説明

中空形材成形用押出ダイス

【課題】押出加工力が大きな高力系合金、特に、いわゆる7000系といった最高強度アルミ合金からなるビレットを押出し成形する場合でも、高速押出しができると共にスパイダーの破断を防止して長寿命化を図れるようになる中空形材成形用押出ダイスを提供する。
【解決手段】押出ダイス10を、ビレットBを上流側から下流側に押出して中空形材の内側形状を成形するオス20型とこのオス型20を保持し中空形材の外側形状を成形するメス型30を備えて構成し、オス型20を、スパイダー22とこのスパイダー22を保持するホルダー25とで構成し、スパイダー22を、マンドレル23とこのマンドレル23を支持しかつ先端外周面24Cがブリッジ保持面25Cと係合する複数のブリッジ部24とで形成し、各ブリッジ部24の先端外周面24Cとホルダー25のブリッジ保持面25Cとを焼き嵌めにより接合した構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高力系合金、特に、いわゆる7000系といった高強度アルミ合金からなる中空形材を成形する中空形材成形用押出ダイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にアルミニウム合金等の押出加工は、断面形状の自由度が高く、押出成形される中空形材を得るのに優れているため、現在では広く採用されている。
特に近年は、押出加工による製品が、構造材、機械部品等の強度部材として広く使用されるようになり、そのため、高力系合金、特に、7075、7N01、7003等の、いわゆる7000系といった高強度アルミ合金からなる押出部材の需要が増加してきている。
【0003】
中空形材を成形するための従来の押出ダイスの一例として、オス型及びメス型がダイリングの内部に装着されている、いわゆるスパイダーダイスからなる中空材の押出し用ダイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図20に示すように、この特許文献1に開示されたスパイダーダイス100は、中空形材の内側形状を成形する中子(マンドレル)110を有するオス型101と、中空形材の外側形状を成形するメス型102と、を備えて構成されている。
オス型101は、上記中子110と、この中子110を保持する雄型リング112とを備えて構成されている。また、中子110は、成形用凸部113と、この成形凸部113を保持するブリッジ足111とで形成されている。
そして、ブリッジ足111の先端部115の先端部周側面115bが、押出し方向の先側に行くにしたがって拡開する傾斜面となっている。この先端部周側面115bは、雄型リング112の内周面112aと嵌合されている。
【0005】
中子110はその下部に上記中空形材の内側形状を成形する部位を有しており、中子110の外周には、雄型リング112の内周傾斜面112aに向かって例えばX字形状、つまり四方に延びた前記ブリッジ足111が設けられている。そして、4本のブリッジ足111と雄型リング112の内周面112aとで囲まれた空間が、材料であるアルミ合金からなるビレットの導入空間Sとなっている。
【0006】
オス型101は、矢印Aで示す押出方向先側で前記メス型102によって保持されている。このメス型102には、前記中子110の下部が挿通されると共に中空形材の外側形状を成形する成形孔部106が形成されている。また、メス型102の外周側上面には、前記オス型101のブリッジ足111の底面を保持する保持面116が形成されている。
以上に説明したように、特許文献1に開示されたスパイダーダイス100では、各ブリッジ足111が、先端部115の先端部周側面115bが押出し方向の先側に行くにしたがって拡開する傾斜面となっているので、ビレットの押出中、各ブリッジ足111には軸力が作用すると共に、各ブリッジ足111に作用する曲げ応力が減少される。そのため、各ブリッジ足111の撓みが抑制され、押出中における中子110の保持状態が安定する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−124633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、中空形材成形用の材料として、高力系合金、特に、いわゆる7000系の高強度アルミが使用され、その合金で成形される例えば自動車バンパー用部材として、いわゆる断面目の字形状等といった複数の中空部を有する押出形材を形成する場合、その変形抵抗が他の合金種に比べて高いので押出加工力が大きくなり、ダイス工具系への負荷も大きいので、押出速度をアップさせ、ダイスの寿命を向上させることが困難である。
【0009】
例えば、前記特許文献1に開示された中空材の押出し用ダイス100では、雄型リング112の内周傾斜面112aとブリッジ足111の先端部周側面115bとを圧入し、ブリッジ足111に、押出方向と直交する方向の圧縮応力を発生させるようになっており、この圧縮応力と、押出加工が実行され各ブリッジ足111の上面に加わる押出力、つまり成形用凸部113に生じる押出方向先側に引っ張る引張力とを相殺させ、よって、ブリッジ足111の破損、ひいては中子110の破損を防止しようとするものである。
【0010】
ところが、上記押出し用ダイス100では、ブリッジ足111の先端部115が押出し方向の先側に向かって広がる方向に傾斜しているので、ブリッジ足111の先端部115においてメス型102の保持面116上に保持された基端部P1と、ブリッジ足111と成形用凸部113との交点、つまり引張り力により破断するおそれのある作用点P2との距離Lが大きくなり、モーメントが大きくなる。
そのため、中子100に押出力が加えられたとき、上記作用点P2に大きな加重が掛かり、ブリッジ足111が破断するという問題が生じる。
【0011】
この問題を解決するためには、ブリッジ足111の寸法を大きくしてブリッジ足111の強度を強くすることや、基端部P1と作用点P2との距離Lを小さくしてモーメントを小さくすることが考えられる。
