説明

不飽和基含有ウレタンオリゴマーおよびそれが重合した硬化物

【課題】
基材表面にゴム弾性層を形成させるコーティング剤として用いることができ、適度な粘度を有し、加工成型し易く、硬化させて電気・電子部品ケースを封止するのに用いられる不飽和基含有ウレタンオリゴマーを提供する。
【解決手段】
不飽和基含有ウレタンオリゴマーは、化学式〔I〕
【化1】


(式〔I〕中、R-は(メタ)アクリロイル基およびビニル基の少なくともいずれかの不飽和基を含有するモノオール化合物の脱水酸基残基;-R-は有機ジイソシアナート化合物の脱イソシアナート残基;-R-は環状基または分岐鎖状基を含有するポリエステルジオール化合物、ポリエーテルジオール化合物および脂肪族基含有ジオール化合物のいずれかの脱水酸基残基;-A-はジアミン化合物およびジオール化合物のいずれかの脱水素残基;p,r=0〜7かつq=0〜3、ただしq=0のとき1≦p+r≦10)で示されその数平均分子量が5×10〜5×10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム弾性層を形成させる不飽和基含有ウレタンオリゴマー、およびこのオリゴマーを塗布して重合させたものでシーリング剤としてゴム弾性層に含まれる硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属、ガラス、木材、プラスチック等の基材でできた電気・電子部品ケースの接合面へ、ケース封止用のゴム弾性層を形成させるために塗布されるコーティング剤は、不飽和基含有ウレタンオリゴマーや溶剤が含まれている。
【0003】
塗布されたこのコーティング剤に活性エネルギー線を照射し、オリゴマーを重合させて硬化させると、強靭で大きな機械的強度を有し、耐油性・耐薬品性に優れたゴム弾性層のシーリング剤が形成される。
【0004】
特許文献1には、塗布後に溶剤を揮発させる必要がなく環境を汚染しない溶剤非含有の不飽和基含有ウレタンオリゴマーが、開示されている。このオリゴマーは比較的粘度が高く、それを重合させて得られる硬化物は比較的硬度が低い。
【0005】
溶剤を含まなくとも適度な粘度を有しており成型させ易い不飽和基含有ウレタンオリゴマー、それを硬化させることにより電気・電子部品ケースの基材同士の接合面のシーリング剤として用いられるもので硬度が小さくて加工し易く、透湿性が低くて優れたゴム弾性と気密性とを発現する硬化物が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2000−239341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、適度な粘度と優れた加工成型性を有する不飽和基含有ウレタンオリゴマー、およびそれを重合させることにより得られ、硬度が小さく透湿性が低く、ゴム弾性と気密性とに優れたシーリング剤として用いられる硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、下記化学式〔I〕
【化1】

(式〔I〕中、R−は、(メタ)アクリロイル基およびビニル基の少なくともいずれかの不飽和基を含有するモノオール化合物の脱水酸基残基、
−R−は、有機ジイソシアナート化合物の脱イソシアナート残基、
−R−は、数平均分子量1×10〜1×10で環状基または分岐鎖状基を含有するポリエステルジオール化合物の脱水酸基残基、数平均分子量1×10〜1×10のポリエーテルジオール化合物の脱水酸基残基、または脂肪族基含有ジオール化合物の脱水酸基残基、
−A−は、ジアミン化合物の脱水素残基、またはジオール化合物の脱水素残基、
p,r=0〜7かつq=0〜3、ただしq=0のとき1≦p+r≦10)
で示され、その数平均分子量が5×10〜5×10であることを特徴とする不飽和基含有ウレタンオリゴマーである。
【0009】
この不飽和基含有ウレタンオリゴマーは、粘稠な液体であり、溶剤を用いなくとも柔軟であって自在に成型でき、加工性に優れるものである。
【0010】
この不飽和基含有ウレタンオリゴマーは、架橋させ重合させて硬化物にしたとき、数平均分子量がこの範囲より小さい不飽和基含有ウレタンオリゴマーの硬化物や環状構造を含まないウレタンオリゴマーの硬化物に比べ、分子間架橋密度が疎となることに起因して硬度が一層低くなるため、ゴム弾性、加工成型性を向上させるうえ、密着性、気密性、強度が十分となり、透湿性が低くなるという優れた特性を発現させるものである。
【0011】
前記−R−は、中でもポリエステルジオール化合物の脱水酸基残基であることが好ましい。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記−R−が、環状基含有ジカルボン酸とジオールとが縮合した前記ポリエステルジオール化合物の脱水酸基残基、または環状基含有ジカルボン酸無水物がジオールに反応して変性した前記ポリエステルジオール化合物の脱水酸基残基であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和基含有ウレタンオリゴマーである。
【0013】
−R−を構成する環状基含有ジカルボン酸またはその酸無水物として、例えばフタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。またこれらのジカルボン酸やその酸無水物は、複数種混合して用いてもよい。構造の異なる別なカルボン酸やその酸無水物をさらに混合して用いてもよい。
