説明

両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法

【課題】触媒成分等の不純物の残存量が少ない両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを濾過操作なしに効率よく製造する方法を提供する。更に、該不純物を連続的に分離除去し、かつ、熱履歴により増粘するのを抑えて該ジオルガノポリシロキサンを製造する方法を提供する。
【解決手段】(A)両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンと、(B)特定のヒドロカルビルオキシシランとを、(C)アンモニア、沸点が20℃以下であるアミンまたはこれらの組み合わせ、の存在下で縮合反応に供して反応混合物を得、得られた反応混合物を減圧加熱することにより該反応混合物から(C)成分、アルコールおよび未反応の(B)成分を分離除去する、ことを特徴とする特定の末端構造を有する両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法。前記減圧加熱は薄膜蒸発器により行われることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1成分型脱アルコールタイプRTV(室温硬化性)オルガノポリシロキサン組成物のベースポリマーとして有用な両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シラノール末端ジオルガノポリシロキサンポリマーよりなるベースポリマー、アルコキシ官能性シラン・シロキサンよりなる架橋剤から基本的に構成される1成分型脱アルコールタイプRTVオルガノポリシロキサン組成物は腐食性がなく、臭いも少ないという利点を有する。しかしながら、その調製時にポリマー末端のシラノール基とアルコキシ官能性架橋剤が反応することによって生成するアルコールを組成物中から取り去るのは非常に困難であり、このようにして組成物中に残存するアルコールにより組成物の保存性が低下する問題がある。
【0003】
この問題を解決するためにはシラノール末端ジオルガノポリシロキサンポリマーの末端シラノール基とアルコキシ官能性架橋剤を予め反応させて得たベースポリマーを使用することが有効である。特許文献1にはシルアルキレン骨格を有する末端アルコキシ基含有ベースポリマーからなる組成物、特許文献2にはシロキサン骨格を有する末端アルコキシ基含有ベースポリマーからなる組成物が開示されている。また、特許文献3には末端アルコキシシリル基封鎖オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとアルコキシチタンからなる組成物が開示されている。更に、特許文献4にはシラノール末端ジオルガノポリシロキサンポリマーの末端シラノール基と珪素に結合した水素原子を有するアルコキシ官能性架橋剤を予め反応させることが開示されている。加えて、特許文献5にはシルエチレン基を含む末端アルコキシシリル基封鎖オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとアルコキシチタンからなる組成物が開示されている。ところで、予め末端をアルコキシ変性したシロキサンを工業的に調製するには、生産性およびコストの点から比較的低温で短時間に反応を完了させることが重要である。しかし、特許文献1〜5に開示された末端シラノール基とアルコキシ官能性架橋剤との反応には、比較的高温での長時間の工程が必要である。
【0004】
特許文献6では、シラノール末端ジオルガノポリシロキサンとアルコキシシランとの反応において、直接添加した酸性アミン塩又は酸とアミンを同時に添加して反応系内で形成させた酸性アミン塩を触媒として使用している。酸性アミン塩は沸点が高いので、反応生成物から減圧分離するためには厳しい減圧分離条件が必要である。
【0005】
特許文献7では、シラノール基末端ポリオルガノシロキサンにイソシアナト基含有シランを反応させて、イソシアナト基末端ポリジオルガノシロキサンを合成し、このイソシアナト基末端ポリジオルガノシロキサンにアルコールを反応させて両末端アルコキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを製造する方法が開示されているが、目的物を得るための反応工程を2段階必要とする複雑な方法である。また、この反応ではカルバミン酸アルキルのような副生物が発生し、反応生成物から減圧分離するためには厳しい減圧分離条件が必要である。更に、反応末期に副生されるイソシアン酸は、反応時に添加されるアルコール類と一般的に反応性が高いので、作業者の安全性確保のためその取り扱いには十分な管理が要求されるという問題がある。
【0006】
前述の特許文献1〜7では、両末端アルコキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンをバッチ法で製造しており、縮合反応終了後に触媒成分等の揮発分を減圧下で除去しているが、昇温や減温のために長時間熱源に接するため、目的物の粘度が高くなるという問題がある。
【0007】
特許文献8には、往復振動する撹拌体を配設した混合装置による末端加水分解性基封鎖オルガノポリシロキサンの連続的製造方法が開示されている。本方法では末端シラノール基とアルコキシシラン類との縮合反応が用いられており、短い滞留時間で反応を行うことができると記載されているが、目的生成物である分子鎖末端アルコキシ基封鎖ジオルガノシロキサンのアルコキシ基封鎖率を実際に測定した結果は一切記載されていない。更に、特許文献8の実施例5においては、上記混合装置内でジヒドロキシジメチルポリシロキサンとテトラメトキシシランとを混合しているが、アミノ化合物又はスズ化合物等の縮合触媒を添加していないため、該ジメチルポリシロキサンの両末端はアルコキシ基によって封鎖されないものと推定される。そして、ゴム物性評価を行う段階、即ち、アミノアルキルアルコキシシランとスズ化合物を添加する段階で初めて末端シラノール基とアルコキシシランとの縮合反応が進行するものと推定される。このように、特許文献8の実施例5の記載は、特許文献8に記載の発明とは矛盾したものとなっている。
