説明

両面粘着テープおよびその製造方法

【課題】基材と粘着剤層との間の接着力が高く、基材の破壊が起こりにくい両面粘着テープを提供する。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜基材と、当該基材の両面に粘着剤層とを有する両面粘着テープの製造方法であって、以下の工程(1)〜(4)を順に含む製造方法により、両面粘着テープを製造する。
(1)第1の剥離ライナーに粘着剤組成物を付与する工程;(2)ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜基材の一方の主面と、前記粘着剤組成物を付与した第1の剥離ライナーとを貼り合わせる工程;(3)前記第1の剥離ライナーを貼り合わせた基材を加熱して、第1の粘着剤層を形成する工程;および(4)前記基材の他方の主面に、粘着剤の一部が前記基材に浸透した第2の粘着剤層を設ける工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜基材と、当該基材の両面に粘着剤層とを有する両面粘着テープ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布を基材(支持体)とする両面粘着テープは、作業性がよく接着の信頼性の高い接合手段として、家電製品、自動車、OA機器等の各種産業分野において広く利用されている。
【0003】
上記の用途において、その使用態様から、両面粘着テープには、被着体の表面形状(凹凸、曲がり等)に対して良好に追随する性質(曲面接着性の高さまたは反撥性の低さとしても把握され得る)が要求されることが多い。かかる追随性が不足すると、該両面粘着シートを車両内装材等のような複雑な表面形状を有する被着体への貼り付けに使用した場合に、接合部の浮き、剥がれ等が生じやすくなるためである。
【0004】
両面粘着テープの製造に使用される基材としては、木材繊維、綿、マニラ麻等の天然繊維から構成される不織布基材;レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等の化学繊維から構成される不織布基材;材質の異なる2種以上の繊維を併用して構成された不織布基材などが使用されている。これらの不織布を基材とした両面粘着テープの製造に使用される粘着剤組成物としては、アクリル系の粘着剤組成物が主流であった。しかし近年では、両面粘着テープをより厳しい条件下でも使用できることが求められていることから、耐熱性、耐寒性に優れるシリコーン系の粘着剤組成物を用いた両面粘着テープが検討されており、シリコーン系の粘着剤組成物の特性を損なわない、柔軟かつ耐熱性、耐寒性、耐候性、耐薬品性に優れる基材としてPTFE多孔質膜を基材とした両面粘着テープが検討されている。
【0005】
これまでの両面粘着テープの製造方法としては、剥離ライナー上に粘着剤組成物を塗布し、それを乾燥させた後、基材の一方の主面に貼り合わせて粘着剤層を形成し(転写法)、基材の他方の主面には直接粘着剤組成物を塗布し、乾燥する方法が主流であった。
【0006】
しかし、PTFE多孔質膜を基材とした両面粘着テープでは、転写法で形成した面のPTFE多孔質膜と粘着剤層との間の接着力(投錨力)が十分でない場合があった。
【0007】
特許文献1には、多孔質PTFEシートからなる多孔質PTFE層の両面に接着性樹脂層が形成され、多孔質PTFE層は多孔質空隙を保持しており、接着性樹脂層は臭素フリーの難燃性樹脂組成物からなることを特徴とするICチップ接着用シートが開示されている。さらに、このICチップ接着用シートの製造方法として、多孔質PTFEシートを基材に使用して、接着性樹脂をコーティング、または接着性樹脂シートをラミネートすることが記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1に開示のシートを両面粘着テープとして利用するには、PTFE多孔質膜と粘着剤層との間の接着力(投錨力)が十分でない場合があった。また、剥離時に基材が多孔質空隙部から破壊する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−3134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記問題点に鑑み、本発明は、基材と粘着剤層との間の接着力が高く、基材の破壊が起こりにくい両面粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、PTFE多孔質膜基材と、当該基材の両面に粘着剤層とを有する両面粘着テープの製造方法であって、以下の工程(1)〜(4)を順に含む製造方法である。