【0014】
−R−を構成するジオールとして、例えばエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ビスフェノール A テトラエトキシレート、2,2’−チオジエタノール、アセチレン型ジオール、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ノルボルニレングリコール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、2,4−ジメチル−2−エチレンヘキサン−1,3−ジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールおよび3−メチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
【0015】
同じく請求項3に係る発明は、−A−が、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ノナンジアミン、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、水添ジフェニルメタンジアミン、ビスアミノプロピルエーテル、ビスアミノプロピルエタン、ビスアミノプロピルジエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロピルポリエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロポキシネオペンチルグリコール、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、トルエンジアミン、および両末端アミノ変性シリコーンから選ばれる前記ジアミン化合物の脱水素残基;またはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、両末端水酸基変性シリコーン、およびカルボキシル基含有ジオールから選ばれる前記ジオール化合物の脱水素残基であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和基含有ウレタンオリゴマーである。
【0016】
同じく請求項4に係る発明は、前記R−が、ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキルビニルエーテルのいずれかの前記モノオール化合物の脱水酸基残基であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和基含有ウレタンオリゴマーである。
【0017】
このモノオール化合物は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートやヒドロキシアルキルビニルエーテルが好ましい。ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートであってもよい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。
【0018】
同じく請求項5に係る発明は、前記−R−が、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ノルボルナンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアナート、水添ジフェニルメタンジイソシアナート、およびジフェニルメタンジイソシアナートから選ばれる少なくとも一種類の前記有機ジイソシアナート化合物の脱イソシアナート残基であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和基含有ウレタンオリゴマーである。
【0019】
同じく請求項6に係る発明は、前記化学式〔I〕で示されるq=0の不飽和基含有ウレタンオリゴマーを製造する方法であって、前記ポリエステルジオール化合物、前記ポリエーテルジオール化合物、または前記脂肪族基含有ジオール化合物と、前記有機ジイソシアナート化合物とを重付加させてイソシアナート基を両末端に有する付加物を形成し、該イソシアナート基に、前記モノオール化合物を付加させることを特徴とする不飽和基含有ウレタンオリゴマーを製造する方法である。
【0020】
同じく請求項7に係る発明は、前記化学式〔I〕で示されるq≠0の不飽和基含有ウレタンオリゴマーを製造する方法であって、前記脂肪族基含有ジオール化合物、前記ポリエステルジオール化合物、または前記ポリエーテルジオール化合物と、前記有機ジイソシアナート化合物とを重付加させてイソシアナート基を両末端に有する付加物を形成し、前記ジアミン化合物または前記ジオール化合物の末端の各々を、該付加物の片端のイソシアナート基に付加させ、該付加物の別な片端のイソシアナート基に、前記モノオール化合物を付加させることを特徴とする不飽和基含有ウレタンオリゴマーを製造する方法である。
【0021】
