説明

中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物及びその構築方法

【課題】 バリアフリーに優れ、且つ省スペース化を図ることのできる、構築容易な中層建築用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物を提供する。
【解決手段】 廊下又は折返し階段に併設する中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物1であって、基礎上に、中層建築物2側に開口する開口部4a及びその対面の地表側に開口する開口部4bを側壁に備えた筒状の最下層ブロック5と、該最下層ブロック5上に中層建築物2側に開口する開口部4aを側壁に備えた筒状の中層ブロック6と、該中層ブロック6上に筒状の最上層ブロック7とを積み重ねてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータが設置されていない既存の中層集合住宅や校舎等の中層建築物にエレベータを用意に設置することができるバリアフリーに優れた中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅を使用したまま、短期間で安全且つローコストでの設置が可能な、高齢者向けの集合住宅のエレベータ建屋が提供されている。該エレベータ建屋は、住宅棟の外部にエレベータ建屋を設置し、同エレベータ建屋と住宅棟との間に、住宅棟に既設された折返し階段の踊場とエレベータの出入口とを接続する連絡床を設置し、該連絡床を吊り材を用いてエレベータ建屋から張り出させた構造である。(特許文献1)
【0003】
また、従来、本願出願人により、エレベータが設置されていない既設の一般的な中層集合住宅に、エレベータを簡易に設置することができる中層集合住宅用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物が提供されている。該隔壁構造物は、平面視コ字形のブロックを中層集合住宅の廊下又は折返し階段の方に開口して基礎上に複数積層した構造であり、各ブロックの開口部下端に設けた橋絡部を中層集合住宅の廊下又は折返し階段の踊場に接続することにより、エレベータと中層集合住宅との往来を可能にしたものである。(特許文献2)
【0004】
他にも、既存の集合住宅の外部折返し階段の側にエレベータ構造物を構築し、該エレベータ構造物と既存の集合住宅の2階以上のフロアとを同一面に位置する新設床で連結するエレベータの構築方法が開示されている。該方法により構築されたエレベータ構造物によれば、エレベータの出入口と各階のフロアが同じ高さで新設床によって接続されるので、居住性の向上を図ることができる。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−256691号公報
【特許文献2】特許第3168337号公報
【特許文献3】特開2001−279934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のエレベータ建屋及び特許文献2に記載の隔壁構造物を折返し階段101の踊場102に接続した場合には、エレベータの出入口103と各フロア104とを往来するのに、折返し階段101を半階分昇降する必要があり、車椅子や歩行補助器具などが必要な高齢者や身体障害者及びその介護者にとってその昇降が負担となっていた(図13参照)。
【0007】
また、特許文献2に記載の隔壁構造物を廊下105側に設置した場合、エレベータの最下の出入口が1階フロアにしかないため、地表面と1階フロアの廊下との往来用の車椅子用スロープ106を別途設置する必要があるところ(図14参照)、その設置スペースが無駄になってしまい、さらに中層集合住宅の立地上車椅子用スロープを設置すらできない場合も想定される。また、たとえ車椅子用スロープを設置したとしても、折返しスロープを車椅子や歩行補助器具などが必要な高齢者や身体障害者が昇降するには距離的にも大変であり、介護者にとっても負担が大きかった。
【0008】
また、特許文献3に記載の技術では、地表面と1階フロアとの昇降に半階分の階段を上がる必要があり、車椅子や歩行補助器具などが必要な高齢者や身体障害者及びその介護者にとってその昇降が負担となっていた。なお、該文献には記載されていないが、地表面から1階フロアまでの車椅子用スロープが設置された中層集合住宅も一般的には建築されているものの、上記引用文献2に記載の発明と同様、車椅子用スロープを設置するスペースが必要であったり、車椅子や歩行補助器具などが必要な高齢者や身体障害者及びその介護者の負担なったりするという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、バリアフリーに優れ、且つ省スペース化を図ることのできる構築容易な中層建築用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物及びその構築方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成した。