(1)第1の剥離ライナーに粘着剤組成物を付与する工程;
(2)PTFE多孔質膜基材の一方の主面と、前記粘着剤組成物を付与した第1の剥離ライナーとを貼り合わせる工程;
(3)前記第1の剥離ライナーを貼り合わせた基材を加熱して、第1の粘着剤層を形成する工程;および
(4)前記基材の他方の主面に、粘着剤の一部が前記基材に浸透した第2の粘着剤層を設ける工程。
【0012】
本発明の製造方法において、前記工程(4)が、以下の工程(4A)および(4B)を含むことが好ましい。
(4A)前記基材の他方の主面に、粘着剤組成物を付与する工程;および
(4B)前記粘着剤組成物を付与した基材を加熱して、第2の粘着剤層を形成する工程。
【0013】
前記工程(4)は、以下の工程(4C)をさらに含んでいてもよい。
(4C)前記第2の粘着剤層に第2の剥離ライナーを貼り合わせる工程。
【0014】
前記粘着剤組成物は、シリコーン系粘着剤を含むことが好ましい。
【0015】
本発明はまた、PTFE多孔質膜基材と、当該基材の一方の主面上に形成された第1の粘着剤層と、当該基材の他方の主面上に形成された第2の粘着剤層とを含み、
前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層が、前記基材の孔内で連通している両面粘着テープである。
【0016】
本発明の両面粘着テープは、少なくとも1つの剥離ライナーをさらに含むことが好ましい。前記第1の粘着剤層と第2の粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基材と粘着剤層との間の接着力が高く、基材の破壊が起こりにくい両面粘着テープが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の両面粘着テープの一実施態様を示す図である。
【図2】本発明の両面粘着テープの別の実施態様を示す図である。
【図3】実施例1で作製した両面粘着テープの断面拡大写真である。
【図4】比較例1で作製した両面粘着テープの断面拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の製造方法について詳細に説明する。本発明は、PTFE多孔質膜基材と、当該基材の両面に粘着剤層とを有する両面粘着テープの製造方法であって、以下の工程(1)〜(4)を順に含む製造方法である。
(1)第1の剥離ライナーに粘着剤組成物を付与する工程;
(2)PTFE多孔質膜基材の一方の主面と、前記粘着剤組成物を付与した第1の剥離ライナーとを貼り合わせる工程;
(3)前記第1の剥離ライナーを貼り合わせた基材を加熱して、第1の粘着剤層を形成する工程;および
(4)前記基材の他方の主面に、粘着剤の一部が前記基材に浸透した第2の粘着剤層を設ける工程。
【0020】
基材となるPTFE多孔質膜は、公知方法により製造することができ、また市販品として入手することもできる。PTFE多孔質膜としては、孔径が0.1μm〜3.0μmのPTFE多孔質膜が好ましい。孔径が0.1μm未満だと、粘着剤組成物が孔内へ浸透しにくくなるおそれがあり、3.0μmを超えると、粘着剤組成物が基材の反対面まで通り抜けるおそれがある。粘着剤組成物が基材の反対面まで通り抜けると、製造に使用するロールが汚れたり、基材の反対面での粘着剤組成物の付与に支障をきたす場合がある。PTFE多孔質膜の厚さは、10μm〜100μmが好ましい。厚さが10μm未満だと、粘着剤組成物が基材の反対面まで通り抜けるおそれがあり、100μmを超えると、基材両面の粘着剤層が基材の孔内で連通せずに本発明の効果が得られないおそれがある。PTFE多孔質膜の気孔率は、40〜99%が好ましい。40%未満だと粘着剤組成物が孔内に十分に浸透しないおそれがある。
【0021】
粘着剤組成物は、PTFE多孔質膜基材上に粘着剤層を形成可能なものである限りその種類に特に制限はなく、通常、粘着剤成分と加熱により揮発する溶剤とを含有する。耐熱性、耐寒性の観点から、粘着剤組成物は、シリコーン系粘着剤を含むことが好ましい。
【0022】
シリコーン系粘着剤としては、特に制限されず、公知のシリコーン系粘着剤を用いることができ、例えば、過酸化物架橋型シリコーン系粘着剤(過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤)、付加反応型シリコーン系粘着剤などを用いることができ、なかでも、付加反応型シリコーン系粘着剤を好適に用いることができる。
【0023】
付加反応型シリコーン系粘着剤としては、具体的に例えば、シリコーンゴムとシリコーンレジンとを含有し、さらに必要に応じて架橋剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料など)等の添加剤などを含有するものなどが挙げられる。市販品としては、商品名「SD4584」(東レ・ダウ社製)などが入手可能である。