ポリエステルジオール化合物やポリエーテルジオール化合物や脂肪族基含有ジオール化合物と、ジアミン化合物やジオール化合物とが、順次、別途に加えられる。これにより、不飽和基含有ウレタンオリゴマー分子中、ポリエステルジオール化合物やポリエーテルジオール化合物や脂肪族基含有ジオール化合物由来のウレタン構造(−ORO−CONH−R−NHCO−)と、ジアミン化合物やジオール化合物由来のウレタン構造(−A−CONH−R−NHCO−)とが、局在化する。それに起因して、ウレタンオリゴマーは、適度な粘度を有する粘稠液体となっているから、柔軟で、自在に成型できる。
【0022】
同じく請求項8に係る発明は、前記化学式〔I〕で示される不飽和基含有ウレタンオリゴマーと、重合開始剤、架橋剤およびモノマーのうちの少なくとも一つとを含むことを特徴とする組成物である。
【0023】
重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられる。架橋剤は、有機ポリイソシアナート化合物が挙げられる。モノマーは、希釈して塗工粘度を調節するために共存させるもので、例えばブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
同じく請求項9に係る発明は、前記化学式〔I〕で示される不飽和基含有ウレタンオリゴマーが架橋して重合したことを特徴とする硬化物である。硬化物は、このオリゴマーの一種のみを重合させたものであってもよく、複数種の不飽和基含有ウレタンオリゴマーの混合物が、架橋して重合したものであってもよい。このオリゴマーを含む前記組成物を重合させたものであってもよい。
【0025】
同じく請求項10に係る発明は、重合開始剤、架橋剤、および活性化エネルギーのうちの少なくとも一つの存在により、前記架橋がなされたことを特徴とする請求項9に記載の硬化物である。
【0026】
活性エネルギー線は、例えば紫外線、可視光線、電子線、放射線、熱が挙げられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の不飽和基含有ウレタンオリゴマーは、溶剤を用いることなく、脂肪族基含有ジオール化合物、ポリエステルジオール化合物またはポリエーテルジオール化合物と、有機ジイソシアナート化合物と、ジアミン化合物またはジオール化合物と、モノオール化合物とを順次加えるという簡便な方法により製造できるものである。このウレタンオリゴマーは、柔軟であり、自在に成型や塗布ができるゲル状であって、加工性に優れており、コーティング剤や塗料に用いられる。
【0028】
このコーティング剤や塗料を基材に塗布後、活性エネルギー線を照射すると、このウレタンオリゴマーが速やかに架橋し重合した膜状の硬化物を簡便に形成できる。硬化物は、適度なゴム弾性と十分な強度とを有し、透湿性が低く、気密性や密着性が優れているため、シーリング剤として電気・電子部品ケースの基材同士の接合面を隙間なく密着させることができるものである。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
本発明の不飽和基含有ウレタンオリゴマーを製造する例を以下に示す。
【0031】
分岐鎖含有ジオールとジカルボン酸とからなるポリエステルジオール化合物HO−R−OHと、有機ジイソシアナート化合物OCN−R−NCOとを、無触媒または触媒例えば有機金属触媒や塩基性触媒の存在下、常温〜100℃好ましくは80〜100℃で加熱攪拌し、重付加させると、下記の化学反応式〔II〕
【化2】

に示すように、イソシアナート基を両末端に有する付加物を形成する。この触媒の例としては、チタンテトラブトキサイド、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノラート)等のチタン化合物、ナフテン酸コバルト等のコバルト化合物、ナフテン酸亜鉛等の亜鉛化合物、塩化第一錫、塩化第二錫、テトラ−n−ブチル錫、トリ−n−ブチル錫アセテート、n−ブチル錫トリクロライド、トリメチル錫ハイドロオキサイド、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、オクテン酸錫等の錫化合物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物やその4級塩等が挙げられるが、一般にウレタン化反応触媒に用いられる化合物であれば本目的を損なわない限りいずれのものを用いてもよい。しかし、毒性等などで特定金属を敬遠する用途のものに使用する場合には、低毒性でウレタン化反応性に優れているチタン触媒を使用することが好ましい。
【0032】
次いで、この付加物に、有機ジイソシアナート化合物OCN−R−NCOと、HN−R−NHで示されるジアミンとを加え、同様な条件で重付加反応させる。すると、化学反応式〔III〕
【化3】

に示すように、付加物の片端のイソシアナート基が、ジアミン化合物の末端と付加反応し、主鎖がさらに延伸した化合物となる。
【0033】
この化合物に、さらに(メタ)アクリロイル基およびビニル基の少なくともいずれかの不飽和基を含有するモノオール化合物R−OH例えばヒドロキシアルキルメタクリレートCH=CH(CH)CO(CH−OH(xは例えば2)を加え、p−メトキシフェノール、およびジ−t−ブチル−ヒドロキシトルエン存在下55〜90℃で加熱攪拌すると、化学反応式〔IV〕
【化4】

