説明

不飽和基含有樹脂、その製造方法ならびに感光性樹脂組成物

【課題】
アルカリに対する溶解速度が速く、耐熱着色性、現像性、表面平滑性に優れた不飽和基含有樹脂、ならびに感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
ビスフェノール型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させ、更に無水コハク酸および/または無水マレイン酸を付加させた後に、更にビスフェノール型エポキシ樹脂を付加させた不飽和基含有樹脂、ならびに更に無水コハク酸および/または無水マレイン酸を付加させた不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、および光重合性モノマー、光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性、耐熱性、アルカリ可溶性に優れた新規な樹脂の製造方法および感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、耐熱性に優れた光重合性を有する重合体として、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させた後に、テトラヒドロフタル酸無水物などを付加させ、更にエポキシ樹脂を反応させて高分子量化した感光性樹脂(例えば、特許文献1参照)等が提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1の実施例で合成された重合体は、主にソルダーレジストに使用することを主目的としており、例えば液晶ディスプレイや固体撮像素子に使用されるカラーフィルタ製造用の感光性樹脂組成物のバインダーとして使用する場合、現像特性、特に現像時のアルカリ可溶性や表面平滑性が不足する場合があった。
【0004】
また、膜やフィルムの形成工程における加熱時に熱分解し、分解ガスが発生することが明らかとなった。例えば、液晶ディスプレイやプリント配線基板作成用の感光性樹脂としてこれらの重合体を用いた場合、製造工程での加熱時に発生した分解物が、加熱炉を汚染したり、分解物が液晶や基板を汚染して電気絶縁性が低下すること等があった。
【0005】
また、加熱時の樹脂の熱着色が強いと言う問題点も判明した。したがって、耐熱性を向上するとともに、樹脂組成物の調製を容易にし、また、感光性樹脂として用いる場合の現像性や表面平滑性を向上することができる樹脂が求められるところであった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−237284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、耐熱性に優れて加熱時に発生するガスを低減でき、アルカリに対する溶解速度が速く、しかもアルカリ現像性や表面平滑性に優れた樹脂および感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するべく、鋭意検討を行った。その結果、ビスフェノール型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させ、更に無水コハク酸および/または無水マレイン酸を付加させ、更にビスフェノール型エポキシ樹脂を反応させた樹脂、および更に無水コハク酸および/または無水マレイン酸を反応させた不飽和基含有樹脂、および光重合性モノマー、光重合開始剤を配合した感光性樹脂組成物が課題を一挙に解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ビスフェノール型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させ、無水コハク酸および/または無水マレイン酸を付加させ、更にビスフェノール型エポキシ樹脂を反応させて得られる不飽和基含有樹脂、更に無水コハク酸および/または無水マレイン酸を反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂、更には光重合性モノマーと光重合性開始剤を必須成分として含む感光性樹脂組成物である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂は、耐熱性が高く熱着色や加熱時の分解ガスが少ないものであり、また、極めて優れた塗膜を形成することができ、アルカリに対する溶解速度が速く表面平滑性が高いことから、例えば、感光性樹脂組成物、各種コーティング剤、塗料等の用途、特に液晶ディスプレイや固体撮像素子に使用するカラーフィルタの製造用に使用する感光性樹脂組成物において好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の不飽和基含有樹脂は、(A)ビスフェノール型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させ、(B)更に無水コハク酸および/または無水マレイン酸を付加させ、(C)更にビスフェノール型エポキシ樹脂を反応させて得られる不飽和基含有樹脂、および(D)更に無水コハク酸および/または無水マレイン酸を付加した不飽和基含有樹脂である。
【0012】
無水コハク酸および/または無水マレイン酸に由来の骨格を樹脂に導入することによって、本発明の不飽和基含有樹脂を用いた感光性樹脂組成物は、耐熱分解性とともに耐熱着色性にも優れたものとなることが見出された。これは、無水コハク酸および/または無水マレイン酸を付加させることで、アルカリ可溶性に優れると共に非常に耐熱性が高まり熱分解が抑制されるためであると推測される。
【0013】
更に、得られた不飽和基含有樹脂に、更に無水コハク酸および/または無水マレイン酸を反応させることで、非常に優れたアルカリ可溶性と表面平滑性を有する膜を形成し得るものとなる特徴を有する。
【0014】
以下、上記不飽和基含有樹脂について説明する。
