説明

中性子発生装置及び中性子照射システム

【課題】BNCTを行うにあたり、中性子を照射する自由度を向上させること。
【解決手段】この中性子発生装置102は、高エネルギーの陽子が照射されて中性子を発生するターゲット1を備える。ターゲット1の周囲には、陽子の照射によってターゲットから発生した中性子を減速する中性子減速部3Bが配置される。また、中性子減速部3Bの外側には、ターゲット1から発生した中性子を反射させるとともに増倍させて中性子減速部3Bへ導く反射体5Bが設けられる。そして、中性子減速部3Bは、陽子の進行方向と平行なY軸の周りを回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子を発生する技術に関し、さらに詳しくは、ホウ素中性子補足療法に適した中性子を発生できる中性子発生装置及びターゲット、並びに中性子照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素中性子補足療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)は、ホウ素化合物が癌細胞に集まることを利用して、ホウ素が中性子を吸収するときに生じる7Liやα粒子を用いて癌細胞を選択的に破壊し、治療する治療法である。ホウ素中性子補足療法(以下BNCTという)では、患部に中性子を照射する必要があり、BNCTを施術する際には、必ず中性子照射設備が必要である。BNCTに用いる中性子照射設備に関して、例えば特許文献1には、熱外スペクトラムの中性子を低エネルギー中性子ビームから特定のエネルギーにまでろ過するフィルタを備えた中性子放射設備が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特表2002−524219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では一方向から中性子を照射するため、中性子を照射する際の自由度が低く、中性子が照射される部位によっては患者に無理な姿勢を強いることになる場合がある。その結果、中性子の照射が不十分になったり、有効な照射時間を確保するために長時間を要したりするおそれがある。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、BNCTを行うにあたって、中性子照射の自由度を向上させることができる中性子発生装置及び中性子照射システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る中性子発生装置は、高エネルギーの陽子が通過する陽子通路と、前記高エネルギーの陽子が照射されて中性子を発生するターゲットと、前記ターゲットの周囲に配置されるとともに、前記陽子の照射によって前記ターゲットから発生した中性子を減速する中性子減速部と、前記ターゲットから発生した前記中性子を反射させるとともに増倍させて前記中性子減速部へ導く反射体と、前記陽子の進行方向を回転軸として、少なくとも前記中性子減速部と前記反射体とを前記陽子通路の周りを回転できるように支持する支持部と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0007】
この中性子発生装置は、陽子通路を中心として中性子減速部を回転させることができるので、熱外中性子の照射方向を変更することができる。これによって、熱外中性子を照射する部位に応じて適切な中性子減速部を選択して用いることができる。その結果、BNCTを行うにあたって、中性子照射の自由度を向上させることができる。
【0008】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、前記中性子減速部は、前記中性子発生部内を前記ターゲットで発生した中性子が進行する方向に向かうにしたがって、前記中性子発生部内を前記中性子が進行する方向と直交する断面の面積が大きくなることを特徴とする。
【0009】
この中性子発生装置は、前記中性子発生装置の構成を備えるので、前記中性子発生装置と同様の作用、効果を奏する。さらに、この中性子発生装置は、中性子発生部を円錐状とし、円錐の底面から減速した中性子を照射するようにしてある。これによって、反射体はより効率的に中性子を照射側へ反射させることができるので、治療に要する熱外中性子の照射時間が減少する。
【0010】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、前記ターゲットに前記陽子が衝突する部分を中心とした場合における前記反射体の立体角は、180度よりも大きく300度よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
この中性子発生装置は、前記中性子発生装置の構成を備えるので、前記中性子発生装置と同様の作用、効果を奏する。さらに、この中性子発生装置は、ターゲットに陽子が衝突する部分を中心とした場合における反射体の立体角を、180度よりも大きく300度よりも小さくしてある。これによって、反射体はより効率的に中性子を照射側へ反射させることができるので、治療に要する熱外中性子の照射時間が減少する。また、患者の患部以外の部位への照射量を低減させることができる。
【0012】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、前記ターゲットは板状の部材であり、前記ターゲットに前記陽子が照射される面とは反対側に、内部を冷却媒体が流れる断面矩形の冷却流路が複数接合されることを特徴とする。