に示すように、前記式〔I〕で示される不飽和基含有ウレタンオリゴマーが得られる。
【0034】
このウレタンオリゴマーは、数平均分子量が5×10〜5×10で、粘稠液体である。5×10〜3×10であることが好ましいが、3×10を超えてもよい。
【0035】
このウレタンオリゴマーに光ラジカル重合開始剤を加え、プラスチック、ガラス、木材、コンクリート、金属の基材に塗布する。紫外線を照射すると、ウレタンオリゴマーの不飽和基が順次架橋し、遂には3次元的な網目状に架橋して重合し、ゴム弾性を有する硬化物を形成する。このようにR−がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの脱水酸基残基であるとき、重合開始剤はヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6,−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドの中から選ばれる少なくとも一種類の光ラジカル重合開始剤、またはジラウリロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンの中から選ばれる少なくとも一種類の熱重合開始剤であることが好ましい。
【0036】
なお、R−がヒドロキシアルキルビニルエーテルの脱水酸基残基であるとき、重合開始剤は、p−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩、p−メトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウム塩の中から選ばれる少なくとも一種類のオニウム塩であることが好ましい。
【0037】
また、同様にして、−A−がジアミン化合物の脱水素残基であるウレタンオリゴマーを、架橋剤により架橋させて不飽和基含有ウレタンプレポリマーを製造することができる。このような架橋剤は、ポリイソシアナートが挙げられ、より具体的にはヘキサメチレンジイソシアナートの三量体、イソホロンジイソシアナートの三量体、ジフェニルメタンジイソシアナートが挙げられる。ウレタンオリゴマーにポリイソシアナートを添加して加熱することにより、ジアミン由来のNH基がポリイソシアナートのイソシアナート基と反応してウレタン結合を形成し、複数のウレタンオリゴマーが三次元的な網目状に架橋する。さらに、不飽和基同士が架橋し、一層複雑な網目状に架橋して、硬化物を形成する。
【0038】
以下に本発明を適用する実施例、および本発明を適用外の比較例により詳細に説明する。
【0039】
実施例1〜5および比較例1〜2は、不飽和基含有ウレタンオリゴマーを合成し、またそれを含む組成物を調製した例である。
【0040】
(実施例1)
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールと無水フタル酸とから得られたポリエステルジオール化合物(数平均分子量 2000)400gとノルボルナンジイソシアナート82.4gと、酸化防止剤のジ−t−ブチル−ヒドロキシ−フェノール 0.10gとを、攪拌機、冷却管、温度計を備えた1リットル四ッ口フラスコに加え、80℃で2時間反応させた。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート46.2g、重合禁止剤のp−メトキシフェノール0.10g、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノラート)0.06gとを加え、85℃で6時間反応させた。反応液の一部を取り出し赤外線吸収スペクトルで2280cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが消失したことより、反応の終点を確認し、目的とするウレタンオリゴマーを得た。得られたウレタンオリゴマーについて数平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工社製:GPC−1)を用い、ポリスチレン換算した値で求めたところ、Mw=18000であった。
【0041】
(実施例2)
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとフタル酸とから得られたポリエステルジオール化合物(数平均分子量 2000)400gとノルボルナンジイソシアナート82.4gと、酸化防止剤のジ−t−ブチル−ヒドロキシ−フェノール0.10gとを、攪拌機、冷却管、温度計を備えた1リットル四ッ口フラスコに加え、80℃で8時間反応させた。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート46.2g、重合禁止剤のp−メトキシフェノール0.10g、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノラート)0.06gとを加え、85℃で6時間反応させた。反応液の一部を取り出し赤外線吸収スペクトルで2280cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが消失したことより、反応の終点を確認し、目的とするウレタンオリゴマーを得た。得られたウレタンオリゴマーについて数平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工社製:GPC−1)を用い、ポリスチレン換算した値で求めたところ、Mw=20000であった。