【0008】
特許文献9には、酸性触媒存在下で分子鎖末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンとオルガノトリアルコキシシランから分子鎖末端アルコキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを連続的に製造する方法が開示されているが、酸性触媒は沸点が高いため、その分離には困難が予想される。実際、特許文献9には、分離精製後の精製液中の酸濃度についてすら記載がなく、酸性触媒が分離できたとの記載もない。
【0009】
両末端アルコキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンは、ベースポリマーとして電気・電子部品の封止剤にも使用されるため、残存する酸や塩基(アミン等)を含んでいると、部材を腐食させるなどの問題が発生するおそれがある。よって、両末端アルコキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン中の酸および塩基は極力除去する必要がある。
【0010】
特許文献10には、シラノール基末端ポリジオルガノシロキサンとオルガノアルコキシシランとを触媒である酸性アミン塩の存在下で反応させた後、反応生成物を酸化亜鉛と二酸化ケイ素との複合物または粉末混合物と接触させることで、酸性アミン塩等が吸着除去されたアルコキシ基末端ポリジオルガノシロキサンを製造する方法が開示されている。この方法では酸性アミン塩等を吸着させた上記の複合物または粉末混合物を濾過操作等により分離する必要があり、歩留まりが悪くなることが懸念される。また、濾過操作時に上記の複合物または粉末混合物同士が摩擦により微粒子化し濾過膜を通過して、捕捉されない粒子が発生することも懸念される。これを防止するため、特許文献10では、珪藻土などの濾過助剤が使用されているが、取り扱う原料の粘度が高くなると濾過助剤使用時に濾過抵抗が大きくなり、かつ、濾過時間も長くなるという問題が生じると予想される。また、未反応の原料及び縮合反応時に副生されるアルコールなどは、濾過助剤には完全には吸着されず、濾液に混入するものと考えられるため、減圧加熱分離操作が別途必要になり、工程が複雑となる。更に、濾過助剤に吸着された酸性アミン塩は濾過助剤内部の細孔に入り込んでいることから、このような酸性アミン塩を分離除去するには更に厳しい減圧加熱条件が必要になることは容易に予想できる。加えて、性能が劣化した濾過助剤等を交換する作業が必要になるが、このような作業に伴う作業者への負担は、取り扱う原料が高粘度となるにつれ、重くなることも考えられる。実際のところ、特許文献10では、濾過操作にかかった時間や濾過精製液中の未反応原料の濃度、アルコール(縮合反応時に副生されたもの)の濃度、酸性アミン塩の濃度は明示されていない。また、特許文献10において、比較例では酸性アミン塩を除去せずに物性評価を実施しているのに対し、実施例では不完全とはいえ多少なり酸性アミン塩の分離除去操作を行った上で物性評価を実施している。よって、比較例よりも実施例で物性評価の結果が良好となることは明白である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3175993号公報
【特許文献2】米国特許第3161614号公報
【特許文献3】特開昭55−43119号公報
【特許文献4】特公平3−8657号公報
【特許文献5】特公平7−39547号公報
【特許文献6】特公平7−98864号公報
【特許文献7】特開2000−26609号公報
【特許文献8】特開2001−114896号公報
【特許文献9】特開2003−246860号公報
【特許文献10】特開2000−38451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリコーン工業界において重要な位置を占める1成分型脱アルコールタイプRTVオルガノポリシロキサン組成物のベースポリマーである両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを濾過操作なしに効率よく、触媒成分等の不純物の残存量が少ない状態で製造する方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、該不純物を連続的に分離除去し、かつ、熱履歴により増粘するのを抑えて両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを製造する方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、縮合反応の触媒としてアンモニア、沸点が20℃以下であるアミンまたはこれらの組み合わせを用い、反応生成物の精製に減圧加熱を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
即ち、本発明は、
(A)両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンと
(B)下記一般式(1):
(R1O)aR24-a-Si (1)
