説明

中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類の新規利用方法

【課題】中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類は、緑化工分野では粉砕工程を改善すること、又、土壌改良材としは、該泥質岩類に含有するミネラル成分が有効に利用されることを示し、同様に、水環境における脱ミナラル化の進行抑制への対応できることを示すことが課題もあった。さらに、健康・美容・医療や生物の育成分野では、既往の素材と同様に有効利用できることを示すことが課題であった。
【解決手段】粉砕工程を乾燥状態での粉砕と篩い及び集塵機等を併用する工程に改善し、細粒分を効果的に採取可能となって、水分保持能力とミネラル成分が溶出し易い加工を可能とし、この結果、緑化工、土壌改良材及び水環境の改善に効果的に利用できることで課題を解決した。又、これまでのミネラル含有素材と同様に、健康・美容・医療、生物の育成にも効果的利用を、既往文献資料等の調査から明らかにし、課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕したものを、緑化工、土壌改良材、健康・美容・医療、生物の育成及び水環境の改善分野における新規利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明で示す中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類は、古代の海底に堆積した泥質類が、その後の地殻変動で鉱物組成と鉱物組織が再編又は再配列して固結した各岩石を指すものであり、頁岩・粘板岩・泥灰岩・泥質石灰岩・砂岩・礫質岩・珪質岩・凝灰岩・輝緑凝灰岩・千枚岩・黒色片岩・泥質片岩・黒雲母片岩・ホルンフェルス・片麻岩等の岩石からなるものである。これらの岩石は緻密で硬質のため、これまでは砕石として稼行され、その分布域は我国では全国的に点在するが、例えば東北地方の比較的まとまった分布域を挙げれば、福島県浜通り〜内陸部の一部、宮城県の太平洋側から岩手県の太平洋岸付近及び内陸部にかけてであり、これまでの利用方法は、石碑や建築資材としての石材・コンクリート骨材・盛土材等及び加工品として硯石等が主であった。以下に、各請求項毎に「従来の技術」の詳細について示した。
【0003】
請求項1記載の緑化工に関する分野では、これまでは、中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕したものを、緑化工に関する分野で利用することは殆ど無かった。
【0004】
緑化工の成育基盤材としては、培土や客土材としてこれまではクロボク土が広く利用されてきたが、クロボク土を生産する地域は比較的限定され、例えば東北地方での流通例からみれば、福島県内では関東圏の栃木県の那須火山帯の山麓部で生産されたもの、宮城県内では蔵王火山山麓のもの、岩手県内では七時雨火山山麓のものが多く流通していた。
【0005】
このようにクロボク土が緑化基盤材として流通している主な理由は、生産地が火山帯近傍に位置することから比較的限られるものの、森林化していない広大な地表部を利用しての採取が容易であったことと、火山灰が降下火山灰起源であることから粒径が細粒で転石が少なく、簡単な篩いの工程で客土として製品化できること、及びその土壌の特性としては、気相率が高く透水性が良好であることから、植生の根張り深くなって深部までの水を吸収することから、比較的少雨に強い耕作土としての特徴があった。
【0006】
緑化工の育成基盤材には、既に挙げたクロボク土等は排水性が良いことから、水分保持能力を補うために保水堆肥が併用され、保水堆肥には肥育効果を兼ねて、有機質のピートモスやバーク堆肥が使用されていた。
【0007】
なおピートモスは、客土吹付け緑化工では客土材を絡み合いで流亡から防ぐファイバー効果も有するが、現状ではほぼ全量輸入品からなり、又、バーク堆肥も原材料の多くは輸入木材の樹皮を再利用したものからなっている。
【0008】
請求項2記載の土壌改良材に関する分野では、これまでは、中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕したものを、土壌改良材に関する分野で利用することは殆ど無かった。
【0009】

