説明

中低温での水素生成用アルカリ含有触媒配合物

本発明は、約260℃未満の温度で水素富化ガスを生成させるためのアルカリ含有触媒の使用方法に関する。本発明のWGS触媒は次の組成を有する:
a)Pt、Ru、それらの酸化物およびそれらの混合物の少なくとも1種、
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、および所望により
c)Li、その酸化物およびそれらの混合物。
本触媒は各種の触媒担体物質上に担持できる。本発明は水素生成と一酸化炭素酸化に対して高活性、高選択性の両方を示す触媒にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年12月20日出願の米国特許仮出願第60/434,701号に基づく遡及の特典を請求するものであり、該仮出願を、あらゆる目的のためにそのすべてを参照により本明細書に組み込む。また、本出願は、発明者がハーゲマイヤーらの本出願と同日に出願した「中低温での水素生成用アルカリ含有触媒配合物」米国特許出願(代理人整理番号7080−009−01)を参照により組み込む。
【0002】
本発明は、含水合成ガス混合物などの一酸化炭素および水を含むガス混合物から約260℃以下の温度で水素富化ガスを生成させるための方法および触媒に関する。より詳細には、本発明は約260℃未満の温度で、水素富化ガスを発生させるためにアルカリを含有する触媒を使用する方法を含む。触媒は、各種の触媒支持材料上に担持してもよい。本発明の触媒は、水素生成および一酸化炭素の酸化に対して高い活性と選択性の両方を示す。
【背景技術】
【0003】
多くの化学工程およびエネルギー生成工程には、水素富化組成物(例えば供給流)が必要である。典型的には、水素富化供給流を他の反応物と組合せて様々な工程を実施する。例えば窒素固定法では、水素を含む供給流と窒素とを触媒の存在下で高温高圧で反応させることによって、アンモニアを製造する。工程によっては、水素富化供給流はその工程に有害な成分を含むべきでない。ポリマー電解質膜(「PEM」)燃料電池などの燃料電池は、水素富化供給流からエネルギーを発生させる。PEM燃料電池は、一般に、450℃未満の供給流ガス入り口温度で稼動する。一酸化炭素を、典型的には白金含有触媒である電解触媒の被毒を防ぐことが可能な程度にまで、供給流から排除する。米国特許第6,299,995号を参照のこと。
【0004】
水素富化ガスを作るための1つの方法が、炭化水素の水蒸気改質である。炭化水素の水蒸気改質では、水蒸気を、メタン、イソ−オクタン、トルエンなどの炭化水素燃料と反応させて水素ガスと二酸化炭素を生じさせる。メタン(CH4)について下に示した反応は、強度に吸熱性であり、反応にはかなりの熱量が必要である。
【0005】
CH4+2H2O→4H2+CO2
石油化学工業において、天然ガスの炭化水素水蒸気改質は、900℃を超える温度で実施されるのが典型的である。触媒で支援された炭化水素水蒸気改質の場合でも、要求される温度は、やはり700℃を超えることが多い。例えば米国特許第6,303,098号を参照のこと。ニッケルおよび金含有触媒ならびに450℃を超える温度を利用する、メタンなどの炭化水素の水蒸気改質が、米国特許第5,997,835号に記載されている。触媒を使用する方法は、カーボン形成を抑えながら水素富化ガスを形成する。
【0006】
効果的な炭化水素水蒸気改質触媒の一例が、Pt、11族金属、および8〜10族金属から構成されるシンフェルト(Sinfelt)組成物である。11族金属にはCu、AgおよびAuが含まれ、一方、8〜10族金属にはその他の貴金属が含まれる。これらの触媒配合物は、芳香族化合物の水素化、水素化分解、水添分解、脱アルキル化、およびナフサの改質過程を促進することで広く知られている。例えば米国特許第3,567,625号および第3,953,368号を参照のこと。特に、PEM燃料電池など、より低温のWGS応用分野に適した条件での水性ガスシフト(「WGS」)反応に対する、シンフェルトモデルに基づく触媒の応用は、今まで報告されていない。
【0007】
また、炭化水素のスチーム改質で製造したガス混合物を、水素透過性水素選択膜を通過させて濾過することによっても、精製水素含有供給流が製造されている。例えば米国特許第6,221,117号を参照のこと。このような方法には、システムの複雑性および遅い膜通過速度に由来する欠点がある。
【0008】
供給流などの水素富化ガスを製造するもう1つ方法は、実質上水分を含まない、水素と一酸化炭素を含むガス混合物から出発する。例えば、該混合ガスは炭化水素またはアルコールを改質した生成物でよく、そのガス混合物から一酸化炭素を選択的に除去する。一酸化炭素は、一酸化炭素の吸収および/またはその二酸化炭素への酸化によって除去できる。ルテニウムをベースにした触媒を使用して一酸化炭素を除去しかつ酸化するような方法が、米国特許第6,190,430号に開示されている。
【0009】
WGS反応は、水(蒸気)と一酸化炭素からだけで水素富化ガスを製造するもう1つの機構である。下記に示す、平衡過程である水性ガスシフト反応により、水と一酸化炭素が水素と二酸化炭素に変換され、逆もまた同様である。
【0010】
【化1】

【0011】
WGS反応を触媒するための各種触媒が開発されている。一般に、これらの触媒は、450℃を超える温度および/または1バールより高い圧力で使用されることが想定されている。例えば米国特許第5,030,440号には、550℃〜650℃でのシフト反応を触媒作用をするためのパラジウムおよび白金を含有する触媒配合物が開示されている。鉄/銅をベースにした触媒配合物に関する米国特許第5,830,425号を参照のこと。
【0012】
水性ガスシフト反応の条件下での水と一酸化炭素の触媒的変換は、水素に富み一酸化炭素の乏しいガス混合物を製造するのに使用されている。しかし、既存のWGS触媒は、所定の温度で、その生成ガスを続いて水素供給流として使用できるような水素と一酸化炭素との熱力学的平衡濃度に到達あるいは接近するに十分な活性を示さない。特に、既存の触媒配合物は、低温、すなわち約450℃未満での活性が十分でない。米国特許第5,030,440号を参照のこと。
【0013】
白金(Pt)は、炭化水素の水蒸気改質および水性ガスシフト反応の双方に対する周知の触媒である。高温(850℃を超える)および高圧(10バールを超える)の代表的な炭化水素水蒸気改質条件の下では、高温と概して非選択的な触媒組成物のために、WGS反応が炭化水素水蒸気改質触媒上で後改質を起こすことがある。水性ガスシフト反応が後改質を起こすかもしれない各種の触媒組成物および反応条件については、例えば米国特許第6,254,807号、第5,368,835号、第5,134,109号および第5,030,440号を参照のこと。
【0014】
コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)およびニッケル(Ni)などの金属は、WGS触媒としても使用されているが、選択的WGS反応に対しては通常あまりにも活性が強く、典型的な反応条件下でCOからCH4へのメタン化反応を引き起こす。換言すれば、水素はこのような触媒の存在下で存在するCOと反応してメタンを産生するので、水性ガスシフト反応で生じた水素が消費される。このメタン化反応に対する活性により、Co、Ru、Pd、RhおよびNiなどの金属の水性ガスシフト触媒としての有用性が制約される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、水素富化合成ガスを製造するための方法、ならびに水素生成および一酸化炭素の酸化の両方に対して特に低温(例えば約260℃未満)で高い活性と高い選択性を有し、水素と一酸化炭素を含むガス混合物から水素富化合成ガスを提供する触媒に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、低温での水素の生成および一酸化炭素の酸化のための高活性、高選択性触媒の必要性に答えるもので、それによって、少なくとも一酸化炭素と水を含むガス混合物から水素富化合成ガスなどの水素富化ガスを提供するものである。したがって、本発明は、水素富化ガスを製造するための方法および触媒を提供する。
【0017】
第1の一般的実施形態として、本発明は、合成ガス混合物などのCO含有ガスを水の存在下で約260℃未満の温度でアルカリ含有水性ガスシフト触媒と接触させることによって、水素富化ガス(例えば合成ガス)を製造するための方法である。第1の一般的実施形態において、水性ガスシフト触媒は、Pt、Ru、それらの酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種、ならびにNa、その酸化物またはそれらの混合物を含む。第1の一般的実施形態の他の方法において、水性ガスシフト触媒は、Pt、Ru、それらの酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種、Na、その酸化物またはそれらの混合物ならびにLi、その酸化物またはそれらの混合物を含む。触媒は、担体、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、マグネシア、ランタニア、ニオビア、ゼオライト、ペロブスカイト、シリカクレイ、イットリア、および酸化鉄、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種上に担持できる。本発明の方法は、約260℃未満の範囲の温度で実施される。
【0018】
第2の一般的実施形態として、本発明は、水性ガスシフト触媒自身、担持および非担持触媒の両方に関する。本発明の第2の一般的実施形態における水性ガスシフト触媒は、Pt、Ruそれらの酸化物およびそれらの混合物の少なくとも一種、ならびにNa、その酸化物またはそれらの混合物を含む。第2の一般的実施形態の他の触媒はPt、Ru、それらの酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種、Na、その酸化物またはそれらの混合物ならびにLi、その酸化物またはそれらの混合物を含む。触媒は、担体、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、マグネシア、ランタニア、ニオビア、ゼオライト、ペロブスカイト、シリカクレイ、イットリア、酸化鉄、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種上に担持できる。
【0019】
第3の一般的実施形態として、本発明は、炭化水素または代替炭化水素供給流から水素ガス含有流を発生させるための装置内にある前記第2の一般的実施形態の水性ガスシフト触媒を対象とする。その装置は、WSG触媒に加えて、さらに燃料改質器、水性ガスシフト反応器および温度制御器を含む。
【0020】
次に記載するWGS触媒の好ましい実施形態は、第1、第2、および第3の一般的実施形態のそれぞれ1つにおいて、あるいは特定の関連する実施形態(例えば、燃料電池反応器、燃料処理器および炭化水素スチーム改質器)において使用できる。
【0021】
1つの好ましい実施形態として、水性ガスシフト触媒は、Pt、その酸化物またはそれらの混合物ならびにNa、その酸化物またはそれらの混合物を含む。
【0022】
第2の好ましい実施形態として、水性ガスシフト触媒は、Ru、その酸化物またはそれらの混合物ならびにNa、その酸化物またはそれらの混合物を含む。
【0023】
第3の好ましい実施形態として、水性ガスシフト触媒は、Pt、その酸化物またはそれらの混合物、Na、その酸化物またはそれらの混合物、ならびにLi、その酸化物またはそれらの混合物を含む。