【0013】
この中性子発生装置は、前記中性子発生装置の構成を備えるので、前記中性子発生装置と同様の作用、効果を奏する。さらに、この中性子発生装置は、ターゲットに陽子が照射される面とは反対側に、内部を冷却媒体が流れる断面矩形の冷却流路が複数接合される。これによって、簡単な構成により、ターゲットを冷却できる。
【0014】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、前記ターゲットは、陽子が照射される陽子照射部に設けられる複数の仕切り部材と、前記仕切り部材の端部がはめ込まれるスリットが設けられるターゲット支持体と、を備え、前記仕切り部材に前記スリットがはめ込まれた状態で、前記仕切り部材と前記ターゲット支持体とが接合され、前記陽子照射部と前記仕切り部材と前記ターゲット支持体とで囲まれる空間が冷却流路として構成されることを特徴とする。
【0015】
この中性子発生装置は、前記中性子発生装置の構成を備えるので、前記中性子発生装置と同様の作用、効果を奏する。さらに、この中性子発生装置は、上記のような構成のターゲットにより、内部に複数の冷却流路を形成する。そして、上記のような構成により、確実に仕切り部材とターゲット支持体とが接合される。これによって、ターゲットの強度が向上し、また、接合不良による伝熱性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0016】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、前記冷却流路は、前記陽子の照射面と直交する方向の寸法よりも、前記陽子の照射面と平行な方向の寸法の方が大きいことを特徴とする。
【0017】
この中性子発生装置は、前記中性子発生装置の構成を備えるので、前記中性子発生装置と同様の作用、効果を奏する。さらに、この中性子発生装置は、陽子の進行方向と平行な方向の寸法よりも、陽子の進行方向と直交する方向の寸法の方が大きい断面矩形の冷却流路をターゲットに備える。これによって、ターゲットをより効率的に冷却することができる。
【0018】
次の本発明に係る中性子照射システムは、前記中性子発生装置が備えるターゲットに、加速した陽子を照射する加速器を備え、前記中性子発生装置から取り出される熱外中性子を熱外中性子照射対象に照射することを特徴とする。
【0019】
この中性子照射システムは、前記中性子発生装置を備えるので、熱外中性子を照射する部位に応じて適切な中性子減速部を選択して用いることができる。これによって、BNCTを行うにあたって、中性子照射の自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、BNCTを行うにあたって、中性子照射の自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0022】
(実施形態1)
実施形態1に係る中性子発生装置は、BNCTに用いるものであり、加速器により20MeV以上に加速された陽子をターゲットに衝突させたときに得られる中性子を、(n、xn)反応を生ずる物質を反射体として用いて反射するとともに増幅し、中性子減速部で減速して熱外中性子を取り出す点に特徴がある。
【0023】
図1は、実施形態1に係る中性子発生装置を含む中性子照射システム示す全体図である。この中性子照射システム200は、加速器2と、実施形態1に係る中性子発生装置100とを含んで構成される。加速器2から中性子発生装置100へ陽子が照射されると、中性子発生装置100はBNCT治療室20の方向へ熱外中性子を発生する。BNCT治療室20内にはBNCTを受ける患者Kがおり、前記熱外中性子は患者の患部へ照射される。ここで、患部はホウ素化合物の集まった癌細胞であり、中性子照射対象である。加速器2は、例えばサイクロトロン等を使用することができ、実施形態1ではサイクロトロンを用いる。なお、加速器2の種類はこれに限定されるものではない。
【0024】
次に、実施形態1に係る中性子発生装置100について説明する。図2−1、図2−2は、実施形態1に係る中性子発生装置の概要を示す説明図である。図2−2は、図2−1に示す中性子発生装置100のY=0における断面、すなわちY=0におけるX−Z平面を、陽子の進行方向側から見た状態を示している。図2−3は、図2−1、図2−2のターゲット部分の拡大図である。なお、図面中の符号p(小文字)は陽子を、n(小文字)は中性子を表す(以下同様)。
【0025】
この中性子発生装置100は、ターゲット1と、中性子減速部3と、反射体5とを含んで構成される。ターゲット1、中性子減速部3、及び反射体5は、放射線遮蔽体9内に配置されており、中性子発生装置100の外部に漏れる中性子及びγ線を極小にするように構成される。ここで、放射線遮蔽体9は、例えばコンクリートにより構成される。
【0026】
中性子減速部3の熱外中性子出射側には、ターゲット1から発生するγ線やその他の部分から発生する2次γ線を遮蔽する目的で、ビスマス(Bi)層4が配置されている。さらに、Bi層4の熱外中性子出射側には、反射体5を介して熱中性子吸収層6が配置される。熱中性子吸収層6は、減速された熱中性子を吸収するためのものであり、例えば、Li入りポリエチレンで構成される。
【0027】