(式中、Rは独立に炭素原子数1〜8の非置換又はアルコキシ基置換1価炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜13の1価炭化水素基であり、aは2〜4の整数である。)
で表されるヒドロカルビルオキシシランとを
(C)アンモニア、沸点が20℃以下であるアミンまたはこれらの組み合わせ
の存在下で縮合反応に供して反応混合物を得、
得られた反応混合物を減圧加熱することにより該反応混合物から(C)成分、アルコールおよび未反応の(B)成分を分離除去する
ことを特徴とする下記一般式:
(R1O)a-1R24-a-Si-O-
(式中、R、Rおよびaは前記のとおりである。)
で表される末端構造を有する両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法により、両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンの両末端をヒドロカルビルオキシ基により比較的短時間で封鎖することができ、触媒成分等の不純物の残存量が少ない両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンをより少ない工程で効率よく製造することができる。更に、減圧加熱を薄膜蒸発器により行うことで、不純物の分離除去を連続的に行うことができ、かつ、原料である両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンの粘度と比較して、生成物である両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの粘度が増大するのを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。なお、本明細書において、「沸点」とは1気圧における沸点、即ち、標準沸点をいう。また、粘度は回転粘度計により測定した値であり、ppmは質量基準である。
【0017】
[(A)成分]
(A)成分は、両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンであり、両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの基本骨格をなすものである。(A)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。(A)成分の好ましい例としては、下記一般式(2):
HO-R32SiO(R42SiO)nSiR32-OH (2)
(式中、Rは独立に非置換または置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、Rは独立に非置換または置換の炭素原子数1〜13の1価炭化水素基であり、nは10以上の整数である。)
で表されるジオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0018】
上記Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜6のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等の非置換の1価炭化水素基、および、これらの1価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等で置換された、例えば、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換1価炭化水素基等の置換の1価炭化水素基が挙げられる。Rは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは、好ましくはメチル基である。
【0019】
上記Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリデシル基等の炭素原子数1〜13のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜13のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜13のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等の炭素原子数7〜13のアラルキル基等の非置換の1価炭化水素基、および、これらの1価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、ジブロモフェニル基、テトラクロロフェニル基、ジフルオロフェニル基等のハロゲン置換1価炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基、β−シアノプロピル基等のシアノアルキル基等の置換の1価炭化水素基が挙げられる。Rは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは、好ましくはメチル基である。
【0020】
上記nは、10以上の整数であり、好ましくは(A)成分の25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sとなる数であり、特に好ましくは該粘度が500〜100,000mPa・sとなる数である。該粘度が1,000,000mPa・s以下であると、反応装置、移送ポンプ、薄膜蒸発器等が必要とする動力は大きくなりすぎないので、省エネルギーの観点から好ましい。また、特殊仕様の攪拌装置などは特に必要ないので、設備がより簡便であり、コスト的にも不利になりにくい。
【0021】
[(B)成分]
(B)成分は、下記一般式(1):
(R1O)aR24-a-Si (1)