【0024】
前記シリコーンゴムとしては、シリコーン系のゴム成分であれば特に制限されないが、フェニル基を有しているオルガノポリシロキサン(特に、メチルフェニルシロキサンを主な構成単位としているオルガノポリシロキサン)を含むシリコーンゴムが好適である。このようなシリコーンゴムにおけるオルガノポリシロキサンには、必要に応じて、ビニル基等の各種官能基が導入されていてもよい。
【0025】
前記シリコーンレジンとしては、シリコーン系粘着剤に使用されているシリコーン系のレジンであれば特に制限されないが、例えば、構成単位「R3Si1/2」からなる単位、構成単位「SiO2」からなる単位、構成単位「RSiO3/2」からなる単位、および構成単位「R2SiO」からなる単位からなる群より選択される少なくとも1種の単位を有する(共)重合体からなるオルガノポリシロキサンを含むシリコーンレジンなどが挙げられる。なお、前記構成単位におけるRは、炭化水素基またはヒドロキシル基を示す。
【0026】
剥離ライナーは、両面粘着テープに一般的に使用されているものを用いればよく、粘着剤組成物の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0027】
工程(1)は、公知方法により、第1の剥離ライナーに粘着剤組成物を付与することによって行うことができる。付与方法としては、典型的には塗布であり、塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。粘着剤組成物の塗布量(ここでは、基材の片面側に設けられる粘着剤層当たりの塗布量をいう)は、特に限定されないが、例えば、粘着剤の固形分換算で約20〜150μm(好ましくは約40〜100μm)の粘着剤層が形成される量とするとよい。好ましい塗布量の下限は、使用する基材の性状によっても異なり得る。
【0028】
従来は、工程(1)で剥離ライナーに粘着剤組成物を付与した後に、引き続いて粘着剤組成物を加熱して乾燥を行い、その後、基材と剥離ライナーとを貼り合わせていた。しかし、本発明では、粘着剤組成物を乾燥させる前に、基材と剥離ライナーとを貼り合わせる。粘着剤組成物が未乾燥の状態で基材と剥離ライナーとを貼り合わせることによって、粘着剤成分が基材のPTFE多孔質膜の孔内に入り込んで孔内を埋めることにより、高い投錨力が得られ、基材と粘着剤層との間の接着性が高くなる。また基材の孔内に粘着剤が入り込んでいるため、基材の強度が向上し、両面粘着テープを剥離させる際に基材の破壊が起こりにくくなる。
【0029】
工程(2)は、公知方法に従い、基材の一方の主面と、剥離ライナーの粘着剤組成物を付与した面とを貼り合わせることにより行うことができる。このとき、適宜圧力を加えてもよい。
【0030】
工程(3)は、公知方法に従い行うことができる。この加熱によって、粘着剤組成物を乾燥させ、粘着剤層を形成させる。粘着剤組成物が、シリコーン系粘着剤を含む場合には、乾燥のみならず粘着剤をキュアさせる。加熱温度および加熱時間は、粘着剤組成物の種類に応じて適宜決定すればよい。粘着剤組成物が、シリコーン系粘着剤を含む場合には、加熱温度としては、130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。
【0031】
工程(4)では、粘着剤の一部が基材のPTFE多孔質膜の孔内に浸透するように第2の粘着剤層を設ける。工程(4)は、以下の工程(4A)および(4B)を実施することにより行うことが好ましい。
(4A)前記基材の他方の主面に、粘着剤組成物を付与する工程;および
(4B)前記粘着剤組成物を付与した基材を加熱して、第2の粘着剤層を形成する工程。
【0032】
工程(4A)は、公知方法に従い行うことができる。粘着剤組成物は、基材の一方の主面に付与したものと同じであっても異なっていてもよい。粘着剤が基材の孔内に入り込みやすいことから、付与方法としては、塗布が好ましい。具体的な塗布方法としては、工程(1)で挙げたコーターを用いた塗布方法が挙げられる。
【0033】
工程(4B)は、公知方法に従い行うことができる。加熱温度、加熱時間等については、粘着剤組成物の種類に応じて適宜決定すればよい。
【0034】
工程(4)は、以下の工程(4C)をさらに含んでいてもよい。工程(4C)は、公知方法に従い行うことができる。
(4C)前記第2の粘着剤層に第2の剥離ライナーを貼り合わせる工程。
【0035】
工程(4)は、第2の剥離ライナーに粘着剤組成物を塗布し、基材の他方の主面と粘着剤組成物を塗布した第2の剥離ライナーとを貼り合わせ、加熱することにより行うこともできる。
