説明

中性化したコンクリート成型体の粉末状アルカリ性回復剤及び中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復方法

【課題】中性化したコンクリート成型体の表面に安全な作業の下で塗布し、含浸させて、その深部にまでアルカリ性を回復することのできる粉末状アルカリ性回復剤及びこれを用いる中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復方法を提供する。
【解決手段】中性化したコンクリート成型体の粉末状アルカリ性回復剤として、多孔質シリカ微粉末に下記のA成分を全体の50〜70質量%となるよう担持させたものを用いた。
A成分:下記の化1で示される化合物、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び水とからなる混合液であって、下記の化1で示される化合物を0.1〜20質量%、炭酸カリウムを5〜49.8質量%、水酸化カリウムを0.1〜25質量%及び水を50〜94.8質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合液。
【化1】


(化1において、
X:カルボニル基又はメチレン基
n,m:n+mが4〜20の範囲となる1以上の整数
R:炭素数7〜17の脂肪族炭化水素基)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性化したコンクリート成型体の粉末状アルカリ性回復剤及び中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復方法に関する。一般に、コンクリート成型体は、アルカリ性を保持することにより内部の鉄筋の錆の発生を抑制し、成型体としての形状、構造、強度等を維持している。しかし、コンクリート成型体は、長年月が経過すると、空気中の炭酸ガスや亜硫酸ガス等の酸性ガスを吸収して、表面から中性化が進行し、やがて深部にまで中性化して、鉄筋の腐食や膨張による亀裂の発生、強度の低下等、様々な劣化現象の生じることが知られている。本発明は、中性化したコンクリート成型体の表面に安全な作業の下で塗布し、含浸させて、その深部にまでアルカリ性を回復することのできる粉末状アルカリ性回復剤及びこれを用いる中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、芳香族カルボン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、珪酸アルカリ金属塩、亜硝酸アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩型カチオン活性剤等が報告されている(例えば特許文献1〜5参照)。しかし、これら従来のアルカリ性回復剤には、コンクリート成型体の表面に塗布したアルカリ性回復剤の塗布液が垂れ落ち易く、作業者にとって危険という問題があり、また中性化したコンクリート成型体の表面の浅い部分のアルカリ性回復だけに留まり、深部の鉄筋近傍にまでアルカリ性を回復する浸透することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−117957号公報
【特許文献2】特開平1−167288号公報
【特許文献3】特開平11−79868号公報
【特許文献4】特開2005−90059号公報
【特許文献5】特開2009−107910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、中性化したコンクリート成型体の表面に安全な作業の下で塗布し、含浸させて、その深部にまでアルカリ性を回復することのできる粉末状アルカリ性回復剤及びこれを用いる中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく研究した結果、多孔質シリカ微粉末に特定の成分を特定の割合で担持させた粉末状アルカリ性回復剤を用いるのが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、中性化したコンクリート成型体の粉末状アルカリ性回復剤であって、多孔質シリカ微粉末に下記のA成分を全体の50〜70質量%となるよう担持させて成ることを特徴とする粉末状アルカリ性回復剤に係る。また本発明は、かかる粉末状アルカリ性回復剤に加水してペースト状物とし、このペースト状物を、中性化したコンクリート成型体の表面に、粉末状アルカリ性回復剤として50〜700g/mとなるよう塗布することを特徴とする中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復方法に係る。
【0007】
A成分:下記の化1で示される化合物、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び水とからなる混合液であって、下記の化1で示される化合物を0.1〜20質量%、炭酸カリウムを5〜49.8質量%、水酸化カリウムを0.1〜25質量%及び水を50〜94.8質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合液。
【0008】
【化1】