【0042】
(実施例3)
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールと無水フタル酸とから得られたポリエステルジオール化合物(数平均分子量 2000)240gと、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とから得られたポリエステルジオール化合物(数平均分子量 5000)150gとジフェニルメタンジイソシアナート46.4g、酸化防止剤のジ−t−ブチル−ヒドロキシ−フェノール0.09gを、攪拌機、冷却管、温度計を備えた1リットル四ッ口フラスコに加え、80℃で4時間反応させた。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート17.5g、重合禁止剤のp−メトキシフェノール0.09g、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノラート)0.06gとを加え、85℃で6時間反応させた。反応液の一部を取り出し赤外線吸収スペクトルで2280cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが消失したことより、反応の終点を確認し、目的とするウレタンオリゴマーを得た。得られたウレタンオリゴマーについて数平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工社製:GPC−1)を用い、ポリスチレン換算した値で求めたところ、Mw=23000であった。
【0043】
(実施例4)
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールと無水フタル酸とから得られたポリエステルジオール化合物(数平均分子量 2000)240gと、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とから得られたポリエステルジオール化合物(数平均分子量 5000)150gとジフェニルメタンジイソシアナート46.4g、酸化防止剤のジ−t−ブチル−ヒドロキシ−フェノール0.09gを、攪拌機、冷却管、温度計を備えた1リットル四ッ口フラスコに加え、80℃で4時間反応させた。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート17.5g、重合禁止剤のp−メトキシフェノール0.09g、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノラート)0.06gとを加え、85℃で6時間反応させた。反応液の一部を取り出し赤外線吸収スペクトルで2280cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが消失したことより、反応の終点を確認し、目的とするウレタンオリゴマーを得た。得られたウレタンオリゴマー80部に対し2−ヒドロキシブチルアクリレート15部、ペンタエリストールトリアクリレート5部を添加して、組成物を得た。
【0044】
(実施例5)
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とから得られたポリエステルジオール化合物(数平均分子量 5000)400gとノルボルナンジイソシアナート46.4g、酸化防止剤のジ−t−ブチル−ヒドロキシ−フェノール0.09gを、攪拌機、冷却管、温度計を備えた1リットル四ッ口フラスコに加え、80℃で4時間反応させた。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート17.5g、重合禁止剤のp−メトキシフェノール0.09g、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノラート)0.06gとを加え、85℃で6時間反応させた。反応液の一部を取り出し赤外線吸収スペクトルで2280cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが消失したことより、反応の終点を確認し、目的とするウレタンオリゴマーを得た。得られたウレタンオリゴマー80部に対し2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸8部、フェノキシエチルアクリレート12部を添加して、組成物を得た。
【0045】
(比較例1)