が一般的であり、ここに、化成肥料は比較的大規模の化学工場から生産されて高度化成肥料や熔成燐肥として流通し、これまで容易に入手し易いことと、改善効果が速やかに発揮される特性から広く使用されてきたものであった。
【0010】
最近では耕作地に化成肥料を頻繁に使用することの弊害、例えば土壌の酸性化や脱ミネラル化による障害が多発し、このような安易な化成肥料の使用を見直す動きが盛んになっている現状にあった。
【0011】
化成肥料を頻繁に使用することによって脱ミネラル化が進行した土壌では、病虫害に弱い植生となり易く、このためにさらに多くの化成肥料を投入することと、薬剤散布も必要となって、土壌改良材としての根本的な対応とは言えない問題があった。
【0012】
又、有機質や化成肥料の頻繁な使用によっても、このような土壌から溶脱した肥料成分が周辺の河川や湖沼に流れ込み、富栄養化や自然の生態系への影響が危惧され、環境の調和からみても問題であった。
【0013】
このような化成肥料の使用に対する反省から、天然の素材による土壌改良材の開発が必要となり、例えば土壌の酸性化の対応例としては、酸性土壌の中和による対策でカルシウム分を補給するために、牡蠣・ホタテ・ホッキ貝等の貝殻を粉砕したリサイクル品等が使用されている例がある。
【0014】
しかしながら、これらの天然素材を利用する問題は、原材料の入手において点在する漁業が盛んな地域に限られ、これらが点在していることと、又、これらの地域では必ずしも製品化する生産体制が十分に備わっていない問題もあり、このような天然素材の有効利用は必要とされつつもいまだ不十分な状態にあった。
【0015】
なお、該泥質岩類の粉砕したものは、土壌改良材のうち無機質の土壌改良材に分類されるが、同様な天然の無機質の土壌改良材として利用している例は、ミネラル成分の供給ではなく、土壌の水分保持能力と気相率の向上を目的としているものであり、この代表的なものとしては、軽石・ゼオライト・発泡ガラス等の無機多孔体等が知られている。
【0016】
請求項3・請求項6記載の健康・美容・医療に関する利用分野では、中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕したもの、あるいはミネラル成分を抽出して利用する方法は、これまでは無かった。
【0017】
しかしながら、健康・医療分野では、既往の保険機能食品(栄養機能食品)を例にすれば、天然のカルシウム・マグネシウム及び鉄分を含有する素材を粉砕し、これにビタミンや香料等を添加してコーテングしたものがサプリメントとして市販され、特に激しいスポーツに従事している者や、妊産婦・授乳期の女性に利用されている例が挙げられる。
【0018】
又、健康分野に限れば、直接摂取するミネラル飲料水の利用例が多くあり、さらに、ミネラル成分を利用して食品加工されているものも多くみられる。
【0019】
美容分野では、ミネラル成分のうち特にマグネシウムに着目したものも多くみられ、他の保水成分やビタミン・ハーブ等を加えて練ったものをまま肌に塗布したり、石鹸や化粧水に添加したりして利用する例が多く挙げられる。
【0020】
請求項3・請求項6記載の特に医療に関する分野では、天然の岩石を利用している代表的な例として、中国から導入され我国では古くから使用してきた麦飯石ばくはんせきが非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献2に開示されているように、その代表的な利用例として挙げられる。麦飯石は粉砕したものを薬石として皮膚病のために塗布したり、あるいは経口摂取されてきたものがある。麦飯石は中国が原産地(黒龍江省の嘉陰地区等)で明時代の1590年に医者の李時珍の撰によって著された漢方薬書である「本草綱目」に記されているものである。この麦飯石は中国の原産地では我国ではあまりみられない炭酸による変質作用を受けた黒雲母含有の花崗岩質岩石からなり、含まれる長石が変質によってカオリンと呼称される粘土鉱物に変化したものを含み、岩石全体が多孔質となっていることが特徴であった。現在では麦飯石の効果としては、皮膚病の対する効能としてはこのカオリンの吸着性による病巣の乾燥や止血に効果的と考えられ、経口摂取ではミネラル欠乏を改善して体の免疫力を向上させるものと理解される。
【0021】
我国ではこれまでは中国から輸入した麦飯石を歴史的に使用してきたが、戦後輸入が途絶えた昭和30年代に岐阜県加茂郡白川町(所謂、美濃白川地区)の山中で薬学博士の益富寿之助により中国産の麦飯石に極めて類似の岩石が発見され、当時の研究・開発にかかわった岐阜薬科大学の大野武男薬品分析化学教授の分析結果から、有用なミネラル成分等の含有が確認された経緯もあって広く流通するものとなった。ここで記載されている国産の麦飯石の本来の岩石名は、西日本に広く分布する濃飛流紋岩と呼称される中生代白亜紀に噴出した溶岩類の分布域における、同時代の貫入岩脈あるいは岩株であり、斑晶が比較的大きいことを特徴とした石英斑岩である。この麦飯石は1971年に厚生省の医薬部外品認可がなされ、漢方薬石として接触性皮膚炎に対する効能があることも岐阜薬科大学で既に報告されている。この利用方法は含有するミネラル成分等に着目した飲料水・浄水器・河川や海域の水質浄化・浴用・入浴剤や石鹸・植物や種苗育成・食品加工や飼料改良材及びきのこ栽培・微生物の増殖・ミネラルを抽出しての飲料・化粧料や美容パック等があり、又、カオリン等の吸着効果や多孔質に着目した脱臭剤や消臭剤・止血材・フィルターや濾過材等の多岐にわたっている。
【0022】
国産の麦飯石(現在では国産と中国産それぞれ産地別に市販されている)としている石英斑岩は、岩石を構成する鉱物:斑晶は石英・長石と、黒雲母・角閃石等の有色鉱物からなり、これらの斑晶の間を充填しているのが微晶質の長石主体の石基からなり、岩石の新鮮部では割れ目が発達した緻密で硬質な岩石となっている。しかしながら、この麦飯石としての稼行状況をみると分布域の地表部付近を利用し、石英斑岩が風化の影響を受けて脆くなった部分を良質部として採掘している。このように硬質な石英斑岩が風化の影響で、石基を構成する長石類がその分解物であるカオリン等の粘土鉱物を含有し、岩塊全体が脆くなって多孔質になっていることを特徴としているものが一般に麦飯石として流通しているものである。従って麦飯石は、脆く多孔質を呈し、粒状のものを水に入れると泡を出しながら白濁し易く、含まれるミネラル成分が溶出し易くなっていることに大きな特徴がある。
【0023】
このように麦飯石を医療としての本来の利用方法は、粉末を薬石として非特許文献4に開示されているように、皮膚に塗布したり、直接経口から摂取して体内に不足するミネラル成分を補給するものであり、この方法が古くから医療行為の中で薬石としてと利用してきたものであった。
【非特許文献1】麦飯石利用技術研究会、掲示板.
【非特許文献2】大野武男他著、麦飯石の研究、岐阜薬科大学薬品分析研究室、1961.
【非特許文献3】大野武男著、石薬「麦飯石」に関する実験と考察、稲沢女子短期大学研究紀要、1985.
【非特許文献4】椿俊和他著、接触性皮膚炎に対する麦飯石の基礎的検討、医療、47(5)、331〜334p、1993.
【0024】
又、非特許文献1の開示内容を現在ではさらに麦飯石の利用範囲を拡大しての利用方法がある。即ち、特許文献1に開示されているように、飲料水の濾過装置に併設し通過する水にミネラル成分を供給するものとしての利用や、特許文献2に開示されているように、水槽中の水質の改善効果に利用したり、特許文献3に開示されているように、浴槽に利用したり、特許文献4に開示されているように、畑に混入して植生の成育増進・病虫害に強くなることや食味向上・収量の増加等に効果があることで利用していることを示す。又、特許文献5に開示されているように、ミネラルを供給した水を飲用の他に炊事・食品加工にも利用しており、さらに、特許文献6に開示されているように、ミネラル成分を抽出方法が示されてミネラル液を含有するミネラル飲料等の利用や、特許文献7の開示では、生簀いけす等の水槽の水質改善に効果があることを示し、特許文献8の開示では、微生物の培養に効果的であることが示され、特許文献9の開示では、化粧品に利用することが、特許文献10の開示では、石鹸に利用すること、及び、特許文献11の開示では、麦飯石には水中の鉛イオン等の有害な物質を吸着する効果もあることを示されている。このような吸着効果は麦飯石中に含まれる長石が分解した粘土鉱物であるカオリンの吸着やイオン交換容量の作用であると考えられている。
【特許文献1】特許公開2004−267899号公報
【特許文献2】特許公開2005−053103号公報
【特許文献3】特許公開平10202295号公報
【特許文献4】特許公開2005−204565号公報
【特許文献5】特許公開2000−166509号公報
【特許文献6】特許公開2001−292749号公報
【特許文献7】特許公開2002−355609号公報
【特許文献8】特許公開2005−110619号公報
【特許文献9】特許公開2004−018455号公報
【特許文献10】特許公開2004−099851号公報
【特許文献11】特許公開平09−117760号公報
【0025】
請求項4記載の植物・動物・菌・微生物の育成に利用する分野では、中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕したもの、あるいはミネラル成分を抽出して利用する方法は、これまでは無かった。
【0026】
請求項5記載は水環境の改善分野での利用であるが、水環境の悪化の原因にはミ