しかし、ブリッジ111の寸法を大きくする場合、ビレットを案内して収容するビレットの導入空間Sが少なくなりビレットの設定量を確保できない。ビレットの設定量を確保するためには、雄型リング112の内径部を大きくする必要があり、そうすると、ダイスが大型化すると共に、距離Lが長くなり、結局モーメントを小さくすることはできない。
また、基端部P1と作用点P2との距離Lを小さくする場合、雄型リング112と各ブリッジ足111との間の空間、つまり、ビレットの導入空間Sが少なくなり、ビレットの押出し量が少なくなる等の問題が生じ、距離Lを小さくするには自ずと限界がある。
【0012】
上記のように、圧縮応力と引張応力との間での相殺により問題を解決しようとするスパイダーダイス100では、ブリッジ足111、ひいては中子110が破断するおそれがあるため、ダイスの長寿命化を図ることも限界がある。
【0013】
上記問題点を解決するために、本発明では、押出加工力が大きな高力系合金、特に、いわゆる7000系といった高強度アルミ合金からなるビレット(押出材料)を押出し成形する場合でも、高速押出しができると共にマンドレルの破断を防止して長寿命化を図れるようになる中空形材成形用押出ダイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の中空形材成形用押出ダイスは、上流側から送られてくるアルミ合金からなるビレットを下流側に押出して中空形材の内側形状を成形するオス型と、このオス型を保持すると共に前記中空形材の外側形状を成形するメス型とを備えた中空形材成形用押出ダイスであって、
前記オス型を、前記内側形状を成形するスパイダーと、このスパイダーを保持するホルダーとで構成し、
前記スパイダーを、前記中空形材の内側形状に対応するマンドレルと、このマンドレルと一体的に設けられると共に当該マンドレルの周囲から外方に向かって突出した複数のブリッジ部とで形成し、
前記各ブリッジ部の先端外周面と前記ホルダーの内周面部とを焼き嵌めにより接合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の中空形材成形用押出ダイスは、以上のように構成されているので、スパイダーの各ブリッジ部の先端外周面とホルダーの内周面部とが焼き嵌めにより接合されて一体化されていることから、ダイスに掛かる応力をスパイダーとホルダーとで受けることができ、これにより、各ブリッジ部の応力集中部の応力が緩和されるので、スパイダーのブリッジ部の破断を防止することができる。
その結果、押出加工力が大きな高力系合金、特に、いわゆる7000系といった高強度アルミ合金からなるビレット(押出材料)を押出し成形する場合でも、高速押出しができると共にダイスの長寿命化を図れるようになる。
また、ビレットを押し出す際の圧力がスパイダーのマンドレルおよび各ブリッジ部に加えられても、スパイダーの各ブリッジ部の先端外周面とホルダーの内周面部とが焼き嵌めにより接合されて一体化されているので、スパイダーの各ブリッジ部だけが微妙に動いたりすることがなく安定して保持される。その結果、中空形材を所望する高精度に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明に係る中空形材成形用押出ダイスの第1実施形態を示す全体平面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿った縦断面図である。
【図3】前記実施形態のオス型とメス型とを組み合わせた状態を示す全体断面斜視図である。
【図4】前記実施形態のホルダーとスパイダーとを焼嵌めする前の状態を示す分解縦断面図である。
【図5】前記実施形態のホルダーとスパイダーとの焼嵌めに際して加熱されたホルダーにスパイダーを挿入する状態を示す縦断面図である。
【図6】前記実施形態のスパイダーの平面を示す平面図である。
【図7】前記実施形態のスパイダーを示す全体斜視図である。
【図8】図6におけるVIII−VIII 線に沿った縦断面図である。
【図9】図6におけるIX−IX線に沿った縦断面図である。
【図10】前記実施形態のメス型を示す全体平面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿った縦断面図である。
【図12】前記実施形態の中空形材成形用押出ダイスにより成形される断面目の字形状の中空形材を示す斜視図である。
【図13】前記実施形態の中空形材成形用押出ダイスにより成形される断面口の字形状の中空形材を示す斜視図である。
【図14】本願発明に係る中空形材成形用押出ダイスの第2実施形態を示しホルダーとスパイダーとを焼嵌めして一体化した状態を示す縦断面図であり、図15におけるXIV−XIV線に沿った縦断面図である。
【図15】前記第2実施形態のホルダーとスパイダーとを焼嵌めする際の位置合わせの状態を示す平面図である。
【図16】前記第2実施形態のホルダーとスパイダーとを焼嵌めする際の位置合わせの状態を示す斜視図である。
【図17】本願発明に係る中空形材成形用押出ダイスの第3実施形態を示しホルダーとスパイダーとを焼嵌めして一体化した状態を示す縦断面図である。
【図18】前記第3実施形態のスパイダーの1つのブリッジ部とホルダーの受け面部との関係を示す平面図である。
【図19】本願発明のスパイダーの変形形態を示す平面図である。
【図20】従来の中空材の押出し用ダイスを示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図1〜図11を参照して、本発明の中空形材成形用押出ダイス(以下、単に押出ダイスという)10の第1実施形態を説明する。
【0018】
本第1実施形態の押出ダイス10は、スパイダーダイスタイプであり、高力系合金、特に、いわゆる7000系といった高強度アルミ合金からなる中空形材を成形するものであり、本実施形態の押出ダイス10では、例えば図12に示すような、断面目の字形状の中空形材1を成形するものである。
【0019】
