説明

中波放送受信装置

【課題】IBOC方式において夜間の中波放送受信時に、アナログ放送とデジタル放送の切換時に生じる聴感上の違和感を軽減することのできる中波放送受信装置を提供する。
【解決手段】外部からの情報に基づいて現在が夜間であることを判定する夜間判定部(7)の出力信号と、デジタル放送復調部(3)内の信号に応答してエラー情報生成部(9)で生成されたデータエラーの頻度を示すエラー情報を基に、切換部(6)でアナログ放送復調部(4)の出力とデジタル放送復調部(3)の出力の切換を行うに際し、夜間は、昼間より切換の頻度を低下させる切換制御部(5)を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中波放送受信装置に関し、特に中波帯でデジタル放送とアナログ放送を同時に放送している放送方式に対応し、受信状態に応じておいて、デジタル放送とアナログ放送を切り換えて出力する構成の中波放送受信装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の中波放送受信装置においては、従来、夜間に安定して中波放送を自動選局で受信する方式として、自動選局の感度を昼間時の感度から変更するものが知られている(例えば下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−164325号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の中波放送受信方式においては、夜間に自動選局した後の電界変動に対しては対処することができないという問題があった。さらに、デジタル放送とアナログ放送を重畳して同時に送信している米国のIBOC(In Band On Channel)方式のハイブリッド方式では、夜間の不安定な電界変動や、遠方からの放送波の混信によって、選局後に、復調音の周波数帯域の狭いアナログ放送(約8kHz)と周波数帯域が広いデジタル放送(約15kHz)の切換が頻発し、聴感上、大きな違和感が発生するという問題点があった。
【0005】
また自動車などの車両に搭載された受信機の場合、移動に伴う電界強度の変動も相乗し、切換がさらに多発し違和感もより大きくなるという問題があった。
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、特にIBOC方式のハイブリッド方式において夜間の中波放送受信時に、アナログ放送とデジタル放送の切換時に生じる、聴感上の違和感を軽減することのできる中波放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、外部からの情報に基づいて現在が夜間であることを判定する夜間判定部の出力信号と、デジタル放送復調部内の信号に応答してエラー情報生成部で生成されたデータエラーの頻度を示すエラー情報を基に、切換部でアナログ放送復調部の出力とデジタル放送復調部の出力の切換を行うに際し、夜間は、昼間より切換の頻度を低下させる切換制御部を備えた構成を有する。
【0007】
すなわち本発明によれば、 中波帯でデジタル放送とアナログ放送を同時に放送している放送方式に対応した中波放送受信装置であって、内部又は外部のアンテナで受信された放送電波信号に応じ、所望の受信周波数の電波をI,Qのベクトルデータに変換するフロントエンドと、
前記I,Qデータからデジタル信号を復調するデジタル放送復調部と、
前記I,Q信号からアナログ放送を復調するアナログ放送復調部と、
前記デジタル放送復調部の内部の信号に応答してエラーレートを示すエラー情報を生成するエラー情報生成部と、
前記デジタル放送復調部の出力及び前記アナログ放送復調部の出力に応答し、前記デジタル信号を復調して得られた第1の復調音信号と前記アナログ信号を復調して得られた第2の復調音信号を切り換えて選択的にスピーカへ出力する切換部と、
外部から供給される信号に応答し、現在が夜間であることを判定し、夜間であることを示す出力信号を出力する夜間判定部と、
前記エラー情報と、前記夜間判定部の出力信号に基づき、夜間には昼間に比較して、前記切換部での前記アナログ放送復調部の出力信号と前記デジタル放送復調部の出力信号の切換の頻度を低下させる切換制御部とを、
有する中波放送受信装置が提供される。
【0008】
なお、前記切換制御部が、夜間における前記切換部による前記エラーレートに対する切換閾値を昼間における閾値より低下させるものであること本発明の好ましい態様である。
【0009】
また、前記切換制御部が、夜間においては、前記切換部による切換が生じたとき、次の切換を可能とするまでの時間間隔を所定の時間に設定するものであることは本発明の好ましい態様である。
【0010】
さらに、前記夜間判定部が、車両のヘッドライトが点灯していることを示す情報と、GPSの時間情報と、時計からの時刻情報を含む複数の情報の少なくとも1つに応答して夜間であることを判定するものであることは本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記構成を有するので、中波帯においてデジタル放送とアナログ放送をエラー情報に基づいて切り換える方式の受信機において、夜間、電離層の状況が変化し、電波状況が不安定になり、安定した受信状態を確保できない状況下でも聴感上、デジタル放送とアナログ放送の切換時に生じる違和感の発生頻度を低減させることができるので、聴取者が耳障りに感じる回数を減らして放送を聴取することができ、聴取者に快適な放送受信環境を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の中波放送受信装置の実施の形態1のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1の動作説明のための動作タイミング図