(式中、Rは独立に炭素原子数1〜8の非置換又はアルコキシ基置換1価炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜13の1価炭化水素基であり、aは2〜4の整数である。)
で表されるヒドロカルビルオキシシランである。この(B)成分は、(A)成分である両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンに対する末端変性剤として作用し、目的とする両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを得るための成分である。(B)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素原子数1〜8のアルキル基等の非置換の1価炭化水素基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基等の炭素原子数1〜8のアルコキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換1価炭化水素基が例示される。上記Rは、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシエチル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基である。
【0023】
上記Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリデシル基等の炭素原子数1〜13のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜13のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜13のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等の炭素原子数7〜13のアラルキル基等が例示される。上記Rは、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0024】
aは2〜4の整数であり、好ましくは3又は4である。
【0025】
(B)成分の具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0026】
[(C)成分]
(C)成分は、アンモニア、沸点が20℃以下であるアミンまたはこれらの組み合わせであり、(A)成分と(B)成分との縮合反応の触媒として用いられる成分である。(C)成分は、縮合反応で得られた反応混合物から減圧加熱によって容易に分離除去することができる。(C)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記アミンの沸点は、20℃以下であるが、好ましくは15℃以下であり、より好ましくは10℃以下である。沸点が20℃を超えるアミンは、縮合反応で得られた反応混合物から減圧加熱により分離除去するための減圧加熱条件を厳しくする必要がある点などで操作上不利となる場合がある。沸点が20℃以下であるアミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン等が挙げられる。
【0028】
(C)成分は、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミンまたはこれらの2種以上の組み合わせであることが好ましく、ジメチルアミンであることが特に好ましい。
【0029】
(C)成分は気体、液化ガス、アルコール溶液またはこれらの少なくとも2種の組み合わせのいずれの形態で仕込んでもよい。
【0030】
前記アルコール溶液に用いられるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール等が挙げられるが、分離除去の容易さの点でメタノール、エタノールが好ましい。
【0031】
前記アルコール溶液中の(C)成分の濃度は、(C)成分が該アルコールに溶解する限り、特に限定されないが、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、特に5質量%以上であることが好ましい。該濃度が1質量%以上であると、より少ない量の該アルコール溶液でも(C)成分は触媒作用を発揮することができ、ともに添加されるアルコールの量が多くなりすぎないため、減圧加熱により除去すべきアルコールの量を減らすことができ、また、コスト的にも有利である。前記アルコール溶液中の(C)成分の濃度は高いほど望ましく、上限は飽和濃度である。なお、(C)成分が液化する温度以下で(C)成分を使用する場合、前記アルコールと共存していてもよい。また、縮合反応において(B)成分のヒドロカルビルオキシ基が無駄に加水分解しないように、水分ができる限り除去されたアルコール溶液であることが好ましい。
【0032】
[縮合反応]
本発明の製造方法は、まず、(A)成分と(B)成分とを(C)成分の存在下で縮合反応に供して、両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを含む反応混合物を得る縮合反応工程を有する。
【0033】
(B)成分の仕込み量は、(A)成分中のシラノール基1モル当たり、(B)成分中のヒドロカルビルオキシ基の量が2モル以上となる量であることが好ましく、より好ましくは5〜30モルの範囲となる量であり、特に好ましくは5〜10モルの範囲となる量である。該ヒドロカルビルオキシ基の量が2モル以上となる量の(B)成分を仕込むと、未反応の(A)成分が残存しにくいため、得られる両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンをベースポリマーとして含む1成分型脱アルコールタイプRTVオルガノポリシロキサン組成物は架橋が十分となりやすく、目的とするゴム弾性を有する硬化物を得やすい。