押出ダイス10は、図2に示すように、押出し方向の上流側から送られてくるアルミ合金からなるビレットBを下流側に押出して中空形材1の内側形状を成形するオス型20と、中空形材1の外側形状を成形するメス型30と、このメス型30を保持するバックダイ40とを備えて構成されている。
ビレットBは、オス型20の上流側に配置されたチャンバー等からなるビレット押出し装置60内に収容され、且つそのビレット押出し装置60により押出されるように構成されている。
【0020】
オス型20とメス型30とバックダイ40とは一体的に連結されている。
すなわち、オス型20とメス型30とが、図1、図2に示すように、例えばノックピン47および2本の位置決めピン46で位置決めされた後、これらのオス型20とメス型30とバックダイ40とが例えば2本の連結ボルト45で連結、固定されている。
【0021】
図1〜図3に示すように、オス型20は、中空形材1の内側形状を成形するスパイダー22と、このスパイダー22の外周を保持するホルダー25とで構成されており、これらホルダー25とスパイダー22は、焼き嵌めにより強固に接合されて一体化されている。
また、スパイダー22の上面部22Aは、全面にわたって平坦面に形成されている。
スパイダー22とホルダー25とが一体的に組立てられたとき、スパイダー22を構成するマンドレル23およびブリッジ部24の上記上面部22Aは、図2に示すように、ホルダー25の上端面(シール面)25Aから所定寸法押出し方向下流側に後退した位置に配置されている。
【0022】
スパイダー22は、中空形材1の内側形状に対応する上記マンドレル23と、このマンドレル23を支持すると共に当該マンドレル23の周囲から外方に略X字状に突出した複数のブリッジ部24、すなわち第1のブリッジ部24a、第2のブリッジ部24b、第3のブリッジ部24c、および第4のブリッジ部24dの4個で構成されており、各ブリッジ部24a〜24d間の空間がビレットBの導入空間Sとなっている。
【0023】
そして、これらの4本の第1のブリッジ部24a、第2のブリッジ部24b、第3のブリッジ部24c、第4のブリッジ部24dのそれぞれの先端外周面24Cが、ホルダー25の内周面部であるブリッジ保持面25Cと係合し合い、かつ、焼き嵌めにより接合されるようになっている。
【0024】
これらの第1〜第4ブリッジ部24a〜24dには、前記上面部22Aから所定高さにわたって、前記下流側に行くに従って広くなる傾斜状のビレットガイド面24Eが形成され、上流側から押し出されたビレットBがスムーズに押し出されるようになっている。
【0025】
本第1実施形態の押出しダイス10では、前述のように、スパイダー22を構成するブリッジ部24の第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの先端外周面24Cと、ホルダー25のブリッジ保持面25Cの一部とが、焼き嵌めにより強固に接合された構成となっている。
【0026】
ここで、焼き嵌めとは、熱を利用して強い接合を得る方法であり、穴のあいた円板などの部材を加熱膨張させて、穴の直径よりやや大きく作った軸を嵌め入れ、その後、冷却して固定する嵌め合いの方法を言い、締め付けタイプの接合として使われている。そして、焼き嵌めにより、両者(上記例では、円板と軸)は固着状態になる。
焼き嵌め時に加熱するには、どのような方法でもよいが、例えば、ソリッドステート電源を使った誘導加熱による加熱が好ましい。この加熱方法では、信頼性、再現性に優れ、非接触でエネルギー効率の高い加熱を短時間に行うことができるものである。
【0027】
図2,3には、スパイダー22とホルダー25とを焼き嵌めして接合された状態が示されている。
これらの図2,3には、スパイダー22の例えば第2ブリッジ部24bの先端外周面24Cと、ホルダー25のブリッジ保持面25Cとが焼き嵌めにより強固に接合された状態が示されている。なお、これらの図2,3では、第2ブリッジ部24bの先端外周面24Cと、ホルダー25のブリッジ保持面25Cとが接合された状態が示されているが、前記他の第1ブリッジ部24a、第3ブリッジ部24c、および第4ブリッジ部24dのそれぞれの先端外周面24Cと、ホルダー25のブリッジ保持面25Cとの接合状態も、図2、図3と同様である。
【0028】
図4には、スパイダー22とホルダー25とが焼き嵌めされる前の状態が示されている。この図4は、図1においてII−II線に沿った縦断面図を表した図2のオス型30を拡大すると共に、スパイダー22とホルダー25とを分解した状態を示す図である。
【0029】
ホルダー25は、所定厚さを有する全体円板状に形成されており、そのブリッジ保持面25Cは、ホルダー25の上端面25Aの先端内径端部から前記メス型30側に向かって広がる所定の傾斜角度α°に形成された傾斜面部25mと、この傾斜面部25mの先端に連続して下面25Bまで直線で延出した直線部24nとで形成されている。
そして、上記傾斜面部25mの傾斜角度α°は、例えば0.5°〜1°に設定されている。
また、ブリッジ保持面25Cを構成する傾斜面部25mの上端面25Aにおける先端内径端部の内径寸法Nは、焼き嵌めする前、つまりホルダー25が加熱される前の内径寸法である。
【0030】
これに対して、スパイダー22の第2ブリッジ部24bの先端外周面24Cは、前記ブリッジ保持面25Cに対応するように形成されている。
すなわち、スパイダー22の先端外周面24Cは、上面部22Aの外周端部から前記メス型30側に向かって広がる所定の傾斜角度α°に形成された傾斜面部24mと、この傾斜面部24mの先端に連続して先端まで直線で延出した直線部24nとで形成されている。そして、傾斜面部24mは、上記ブリッジ保持面25Cの傾斜面部25mと対応し、直線部24nは、ブリッジ保持面25Cの直線部25nと対応するように構成されている。
また、傾斜面部24mの傾斜角度α°は、ブリッジ保持面25Cの傾斜面部25mの傾斜角度α°と同じ0.5°〜1°に設定されている。
【0031】