【0009】
化1において、
X:カルボニル基又はメチレン基
n,m:n+mが4〜20の範囲となる1以上の整数
R:炭素数7〜17の脂肪族炭化水素基
【0010】
先ず本発明に係る中性化したコンクリート成型体の粉末状アルカリ性回復剤(以下、単に本発明の粉末状アルカリ性回復剤という)について説明する。本発明の粉末状アルカリ性回復剤は、多孔質シリカ微粉末にA成分を担持させたものであり、このA成分は、化1で示される化合物、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び水から成る混合液である。
【0011】
混合液中の化1で示される化合物において、化1中のXはカルボニル基又はメチレン基である。また化1中のRは炭素数7〜17の脂肪族炭化水素基である。これには、1)ヘブチル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基等の飽和脂肪族炭化水素基、2)ヘプテニル基、ノネニル基、ウンデセニル基、トリデセニル基、ペンタデセニル基、ヘプタデセニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられる。なかでも、化1中のRとしては、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基が好ましい。更に化1中のn及びmは、n+mが4〜20となる1以上の整数であるが、n+mが5〜15となる1以上の整数が好ましい。
【0012】
化1中のXがカルボニル基である場合の化1で示される化合物としては、脂肪酸のジエタノールアミンによるアミド化物にエチレンオキサイドを付加したものが挙げられる。
【0013】
かかるエチレンオキサイド付加物は公知の方法によって合成することができる。例えば、撹拌機や温度制御手段等の必要な機器を装備した反応缶に所定量のジエタノールアミン及び触媒(例えばソディウムメチラートのメタノール溶液)を仕込み、メタノールを蒸留により反応系外に除去した後、脂肪酸のメチルエステルを徐々に滴下しながら85〜95℃の温度下でエステル交換反応させ、アミド化反応を行なうことによって、脂肪酸のジエタノールアミンによるアミド化物を得る。次に、このアミド化物の所定量を触媒と共にオートクレーブに仕込み、エチレンオキサイドの所定量を加温、加圧下で付加反応させることによって得ることができる。
【0014】
また化1中のXがメチレン基である場合の化1で示される化合物としては、脂肪族一級アミンにエチレンオキサイドを付加したものが挙げられる。かかるエチレンオキサイド付加物は公知の方法によって合成することができる。例えば、脂肪族一級アミンの所定量をオートクレーブに仕込み、反応系を窒素置換した後、135〜150℃の加温、加圧下でエチレンオキサイドの所定量を付加反応させることによって得ることができる。
【0015】
混合液中の炭酸カリウム及び水酸化カリウムはこれらを限定して用いる。炭酸カリウムの代わりに他のアルカリ炭酸塩、例えば炭酸リチウムや炭酸ナトリウムを用いたのでは、また水酸化カリウムの代わりに他のアルカリ水酸化物、例えば水酸化リチウムや水酸化ナトリウムを用いたのでは、いずれの場合も本発明の所期の効果は得られない。
【0016】
本発明の粉末状アルカリ性回復剤に供するA成分は、以上説明した化1で示される化合物、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び水とからなる混合液であって、化1で示される化合物を0.1〜20質量%、炭酸カリウムを5〜49.8質量%、水酸化カリウムを0.1〜25質量%及び水を50〜94.8質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合液であるが、化1で示される化合物を1〜10質量%、炭酸カリウムを10〜35質量%、水酸化カリウムを0.5〜10質量%及び水を60〜75質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合液が好ましい。
【0017】
また本発明の粉末状アルカリ性回復剤に供する多孔質シリカ微粉末は、前記したA成分の混合液を粉末状に保つための担体として用いるものである。かかる多孔質シリカ微粉末は、その性状に特に制限はないが、比表面積50〜450m/g、平均粒径0.1〜500μmの多孔質シリカ微粉末が好ましい。
【0018】
本発明の粉末状アルカリ性回復剤は、以上説明したような多孔質シリカ微粉末にA成分を担持させたものであって、A成分を全体の50〜70質量%となるよう担持させたものであるが、A成分を全体の55〜65質量%となるよう担持させたものが好ましい。
【0019】
本発明の粉末状アルカリ性回復剤は、所定量の多孔質シリカ微粉末と所定量のA成分とを混合することによって調製できるが、所定量の多孔質シリカ微粉末に、混合しながら、所定量のA成分をスプレーするか又は分割投入して調製するのが好ましい。混合時にやや過剰の水を用い、混合後に過剰分を蒸発させることもできる。また必要に応じて、混合後に、解砕、分級等を行なうこともできる。本発明の粉末状アルカリ性回復剤としては、その粒径を1〜2000μmの範囲に調製したものが好ましい。