【0034】
(C)成分の仕込み量は、(A)成分と(B)成分の合計に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、特に0.03〜10質量%の範囲であることが好ましく、更に0.03〜1質量%の範囲であることが好ましい。該仕込み量が0.01質量%以上であると、より高い反応性を維持することができ、反応時間を更に効果的に短くすることができる。また、該仕込み量が10質量%以下であると、該仕込み量に応じた反応性の向上が特に期待でき、コスト的に不利となりにくい。
【0035】
(A)〜(C)成分の仕込み方法には特に制限はないが、前記のとおり、(C)成分は気体、液化ガス、アルコール溶液またはこれらの少なくとも2種の組み合わせのいずれの形態で仕込んでもよい。
【0036】
縮合反応は、無溶剤でも有機溶剤中でも行うことができる。有機溶剤は、縮合反応を阻害せず、かつ、縮合反応後の減圧加熱により分離除去することができるという条件、得られる両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと共存していても該ジオルガノポリシロキサンをベースポリマーとして含む1成分型脱アルコールタイプRTVオルガノポリシロキサン組成物の保存性、硬化性等を害さないという条件、またはこれら両方の条件を満たすものである限り、特に制限されない。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0037】
縮合反応の温度は150℃以下であることが好ましく、特に0〜100℃であることが好ましい。該温度が150℃以下であると、目的物である両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンは末端ヒドロカルビルオキシ基が変質しにくく、粘度が上昇しにくい。0℃よりも低い温度で縮合反応を行うこともできる。但し、取り扱う原料の粘度にもよるが、あまり温度を下げすぎると原料混合物および反応混合物の粘度が高くなる傾向にあるため、均一混合に必要な時間の延長、攪拌に要する動力の増大等の不都合が生じやすく、省エネルギーやコストの観点から不利となる場合がある。
【0038】
(C)成分を液化ガスの形態で仕込む場合、(C)成分が液化する圧力となるように窒素などの不活性ガスにより加圧した状態で仕込みを行ってもよい。
【0039】
[両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの精製]
本発明の製造方法は、上記縮合反応工程の後に、該縮合反応で得られた反応混合物を減圧加熱することにより該反応混合物から(C)成分、アルコールおよび未反応の(B)成分を不純物として分離除去する両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの精製工程を有する。ここで、アルコールは、(C)成分をアルコール溶液以外の形態で仕込んだ場合は、前記縮合反応により生成したアルコールを意味し、(C)成分の一部または全部をアルコール溶液の形態で仕込んだ場合は、前記縮合反応により生成したアルコールと(C)成分とともに仕込んだアルコールとを意味する。(C)成分、アルコールおよび未反応の(B)成分のおのおのが減圧加熱後の反応混合物中に残存する量を測定し、これらの量がいずれも検出限界以下であった場合に、これらの不純物が分離除去されたと判断する。減圧加熱後の反応混合物における(C)成分の残存量は、三菱化学製 全硫黄分析装置TS−100に付属の全窒素検出器ND-100等の全窒素検出器により測定することができ、検出限界としては、例えば、1ppmが挙げられる。また、減圧加熱後の反応混合物におけるアルコールおよび(B)成分であるヒドロカルビルオキシシランの残存量は、常法に従いガスクロマトグラフィーにより測定することができ、検出限界としては、例えば、100ppmが挙げられる。
【0040】
減圧加熱はいかなる方法で行ってもよく、例えば、バッチ法で行っても薄膜蒸発器により行ってもよいが、薄膜蒸発器により行うことが好ましい。これにより、薄膜蒸発器に供給された反応混合物は、薄膜化した状態で瞬時に減圧加熱されるため、加熱による変質が少なく、かつ、該反応混合物から短時間に効率よく上記不純物を蒸発させて分離除去することができ、また、連続的に両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを精製することができる。反応混合物は、密閉状態で熱交換機等により予め加熱しながら薄膜蒸発器に供給してもよい。
【0041】
本発明に用いる薄膜蒸発器としては、その内部に試料液を強制的に薄膜化する回転体を有するものが好ましい。このような薄膜蒸発器の具体例としては、神鋼環境ソリューション製のワイプレン、木村化工機製のLUWA等の回転流下式薄膜蒸発器、関西化学機械製作所製のエバリアクター、栗本鐵工所製のKRCニーダ等の横型回転式薄膜蒸発器、三井造船製のハイビスカスエバポレーター等の液膜流下型薄膜蒸発器が挙げられる。中でも、スケールアップの観点から、ワイプレン等の回転流下式薄膜蒸発器が特に好ましい。
【0042】