(A)工程で使用する前記ビスフェノール型エポキシ樹脂はビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂であればよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、および水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、溶媒への溶解性、耐熱分解性、耐熱着色性、工業的入手のし易さの点等から好ましい。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、工業的入手のし易さ、アルカリ可溶性や、加熱での着色の少なさの点から、最も好ましい。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100〜500が好ましく、150〜400が更に好ましく、150〜200が最も好ましい。エポキシ当量を上記範囲とすることで、得られる重合体の分子量を適切な範囲に制御することができ、優れたアルカリ可溶性を発揮させることができる。
【0015】
(A)工程で使用する前記(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称である。アクリル酸とメタクリル酸は、いずれか一方でも、両方を併用して使用してもよいが、反応性およびアルカリ可溶性に優れる点で、アクリル酸が好ましい。
【0016】
(B)工程で使用する前記無水コハク酸および/または無水マレイン酸は、いずれか一方でも両方を併用してもよい。熱着色の少なさの面で、無水コハク酸が好ましい。
【0017】
(A)工程および(B)工程で使用するビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の使用割合は、特に制限されないが、エポキシ基とカルボキシル基のモル比が1:0.95〜1:1.1が好ましく、特に1:1〜1:1.05が特に好ましい。上記範囲にすることで(メタ)アクリル酸の残存を抑えることができ、後述する(C)工程で残存する(メタ)アクリル酸とエポキシ樹脂との副反応を抑制でき、熱分解性、現像性、光硬化性のバランスに優れた樹脂が得られる。
【0018】
(B)工程で使用する無水コハク酸および/または無水マレイン酸と、(A)工程で使用したビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基のモル比は、1:1〜1:1.1が好ましく、1:1〜1:1.05が特に好ましい。上記範囲にすることで、反応性が高く、かつ無水酸の残存量を低減でき、後の(C)工程での反応を十分に進行させることができる。
【0019】
(C)工程で使用する前記ビスフェノール型エポキシ樹脂はビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂であればよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、および水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、溶媒への溶解性、耐熱分解性、耐熱着色性、工業的入手のし易さの点等から好ましい。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、工業的入手のし易さ、アルカリ可溶性や、加熱での着色の少なさの点から、最も好ましい。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100〜500が好ましく、150〜400が更に好ましく、150〜200が最も好ましい。エポキシ当量を上記範囲とすることで、得られる重合体の分子量を適切な範囲に制御することができ、優れたアルカリ可溶性を発揮させることができる。
【0020】
前記(C)工程における、ビスフェノール型エポキシ樹脂の使用割合は、本発明の不飽和基含有樹脂の工業的製造において、極めて重要である。すなわち、(C)工程で添加するビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基(X)と、(B)工程で使用した無水コハク酸および/または無水マレイン酸(Y)のモル比(X/Y)を、0.5以上0.85以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5以上0.8以下であり、最も好ましくは、0.5以上0.75以下である。モル比を上記範囲内とすることで、得られる樹脂の分子量を適切な範囲に制御でき、分子量の増大によるアルカリ可溶性の低下、合成時の粘度上昇やゲル化を防止することができ、耐熱性とアルカリ可溶性のバランスに優れた不飽和基含有樹脂を工業的に安定して製造する事ができる。
【0021】
(D)工程で使用する無水コハク酸および/または無水マレイン酸は、どちらか一方を使用してもよいし、両方を併用してもよいが、樹脂の熱着色が少ない点で、無水コハク酸が好ましい。(D)工程で無水酸を付加することにより、樹脂のカルボキシル基の量を調節することができ、使用する条件に合わせたアルカリ可溶性を付与することが可能となる。
【0022】
(D)工程で使用する前記無水コハク酸および/または無水マレイン酸の使用量は、所望する樹脂のアルカリ可溶性によって適宜設定すればよく、特に制限されないが、樹脂に対し、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。
【0023】
本発明の不飽和基含有樹脂は、上記必須のビスフェノール型エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸以外の単量体成分を有していてもよいが、重合体に占める上記必須の単量体単位の合計質量割合としては、例えば、70質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、80質量%以上であり、更に好ましくは、90質量%以上であり、実質的に全ての成分が必須の単量体単位であることが最も好ましい。他の単量体成分の割合を上記範囲とすることで、本発明が目的とする、耐熱分解性、耐熱着色性、アルカリ可溶性、表面平滑性などのバランスが優れた樹脂となる。