【0024】
他の好ましい実施形態として、水性ガスシフト触媒は、Ru、その酸化物またはそれらの混合物、ならびにNa、その酸化物またはそれらの混合物、ならびにLi、その酸化物またはそれらの混合物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、約260℃未満の低温度で水素富化合成ガスなどの水素富化ガスを製造する方法に関する。本方法によれば、合成ガスなどのCO含有ガスがアルカリ含有水性ガスシフト触媒と、水、好ましくは化学量論的に過剰な水の存在下で接触し、水素富化合成ガスなどの水素富化ガスを生成する。反応圧力は、好ましくは10バールを超えない。また、本発明は、水性ガスシフト触媒それ自体、およびこのようなWGS触媒を含む水性ガスシフト反応器および燃料処理装置などの装置にも関する。
【0026】
本発明による水性ガスシフト触媒は、
a)Pt,Ru、それらの酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種
b)Na、その酸化物、およびそれらの混合物、および所望により
c)Li、その酸化物、およびそれらの混合物、
を含有する。WGS触媒は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、マグネシア、ランタニア、ニオビア、ゼオライト、ペロブスカイト、シリカクレイ、イットリアおよび酸化鉄のいずれか1種の構成物質または組合せなどの担体上に担持できる。
【0027】
本発明のWGS触媒は、具体的かつ明白に排除された場合を除き、前に示した3種の群から選択される少なくとも2種の金属またはメタロイドの組合せを含有する。金属またはメタロイドの好ましい組合せについて特定のサブグループ化も呈示するが、本発明はその特定的に挙げたサブグループ化に制約されない。
【0028】
触媒および触媒系の各種成分についての個々の機能に関する記述は、単に本発明の利点を説明するためにのみ本明細書で行われているものであり、本発明の技術的範囲、または開示された各種成分および/または組成物の想定される使用、機能、もしくは機構に関して限定するものではない。したがって、特許請求の範囲でこのような要件明白に記載する場合を除いては、理論および現在の理解によって拘束されること無しに、成分および/または組成物の機能について記述する。一般にまた理論的に拘束されるものではないが、成分a)の金属、すなわちPtおよびRuはWGS触媒としての活性を有する。成分b)およびc)の金属またはメタロイドは、それ自体WGS触媒としての活性を有するが、Ptおよび/またはRuとの組合せで本発明の触媒に対して有益な性質を付与するように機能する。
【0029】
本発明の触媒は、約260℃未満の温度でWGS反応を触媒作用をし、水素富化合成ガスなどの水素富化ガスを発生させるのは勿論、メタン化反応などの望ましくない副反応を回避または減少させる。本発明のWGS触媒の組成およびそのWGS反応における使用について以下に述べる。
【0030】
1.定義
水性ガスシフト(「WGS」)反応:水と一酸化炭素から水素と二酸化炭素を生成させる反応、およびその逆反応、すなわち
【0031】
【化2】

【0032】
一般には、また、そうでないことを明示しない限り、本発明の各WGS触媒は、上記した前向きの反応(すなわち、H2の生成)、あるいは上記した逆向きの反応(すなわち、COの生成)の両方に関して有利に適用できる。したがって、本明細書に開示する各種の触媒は、ガス流中のH2とCOの比率を個別に制御して使用することができる。
【0033】
メタン化反応:一酸化炭素または二酸化炭素などの炭素源と水素から、メタンと水を生成する反応、すなわち
CO+3H2→CH4+H2
CO2+4H2→CH4+2H2
「合成ガス」:水素(H2)および一酸化炭素(CO)を含むガス混合物で、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)、メタン(CH4)および窒素(N2)を含んでいてもよい。
【0034】
LTS:反応温度が約250℃未満、好ましくは約150℃〜約250℃の範囲である「低温シフト」反応条件を指す。
【0035】
MTS:反応温度が約250℃〜約350℃の範囲である「中温シフト」反応条件を指す。
【0036】
HTS:反応温度が約350℃を超え約450℃までである「高温シフト」反応条件を指す。
【0037】
炭化水素:水素、炭素、および所望により酸素を含む化合物。
【0038】
元素周期表は、現行のIUPAC規約に基づくものであり、したがって、例えば11族にはCu、AgおよびAuが含まれる(2002年5月30日付けhttp://www.iupac.orgを参照のこと)
本明細書で記述されるように、触媒組成物の命名では、1つの触媒が各成分群に列挙された触媒成分の1種以上を含んでもよい場合に触媒成分群を区別するためにダッシュ(すなわち「−」)を使用し、触媒成分群の構成物質を囲うために括弧(すなわち「{}」)を使用し、触媒組成物中に触媒成分群中の2種以上の構成物質の存在が必要なら「{・・・の二つ....}」を使用し、その群の元素を加えない選択が可能なことを示すために「{}」の内部に「ブランク」を使用し、担持される触媒成分をもしあればその担体材料から区別するためにスラッシュ(すなわち「/」)を使用する。さらに、触媒組成物処方内の元素は、酸化物、塩または混合物を含めて任意の可能な酸化状態の全てを含む。
【0039】
本明細書中でこの略記法を使用すると、例えば「Pt−{Rh、Ni}−{Na、K、Fe、Os}/ZrO2」は、ZrO2上に担持されたPt、ならびにRhおよびNiの1種以上、ならびにNa、K、FeおよびOsの1種以上を含有する触媒組成物を表し、すべての触媒元素は、別途に明示しない限り、任意の可能な酸化状態でよい。「Pt−Rh−Ni−{Na,K、Fe、Osの二つ}」は、Pt、RhおよびNi、ならびにNa、K、FeおよびOsの中の2種以上を含有する担持または非担持触媒組成物を表す。「Rh−{Cu、Ag、Au}−{Na、K、ブランク}/TiO2」は、Rh、ならびにCu、AgおよびAuの中の1種以上、ならびに所望によりNaまたはKの中の1種を含有するTiO2上に担持された触媒組成物を表す。
【0040】
2.WGS触媒
本発明の水性ガスシフト触媒は、
a)Pt、Ruそれらの酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種、
b)Na、その酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種、ならびに所望により
c)Li、その酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種、
を含有する。
本発明の触媒は担体上に担持できる。担持触媒用の好ましい担体については後で述べる。
【0041】
触媒成分は、一般に、還元または酸化形態の混合物の状態で存在し、典型的には、ある1つの形態が混合物中で圧倒的に多く占められている。本発明のWGS触媒は、その元素状形態の、または酸化物もしくは塩としての金属および/またはメタロイドを混合して、触媒前駆物質を形成することによって調製できる。一般には、この触媒前駆物質混合物を、WGS触媒として使用するに先立って、その場(反応器内)でもよい仮焼および/または還元処理にかける。理論的に拘束されるものではないが、一般に、触媒として活性な種は、還元された元素状態または他の可能なより高い酸化状態にある種であると思われる。触媒前駆物質種は、使用前の処理によって触媒として活性な種にほぼ完全に変換されると考えられる。それにもかかわらず、仮焼および/または還元後に存在する触媒成分種は、仮焼および/または還元条件の有効性に応じて、還元金属または他の可能なより高い酸化状態などの触媒的活性種と未仮焼または未還元種との混合物でもよい。
【0042】
A.触媒組成
上述したように、本発明の1つの実施形態は、水性ガスシフト反応(またはその逆反応)を触媒するためのアルカリ含有触媒である。この触媒は高LSTおよびMST活性を持ち、約200℃のような低温でも活性を持つことがわかった。
本発明によれば、WGS触媒は次の組成を持つ。
【0043】
a)Pt、Ruそれらの酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種
b)Na、その酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種、ならびに所望により
c)Li、その酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種、
本発明による所定の触媒中に存在する各成分の量は、その触媒が機能することを意図している反応条件に応じて変更できる。一般に、PtまたはRu成分は、約0.01wt%〜約10wt%、好ましくは約0.01wt%〜約2wt%、より好ましくは約0.05wt%〜約0.5wt%の範囲の量で存在できる。Na成分は、約0.1wt%〜約20wt%、好ましくは約1wt%〜約15wt%の範囲の量で存在できる。Li成分は、代表的には約0.05wt%〜約20wt%、好ましくは約0.1wt%〜約15wt%の範囲の量で存在できる。
【0044】
上記の重量パーセントは、触媒成分にもしあるなら担体材料を合算した総重量に対する、触媒調製最終段階後の触媒組成物中におけるその最終状態(すなわち、生じた酸化状態)での触媒成分の総重量に基づいて計算される。担体材料中の所定触媒成分の存在、ならびにその成分の他の触媒成分との相互作用の程度および種類が、所望の性能効果を達成するのに必要な成分量に影響を与えることもある。
【0045】
本発明を具体化するその他のWGS触媒を下に挙げる。各金属がその還元形態またはより高い酸化形態で存在してもよい先に説明した略記法を利用すると、以下の組成物が好ましい触媒組成物の例である。
【0046】
{Pt,Ru}−Na;
{Pt,Ru}−Na−Li;
Pt−Na;
Pt−Li;
Pt−Na−Li;および
Ru−Na−Li
B.触媒成分a):Pt、Ru
本発明触媒の第1成分は、PtまたはRu、すなわち成分a)である。これらの金属成分のそれぞれは、その還元型とその酸化物の組合せで存在してもよい。本発明の触媒は、これら金属の混合物を含んでもよい。PtおよびRuは、それぞれがWGS反応を触媒する。
【0047】
C.触媒成分b)およびc):それぞれNaおよびLi
本発明のWGS触媒は少なくとも2種の金属またはメタロイドを含有する。先に説明した成分a)に加え、本発明のWGS触媒は、Ptおよび/またはRuと組合せて使用した場合に、触媒配合物に対して有利な特性を付与するように機能する金属またはメタロイドを含有する。本発明の触媒は、さらにNa、その酸化物またはそれらの混合物、すなわち成分b);および所望によりLi、その酸化物またはそれらの混合物、すなわち成分c)を含有する。
【0048】
水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)およびギ酸ナトリウム(NaOOCH)は好適な前駆物質として認知されている。Naの高使用量はLTS活性に対して有利であることが判明しており、典型的にはNa使用量は約0.1〜約20wt%の範囲にあるのが好ましく、約1〜約15wt%範囲がより好ましい。NaOH前駆物質はガス流中に存在するCO2と可逆的に反応して炭酸水素ナトリウムを生成することができ、あるいはガス流中に存在するCOと反応することができる。
【0049】