【0020】
本発明の粉末状アルカリ性回復剤を適用するコンクリート成型体としては、水/セメント比が50〜85%のコンクリートから成型したものが好ましく、水/セメント比が55〜75%のコンクリートから成型したものがより好ましい。本発明の粉末状アルカリ性回復剤は、低中強度領域のコンクリート成型体を対象にする場合にその効果が最も発揮されるからである。
【0021】
次に、本発明に係る中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復方法(以下、単に本発明のアルカリ性回復方法という)について説明する。本発明のアルカリ性回復方法は、前記した本発明の粉末状アルカリ性回復剤に加水してペースト状物となし、このペースト状物を、中性化したコンクリート成型体の表面に、本発明の粉末状アルカリ性回復剤として50〜700g/mとなるよう塗布する方法である。
【0022】
具体的には、本発明の粉末状アルカリ性回復剤を少量の水で湿らせてペースト状物となし、このペースト状物を中性化したコンクリート成型体の表面に塗布した後、ビニールシートで被覆するというような方法で行なうことができる。この際、本発明の粉末状アルカリ性回復剤の塗布量は、通常は50〜700g/mの範囲となるようにするが、好ましくは100〜600g/mの範囲となるようにする。塗布は繰り返し行うこともできる。
【0023】
前記のように本発明の粉末状アルカリ性回復剤を塗布して浸透させる期間は、目的に応じて適宜選択する。例えば、数年間隔で行なわれるアルカリ性維持のための定期的な処理に用いる場合には、アルカリ性回復剤の浸透深さが0.1〜2.0cmとなることを要し、1日〜3ヶ月であることが好ましい。また鉄筋近傍の深部にまでアルカリ性回復剤を浸透させようとする場合には、アルカリ性回復剤の浸透深さが2.0〜5.0cmとなることを要し、1日〜6ヶ月であることが好ましい。
【0024】
本発明の粉末状アルカリ性回復剤が優れた効果を発揮する理由は明確でないが、その理由として以下の1)〜3)等が推察される。すなわち、1)本発明の粉末状アルカリ性回復剤は、多孔質シリカ微粉末の細孔の中に表面張力低下能の優れた浸透剤としての化1で示される化合物、アルカリ性物質としての炭酸カリウム及び水酸化カリウムが水溶液の状態で保持されており、これを中性化したコンクリート成型体の表面に接触させておくと、これらのアルカリ性物質がコンクリート成型体中の自由水を介して徐々にコンクリート成型体の内部へと拡散する。また2)中性化したコンクリート成型体に発生した水不溶性の炭酸カルシウムの蓄積層に対して、カルシウムよりイオン化傾向が高く水への溶解度が高い性質をもつ炭酸カリウムが他のアルカリ性物質よりも拡散し、浸透し易い。更に3)浸透剤としての化1で示される化合物は、表面張力低下能に優れており、これを炭酸カリウムと併用したときに、カリウムイオンがコンクリート成型体の深部にまで拡散して毛細管に浸透する性質を助長する。本発明の粉末状アルカリ性回復剤によると、これらの1)〜3)が相乗的に作用して、深部の鉄筋に接触している領域のコンクリート成型体のpHを11以上、更には11.5以上の鋼材が錆びないアルカリ性環境条件にするものと推察される。対象となるコンクリート成型体は、コンクリートを使用した建築構造物、橋やダム等の土木構造物、隔壁やオブジェ等の構造物である。
【0025】
本発明の粉末状アルカリ性回復剤の使用に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、合目的的に他の剤を併用することができる。かかる他の剤としては、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の粉末状アルカリ性回復剤によると、中性化したコンクリート成型体への塗布面が天井や壁面であっても塗布液が垂れ落ちることなく安全に塗布し、含浸させることができ、しかもその深部にまでアルカリ性を回復させることができる。結果として、コンクリート成型体の耐久性を著しく向上させることができる。
【0027】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0028】
試験区分1(A成分の調製)
・A成分の混合液(AM−1)の調製
表1の化1で示される化合物(a−1)を5部、炭酸カリウムを25部、水酸化カリウムを2部、水68部を混合して、A成分の混合液(AM−1)100部を調製した。
【0029】
・A成分の混合液(AM−2)〜(AM−10)及び比較のための混合液(RAM−1)〜(RAM−15)の調製
A成分の混合液(AM−1)の調製と同様にして、A成分の混合液(AM−2)〜(AM−10)及び(RAM−1)〜(RAM−15)を調製した。以上の各混合液の調製に用いた化1で示される化合物等の内容を表1にまとめて示し、また各混合液の内容を表2にまとめて示した。
【0030】
【表1】