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とから得られたポリエステルジオール化合物(数平均分子量 5000)400gとノルボルナンジイソシアナート32.3gと、酸化防止剤のジ−t−ブチル−ヒドロキシ−フェノール0.09gとを、攪拌機、冷却管、温度計を備えた1リットル四ッ口フラスコに加え、80℃で4時間反応させた。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート17.9g、重合禁止剤のp−メトキシフェノール0.09g、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノラート)0.05gを加え、85℃で6時間反応させた。反応液の一部を取り出し赤外線吸収スペクトルで2280cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが消失したことより、反応の終点を確認し、目的とするウレタンオリゴマーを得た。得られたウレタンオリゴマーについて数平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工社製:GPC−1)を用い、ポリスチレン換算した値で求めたところ、Mw=27000であった。
【0046】
(比較例2)
ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量 2000)400gとノルボルナンジイソシアナート80.8gと、酸化防止剤のジ−t−ブチル−ヒドロキシ−フェノール0.10gとを、攪拌機、冷却管、温度計を備えた1リットル四ッ口フラスコに加え、80℃で3時間反応させた。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート46.5g、重合禁止剤のp−メトキシフェノール0.10g、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノラート)0.05gを加え、85℃で3時間反応させた。反応液の一部を取り出し赤外線吸収スペクトルで2280cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが消失したことより、反応の終点を確認し、目的とするウレタンオリゴマーを得た。得られたウレタンオリゴマーについて数平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工社製:GPC−1)を用い、ポリスチレン換算した値で求めたところ、Mw=21000であった。
【0047】
(物性評価試験)
実施例1〜5および比較例1〜2で得られた不飽和基含有ウレタンオリゴマーおよびそれを含む組成物を、夫々重合させて硬化物を調製し、それのショアA硬度および透湿度を測定し、物性を評価した。
【0048】
(1)ショアA硬度
実施例1〜5および比較例1〜2で得られた不飽和基含有ウレタンオリゴマーおよびそれを含む組成物の各々の100gに、光重合開始剤である4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン1.5gを加え、十分に混合した。得られた混合物を、容器に流し込み、6m/minのスピードのコンベアに積載し、1kW高圧水銀灯(80W/cm)を用いて高さ10cmの位置から光照射して重合させると、厚さ5mmのボタン型硬化物が得られた。各々の硬化物について、ショアA硬度計を用いて硬度を測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
(2)透湿度
実施例1〜5および比較例1〜2で得られた不飽和基含有ウレタンオリゴマーおよびそれを含む組成物の各々の100gに、光重合開始剤である4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンを1.5g加え、十分に混合した。得られた混合物を、厚み1.0mmのスペーサーを有する離型PETフィルムに挟み、6m/minのスピードのコンベアに積載し、1kW高圧水銀灯(80W/cm)を用いて高さ10cmの位置から光照射して重合させると、膜厚1.0mmの膜状の硬化物が得られた。各々の硬化物について、JIS Z0208試験に従い、恒温恒湿槽中40℃×90%環境下で、透湿度を測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1〜5で得られたウレタンオリゴマーやそれを含む組成物が硬化した硬化物は、柔軟性に富み硬度が低く、また透湿性が低く、優れた物性を有していた。そのためこの硬化物は、基材表面にゴム弾性を持たせるコーティング剤、および気密性が要求される電気・電子部品ケースの基材同士の接合面等を封止するシーリング剤として好適である。
【0052】
一方、比較例1〜2で得られた不飽和基含有ウレタンオリゴマーが硬化した硬化物は、硬くて柔軟性がなかったり透湿性が高かったりするため、シーリング剤として不充分であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の不飽和基含有ウレタンオリゴマーは、各種インキ、塗料、コーティング剤に含ませて用いられる。このオリゴマーを塗布し重合させて得られる硬化物の層は、硬度が低く、適度なゴム弾性を有し、気密性や密着性に優れ、透湿性が低いため、基材表面を保護するのに用いられる。さらに、透湿性が低いうえ、密封性が優れるため、電気・電子部品ケース等のシーリング剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式〔I〕
【化1】

(式〔I〕中、R−は、(メタ)アクリロイル基およびビニル基の少なくともいずれかの不飽和基を含有するモノオール化合物の脱水酸基残基、
−R−は、有機ジイソシアナート化合物の脱イソシアナート残基、