給によって水環境の改善効果(ここでは主に水槽の例)があることが示されている。このような機能はミネラル成分の溶出によって水質が腐りにくくなることや、中性化が促進されることによるもの、及び水中の微生物の機能が活発になることによる効果と考えられる。
【0027】
泥質岩類の利用方法については、これまでの特許や実用新案の申請状況をみると、古生代の泥質岩類のうち「粘板岩」については、特許文献12や、特許文献13及び特許文献14に開示されているように、岩塊そのものの成形・加工品及び建築資材としてのセメントやポリマーとの混和材の利用や、特許文献15に開示されている電磁波吸収体としての利用、及び特許文献16に開示されているように、凍結道路の滑り止め剤等利用方法があった。
【特許文献12】特開2005−036235号公報
【特許文献13】特開2002−121053号公報
【特許文献14】特開平08−268739号公報
【特許文献15】特開2001−320190号公報
【特許文献16】特開平11−061721号公報
【0028】
請求項5記載の水環境の改善にかかわる分野では、これまでは泥質岩類を粉砕したものによるミネラル成分を効果的に利用する方法は、これまでは無かった。
【0029】
請求項3・請求項6記載に関連する分野では、地質時代が中生代ジュラ紀より新しい地質時代となるが、泥質岩類の利用方法として、西日本に分布する中生代白亜紀〜新生代新第三紀最下部の四万十層中の泥質岩において、同岩からミネラル分を抽出して石鹸や化粧品としての利用が、特許文献5、特許文献6及び特許文献17に開示されている他、特許文献5ではさらに、健康食品としての利用が開示されていた。
【特許文献17】特許文献2001−294896号公報
【0030】
同様に、特許文献18及び特許19に開示されている、比較的地質時代が新しいことから堆積した当時の泥質に有機物が残存し、この有機物の効用に着目した利用としては、新生代新第三紀中新世に堆積した海泥層(岩石名:泥岩)から抽出した有効成分(海洋性腐食質と呼称、有機物)を利用した化粧品としての利用があった。
【特許文献18】特開2001−233722号公報
【特許文献19】特開2003−012448号公報
【0031】
請求項7記載の、生物の育成分野については、非特許文献5に示されているように、対象となる地質時代は新生代新第三紀中新世で、この海洋性堆積物の珪藻土層から抽出した有効成分(海洋性フミン物質と呼称、有機物にアミノ酸含有)については、作物の生育向上を計るものとして開発され、市場に流通していた。
【非特許文献5】株式会社フミン著、第11回日本腐食物質研究会発表論文、1995年11月.
【0032】
本発明で示す中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類では、地殻変動で鉱物組織が再編されて緻密で硬質になっていることを特徴としているが、上記で示されるアミノ酸を含む有機質からなる成分については、地殻変動の過程でその殆どが炭化し、多くは石墨(炭素の結晶体)に変化し、上記のような炭素を含む有機物の効果は期待されないことが大きな相違点として挙げられる。このことから、該泥質岩類の利用で着目するのは、含有するミネラル成分に限られる。
【0033】
泥質岩類の中で、地質時代が異なるが、新生代新第三紀の頁岩では、珪藻等の化石を多量に含有するものは、無機多孔体として吸湿性に優れた素材であることから、例えば新生代新第三紀中新世の稚内層頁岩(北海道)と呼称され、壁材等の建築資材用に広く市販されているものがある。この他、新生代新第三紀中新世の頁岩では、含有する粘土鉱物の吸着特性等を利用した洗髪剤や有害分子の吸着・除去等に利用され、このような新生代新第三紀の頁岩に関する特許申請は201件、実用新案申請は1件となっていた。
【0034】
しかしながら、本発明で示す中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類では、化石としてはこれらの珪藻等を含むものがあるが、地殻変動の結果緻密化して多孔体としての機能の殆どが失われてしまい、素材を未加工のままで、上記のような吸湿効果や吸着効果があまり期待されないことが大きな相違点として挙げられる。
【0035】
以上のように、請求項2・請求項3・請求項4・請求項5・請求項6・請求項7記載の本発明で示す、該泥質岩類を粉砕したものを、ミネラル成分の含有に着目して利用する方法は、殆どみられなかった。このことは、該泥質岩にミネラル成分の含有は知られてはいたものの、該泥質岩類が緻密で硬質な岩石となっていることから、この岩石中のミネラル成分の利用は困難であると考えられていたことが主な理由と推察される。
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
請求項1の緑化工の育成基盤材として利用する分野では、例えば培土や客土材として市販されているものはクロボク土が多く使用されているが、産地が限定されることから入手が困難でコストが嵩む問題があり、このような状況を改善するために該泥質岩類を培土や客土等に利用できるように粉砕過程を見直す必要があった。請求項2の土壌改良材の分野では、我国の耕作地の70%が火山灰起源のクロボク土からなり、クロボク土は燐酸固定力が強い酸性土壌であることから、土壌改良が必要とされてきたもので、これまでは有機質や化成肥料の使用で土壌改良を行ってきたが、これらの頻繁な使用はむしろ土壌の酸性化を促進してミネラル分が溶出して脱ミネラル化につながる根本的な問題を抱えていた。従って、該泥質岩類に含まれるミネラル成分を確認して、これを天然の土壌改良材として機能するためには、該泥質岩類に含有するミネラル成分等を確認し、又、これらの成分が土壌中で有効に利用されていくことを示す必要があった。請求項3・請求項4・請求項6・請求項7については、含有するミネラル成分の確認とミネラル成分が溶出し易いものに加工すること、及びその抽出方法や類似の使用例を確認して、該泥質岩類の粉砕したものが有効に利用できることを示すことが課題であった。請求項5については、流域での伐採や造成による森林の荒廃から、脱ミネラル化が進行した水環境全般を改善することが課題であるが、既往の事例を調査し、このような水環境改善に該泥質岩類を粉砕したものが効果的であることを示すことが課題であった。以下に、各請求項毎の「発明が解決しようとする課題」について示した。
【0037】
緑化工の分野においては、これまでは育成基盤材となる客土材の生産地が限定されることから、緑化工実施箇所がこれら生産地から遠隔地にあるケースがしばしばみられ、入手が容易でなかったことと、運搬コストが嵩むことが課題であった。又、このことから例えば、客土吹付け緑化工では、客土の使用量を制限してきた傾向にあり、この客土材の代わりにピートモスやバーク堆肥等の比較的安価に入手できる有機質の増量によって、吹付け厚さの確保と水分保持向上で対応している経緯があった。
【0038】
本発明では、分布域が広く多くの砕石場がある該泥質岩類の利用に着目したものであるが、該泥質岩類の緑化工の育成基盤材として利用する問題は、岩片が緻密で硬質であることから水分を弾いて吸水し難く、水分の保持能力が低いことにあった。
【0039】
これらの解決には、粒径が0.074mm以下のシルト・粘土分からなる細粒分を多く含有させることがまず課題となるが、これまでの該泥質岩類の粉砕過程で発生する細粒分を効果的に採取することは、砕石・選別工程で細粒分が岩片に付着し易いためこの細粒分を選別して採取することは、これまでは困難であった。
【0040】
実際の砕石工程の調査結果から、得られる細粒分(シルトサイズ以下、0.074mm以下)含有率は5%以下が現状であった。このため、得られた粒度組成の分類では「砂」に相当し、一般に「砂」は、透水性が大きく水分の保持能力も10%以下と小さくものである。従って、該泥質岩類を粉砕したものを緑化工に使用するためには、砕石工程を改善し、細粒分を効果的に採取することが最も大きな課題であった。
【0041】
請求項2記載の土壌改良材の分野では、該泥質岩類の成分分析を実施して、土壌改良材として有効なマグネシウム・カルシウム・カリウム・ナトリウム等の主要ミネラル成分と鉄・マンガン等の微量ミネラル成分や、該泥質岩類に特徴的に含有する肥育成分として重要な燐酸等の有用な成分の含有状況を確認することが課題であり、該泥質岩類に含まれる複数の岩種で分析を実施する必要があった。
【0042】
さらに、該泥質岩類は含まれる鉱物が再編され緻密化したものであることから、含まれるミネラル成分の結晶形態を確認し、風化・分解が進んで、この結果、含有するミネラル成分を土壌中に供給する能力があることを示すことが次の課題となった。
【0043】
又、該泥質岩類を粉砕したものからこれに含まれるミネラル成分が、土壌に混入することにより、植生に摂取されることを既往文献資料等を調査することで確認することも課題であった。
【0044】
これまでの土壌改良材としては化成肥料や有機質の投入で対応してきたが、これらの改良材は一過性の効果はあるものの、頻繁に使用することによってさらに土壌の酸性化が進行し、この結果脱ミネラル化が促進されることと、周辺の環境にも富栄養化や調和からみた問題があり、既往の土壌改良材の対応は、根本的な土壌改良材とは言えない問題があった。従って土壌改良材としての利用方法の分野では、これまでの土壌の脱ミネラル化の進行を根本的に解消することが、最も大きな課題であった。
【0045】
請求項3・請求項4・請求項6・請求項7記載の分野に利用する方法は、今日では、保険機能食品あるいは栄養機能食品として使用される分野と、同様な天然素材利用例あるいは化学的に抽出されたミネラル補給材の実態等を調査・確認し、該泥質岩類に含まれるミネラル成分が同様に利用できることを示すことも課題であった。
【0046】
請求項5記載の水環境の改善分野では、今日では森林の伐採や造成地の拡大から流域の荒廃が進み、河川等にミネラル成分の補給が少なくなっている問題の解消と、これら河川構造物の多くはコンクリート構造物で覆われていることから、河川流域のミネラル成分の補給が少なくなり、この結果、沿岸部では藻場の縮小:所謂浜焼け等の発生や、プランクトンが減少する結果から沿岸漁業の漁獲量の減少招く要因となっていた問題がある。元々我国の河川水は河川流路勾配が大きいことから、ミネラル成分の含有に乏しく、水の硬度で示すと平均して1.2程度:酸化カルシウムの濃度で20ppm程度の所謂軟水であり、ヨーロッパの河川の平均硬度:5.7に比較して著しく低いものであり、容易に脱ミネラル化が進行し易い問題があったが、このような水環境における脱ミネラル化の進行に対し、有効であること示すことが課題であった。
【0047】
このような河川等の脱ミネラル化対策には、できるだけ河川等の構造物を利用して、あるいは単独でミネラル成分の供給を促す方法を利用することも対応策である。このため、このような問題解消に該泥質岩類を粉砕した素材が有効に利用可能かとの判断、即ち、この粉砕物から水中においてミネラル成分が溶出できることを示すことが必要であり、このための有効な利用形態等を示すことが課題であった。
【0048】
又、請求項6・請求項7記載については、該泥質岩類の粉砕したものからミネラル成分を抽出して利用する分野であるが、含有するミネラル分の抽出方法を調査・検討し、さらに既往の利用実態を確認して、これらの分野での有効な利用方法を示すことが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0049】
緑化工に利用する分野では、該泥質岩類の粉砕工程を改善し、特に細粒分を効果的採取することが最も効果的な水分保持能力の向上として、課題の解決に努めた。土壌改良材の分野では、含まれるミネラル成分や肥育成分を確認し、緑化工の分野と同様に、粉砕することで土壌中で有効に機能することを文献資料等で確認することで、同様に課題の解決に努めた。又、水環境の改善に利用する分野でも、既往の市場における利用実態と、同様に含有するミネラル成分とを比較・検討することで課題の解決に努めた。さらに、健康・美容・医療及び生物の育成に関する分野での利用は、同様に既往の文献資料や市場を調査し、同様なミネラル成分の利用実態をを確認した。さらにミネラル成分の抽出状況や抽出方法も既往の文献資料の調査等で課題の解決に努めた。以下に、各請求項毎の「課題を解決するための手段」について示した。
【0050】