【0024】
前記(A)工程ないし(D)工程の付加反応の方法としては、特に制限はなく、従来公知の反応方法を採用することができるが、特に、溶液中で反応させることが好ましい。
【0025】
また、反応温度や反応濃度(反応濃度(%)=[単量体成分の全重量/(単量体成分の全重量+溶媒重量)]×100とする)は、使用する単量体成分の種類や比率、目標とするポリマーの分子量によって異なるが、好ましくは、反応温度60〜150℃、反応濃度20〜100%とするのがよく、さらに好ましくは、反応温度80〜130℃、反応濃度30〜80%とするのがよい。
【0026】
前記単量体成分の反応において溶媒を用いる場合には、溶媒として酸、酸無水物、エポキシ化合物に不活性な溶媒を用いるようにすればよい。好ましくは、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリドン;等が挙げられる。
【0027】
これら溶媒は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、工業的入手の容易さ、人体および環境への安全性、溶解力の高さから、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルが好ましい。
【0028】
前記単量体成分を反応する際には、カルボキシル基とエポキシ基の付加反応に通常用いられる触媒を使用することが好ましい。カルボキシル基とエポキシ基の付加反応に使用する触媒としては特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類;テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミドなどのアンモニウム塩;トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミドなどのホスホニウム塩;ジメチルホルムアミドなどのアミド化合物;金属塩化合物などが挙げられる。
【0029】
これらの中でも、特に液晶ディスプレイや固体撮像素子に使用されるカラーフィルタ、半導体などの製造に使用される感光性樹脂組成物のバインダとして使用する場合には、塩化合物などのイオン性物質は電気伝導性を有するため好ましくなく、アミン類、ホスフィン類が好ましく、また熱着色が少なく触媒活性が高い点で、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルホスフィンが最も好ましい。これら触媒は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
なお、触媒の使用量は、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、全単量体成分に対して0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%とするのがよい。上記範囲の触媒量とすることで、樹脂の熱着色を少なくでき、なおかつ反応速度を適切な範囲に制御でき、工業的に除熱が可能な発熱量で安定的に製造できる。
【0031】
前記単量体成分を反応する際には、不飽和結合の熱重合によるゲル化を防止するため、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては特に制限はなく公知のものを使用することができ、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル(別名:p−メトキシフェノール)、t−ブチルカテコール、6−t−ブチル−2,4−キシレノール(別名:トパノール)、2、2‘−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのフェノール系重合禁止剤が挙げられる。その使用量は、全単量体に対して0.01〜0.5%が好ましく、更に好ましくは0.02〜0.3%である。上記範囲内にすることで、重合禁止効果が十分に発揮でき、反応中のゲル化防止や保存安定性を向上させ、かつ、熱着色や光重合性の低下のない樹脂を得ることができる。また、同時に反応系に酸素濃度を5〜10%に調整した窒素と空気または酸素の混合ガスをバブリングすることで、より重合禁止効果を高めることができるため好ましい。
【0032】
本発明の不飽和基含有樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは2000〜200000、より好ましくは5000〜100000、最も好ましくは5000〜50000である。重量平均分子量を上記範囲内にすることで、適切な粘度となり、アルカリ可溶性や耐熱性が高く表面平滑性の高い塗膜を形成できる。なお、本発明の樹脂の重量平均分子量の測定は、通常のGPC法で一般的に用いられる、ポリスチレンゲルを充填したカラムを使用し、テトラヒドロフランを溶離液とした測定方法ではカラムに吸着が起こり、ピークの高分子量部分が検出されず正確な分子量の測定ができないことを本発明者らは見出した。本発明者らは、種々検討の結果、ポリビニルアルコール架橋体等を充填した高極性カラムを使用し、溶離液に少量のリン酸等の酸性物質を添加したジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドン等の高極性溶媒を使用することで、正確な分子量を測定できることを見出した。具体的な測定方法は、実施例において示す。
【0033】
前記不飽和基含有樹脂は、酸価が20〜150mgKOH/gであるのが好ましく、より好ましくは30〜80mgKOH/gであるのがよい。酸価を上記範囲とすることで、アルカリ現像時のアルカリ溶解速度を早すぎず遅すぎず適切な範囲にすることが可能となり、かつ、硬化後の塗膜の耐アルカリ性が高く現像液に表面が侵されて表面平滑性が低下することがない良好な塗膜を形成することができる。
【0034】