すなわち、本発明に係る請求項1に記載の隔壁構造物は、廊下又は折返し階段に併設する中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物であって、基礎上に、中層建築物側に開口する開口部及びその対面の地表側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の最下層ブロックと、該最下層ブロック上に中層建築物側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の中層ブロックと、該中層ブロック上に筒状の最上層ブロックとを積み重ねてなることを特徴をしている。
【0011】
また、本発明に係る請求項2に記載の隔壁構造物は、廊下又は折返し階段に併設する中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物であって、基礎上に、中層建築物側に開口する開口部及びその対面の地表側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の最下層ブロックと、該最下層ブロック上に中層建築物側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の中層ブロックと、該中層ブロック上に筒状の最上層ブロックとを積み重ね、各ブロックの側壁に基礎上から最上層ブロックまでを連通する鉛直方向の連通孔を所定の間隔で複数設け、該連通孔に軸芯を挿通して前記各ブロックを連結するとともに、該連通孔に硬化性ペースト材を充填して各ブロックを一体化してなることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る請求項3に記載の隔壁構造物の構築方法は、廊下又は折返し階段に併設する中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物の構築方法であって、基礎上に、中層建築物側に開口する開口部及びその対面の地表側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の最下層ブロックを載置する工程と、前記最下層ブロック上に中層建築物側に開口する開口部を備えた複数の筒状の中層ブロックを積み重ねる工程と前記中層ブロック上に最上層ブロックを積み重ねる工程とを含み、積み重ねられた複数のブロック内にかご室の昇降路を形成することを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明に係る請求項4に記載の隔壁構造物の構築方法は、廊下又は折返し階段に併設する中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物の構築方法であって、筒状で側壁に鉛直方向の連通孔が複数形成された最下層ブロックを載置する基礎内に、該連通孔内に挿通する軸芯の下端部を埋め込む工程と、中層建築物側へと開口する開口部及びその対面の地表側へと開口する開口部を備えた前記最下層ブロックを前記軸芯に連通孔を挿通させながら基礎上に載置し、該最下層ブロック上面の側壁周縁部に緩衝材を貼着する工程と、前記最下層ブロック上に、側壁に鉛直方向の連通孔を形成し、中層建築物側に開口する開口部を備えた筒状の中層ブロックを前記軸芯に連通孔を挿通させながら積み重ねて、該中層ブロック上面の側壁周縁部に緩衝材を貼着する工程と、前記中層ブロック上に、側壁に鉛直方向の連通孔を形成した筒状の最上層ブロックを前記軸芯に連通孔を挿通させながら積み重ねる工程と、前記各ブロック内に設けた連続する連通孔内及び各ブロック間の間隙に、硬化性ペースト材を充填する工程とを含み、積み重ねられた複数のブロック内にかご室昇降路を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1及び2に記載の隔壁構造物によれば、車椅子や歩行補助器具が必要な高齢者や身体障害者等にとって、地表面と各階フロアとの往来に半階分以上の階段或いは車椅子用スロープを使用せずに済むので、その負担を軽減することができ、また、車椅子用スロープを設置する必要がないので、省スペース化を図ることができる。
【0015】
また、本発明に係る請求項3に記載の隔壁構造物の構築方法によれば、各ブロックを積み重ねるだけで容易に前記請求項1に記載の隔壁構造物を構築することができ、さらに、請求項4に記載の隔壁構造物の構築方法によれば、各ブロックの側壁に設けられた鉛直方向の連通孔に軸芯を挿通することで各ブロックを連結し、該連通孔に硬化性ペースト材を注入するだけで容易に各ブロックを一体化することができるので、隔壁構造物を極めて容易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一実施例の隔壁構造物を示す外観斜視図である。