以上のように、ホルダー25のブリッジ保持面25Cとスパイダー22の先端外周面24Cとには、それぞれ互いに対応する傾斜面部25mと傾斜面部24mとが形成されているので、スパイダー22をホルダー25に挿入する際、傾斜面部25mに傾斜面部24mがガイドされた状態となるので、挿入作業が容易となる。
【0032】
しかし、全面が傾斜面だと、傾斜面部25mと傾斜面部24mとが互いに傾斜しているので、挿入方向と逆方向の力、すなわち、スパイダー22がホルダー25から抜け出る力が生じてしまう。
そこで、スパイダー22がホルダー25から抜け出るのを防止するため、本第一実施形態では、各傾斜面部25mと傾斜面部24mとの先端側には、それぞれ直線部25nと直線部24nが設けられている。そのため、当該直線部25nと直線部24n同士間に摩擦力が生じ、これにより、スパイダー22がホルダー25から抜け出るのを防止することができる。
【0033】
スパイダー22の外形寸法、つまり第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの先端が接する外接円は、外形寸法Mに設定されており、この外形寸法Mは、前記ホルダー25におけるブリッジ保持面25Cの前記先端内径端部の内径寸法Nは、加熱前の内径寸法Nより、所定寸法大きく形成されている。
言い換えれば、ホルダー25のブリッジ保持面25Cの加熱前の先端内径寸法Nは、スパイダー22の第1〜第4ブリッジ部24a〜24dにおける各先端外周面24Cの外接円の外径寸法Mより小さな寸法に形成されている。
【0034】
スパイダー22とホルダー25との寸法が以上のように設定されているので、焼き嵌め時に、図5に示すように、まず、ホルダー25を加熱してホルダー25のブリッジ保持面25Cを膨張させて、ブリッジ保持面25Cの前記先端内径端部の内径寸法Nをスパイダー22の外径寸法Mより広げた後、スパイダー22を図示しないスパイダー把持手段により把持した状態で、図4、図5に矢印Iで示すスパイダー22の挿入方向に沿って、すなわち、下流側から上流側に向かって第1〜第4ブリッジ部24a〜24dをホルダー25のブリッジ保持面25Cに挿入する。
【0035】
そして、両者の正確な位置等での嵌り具合を確認し、その後に冷却すれば、ホルダー25のブリッジ保持面25Cが加熱前の内径寸法Nに戻るため、第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの各先端外周面24Cがホルダー25に強固に接合されることになる。その結果、スパイダー22とホルダー25とが固着状態で一体化される。
【0036】
なお、図4において、スパイダー22がホルダー25に想像線(二点鎖線)で記載されているが、この図4は、ホルダー25が加熱されていない状態であり、その場合のスパイダー22との大きさを表したものである。
実際には、図5に示すように、ホルダー25を加熱して膨張させ、ブリッジ保持面25Cの内径寸法Nを第1〜第4ブリッジ部24a〜24dにおける各先端外周面24Cの外接円の外形寸法より大きくした後に冷却するため、焼き嵌め後のホルダー25のブリッジ保持面25Cの内径寸法は、第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの外接円の外形寸法Mと同一大きさの内径寸法となる。
【0037】
ここで、スパイダー22とホルダー25との焼き嵌め作業は、図5に示すように、例えば、焼き嵌め用作業台90にホルダー25を載置して行うことができる。
この場合、スパイダー22の下面部22Bを焼き嵌め用作業台90の上端面90Aに突き当てることで、スパイダー22とホルダー25との厚さ方向の位置決めを行うことができる。
【0038】
焼き嵌めの際、加熱されたホルダー25の内周面にスパイダー22を挿入し、その後、冷却すると、スパイダー22を構成する第1〜第4ブリッジ部24a〜24dがすぼまる方向に変形しやすい。
そこで、本第一実施形態では、第1〜第4ブリッジ部24a〜24dがすぼまる方向に変形しないように、2個のブリッジ部24の互いに対向する側面で下流側の先端一部にブリッジ横振れ防止部24Dを設けた構成とした。
【0039】
すなわち、図6、図7に示すように、平面形状がX字となるように配置されている第1〜第4ブリッジ部24a〜24dのうち、第1ブリッジ部24aと第4ブリッジ部24d、および第2ブリッジ部24bと第3ブリッジ部24cの互いに対向する側面で前記下流側の先端一部に、上記ブリッジ横振れ防止部24Dが設けられている。従って、ブリッジ横振れ防止部24Dは、前記マンドレル23を挟んで相互に反対側の2箇所に設けられていることになる。
【0040】
ブリッジ横振れ防止部24Dは、第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの先端外周面24Cの前記直線部24nの高さと略同じ高さ寸法に形成されている。また、ブリッジ横振れ防止部24Dは、上記先端外周面24Cの直線部24nと平行な直線状に形成されている。
そして、このブリッジ横振れ防止部24Dは、後で詳細を述べるビレット溜まり部30Bを形成する淵部上に載置されるようになっている(図2参照)。
【0041】
第1〜第4ブリッジ部24a〜24dは、前記マンドレル23に連続して前述のように平面形状が略X字となるように配置されているが、図6に示すように、各ブリッジ部24a〜24dの幅方向中心を結ぶ交点Pは、スパイダー22の中心Oと異なった位置にあり、X字は変形のX字となっている。そのため、第1ブリッジ部24aと第4ブリッジ部24d、および第2ブリッジ部24bと第3ブリッジ部24c間の距離が、第1ブリッジ部24aと第2ブリッジ部24b、および第3ブリッジ部24cと第4ブリッジ部24d間との距離が所定寸法異なっている。
本実施形態では、第1ブリッジ部24aと第4ブリッジ部24d間の距離が、第1ブリッジ部24aと第2ブリッジ部24bとの距離より長くなっている。
【0042】