ターゲット1は、タンタル(Ta)やタングステン(W)等の重核種である。加速器2によって加速された陽子は、真空の陽子通路8を通ってターゲット1へ照射されて、ターゲット1から中性子が発生する。発生した中性子は中性子減速部3へ導かれ、ここで減速されてエネルギーが4eV〜40keV程度の熱外中性子となる。この熱外中性子は、患部以外の部分へ照射される量をできるだけ低減し、患部へ照射される熱外中性子の強度を高めるため、コリメータ7によって絞られるとともに中性子の方向を定められ、照射対象の癌細胞へ照射される。
【0028】
図2−1、図2−2に示すように、この実施形態に係る中性子発生装置100は、陽子の進行方向に対して直交する方向に、複数の中性子減速部を備える。この実施形態では、X軸と平行な方向とZ軸と平行な方向とに、それぞれ中性子減速部3及びコリメータ7を備える。これによって、この実施形態に係る中性子発生装置100は、X軸と平行な方向及びZ軸と平行な方向の2方向に熱外中性子を照射することができる。
【0029】
このように、この実施形態に係る中性子発生装置100は、複数の方向へ熱外中性子を照射できるので、患部に対して熱外中性子を照射できる方向の自由度が増加する。その結果、治療を受ける患者Kの患部に対して、より適切に熱外中性子を照射することができる。この実施形態では、X−Z平面内において、複数(この実施形態では2個)の中性子減速部3が、陽子通路8を中心とした中心角が約90度の間隔となるように配置される。ただし、中性子減速部3の配置はこれに限られるものではない。
【0030】
図2−3に示すように、ターゲット1は、X軸及びZ軸のそれぞれに対して傾斜して配置される。これによって、中性子がターゲット1中を進む距離を極力短くできるので、発生した中性子を効率よく中性子減速部3へ導くことができる。また、X軸及びZ軸に対するターゲット1の傾斜角度θx、θzをほぼ等しくすることにより、それぞれの中性子減速部3を通ってそれぞれのコリメータ7から出射する熱外中性子の強度や分布をほぼ一様にすることができる。
【0031】
また、図2−1に示すように、この実施形態に係る中性子発生装置100は、陽子の進行方向と直交する方向(X軸方向)に対してターゲット1を傾斜させている。これによって、ターゲット1に対して陽子が照射される面積が大きくなるので、陽子が照射されることによるターゲット1の単位面積あたりにおける発熱量を低減できる。これによって、ターゲット1の熱負荷を低減できるので、ターゲット1の冷却能力を向上させることができる。
【0032】
また、この実施形態では、陽子の進行方向に対して略直交する方向の中性子を患部に照射するが、陽子の進行方向と直交する方向(X軸方向)に対してターゲット1を傾斜させることにより、ターゲット1内における中性子の進行距離を短くすることができる。これによって、ターゲット1内における中性子の減衰を抑制できるので、ターゲット1で発生した中性子を効率よく中性子減速部3へ導くことができる。
【0033】
なお、中性子発生装置100に備える中性子減速部3の数は2個に限定されるものではない。しかし、中性子減速部3の数が増加するとともに、一つの中性子減速部3から照射できる熱外中性子の強度が低下するので、加速器2の出力を考慮して中性子減速部3の個数を設定する。
【0034】
複数の中性子減速部3を備える場合、治療に供しない中性子減速部3のコリメータ7から熱外中性子が放射されることを防ぐため、中性子減速部3にターゲット1から中性子が入射する部分からコリメータ7までの間、あるいはコリメータ7の外側に、中性子及びγ線の遮断手段を備えることが好ましい。
【0035】
中性子遮断手段は、例えば、コリメータ7の熱外中性子照射部7rに、開閉可能なシャッター状の構造物を設けて構成することができる。また、中性子遮断手段に用いる材料は、例えば、中性子吸収能を有する水素を多く含有させた高分子材料や、中性子吸収能を有するB10をステンレスやアルミニウム等に含有させた材料を用いることができる。
【0036】
図2−1、図2−2に示すように、この実施形態に係る中性子発生装置100において、コリメータ7の熱外中性子照射部7rは、中性子発生装置100の表面100pから熱外中性子の照射側に突出している。そして、熱中性子吸収層6の表面6pの一部は、円錐台状に形成されるとともに、円錐台の頂部がコリメータ7の熱外中性子照射部7rとなる。コリメータ7の熱外中性子照射部7rが熱中性子吸収層6の表面とほぼ同一面上にある場合、患者Kの姿勢によっては、熱外中性子を照射できる患部が制限されることがある。しかし、この実施形態に係る中性子発生装置100のように、コリメータ7の熱外中性子照射部7rを中性子発生装置100の表面100pから突出させれば、前記制限を低減できる。
【0037】
例えば、患者Kの側頭部から熱外中性子を照射する場合、コリメータ7の熱外中性子照射部7rを中性子発生装置100の表面100pとほぼ同一面上とすると、患者Kの肩によって熱外中性子照射部7rと患者Kの側頭部との距離が大きくなってしまう。しかし、この実施形態に係る中性子発生装置100のように、コリメータ7の熱外中性子照射部7rを中性子発生装置100の表面100pから突出させれば、熱外中性子照射部7rと患者Kの側頭部とを接近させることができるので、患部に対して効果的に熱外中性子を照射することができる。
【0038】
次に、中性子減速部3について説明する。中性子減速部3は、例えば、鉄(Fe)3aとフッ素化合物3fとから構成できる。そして、ターゲット1から発生した中性子は、鉄3a、次いでフッ素化合物3fにより減速されて、熱外中性子となる。フッ素化合物3fとしては、例えば、AlF3(69重量%)−Al(30重量%)−LiF(1重量%)を用いることができる(Liの組成は限定されない)。この中性子減速部3により、ターゲット1で発生した中性子から、高い熱外中性子束を取り出すことができる。