【図2】最下層ブロックの平面視断面図である。
【図3】ブロック及び軸芯を示す斜視図である。
【図4】最下層ブロック及び中層ブロックの接続部分の拡大断面図である。
【図5】最上層ブロック及び屋根の接続部分の拡大断面図である。
【図6】第二実施例の隔壁構造物を示す外観斜視図である。
【図7】2階以上のフロアを示す平面視断面図である。
【図8】最下層ブロックを示す拡大斜視断面図である。
【図9】1階フロアを示す平面視断面図である。
【図10】第三実施例の隔壁構造物を示す外観斜視図である。
【図11】2階以上のフロアを示す平面視断面図である。
【図12】1階フロアを示す平面視断面図である。
【図13】従来技術のエレベータ建屋を示す縦断面図である。
【図14】従来技術の隔壁構造物を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。まず、本発明に係る隔壁構造物1の第一の実施例について、図1乃至図5を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る隔壁構造物1の構成を示す外観斜視図である。該隔壁構造物1は、既存の中層建築物2に設けられている外部のく字状折返し階段(図示せず。)を撤去した後、基礎3上に中層建築物2側に開口する開口部4a及びその対面の地表側に開口する開口部4bを備えた筒状の最下層ブロック5を載置し、該最下層ブロック5上に中層建築物2側に開口する開口部4aを備えた筒状の中層ブロック6を積み重ね、さらに該中層ブロック6上に筒状の最上層ブロック7を積んで各ブロックを積層した後、該最上層ブロック上に屋根8を載置して構成される。この時、既存のく字状折返し階段(図示せず。)は撤去され、各階に対応した新設フロア9が形成されるとともに、該最下層ブロック5及び中層ブロック6に設けられた中層建築物2側に開口する開口部4aの下端と各階の新設フロア9とが連結される。また、最下層ブロック5に設けられた地表側に開口した開口部4bの下端は、エレベータかご室と地表面との往来が可能な高さに形成されている。
【0019】
次に、前記最下層ブロック5、中層ブロック6及び最下層ブロック5の構成を説明した上で、本発明に係る隔壁構造物1の構築方法について説明する。図2は、最下層ブロック5の平面視断面図である。筒状に形成された最下層ブロック5の側壁には、垂直方向に貫通する連通孔10が一定間隔で複数設けられている。なお、図示はしないが、中層ブロック6及び最上層ブロック7も該最下層ブロック5の平面視断面図と同様に、連通孔10が一定間隔で設けられている。
【0020】
次に、このように形成された各ブロックを積み重ねる様子を、図3を用いて説明する。まず、基礎3を打設する際に、各ブロックの高さよりも長いPC鋼棒からなる軸芯11の下端を前記連通孔10に対応するように複数本埋設しておき、該軸芯11を最下層ブロック7の連通孔10に対応して挿通させながら最下層ブロック7を載置して、ネジ溝が形成されている軸芯11の上端の一部を突出させる。そして、連通孔10と軸芯11の間に沿うように、上端がツボミ状に膨らんだ金属製のパイプ12を最下層ブロック5の側壁上面から突出するように各連通孔10に嵌め込むとともに、該ツボミ状に膨らんだパイプ12の上端にカップラ13を嵌合させながら、軸芯11の上端のネジ溝にカップラ13を螺着し、該カップラ13を介してさらに上側に軸芯11を接続する。最下層ブロック5の側壁上面には、その周縁部に中層ブロック6を載置する際の最下層ブロック5との緩衝材としてパッキン14或いは鉄等の金属板からなる幅5.0cm〜10.0cmで高さ1.0mm〜5.0mm程度のライナーを貼着する。ここでは、パッキン14を用いて説明する。このように載置された最下層ブロック5上には、同じく側壁に連通孔10が設けられた中層ブロック6を軸芯11を連通孔10に挿通させながら積み重ねて、金属製で上端がツボミ状に膨らんだパイプ12を嵌め込んで、軸芯11の上端にカップラ13を該パイプ12のツボミ状上端に嵌合するように螺着した後、さらに上側に軸芯11を接続する。そして、中層ブロック6の側壁上面の周縁部にパッキン14を貼着し、階上の中層ブロック6をさらに載置する。
【0021】