減圧加熱時の圧力としては、例えば、100〜30,000Pa、好ましくは100〜10,000Paが挙げられる。また、減圧加熱時の温度としては、例えば、100〜300℃、好ましくは100〜250℃が挙げられる。特に減圧加熱をバッチ法で行う場合、減圧加熱時の圧力としては、例えば、100〜3,000Pa、好ましくは100〜2,000Paが挙げられ、減圧加熱時の温度としては、例えば、100〜150℃、好ましくは120〜140℃が挙げられる。一方、特に減圧加熱を薄膜蒸発器により行う場合、減圧加熱時の圧力としては、例えば、100〜1500Pa、好ましくは100〜700Paが挙げられ、減圧加熱時の温度としては、例えば、150〜250℃、好ましくは180〜220℃が挙げられる。
【0043】
[両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン]
本発明の製造方法により、下記一般式:
(R1O)a-1R24-a-Si-O-
(式中、R、Rおよびaは前記のとおりである。)
で表される末端構造を有する両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを得ることができる。特に、(A)成分として上記一般式(2)で表されるジオルガノポリシロキサンを用いた場合には、下記一般式:
(R1O)a-1R24-a-Si-O-R32SiO(R42SiO)nSiR32-O-Si-R24-a(OR1)a-1
(式中、R〜R、aおよびnは前記のとおりである。)
で表される両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、下記の例において、粘度は回転粘度計により測定した25℃での値である。また、精製液中のアミン濃度は、三菱化学製 全硫黄分析装置TS−100に付属の全窒素検出器ND-100により測定し、精製液中のテトラメトキシシランの濃度及び精製液中のメタノールの濃度は、トルエンに溶解した精製液をガスクロマトグラフィーにかけることにより測定した。更に、精製液中の不揮発分の割合は、精製液10gを直径6.5cmのアルミニウムシャーレ上に精秤し、大気中、150℃で3時間放置した後の質量を放置前の質量で割ることにより得た値である。
【0045】
[実施例1]
温度計、攪拌機、窒素導入管、排ガス管及び外部に凝縮器を備えた500mL のTKハイビスミックスf-03型(プライミクス社製)に、粘度が50,000mPa・sの両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルポリシロキサン280g、テトラメトキシシラン5.8g及びジメチルアミンの11質量%メタノール溶液(東京化成製)2.0gを仕込み、窒素封入下、35rpmで室温にて1時間混合した。その後、1時間かけて徐々に、装置内を内圧1,330Paまで減圧するとともに温度120℃まで加熱した後、前記と同一の内圧および温度の条件下で2時間、揮発分を分離除去した。その後、装置内を大気圧に戻すとともに室温まで冷却し、不揮発分99.9質量%の無色透明な精製液を得た。得られた精製液中のジメチルアミン濃度は検出限界(1ppm)以下であった。また、精製液において、過剰に添加したテトラメトキシシランの濃度及び触媒であるジメチルアミンとともに添加されたメタノールと縮合反応により副生されたメタノールとの合計の濃度は、いずれも検出限界(100ppm)以下であった。
【0046】
得られた精製液100gとテトラプロピルチタネート1.0gとを混合し放置してもゲル状物は形成されず、精製液中のジメチルポリシロキサンには末端シラノール基が存在しないことが確認できた。これとは別に、得られた精製液を29Si-NMR分析装置により分析した結果、精製液中のジメチルポリシロキサンの両末端はトリメトキシシリル基で封鎖され、末端シラノール基が消滅していることが確認された。このジメチルポリシロキサンにおいてトリメトキシシリル基による封鎖率(即ち、(全ジメチルポリシロキサンの末端のうちトリメトキシシリル基で封鎖されたもののモル数)/(全ジメチルポリシロキサンの末端のモル数)×100。以下同じ)は100モル%であった。
【0047】
また、得られた精製液の粘度は76,000mPa・sであり、増粘率(即ち、精製液の粘度/原料のジメチルポリシロキサンの粘度。以下同じ)は1.52であった。
【0048】
[実施例2]
実施例1において、ジメチルアミンの11質量%メタノール溶液2.0gの代わりにメチルアミンの40質量%メタノール溶液(和光純薬工業製)0.4gを用い、仕込んだ原料の混合時間を1時間から6時間に変更した以外は実施例1と同様にして、不揮発分99.9質量%の無色透明な精製液を得た。得られた精製液中のメチルアミン濃度は検出限界(1ppm)以下であった。また、精製液において、過剰に添加したテトラメトキシシランの濃度及び触媒であるメチルアミンとともに添加されたメタノールと縮合反応により副生されたメタノールとの合計の濃度は、いずれも検出限界(100ppm)以下であった。
【0049】
得られた精製液100gとテトラプロピルチタネート1.0gとを混合し放置してもゲル状物は形成されず、精製液中のジメチルポリシロキサンには末端シラノール基が存在しないことが確認できた。これとは別に、得られた精製液を29Si-NMR分析装置により分析した結果、精製液中のジメチルポリシロキサンの両末端はトリメトキシシリル基で封鎖され、末端シラノール基が消滅していることが確認された。このジメチルポリシロキサンにおいてトリメトキシシリル基による封鎖率は100モル%であった。
【0050】
また、得られた精製液の粘度は78,000mPa・sであり、増粘率は1.56であった。
【0051】
[比較例1]
実施例1において、ジメチルアミンの11質量%メタノール溶液2.0gの代わりにイソプロピルアミン(和光純薬工業製)0.3gを用い、仕込んだ原料の混合時間を1時間から2時間に変更した以外は実施例1と同様にして、不揮発分99.9質量%の無色透明な精製液を得た。得られた精製液中のイソプロピルアミン濃度は検出限界(1ppm)以下であった。また、精製液において、過剰に添加したテトラメトキシシランの濃度及び縮合反応により副生されたメタノールの濃度は、いずれも検出限界(100ppm)以下であった。