ここで、第1〜第4ブリッジ部24a〜24dのうち、隣り合うブリッジ間の距離が長い方が変形しやすく、つまり、すぼまりやすい傾向がある。そのために、本実施形態では、隣り合うブリッジ間の距離が長い第1ブリッジ部24aと第4ブリッジ部24d、および第2ブリッジ部24bと第3ブリッジ部24c間に、それぞれ前記ブリッジ横振れ防止部24Dを設けたものである。
【0043】
スパイダー22とホルダー25とが、以上のように構成されているので、焼き嵌めに際して、加熱されたホルダー25のブリッジ保持面25Cにスパイダー22を挿入し、第1〜第4ブリッジ部24a〜24dを所定位置に固定するため、スパイダー22を回しながら押し込むとき、第1ブリッジ部24aと第4ブリッジ部24d、および第2ブリッジ部24bと第3ブリッジ部24c間に、それぞれブリッジ横振れ防止部24Dが設けられているので、このブリッジ横振れ防止部24Dが、各ブリッジ部24a,24d等の側面部同士を突っ張る状態で保持しているので、第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの変形を防止することができる。
【0044】
図1、図3等に示すように、各ブリッジ部24a〜24dの下部には、当該各ブリッジ部24a〜24d間に形成された前記ビレット導入空間S同士を連結する空間連結孔26が形成されている。したがって、上流側から送られてきたビレットBがビレット導入空間S内に導入された後、そのビレットBは上記空間連結孔26を通じて、相互に隣り合うビレット導入空間S内のビレットBと混ざり合うことになる。
【0045】
図2、図3、図8等に示すように、スパイダー22を構成する前記マンドレル23には、前記ビレットBの流れの下流側端部に形成された内側成形突起部23Aが設けられている。
この内側成形突起部23Aは、各ブリッジ部24a〜24dの先端外周面24Cの下端からメス型30側に突出して形成されている。そして、このような内側成形突起部23Aは、図8に仮想像(二点鎖線)で示すような、断面目の字形状の中空形材1の3つの空間1S,1S,1Sをそれぞれ形成する第1内側駒部23B、第2内側駒部23C、第3内側駒部23Dで構成されている。
【0046】
ここで、断面目の字形状の中空形材1は、図8,9に仮想線で示すように、一対の長辺壁1A,1Aと、これらの長辺壁1A,1Aの長手方向端部同士を連結する短辺壁1B,1Bと、これらの短辺壁1B,1B間に均等に配置された2個の仕切り壁1C,1Cとを有する形状となっている。
【0047】
内側成形突起部23Aは、前述のように、各ブリッジ部24a〜24dの先端外周面24Cの下端からメス型30側に突出しているが、この内側成形突起部23Aは、図2に示すように、メス型30に形成されたビレット溜り部30Bおよびそれに続く形材成形用孔部50内に挿通されるようになっている。
そして、ビレット溜り部30Bは、図2に示すように、前記ブリッジ横振れ防止部24Dの内径部の大きさと略等しい内径寸法に形成されると共に、所定の深さに形成されている。
【0048】
上記メス型30は、図10,11にも示すように、その上面(上流側の面)には、中央部が凹んだホルダー受面30Aが形成され、このホルダー受面30Aに前記ホルダー25の前記下面25Bが当接して当該ホルダー25が保持されるようになっている。
また、このホルダー受面30Aに前記ビレット溜り部30Bが形成されている。
【0049】
前記形材成形用孔部50は、ビレット溜り部30Bの略中央部に形成されており、内側成形突起部23Aの外側形状とビレット溜り部30Bに形成された外側成形開口部30Cとの間に設定された所定寸法の間隔により形成されている。そして、この形材成形用孔部50から押し出されたビレットBにより、図8,9に仮想線(二点鎖線)で示す中空形材1の外形形状が形成されるようになっている。
【0050】
上記形材外形用開口部30Cは、図11に示すように、わずかな寸法の直線部からメス型30の外周方向に拡開する逃げ部30aを有している。
そのため、形材成形用孔部50から押し出されるビレットBが周囲のどこにも接触することなく押し出されるようになる。
【0051】
前記内側成形突起部23Aを構成する第1内側駒部23B、第2内側駒部23C、および第3内側駒部23Dは、それぞれ略四角柱形状に形成されており、前述のように、マンドレル23の押出し方向下流側の端部に設けられている。
上記各駒部23B,23C,23Dにおいて押出し方向上流側には、それぞれの外周から外側に突出した帯状の突起枠23Eが、各駒部23B,23C,23Dの各外周を巻くようにしてそれぞれ設けられている。
【0052】
第1内側駒部23Bおよび第3内側駒部23Dの外周3箇所の突起枠23Eと、第2内側駒部23Cの外周2箇所の突起枠23Eとは、前記メス型30の形材外形用開口30Cとそれぞれ対向しており、それぞれの隙間が、長辺壁1A,1Aおよび短辺壁1B,1Bを形成するための前記形材形成用孔部50を構成している。
そして、この形材形成用孔部50から押出されたビレットBにより、前記中空形材1の長辺壁1A,1Aおよび短辺壁1B,1Bが形成されるようになっている。
【0053】
また、対向する第1内側駒部23Bの突起枠23Eと第2内側駒部23Cの突起枠23Eとの隙間、および対向する第2内側駒部23Cの突起枠23Eと第3内側駒部23Dの突起枠23Eとの隙間が、前記仕切り壁1C,1Cを形成するための形材形成用孔部51を構成している。
そして、この形材形成用孔部51から押出されたビレットBにより、中空形材1の仕切り壁1C,1Cが形成されるようになっている。
【0054】
第1内側駒部23Bの突起枠23Eと第2内側駒部23Cの突起枠23Eとの隙間、第2内側駒部23Cの突起枠23Eと第3内側駒部23Dの突起枠23Eとの隙間には、それぞれビレットガイド孔部24Fが連通している。
このビレットガイド孔部24Fは、図6に点線で示すように、第1ブリッジ部24aと第2のブリッジ部24b、および第3のブリッジ部24cと第4ブリッジ部24d同士を結ぶ線方向に沿って形成され、図8に示すように略半円形のトンネル状に形成されている。
【0055】