水酸化リチウム(LiOH)は好適なLi前駆物質の一例である。
【0050】
本発明触媒のNa成分および所望により加えられるLi成分は、PtおよびRuのいずれかまたは両方と組合わさって相乗作用性の対を形成し、LTSで高いWGS活性を示すが、またMTSで高い選択性も示す。PtまたはRuのいずれかまたは両方と組合わされたLiは一般にLTSでのNaよりも活性が低いことがわかった。
【0051】
好ましい担体には、例えばジルコニア、アルミナおよびシリカが含まれる。ある実施形態ではアルミナがZrでドープされる。好ましい担持触媒は、例えばPt−Na/ZrO2、Pt−Na−Li/ZrO2、Ru−Na/ZrO2、Ru−Na−Li/ZrO2、Pt−Na/Al23、Pt−Na−Li/Al23、Ru−Na/Al23、Pt−Na/SiO2、およびRu−Na−Li/SiO2を含む。アルミナ担持触媒としてはγ−Al23が好ましい。
【0052】
D.触媒成分の機能分類
本発明の範囲を制約するものではないが、本発明による触媒組成物を構成するための枠組みに加えて、各種触媒成分の機能に関して説明する。触媒成分についての以下の分類は、本発明によるまた問題となる反応条件に応じてWGS触媒組成物を処方するために、各種触媒成分の選択に関わる当業者を対象とする。
【0053】
さらに、本発明によれば、水性ガスシフト反応に組み込むことのできる触媒成分および金属にはいくつかの部類がある。それ故、ある所望する実施形態において成分として列挙される各種元素(例えば、成分(c)として)を、各種組合せおよび入れ替えに含めて、特定の応用に向けて大まかにまたは微細に調整される触媒組成物を完成できる(例えば、温度、圧力、空間速度、触媒前駆物質、触媒装填量、触媒表面の面積/形態、反応物流速、反応物比率などの特定の条件群を含めて)。場合によっては、ある成分の影響が、触媒の稼動温度で変化する。これらの触媒成分は、触媒の性能特性に対するその成分の効果に応じて、例えば活性化剤あるいは活性緩和剤として機能できる。例えば、より強い活性を望む場合には、触媒中に活性化剤が組み込まれんでもよいし、あるいは、活性緩和剤を少なくとも1種の活性化剤で、または「活性梯子」を1段階進める少なくとも1種の活性緩和剤で置き換えてもよい。「活性梯子」は、活性化剤もしくは活性緩和剤などの二次的または追加される触媒成分を、主たる触媒構成物の性能に対するそれぞれの影響の大きさを順位付ける。反対に、触媒のWGS選択性を増す(例えば、競合するメタン化反応の発生を減少させる)必要がある場合には、触媒から活性化剤を除去するか、あるいは代わりに、現行の活性緩和剤を「活性梯子」を1段階下げる少なくとも1種の活性緩和剤で置き換えればよい。さらに、これら触媒の作用は、触媒中にある成分を組み込むことによって得られる相対的効果に応じて「ハード(hard)」または「ソフト(soft)」として記述される。触媒成分は、金属、メタロイド、または非金属でよい。
【0054】
例えば、活性化は一般にLTS条件下において考慮すべき重要なパラメータなので、典型的には、LTS条件下での使用に適した本発明によるWGS触媒は、活性化剤を採用し、活性を緩和するにしても最小限に限られるであろう。また、このようなLTS触媒は、好ましくは高表面積担体を採用して触媒活性を高めることができる。反対に、HTS条件で使用されるWGS触媒は、選択性とメタン化が考慮すべきパラメータなので、活性が緩和されている触媒が有利である。このようなHTS触媒は、例えば、低表面積担体を使用できる。したがって、特定の稼動環境に向けた本発明によるWGS触媒の選定においては稼動温度を考慮すればよい。
【0055】
本発明による活性化剤には、活性と選択性のあるWGS促進金属としてRuおよびCoを含めてもよい。ReおよびPdは、適度に活性ではあるが、それほど選択的ではなく、かつメタン化も促進する金属の例である。また、Irは、他の対をなす金属の存在に応じて、軽微な活性緩和または活性化作用を有することが判断している。その他の活性化剤としては、それに限定されるものではないが、Ti、Zr、V、Mo、La、Ce、PrおよびEuを挙げることができる。Ceは、WGS反応を活性化するための最も活性のある希土類金属である。La、Pr、SmおよびEuも、特に低温で活性である。HTSに対しては、PrおよびSmが、あまり活性を犠牲にしないで選択性を高める、好ましいソフトな活性緩和剤である。LTSに対しては、LaおよびEuが有用な活性化剤である。一般に、Ce以外のすべてのランタニドは、同様な性能を示し、貴金属含有触媒系を活性化するよりもむしろ活性を緩和する傾向がある。Yは、HTS系に対して高い選択性のある活性緩和剤であるが、一方、LaおよびEuは、活性があり、LTSの場合のCeに類似する。Laは、Ceにドープすると極めてわずかに活性を緩和し、したがって、Ce含有触媒系の選択性を調節するのに使用できる。

約450℃までの全体としては好ましい温度範囲内に含まれる、比較的広範な温度範囲に渡って(例えば、低くても約50℃、好ましくは低くても約75℃の温度範囲、最も好ましくは低くても約100℃の温度範囲)、わずかに活性を緩和し、高い選択性のある触媒成分には、Y、Mo、Fe、PrおよびSmが含まれ、これらの成分は約250℃の低温度で選択性はあるがそれほど高活性ではない傾向がある。レドックスドーパントである、Mo、Fe、PrおよびSmは、一般に、予備還元温度を上昇させると共に活性を失うが、Feは、高いWGS反応温度においてそれだけで適度に活性になる。
【0056】
また、活性緩和剤には、Cu、Ag、Au、Cd、In、Ge、Sn、SbおよびTeが含まれる。典型的には、活性緩和作用を発揮する活性緩和剤の場合、その活性緩和剤は、実質的に還元または金属状態であるべきである。Snと合金化したGeは、完全酸化状態の場合、すなわち貴金属(Pt、RhまたはPdなど)を選択的に還元するが触媒組成物中のレドックスドーパントの活性な酸化状態を変化させない約300℃の予備還元温度で処理した場合に、低温度系に対してさえも高い活性があることが見出された合金の一例である。
【0057】
E.支持体
支持体または担体は、水性ガスシフト反応が進行することを可能にする触媒と共に使用される任意の支持体または担体でよい。支持体または担体は、多孔性で吸着作用のある、約25〜約500m2/gの表面積を有する高表面積の支持体でよい。多孔性担体材料は、WGS工程で利用される条件に対して比較的不活性で、(1)活性炭、コークス、または木炭、(2)シリカまたはシリカゲル、炭化ケイ素、クレイ、および合成的に調製されたおよび天然に産出するものを含むケイ酸塩、例えば白陶土、珪藻土、フーラー土、カオリンなど、(3)セラミックス、磁器、ボーキサイト、(4)アルミナ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、マグネシアなどの耐火性無機酸化物、(5)天然に産出するまたは調製したモルデン沸石および/またはフォージャサイトなどの結晶性および非晶質アルミノケイ酸塩、および(6)これらの群の組合せなど、炭化水素の水蒸気改質法で従来から利用されている担体材料が挙げられる。
【0058】
本発明のWGS触媒が担持触媒である場合、使用する支持体は、触媒金属(またはメタロイド)の1種または複数を含有してもよい。支持体は、他の成分をその支持体と組み合わせることによって触媒を形成できるように、十分なまたは過剰な量の触媒用金属を含んでいてもよい。このような支持体の例には、触媒に対してセリウム、Ceを付与することができるセリア、あるいは、鉄、Feを付与することができる酸化鉄が含まれる。このような支持体を使用する場合、その支持体中の触媒成分量は、一般に、触媒に対して必要とされる触媒成分量よりもはるかに過剰である。したがって、支持体は、触媒のための活性触媒成分および支持体材料の両方として機能する。あるいは、支持体が、所望する成分のすべてを支持体上で組み合わせてその触媒を形成できるように、WGS触媒を構成する金属の少量のみを有してもよい。
【0059】
Ptを唯一の活性貴金属として含有する触媒を用いた担体のスクリーニングにより、水性ガスシフト触媒も、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、マグネシア、ランタニア、ニオビア、ゼオライト、ペロブスカイト、シリカクレイ、イットリアおよび酸化鉄を含む担体上に担持できることが判った。ペロブスカイトは、本発明の触媒配合物に対する支持体として利用できる。
【0060】
ジルコニア、アルミナおよびシリカは、本発明に対する支持体であり、かつWGS反応に対して高い活性を提供できる。ジルコニアは単斜晶相であることが好ましい。高純度のセリアは、LTS条件において、添加物でドープしたセリアよりもPtを活性化することが見出された。ニオビア、イットリアおよび酸化鉄担体は、高い選択性を提供するが、やはり活性が弱く、これは表面積の不足によるものと考えられる。大きな表面積(約100m2/g)を有するように処方されたマグネシア担体上のPtは、高い選択性を示すが、反応温度を低下する活性が急速に減少する。
【0061】
鉄、イットリウム、および酸化マグネシウムは、より大きい表面積および低い活性緩和剤濃度の両方を提供するために、ジルコニア担体上の第1層として利用できる。
【0062】
一般に、アルミナは、Ptのみを含有するWGS触媒に対して、活性ではあるが非選択的な担体であることが判明している。しかし、γ−アルミナの選択性はZrおよび/またはCo、または、例えばLaおよびCeなどの希土類元素の1種でドープすることによって改善できる。このドーピングは、アルミナに対して、液状または固体状で酸化物または硝酸塩などのその他の塩を添加することによって達成できる。選択性を増すためのその他のドーパントには、例えば、Re、Mo、Feなどのレドックスドーパント、および塩基性ドーパントがある。広範な温度範囲に渡って高い活性と選択性の両方を示す、Zrおよび/またはCoと組み合わせたγ−アルミナが好ましい。
【0063】
γ−、δ−、またはθ−アルミナなど、大きな表面積のアルミナは、好ましいアルミナ担体である。混合シリカアルミナ、ゾル−ゲルアルミナ、ならびにゾル−ゲルもしくは共沈アルミナ−ジルコニア担体など、その他のアルミナ担体も使用できる。アルミナは、一般に、ジルコニアなどの担体よりも大きな表面積と大きな細孔容積を有し、他のより高価な担体と比較して価格上の利点がある。
【0064】
F.WGS触媒の作製方法
既に述べたように、本発明によるWGS触媒は、元素状のまたは酸化物もしくは塩としての金属および/またはメタロイドを混合して触媒前駆物質を形成することによって調製され、触媒前駆物質は、一般に、仮焼および/または還元処理に付される。理論的に拘束されるものではないが、触媒として活性な種は、一般に、還元された元素状態または他の可能なより高い酸化状態にある種であると思われる。
【0065】
本発明のWGS触媒は、任意のよく知られた触媒調製法によって調製できる。例えば、米国特許第6,299,995号および6,293,979号を参照されたい。噴霧乾燥、沈殿、含浸、インシピエントウェットネス(incipient wetness)法、イオン交換、流動床コーティング、物理もしくは化学蒸着は、本発明のWGS触媒を作製するのに利用できるいくつかの方法のほんの一例である。好ましい手法には、例えば、インシピエントウェットネス法および含浸が含ある。触媒は、ペレット、顆粒、床、またはモノリスなど、任意の適当な形状でよい。また、触媒調製方法および触媒前駆物質に関するさらなる詳細について、代理人整理番号第708001101PCTのもとにハーゲマイヤーらが「水素生成用触媒の調製方法」の名称で本発明と同日に出願した、同時係属PCT国際特許出願を参照されたい。上記出願のすべての開示および本明細書で引用されるその他すべての参照文献を、あらゆる目的についてその全体について本明細書に組み込む。