砕工程の調査・確認を行った。又、同時に砕石の利用実態や流通状況の調査を実施した。
【0051】
この結果、東北地方の例では、宮城県の太平洋岸部及び岩手県中央部〜太平洋岸部の広大な地域に置いて、中生代白亜紀〜古生代シルル紀間の地質時代の岩石が広く分布することを確認した。このうち、中生代白亜紀については花崗岩類や変成岩が含まれるがこれを除いても、本発明で示す中生代ジュラ紀・三畳紀、古生代二畳紀・石炭紀・デボン紀・シルル紀の各層からなる泥質岩類が広く分布していることが判明し、又、多く砕石工場が概ね各市町村に存在することを確認した。従って、このような多くの砕石場で該泥質岩類を粉砕している実態から、これら近隣の砕石場を利用して緑化工の育成基盤材が供給が可能となれば、産地が限定されないため、これまでの入手困難な状況を解消し、これら多数の砕石場は施工箇所からそれぞれ近傍に位置することから、コスト面の課題も達成できることを確認した。
【0052】

もののを細粒分含有量を15%程度以上に向上させて、少なくとも水分保持量を10%以上に向上させることで研究を進め、この結果、粒度区分による土質分類上で「砂」→「砂質土」に人為的に変更させ、このような粒度調整作業によって水分保持能力の改善がはかれることを確認した。
【0053】
このように細粒分を効果的に採取するためには、砕石工程を改善する必要があるが、その改善方法としては、特定はしないが「乾燥した粉砕と篩う2種類の工程」を導入し、岩片から細粒分が分離し易い状態での粉砕で粉砕試験を行った。
【0054】
上記のような「乾燥した粉砕と篩う工程の2種類」の改善が効果的で、岩片に付着した細粒分が粉砕と篩う工程で効果的に分離することが確認された。この際、細粒分は粉塵として大量に発生することになり、ここに採取方法の改善点の着眼として、これら細粒分からなる粉塵を効率的に捕捉するために、「扇風機と集塵機を組み合わせた採取工程」を加え、細粒分の採取を行った。
【0055】
この一連の砕石工程の改善の結果から、粉砕工程から工場内の粉塵発生を大きく抑制するとともに、採取された粉塵は0.074mm以下のシルトサイズ以下としての細粒分含有量が60%近いものであることが確認された。
【0056】
このようにして採取された粉塵は、これを単体又は細粒分が不足する一般の粉砕工程による粉砕物にブレンドすることによって、有効活用の範囲が広まるが、細粒分含有量は60%〜5%の範囲で適宜作成できることになった。ここに、緑化工における育成基盤材としては、このうち細粒分含有量を15%程度に調整するものとし、このときの水分保持能力が10%以上となる。従って、この粒度調整:細粒分含有量15%程度、で育成基盤材として利用することとし、ここに、初めて該泥質岩類を粉砕したものを、緑化工に必要な水分保持能力まで向上させて使用することが可能となり、課題を解決することができた。なお、このような粒度調整は適宜、施工現場での判断で細粒分含有量を調整して使用できることも特徴であり、一般の粉砕過程で発生するものも利用可能となっった。
【0057】

古生代二畳紀の粘板岩(塊状・黒色)、粘板岩(灰色)、凝灰岩(粗粒)、凝灰岩(細粒)の各岩石について、蛍光X線分析装置による成分分析法で実施した。この結果、土壌改良材としての効果のあるマグネシウム・カルシウム・カリ・燐酸類等を含む主要ミネラル成分と微量ミネラル成分及び肥育成分を共に含有することを確認することができた。
【0058】

して、クロボク土等の燐酸固定力が大きいこと、即ち植生が必要とする以上の燐酸分が必要となる問題が挙げられるが、これらの土壌の改良にも効果的なミネラル成分を含有するものであることが判明した。即ち、燐酸固定力の問題では燐酸を供給することと、加えて燐酸が植生に吸収され易くするためのマグネシウムの供給が必要であるが、分析結果からこれらのミネラル成分の含有を確認することができた。このように、該泥質岩類がこれらの土壌の改良に効果的であることが判明し、さらに、土壌の酸性問題でも、該泥質岩類に含まれるカルシウム分による中和作用が効果的であることが判明し、我国で抱えている土壌問題の解決に効果的に使用できることが判明し、ここに土壌改良材としての利用の課題を解決できる見通しがついた。
【0059】

果で示されたミネラル成分の含有形態についての把握を行った。この観察結果から、石英・長石・緑簾石りょくれんせきからなる鉱物粒子が数μ〜数十μの大きさで鉱物粒子として含有し、同じようなサイズの岩石片が含まれていた。又、これらの鉱物粒子間を膠結こうけつしている基質:マトリックスには、緑泥石や方解石が含有していることを確認した。
【0060】
この岩石顕微鏡観察結果から、鉱物粒子の石英・長石・緑簾石及び岩石片は風化・分解に対して比較的安定的であることから、ミネラル成分の溶脱に時間がかかるものと考えられるが、基質を構成する中の緑泥石は、一般には層状鉱物の黒雲母が風化や変質等で生成する鉱物であり、黒雲母の風化・分解過程例で示されるように、黒雲母→バーミキュライト又はヒル石→緑泥石→粘土鉱物:モンモリロナイト等の分解過程を経るものである。ここに、バーミキュライトは土壌改良材として保水性やミネラル補給材としてアフリカ産のものが市場に出回っているものである。従って、このような緑泥石の分解性から、該泥質岩類の粉砕したものは、細粒分となって比表面積が大きくなっていることから含水することにより、風化・分解が進み易いものであることが確認された。
【0061】
このように該泥質岩類の石基中に含まれて風化・分解し易い緑泥石は、化学式:(Mg,Fe2+,Fe3+,Mn2+,Ni,Al,Cr3+)(AlSi)O10(OH)で示され、この化学式から明らかなように、マグネシウム等の主要ミネラルと、鉄・マンガン・クロム等の微量ミネラル成分を含有することが知られている。化学式のOH基:水酸基、から明らかなように、緑泥石の結晶は層状に重なり合い、この層状間に水酸基が入り込んでいるもので、この層間には陽イオンを吸着したり、水分を吸着し易いものであることから風化・分解し易く、

質岩類を粉砕して細粒分にすることで、多孔体と同様に比表面積が大きくなって、水分が吸着し易くなって水分にミネラル成分が溶出していくことを確認し、課題を解決できるものとなった。このように粉砕する効果は、例えば径1cmの方形の比表面積は6cmであるが、これを半分の0.5cmの方形に分割すると比表面積は2倍となり、これをさらに小さく粉砕して該泥質岩類を細粒分:径0.074mm以下にすると、結果として6cm×2倍:64倍程度となり、計算上の比表面積は7.68mと大きくなる。このことから、粉砕して細