【図3】本発明の中波放送受信装置の実施の形態2の動作説明のための動作タイミング図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の2つの実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の中波放送受信装置の実施の形態1及び実施の形態2に共通のブロック図である。実施の形態1と実施の形態2の相違点については、後述する実施の形態2の説明の中で、明らかにする。図1において、フロントエンド2はアンテナ1からの入力信号の中から所望の周波数の高周波信号を取り出し、より低い信号に変換するとともに、その信号をそれぞれ90度位相がシフトした2つの局部発振器の信号とミキサでかけ合わせ、IQのベクトルデータに変換する。アンテナ1は、内蔵アンテナがある場合は、これを用いることができ、あるいは外部アンテナを用いることもできる。
【0014】
デジタル放送復調部3はフロントエンド2から得られたIQのベクトルデータを基にデジタル放送波を復調し、音声を出力可能とする。さらにデジタル放送復調部3の内部の信号に応答するエラー情報生成部9は、デジタル放送復調過程で受信信号内に存在するエラーの割合を示すエラーレートを示す信号をエラー情報として生成する。アナログデータ復調部4はIQベクトルデータのベクトル長の情報を基にAM(振幅変調)の復調を行う。切換部6にはそれぞれの復調部3、4で復調されて得られたアナログ放送復調信号とデジタル放送復調信号が入力され、たとえば、デジタル放送復調部3でデジタル放送が再生不可能なレベルまでエラーデータが発生した場合は、切換制御部5からの指示によりデジタル放送復調部3の出力信号からアナログ放送複復調部4の出力信号に切り換える。
【0015】
夜間検出部7はGPSあるいは電波時計などからの時計情報(時刻情報)や車両のヘッドライトの点灯情報など外部機器からの情報により、現在が夜間であることを検出し、切換制御部5へ情報を伝える。ヘッドライトの点灯情報を用いる場合は、所定時間以上継続してヘッドライトが点灯していることを検出して現在が夜間であることを判断することができる。切換制御部5はエラー情報生成部9から得られたエラーレートを示すエラー情報と夜間検出部7から得られた現在が夜間であることを示す情報を基に、切換部6に対してアナログ放送復調3の出力信号とデジタル放送復調部4の出力信号のいずれかを選択するための切換信号を生成して切換部6に送る。切換部6は、切換信号の指示により、指示された方の信号を選択して出力し、内蔵の、あるいは外部のスピーカ8に送る。
【0016】
以上のように構成された本発明の中波放送受信装置の実施の形態1における切換制御部5の動作について、以下に説明する。図2は実施の形態1における切換制御部5の動作タイミングを説明する図である。 まず、図2の(a)及び(b)は、受信電界強度が変動しやすい状況である、自動車で夜間走行中の場合を例にとって、受信電界レベルの変動とエラーレートの変動例を示したものである。電界レベルの変動とエラーレートの関係は、電界レベルが下がるとエラーレートが上がる傾向があるが、混信の他、隣接放送波の妨害や相互変調妨害がある場合は、上記のような相関が顕著でなかったり、あるいは相関が見られない場合もある。
【0017】
切換制御部5はエラーレートを示すエラー情報を基にアナログ放送復調部4の出力信号とデジタル放送復調部3の出力信号の切換を行い、いずれかを選択的に出力する。従来、この切換制御部5は昼夜共に固定した閾値A(図2の(b))を基にアナログ放送復調部4の出力信号とデジタル放送復調部3の出力信号の切換指示を行っている。この場合、図2の例では、(c)に示すように5回の切換指示を行う。なお、先の従来技術の説明にあるように、切換回数の頻度が高いと復調音の周波数帯域が狭いアナログ音と復調音の周波数帯域幅の広いデジタル音が頻繁に切り換わるため、聴感上大きな違和感が生じる。
【0018】
これに対して、本発明では夜間検出部7が現在が夜間であることを判定すると、切換制御部5は、昼間用の切換閾値Aより低い夜間用の切換閾値B(図2の(b))を用いて切換の判断を行う。すなわち、昼間の切換閾値Aより夜間は夜間用切換閾値Bまで下げられことなる。閾値が下がったことにより昼間の閾値より少ないエラーの発生でもアナログ放送復調部4の出力信号に切り換るため、結果としてアナログで出力する時間が長くなるが、切換回数は図2(d)に示すように2回となり、切換に伴う違和感を少なくすることができる。
【0019】
以上のように本実施の形態1によれば、切換制御部5に閾値の変更機能を備えることにより、夜間判定部7の出力信号に応答して夜間に限って閾値を昼間の閾値より低下さることができるため、アナログ放送復調部4の出力信号とデジタル放送復調部3の出力信号の切換部6による単位時間あたりの切換回数すなわち切換頻度が減り、よって違和感を伴う音声の発生が抑制され、聴取者に快適な放送聴取環境を提供することができる。
【0020】
(実施の形態2)
次に本発明の中波放送受信措置の実施の形態2について説明する。実施の形態2と実施の形態1との相違点は、次のとおりである。実施の形態1では、夜間は昼間よりエラーレートに対する閾値を低下させるものであったが、実施の形態2では、上記閾値の変更は行わず、図1の切換制御部5にエラー状況が改善しても一定期間は切換を行わない制御機能を持たせたことである。上記のように構成された本発明の中波放送受信装置の実施の形態2について、図3のタイミング図により動作を説明する。