このようにして、最上階までの中層ブロック6を積み重ねた後、同様に最上層ブロック7及び連通孔10を設けた屋根を積み重ねて、軸芯11の少なくとも上端部をブロックの最上部で引っ張り、最上層ブロック7を下方へ押圧することにより、積み重ねられた各ブロック同士を締め付け、最後に、最下層ブロック5の連通孔10の下端からモルタル材やグラウト材等の硬化性ペースト材を注入し、屋根の連通孔10上端からポンプ等で硬化性ペースト材を吸い上げることにより、連通孔10内に硬化性ペースト材を充填させる。そして、この時、各ブロック間のパッキン14で囲まれた間隙にも硬化性ペースト材が充填され、各ブロックを一体化することができる。硬化性ペースト材の充填が完了した後、屋根8の連通孔10の上端からコンクリートを流しこみ、屋根8の上面と連通孔10のコンクリートとが平らになるように成形して、隔壁構造物1を構築する。なお、各ブロック間のパッキン14は、各ブロック間を緩衝できる弾性素材のものであれば何でもよい。
【0022】
以上により構築した隔壁構造物1において、各フロア9と開口部4aとを連結することにより、隔壁構造物と中層建築物が接続され、最下層ブロック5の地表側に往来可能な開口部4bを設けたことにより、車椅子用スロープを設けずとも地表面と1階フロアとの往来が身体障害者等にとって容易になるとともに、車椅子用スロープを設置する必要がないので、省スペース化を図ることができる。
【0023】
次に、前記の隔壁構造物1に対して階段を一体的に設けて構築した第二の実施例の隔壁構造物1について、図6乃至図8を用いて説明する。
【0024】
図6は、本発明に係る階段を一体的に構築した隔壁構造物1の構成を示す外観斜視図である。該隔壁構造物1は、既存の中層建築物2に設けられている外部のく字状折返し階段(図示せず。)のうち、一方の外方向に下る側の既設階段15を残して、外方向に上る側のもう一方の階段と踊場の一部とを撤去したのち、各階に対応するフロア9を新設するとともに、既存階段16の下り方向外側に連続させて階段5も新たに接続する。該フロア9には、側面部に開口部4a及び開口部4bを備えた筒状の最下層ブロック5、開口部4aを備えた複数の筒状の中層ブロック6及び屋根8を備えた筒状の最上層ブロック7を積層してなる隔壁構造物1を、最下層ブロック5及び中層ブロック6の側面に設けられた開口部4aを各階のフロア9に連結することができるように開口させ、それぞれ基礎6上に併設して積み重ねる。最下層ブロック5には、上記の通り、開口部4a及び開口部4bが設けられ、開口部4aは1階フロアとの出入りができる箇所に開口して形成され、一方、開口部4bは該開口部8aとの対面に地表面との出入りができる箇所に開口して形成される。
【0025】
次に、上記新設のフロア9及び階段5の設置について図7を用いて詳細に説明する。図7は、隔壁構造物1の2階以上のフロア等を示す平面視断面図である。本隔壁構造物1を設置する以前の中層建築物2には、一般的なく字状折返し階段(図中のUP・DOWN)が外部に既設されているところ、まずは、該く字状折返し階段の中層建築物2の外方向にUPする側の階段のみを撤去する。そして、該撤去箇所に各階の高さにあわせてフロア9を設けるとともに、フロア9には中層ブロック6の開口部4aを接続する。上記撤去したUP側の階段とは逆に、既設階段15(DOWN)は依然として撤去せずに残しておき、中層建築物2の外方向にDOWNするその下端に、階段16を設置して階下のフロア9と接続する。このようにして、1階部分から各上層階へと隔壁構造物1の各ブロックを積み重ねながら、新設階段16及びフロア9を各階ごとに順々に構築していく。
【0026】
以上、既設階段15に連続して接続した階段16及び新設のフロア9により、各階の往来が可能となるとともに、エレベータの出入口である開口部4aの下端とフロア9の高さが同じになるので、車椅子や歩行補助器具などが必要な高齢者や身体障害者及びその介護者が半階分の階段を昇降するという負担を解消することができる。
【0027】
次に、最下層ブロック5について図8を用いて詳細に説明する。図3は、最下層ブロック5部分を拡大して示した斜視断面図である。基礎3上に載置された最下層ブロック5には、他の中層ブロック6とは異なり、フロア9方向への開口部4aとともに、該開口部4aの対面にも開口部4bが形成される。ここで、開口部4aは、地表面から若干高い位置にある1階のフロア9の高さに合せて形成されるのに対して、開口部4bは、地表面の高さに合せて形成される。この地表面と1階のフロア4との段差αは、開口部4a及び開口部4bをエレベータの出入口とするに当たって、エレベータかご室の昇降の都合上、約1m以上あることが好ましい。なお、該段差αは、前記実施例1においても同様である。
【0028】
図9は、1階フロアを示す平面視断面図である。上記2階以上の平面視断面図と同様に、既設のく字状折返し階段のうちUPする側の階段のみを撤去し、既存の1階フロアの高さに合せてフロア9を新設する。既設のく字状折返し階段のうちDOWN側の既設階段15は撤去せずにそのまま残し、地表面と1階のフロア9との往来に使用する。
【0029】