孔体と同様に、水中に投入するとミネラル成分が溶出するものであることを確認した。
【0062】
又、主要ミネラル成分のカルシウムについては、該泥質岩類の石基中に方解石として含まれることも岩石顕微鏡観察で確認した。方解石は化学式:CaCOで示されるように炭酸カルシウムの結晶からなり、カルシウムは水分中では表3に示した麦飯石の蒸留水に粉末を入れたときの溶出率:30%で明らかなように、カルシウム分が容易に溶脱し易い特性がある。従って、該泥質岩類を粉砕して細粒化することによって、確実にカルシウムが溶脱可能となり、例えば、酸性土壌のpH改善のための土壌改良材として利用する課題を解決することができる。
【0063】
さらに、表1の成分分析表で示したように該泥質岩類には、肥育効果のある燐酸(化学式:P)を含むことが特徴として挙げられる。一般の岩石で燐酸を含むものは少なく、例えば硫化鉱床帯等の特殊な条件でみられるものとして蛍石等の岩石があるが、我国の岩石類に含まれることは稀有な成分である。該泥質岩類に燐酸含有する由来は、該泥質岩類が海底に堆積した堆積岩であり、これらの堆積岩には当時の海水成分や生物の遺骸の分解物を含み易かったことによるものである。従って、該泥質岩類に肥育効果の燐酸の含有を確認し、これを粉砕して細粒化することで、土壌改良材として利用する課題が達成できた。
【0064】
成分分析結果では微量なことから特に示されていないが、顕微鏡観察結果から、有機物由来の炭質物は炭素が結晶した石墨として含有していることが確認され、この石墨の含有によって、該泥質岩類特有の黒色を呈するものとなっている。このことから、既に

ることも確認した。
【0065】
土壌改良材に利用する方法としては、特定はしないが、細粒分を多く含む粉砕物を土壌に散布又は攪拌したり、その他の無機・有機の素材と混合して利用することによっ

載の、我国のクロボク土等の燐酸固定力が高い酸性土壌問題について、利用できることと

ことことによる脱ミネラル化の進行や、富栄養化、及び自然環境との調和の問題について、根本的に改善できる素材であることを確認し、課題を達成できることを確認した。
【0066】
又、このようにミネラル成分を含有した粉砕物のうち、非特許文献6に示されているように、細粒分については、土壌中で微生物や地衣類がこれを摂取し、最終的に植生に吸収されることが明らかとなっていることを文献資料で確認した。このことは、該泥質岩類を粉砕したものを、土壌に混入することで効果が期待されるもので、土壌に混入する方法は特定はしないが、単独あるいは他の有機・無機物質と混入して散布・攪拌することで、最終的には植生にミネラル成分が吸収されることから、課題を解決することができる。
【0067】
さらに、非特許文献6及び非特許文献7に示されるように、該泥質岩類を粉砕したことにより、ミミズもこれを捕食することができる。ミミズの糞は植生が吸収され易いものであることから、結果的にミネラル成分が植生に吸収されることを文献資料で確認した。このことからも該泥質岩類を粉砕したものは、同様に植生の育成に効果のあるミネラル成分含有の土壌改良材としての目的を達成することができる。
【非特許文献6】ピーター・トムキンズ、クリストファー・バード著、新井昭弘訳、土壌の神秘、株式会社春秋社出版、1994.
【非特許文献7】渡辺弘之著、ミミズ、東海大学出版会、2003.
【0068】
請求項3記載については、該泥質岩類の5mm〜0.001μの粒状・粉体を含まれ

飯石の薬石としての利用例が医療分野での代表的なものとして挙げられたが、古くからの利用方法としては直接粉末を皮膚に塗布したり、経口摂取しているものであった。ここに、麦飯石の分析値例では表2に示したように該泥質岩類の成分と近似していることも確認し、文献資料で示される麦飯石の成分分析結果では、珪酸:70%(58%)、アルミニウム:14%(18%)、鉄:3%(9%)、マグネシウム:3.6%(3.5%)、カルシウム:2%(1.4%)、ナトリウム:3%(3%)、カリウム:3%(2%)、燐酸:0.3%(0.2%)、マンガン:0.02%(0.08%)であった。このように( )内に示した該泥質岩類の分析値と大きな差異が無いことがわかり、主要ミネラルと微量ミネラル及び肥育成分の総てが同様に含有することが確認された。このことから、該泥質岩類も麦飯石と同様の効果を期待できることが明らかとなり、ここに麦飯石と同様な医療目的として利用が可能であることを示して、課題が解決することができた。
【0069】
なお、麦飯石は多孔質の特性を有し、多孔質であることから水に接する面積が大きいためにミネラル成分が溶出し易いことも特徴であった。このような多孔質性を評価するために比表面積で示されるが、表2に示した美濃白川産の麦飯石の比表面積は3.67m/gとの検査データが示されている。ここに、比表面積は該泥質岩類が単位体積重量が粉末:細粒分(径0.074mm以下)のものが1.4g/cm程度であることから、総て立方体の形状として粉砕されたものと仮定すると、細粒分としての径0.074mm以下に粉砕したものでは、丁度、径0.078mmでは一辺の長さが約1cm/2となり、計算上からは7.68m÷1.4≒5.5mとなる。従って、この細粒の粒径直前段階で、該泥質岩類は表2に示した、既往の麦飯石の比表面積を上回ることが示される。このため、該泥質岩類は粉砕することで、多孔質な麦飯石と同様に容易にミネラル成分が溶出することが示されて、目的を達成できることが確認された。これまでの麦飯石の市販されているサイズは、5mm〜20mm程度の粒子状流通して、これを飲料や浴用等に利用していることから、粉砕して細粒化することで該泥質岩類からも、同様にミネラル成分等が溶出することが容易に推察できる。
【0070】
又、非特許文献7では、麦飯石の利用例としてミネラル水として健康等への利用が挙げられるが、表2に示したように、市販される麦飯石はその粉末0.06gを蒸留水1Lに入れて溶出させ、その溶出状況を水質分析した例では、マグネシウム:0.04ppm(溶出率1.9%)、鉄:2.3ppm(溶出率100%)、カルシウム:0.4ppm(溶出率30%)、マンガン:0.01ppm(溶出率100%)、アルミニウム:0.4ppm(溶出率5%)、珪酸:0.5ppm(溶出率:1.2%)であった。この溶出したものは硬度が0.04程度のものとなることから、実際にはミネラル水としての硬度:5程度まで多く溶出させなければならないことから、粉末の使用量を0.06g→10g程度まで増加させれば達成できることがわかり、容易に蒸留水等を粉末の混入によってミネラル水を作ることが示される。従って、該泥質岩類を粉砕した粉末でもミネラル成分等の含有状況がほぼ同様であることから、この例示したようにミネラル水としての利用が可能であり、これを特定はしないが飲料・炊事・食品加工・生物の育成等に有効に利用することで目的を達成できる。
【非特許文献7】ホリデイ・ライフ社ホームページ、美濃白川の麦飯石.
【0071】
なお、天然のミネラル水は国内産ではその生産箇所の特性にもよるが、その製品例:出羽山天然名水、では水質の硬度4程度:46mg/Lのもので、含有する成分は1Lで、ナトリウム:15mg、カルシウム:11mg、マグネシウム:4.8mg、カリウム:0.6mgであった。従って、該泥質岩類の粉末は計算上は6.3g程度で同様の溶出が実現できる。従って、該泥質岩類の粉末を少量使用することで、蒸留水を上記の天然ミネラル水と同様のものを作れることが確認され、ミネラル成分の増加には10g〜100g程度まで使用することで、ミネラル水の硬度を5〜50程度の範囲、あるいはさらに増量することでこれ以上の含有量のミネラル水を自在に生成できることが確認され、目的を達成することができる。
【0072】
経口摂取の例では、健康・美容・医療の分野に利用するものでは、「厚生労働省第六次改定日本人の栄養所要量」を参考にして利用することが安全とされるが、この中の主要ミネラル成分を例にすると、マグネシウム:260mg/日、カルシウム:600mg/日、微量ミネラル成分の鉄:12mg/日、となっている。
【0073】
該泥質岩類の粉末を、特定はしないが例として経口摂取した場合には、胃酸による強酸でミネラル成分が溶出されるが、表1の成分分析結果から、該泥質岩類ではそれぞれの含有量と所要量から、マグネシウム:3.5%(約8g摂取で可)、カルシウム:1.4%(約5g摂取で可)、鉄:9%(約0.2g摂取で可)で目的を達成できる。このことは吸収効果を胃酸の作用で100%と仮定すると、該泥質岩類の摂取を最大10g程度以内で1日分の所要量を賄うことで目的を達成できることになる。
【0074】
このように、該泥質岩類の粉砕したものを蒸留水でミネラル成分を溶出して利用するものより、直接経口摂取することが効率的であることを示したが、いずれにしても溶出したミネラル成分は消化器官を通じ、血液を介して体内に吸収されることになる。ミネラル成分の摂取と該泥質岩類の粉砕したものの使用量はミネラル水:10〜20リットルの摂取が必要となることから困難であり、粉末の経口摂取が効率良く少量の使用で目的を達成できることがわかる。
【0075】
請求項4記載で示す、植物・動物・菌・微生物の育成分野では、特定はしないが例えば家畜では直接給餌するエサに粉砕したものを混入することで、人間同様にミネラル成分が吸収されて目的を達成できる。ミネラル成分のバランス良い摂取は、動物・植物を問わず、体質の健全化を促進し免疫力が向上するものとなって、疾病等からの感染にも対応できるものとなる。
【0076】
菌や微生物の繁殖には常にミネラル成分を必要とし、これらのミネラル成分の摂取方法は、特定はしないが例としては、該泥質岩類の粉砕したものを直接給餌させたり、あるいはミネラル成分を抽出した溶液を与えることで、その利用目的を達成できる。このようにミネラル成分を生物全般に利用することは、その生物の体質を改善し、生育・品質・食味及び収量を向上させ、病虫害に強いものとすることが可能となって、目的を達成することができる。
【0077】
請求項5記載の、水槽・水路・池・湖沼・河川や海等の水環境の改善分野では、これまでの水環境に使用されている人工の構造物を利用し、これに該泥質岩類を粉砕したものを併用することが最も簡便に利用できる方法である。このためには、特定はしないが例として、直接粉砕したものを構造物周辺に投入、あるいは構造物の表面や内部からミネラル分を供給し易いよう、通水性になるように成形したり、構造物内に練り込んだり、張り付けたり、塗布したりしてその表面からミネラル成分が徐々に水中に溶出することで、水環境の改善効果が達成できる。
【0078】
ミネラル含有の素材を利用したこれらの環境改善のための利用形態は、ミネラル分を水中に緩やかに持続的に溶出させ、この結果、水環境の中のミネラルバランスを構築して特に微生物による自然の浄化作用を促進することを目的とする。併せて、プランクトン及び藻等がミネラル成分等を摂取して繁殖が促されることで、水中の余分な有機質を摂取させて水質の改善するものである。このようなミネラル成分のバランスを保つことの重要性は既往の文献資料でも明らかであり、該泥質岩類に含まれるミネラル成分を利用しての、水環境改善の目的を達成できることがわかる。
【0079】
請求項6・請求項7記載については、該泥質岩類からのミネラル成分の抽出した