【0066】
本発明によるWGS触媒は、固体支持体または担体材料上で調製できる。好ましくは、支持体または担体は、上述のおよび当技術分野で周知のいくつかの可能な異なる技術のいずれかによって触媒前駆物質が添加される大表面積材料であるか、あるいは、そのような大面積材料でコーティングされる。本発明の触媒は、ペレットの形態で、または支持体、好ましくはモノリス、例えばハニカム状モノリス上で使用される。
【0067】
触媒前駆物質溶液は、簡便な調製を可能にするに十分な高い濃度の、容易に分解可能な形態の触媒成分から構成されることが好ましい。容易に分解可能な前駆物質の形態の例には、硝酸塩、アミン、およびシュウ酸塩が含まれる。一般には、塩素を含有する前駆物質を避け、触媒の塩素被毒を防ぐ。溶液は、水溶液でも非水溶液でもよい。典型的な非水溶液としては、極性溶媒、非プロトン性溶媒、アルコール、およびクラウンエーテルを含み、例えばテトラヒドロフラン、およびエタノールを挙げることができる。前駆物質溶液の濃度は、一般に、例えば支持体のポロシティ、含浸段階の回数、前駆物質溶液のpH、等々のパラメータに配慮して、調製技法の溶解度限界までであればよい。触媒成分前駆物質の適切な濃度は、触媒調製に関わる当業者が容易に決定できる。
【0068】
Li − 酢酸塩、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩およびギ酸塩は、いずれもリチウムのための触媒前駆物質になり得る。
【0069】
Na − ナトリウムの酢酸塩、メトキシド、エトキシド、およびプロポキシドを含むアルコキシド、炭酸水素塩、炭酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩および乳酸塩を使用して本発明のWGS触媒を調製できる。
【0070】
Ru − 硝酸ニトロシルRuすなわちRu(NO)(NO33(アルドリッチ)、カリウムルテニウム酸化物K2RuO4・H2O、過ルテニウム酸カリウムKRuO4、酢酸ニトロシルルテニウムRu(NO)(OAc)3、および過ルテニウム酸テトラブチルアンモニウムNBu4RuO4は、すべてルテニウム金属触媒の前駆物質になり得る。NMe4Ru(NO)(OH)4溶液は、Ru(NO)(OH)3(0.1M)(H.C.スターク)を80℃でNMe4OH(0.12M)に溶解し、触媒前駆物質溶液として有用な澄明暗赤褐色をした0.1MのRu溶液を生成させることによって調製できる。
【0071】
Pt − 白金含有触媒組成物は、Pt(NH34(NO32(アルドリッチ、アルファ、ヘラエウス、またはストレム)、Pt(NH32(NO22の硝酸溶液、Pt(NH34(OH)2(アルファ)、K2Pt(NO24、Pt(NO32、PtCl4およびH2PtCl6(塩化白金酸)など、いくつかの前駆物質溶液のいずれか1種を用いて調製できる。Pt(NH34(HCO32、Pt(NH34(HPO4)、(NMe42Pt(OH)6、H2Pt(OH)6、K2Pt(OH)6、Na2Pt(OH)6およびK2Pt(CN)6も、K2Pt(C242などのシュウ酸Pt塩のほかに選択できる。シュウ酸Pt塩は、Pt(NH34(OH)2から、それを1Mのシュウ酸溶液と反応させて所望のシュウ酸Pt塩の澄明無色溶液を生成させて調製できる。
【0072】
3.水素富化合成ガスなどの、水素富化ガスの製造
本発明はまた、水素富化合成ガスなどの水素富化ガスを製造する方法に関する。本発明のさらなる実施形態は、COが減少した合成ガスなどのCO減少ガスを製造する方法を対象とする。
【0073】
合成ガスなどのCO含有ガスは、水の存在下で本発明の方法によるアルカリ含有水性ガスシフト触媒と接触する。反応は、好ましくは、約260℃未満の温度で起こり、水素富化合成ガスなどの水素富化ガスを生成する。
【0074】
本発明の方法は、広範な範囲の反応条件に渡って利用できる。好ましくは、本方法は、約75バールを超えない圧力、望ましくは約50バールを超えない圧力で実施され、水素富化ガスを生成する。約25バールを超えない、または、さらに約15バールを超えない、または約10バールを超えない圧力で反応を起こさせることがよりさらに好ましい。大気圧またはその付近で反応を起こさせることが特に好ましい。反応は約260℃未満の温度で起こるのが好ましい。空間速度は、約1hr-1から約1,000,000hr-1の範囲である。供給物比、温度、圧力および所望する生成物比は、特定の触媒処方に対する望ましい最適空間速度を決定するために当業者が通常考慮する要子である。
【0075】
4.燃料処理装置
本発明は、さらに、炭化水素または代替炭化水素燃料から水素富化ガスを生成させるための燃料処理システムに関する。このような燃料処理システムには、例えば、燃料改質器、水性ガスシフト反応器および温度制御器が含まれる。
【0076】
燃料改質器は、炭化水素または代替炭化水素燃料を含む燃料反応物流を、一酸化炭素および水を含む改質された生成物流に変換する。燃料改質器は、一般に、反応物流を受け入れるための入り口、反応物流を生成物流に変換するための反応室、および生成物流を排出するための出口を有する。
【0077】
また、燃料処理装置には、約260℃未満の温度で水性ガスシフト反応を実施するための水性ガスシフト反応器が含まれる。この水性ガスシフト反応器には、燃料改質器の生成物流から一酸化炭素および水を含有する水性ガスシフト供給流を受け入れるための入り口、本明細書に記載された水性ガスシフト触媒をその中に配置した反応室、および生成した水素富化ガスを排出するための出口が含まれる。水性ガスシフト触媒は、水性ガスシフト供給流から水素および二酸化炭素を生成させるのに有効であることが望ましい。
【0078】
温度制御器は、水性ガスシフト反応器の反応室温度を300℃未満好ましくは約260℃未満の温度に維持するように構成される。
【0079】
5.工業的応用
合成ガスは、例えば、メタノール合成、アンモニア合成、オレフィンからのオキソアルデヒド合成(典型的には、対応するオキソアルコールを形成するための後に続く水素化と組み合わせて)、水素化およびカルボニル化を含むいくつかの工業的応用での反応供給物として使用される。それぞれこれらの各種工業的応用では、その合成ガス反応物流中にある比率のH2とCOを含むことが好ましい。メタノール合成の場合、H2:COの比率は、好ましくは約2:1である。オレフィンからのオキソアルデヒドのオキソ合成の場合、H2:COの比率は好ましくは約1:1である。アンモニア合成の場合、H2とN2(例えば空気から供給される)の比率は、好ましくは約3:1である。水素化の場合、より大きなH2:COの比率を有する合成ガス供給流が好ましい(例えばH2富化された、および望ましくは実質的に純H2供給流である供給流)。カルボニル化反応は、より小さなH2:CO比率を有する供給流を使用して実施するのが好ましい(例えば、CO富化された、および好ましくは実質的に純CO供給流である供給流)。
【0080】
本発明のWGS触媒、およびそのようなWGS触媒を利用する本明細書に開示する方法を工業的に応用して、メタノール合成、アンモニア合成、オキソアルデヒド合成、水素化反応およびカルボニル化反応などの合成反応のための供給流におけるH2:CO相対比率を調節または制御できる。例えば、ある実施形態で、改質器中での改質反応によって(例えば、メタノールまたはナフサなどの炭化水素の水蒸気改質によって)、炭化水素からCOおよびH2を含む合成ガス生成物流を製造することができる。次いで、その合成ガス生成物流を、WGS反応中、WGS反応器の温度を約450℃弱の温度(あるいは、本発明触媒との関連で本明細書中で説明した、より低い温度もしくは温度範囲)に維持するように構成された温度制御器を有するWGS反応器への供給流として供給できる(直接、またはさらなる下流処理のあとで間接的に)。WGS反応器中で使用されるWGS触媒は、好ましくは、本発明の触媒および/または方法の1種以上から選択される。WGS反応器からの生成物流(すなわち「シフト化生成物流」)中のH2:CO比率を、工業上重要な各種反応に関して前に説明した比率を含む、問題となる下流の反応(例えば、メタノール合成)に望ましい比率に制御するのに有効な反応条件の下に、WGS反応器への供給流を、WGS触媒(群)と接触させる。例によって限定されるものではないが、メタンの水蒸気改質からの合成ガス生成物流は、一般に、約6:1のH2:CO比率を有する。本発明のWGS触媒(群)をWGS反応(前に示した前向きの)で使用して、下流の水素化反応のためにCOに対するH2の量を例えば約10:1を超えるまでにさらに高めることができる。別な例を挙げれば、このような合成ガス生成物流中のH2:CO比率を、WGS反応(前に示した逆向きの)に本発明のWGS触媒(群)を使用することによって低下させ、メタノール合成に望ましい2:1の比率を達成またはその比率に接近することができる。本発明の教示から考えて、当業者ならその他の例も理解できよう。
【0081】
当業者は、前述した好ましい触媒の各実施形態について、各実施形態の特定の成分は、元素状態、または1種以上の酸化状態、あるいはそれらの混合物の状態で存在できることを理解し認識できよう。
【0082】
これまでの説明は本発明の好ましい実施形態を対象にしているが、当業者にとってその他の変形形態および変更形態も明白であり、本発明の技術思想から逸脱しない範囲でなし得る。
【実施例】
【0083】
概要
少量の触媒組成物試料を、自動液体分注ロボット(カボロサイエンティフィックインスツルメント)を用いて平らな石英の試験ウェハ上に調製する。
【0084】
担持触媒は、一般に、触媒担体(例えばアルミナ、シリカ、チタニアなど)を、基板上の個別の領域または位置に液体処理ロボットを使用して典型的にはスラリー組成物としてウェハ基板上に供給すること、または当業者に周知の技術を用いて基板表面を洗浄コーティングすること、および乾燥させ基板上に乾燥した固体担体材料を形成することによって調製される。次いで、担体を含む基板の個別領域を、触媒または触媒前駆物質として機能させるように、金属(例えば、遷移金属塩の各種組合せ)を含む特定の組成物で含浸する。ある場合には、組成物を、異なる金属を含有する成分の混合物としてその領域に配送し、またある場合には、異なる金属を含有する前駆物質を使用して(追加的または交互的に)繰返しまたは反復的な含浸段階を実施する。組成物を乾燥して担持触媒前駆物質を形成する。担持触媒前駆物質に仮焼および/または還元処理を施してウェハ基板上の個別領域に活性な担持触媒材料を形成する。
【0085】
バルク触媒も基板上に調製できる。このような多成分バルク触媒は、商業的供給元から購入され、および/または沈殿もしくは共沈殿法によって調製され、次いで、場合によっては、機械的前処理(粉砕、篩い分け、圧縮)を含む処理を施される。バルク触媒は、典型的にはスラリー分注および乾燥により基板上に配置され、次いで、場合によっては、さらに、当業者にとって通常周知である含浸および/またはインシピエントウェットネス技法により追加の金属含有成分(例えば金属塩前駆物質)でドープされ、バルク触媒前駆物質が形成される。このバルク触媒前駆物質に仮焼および/または還元の処理を施し、ウェハ基板上の個別領域に活性なバルク触媒材料を形成する。
【0086】