【0039】
実施形態1において、中性子減速部3へ導く中性子は、陽子の進行方向(陽子線の方向)−Y(図2−1、図2−2)に対して90度近傍、あるいは90度近傍よりも大きい角度の方向、すなわち、陽子の進行方向後方に発生する中性子とすることが好ましい。この理由について説明する。
【0040】
図3−1は、陽子の進行方向Fと中性子の発生方向との関係を示す概念図である。図3−2は、減速後における中性子束強度と中性子のエネルギーとの関係を、ターゲットから発生した中性子の発生方向をパラメータとして表した説明図である。ターゲット1から発生した中性子の発生方向(中性子線の方向)は、陽子の進行方向Fに対する傾き角度で表す(図3−1参照)。なお、陽子の進行方向Fが0度を意味する。ここで、陽子の進行方向F側を陽子の進行方向前方といい、用紙の進行方向Fの反対側を陽子の進行方向後方という。
【0041】
図3−2から分かるように、107eV程度の高いエネルギーを持つ高速中性子は、陽子の進行方向Fに対する傾き角度θが90度近傍に発生する中性子が最も少ない(図3−2中、Aで示す部分)。したがって、前記傾き角度θが90度近傍に発生する中性子を中性子減速部3へ導けば、中性子発生装置100からBNCT治療室20側へ透過する高速中性子の量を低減することができるので、BNCTに際して有利となる。
【0042】
前記高速中性子の透過量を低減するために、ターゲット1から発生した中性子の発生方向と陽子の進行方向Fとの傾き角度θが90度−0、+90度の範囲内で、中性子減速部3へ導くための中性子を取得することが好ましい。すなわち、陽子の進行方向後方に発生する中性子を中性子減速部3へ導くための中性子とすることが好ましい。このようにすることで、中性子発生装置100からBNCT治療室20の患者Kへ到達する高速中性子の量を低減することができる。また、陽子の進行方向Fに対する傾き角度が90度近傍に発生する中性子を中性子減速部3に導いて熱外中性子とすることで、上述したように、ターゲット1の周囲に複数の中性子減速部3を配置する構成を容易に実現することができる。
【0043】
また、図3−1に示すように、ターゲット1は、陽子の進行方向Fに直交する方向に対して傾けて配置することが好ましい。これは、陽子線に対するターゲット1の照射面積を増加させ、ターゲット1の熱負荷を下げ、また、ターゲット1内における中性子の減衰を抑制するためである。すなわち、ターゲット1が陽子の進行方向Fに直交して配置されていると、陽子の進行方向Fに対して傾き角度が90度近傍に発生する中性子は、中性子減速部3へ到達するまでにターゲット1中を進行して減衰する。その結果、熱外中性子として取り出すことのできる中性子数が低減するからである。ターゲット1を陽子の進行方向Fに直交する方向に対して傾けて配置すれば、中性子がターゲット1中を進む距離を短くできるので、発生した中性子を効率よく中性子減速部3へ導くことができる。
【0044】
ターゲット1が陽子の進行方向Fに直交して配置される場合、陽子がターゲット1に衝突したときの形状は略円形であるが、陽子の進行方向Fに直交する方向に対して傾けてターゲット1を配置すると、陽子がターゲットに衝突したときの形状は楕円形になる。これにより、ターゲット1を陽子の進行方向Fに対して直交して配置した場合と比較して、陽子がターゲット1に衝突したときの面積を大きくできるので、ターゲット1の発熱密度を低くできる。その結果、例えば同じ冷却能の冷却媒体を用いる場合には、ターゲット1の冷却がより容易になる。
【0045】
したがって、上記観点からは、ターゲット1は、陽子の進行方向Fに対して傾けて配置することが好ましい。ここで、陽子の進行方向に対するターゲット厚さtpが飛程tc(例えばタンタルを用い、陽子のエネルギーが約50MeVの場合、約2.8mm)を超えると、ターゲット1に照射された陽子はターゲット1内で停止する結果、ターゲット1の発熱量が極めて増加する。この発熱量の増加はブラッグピークと呼ばれる。
【0046】
ターゲット傾き角度βを大きくすると、ターゲット1内を進行する陽子の距離が大きくなり、陽子Pがターゲット1中で完全に停止してしまい、ブラッグピークが発生するおそれがある。ブラッグピークを避けるため、実施形態1の中性子発生装置100では、ターゲット傾き角度βを陽子の飛程tcよりも小さくする。したがって、陽子の進行方向Fに対するターゲット厚さtpは(tp=t/cosβ)<tcの関係を満たすように構成する。
【0047】
このような構成により、ターゲット1に衝突した陽子を透過させ、ターゲット1内で陽子が停止することを防止する。また、ターゲット1は、出射面(伝熱面1h)を流れる冷却媒体により冷却されて発熱が抑制される。これにより、ターゲット1の発熱を抑制して、耐久性を向上させることができる。なお、陽子をターゲット1内で停止させた場合と透過させた場合とでは、発生する中性子数にほとんど変化はない。
【0048】
なお、陽子の飛程は、陽子のエネルギーが大きくなるとともに大きくなる。したがって、陽子のエネルギーが低い場合は飛程も小さくなるので、(例えばターゲット1にタンタルを用い、陽子のエネルギーが30MeVの場合、飛程は約1.2mm程度)ターゲット1の強度を確保すると、陽子の進行方向におけるターゲット厚さは陽子の飛程よりも大きくなる場合がある。したがって、陽子のエネルギーが小さい場合には、ターゲット内で陽子を停止させるとともにターゲット1を十分に冷却して、陽子が停止することにより与えられる運動エネルギーによるターゲット1の昇温を抑制する。