そして、これらのビレットガイド孔部24Fには、ビレットBが前記ビレットの導入空間Sから矢印nで示すように押圧されてガイドされ、形材形成用孔部51を経由して押出されるようになっている。
また、第1内側駒部23Bおよび第3内側駒部23Dの突起枠23Eとメス型30の形材外形用開口部30Cとの隙間、つまり前記形材形成用孔部50には、ビレットBがビレット導入空間Sから矢印mで示すように押圧されてガイドされ、形材形成用孔部50を経由して押出されるようになっている。
【0056】
以上のように構成されたダイス10により押出し成形された中空形材1が図12に示されている。
すなわち、上記中空形材1は、図12に示すように、一対の長辺部1Aの両端側を短辺部1Bで連結すると共に、それらの短辺部1B間に2本の仕切り壁部1Cを上記一対の長辺部1A間に連結して形成され、内部に3個の空間1S,1S,1Sを有する断面目の字形となっている。
そして、このような断面目の字形の中空形材1がビレットBの供給量に対応して、押出しダイス10の前記形材形成用孔部50,51から連続して押出し成形されるようになっている。
【0057】
次に、以上のような構成の押出ダイス10による中空形材1の成形方法を説明する。
オス型20に対して、ビレットBの押出し方向上流側に配設されたビレット押出し装置60からビレットBが押出されると、そのビレットBは、まず、ホルダー25のブリッジ保持面25Cの入口から、スパイダー22を構成する各ブリッジ部24a〜24dとホルダー25との隙間で構成されたビレット導入空間Sに導入される。
【0058】
ビレット導入空間Sに導入されたビレットBは、第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの上面からそれぞれのビレットガイド面24E、およびマンドレル23の側面を経由した後、形材成形用孔部50に導かれ、その形材成形用孔部50,51から押出され成形される。
そして、押出し成形された中空形材1は、バックダイ40に形成されている形材送出用穴40Aから送り出された後、図示しない保持機構により保持され、且つ所定のストックヤード等に搬入される。
【0059】
本実施形態の押出しダイス10は以上のように構成されているので、次のような効果を得ることができる。
(1)スパイダー22を構成するブリッジ部24の第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの先端外周面24Cと、ホルダー25のブリッジ保持面25Cとの係合面が焼き嵌めにより強固に接合されて一体化されており、ダイスに掛かる応力をスパイダー22とホルダー25とで受けることができ、これにより、各ブリッジ部24a〜24dの応力集中部の応力が緩和されるので、スパイダー22のブリッジ部24の破断を防止することができる。その結果、押出加工力が大きな高力系合金、特に、いわゆる7000系といった高強度アルミ合金からなるビレットBを押出し成形する場合でも、高速押出しができると共にダイスの長寿命化を図れるようになる。
【0060】
(2)ビレットBを押し出す際の圧力がスパイダー22のマンドレル23および各ブリッジ部に加えられても、スパイダー22の各ブリッジ部24a〜24dの先端外周面とホルダー25のブリッジ保持面25Cとが焼き嵌めにより接合されて一体化されているので、スパイダー22の各ブリッジ部24a〜24dだけが微妙に動いたりすることがなく安定して保持される。その結果、中空形材1を所望する高精度に加工することができる。
【0061】
(3)第1〜第4ブリッジ部24a〜24dのそれぞれの先端外周面24Cが傾斜面部24mと直線部24nとで形成され、ホルダー25のブリッジ保持面25Cが傾斜面部25mと直線部25nとで形成されているので、スパイダー22をホルダー25に挿入した後、冷却時にブリッジ保持面25Cが収縮し、スパイダー22を押し出方向に押し出そうとする力が作用するが、互いの直線部25nと直線部24n同士間に摩擦力が生じ、これにより、スパイダー22がホルダー25から抜け出るのを防止することができる。
【0062】
(4)第1〜第4ブリッジ部24a〜24dのそれぞれの先端外周面24Cが傾斜面部24mと直線部24nとで形成され、ホルダー25のブリッジ保持面25Cが傾斜面部25mと直線部25nとで形成されているので、スパイダー22をホルダー25に挿入する際、傾斜面部25mに傾斜面部24mがガイドされた状態となるので、挿入作業が容易となり、その結果、焼き嵌め作業がやりやすく、作業性の向上を図ることができる。
【0063】
(5)スパイダー22のマンドレル23および第1〜第4ブリッジ部24a〜24dには、所定高さにわたって、各ブリッジ部24a〜24dの上面部22Aから下流に向かって緩やかに広くなった所定高さの傾斜状のビレットガイド面24Eが形成されているので、上流側から押し出されたビレットBがビレット導入空間S内にスムーズに押し出される。その結果、ビレットBが均等に流れるようになるので、均一な中空形材1を形成することができる。
【0064】
(6)第1〜第4ブリッジ部24a〜24dのうち、隣り合うブリッジ間の距離が長い方が変形しやすいが、第1ブリッジ部24aと第4ブリッジ部24d、および第2ブリッジ部24bと第3ブリッジ部24c間に、それぞれブリッジ横振れ防止部24Dが設けられており、このブリッジ横振れ防止部24Dが、各ブリッジ部24a,24d等の側面部同士を突っ張る状態で保持しているので、第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの変形を防止することができる。
【0065】
次に、図14〜図16に基づいて、本発明の押出しダイスの第2実施形態を説明する。
本第2実施形態の押出しダイス10Aは、前記第1実施形態の押出しダイス10における第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの先端外周面24Cに相当する第1〜第4ブリッジ部74a〜74dと、先端外周面部74Cとホルダー75のブリッジ保持面部75Cとにわたって、凹凸構造77および段差構造78を設けたものである。