次に本発明の不飽和基含有樹脂含有感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、前記不飽和基含有樹脂、光反応性モノマー、光重合開始剤を必須成分として含む他、必要に応じ、溶剤、着色剤、分散剤、エポキシ樹脂、界面活性剤、酸化防止剤等を配合することができる。
光重合性モノマーとしては、公知の多官能(メタ)アクリレートが好ましく、工業的入手のし易さや、架橋密度を高くすることが出来るため、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの3官能以上の多官能アクリレートが好ましく、5官能以上の多官能アクリレートが特に好ましい。光重合性モノマーの使用量は特に制限はないが、不飽和基含有樹脂に対し、50質量%〜200質量%が好ましい。
光重合開始剤としては、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類及びキサントン類等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上用いてもよい。
またその含有割合は、前記不飽和基含有樹脂に対して、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%である。また、必要に応じ、増感剤を併用することもできる。
着色剤や分散剤としては、例えば特開2003−215322号公報、特開2003−270428号公報等に記載されている公知の着色剤や分散剤を使用することができる。
【0035】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じ、公知のアルカリ可溶性樹脂やエポキシ樹脂などを併用してもよいが、その使用割合は、不飽和基含有樹脂に対し、0〜50質量%が好ましく、0〜30質量%が更に好ましい。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、希釈剤としての溶媒を含有するものであってもよい。
前記溶媒としては、不飽和基含有樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤を均一に溶解し、かつ反応しないものであれば、特に制限はない。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。なお、溶媒の含有量は、使用する際の最適粘度に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を意味するものとする。
以下の実施例において、各種物性等は以下のように測定した。
【0038】
<重量平均分子量>
ポリスチレンを標準物質とし、水濃度1質量%、リン酸濃度8.5mmol/kgに調整したジメチルホルムアミドを溶離液としてHLC−8120GPC(東ソー社製)、カラム TSKgel SuperAW5000(東ソー社製)によるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法にて重量平均分子量を測定した。
【0039】
<酸価>
樹脂溶液3gを精秤し、アセトン90g/水10g混合溶媒に溶解し、チモールブルーを指示薬として0.1N KOH水溶液で滴定し、固形分の濃度から固形分1g当たりの酸価を求めた。
【0040】
実施例1
<樹脂溶液の合成>
(A)反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 828EL、エポキシ当量187g/eq)350部を入れ、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1部、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸0.1部を加え、窒素、酸素混合ガス(酸素濃度 7%)をバブリングしながら115℃まで加熱した後、アクリル酸138部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)138部、トリエチルアミン3.6部を加え、4時間反応させた。(B)この反応物を100℃まで冷却し、無水コハク酸187部(Y=1.87)、PGMEA221部を加え、3時間反応させた。(C)続いてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 828EL、エポキシ当量187g/eq)233部(X=1.25)とPGMEA1000部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1部を加え、115℃にて6時間反応後、室温まで冷却することで樹脂溶液1を得た。X/Y=0.67であった。
【0041】
得られた樹脂溶液1について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は13,000、真空下160℃にて乾燥させて得られた固形分濃度は40.0%、滴定法により求めた固形分当たりの酸価は48mgKOH/gであった。
【0042】
<樹脂溶液の耐熱着色性の評価>
樹脂溶液1を100重量部、PGMEA 100重量部を混合したのち、ガラス基板上にスピンコートし、100℃で3分間乾燥後、220℃で20分間加熱した後、膜厚1.5μmの塗膜1を形成した。
【0043】
塗膜1の透過率を測定後、さらに230℃で1時間加熱し、再度透過率を測定したところ400nmにおける透過率の減少は3.3T%であった。
【0044】
<感光性樹脂組成物の調整>
樹脂溶液1を12部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 8重量部、光重合開始剤としてイルガキュア369(チバガイギ社製) 0.3重量部、PGMEA 79.7重量部を混合し、感光性樹脂組成物を得た。
【0045】
<現像性および表面平滑性の評価>
得られた感光性樹脂組成物を、ガラス基板上にスピンコートし、120℃で3分間乾燥し、膜厚2.0μmの塗膜2を形成した。
【0046】