このように、地表面に開口部4bを設けたことにより、地表面からは既設階段15を用いて昇降することもでき、1階のフロア9へエレベータを使用して往来することも可能となる。また当然に、1階のフロア9までの半階分の階段を昇降することなく、エレベータのみを利用して地表面から2階以上のフロア9への往来も可能となる。さらに、図9中に破線で示したスロープ106のスペースが不要となるので、省スペース化を図れるとともに、車椅子や歩行補助器具などが必要な高齢者や身体障害者及びその介護者がスロープ106を昇降する負担も解消することができる。また、前記第一実施例の隔壁構造物1とは異なり、既設の折返し階段の一部である既設階段15を残したまま隔壁構造物1を構築することができるので、既存の構築資源を有効的に使用することができ、且つ改めて階段を設置する必要がないのでコストを削減することができる。
【0030】
このように積み重ねて構築する第二実施例の隔壁構造物1においても、前記第一実施例で説明したものと同様に、各ブロックの側壁に設けた連通孔10に軸芯11及びパイプ12を挿通し、ブロック上面周縁部に設置したパッキン14を緩衝材として各ブロックを積み重ねて締め付け、最後に硬化性ペースト材を最下層ブロックの下端から注入しながら屋根の上端からポンプ等で吸い上げて連通孔10内に充填するとともに、各ブロック間のパッキン14で囲まれた間隙にも硬化性ペースト材を充填して各ブロックを一体化する。
【0031】
次に本発明に係る第三の実施例について、図10乃至図12を用いて詳細に説明する。様々な既存の中層建築物2において、例えば、既設の折返し階段が設置されている側が他の建築物と接していて、新たに隔壁構造物1を設置できるスペースがない場合等もある。第二実施例の隔壁構造物1は、そのような場合に、中層建築物2の既設の折返し階段とは対面の廊下17側に連結して構築するものである。
【0032】
図10は、該第三実施例の階段一体型の隔壁構造物1を示す外観斜視図である。該隔壁構造物1は、既存の中層建築物2の廊下17側に併設され、基礎3(図示せず。)上に、廊下17側に開口する開口部4a及び地表面側に開口する開口部4bを備えた筒状の最下層ブロック5、2階以降の廊下17に連結される開口部4aを備えた筒状の中層ブロック6及び屋根8を備えた最上層ブロック7を積層するとともに、折返しの階段16を併設して構築される。また、上記実施例と同様、最下層ブロック5に設けられた開口部4a及び開口部4bは、地表面と1階フロアとの段差αに応じて開口位置の高さが異なり、エレベータかご室の昇降の都合上、約1m以上あることが好ましい。
【0033】
次に、2階以降の廊下17と中層ブロック6及び階段16との連結について、図11の平面視断面図を用いて詳細に説明する。隔壁構造物1の中層ブロック6は、その開口部4aを既存の中層建築物2の廊下17側に開口して併設され、橋絡部18により該中層ブロック6と廊下17が連結されるとともに、折返しの階段16が中層ブロック6に併設して廊下17に連結される。また、1階の廊下17と最下層ブロック5及び階段16との連結については、図12に示す通り、開口部4aを廊下17側に開口させた最下層ブロック5が中層建築物2に併設され、1階の廊下17と橋絡部18を介して接続されるとともに、折返しの階段16が最下層ブロック5に併設して廊下17に連結される。また、最下層ブロック5には、開口部4aとの対抗面に地表面との往来が可能な開口部4bが設けられている。このようにして、1階部分から各上層階へと隔壁構造物1の各ブロックを積み重ねながら、折返しの階段16を各階ごとに順々に構築していく。なお、この第三実施例に係る隔壁構造物1の構築方法は、橋絡部18を各階廊下17に連結する点を除いて、上記第一実施例と同様である。
【0034】
以上のように、第三実施例によれば、中層建築物2の既設の折返し階段側にスペースがなくとも、本隔壁構造物1を設置することができ、且つ上記第一及び第二実施例の隔壁構造物1と同様の効果も奏することができる。なお、この場合、既設の折返し階段は撤去して新設の階段を隔壁構造物1に併設してもよく、また、既設の階段を撤去せずに残しておき、隔壁構造物1には新設の階段16を設けずに各ブロックを積層した隔壁構造物1のみを設けてよい。
【0035】
なお、本発明に係る隔壁構造物1に使用されるエレベータかご室には、中層建築物2側及びその対面側の2箇所に出入口が設けられ、それぞれ最下層ブロック5の開口部4a及び開口部4bと、中層ブロック6の開口部4aとに対応して、エレベータかご室及び地表面並びにエレベータかご室及び各階フロア9又は廊下17の往来を可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
前記隔壁構造物1は、中層集合住宅のような中層建築物2のみならず、例えば、門扉から玄関口までに階段を昇降する必要がある住宅や駅舎など、エレベータを後付する必要に迫った建築物であれば利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 隔壁構造物