【0036】
本発明の製造方法においては、工程(1)〜(4)が順に行われる限り、その間に工程(1)〜(4)以外の工程が行われてもよい。
【0037】
基材に、幅の広いPTFE多孔質膜(シート)を用いた場合には、所望の幅に裁断する工程をさらに実施すればよい。
【0038】
このような方法により、PTFE多孔質膜基材と、当該基材の両面に粘着剤層とを有する両面粘着テープを作製した場合には、粘着剤組成物が空気を追い出しながら基材の両面から孔内に入り込んで、粘着剤層がつながる。従って、得られた両面粘着テープは、第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層が、基材の孔内で連通しているという特徴を有する。粘着剤層が基材の全ての孔を埋めた両面粘着テープを得ることも可能である。このように基材の内部に、第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層が連通するまで入り込むことによって、1つの粘着剤層として振るまい、基材と粘着剤層との間の接着性が高くなる。また、基材の強度が向上し、両面粘着テープを剥離させる際に基材が破壊することが起こりにくくなる。
【0039】
そこで本発明は、別の側面から、PTFE多孔質膜基材と、当該基材の一方の主面上に形成された第1の粘着剤層と、当該基材の他方の主面上に形成された第2の粘着剤層とを含み、
前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層が、前記基材の孔内で連通している両面粘着テープである。
【0040】
当該両面粘着テープは、少なくとも1つの剥離ライナーをさらに含んでいてもよい。
【0041】
基材、粘着剤層、および剥離ライナーの詳細は、前述の通りである。前記第1の粘着剤層と第2の粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含むことが好ましい。第1および第2の粘着剤層は、基材の破壊がより起こりにくいことから、基材の孔の90体積%以上を埋めていることが好ましく、基材の全ての孔を埋めていることがより好ましい。
【0042】
本発明の両面粘着テープの構成例を図1および図2に示す。図1および図2において、円内に両面粘着テープの一部を拡大して示した。
【0043】
図1の両面粘着テープ1では、PTFE多孔質膜基材2の両主面上に、第1および第2の粘着剤層3,3’が形成されている。さらにその上に第1および第2の剥離ライナー4,4’が設けられて、粘着剤層のそれぞれが各剥離ライナーにより保護されている。このような両面粘着テープ1が、芯材5に巻回されている。
【0044】
図2の両面粘着テープ1では、PTFE多孔質膜基材2の両主面上に、第1および第2の粘着剤層3,3’が形成されており、第1の粘着剤層3上にのみ剥離ライナー4が設けられている。剥離ライナー4は両面とも剥離処理が施されており、両面粘着テープ1が芯材5に巻回されると、第2の粘着剤層3’が剥離ライナー4に当接し保護される。こうして、第1の粘着剤層3と第2の粘着剤層3’が、1つの剥離ライナー4により保護される。
【0045】
なお、図1および図2では、便宜上、基材と粘着剤層との界面を点線で記載しているが、実際には、粘着剤層の一部が基材の孔内に浸透している。
【0046】
本発明の両面粘着テープは、基材と粘着剤層との間の接着性が高く、両面粘着テープを剥離させる際に基材の破壊が起こりにくい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0048】
実施例1
商品名「SD4584」(東レ・ダウ社製;付加反応型シリコーン系粘着剤)100重量部に対して、商品名「SRX212」(東レ・ダウ社製;白金系硬化触媒)0.9重量部を混合し、シリコーン系粘着剤組成物を調製した。
【0049】
このシリコーン系粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをフッ化シリコーン系離型剤で処理してなる剥離ライナーの剥離処理面上に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布した。こうしてシリコーン系粘着剤組成物層を有する剥離ライナーを得た。粘着剤組成物層を乾燥する前に、厚さ20μm、平均孔径0.6μmのPTFE多孔質膜を、剥離ライナーの粘着剤組成物層上に貼り合わせた。続いて、これを150℃で3分間加熱して、粘着剤層を形成した。次に、PTFE多孔質膜の剥離ライナーを貼り合わせた面とは反対側の面に、前記シリコーン系粘着剤組成物を乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布した。これを130℃で3分間加熱し、前記と同様の剥離ライナーを貼り合わせて両面粘着テープを作製した。この両面粘着テープの断面拡大写真を図3に示す。