基板上の触媒材料(例えば、担持またはバルク)のWGS反応に対する活性および選択性を、走査/吸入プローブを具備した走査型質量分析計(「SMS」)を使用して試験する。走査型質量分析装置およびスクリーニング手順についての詳細説明は、米国特許第6,248,540号、欧州特許第1019947号中、およびワンらによる欧州特許出願EP1186892およびそれに対応する2000年8月31日出願の米国特許出願第09/652,489号に示されており、そのそれぞれすべての開示をそのまま本明細書に組み込む。一般に、走査型質量分析計触媒スクリーニング反応器に関する反応条件(例えば、接触時間および/または空間速度、温度、圧力など)は、スクリーニングされる各種触媒材料の触媒活性を判断してランクを付けるために、走査型質量分析計中での転化が部分的(すなわち、例えば転化率が約10%〜約40%の範囲の非平衡転化)であるように制御される。さらに、反応条件および触媒装填量を、結果が、WGS反応のためのより大きな規模の実験室的研究用反応器の反応条件および触媒装填量と適切に釣り合うように設定する。走査型質量分析計を使用して判断した結果とWGS反応のための大規模な実験室的研究用反応器を使用した結果との比較可能性を実証するために、限られた組での基準点実験を実施する。例えば、ハーゲマイヤーらによる2002年12月20日出願の「水素生成用白金−ルテニウム含有触媒配合物」と題する米国予備特許出願第60/434,708号の実施例12を参照されたい。
【0087】
調製および試験法
本発明の触媒および組成は、先に概要を説明し、より詳細を以下で説明するライブラリーフォーマット(library format)中で触媒を調製かつ試験する高処理量実験技術を利用して確認した。特に、WGS触媒としての活性および選択性を有する触媒組成を確認するのに、このような技術を使用した。これらの実施例で、「触媒ライブラリー」とは、ウェハ基板上に配列され、少なくとも2種の、典型的には3種以上の共通金属成分(完全還元状態の、または金属塩のように部分的もしくは完全酸化状態の金属を含む)を有するが、共通金属成分の相対的化学量論が互いに相違するWGS触媒候補の関連集合を指す。
【0088】
典型的には、ライブラリー設計および特定ライブラリーに関する検討範囲に応じて、各ウェハ基板上に複数(すなわち、2個以上)のライブラリーを形成した。第1群の試験ウェハには、各々3インチのウェハ基板上に、典型的にはほとんどの触媒を少なくとも3種の異なる金属を使用して形成した約100種の異なる触媒組成物を含めた。第2群の試験ウェハには、各々4インチのウェハ基板上に、やはり典型的にはほとんどの触媒を少なくとも3種の異なる金属を使用して形成した約225種の異なる触媒組成物を含めた。典型的には、各試験ウェハ自体に、複数のライブラリーを含めた。典型的には、各ライブラリーは、二元、三元またはより高次元の組成物を含む。すなわち、例えば三元組成物では、異なる相対比率で組み合わせた少なくとも3種の成分(例えば、A、B、C)を含む三元組成物が注目範囲(例えば、典型的には各成分について約20%から約80%以上(例えば、場合によっては約100%まで)の範囲)を包含するモル化学量論を有するように触媒材料を形成した。担持触媒の場合には、三元組成物に対する成分の化学量論を変化させることに加え、相対的な金属総装填量についても検討した。
【0089】
第1群の(3インチ)試験ウェハ上に形成される典型的なライブラリーには、例えば「5点ライブラリー」(例えば、それぞれが5種の異なる関連触媒組成物を有する20個のライブラリー)、または「10点ライブラリー」(例えば、それぞれが10種の異なる関連触媒組成物を有する10個のライブラリー)、または「15点ライブラリー(例えば、それぞれが15種の異なる関連触媒組成物を有する6個のライブラリー)、または「20点ライブラリー」(例えば、それぞれが20種の異なる関連触媒組成物を有する5個のライブラリー)がある。第2群の(4インチ)試験ウェハ上に形成される典型的なライブラリーには、例えば「9点ライブラリー」(例えば、それぞれが9種の異なる関連触媒組成物を有する25個のライブラリー)、または「25点ライブラリー」(例えば、それぞれが25種の異なる関連触媒組成物を有する9個のライブラリー)がある。「50点ライブラリー」(例えば、試験ウェハ上にそれぞれが50種の関連触媒組成物を有する2個以上のライブラリー)を含むより広範囲の組成検討も行った。典型的には、候補となる触媒ライブラリー構成物質の化学量論的増分は、約1.5%(例えば、「55点三元」の場合)から約15%(例えば「5点」三元の場合)の範囲である。ライブラリー設計および配列構成に関するより詳細な説明については、例えば、WO00/17413を概略的に参照されたい。本願の図6A〜6Fは、ライブラリースタジオ(登録商標)(シミックステクノロジーズ社、サンタクララ、カリフォルニア州)を使用してグラフで表した場合の、共通試験ウェハ上に調製されるライブラリーのためのライブラリー設計を示し、ライブラリーは、化学量論および触媒装填量の両方に関して変えることができる。相対的化学量論および/または相対的触媒装填量に関して変化できる触媒材料のライブラリーは、本願のいくつかの実施例で示されるように、組成表で表すこともできる。
【0090】
例えば、図6Aを参照すると、この試験ウェハには、9個のライブラリーが含まれ、9個のライブラリーのそれぞれが、同じ3成分系の9種の異なる三元組成物を含む。以下の実施例における命名法では、このような試験ウェハを、9個の9点−三元(「9PT」)ライブラリーを含むと言う。この試験ウェハの右上隅に描かれたライブラリーには、9種の異なる化学量論で成分A、BおよびX1を含有する触媒組成物が含まれる。もう1つの例として、図6Bを参照すると、15種の様々な化学量論でPt、PdおよびCuの触媒成分を有する15点−三元(「15PT」)ライブラリーを含む試験ウェハ部分が描かれている。一般に、1つのライブラリー内に含まれる各触媒の組成は、組成物中の個別成分の相対量(例えばモルまたは重量)とその成分に対応するように表示される相対面積とを関連させることによって図的に表現される。したがって、図6Bに示した試験ウェハ部分に描かれた15種の触媒組成を再度参照すると、各組成はPt(濃灰色)、Pd(薄灰色)およびCu(黒色)を含み、Ptの相対量は縦列1から縦列5に向かって増加し(しかし、所定の縦列内の横列間で比較すると同一である)、Pdの相対量は横列1から横列5に向かって減少し(しかし、所定の横列内の縦列間で比較すると同一である)、Cuの相対量は横列5縦列1の最大値から例えば横列1縦列1の最小値に向かって減少することが判る。図6Cは、50種の異なる化学量論のPt、PdおよびCuからなる触媒組成を有する1個の50点−三元(「50PT」)ライブラリーを含む試験ウェハを示す。この試験ライブラリーには、例えば注目する3種の異なる成分によるもう1つの50点−三元ライブラリー(表示していない)を含めることもできる。
【0091】
図6D〜6Fは、異なる調製段階での2個の50点−三元ライブラリー(「bis50PTライブラリー」)のグラフ表示であり、Pt−Au−Ag/CeO2ライブラリー(図6Eの右上の三元ライブラリーとして示される)およびPt−Au−Ce/ZrO2ライブラリー(図6Eの左下の三元ライブラリーとして示される)を含む。Pt−Au−Ag/CeO2ライブラリーには、二元含浸組成物すなわちPt−Au/CeO2二元触媒(横列2)およびPt−Ag/CeO2(縦列10)も含まれていることに留意されたい。同様に、Pt−Au−Ce/ZrO2ライブラリーには、二元含浸組成物すなわちPt−Ce/ZrO2(横列11)およびAu−Ce/ZrO2(縦列1)が含まれる。要するに、二つの50PTライブラリーは、図6Dにグラフに表したように、試験ウェハのそれぞれの部分にCeO2およびZrO2担体を沈着させることによって調製した。液体処理ロボットを使用して、担体を液体媒体中のスラリーとして試験ウェハ上に沈着させ、引き続きその試験ウェハを乾燥して乾燥担体を形成した。その後、CeO2担体を含む試験ウェハの区域に、図6E(右上手のライブラリー)に示したような異なる相対的な化学量論で、Pt、AuおよびAgの塩を含浸させた。同様に、ZrO2担体を含む試験ウェハの区域に、図6E(左下手のライブラリー)に示したような異なる相対的な化学量論で、Pt、AuおよびCeの塩を含浸させた。図6Fは、相対量の触媒担体を含む複合体ライブラリー設計のグラフ表現である。
【0092】
試験した本発明の触媒材料の具体的組成については、選抜したライブラリーについての以下の実施例中で詳述する。
【0093】
試験ウェハ上のライブラリーの触媒組成物を比較するための基準として、石英製の各触媒試験ウェハ上に性能水準点および対照実験(例えばブランク)も準備した。水準点となる触媒材料配合物としては、約3%(触媒および担体の総重量に対する重量で)のPt触媒装填量を有するPt/ジルコニア触媒標準を選んだ。Pt/ジルコニア標準は、典型的には、例えば重量で1.0%または2.5%のPt原液3μLをウェハ上のジルコニア担体に含浸させ、その後、仮焼および還元前処理を施すことによって合成した。
【0094】
典型的には、ウェハを、空気中、300℃〜500℃の範囲の温度で仮焼、および/または5%水素の連続気流下、約200℃〜約500℃の範囲の温度(例えば、450℃)で還元する。具体的な処理手順は、実施例の各ライブラリーについて以下に記載する。
【0095】
走査型質量分析計を利用して試験する場合には、触媒ウェハを、XY平面で移動できるウェハ保持台に載せた。走査型質量分析計の吸入/走査プローブは、Z方向(ウェハ保持台に対するXY平面の移動に対して垂直方向)に移動し、ウェハの直近に接近して独立した各触媒構成物質を取り囲み、供給ガスを配送し、生成ガス流を触媒表面から四重極型質量分析計に移動させる。各構成物質は、約200℃〜約600℃の範囲の接近可能な温度を見越して、CO2レーザーを利用して背面から局部的に加熱した。質量分析計で、水素、メタン、水、一酸化炭素、アルゴン、二酸化炭素およびクリプトンに対応する7種の質量、すなわち2、16、18、28、40、44および84をそれぞれ監視した。
【0096】
典型的には、例えば約200℃、250℃および/または300℃の様々な反応温度で触媒組成物を試験した。特に、LTS用配合物の場合には、触媒活性の試験を200℃の低い反応温度から始める。供給ガスは、典型的には、51.6%のH2、7.4%のKr、7.4%のCO、7.4%のCO2および26.2%のH2Oから構成される。単一型ガスシリンダー中でH2、CO、CO2およびKr内部標準を事前混合し、次いで供給水と混合する。バーンステッドナノピュアウルトラウォーター装置で製造した処理水(27.5℃で18.1メガオーム−cm)を脱気しないで使用した。
【0097】
データ処理および解析
データ解析は、CO転化率をCO2生成量に対してプロットした物質収支プロットに基づいて行った。COおよびCO2に対する質量分析計の信号は、較正しなかったが、Kr−標準化質量分析計信号を基準にした。データを視覚化するために、ソフトウェアパッケージ、ソフトファイヤー(商標)(マサチューセッツ州、ソマービレのソフトファイヤー社より販売)を使用した。
【0098】
