクリレート−PDMS対ポリプロピレンの比を大きくすると、より良好なポリプロピレン及びポリジメチルシロキサンの相溶化がまだ本発明の配合物に対し観察されることを示す。
【0098】
実施例1〜5と比較例C1〜C5の各々をそれぞれ比較すると、本発明者らは実施例1〜5のTGAによる開始点及び50%重量損失温度全てが対応する比較例C1〜C5の開始点及び50%重量損失温度よりも大幅に高いことを観察した。これらのより高い分解温度は、本発明の配合物のより良好な熱的安定性を証明する。
【0099】
実施例6〜8を比較例C2と比較すると、本発明者らは実施例6〜8のTGAによる開始点及び50%重量損失温度全てが、比較例C2の開始点及び50%重量損失温度よりも大幅に高いことを観察した。このことは、ソルベート−PDMSをアクリレート−PDMSに置き換える(実施例6)と、対応するヒドロキシ−PDMSを用いた配合物(比較例C2)に対し、本発明の配合物のより良好な熱的安定性が観察されることを示した。同様に、グラフト中にポリプロピレンの分解を防止するため、アクリレート−PDMSとともに助剤としてスチレンまたはソルビン酸エチルを用いる(実施例7及び8)と、本発明の配合物のより良好な熱的安定性が観察された。
【0100】
実施例9を比較例C6と比較すると、比較例C6よりも実施例9の方が開始点及び50%重量損失温度が高いことを観察した。このことは、アクリレート−PDMS対ポリプロピレンの比を増大すると、より良好な熱的安定性が本発明の配合物に対しまだ観察されることを示した。
【0101】
実施例10
表4における処方に従い、ポリプロピレン及び25重量%の木粉を含む実施例1のn=4であるソルベート−PDMSの化合物を調製した。
【0102】
実施例11
表4における処方に従い、ポリプロピレン及び25重量%の木粉を含む実施例2のn=12であるソルベート−PDMSの化合物を調製した。実施例11におけるソルベート−PDMSの量は、実施例10におけるソルベート官能基と等モルの量である。
【0103】
比較例C7
表4に示すように、γ−ATM、ソルベート−PDMS及びDHBPを省き、実施例1を繰り返した。
【0104】
比較例C8
表4に示すように、MAg−PPを加えて比較例C7を繰り返した。
【0105】
実施例10及び11並びに比較例C7及びC8の化合物を、スクリュー径20mm及びL/D=40のBrabender(登録商標)DSE20/40共回転二軸押出機を用いる連続処理により調製した。スクリューの回転速度は200rpmであり、6つの加熱ゾーンの温度プロファイルは以下の通りであった:
・T1=180℃
・T2=180℃
・T3=190℃
・T4=190℃
・T5=190℃
・T6=180℃
【0106】
ポリマー及びMAgPPを重量フィーダーBrabender Technologie(登録商標)DSR28を用いて0Dでバレル開口を介して供給し、木粉を重量フィーダーBrabender Technologie(登録商標)DDSR20を用いて0Dでバレル開口を介して供給し、液体をバレル開口に接続した膜ポンプProMinent(登録商標)Mikro g5/aを用いて10Dで供給した。粉末状の酸化防止剤を重量フィーダーBrabender Technologie(登録商標)DDW−MD1−MT12を用いて20Dでバレル開口を介して供給した。大気放出をバレル開口を介して30Dで行った。全体の押出処理量は3.5kg/hであった。
【0107】
試験した組成物を表4に示す。
【0108】
次いで、生成した化合物をISO−294に従う射出成形によりISO−3167に準拠した厚さ4mmの多目的試験片に成形した。これら試験片のISO−527に従った引張試験及びISO−179−2に従った平滑計装化シャルピー衝撃弾性により各化合物の機械的特性を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0109】
実施例10及び11を比較例C7と比較すると、実施例10及び11は比較例C7よりも高い引張弾性率、引張降伏点、破断伸び及び耐衝撃性を示すことを観察した。このことは、本発明の配合物がグラフトまたは架橋なしで同一のポリオレフィンから調製した配合物に比べて改善された物理的/機械的特性を有することを示した。
【0110】
実施例10及び11を比較例C8と比較すると、本発明の配合物(実施例10及び11)が周知のMAg−PPカップリング剤を加えて同一のポリオレフィンから調製した配合物に比べて改善された物理的/機械的特性を有することを観察した。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位で、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンとを含む組成物であって、該不飽和基が式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリオルガノシロキサンが2〜2000のシロキサン単位を含み、該シロキサン単位の少なくとも90モル%がD単位であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンが、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の少なくとも1つの末端基を有するポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジオルガノシロキサン分子の両端に式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の末端基を有する直鎖状ポリジオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオルガノシロキサンが、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の少なくとも1つのペンダント基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基が、C−Si結合によりポリオルガノシロキサンに結合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記式−X−CH=CH−R”(I)の基がアクリルオキシアルキル基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリオレフィンが、3〜8個の炭素原子を有するオレフィン単位を少なくとも50重量%含み、また前記組成物がフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る化合物の存在下β切断によるポリオレフィンの分解を抑制する助剤を含むことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記助剤が、ビニル芳香族化合物、好適にはスチレンまたはソルビン酸エステル、好適にはソルビン酸エチルであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記助剤が全組成の0.1〜15.0重量%で存在することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンであって、該不飽和基が式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とするポリオルガノシロキサン。