塗膜2を、UV露光装置(Topcon社製 TME−150RNS)にて、ライン幅15μmのラインアンドスペースのフォトマスクを介し、50mJ/cmのUV光を露光し、スピン現像機(アクテス社製 ADE−3000S)で、0.05%の水酸化カリウム水溶液で20秒間現像を行ったところ、パターン形状は非常に良好で、未露光部の残渣も認められず、現像性は良好であった。また、パターンの表面平滑性は極めて良好であった。
【0047】
実施例2
(A)反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 828EL、エポキシ当量187g/eq)350部入れ、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1部、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸0.1部を加え、窒素、酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃まで加熱した後、アクリル酸138部、PGMEA138部、トリエチルアミン3.6部を加え、4時間反応させた。(B)この反応物を100℃まで冷却し、無水コハク酸187部(Y=1.87)、PGMEA221部を加え、3時間反応させた。(C)続いてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 828EL、エポキシ当量187g/eq)262部(X=1.40)とPGMEA1042部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1部を加え、115℃にて6時間反応させた。X/Y=0.75であった。(D)さらに無水コハク酸を9重量部加え、110℃にて3時間反応後室温まで冷却することで樹脂溶液2を得た。
【0048】
得られた重合体溶液2について各種物性を測定したところ、ポリスチレンを標準物質とするGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて測定した重量平均分子量は25,600、真空下160℃にて乾燥させて得られた固形分濃度は41.5%、滴定法により求めた固形分当たりの酸価は43mgKOH/gであった。
【0049】
樹脂溶液2を72重量部、PGMEA 78重量部を混合したのち、ガラス基板上にスピンコートし、実施例1と同様の方法で透過率の減少を測定したところ2.8T%であった。
【0050】
また、樹脂溶液2を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光性樹脂組成物を得、実施例1と同様の操作を行って現像性、表面平滑性を測定したところ、いずれも極めて良好であった。
【0051】
実施例3
(A)反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 828EL、エポキシ当量187g/eq)350部入れ、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1部、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸0.1部を加え、窒素、酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃まで加熱した後、アクリル酸138部、PGMEA138部、トリエチルアミン3.6部を加え、4時間反応させた。(B)この反応物を100℃まで冷却し、無水コハク酸187部(Y=1.87)、PGMEA221部を加え、3時間反応させた。(C)続いてビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製 YD−901、エポキシ当量467g/eq)583部(X=1.17)とPGMEA1523部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1.3部を加え、115℃にて6時間反応させた。X/Y=0.63であった。(D)さらに無水コハク酸を9重量部加え、110℃にて3時間反応後室温まで冷却することで樹脂溶液3を得た。
【0052】
得られた樹脂溶液3について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は19,200、固形分濃度は39.9%、固形分当たりの酸価は50mgKOH/gであった。
実施例1と同様の操作を行い、樹脂溶液の耐熱着色性を測定を行った。その結果を表1に示す。
【0053】
また、実施例1と同様の操作を行って、感光性樹脂組成物を得、現像性、表面平滑性を測定した。
パターンのエッジにややフリンジが認められるものの概ね良好であった。現像時間を30秒にすると、フリンジは見られず現像性は良好となった。また、現像時間30秒でも表面荒れは認められず、表面平滑性は極めて良好であった。
【0054】
【表1】

【0055】
比較例1
(A)反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 828EL、エポキシ当量187g/eq)350部入れ、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1部、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸0.1部を加え、窒素、酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃まで加熱した後、アクリル酸141部、PGMEA141部、トリエチルアミン4.1部を加え、4時間反応させた。(B)この反応物を100℃まで冷却し、無水テトラヒドロフタル酸289部、PGMEA274部を加え、3時間反応させた。(C)続いてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 828EL、エポキシ当量187g/eq)233部とPGMEA1100部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1部を加え、115℃にて6時間反応させた。(D)さらに無水テトラヒドロフタル酸を22重量部加え、110℃にて3時間反応後室温まで冷却することで樹脂溶液4を得た。