WGS反応に関するCO2生成量に対するCO転化率の代表的なプロットを図7Aに示すが、説明の目的で、図7Aには、図6D〜6Fに関連して前に説明した2つの三元触媒系、すなわちPt−Au−Ag/CeO2触媒ライブラリーおよびPt−Au−Ce/ZrO2触媒ライブラリーを含めた。これらライブラリーの触媒組成物を4つの温度、すなわち250℃、300℃、350℃および400℃でスクリーニングした。図7Bに模式図を参照すると、活性でかつ高選択性のWGS触媒(例えば、図7Bの線I)は、比較的高い転化率(すなわち、熱力学的平衡転化率に近いCO転化率(図7Bの「TE」点))においてさえ、水性ガスシフト反応に対する物質収支によって決まる線(「WGS対角線」)に、最小の偏差で接近する。高活性触媒は、競合するメタン化反応への移行により(図7Cの点「M」)WGS対角線から逸脱し始める。しかし、このような逸脱を示す触媒組成物は、このような逸脱が発生する転化率のレベルに応じてWGS触媒としてやはり有用である。例えば、より高い転化率レベルでようやくWGS対角線から逸脱する触媒(図7Bの線II)は、総括転化率をWGS対角線に近い操作点まで低下させることによって(例えば、触媒装填量を低下させること、あるいは空間速度を増加させることによって)有効なWGS触媒として採用できる。対照的に、低い転化率レベルでWGS対角線から逸脱する触媒(例えば、図7Bの線III)は、低い転化率においてさえWGS反応に対して選択的でないので、WGS触媒としては比較的あまり有効ではない。温度は、熱力学的最大CO転化率に影響を及ぼし、低い温度は一般に触媒活性を低下させるので、物質収支WGS対角線からの逸脱点および逸脱軌道の全体形状に影響を与える。組成物によっては、温度を下げると、WGS物質収支対角線により接近するWGS軌道によって示されるより選択性の高い触媒となる(図7C参照)。再び図7Aを参照すると、Pt−Au−Ag/CeO2およびPt−Au−Ce/ZrO2触媒組成物は、各スクリーニング温度、特に低い温度において活性で選択性のあるWGS触媒であることが判る。
【0099】
一般に、所定のウェハ基板上の組成物は、走査型質量分析計を使用して、共通の実験操作で一緒に試験され、結果も一緒に検討される。本願において、基板上の特定ライブラリーの候補触媒組成物(例えば、3種以上の金属を含む3元またはより多元の触媒)を、そのウェハ上に含めたPt/ZrO2基準組成物との比較に基づいて、WGS反応のための活性で選択性のある工業用触媒としての見込みのある触媒組成物と考えた。具体的には、そのライブラリー中の有意な数の触媒組成物が、触媒性能に関して、ウェハ基板に含めたPt/ZrO2標準組成物に有利に匹敵するとの結果が得られたら、そのライブラリーの触媒材料は特に好ましいWGS触媒であると考えた。ここで、有意な数の組成物とは、一般に、所定ライブラリー中の供試組成物の少なくとも3つであると考えた。また、ここで、有利に匹敵するとは、その組成物が、転化率、選択性および触媒装填量などの要因を考慮した場合に、そのウェハ上の標準と同等またはそれ以上に良好な触媒性能を有することを意味する。若干のライブラリー構成物質のみがPt/ZrO2標準に有利に匹敵し、そのライブラリー内のその他の組成物がPt/ZrO2標準に匹敵するとは言い難い状況でも、多くの場合、所定ライブラリーのすべての触媒組成物を活性で選択性のあるWGS触媒として肯定的に評価した。このような状況で、標準に対して有利に匹敵すると言うには若干不足しているライブラリー構成物質をも含める根拠は、これらの構成物質が現実にWGS反応を前向きに触媒することである(すなわち、この反応に対する触媒として有効であった)。さらに、このような組成物は、ライブラリーフォーマットでの実際の試験中に起こったよりもより最適に調節された条件(例えば、合成条件、処理条件および/または試験条件(例えば温度))の下で合成および/または試験できること、および、重要なことであるが、試験される特定の触媒材料に対する最適条件は、Pt/ZrO2標準に対する最適条件とは異なるかもしれない、すなわち、実際の試験条件が若干の特定構成物質に対するよりも標準に対する最適条件に近かったかもしれないことに留意されたい。したがって、本明細書中で示した本発明の一般的定義範囲で、合成、処理および/またはスクリーニング条件を最適化すると、本発明を裏付ける実験で示されたものよりもさらにより活性で選択性のあるWGS触媒が現れることが、明らかに予想された。それ故、前記の考察から考えて、各特許請求の範囲に記載された組成物で定義されるすべての範囲の組成物(例えば、各3成分触媒材料、または各4成分触媒材料)を、WGS反応を触媒するのに有効であるとして説明した。所望のまたは必要とされる注目する工業的応用に応じて、各種の特定触媒組成物に関連する各種の特定の利点を有するさらなる最適化が検討される。このような最適化は、例えば、すべての目的についてそのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,149,882号、あるいはWO01/66245およびそれに対応するベルグらが2001年3月7日に「平行流プロセス最適化反応器」の名称で出願した米国特許出願第09/801,390号、およびベルグらが2001年3月7日に「可変供給物組成を有する平行流反応器」の名称で出願した米国特許出願第09/801,389号に記載されたような技術および装置を使用して達成できる。
【0100】
さらに、最初のライブラリーのスクリーニング結果に基づいて、選択的な追加の「重点」ライブラリーを選択的に調製、試験して、最初のライブラリースクリーニングの結果を確認し、さらに、場合によっては同一および/または異なる条件下でより良好に機能する組成物を確認した。重点ライブラリー用の試験ウェハには、典型的には、各試験ウェハ上に1個または複数のライブラリー(例えば、関連する三元組成物A、B、C)を形成して、4インチウェハ基板上に形成された約225種の異なる候補触媒組成物を含めた。さらに、所定ライブラリーの金属含有組成物を典型的には異なる相対比率で組み合わせて、各成分について約0%〜約100%の範囲の化学量論を有し、かつ、例えば約10%弱、典型的には約2%弱の化学量論的増分(例えば、「56点三元」に対して)を有する触媒を形成した。重点ライブラリーについては、例えばWO00/17413でより一般的に説明されている。このような重点ライブラリーを、初めのライブラリーに対する前記実験計画に従って評価した。
【0101】
質量分析計から得られる個々のガスに対する未処理残ガス分析計([rga])のシグナル値は未較正であり、したがって、異なるガスを直接比較できない。対照としてメタン(質量16)のデータを集めた。典型的には、クリプトン(質量84)に対する未処理rgaシグナルを利用してシグナルを標準化し、ガスの流速変動の影響を取り除く。このようにして、各ライブラリー構成物質に対して標準化シグナルを、例えばsH2O=未処理H2O/未処理Kr、sCO=未処理CO/未処理Kr、sCO2=未処理CO2/未処理Kr等々として求めた。
【0102】
すべてのブランクライブラリー構成物質、すなわち組成物がせいぜい担体のみを含むライブラリー構成物質に対する標準化シグナルの平均値から、ブランクすなわち入り口濃度を求めた。例えば、bavg2O=ライブラリー中のすべてのブランク構成物質に対する平均のsH2O、bavgCO=ライブラリー中のすべてのブランク構成物質に対する平均のsCO、等々。
【0103】
ブランク平均を用いて転化パーセントを計算し、入力レベル(例えば、bavgCO)および注目する各ライブラリー構成物質に対する出力としての標準化シグナル(例えば、sCO)を推算する。したがって、各ライブラリー構成物質に対して、COconversion=100×(bavgCO−sCO)/bavgCO、およびH2conversion=100×(bavg2O−sH2O)/bavg2Oである。
【0104】
一酸化炭素(CO)から二酸化炭素(CO2)への選択性は、CO2生成量(sCO2−bavgCO2)をCO消費量(bavgCO−sCO)で割ることによって推算する。CO2とCOのシグナルは、rgaシグナルが未較正なので直接には比較できない。しかし、高選択性標準触媒組成物の挙動に基づいて、経験的変換定数(0.6CO2単位=1CO単位)が導かれている。高選択性標準触媒組成物の選択性は、低い転化率で100%の選択性に近い。したがって、それぞれのライブラリー構成物質に関しては、COからCO2への推算選択性=100×0.6×(sCO2−bavgCO2)/(bavgCO−sCO)である。COの消費速度が遅いと、大きく変動する結果を生じさせることができ、このようにして、人為的にCO2選択性を0〜140%の範囲に制限することによって、CO2選択性の値の再現性を維持する。
【0105】
以下の実施例は、本願発明の確認につながるライブラリーのスクリーニングに関する典型例である。
実施例1
マスターバッチとしてスラリー分注することによって、4インチ石英ウェハを15の異なる担体でプレコートした。担体の沈着は、次の担体、すなわち、SiO2(PQ−MA1620)、99.5%WSi2、SiO2(SiO2 Kieselgurの80:20混合物、BASF)、SiO2(アエロジル200)、SiO2(KA160)、SiO2(SS5131)、SiO2(コンデアシラロックス5/150)、SiO2(ノートン XS16080)、SiO2(エングルハード シリパール AF125)、SiO2LSA、γ−Al23 カタロックス SBa−150、Vをドープしたゾル−ゲルジルコニア(ノートン XZ16052)PtCeマスターバッチ1および2を用いて実施した。各スラリーは、エチレングリコール(EG):H2Oが50:50の混合液4mL中の担体1gから構成した。ただし、SiO2 PQ−MA1620はEG/H2Oが50:50の混合液8mLに1gの担体を添加して調製し、ZrO2 XZ16052はEG/H2O/メチルオキシド(MEO)が32.5:30:37.5の混合液4mLに1.5gを添加して調製した。
【0106】
各担体のスラリー約3μLをウェハ上の垂直15点縦列に分注した。縦列1〜15の分注処置を完了した後、サンプルを70℃で10分間オーブン乾燥した。対応する最初の横列/最後の縦列の位置に3μLのPt(NH32(NO22原液(2.5%Pt)をスポットすることによって6つの内部標準を合成した。
【0107】
次いで、先ずカバロで対応する原液バイエル瓶からマイクロタイタープレートに分注し、そして蒸留水で希釈することによって、担体を、上端から下端まで2×7点単一縦列の1M NaOH勾配液で含浸した。続いて、マイクロタイタープレートのパターンをウェハ上にレプリカ移送し(ウェル当たり2.5μLの分注容積)、ウェハ上に2つの7×15点長方桝目を形成した(横列9番はNaOHで含浸しない)。
【0108】
次いで、ウェハを室温で2時間乾燥し、そして2分間オーブン乾燥した。原液バイエル瓶からPt(NH32(NO22(1%Pt)をウェハ上に均一分注して最後の含浸とした(ウェル当たり2.5μLの分注容積、15×15点長方桝目を得る)。
【0109】
ウェハを室温で2時間乾燥し、5%H2/N2中、200℃で2時間還元した。最初の横列および最後の縦列の5箇所に外部標準として市販触媒をスラリー添加した(3μL)。図1A〜1Dを参照のこと。
【0110】
次いで、還元されたライブラリーを、200℃、230℃、および260℃で、H2/CO/CO2/H2O混合供給流を用いてWGS活性について走査型質量分析計でスクリーニングした。図1E〜1Gを参照のこと。
【0111】
この実験により、各種のシリカ、アルミナおよびジルコニア担体上のPtおよびNaの各種触媒配合物の中で、活性で選択性のあるWGS触媒配合物を明らかにした。特に重要なものは、230℃〜260℃の温度範囲においてZrO2に担持したPt−Naよりも高い活性を示した、2種のシリカ、すなわちエングルハード シリパール AF125およびコンデア シラロックス5/150、ならびにγ−アルミナ、すなわちコンデア カタロックス SBa−150上のPt−Na配合物であった。
実施例2