も簡便な方法としては、粉砕した粒状・粉体を水に入れ、攪拌や過熱することで溶出を促す方法が最も簡便な溶出方法として挙げられる。しかしながら、表2に示したように、鉄・カルシウム等は使用した粉末の量と実際に溶出したミネラル成分の量で示す溶出率で示されるように、100%(鉄)〜30%(カルシウム)が溶出することを示している。又、同表では、マグネシウムは1.9%と溶出率が低い。このような粉末による溶出の実態例からみても、該泥質岩類に含まれるミネラル成分の溶出は明らかであり、このことからもその利用自的を達成している。
【0080】
なお、含有するミネラル成分の溶出率を向上させるためには、特定はしないが例えば酸による抽出方法も効果的と考えられ、酸には硫酸・硝酸・フッ化水素酸及び塩酸が効果的で、これらの酸を1つあるいは複数を併用してミネラル成分を抽出できる。特にフッ化水素酸は最も多く含有する珪酸:57.9%を溶解して除去できることから、残されたものが殆どがミネラル成分そのものとなり、最も高い歩留まりで採取できるものである。又、アルカリ溶液による抽出も特定の抽出物対象にして、これに溶け込み易い成分を採取して利用できる。この他、ミネラル成分の溶出方法としては、加熱では効果的なマイクロ波があり、振動・攪拌では超音波の使用、その他にはイオン交換・凍結・共沈・浮選・キレート・電解・蒸発・沈殿・超臨界の利用、等多くの方法がが挙げられ、これらの抽出方法の1つあるいは複合した方法によってミネラル成分を抽出して、健康・美容・医療分野、植物・動物・菌・微生物の育成等に幅広く利用することが可能となる。
【0081】
これらの抽出したミネラル成分の利用に当たっての加工法方は、特定はしないがそのまま又は濃縮、あるいは成分を限定して抽出し、これらを単独あるいは、既知の発現効果を促進する素材の1つあるいは複数の無機物・有機物とブレンドすることで、その利用に対する課題をを達成できる。
【発明の実施形態】
【0082】
発明の実施形態では、請求項1記載の緑化工と請求項2記載についての例として、岩手県内で実施した林道建設工事の切土法面の客土吹付け工の吹付け厚さ3cm、吹付け面積約1,000mの実施形態を示す。ここでは、該泥質岩類を粉砕したものを緑化工の育成基盤である客土を水分保持能力を向上させて使用し、この結果、有機質のピートモス・バーク堆肥の使用を制限することができた。又、該泥質岩類に含まれるミネラル成分や肥育成分から、これまで使用されてきた土壌改良材としての化成肥料である熔成燐肥の換わりに使用したものである。本発明で示す該泥質岩類を粉砕した新しい育成基盤材の登場と、これに含有するミネラル等の成分の確認から、これまでの肥料セット配合を基本的に見直した結果、コストの低減と、緑化工の確実性が高上し、持続性のある緑化工が実現したものである。以下に、新しく検討した緑化基盤材の配合における特徴を示した。
【0083】
客土吹付け緑化工は、表3には肥料セットとして、既往の配合(当初設計)と今回実施した該泥質岩類の粉砕したものを緑化工と土壌改良材として配合したもの(実施例)を比較して示した。緑化工を実施する法面は、切土勾配が1:0.8〜1:1.1と急峻なものを含み計3段(最大法高20m)で、このうち3cmで吹付ける部分は殆どが1:0.8の急峻なものからなる。分布する地質は古生代の輝緑凝灰岩で風化岩からなるが、岩塊は硬質部を残し、開口した割れ目が多く発達するが、尾根部のために乾燥して湧水が少ないことと、通常の緑化工では吹付けた育成基盤材が分解したり流亡した場合には、植生の繁茂が困難と考えられる条件にあった。なお、客土吹付け工実施にあたっては、当該地区が標高1,050mのために凍上対策に金網の併用となっていた。
【0084】

分含有量15%として調整したものを使用するものとし、その水分保持能力は10%以上である。なお、表3の肥料セットの中では、施工箇所地域の年間降水量の平均が1,156mmと少ないことから、追加の保水材としてゼオライト(重量の50%吸水)と吸水ポリマー(重量の40倍吸水)を併用している。ここに、通常は降雨量が1,200mm以下の場合には、吹付け厚さを増加させて対応していたが、今回は、施工経費の節減から、吸水材を別途ブレンドする工法を選択したものである。
【0085】
客土がの入手がコスト面で容易になったことから客土使用量を、表3に示したように、これまでの1.44m→3.56mと約2.5倍に増量して使用するものとした(ただし、吹付け厚3cmで100m施工当りで換算したもの)。
【0086】
請求項2の土壌改良材としては、既往の肥料セット例では有機質の保水堆肥であるピートモス:2.3m、バーク堆肥:1,730kg(約4m)と高度化成肥料:10.8kg、熔成燐肥料(化学式:3MgO・4CaO・P・3SiO):14.4kg、及び接着剤としての高分子系のもの:21.6kgの組み合わせに、シバ・マメ科及び広葉樹の種子を混合したものからなっていた(当初設計、吹付け厚さ3cm、100m当り)。
【0087】