2 中層建築物
3 基礎
4a 開口部
4b 開口部
5 最下層ブロック
6 中層ブロック
7 最上層ブロック
8 屋根
9 フロア
10 連通孔
11 軸芯
12 パイプ
13 カップラ
14 パッキン
15 既設階段
16 階段
17 廊下
18 橋絡部
101 折返し階段
102 踊場
103 出入口
104 フロア
105 廊下
106 スロープ
α 段差


【特許請求の範囲】
【請求項1】
廊下又は折返し階段に併設する中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物であって、
基礎上に、中層建築物側に開口する開口部及びその対面の地表側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の最下層ブロックと、該最下層ブロック上に中層建築物側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の中層ブロックと、該中層ブロック上に筒状の最上層ブロックとを積み重ねてなることを特徴とする中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物。
【請求項2】
廊下又は折返し階段に併設する中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物であって、
基礎上に、中層建築物側に開口する開口部及びその対面の地表側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の最下層ブロックと、該最下層ブロック上に中層建築物側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の中層ブロックと、該中層ブロック上に筒状の最上層ブロックとを積み重ね、
各ブロックの側壁に基礎上から最上層ブロックまでを連通する鉛直方向の連通孔を所定の間隔で複数設け、該連通孔に軸芯を挿通して前記各ブロックを連結するとともに、該連通孔に硬化性ペースト材を充填して各ブロックを一体化してなることを特徴とする中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物。
【請求項3】
廊下又は折返し階段に併設する中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物の構築方法であって、
基礎上に、中層建築物側に開口する開口部及びその対面の地表側に開口する開口部を側壁に備えた筒状の最下層ブロックを載置する工程と、
前記最下層ブロック上に中層建築物側に開口する開口部を備えた複数の筒状の中層ブロックを積み重ねる工程と
前記中層ブロック上に最上層ブロックを積み重ねる工程とを含み、
積み重ねられた複数のブロック内にかご室の昇降路を形成することを特徴とする中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物の構築方法。
【請求項4】
廊下又は折返し階段に併設する中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物の構築方法であって、
筒状で側壁に鉛直方向の連通孔が複数形成された最下層ブロックを載置する基礎内に、該連通孔内に挿通する軸芯の下端部を埋め込む工程と、
中層建築物側へと開口する開口部及びその対面の地表側へと開口する開口部を備えた前記最下層ブロックを前記軸芯に連通孔を挿通させながら基礎上に載置し、該最下層ブロック上面の側壁周縁部に緩衝材を貼着する工程と、
前記最下層ブロック上に、側壁に鉛直方向の連通孔を形成し、中層建築物側に開口する開口部を備えた筒状の中層ブロックを前記軸芯に連通孔を挿通させながら積み重ねて、該中層ブロックの側壁上面に緩衝材を貼着する工程と、
前記中層ブロック上に、側壁に鉛直方向の連通孔を形成した筒状の最上層ブロックを前記軸芯に連通孔を挿通させながら積み重ねる工程と、
前記各ブロック内に設けた連続する連通孔内及び各ブロック間の間隙に、硬化性ペースト材を充填する工程とを含み、
積み重ねられた複数のブロック内にかご室昇降路を形成することを特徴とする中層建築物用エレベータのかご室昇降路の隔壁構造物の構築方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−57430(P2011−57430A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211894(P2009−211894)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000150006)日本総合住生活株式会社 (35)
【出願人】(309035350)株式会社ケイプラン (1)
【Fターム(参考)】