なお、この第2実施形態においては、上記凹凸構造77および段差構造78の部位のみが前記第1実施形態と異なり他の構成はまったく同じなので、同一構造および同一部材には同一符号を付し、異なる部分のみを説明する。
【0066】
本第2実施形態の押出しダイス10Aは、図14、図15に示すように、前記オス型20に相当するオス型70を備えて構成されている。また、このオス型70は、前記スパイダー22に相当するスパイダー72と、前記ホルダー25に相当するホルダー75とを備えて構成されている。
スパイダー72は、図14,15に示すように、前記マンドレル23に相当するマンドレル73と、このマンドレル73を支持すると共に当該マンドレル73の周囲から外方に略X字状に突出した複数のブリッジ部74、すなわち第1のブリッジ部74a、第2のブリッジ部74b、第3のブリッジ部74c、および第4のブリッジ部74dの4個で構成されている。
【0067】
そして、これらの第1のブリッジ部74a、第2のブリッジ部74b、第3のブリッジ部74c、第4のブリッジ部74dの先端外周面部74Cが、ホルダー75のブリッジ保持面部75Cと係合し合い、かつ、第1〜第4ブリッジ部74a〜74dの各先端外周面部74Cとホルダー75のブリッジ保持面部75Cとが焼き嵌めにより接合されるようになっている。
【0068】
前記凹凸構造77は、第1のブリッジ部74aと第4のブリッジ部74dのそれぞれの先端外周面部74Cに設けられた突出面部74eと、ホルダー75のブリッジ保持面部75Cに形成され前記突出面部74eと対応する凹面部75aとで構成されている。
ブリッジ保持面部75Cは、前記第1実施形態のブリッジ保持面部25Cに相当し、当該ブリッジ保持面部25Cと同様に、傾斜面部75mと直線部75nとで形成されている。そして、ホルダー75のブリッジ保持面部75Cでは、その傾斜面部75mの途中に、2個のブリッジ部74a、74dのそれぞれの突出面部74eに対応する前記凹面部75aが形成されている。
また、先端外周面部74Cは、前記第1実施形態の先端外周面24Cに相当し、当該先端外周面24Cと同様に、傾斜面部74mと直線部74nとで形成されており、この傾斜面部74mの途中に、上記突出面部74eが形成されている。
【0069】
また、前記段差構造78は、第2のブリッジ部74bと第3のブリッジ部74cのそれぞれの先端外周面部74Cに設けられた段差面部74fと、ホルダー75のブリッジ保持面部75Cに形成され前記段差面部74fと対応する段差受け面部75bとで構成され、この段差受け面部75bは直線形状面に形成されている。
【0070】
図15に示すように、前記凹凸構造77を構成するホルダー75の凹面部75Cは、オス型70の平面視で、例えば、90°と270°とを結んだ下半分に形成されている。
また、前記段差構造78を構成するホルダー75の段差受け面部75bは、90°と270°とを結んだ上半分に形成されている。
【0071】
したがって、スパイダー72とホルダー75とを焼き嵌めするに際し、第1ブリッジ部74aと第4ブリッジ部74dとが、上記図15において90°と270°とを結んだ下半分に位置するように挿入し、第2ブリッジ部74bと第3ブリッジ部74cとが、図15において90°と270°とを結んだ上半分に位置するように挿入して位置決めしなければならない。
【0072】
そして、本実施形態では、各ブリッジ部74a〜74dがそれぞれ上記範囲内に配置されていることを確認するために、スパイダー72とホルダー75とに位置確認マーク65が記されている。
すなわち、位置確認マーク65は、図16に詳細を示すように、ホルダー75に記された固定側マーク66と、スパイダー72のブリッジ部74を構成する第1ブリッジ部74aに記された移動側マーク67とで構成されている。
固定側マーク66は、ホルダー75の上面かつ第1ブリッジ部74aの中心線CLの延長上に記された直線マーク66aと、この直線マーク66aの先端からホルダー75の内周面に垂直に延びた垂直マーク66bとで形成されている。
【0073】
上記移動側マーク67は、第1ブリッジ部74aの先端外周面かつ上面に、当該第1ブリッジ部74aの中心線CL上に記されている。
そして、これらの固定側マーク66および移動側マーク67は、刻印等で記されていると好適である。
【0074】
本第2実施形態の押出しダイス10は以上のように構成されているので、前記(1)、(4)、(5)と同様の効果の他、次のような効果を得ることができる。
【0075】
(6)スパイダー72における各ブリッジ部74a〜74dのそれぞれの先端外周面部74Cと、ホルダー75のブリッジ保持面部75Cとにわたって、凹凸構造77および段差構造78が設けられているので、スパイダー72とホルダー75との焼き嵌め時に、ホルダー75が冷却されて収縮する際、各構造77,78が抜け方向に対してストッパの役割を果たす。その結果、スパイダー72のホルダー25からの抜けを防止でき、これにより、両者72,75をより確実に接合することができ、更なる高精度の中空形材の加工が可能となる。
【0076】
(7)スパイダー72の第1ブリッジ部74aとホルダー25とに、固定側マーク66と移動側マーク67からなる位置確認マーク65が形成されており、スパイダー22を加熱、膨張されたホルダー25に挿入する際、固定側マーク66と移動側マーク67とを一致させればよいので、各ブリッジ部74a〜74dを容易に所定の位置に配置することができる。
【0077】
次に、図17、図18に基づいて、本発明の押出しダイスの第3実施形態を説明する。
本第3実施形態の押出しダイス10Bは、亀裂が発生する可能性のある位置に圧力を受ける面を近づけることで、圧力の相殺を図る目的で提案されたものである。
なお、この第3実施形態において、前記第1実施形態の押出しダイス10と同一構造および同一部材には同一符号を付し、異なる部分のみを説明する。
【0078】
図17は、第2ブリッジ部84bの先端外周面84Cとホルダー85との接合を示すものである。