【0049】
陽子の照射を受けるターゲット1は、陽子のエネルギーにより温度が上昇する。このため、中性子発生装置100の稼動中においては、水(H2O)や液体金属(例えば水銀(Hg))等の冷却媒体によりターゲット1を冷却する。実施形態1の中性子発生装置100では、加速器2により加速された陽子がターゲット1に照射される面とは反対側の面から、ターゲット1を冷却する。より具体的には、ターゲット1の陽子照射面1pの反対側に設けられる伝熱面1hに冷却媒体を接触させて、ターゲット1を冷却する。昇温した冷却媒体は、中性子発生装置100の外へ取り出された後、熱交換器50により温度を下げられて、ポンプ52により再びターゲット1へ送られる。次に、この実施形態で用いるターゲット1の冷却構造を説明する。
【0050】
図4は、実施形態1に係るターゲットの冷却構造を示す説明図である。ターゲット1は、ターゲット支持体40に取り付けられて一体の構造体として構成される。ターゲット1には、複数の仕切り部材41が設けられている。この実施形態において、例えば、厚いタンタルの板を切削加工することにより、陽子が照射されるターゲット1の陽子照射部1Aと仕切り部材41とが一体で構成される。このように、陽子照射部1Aと仕切り部材41とが同一の材料から一体で構成されるので、ターゲット1の強度が向上するとともに、接合不良によって伝熱性能が低下することを回避できる。なお、仕切り部材41を溶接等によってターゲット1の陽子照射部1Aに接合してターゲット1を構成してもよい。
【0051】
ターゲット支持体40には、仕切り部材41の端部がはめ込まれるスリット40sが設けられている。ターゲット1とターゲット支持体40とは、ターゲット1が備える仕切り部材41の端部がターゲット支持体40のスリット40sにはめ込まれる。そして、仕切り部材41とターゲット支持体40とが溶接等によって接合されて、ターゲット1とターゲット支持体40とが合体する。このような構造により、仕切り部材41とターゲット1の陽子照射部1Aとターゲット支持体40とで囲まれる空間が、冷却媒体の流れる冷却流路42となる。そして、ターゲット1の陽子の照射側とは反対側に、複数の冷却流路42が形成される。仕切り部材41は、ターゲット1とターゲット支持体40とが一体となった状態においてリブの役割を果たすので、ターゲット1の強度向上に寄与する。また、ターゲット支持体40には、仕切り部材41の端部をはめ込み、溶接等によって両者を接合するので、確実に両者を溶接することができる。これによって、ターゲット1の強度が向上し、また、接合不良による伝熱性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0052】
冷却流路42が開口している側におけるターゲット1のそれぞれの端部には、それぞれ入口側ヘッダ43aと出口側ヘッダ43bとが取り付けられる。入口側ヘッダ43a及び出口側ヘッダ43bとターゲット1とは、例えば溶接によって接合される。入口側ヘッダ43aには、冷却媒体の入口を形成する複数の入口管台46aが設けられている。これにより、複数の冷却流路42へ流入する冷却媒体の流速分布を一様にすることができる。また、出口側ヘッダ43bには、冷却媒体の出口を形成する出口管台46bが設けられる。これによって、冷却流路42の出口近傍における流速分布を一様にすることができる。
【0053】
陽子をターゲット1に照射して中性子を発生させる際には、入口側ヘッダ43aから出口側ヘッダ43bに向かって冷却媒体を流す。これによって、ターゲット支持体40に形成される冷却流路42へ冷却媒体が流れて、ターゲット1が発生する熱を冷却媒体が奪うので、ターゲット1を冷却することができる。なお、この実施形態において、製造のしやすさを考慮して、ターゲット1の平面形状は矩形としてある。
【0054】
図5は、実施形態1に係るターゲットの他の冷却構造を示す断面図である。この冷却構造では、ターゲット1に、管軸方向に垂直な断面の形状が矩形(この実施形態では略正方形)の冷却管44を複数取り付けて、冷却流路42を形成する。隣接する冷却管44の間には、スペーサ45を設けるとともに、支持板46とターゲット1とでスペーサ45を挟み込む。ここで、ターゲット1と冷却管44とは溶接により接合される。また、スペーサ45はターゲット1及び支持板46に溶接によって接合される。陽子をターゲット1に照射して中性子を発生させる際には、支持板46に接合される冷却管44内の冷却流路42へ冷却媒体が流れて、ターゲット1が発生する熱を冷却媒体が奪うので、ターゲット1を冷却することができる。
【0055】
なお、ターゲット1とスペーサ45とは、例えば切削による一体構造としてもよい。また、冷却管44を用いずに、ターゲット1、スペーサ45及び支持板46とで囲まれる空間を冷却流路としてもよい。このように、冷却管44を用いない構造とすれば、冷却管44の溶接の手間が省けるので、製造工程を簡略化することができる。また、冷却管44の溶接不良による伝熱性能低下はないので、安定した冷却性能を発揮することができる。
【0056】
図6−1は、冷却流路の形状による熱伝達率の変化を示す説明図である。図6−2は、冷却流路の断面を示す説明図である。図6−1から分かるように、等価直径de(=4×X×Y/(2×X+2×Y)=2×X×Y/(X+Y))が小さい方が、熱伝達率dd(W/m2・K)は高くなる。また、冷却面(すなわち陽子の照射面)1pcと直交する方向(Y方向)の長さ(寸法)が小さい方が熱伝達率ddは高くなる。したがって、冷却流路42は、X/Yが大きく、すなわち、陽子の照射面と直交する方向の寸法よりも、陽子の照射面と平行な方向の寸法の方が大きく、かつ等価直径deが小さくなるようにすることが好ましい。次に、図2−1、図2−2に戻り、この実施形態に係る中性子発生装置100が備える反射体5について説明する。