【0052】
得られた精製液100gとテトラプロピルチタネート1.0gとを混合し放置したところ、ゲル状物が形成され、精製液中のジメチルポリシロキサンには未だ末端シラノール基が一部残存していることが確認できた。これとは別に、得られた精製液を29Si-NMR分析装置により分析した結果、精製液中のジメチルポリシロキサンの末端の一部はトリメトキシシリル基で封鎖され、残りは末端シラノール基のままであることが確認された。このジメチルポリシロキサンにおいてトリメトキシシリル基による封鎖率は54モル%であり、縮合反応が未だ完結していなかった。
【0053】
また、得られた精製液の粘度は59,000mPa・sであり、増粘率は1.18であった。
【0054】
[比較例2]
実施例1において、ジメチルアミンの11質量%メタノール溶液2.0gの代わりにイソプロピルアミン(和光純薬工業製)0.3gを用い、仕込んだ原料の混合時間を1時間から6時間に変更した以外は実施例1と同様にして、不揮発分99.9質量%の無色透明な精製液を得た。得られた精製液中のイソプロピルアミン濃度は検出限界(1ppm)以下であった。また、精製液において、過剰に添加したテトラメトキシシランの濃度及び縮合反応により副生されたメタノールの濃度は、いずれも検出限界(100ppm)以下であった。
【0055】
得られた精製液100gとテトラプロピルチタネート1.0gとを混合し放置したところ、ゲル状物が形成され、精製液中のジメチルポリシロキサンには未だ末端シラノール基が一部残存していることが確認できた。これとは別に、得られた精製液を29Si-NMR分析装置により分析した結果、精製液中のジメチルポリシロキサンの末端の一部はトリメトキシシリル基で封鎖され、残りは末端シラノール基のままであることが確認された。このジメチルポリシロキサンにおいてトリメトキシシリル基による封鎖率は90モル%であり、縮合反応が未だ完結していなかった。
【0056】
また、得られた精製液の粘度は76,800mPa・sであり、増粘率は1.54であった。
【0057】
[実施例3]
温度計、攪拌機、窒素導入管及び排ガス管を備えた100Lのゲートミキサーに、粘度が50,000mPa・sの両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルポリシロキサン70kg、テトラメトキシシラン1,450g及びジメチルアミンの11質量%メタノール溶液(東京化成製)500gを仕込み、窒素封入下、室温にて2時間混合した。その後、ギアポンプによりこの混合液を120℃に温度制御された2重管を経て、薄膜蒸発器(減圧加熱条件は、温度180℃、内圧270Pa)に54kg/hrの供給速度で連続的に1時間かけて供給し、揮発分を分離除去して、不揮発分99.9質量%の無色透明な精製液を得た。薄膜蒸発器としては伝熱面積0.4m2の凝縮器を内蔵したワイプレン12−4型(神鋼環境ソリューション製)を使用した。得られた精製液中のジメチルアミン濃度は検出限界(1ppm)以下であった。また、精製液において、過剰に添加したテトラメトキシシランの濃度及び触媒であるジメチルアミンとともに添加されたメタノールと縮合反応により副生されたメタノールとの合計の濃度は、いずれも検出限界(100ppm)以下であった。
【0058】
得られた精製液100gとテトラプロピルチタネート1.0gとを混合し放置してもゲル状物は形成されず、精製液中のジメチルポリシロキサンには末端シラノール基が存在しないことが確認できた。これとは別に、得られた精製液を29Si-NMR分析装置により分析した結果、精製液中のジメチルポリシロキサンの両末端はトリメトキシシリル基で封鎖され、末端シラノール基が消滅していることが確認された。このジメチルポリシロキサンにおいてトリメトキシシリル基による封鎖率は100モル%であった。
【0059】
また、得られた精製液の粘度は51,600mPa・sであり、増粘率は1.03であった。
【0060】
[実施例4]
実施例3において、減圧加熱条件を温度180℃、内圧270Paから温度180℃、内圧670Paに変更し、薄膜蒸発器への混合液の供給速度を54kg/hrから26kg/hrに変更し、薄膜蒸発器としてワイプレン12−4型の代わりに伝熱面積0.1m2の外部の凝縮器と接続されたエバリアクター(関西化学機械製作所製)を使用した以外は実施例3と同様にして、不揮発分99.9質量%の無色透明な精製液を得た。得られた精製液中のジメチルアミン濃度は検出限界(1ppm)以下であった。また、精製液において、過剰に添加したテトラメトキシシランの濃度及び触媒であるジメチルアミンとともに添加されたメタノールと縮合反応により副生されたメタノールとの合計の濃度は、いずれも検出限界(100ppm)以下であった。
【0061】
得られた精製液100gとテトラプロピルチタネート1.0gとを混合し放置してもゲル状物は形成されず、精製液中のジメチルポリシロキサンには末端シラノール基が存在しないことが確認できた。これとは別に、得られた精製液を29Si-NMR分析装置により分析した結果、精製液中のジメチルポリシロキサンの両末端はトリメトキシシリル基で封鎖され、末端シラノール基が消滅していることが確認された。このジメチルポリシロキサンにおいてトリメトキシシリル基による封鎖率は100モル%であった。
【0062】
また、得られた精製液の粘度は53,000mPa・sであり、増粘率は1.06であった。
【0063】
[実施例5]