の化学式と対比して理解されるように、該泥質岩類には熔成燐肥に含まれるミネラル成分の総てを含有していることがわかる。土壌改良材としての熔成燐肥の目的は、珪酸はこれを豊富に必要とするイネ科(ここではシバに相当)の根の生育に効果があるもので、この

シウムは土壌のpHを中性化し、燐酸は肥育効果となるもので、土壌の改良効果を目的として使用されている土壌改良材として使用されるものであった。
【0088】
従って、表4に示す成分分析表(熔成燐肥との比較)に示したように、該泥質岩類に含まれる同様の成分は吹付け厚さ3cmで100m当りで、総量ではSiO:3,708kg,MgO:224kg、CaO:88kg,P:10kgとなり、上記の熔成燐肥が総量で14.4kgであることから、各成分は極端に多いSiOを除くと少なくとも重量比で約10〜50倍含有していることになり、該泥質岩類には有効成分の総量からみれば格段に多くなっていることがわかる。
【0089】
緑化工では吹付けた種子の発芽と生育には、このようなミネラル成分が速やかに利用されなくてはならないが、該泥質岩類を粉砕して粉末状の細粒分からなるものは、分

り、この含有量から土壌中にミネラル成分等を溶脱し易いものに含む量は、同様に表3から、MgO:34kg、CaO:13kg、P:1.5kgとなり、これまで使用されてきた熔成燐肥と比較して、各成分の重量比で約1.5〜7倍程度含有することになり、当面このミネラル成分等が植生に利用されるものと考えられる。
【0090】
又、該泥質岩類を粉砕した細粒分の含有量を15%以上にすることで、生育基盤

にその使用量を約2.5倍の増量していることから、この客土そのものは単純に水分保持能力が基盤材全体で2.5倍確保したことになり、緑化工の持続性とリスクの低減効果が期待されることが特徴である。
【0091】
このために、保水堆肥として機能するピートモスとバーク堆肥からなる有機質の使用を制限することが可能となり、表3の肥料セット配合比較に示したように、これらの有機質計6.3m(吹付け厚さ3cm、100m当り)の使用を控えることとしたのも特徴である。
【0092】
なお、上記に示すピートモスは繊維状のものからなり、絡み合いで流亡も抑制するものである。ここに今回は既往の緑化工に比して2.5倍の客土を育成基盤材を吹付けることから、その流亡を抑制しなくてはならず、出願人の了承を得て、特許文献20で開示されている針葉樹樹皮繊維をファイバー材として混入し、近隣の製材所から樹皮を導入・加工して、表3に示したように、混入する針葉樹樹皮繊維は3.56mとして(吹付け厚さ3cm、100m当り)、客土吹付け緑化工を実施した。
【特許文献20】特許公開2005−42526号公報
【0093】
これら新しい配合での客土吹付け緑化工に使用する機材は、これまでの緑化工に使用されてきたソイルシーダー(加水して吹付け)とモルタル吹付け機(加水しないで吹付け)の両方とも、これまでと同様に使用するものとした。
【実施例】
【0094】
請求項1記載の緑化工の分野での育成基盤材、及び請求項2記載の土壌改良材を使用した客土吹付け緑化工は、吹付け厚さ3cm、吹付け工の総面積は約1,000mで実施したもので、これまで使用してきた有機質材料と高度化成肥料である熔成燐肥及び高分子接着剤等をまったく使用しない、新しい緑化工法が可能となり、これを実施したものであり、本施工前には、練り混ぜ試験と吹付け試験を実施し、この試験工の2週間後に種子の発芽を確認してから本施工を実施したものである。以下に実施例の詳細を示した。
【0095】
1,000mの施工面積から、当初設計からの各使用資材の数量変更は、高度化成肥料:10.8kg(使用量は同じであるが、緩効性のものに変更)、熔成燐肥:−14.4kg(使用せず)、針葉樹樹皮繊維:+3.56m(新規利用)、客土:+2.12m(増量)、ピートモス:−2.3m(使用せず)、バーク堆肥:−4m(使用せず)、ゼオライト:+200kg、高分子吸収材:+6kg、高分子接着剤:−21.6kg(使用せず)となった。
【0096】
客土吹付け工の実施にあたっては、該泥質岩類の粉砕したものは、これまで使用してきたクロボク土に換えて該泥質岩類の粉砕したものを使用し、その入手が容易になったことから混合量を2.5倍に増加した。このブレンドした新しい吹付け基材は、これまでのクロボク土が比較的軽量(単位体積重量:0.8t/m程度)であったために、混合・攪拌と吹付けが容易であったものに換えたものであった。このために、該泥質岩類の粉砕したものはやや重く(単位体積重量:1.7t/m程度)、粒子状のものが多く混入していることから、

樹樹皮繊維をファイバー効果として混合していることから、この繊維と客土が良く絡み合い、これまでの客土吹付け機であるソイルシーダー及び、厚層基材吹付け工で使用されるモルタル吹付け機のいずれでも吹付け施工が可能であった。施工速度からみれば、1台で1日に最大500m程度のペースで吹付け工が施工された。このことから、該泥質岩類を使用した新しい基材での緑化工は、これまでの機材で同じような施工ペースで施工可能であることが確認された。
【発明の効果】
【0097】
既に請求項1及び請求項2による「実施例」で示したように、該泥質岩類の粉砕して粒度を調整したものを新しく近隣の砕石工場から導入したことから、コスト面での効果あり、これまでより2.5倍多くの客土材として吹付けた結果、緑化工が困難な急峻な切土法面において水分保持や生育基盤の厚さが十分なものとなっった。このことから、これまでの有機質の保水堆肥の使用を制限することができ、さらに、これまでの配合に比して流亡し難いことから緑化工の確実性と持続性が高い緑化工を実現することができた。又、該泥質岩類の粉砕したもののミネラル成分に着目して使用することによって、土壌改良材としての化成肥料のうち熔成燐肥の使用も制限できた。このような新しい緑化基盤材は、該泥質岩類の未利用資材を有効活用することで、地産・地消に貢献するものともなった。又、有機質と化成肥料の使用を大きく制限可能な緑化工法が実現したことから、河川等への富栄養化に対する配慮と、周辺の生態との環境調和、及び化成肥料等を生産するエネルギーの節約から炭酸ガス排出を抑制し、地球温暖化対策も貢献する工法とも言えるものとなった。以下に今回実施した緑化工における発明の効果の詳細を示した。
【0098】
該泥質岩類の粉砕したものは、客土として利用する粒径2mm以下のものは、これまでは細粒のために、一括してダストとして扱われ、建築資材としての利用機会が少なかったもので、このような未利用の資材の有効利用に繋がり、地産・地消にも貢献するものとなった。
【0099】
近傍の砕石場からの客土の入手で容易になり、緑化工のコストの低減効果と併せて、客土の購入が容易になったことからこれを増量することも可能になった。ここに、遠隔地から購入してきたクロボク土は7,000〜8,000円/mと緑化工の見積り価格:3000〜4000円/mに比較して高価であることが多く、これに搬送費がかかっていたものであった。今回使用した該泥質岩類の粉砕したものは、これまではダストとして扱われ殆ど利用機会のないものであったため、その購入金額は積み込みと運搬のコストのみで済ますことができるものであった。今後販売価格を決定する必要があるが、いずれにしても価格が高いものとしての流通が期待され、今後は本発明で示すようにダスト→緑化工育成基盤材・客土として利用されることから、砕石場に経済的なメリットが大きくなる効果がある。
【0100】