ウェハ上の15×15正方桝目の各構成物質に3μL(EG/H2Oが50:50の混合液4mLに1gのγ−Al23)をスラリーで分注することによって、4インチ石英ウェハをγ−Al23(カタロックス Sba−150)でプレコートした。次いで、ウェハを70℃で12分間オーブン乾燥した。
【0112】
対応する最初の横列/最後の縦列の位置にカバロで3μLのPt(NH32(NO22原液(2.5%Pt)をスポットすることによって、6つの内部標準を合成した。ウェハの縦列C1〜C5にNa2Pt(OH)6原液(粉末から、1%Pt)を分注することによって(ウェル当たり2.5μL)、ウェハを均一なPt層で含浸した。
【0113】
次いで、カバロでそれぞれの原液バイエル瓶からマイクロタイタープレートに分注し、そして蒸留水で希釈することによって、ウェハの縦列C6〜C15を上端から下端まで、次の金属勾配液、すなわちZrO(NO32、La(NO33、Y(NO33、Ce(NO33、H2MoO4、Fe(NO33、Co(NO32、ZrO(OAc)2、Mn(NO32およびKRuO4で含浸した。続いて、マイクロタイタープレートのパターンをウェハ上にレプリカ移送し(ウェル当たり2.5μLの分注容積)、ウェハ上に10×15点長方桝目を形成した(金属勾配を有する10本の縦列)。
【0114】
ウェハを室温で3.5時間乾燥し、次いで、カバロで対応する原液バイエル瓶からマイクロタイタープレートに分注し、そして蒸留水で希釈することによって、最初の4本の各縦列を個別にそれぞれ、CsOH−NaOH、LiOH−NaOH,RbOH−NaOHおよびKOH−NaOHを含む塩基勾配液(0.5M、逆勾配)で、および縦列5〜15をNaOH(下端から上端までの勾配を有する1M塩基)を含む塩基勾配液でコーティングした。続いて、マイクロタイタープレートのパターンをウェハ上にレプリカ移送し(ウェル当たり2.5μLの分注容積)、ウェハ上に15×15点長方桝目を形成した(塩基勾配を有する15本の縦列)。ウェハを室温で1夜乾燥し、そして2分間オーブン乾燥した。
【0115】
3番目の層としてNa2Pt(OH)6(粉末から、1%Pt)の原液バイエル瓶からウェハの縦列6〜15に均一分注して最後の含浸とした(ウェル当たり2.5μLの分注容積、10×15点正方桝目を得る)。最初の横列および最後の縦列の5箇所に外部標準として市販触媒をスラリー添加した(3μL)。
【0116】
ウェハを室温で4時間乾燥し、次いで、空気中、450℃で2時間仮焼きし、続いて5%H2/N2を用いて250℃で2時間還元した。図2A〜2Fを参照のこと。
【0117】
ライブラリーを、200℃、230℃、および260℃で、H2/CO/CO2/H2O混合供給流を用いてWGS活性についてSMSでスクリーニングした。
【0118】
この実験により、アルミナ上の各種Pt−Na−{Li、K、Rb、Cs}触媒配合物の中で、活性で選択性のあるWGS触媒配合物、およびLi−Na二元組合せの間の相乗効果を明らかにした。
実施例3
EG/H2O/MEOが32.5:30:37.5の混合液4mL中の触媒1.5gからそれぞれのスラリーを調製し、触媒粉末(事前形成市販触媒、すなわち、1%Ir/γ−Al23(還元済)、5%Ir/CaCO3、0.5%Pd/γ−Al23、5%Pd/BaCO3(還元済)、5%Ru/γ−Al23(還元済))をスラリーで分注することによって、4インチの石英ウェハを5種の市販触媒(アルファ Aesarおよびアルドリッチが供給)でプレコートした。5本の縦列間隔で3本の別な縦列に各担体溶液を分注した。次いで、ウェハを70℃で12分間オーブン乾燥した。対応する最初の横列/最後の縦列の位置に3μLのPt(NH32(NO22原液(2.5%Pt)をスポットすることによって6つの内部標準を合成した。次いで、カバロで2つの原液バイエル瓶からマイクロタイタープレートに分注し、続いてマイクロタイタープレートのパターンをウェハに移送することによって(ウェル当たり2.5μLの分注容積、ウェハ上に5つの各縦列のレプリカが3つの5×15長方桝目を形成する)、ウェハを、縦列2本のNaOH(1M)および縦列1本のPt(NH32(NO22(2%)の15点ドーパント勾配液で含浸した。
【0119】
ウェハを室温で2時間乾燥し、次いで、カバロで原液バイエル瓶からマイクロタイタープレートに分注し、続いて15Pのマイクロタイタープレート縦列(Pt勾配液)をウェハ上に移送することによって(ウェル当たり2.5μLの分注容積、15PのPt勾配の5レプリカがウェハ上に5×15長方桝目を形成)、5本の縦列を、Pt(NH32(NO22(2%)の15点ドーパント逆勾配液で含浸した。
【0120】
ウェハを室温で2時間乾燥し、5%H2/N2流中、250℃で2時間還元した。最初の横列および最後の縦列の5箇所に外部標準として市販の触媒をスラリー添加した(触媒スラリー3μL)。図3A〜3Dを参照のこと。
【0121】
次いで、還元されたライブラリーを、200℃、250℃、および300℃で、H2/CO/CO2/H2O混合供給流を用いてWGS活性についてSMSでスクリーニングした。図3Eおよび3Fを参照のこと。
【0122】
この実験により、アルミナ上の各種Ru−Na触媒配合物の中で、活性で選択性のあるWGS触媒配合物を明らかにした。
実施例4
10ドラム(37mL)のバイエル瓶中に秤量してある0.75gのZrO2支持体(ノートン、80〜120メッシュ)のインシピエントウェットネス含浸を利用してスケールアップ用触媒サンプルを調製した。次いで、金属前駆物質塩の水溶液を、Pt、そしてLi、K、およびNaの1種の順序で添加した。前駆物質塩溶液は、水酸化テトラアンミン白金(II)溶液(9.09%Pt(w/w))、水酸化リチウム一水和物(2.5M)、水酸化カリウム(13.92%K(w/w))、および水酸化ナトリウム(3.0N)とした。出発試薬は、すべて、アルドリッチ、ストレム、またはアルファから購入した研究グレードと称するものを使用した。各金属の添加に続いて、触媒を80℃で1夜乾燥し、次いで、空気中で次の通り仮焼きした。すなわち
Ptの添加後 −− 300℃で3時間
Na、Li、またはKの添加後 −− 300℃で3時間
Na、LiまたはKの添加に続き、触媒を300℃で3時間仮焼きし、次いで、触媒を10%H2/N2供給流中、300℃で3時間、その場で還元した。
【0123】
触媒の試験条件
触媒は、固定床反応器で試験した。約0.15gの触媒を秤量し、同一質量のSiCと混合した。混合物を反応器に詰め、反応温度まで加熱した。反応ガスは、質量流量制御器(ブルックス)を経由して、定量ポンプ(クイジックス)を用いて導入される水と一緒に送り出した。反応混合物の組成は次の通り、すなわちH2が50%、COが10%、CO2が10%、およびH2Oが30%とした。反応物の混合物は、予熱器を通過させた後に、触媒床と接触させた。反応に続き、マイクロガスクロマトグラフ(バリアンインスツルメント、または島津)を使用して生成ガスを分析した。性能図(図4)の組成データは、水を除外した乾燥基準による。
【0124】
試験結果
図4は、50,000h-1のガス時間空間速度でのスケールアップ試験後の生成物流中のCO組成を示す。
【0125】
【表1】

【0126】
実施例5
10ドラム(37mL)のバイエル瓶中に秤量してある0.75gのZrO2支持体(ノートン、80〜120メッシュ)のインシピエントウェットネス含浸を利用してスケールアップ用触媒サンプルを調製した。次いで、金属前駆物質塩の水溶液を、Re、Pt、そしてNa、KおよびLiの1種の順序で添加した。前駆物質塩溶液は、水酸化テトラアンミン白金(II)溶液(9.09%Pt(w/w))、過レニウム酸(10%(w/w)Re)、水酸化ナトリウム(3.0N)、水酸化カリウム(13.92%(w/w)K)、および水酸化リチウム一水和物(2.5M)とした。出発試薬は、すべて、アルドリッチ、ストレム、またはアルファから購入した研究グレードと称するものを使用した。各金属の添加に続いて、触媒を80℃で1夜乾燥し、次いで、空気中で次の通り仮焼きした。すなわち
Ptの添加後 −− 300℃で3時間
Reの添加後 −− 450℃で3時間
Na、K、またはLiの添加に続き、触媒を300℃で3時間仮焼きし、次いで、触媒を10%H2/N2供給流中、300℃で3時間、その場で還元した。
【0127】
触媒の試験条件
触媒は、固定床反応器で試験した。約0.15gの触媒を秤量し、同一質量のSiCと混合した。混合物を反応器に詰め、反応温度まで加熱した。反応ガスは、質量流量制御器(ブルックス)を経由して、定量ポンプ(クイジックス)を用いて導入される水と一緒に送り出した。反応混合物の組成は次の通り、すなわちH2が50%、COが10%、CO2が10%、およびH2Oが30%とした。反応物の混合物は、予熱器を通過させた後に、触媒床と接触させた。反応に続き、マイクロガスクロマトグラフ(バリアンインスツルメント、または島津)を使用して生成ガスを分析した。性能図(図5)の組成データは、水を除外した乾燥基準による。
【0128】
試験結果
図5は、50,000h-1のガス時間空間速度でのスケールアップ試験後の生成物流中のCO組成を示す。
【0129】
【表2】

【0130】
実施例6
10ドラム(37mL)のバイエル瓶中に秤量してある0.75gのZrO2支持体(ノートン、80〜120メッシュ)のインシピエントウェットネス含浸を利用してスケールアップ用触媒サンプルを調製した。次いで、金属前駆物質塩の水溶液を、最初にPt,次いでNaを次の重量パーセント水準すなわち0、1.5、3.0、4.5、6.0、7.5、および9.0で添加した。前駆物質塩溶液は、水酸化テトラアンミン白金(II)溶液(9.09%Pt(w/w))、および水酸化ナトリウム(3.0N)とした。出発試薬は、すべて、アルドリッチ、ストレム、またはアルファから購入した研究グレードと称するものを使用した。各金属の添加に続いて、触媒を80℃で1夜乾燥し、次いで、空気中で次の通り仮焼きした。すなわち
Ptの添加後 −− 300℃で3時間
Naの添加に続き、触媒を300℃で3時間仮焼きし、次いで、触媒を10%H2/N2供給流中、300℃で3時間、その場で還元した。
【0131】
触媒の試験条件
触媒は、固定床反応器で試験した。約0.15gの触媒を秤量し、同一質量のSiCと混合した。混合物を反応器に詰め、反応温度まで加熱した。反応ガスは、質量流量制御器(ブルックス)を経由して、定量ポンプ(クイジックス)を用いて導入される水と一緒に送り出した。反応混合物の組成は次の通り、すなわちH2が50%、COが10%、CO2が10%、およびH2Oが30%とした。反応物の混合物は、予熱器を通過させた後に、触媒床と接触させた。反応に続き、マイクロガスクロマトグラフ(バリアンインスツルメント、または島津)を使用して生成ガスを分析した。性能図(図8)の組成データは、水を除外した乾燥基準による。
【0132】
試験結果
図8は、50,000h-1のガス時間空間速度でのスケールアップ試験後の生成物流中のCO組成を示す。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1A】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図1B】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図1C】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図1D】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図1E】異なる温度のWGS条件下での、ウェハに対するCO転化率対CO2生成に関するスポットファイヤープロットを示す図である。