【0057】
ターゲット1から発生した中性子は中性子減速部3の方向のみならず、ターゲット1に陽子が照射される部分を中心として360度すべての方向へ向かう。ターゲット1から発生した中性子をより効率的に中性子減速部3へ導くため、ターゲット1は反射体5の内部に配置される。実施形態1において、反射体5は、中性子を反射する際に(n、xn)反応を生ずる物質で構成される。
【0058】
ここで、(n、xn)反応を生ずる物質は、重核種であるとともに、中性子の照射により分裂反応を起こさない核種を含む物質であることが必要で、例えば、鉛(Pb)や鉄(Fe)等を用いることができる。特に、鉛はγ線の遮蔽機能も備えているので、鉛を反射体5に使用すれば、ターゲット1へ陽子が衝突した際に僅かながら発生するγ線を遮蔽することもでき、好ましい。
【0059】
このような物質で構成される反射体5は、高エネルギーの陽子をターゲット1に照射することにより得られた中性子を反射する際に、単に中性子を反射するのみでなく、1個の中性子を反射するとともに、x個の中性子を新たに発生する。すなわち、反射体5は、ターゲット1で発生した中性子を反射するのみならず、前記中性子を増倍させることができる。その結果、実施形態1に係る中性子発生装置100は、より多くの中性子を中性子減速部3へ導いて、高い中性子束で熱外中性子を発生させることができる。
【0060】
ここで、高エネルギーの陽子とは、20MeV以上500MeV以下に加速された陽子をいう。そして、このような陽子をターゲット1に照射して得られる中性子が(n、xn)反応を生ずる物質へ入射したときに、(n、xn)反応が生ずる。このように、実施形態1に係る中性子発生装置では、高エネルギーの陽子をターゲット1に照射して中性子を発生させるとともに、(n、xn)反応を生ずる反射体5を用いて、発生した中性子を増倍させる。これにより、中性子減速部3から出射する熱外中性子の量を、(n、xn)反応を生じない反射体を用いた場合と比較して1桁程度多くすることができる。その結果、より多くの中性子を中性子減速部3へ導くことができるので、効率的に熱外中性子を得ることができる。次に、この実施形態に係る中性子発生装置100を用いた治療設備の例を説明する。
【0061】
図7、図8は、実施形態1に係る中性子発生装置を用いた治療設備の例を示す説明図である。図7に示す治療設備210は、建屋の異なる階に異なる治療室を設けたものである。この治療設備210では、この実施形態に係る中性子発生装置100が備える2個のコリメータ7の熱外中性子照射部7rが、それぞれ第1治療室211と第2治療室212とに配置される。第1治療室211の患者Kは、側頭部から熱外中性子が照射され、また、第2治療室212の患者Kは、前頭部から熱外中性子が照射される。このとき、患者Kはベッド213に仰向けに寝ていればよく、熱外中性子の照射部位(患部の位置)に応じて姿勢を大きく変える必要はない。
【0062】
図8に示す治療設備220では、この実施形態に係る中性子発生装置100が備える2個のコリメータ7の熱外中性子照射部7rが、それぞれ作業台221側と中性子発生装置100の下側とに配置される。作業台221側の患者Kは、側頭部から熱外中性子が照射され、また、中性子発生装置100の下側の患者Kは、前頭部から熱外中性子が照射される。このとき、患者Kはベッド213に仰向けに寝ていればよく、熱外中性子の照射部位(患部の位置)に応じて姿勢を大きく変える必要はない。
【0063】
このように、この実施形態に係る中性子発生装置100を用いれば、治療を受ける患者Kの患部に対して、適切に熱外中性子を照射することができるので、熱外中性子の照射中は患者Kに無理な姿勢を強いることも少なく、治療の負荷を軽減できる。また、熱外中性子の照射中、患者Kはより自然な姿勢をとることができるので、患部に対しても効率よく熱外中性子を照射することができる。
【0064】
(変形例)
実施形態1の変形例に係る中性子発生装置は、実施形態1に係る中性子発生装置とほぼ同様の構成であるが、反射体及び中性子減速部の形状が異なる。他の構成は実施形態1と同様である。ここで、立体角とは、ターゲットに陽子が照射される部分を中心とした場合の立体角をいう。
【0065】
図9は、実施形態1の変形例に係る中性子発生装置の構造を説明する概念図である。図10は、反射体の立体角と、治療に要する熱外中性子の照射時間最大値との関係を示す説明図である。図この中性子発生装置101は、全体の形状を球体で構成するとともに、反射体5Aの立体角α1を180度よりも大きくしてある。これにともない、中性子減速部3Aの形状は円錐状となっている。ここで、中性子減速部3Aの立体角α2は、(360−α1)度となる。
【0066】
上記構成により、中性子減速部3Aは、ターゲット1で発生する中性子の入射部3Aiから出射部3Aoに向かって、すなわち、中性子減速部3A内を中性子が進行する方向に向かうにしたがって、中性子減速部3Aの断面積が大きくなる。ここで、中性子減速部3Aの断面積とは、中性子減速部3A内を中性子が進行する方向と直交する断面の面積である。
【0067】