あったが、該泥質岩類の粉砕したものはこのような性質は無く、育成基盤材としての問題はないことが特徴である。この他に、クロボク土は火山灰からなり、重量が軽いものから構成されているが、さらに軽くしているのは、クロボク土が古くからの焼畑や森林火災等の結果から燃焼した微粒の炭を含むためである。このために施工時に加水して吹付けると、吹付け厚さが薄くなって実減りすることからロスが大きく、より多くの量を必要とする欠点があり、結局コストに跳ね返る問題があった。今回使用した該泥質岩類の粉砕したものは、吹付けによる厚さの確保にも優れることから、このようなロスがみられないことも有利な特徴であった。
【0101】
このことは、該泥質岩類の粉砕したものは、コストの障害が少ないことから、基材に含まれる客土の増量が可能となり、これまで緑化工が困難であった急峻で岩石質の法面での水分保持量や育成基盤の厚みを増加して、水分の保持能力が向上して緑化工のリスクを低減することが可能となった。該泥質岩類を粉砕したものは生分解性の進行が少ないことから、これまでの生分解性の有機質を主体に使用した基盤材に比較して、持続性のある緑化工を実現することができた。このことは、切土法面等で硬質岩が露出して土壌を形成し難い条件での緑化工のリスクを大きく低減する効果があり、これまで緑化工が困難であった急峻な勾配での施工をも可能にする、新しい緑化工法を確立することに繋がった。
【0102】
これまで使用された保水材や肥育成分として使用されてきた有機質からなる緑化工では、ピートモスは約5年で全量生分解し、バーク堆肥は約3年で全量成分解し、それぞれ保水効果やファイバー効果が無くなり、この分解物が流亡して全量消失するものである。従って、このような緑化工の施工では、この期間のうちに吹付けた植生が法面を覆って自活可能な状態にならなくてはいけないため、急峻で硬質岩が露出するような今回の法面においては、表3に示した既往の基材による肥料セットの緑化工法は、植生の繁茂が続かないことから、施工のリスクが大きくものであった。
【0103】
燐酸固定力に問題があったクロボク土から、問題のない該泥質岩類を粉砕した客土に換えられたことから、これまでの土壌改良材としての有機質や化成肥料等の使用を制

耕作地における燐酸固定力と酸性土壌の問題を、脱ミネラル化を防止して根本的に解消する改良材としての使用も可能となったことを示すものである。
【0104】
該泥質岩類に含まれるミネラル成分や肥育成分から、土壌改良材としての熔成燐肥の使用を制限して施工ができ、今回施工した吹付け厚さ3cm、面積1,000m分では、計144kgの熔成燐肥の使用を制限することができた。このことは、例えば岩手県内だけでも同様な施工現場が年間約数十万mあるとすると、数十トンオーダーの化成肥料の低減に繋がり、これを全国規模にあてはめると年間数千トン規模の大幅な化成肥料を制限することになる。従って、この化成肥料を生産するエネルギーの使用を抑制し、結果として炭酸ガス排出量を低減して地球温暖化防止にも貢献するものとなった。
【0105】
又、該泥質岩類の粉砕したものは入手が容易になったことから、含有する量を増量することができた。この結果緑化基盤材全体の保水性が向上し、吹付け厚さの確保も容易になったことから、有機質材の使用も制限に繋がった。今回の1,000mの施工では、既往の肥料セットで明らかなように、ピートモス・バーク堆肥の計63mの使用を制限することができた。従って全国規模では数十万mオーダーの有機質の使用を少なくとも緑化工から制限可能となる。ここに、ピートモスは現状ではほぼ全量輸入品であり、バーク堆肥もその原材料の多くは輸入品(例えば米マツ等の樹皮)であり、又、これらは総て生分解性であることから、周辺に有機質を供給して、河川等の富栄養化の原因に繋がるものである。このことから、本発明の請求項1及び請求項2によって実施された客土吹付け緑化工は、河川等の富栄養化防止にも貢献し、周辺との環境の調和に大きく役立つものと言える。
【0106】

るファイバー効果が発揮され、基材の流亡や剥離を抑制するものであるが、該泥質岩類を粉砕したものとの混合で、吹付けて乾燥状態になった基材は、該泥質岩類の細粒分が付着して締まった状態を構成し、土壌硬度が20程度の適度な硬さを提供し、降雨等で流亡し難いものとなっており、一部オーバーハング部でも基材の付着が確認された。又、吹付けた基材の発芽や根の伸びや地上部の生育にも適したものとなっていることも確認された。今回の吹付け工実施直後の翌日から2日間にかけて計80mmの降雨があったが、このときの最大の降雨強度は9mm/時間であり、一般に客土吹付け緑化工では、基材の乾燥によって固く締まり降雨等での流亡に耐えるものであるが、今回施工した新しい基材の緑化工では、基材の乾燥が不十分でも比較的まとまった降雨でも流亡し難いことが確認され、その持続性を裏付けるものとなった。
【0107】
このような基材の流亡し難い特性は、表3に示す肥料セットにおける既往工法の高分子系の接着剤の使用を制限しても、十分な基材の硬度と安定を保つことが確認された。今回の施工結果から、高分子系の接着剤を1,000m分で216kg制限できたことから、同様に全国的に考えると数百〜数千トン規模で使用を制限できることが考えられる。このこと

球環境に大きく貢献するものとなった。
【0108】

分布域が山中の険しい地区に限定され、掘削して利用する範囲が風化の影響部分であることから、掘削深度が限られて比較的良質のものの産出量と埋蔵量も限られたものとなっている。しかしながら該泥質岩類の分布域は、例えば岩手県内では我国で最も広大な県であるが、中生代〜古生代の岩石がこの県内のほぼ東半分を占めて分布し、このうち花崗岩類等を除くと約半分が今回の発明で指摘した岩石の分布域に相当するものと考えられる。このことから、又、利用対象とするものは新鮮岩部や風化岩部のいずれも可能であり、その埋蔵量はほぼ無尽蔵に近いものである。従って、今後広範な分野でこれらの素材を十分に供給可能であり、又、コストの面でも既往のミネラル成分等を含有するものに比較して、はるかに有利な有効資源となっていることも特徴として挙げられる。
【0109】
【表】

【表の簡単な説明】

【表1】
本発明で示す泥質岩類の成分分析結果を示したもので、砕石場に分布する粘板岩(塊状・黒色)と粘板岩(灰色)及び凝灰岩(粗粒)・凝灰岩(細粒)について実施しているが、基本的なミネラル成分の構成はあまり変動がない。
【表2】
本発明で示す泥質岩類(ここでは粘板岩の例)と麦飯石との成分分析の比較を示し、基本的には含まれるミネラル成分等の含有状況に大きな差異は見られないことを示した。又、麦飯石の粉末の溶出例も併設して示したが、該泥質岩類の粉末からも同様にミネラル成分が溶出することが容易に推察できる。
【表3】
客土吹付け緑化工実施にあたっての、緑化基盤材の配合検討比較表であり、既往の配合例と、本発明で示す新しい配合例との比較を示した。
【表4】
既往の土壌改良材である高度化成肥料のひとつの熔成燐肥と、本発明で示す該泥質岩類(ここでは粘板岩を使用)のミネラル成分や肥育成分との比較を示した。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕し、5mm〜0.001μまでの粒状・粉末を緑化工に利用する方法。
【請求項2】
中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕し、5mm〜0.001μまでの粒状・粉末を土壌改良材として利用する方法。
【請求項3】
中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕し、5mm〜0.001μまでの粒状・粉末を健康・美容・医療に利用する方法。
【請求項4】
中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕し、5mm〜0.001μまでの粒状・粉末を植物・動物・菌・微生物の育成に利用する方法。
【請求項5】
中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕し、5mm〜0.001μまでの粒状・粉末を水槽・水路・池・湖沼・河川や海の環境改善に利用する方法。
【請求項6】
中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕し、ミネラル成分を抽出し、健康・美容・医療に利用する方法。
【請求項7】
中生代ジュラ紀を含むこれより古い地質時代の泥質岩類を粉砕し、ミネラル成分を抽出し、植物・動物・菌・微生物の育成に利用する方法。

【公開番号】特開2007−161975(P2007−161975A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380927(P2005−380927)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(506017528)株式会社平野組 (1)
【出願人】(505239895)
【Fターム(参考)】