実施例3において、減圧加熱条件を温度180℃、内圧270Paから温度210℃、内圧670Paに変更し、薄膜蒸発器への混合液の供給速度を54kg/hrから15kg/hrに変更し、薄膜蒸発器としてワイプレン12−4型の代わりに伝熱面積0.1m2の外部の凝縮器と接続されたハイビスカスエバポレーター(三井造船製)を使用した以外は実施例3と同様にして、不揮発分99.8質量%の無色透明な精製液を得た。得られた精製液中のジメチルアミン濃度は検出限界(1ppm)以下であった。また、精製液において、過剰に添加したテトラメトキシシランの濃度及び触媒であるジメチルアミンとともに添加されたメタノールと縮合反応により副生されたメタノールとの合計の濃度は、いずれも検出限界(100ppm)以下であった。
【0064】
得られた精製液100gとテトラプロピルチタネート1.0gとを混合し放置してもゲル状物は形成されず、精製液中のジメチルポリシロキサンには末端シラノール基が存在しないことが確認できた。これとは別に、得られた精製液を29Si-NMR分析装置により分析した結果、精製液中のジメチルポリシロキサンの両末端はトリメトキシシリル基で封鎖され、末端シラノール基が消滅していることが確認された。このジメチルポリシロキサンにおいてトリメトキシシリル基による封鎖率は100モル%であった。
【0065】
また、得られた精製液の粘度は53,600mPa・sであり、増粘率は1.07であった。
【0066】
[比較例3]
実施例3において、ジメチルポリシロキサンの添加量を70kgから50kgに変更し、テトラメトキシシランの添加量を1,450gから1,040gに変更し、ジメチルアミンの11質量%メタノール溶液500gの代わりにイソプロピルアミン(和光純薬工業製)50gを用い、減圧加熱条件を温度180℃、内圧270Paから温度180℃、内圧400Paに変更し、薄膜蒸発器への混合液の供給速度を54kg/hrから10kg/hrに変更し、薄膜蒸発器としてワイプレン12−4型の代わりに伝熱面積0.1m2の外部の凝縮器と接続されたハイビスカスエバポレーター(三井造船製)を使用した以外は実施例3と同様にして、不揮発分99.5質量%の無色透明な精製液を得た。得られた精製液中のイソプロピルアミン濃度は12ppmであった。また、精製液において、過剰に添加したテトラメトキシシランの濃度は400ppmであり、縮合反応により副生されたメタノールの濃度は検出限界(100ppm)以下であった。
【0067】
得られた精製液100gとテトラプロピルチタネート1.0gとを混合し放置してもゲル状物は形成されず、精製液中のジメチルポリシロキサンには末端シラノール基が存在しないことが確認できた。これとは別に、得られた精製液を29Si-NMR分析装置により分析した結果、精製液中のジメチルポリシロキサンの両末端はトリメトキシシリル基で封鎖され、末端シラノール基が消滅していることが確認された。このジメチルポリシロキサンにおいてトリメトキシシリル基による封鎖率は100モル%であったが、得られた精製液の粘度は103,000mPa・sであり、大幅に増粘した。このときの増粘率は2.06であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンと
(B)下記一般式(1):
(R1O)aR24-a-Si (1)
(式中、Rは独立に炭素原子数1〜8の非置換又はアルコキシ基置換1価炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜13の1価炭化水素基であり、aは2〜4の整数である。)
で表されるヒドロカルビルオキシシランとを
(C)アンモニア、沸点が20℃以下であるアミンまたはこれらの組み合わせ
の存在下で縮合反応に供して反応混合物を得、
得られた反応混合物を減圧加熱することにより該反応混合物から(C)成分、アルコールおよび未反応の(B)成分を分離除去する
ことを特徴とする下記一般式:
(R1O)a-1R24-a-Si-O-
(式中、R、Rおよびaは前記のとおりである。)
で表される末端構造を有する両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項2】
前記減圧加熱が薄膜蒸発器により行われる請求項1に係る製造方法。
【請求項3】
前記(A)成分が下記一般式(2):
HO-R32SiO(R42SiO)nSiR32-OH (2)
(式中、Rは独立に非置換または置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、Rは独立に非置換または置換の炭素原子数1〜13の1価炭化水素基であり、nは10以上の整数である。)
で表されるジオルガノポリシロキサンであり、
前記両末端ヒドロカルビルオキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンが下記一般式:
(R1O)a-1R24-a-Si-O-R32SiO(R42SiO)nSiR32-O-Si-R24-a(OR1)a-1
(式中、R〜R、aおよびnは前記のとおりである。)
で表される
請求項1または2に係る製造方法。
【請求項4】
前記(C)成分がアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミンまたはこれらの2種以上の組み合わせである請求項1〜3のいずれか1項に係る製造方法。
【請求項5】
前記(C)成分がジメチルアミンである請求項1〜4のいずれか1項に係る製造方法。

【公開番号】特開2010−168431(P2010−168431A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10330(P2009−10330)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】