【0050】
実施例2
実施例1のシリコーン系粘着剤組成物を、PETフィルムをフッ化シリコーン系離型剤で処理してなる剥離ライナーの剥離処理面上に、乾燥後の厚さが80μmとなるように塗布した。こうしてシリコーン系粘着剤組成物層を有する剥離ライナーを得た。粘着剤組成物層を乾燥する前に、厚さ50μm、平均孔径3μmのPTFE多孔質膜を、剥離ライナーの粘着剤組成物層上に貼り合わせた。続いて、これを150℃で3分間加熱して、粘着剤層を形成した。次に、PTFE多孔質膜の剥離ライナーを貼り合わせた面とは反対側の面に、前記シリコーン系粘着剤組成物を乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布した。これを130℃で3分間加熱し、前記と同様の剥離ライナーを貼り合わせて両面粘着テープを作製した。
【0051】
比較例1
実施例1のシリコーン系粘着剤組成物を、PETフィルムをフッ化シリコーン系離型剤で処理してなる剥離ライナーの剥離処理面上に、乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布した。これを150℃で3分間加熱して、粘着剤層を形成した。厚さ20μm、平均孔径0.6μmのPTFE多孔質膜を、剥離ライナーの粘着剤層上に貼り合わせた。また別途、実施例1のシリコーン系粘着剤組成物を、PETフィルムをフッ化シリコーン系離型剤で処理してなる剥離ライナーの剥離処理面上に、乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布した。これを150℃で3分間加熱して、粘着剤層を形成した。PTFE多孔質膜の剥離ライナーを貼り合わせた面とは反対側の面に、この別途得た剥離ライナーの粘着剤層を貼り合わせて、両面粘着テープを作製した。この両面粘着テープの断面拡大写真を図4に示す。
【0052】
比較例2
実施例1のシリコーン系粘着剤組成物を、PETフィルムをフッ化シリコーン系離型剤で処理してなる剥離ライナーの剥離処理面上に、乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布した。これを150℃で3分間加熱して、粘着剤層を形成した。厚さ20μm、平均孔径0.6μmのPTFE多孔質膜を、剥離ライナーの粘着剤層上に貼り合わせた。PTFE多孔質膜の剥離ライナーを貼り合わせた面とは反対側の面に、前記シリコーン系粘着剤組成物を乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布した。これを130℃で3分間加熱し、前記と同様の剥離ライナーを貼り合わせて両面粘着テープを作製した。
【0053】
比較例3
厚さ50μm、平均孔径0.1μmのPTFE多孔質膜の両面に、商品名「SAFV」(ニッカン工業社製;エポキシ樹脂系接着シート)により粘着剤層を設けた。さらにその両面に剥離ライナーを設けて、熱プレス装置で温度130℃、圧力3kg/cm2、プレス時間3分の条件でプレスし、両面粘着テープを作製した。
【0054】
実施例および比較例で作製した両面粘着テープについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(粘着力測定)
上記両面粘着テープの一面を保護する剥離ライナーを剥がして粘着剤層を露出させ、これを厚さ25μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着テープを、幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片を作製した。被着体としてのSUS板に上記試験片を、2kgのローラを1往復させる方法で圧着した。
【0056】
これを23℃で30分間放置した後、JIS Z0237に準じ、温度23℃、相対湿度50%の測定環境下、引張試験機を使用して引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で接着力(N/20mm幅)を測定した。なお、比較例3に関しては、両面粘着テープが常温でSUS板との接着性を示さないため、熱プレス装置で温度170℃、圧力5kg/cm2、プレス時間1分の条件でSUS板にプレスし、測定に供した。
【0057】
(剥離状態)
粘着力測定後、使用した粘着テープの状態を目視により観察し、SUS板表面と両面テープ(の粘着剤層)の界面から剥離が起きているかどうかを目視にて確認し、以下の2段階で評価した。
○:SUS板表面と両面テープの界面から剥離が起きている