【0021】
まず、図3の(a)及び(b)は夜間走行中の受信電界レベルの変動とエラーレートの変動例を示したもので、図2の(a)及び(b)と同様である。図3の(c)は、図2の(c)と同様に、昼間用の閾値を夜間に用いて切換を行った場合の切換動作を示すものであり、5回切換が行われる。
【0022】
これに対して、実施の形態2では夜間検出部7が現在が夜間であることを判定すると、切換制御部5は一旦、デジタル放送復調部3の出力信号からアナログ放送復調部4の出力信号に切り換えた後、あらかじめ切換制御部5が持つ所定時間内はデジタルへ放送復調部3の出力信号への切換指示を行わない。したがって、この例の場合、切換回数は2回となる。図3(d)はこのときのタイミング図であり、昼間での動作(すなわち従来の夜間動作を含む)を示す図3(c)に比べ、単位時間あたりの切換回数が減少している。なお、上記所定時間は、切換信号が切換を指示するタイミングでスタートするカウンタなどのタイマを利用して得ることができ、あらかじめ設定した時間内においては、切換制御部5から次の切換信号を出力させないようにすることができる。
【0023】
図3では、デジタル放送からアナログ放送に切り換えた後、所定時間アナログ放送を受信し、この所定時間内は、デジタル放送への切換を行わないという場合の例を説明しているが、実施の形態2は、逆の場合も同様に動作するものである。すなわち、アナログ放送からデジタル放送に切り換えた後、所定時間デジタル放送を受信し、この所定時間内は、アナログ放送への切換を行わない。
【0024】
以上のように本実施の形態2によれば、夜間においては切換部6が一旦切換動作を行うと、その後は、所定時間は切換を行わないよう、切換部6を制御する切換制御信号が切換制御部5で生成されて切換部6に供給されるので、音域差の大きい、アナログ放送復調部4の出力信号とデジタル放送復調部3の出力信号の切換頻度を減らし、聴感上の違和感を減らすことにより、聴取者に快適な放送聴取環境を提供することができる。
【0025】
上記実施の形態2では、実施の形態1で説明した閾値の変更は伴わないが、実施の形態1と実施の形態2を組み合わせ、夜間の閾値を昼間より低下させるのみならず、一旦切換があった後の所定時間は、デジタル放送復調部3の出力信号とアナログ放送復調部4の出力信号の間の切換を行わないように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、本発明は、簡単な構成で夜間においては昼間と比べてアナログ放送復調部の出力信号とデジタル放送復調の出力信号の切換頻度を低下させることにより、中波帯でデジタル放送とアナログ放送を同時に放送している放送方式において、夜間、電離層の状況が変化して、電波状況が不安定になり、安定した受信状態を確保できない状況下でも、聴感上、違和感を軽減させて放送を再生することができる中波放送受信装置を提供するものであり、中波放送受信装置を含むカーラジオなどのラジオ受信装置の設計・製造の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 アンテナ
2 フロントエンド
3 デジタル放送復調部
4 アナログ放送復調部
5 切換制御部
6 切換部
7 夜間判定部
8 スピーカ
9 エラー情報生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中波帯でデジタル放送とアナログ放送を同時に放送している放送方式に対応した中波放送受信装置であって、内部又は外部のアンテナで受信された放送電波信号に応じ、所望の受信周波数の電波をI,Qのベクトルデータに変換するフロントエンドと、
前記I,Qデータからデジタル信号を復調するデジタル放送復調部と、
前記I,Q信号からアナログ放送を復調するアナログ放送復調部と、
前記デジタル放送復調部の内部の信号に応答してエラーレートを示すエラー情報を生成するエラー情報生成部と、
前記デジタル放送復調部の出力及び前記アナログ放送復調部の出力に応答し、前記デジタル信号を復調して得られた第1の復調音信号と前記アナログ信号を復調して得られた第2の復調音信号を切り換えて選択的にスピーカへ出力する切換部と、
外部から供給される信号に応答し、現在が夜間であることを判定し、夜間であることを示す出力信号を出力する夜間判定部と、
前記エラー情報と、前記夜間判定部の出力信号に基づき、夜間には昼間に比較して、前記切換部での前記アナログ放送復調部の出力信号と前記デジタル放送復調部の出力信号の切換の頻度を低下させる切換制御部とを、
有する中波放送受信装置。
【請求項2】
前記切換制御部が、夜間における前記切換部による前記エラーレートに対する切換閾値を昼間における閾値より低下させるものである請求項1に記載の中波放送受信装置。
【請求項3】
前記切換制御部が、夜間においては、前記切換部による切換が生じたとき、次の切換を可能とするまでの時間間隔を所定の時間に設定するものである請求項1に記載の中波放送受信装置。
【請求項4】
前記夜間判定部が、車両のヘッドライトが点灯していることを示す情報と、GPSの時間情報と、時計からの時刻情報を含む複数の情報の少なくとも1つに応答して夜間であることを判定するものである請求項1に記載の中波放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−204962(P2012−204962A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65940(P2011−65940)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】