図10に示すように、反射体5Aの立体角α1を180度よりも大きくすると、治療に要する熱外中性子の照射時間最大値は小さくなる。しかし、反射体5Aの立体角α1を180度よりも大きくするにしたがって、高速中性子束の割合も増加し、300度では許容値を超えるおそれがある。このため、反射体5Aの立体角α1は、180度よりも大きく300度よりも小さい範囲が好ましく、より好ましくは240度よりも大きく300度よりも小さい範囲であり、さらに好ましくは270度±15度の範囲である。
【0068】
図11は、実施形態1の変形例に係る中性子発生装置の構成例を示す断面図である。図11に示すように、この中性子発生装置101では、反射体5Aの立体角を270度にするとともに、中性子減速部3Aの立体角は90度(すなわち360度−反射体5Aの立体角)としてある。そして、反射体5Aと中性子減速部3Aとを球体に近い形状とするため、反射体5Aの形状を調整してある。このようにすれば、実施形態1に示す中性子発生装置100(図2−1等参照)と比較して、反射体5Aの体積を小さくでき、また軽量化を図ることができる。なお、図11に示す中性子発生装置101は、単独の中性子減速部3Aを備えるが、複数の中性子減速部3Aを設ける場合には、実施形態1に係る中性子発生装置100の構成を適用し、例えば、図11のDで示す部分に中性子減速部3A及びコリメータ7を配置する。
【0069】
以上、実施形態1及びその変形例では、ターゲットの周りに複数の中性子減速部を備えて、複数の中性子減速部から熱外中性子を照射できるので、熱外中性子を照射する部位に応じて適切な中性子減速部を選択して用いることができる。これによって、BNCTを行うにあたって、中性子照射の自由度を向上させることができる。なお、実施形態1及びその変形例で開示した構成は、以下の実施形態にも適用することができる。また、実施形態1及びその変形例に開示した構成と同一の構成を備えていれば、実施形態1及びその変形例と同様の作用・効果を奏する。
【0070】
(実施形態2)
実施形態2に係る中性子発生装置は、実施形態1に係る中性子発生装置と同様の構成であるが、陽子通路を中心として回転可能である点が異なる。他の構成は実施形態1に係る中性子発生装置と同様である。
【0071】
図12−1、図12−2は、実施形態2に係る中性子発生装置の構成を示す全体図である。図13−1〜図13−3は、実施形態2に係る中性子発生装置において熱外中性子を照射する際の状態を示す概念図である。この中性子発生装置102は、支持部材110によって回転可能に支持されるとともに、駆動装置111によって駆動されて、陽子通路8を中心に回転する。中性子発生装置102が回転すると、コリメータ7の熱外中性子照射部7rは、陽子通路8を中心として、中性子発生装置102の回転軸(Y軸)と熱外中性子照射部7rとの距離を半径とする円周上を移動する。
【0072】
図13−1〜図13−3に示すように、コリメータ7の熱外中性子照射部7rの位置と、患者Kに対する中性子照射部位の位置との関係を調整することによって、患部に対して適切な方向から熱外中性子を照射することができる。例えば、図13−1に示す状態では、患者Kの頭頂部に熱外中性子を照射することになる。図13−2に示す状態では、患者Kの頭頂部と前頭部との間に熱外中性子を照射することになる。また、図13−3に示す状態では、患者Kの前頭部に熱外中性子を照射することになる。
【0073】
図14は、実施形態2に係る中性子発生装置の断面図である。この中性子発生装置102は、実施形態1の変形例に係る中性子発生装置101(図11参照)と同様に、反射体5Bの立体角を180度よりも大きくにするとともに(この例では270度)、中性子減速部3Bの立体角は90度(すなわち360度−反射体5Bの立体角)としてある。そして、反射体5Bと中性子減速部3Bとを球体に近い形状とするため、反射体5Bの形状を調整してある。このとき、中性子発生装置102の回転軸(Y軸)と直交する断面内における重心が、中性子発生装置102の回転軸(Y軸)の近傍に位置するように反射体5Bの形状を調整することが好ましい。このようにすれば、中性子発生装置102を回転させる際の駆動力を低減できる。
【0074】
この実施形態に係る中性子発生装置102では、ターゲット1を陽子通路8に固定してある。そして、中性子発生装置102が回転すると、中性子減速部3B及びコリメータ7の熱外中性子照射部7rは、ターゲット1に対して相対的に回転するようになっている。ここで、中性子発生装置102の中性子減速部3B及びコリメータ7とともにターゲット1が回転するようにしてもよい。このようにすれば、ターゲット1で発生した中性子がターゲット1内を通過する距離を極力短くした状態を維持して熱外中性子を発生させることができる。
【0075】
以上、この実施形態では、陽子通路を中心として中性子減速部を回転させることができるので、熱外中性子の照射方向を変更することができる。これによって、熱外中性子を照射する部位に応じて適切な中性子減速部を選択して用いることができる。その結果、BNCTを行うにあたって、中性子照射の自由度を向上させることができる。なお、実施形態2に開示した構成と同一の構成を備えていれば、実施形態2と同様の作用・効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明に係る中性子発生装置及びターゲット、並びに中性子照射システムは、BNCTに有用であり、特に、BNCTに適した中性子を効率的に発生させることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施形態1に係る中性子発生装置を含む中性子照射システム示す全体図である。
【図2−1】実施形態1に係る中性子発生装置の概要を示す説明図である。
【図2−2】実施形態1に係る中性子発生装置の概要を示す説明図である。