【0031】
【表2】

【0032】
表2において、
a−1〜a−8、ar−1〜ar−4:表1中の化1で示される化合物等
*1:炭酸カリウム
*2:水酸化カリウム
*3:炭酸ナトリウム
*4:炭酸リチウム
*5:水酸化ナトリウム
*6:水酸化リチウム
【0033】
試験区分2(粉末状アルカリ性回復剤の調製)
多孔質シリカ微粉末(株式会社トクヤマ社製の商品名トクシールNR、比表面積180m/g、平均粒径85μm)8kgをリボンミキサーに仕込んだ。次に、A成分の混合液(AM−1)12kgをリボンミキサーに攪拌しながら少しずつ分割添加し、十分に混合した。混合物を篩を用いて分級し、実施例1の粒径1〜500μmの粉末状アルカリ性回復剤(p−1)を得た。
【0034】
・実施例2〜10及び比較例1〜18{粉末状アルカリ性回復剤(p−2)〜(p−10)及び(r−1)〜(r−18)の調製}
実施例1の粉末状アルカリ性回復剤(p−1)と同様にして、実施例2〜10及び比較例1〜18の粉末状アルカリ性回復剤(p−2)〜(p−10)及び(r−1)〜(r−18)を調製した。以上で調製した各例の粉末状アルカリ性回復剤の組成及び性状(外観、粒径等)を表3にまとめて示した。
【0035】
【表3】

【0036】
表3において、
AM−1〜AM−10、RAM−1〜RAM−15:表2に記載したA成分
b−1:比表面積180m/g、平均粒径85μmの多孔質シリカ微粉末
b−2:比表面積110m/g、平均粒径70μmの多孔質シリカ微粉末
*1:振動篩いの篩目開きから求めた値
*2:粉末状にならなかったので粒径を求めなかった。
【0037】
試験区分3(コンクリート成型体の作製及び中性化)
表4に記載の配合条件で、練り混ぜ水(水道水)、普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm)、細骨材(大井川水系産陸砂、密度=2.57g/cm、粗粒率=2.70)、粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm、実績率=60%)、AE減水剤(竹本油脂社製の商品名チューポールEX20)及びAE調節剤(竹本油脂社製の商品名AE200)の各所定量を50リットルのパン型強制練りミキサーに投入して90秒間練り混ぜ、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±1%の範囲としたAEコンクリートを調製した。次に、このコンクリートを幅10cm、厚さ10cm、長さ40cmの型枠に流し込み、硬化後に脱型してコンクリート成型体を作製した。
【0038】
【表4】