【請求項12】
前記式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の基が、式CH=CH−C−A−(III)またはCH≡C−C−A−(IV)(式中のAは直接結合または1〜12個の炭素原子を有する二価の有機基を表し、任意に−O−、−S−及び−NH−から選択される二価のヘテロ原子の連結基を含む)を有することを特徴とする請求項11に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項13】
前記式−X−CH=CH−R”(I)の基が、式R−CH=CH−CH=CH−X−(V)(式中のRは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表す)を有することを特徴とする請求項11に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項14】
前記式−X−CH=CH−R”(I)の基がソルビルオキシ基であることを特徴とする請求項13に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項15】
5〜95重量%のポリオレフィンと、95〜5重量%の請求項11〜14のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサンとを含む組成物。
【請求項16】
前記フリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る有機過酸化化合物が、全組成の0.01〜2重量%で存在することを特徴とする請求項1〜10及び15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンであって、該不飽和基が式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、かつC−Si結合によって該ポリオルガノシロキサンに結合し、またR”は水素または−CH=CH−若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とするポリオルガノシロキサン。
【請求項18】
シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つのSi−OH基を含むポリオルガノシロキサンを、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の不飽和基を含むアルコキシシランと反応させることを特徴とする請求項17に記載のポリオルガノシロキサンの製造方法。
【請求項19】
ポリオレフィンを不飽和基を含むケイ素化合物とフリーラジカルサイトをポリオレフィンにもたらし得る手段の存在下で反応させる工程を備えるシリコーンのポリオレフィンへのグラフトする方法あって、前記ケイ素化合物は、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、少なくとも1つの不飽和基を含むポリオルガノシロキサンであることを特徴とし、また前記不飽和基が式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の基であることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンを、ポリオレフィンと反応させる前に充填剤上に堆積させることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリオレフィンと、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンと、充填剤とを現場で反応させることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ポリオレフィンと、シロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であるポリオルガノシロキサンとを含む安定化ポリマーブレンドであって、該ポリオルガノシロキサン中の式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果を有し、及び/または芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環若しくは追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の不飽和基のフリーラジカル重合によって形成した結合により前記ポリオルガノシロキサンを少なくとも部分的にポリオレフィンにグラフトした安定化ポリマーブレンド。
【請求項23】
シリコーン部分をポリオレフィンにグラフトして、−X−CH=CH−R”または−X−C≡C−R”の基を含まない不飽和シリコーンに比べて増強したグラフトを付与する際へのシロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは−CH=CH−結合または−C≡C−結合に対して電子求引効果を有する二価の有機結合を表し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンの使用。
【請求項24】
シリコーン部分をポリオレフィンにグラフトして、−X−CH=CH−R”または−X−C≡C−R”の基を含まない不飽和シリコーンに比べてポリオレフィンの分解が少ないグラフトを付与する際へのシロキサン単位の少なくとも50モル%が本明細書で定義するD単位であり、式−X−CH=CH−R”(I)または−X−C≡C−R”(II)(式中のXは芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和を含む二価の有機結合を表し、前記芳香族環または追加的なオレフィンの二重結合若しくはアセチレン不飽和は−X−CH=CH−R”のオレフィン不飽和または−X−C≡C−R”のアセチレン不飽和と共役し、またR”は水素または−CH=CH−結合若しくは−C≡C−結合に対して電子求引効果若しくは他の任意の活性化効果を有する基を表す)の少なくとも1つの基を含むポリオルガノシロキサンの使用。

【公表番号】特表2013−519734(P2013−519734A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547478(P2012−547478)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070481
【国際公開番号】WO2011/083044
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】