【図1F】異なる温度のWGS条件下での、ウェハに対するCO転化率対CO2生成に関するスポットファイヤープロットを示す図である。
【図1G】異なる温度のWGS条件下での、ウェハに対するCO転化率対CO2生成に関するスポットファイヤープロットを示す図である。
【図2A】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図2B】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図2C】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図2D】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図2E】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図2F】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図3A】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図3B】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図3C】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図3D】ライブラリー試験ウェハの製造過程を示す図である。
【図3E】異なる温度のWGS条件下での、ウェハに対するCO転化率対CO2生成に関するスポットファイヤープロットを示す図である。
【図3F】異なる温度のWGS条件下での、ウェハに対するCO転化率対CO2生成に関するスポットファイヤープロットを示す図である。
【図4】WGS条件下でのスケールアップした触媒サンプルにおけるCO濃度対温度に関するプロットを示す図である。
【図5】WGS条件下での、スケールアップした触媒サンプルにおけるCO濃度対温度に関するプロットを示す図である。
【図6A】各種の典型的ライブラリー試験ウェハの組成物構成を示す図である。
【図6B】各種の典型的ライブラリー試験ウェハの組成物構成を示す図である。
【図6C】各種の典型的ライブラリー試験ウェハの組成物構成を示す図である。
【図6D】各種の典型的ライブラリー試験ウェハの組成物構成を示す図である。
【図6E】各種の典型的ライブラリー試験ウェハの組成物構成を示す図である。
【図6F】各種の典型的ライブラリー試験ウェハの組成物構成を示す図である。
【図7A】異なる温度での原型ライブラリー試験ウェハに対するCO転化率対CO2生成に関する代表的プロットを示す図である。
【図7B】WGS物質収支に対する触媒の選択性および活性の影響示す図である。
【図7C】WGS条件下での触媒性能に対する温度の影響示す図である。
【図8】WGS条件下での、スケールアップした触媒サンプルにおけるCO濃度対温度に関するプロットを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素含有ガスを、約260℃未満の温度で水の存在下、水性ガスシフト触媒と接触させる水素富化ガスの製造方法であって、該水性ガスシフト触媒が、
a)Pt、Ru、それらの酸化物、およびそれらの混合物の少なくとも1種、および
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、
を含む方法。
【請求項2】
水性ガスシフト触媒がLi、その酸化物またはそれらの混合物をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水性ガスシフト触媒が、
a)Pt、その酸化物またはそれらの混合物、および
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、
を含む、請求項1記載の方法
【請求項4】
水性ガスシフト触媒が、
a)Ru、その酸化物またはそれらの混合物
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
一酸化炭素含有ガスが合成ガスである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
水性ガスシフト触媒が、
a)Pt、その酸化物またはそれらの混合物、
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、および
c)Li、その酸化物またはそれらの混合物、
を含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
水性ガスシフト触媒が、
a)Ru、その酸化物またはそれらの混合物、
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、および
c)Li、その酸化物またはそれらの混合物、
を含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
水性ガスシフト触媒が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、マグネシア、ランタニア、ニオビア、イットリアおよび酸化鉄、ならびにそれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成物質を含む担体上に担持されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
アルミナがZrでドープされる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
担体がジルコニアを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
約50バールを超えない圧力で、一酸化炭素含有ガスを水性ガスシフト触媒と接触させる、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
約15バールを超えない圧力で、一酸化炭素含有ガスを水性ガスシフト触媒と接触させる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
約1バールを超えない圧力で、一酸化炭素含有ガスを水性ガスシフト触媒と接触させる、請求項11記載の方法。
【請求項14】
水性ガスシフト触媒が、該水性ガスシフト触媒中に存在するPtまたはRuを、全触媒成分プラス担体材料の合計重量に対して約0.01〜約10重量%含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
水性ガスシフト触媒が、該触媒中に存在するPtまたはRuを、約0.05〜約0.5重量%含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
約260℃未満の温度で水性ガスシフト反応を触媒する、
a)Pt、Ru、それらの酸化物およびそれらの混合物、および
b)Na、その酸化物およびそれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種、
を含む触媒。
【請求項17】
前記触媒がさらにLi、その酸化物またはそれらの混合物を含む、請求項16記載の触媒。
【請求項18】
Naの供給源がNaOH、Na2CO3またはNaHCO3である、請求項16記載の触媒。
【請求項19】
Liの供給源がLiOHである、請求項17記載の触媒。
【請求項20】
a)Pt、その酸化物またはそれらの混合物、および
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、
を含む、請求項16記載の触媒。
【請求項21】
a)Ru、その酸化物またはそれらの混合物、および
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、
を含む、請求項16記載の触媒。
【請求項22】
a)Pt、その酸化物またはそれらの混合物、
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、および
c)Li、その酸化物またはそれらの混合物、
を含む、請求項17記載の触媒。
【請求項23】
a)Ru、その酸化物またはそれらの混合物、
b)Na、その酸化物またはそれらの混合物、および
c)Li、その酸化物またはそれらの混合物、
を含む、請求項17記載の触媒。
【請求項24】
触媒組成物が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、マグネシア、ランタニア、ニオビア、イットリア、酸化鉄、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む担体上に担持される、請求項16〜23のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項25】
担体がジルコニア、アルミナまたはシリカを含む、請求項24記載の触媒。
【請求項26】
水性ガスシフト触媒が、該水性ガスシフト触媒中に存在するPtまたはRuを、全触媒成分プラス担体材料の合計重量に対して約0.01〜約10重量%含む、請求項24記載の触媒。
【請求項27】
水性ガスシフト触媒が、該水性ガスシフト触媒中に存在するPtまたはRuを、約0.05〜約0.5重量%含む、請求項26記載の触媒。
【請求項28】
炭化水素または代替炭化水素燃料から水素富化ガスを生成させるための燃料処理系であって、
炭化水素または代替炭化水素燃料を含む燃料反応物流を、一酸化炭素および水を含む改質された生成物流に変換するための燃料改質器で、該燃料改質器は、反応物流を受け入れるための入り口、反応物流を生成物流に変換するための反応室、および生成物流を排出するための出口を有する燃料改質器と、
約260℃未満の温度で前記水性ガスシフト反応を実施するための水性ガスシフト反応器で、該水性ガスシフト反応器は、燃料改質器の生成物流からの一酸化炭素および水を含む水性ガスシフト供給流を受け入れるための入り口、水性ガスシフト供給流から水素および二酸化炭素を生成させるのに効果的な請求項16から23の触媒のいずれか1種から選択される水性ガスシフト触媒を含む反応室、および得られる水素富化ガスを排出するための出口を含む水性ガスシフト反応器と、
水性ガスシフト反応器の反応室温度を、約300℃を超えない温度で維持するように構成された温度制御器と、
を含む燃料処理系。

【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【公表番号】特表2006−511333(P2006−511333A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563955(P2004−563955)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/040945
【国際公開番号】WO2004/058635
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(500006557)シミックス・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Symyx Technologies,Inc.
【住所又は居所原語表記】3100 Central Expressway,Santa Clara,California,USA
【Fターム(参考)】