−R−は、数平均分子量1×10〜1×10で環状基または分岐鎖状基を含有するポリエステルジオール化合物の脱水酸基残基、数平均分子量1×10〜1×10のポリエーテルジオール化合物の脱水酸基残基、または脂肪族基含有ジオール化合物の脱水酸基残基、
−A−は、ジアミン化合物の脱水素残基、またはジオール化合物の脱水素残基、
p,r=0〜7かつq=0〜3、ただしq=0のとき1≦p+r≦10)
で示され、その数平均分子量が5×10〜5×10であることを特徴とする不飽和基含有ウレタンオリゴマー。
【請求項2】
前記−R−が、環状基含有ジカルボン酸とジオールとが縮合した前記ポリエステルジオール化合物の脱水酸基残基、または環状基含有ジカルボン酸無水物がジオールに反応して変性した前記ポリエステルジオール化合物の脱水酸基残基であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和基含有ウレタンオリゴマー。
【請求項3】
前記−A−が、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ノナンジアミン、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、水添ジフェニルメタンジアミン、ビスアミノプロピルエーテル、ビスアミノプロピルエタン、ビスアミノプロピルジエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロピルポリエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロポキシネオペンチルグリコール、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、トルエンジアミン、および両末端アミノ変性シリコーンから選ばれる前記ジアミン化合物の脱水素残基;またはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、両末端水酸基変性シリコーン、およびカルボキシル基含有ジオールから選ばれる前記ジオール化合物の脱水素残基であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和基含有ウレタンオリゴマー。
【請求項4】
前記R−が、ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキルビニルエーテルのいずれかの前記モノオール化合物の脱水酸基残基であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和基含有ウレタンオリゴマー。
【請求項5】
前記−R−が、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ノルボルナンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアナート、水添ジフェニルメタンジイソシアナート、およびジフェニルメタンジイソシアナートから選ばれる少なくとも一種類の前記有機ジイソシアナート化合物の脱イソシアナート残基であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和基含有ウレタンオリゴマー。
【請求項6】
前記化学式〔I〕で示されるq=0の不飽和基含有ウレタンオリゴマーを製造する方法であって、前記ポリエステルジオール化合物、前記ポリエーテルジオール化合物、または前記脂肪族基含有ジオール化合物と、前記有機ジイソシアナート化合物とを重付加させてイソシアナート基を両末端に有する付加物を形成し、該イソシアナート基に、前記モノオール化合物を付加させることを特徴とする不飽和基含有ウレタンオリゴマーを製造する方法。
【請求項7】
前記化学式〔I〕で示されるq≠0の不飽和基含有ウレタンオリゴマーを製造する方法であって、前記脂肪族基含有ジオール化合物、前記ポリエステルジオール化合物、または前記ポリエーテルジオール化合物と、前記有機ジイソシアナート化合物とを重付加反応させてイソシアナート基を両末端に有する付加物を形成し、前記ジアミン化合物または前記ジオール化合物の末端の各々を、該付加物の片端のイソシアナート基に付加させ、該付加物の別な片端のイソシアナート基に、前記モノオール化合物を付加させることを特徴とする不飽和基含有ウレタンオリゴマーを製造する方法。
【請求項8】
前記化学式〔I〕で示される不飽和基含有ウレタンオリゴマーと、重合開始剤、架橋剤およびモノマーのうちの少なくとも一つとを含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
前記化学式〔I〕で示される不飽和基含有ウレタンオリゴマーが架橋して重合したことを特徴とする硬化物。
【請求項10】
重合開始剤、架橋剤、および活性化エネルギーのうちの少なくとも一つの存在により、前記架橋がなされたことを特徴とする請求項9に記載の硬化物。

【公開番号】特開2006−273895(P2006−273895A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90846(P2005−90846)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】