×:SUS板表面と両面テープの界面から剥離が起きていない
【0058】
また、SUS板表面と両面テープの界面から剥離が起きていない試験片については、PTFE多孔質膜基材の破壊が生じているかどうかを以下の三段階で評価した。
○:基材の破壊が認められない
△:使用した両面粘着シートの一部面積において基材の破壊が見られる
×:使用した両面粘着シートのほぼ全面積において基材の破壊が見られる
【0059】
基材の破壊が認められなかった試験片については、SUS板表面への糊残りの有無を目視にて確認し、以下の二段階で評価した。
○:糊残りが認められない
×:糊残りが認められる
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示されるように、PTFE多孔質膜基材の両面から粘着剤組成物を浸透させるようにして製造した実施例1および2の両面粘着テープは、基材の破壊、および糊残りなく、剥離することができた。実施例1の両面粘着テープの断面を観察したところ(図3)、基材の両表面上に形成された粘着剤層が、基材の孔内で連通していた。これに対し、剥離ライナーに粘着剤組成物を塗布し、乾燥した後にPTFE多孔質膜基材と貼り合わせる方法(転写法)で作製した比較例1および2の両面粘着テープでは、粘着剤が基材から剥れ、糊残りが認められた。これは、比較例1および2の両面粘着テープでは、基材と粘着剤層との間の接着力が低いことを意味している。粘着剤層を熱プレスでPTFE多孔質膜基材に貼り合わせた比較例3の両面粘着テープでは、基材の破壊が認められた。比較例1の両面粘着テープの断面を観察したところ(図4)、基材の両表面上に形成された粘着剤層は、基材の孔内にほとんど浸透していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の製造方法により得られる両面粘着テープ、および本発明の両面粘着テープは、家電製品、自動車、OA機器等の各種産業分野において用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 両面粘着テープ
2 PTFE多孔質膜基材
3 第1の粘着剤層
3’ 第2の粘着剤層
4 第1の剥離ライナー
4’ 第2の剥離ライナー
5 芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜基材と、当該基材の両面に粘着剤層とを有する両面粘着テープの製造方法であって、以下の工程(1)〜(4)を順に含む製造方法。
(1)第1の剥離ライナーに粘着剤組成物を付与する工程;
(2)ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜基材の一方の主面と、前記粘着剤組成物を付与した第1の剥離ライナーとを貼り合わせる工程;
(3)前記第1の剥離ライナーを貼り合わせた基材を加熱して、第1の粘着剤層を形成する工程;および
(4)前記基材の他方の主面に、粘着剤の一部が前記基材に浸透した第2の粘着剤層を設ける工程。
【請求項2】
前記工程(4)が、以下の工程(4A)および(4B)を含む請求項1に記載の製造方法。
(4A)前記基材の他方の主面に、粘着剤組成物を付与する工程;および
(4B)前記粘着剤組成物を付与した基材を加熱して、第2の粘着剤層を形成する工程。
【請求項3】
前記工程(4)が、以下の工程(4C)をさらに含む請求項2に記載の製造方法。
(4C)前記第2の粘着剤層に第2の剥離ライナーを貼り合わせる工程。
【請求項4】
前記粘着剤組成物が、シリコーン系粘着剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜基材と、当該基材の一方の主面上に形成された第1の粘着剤層と、当該基材の他方の主面上に形成された第2の粘着剤層とを含み、
前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層が、前記基材の孔内で連通している両面粘着テープ。
【請求項6】
少なくとも1つの剥離ライナーをさらに含む請求項5に記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
前記第1の粘着剤層と第2の粘着剤層が、シリコーン系粘着剤を含む請求項5または6に記載の両面粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−157476(P2011−157476A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20473(P2010−20473)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】