【0056】
得られた樹脂溶液4について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は13,200、固形分濃度は39.7%、固形分当たりの酸価は59mgKOH/gであった。
【0057】
樹脂溶液4を76重量部、PGMEA 74重量部を混合したのち、ガラス基板上にスピンコートし、実施例1と同様の操作を行い、耐熱着色性を測定した。結果を表1に示す。400nmでの透過率の低下が実施例1よりも大きく、熱着色が強いことがわかる。
【0058】
また、樹脂溶液4を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光性樹脂溶液を得、現像性、表面平滑性を測定した。未露光部に一部溶け残りが見られ、現像性は不良であった。また、現像時間を30秒に延ばすと未露光部の溶け残りはなくなったが、パターンのエッジにフリンジが見られ、一部パターンの欠損が確認された。また、硬化部分の表面に荒れが認められ、表面平滑性は不良であった。
【0059】
比較例2
(A)反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 828EL、エポキシ当量187g/eq)350部入れ、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1部、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸0.1部を加え、窒素、酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃まで加熱した後、アクリル酸141部、PGMEA 141部、トリエチルアミン4.1部を加え、4時間反応させた。(B)この反応物を100℃まで冷却し、無水テトラヒドロフタル酸289部、PGMEA 274部を加え、3時間反応させた。(C)続いてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 828EL、エポキシ当量 187g/eq)263部とPGMEA 1100部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール1部を加え、115℃にて6時間反応させた。(D)さらに無水テトラヒドロフタル酸を51重量部加え、110℃にて3時間反応後室温まで冷却することで樹脂溶液5を得た。
【0060】
得られた樹脂溶液5について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は19,700、固形分濃度は40.1%、固形分当たりの酸価は57mgKOH/gであった。
樹脂溶液5を、実施例1と同様の操作を行い、耐熱着色性を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
また、樹脂溶液5を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光性樹脂組成物を得、現像性、表面平滑性を測定した。未露光部に溶け残った残渣が多く見られた。現像時間を30秒にしても、未露光部の残渣はなくならず現像性は不良であった。また、表面が現像液で侵され、現像液の流れる方向に筋状の表面荒れが見られ、表面平滑性は不良であった。
【0062】
上述した実施例及び比較例から、本発明の不飽和基含有樹脂を用いた感光性樹脂組成物は、熱着色が小さく、アルカリ現像性や表面平滑性にも優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
液晶ディスプレイや固体撮像素子のカラーフィルタ、プリント配線基板等の製造に用いられる感光性樹脂組成物のバインダーポリマー、熱硬化性樹脂、各種コーティング材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビスフェノール型エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸を付加させ、
(B)更に無水コハク酸および/または無水マレイン酸を付加させた 後、
(C)更にビスフェノール型エポキシ樹脂を付加させる
ことを特徴とする、不飽和基含有樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の方法で得られた不飽和基含有樹脂に、更に、
(D)無水コハク酸および/または無水マレイン酸を付加させる ことを特徴とする、不飽和基含有樹脂。
【請求項3】
ビスフェノール型エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1または2記載の不飽和基含有樹脂。
【請求項4】
(C)の工程において、添加するビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基(X)と、(B)工程で添加した無水コハク酸および/または無水マレイン酸(Y)のモル比(X/Y)が、0.5以上0.85以下であることを特徴とする、請求項1〜3に記載の不飽和基含有樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3記載の不飽和基含有樹脂と、光重合性モノマー、光重合開始剤を含むことを特徴とする、感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする、硬化物。

【公開番号】特開2010−150397(P2010−150397A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330189(P2008−330189)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】