【0039】
・コンクリート成型体の中性化
前記のコンクリート成型体を中性化するため、該コンクリート成型体を二酸化炭素濃度5%のチャンバー内に静置した状態とし、その切断面にフェノールフタレインを吹き付けて赤色化しない部分の表面からの中性化深さが約50mmに達するまで、中性化の促進を行なった。
【0040】
試験区分4(中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復処理及び評価)
・実施例11
試験区分2で調製した粉末状アルカリ性回復剤(p−1)に少量の水をスプレーしてペースト状物とした。このペースト状物を、試験区分3で調製した中性化コンクリート成型体の表面に、粉末状アルカリ性回復剤として450g/mとなるよう付着させて塗布した後、表面をポリエステルシートで被覆してシールし、所定の測定時期まで静置した。13週間経過後、コンクリート成型体を切断して切断面にフェノールフタレイン等の呈色反応溶液を吹き付け、呈色反応を確認したところ、深さ41.3mmまでpH11以上の領域が形成されていた。
【0041】
・実施例12〜20及び比較例19〜36
実施例11と同様にして、実施例12〜20及び比較例19〜36のアルカリ性回復処理を行なった。
【0042】
アルカリ性回復処理の評価を以下のように行なった。結果を表5にまとめて示した。
・アルカリ性回復深さの測定:中性化したコンクリート成型体の切断面にフェノールフタレインを吹き付けて赤色化した部分の表面からの深さを測定した。
・中性化領域のpHの測定:中性化したコンクリート成型体の切断面にフェノールフタレインを吹き付け、赤色化しない部分と同じ深さの同位置において、別に作製しておいた中性化コンクリート成型体から試料をサンプリングし、微粉砕したものの10%水懸濁液のpHを測定した。
・アルカリ性回復領域のpHの測定:中性化したコンクリート成型体の切断面にフェノールフタレインを吹き付け、赤色化した部分と同じ深さの同位置において、別に作製しておいた中性化コンクリート成型体から試料をサンプリングし、微粉砕したものの10%水懸濁液のpHを測定した。







【0043】
【表5】

【0044】
表5において、
p−1〜p−10、r−1〜r−18:表3に記載した粉末状アルカリ性回復剤組成物
*3:測定しなかった
【0045】
表5からも明らかなように、本発明の粉末状アルカリ回復剤によると、中性化したコンクリート成型体への塗布を塗布液が垂れ落ちるということがないため安全に行なうことができ、しかもその表面から40cmを超える深部にまでpH11以上のアルカリ性を回復させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性化したコンクリート成型体の粉末状アルカリ性回復剤であって、多孔質シリカ微粉末に下記のA成分を全体の50〜70質量%となるよう担持させて成ることを特徴とする粉末状アルカリ性回復剤。
A成分:下記の化1で示される化合物、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び水とからなる混合液であって、下記の化1で示される化合物を0.1〜20質量%、炭酸カリウムを5〜49.8質量%、水酸化カリウムを0.1〜25質量%及び水を50〜94.8質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合液。
【化1】

(化1において、
X:カルボニル基又はメチレン基
n,m:n+mが4〜20の範囲となる1以上の整数
R:炭素数7〜17の脂肪族炭化水素基)
【請求項2】
化1で示される化合物が、化1中のn及びmがn+mが5〜15の範囲となる1以上の整数であって、Rが炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基である場合のものである請求項1記載の粉末状アルカリ性回復剤。
【請求項3】
A成分が、化1で示される化合物を1〜10質量%、炭酸カリウムを10〜35質量%、水酸化カリウムを0.5〜10質量%及び水を60〜75質量%(合計100質量%)の割合で含有するものである請求項1又は2記載の粉末状アルカリ性回復剤。
【請求項4】
多孔質シリカ微粉末が、比表面積50〜450m/g、平均粒径0.1〜500μmのものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の粉末状アルカリ性回復剤。
【請求項5】
A成分を全体の55〜65質量%となるよう担持させた請求項1〜4のいずれか一つの項記載の粉末状アルカリ性回復剤。
【請求項6】
粒径が1〜2000μmの範囲にある請求項1〜5のいずれか一つの項記載の粉末状アルカリ性回復剤。
【請求項7】
中性化したコンクリート成型体が、水/セメント比が50〜85%のコンクリートから成型したものである請求項1〜6のいずれか一つの項記載の粉末状アルカリ性回復剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つの項記載の粉末状アルカリ性回復剤に加水してペースト状物とし、このペースト状物を、中性化したコンクリート成型体の表面に、粉末状アルカリ性回復剤として50〜700g/mとなるよう塗布することを特徴とする中性化したコンクリート成型体のアルカリ性回復方法。

【公開番号】特開2012−6768(P2012−6768A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141398(P2010−141398)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(592182698)株式会社竹中道路 (14)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】