【図2−3】図2−1、図2−3のターゲット部分の拡大図である。
【図3−1】陽子の進行方向Fと中性子の発生方向との関係を示す概念図である。
【図3−2】減速後における中性子束強度と中性子のエネルギーとの関係を、ターゲットから発生した中性子の発生方向をパラメータとして表した説明図である。
【図4】実施形態1に係るターゲットの冷却構造を示す説明図である。
【図5】実施形態1に係るターゲットの他の冷却構造を示す断面図である。
【図6−1】冷却流路の形状による熱伝達率の変化を示す説明図である。
【図6−2】冷却流路の断面を示す説明図である。
【図7】実施形態1に係る中性子発生装置を用いた治療設備の例を示す説明図である。
【図8】実施形態1に係る中性子発生装置を用いた治療設備の例を示す説明図である。
【図9】実施形態1の変形例に係る中性子発生装置の構造を説明する概念図である。
【図10】反射体の立体角と、治療に要する熱外中性子の照射時間最大値との関係を示す説明図である。
【図11】実施形態1の変形例に係る中性子発生装置の構成例を示す断面図である。
【図12−1】実施形態2に係る中性子発生装置の構成を示す全体図である。
【図12−2】実施形態2に係る中性子発生装置の構成を示す全体図である。
【図13−1】実施形態2に係る中性子発生装置において熱外中性子を照射する際の状態を示す概念図である。
【図13−2】実施形態2に係る中性子発生装置において熱外中性子を照射する際の状態を示す概念図である。
【図13−3】実施形態2に係る中性子発生装置において熱外中性子を照射する際の状態を示す概念図である。
【図14】実施形態2に係る中性子発生装置の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 ターゲット
1h 伝熱面
1p 陽子照射面
2 加速器
3a 鉄
3f フッ素化合物
3、3A、3B 中性子減速部
3Ai 入射部
3Ao 出射部
4 ビスマス(Bi)層
5、5A、5B 反射体
6 熱中性子吸収層
7 コリメータ
7r 熱外中性子照射部
8 陽子通路
9 放射線遮蔽体
20 治療室
40 ターゲット支持体
41 仕切り部材
42 冷却流路
43a 入口側ヘッダ
43b 出口側ヘッダ
44 冷却管
45 スペーサ
46 支持板
100、101、102 中性子発生装置
110 支持部材
200 中性子照射システム
210、220 治療設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギーの陽子が通過する陽子通路と、
前記高エネルギーの陽子が照射されて中性子を発生するターゲットと、
前記ターゲットの周囲に配置されるとともに、前記陽子の照射によって前記ターゲットから発生した中性子を減速する中性子減速部と、
前記ターゲットから発生した前記中性子を反射させるとともに増倍させて前記中性子減速部へ導く反射体と、
前記陽子の進行方向を回転軸として、少なくとも前記中性子減速部と前記反射体とを前記陽子通路の周りを回転できるように支持する支持部と、
を含んで構成されることを特徴とする中性子発生装置。
【請求項2】
前記中性子減速部は、前記中性子発生部内を前記ターゲットで発生した中性子が進行する方向に向かうにしたがって、前記中性子発生部内を前記中性子が進行する方向と直交する断面の面積が大きくなることを特徴とする請求項1に記載の中性子発生装置。
【請求項3】
前記ターゲットに前記陽子が衝突する部分を中心とした場合における前記反射体の立体角は、180度よりも大きく300度よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の中性子発生装置。
【請求項4】
前記ターゲットは板状の部材であり、前記ターゲットに前記陽子が照射される面とは反対側に、内部を冷却媒体が流れる断面矩形の冷却流路が複数接合されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の中性子発生装置。
【請求項5】
前記ターゲットは、
陽子が照射される陽子照射部に設けられる複数の仕切り部材と、
前記仕切り部材の端部がはめ込まれるスリットが設けられるターゲット支持体と、を備え、
前記仕切り部材に前記スリットがはめ込まれた状態で、前記仕切り部材と前記ターゲット支持体とが接合され、前記陽子照射部と前記仕切り部材と前記ターゲット支持体とで囲まれる空間が冷却流路として構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の中性子発生装置。
【請求項6】
前記冷却流路は、前記陽子の照射面と直交する方向の寸法よりも、前記陽子の照射面と平行な方向の寸法の方が大きいことを特徴とする請求項4又は5に記載の中性子発生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の中性子発生装置が備えるターゲットに、加速した陽子を照射する加速器を備え、
前記中性子発生装置から取り出される熱外中性子を熱外中性子照射対象に照射することを特徴とする中性子照射システム。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−242422(P2007−242422A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63257(P2006−63257)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】