この図17に示すように、スパイダー82は、マンドレル83とブリッジ部84とを備えて構成されると共に、ホルダー85に保持されている。
そして、ブリッジ部84を構成する第1〜第4ブリッジ部84a〜84dのそれぞれの先端外周面84C(図17では第2ブリッジ部84b)が、上流側から下流側に向かって拡がる傾斜面部84mと、この傾斜面部84mの下流側の端部に形成されホルダー85の中心側に向かってすぼまる形状の逆傾斜面部84qとで形成されている。
これに対して、ホルダー85のブリッジ保持面85Cは、各ブリッジ部84a〜84dの傾斜面部84mに対応する傾斜面部85mと、この傾斜面部85mの先端に形成されると共に前記逆傾斜面部84qに対応する逆傾斜面部85qとで形成されている。
そして、この逆傾斜面部85qで形成された部位が、上記逆傾斜面部84qを受けるブリッジ受面部85Aを形成すると共に、スパイダー82がホルダー85から抜け出すのを防止する役割を果たしている。
【0079】
この図17、図18に示すように、第2ブリッジ部84bの先端外周面84Cを形成する逆傾斜面部84qは、寸法Hでホルダー85の中心側に向かってすぼまっており、これに対して、ホルダー85の前記逆傾斜面部85qは、寸法Hの突出量で、かつ図18に示すように所定幅寸法Wに形成されている。この逆傾斜面部85qは、上述のように、各ブリッジ部84a〜84dの逆傾斜面部84qに対応する形状となっている。
ホルダー85の逆傾斜面部85qは、ブリッジ保持面85Cの傾斜面部85mに対して角度α1°でブリッジ部84の逆傾斜面部84q側に傾斜している。そして、この角度α1°は、例えば30°程度に設定されている。
なお、第1ブリッジ部84a、第3ブリッジ部84c、第4ブリッジ部84dも同様の形状となっている。
【0080】
ここで、ホルダー85の逆傾斜面部85qにおけるブリッジ部84の基端部P1と、この基端部P1からマンドレル83において押出し方向と直交する方向の作用点P2までの距離は寸法Lとなっており、亀裂が発生する可能性のある位置に圧力を受ける面が近づいている。
そのため、マンドレル83の作用点P2に生じるモーメントを小さくすることができるので、ブリッジ部84の強度を大きくすることができ、これにより、スパイダー82を構成するブリッジ部84の破断を防止することができる。その結果、押出加工力が大きな高力系合金、特に、いわゆる7000系といった最強度アルミ合金からなるビレットを押出し成形する場合でも、高速押出しができると共にダイスの長寿命化を図れるようになる。
【0081】
前述したように、逆傾斜面部85qが各ブリッジ部84a〜84dのそれぞれの逆傾斜面部84qに対応するように設けられているので、スパイダー82をホルダー85に挿入する際には、両者の位置を合わせなければならない。
そのため、本第3実施形態では、4箇所のブリッジ部84a〜84dのうち、例えば、前記第2ブリッジ部84bとホルダー85とに前記位置確認マーク65が設けられている。
その結果、スパイダー82を、加熱、膨張されたホルダー85に挿入する際、固定側マーク66と移動側マーク67とを一致させればよいので、各ブリッジ部84a〜84dを容易に所定の位置に配置することができる。
【0082】
本第3実施形態の押出しダイス10は以上のように構成されているので、前記前記(1)、(4)、(5)、(7)と同様の効果の他、次のような効果を得ることができる。
【0083】
(8)ホルダー85の逆傾斜面部85qにおけるブリッジ部84の基端部P1と、この基端部P1からマンドレル83において押出し方向と直交する方向の作用点P2までの距離は寸法Lとなっており、亀裂が発生する可能性のある位置に圧力を受ける面が近づいている。
そのため、マンドレル83の作用点P2に生じるモーメントを小さくすることができるので、ブリッジ部84の強度を大きくすることができ、それらの第1〜第4ブリッジ部24a〜24dの破断を防止することができる。その結果、押出加工力が大きな高力系合金、特に、いわゆる7000系といった高強度アルミ合金からなるビレットBを押出し成形する場合でも、高速押出しができると共にダイスの長寿命化を図れるようになる。
【0084】
以上、前記各実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は前記各実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本願発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0085】
例えば、前記実施形態では、押出しダイス10により成形される中空形材1を断面目の字状の中空形材としたが、これに限らない。図13に示すような断面口の字状の中空形材2を成形する際にも利用できる。
【0086】
この場合、まず、前記実施形態のスパイダー22におけるマンドレル23の第1内側駒部23B、第2内側駒部23C、および第3内側駒部23Dに換えて、断面口の字状の中空形材2の内部空間2Sを形成するように、略四角柱状の1つの駒部をマンドレルの端部に設ける。
そして、メス型30の外側形材開口部30Cに換えて、上記略四角柱状の1つの駒部に対応する略四角形の形材外形用開口をメス型に設ければよい。
この際、スパイダー22のブリッジ先端外周面24Cとホルダー25のブリッジ保持面25Cとの係合状態および傾斜角度は、前述のような目の字形の中空形材1用の構成と同じとすればよく、ホルダー25はそのまま使用できるので、少ない使用部材で断面形状が異なる複数種類の中空形材の押出し成形が可能である。
【0087】
また、前記第1実施形態では、スパイダー22等を構成する第1ブリッジ部24aと第4ブリッジ部24d、および第2ブリッジ部24bと第3ブリッジ部24c等との間に、それぞれブリッジ横振れ防止部24Dを設けた形状としたが、ブリッジ横振れ防止部24Dの形状は、これに限らず、例えば、図19に示すような構成でもよい。
【0088】
この図19に示す変形形態では、第1〜第4ブリッジ部24a〜24d間のすべてにブリッジ横振れ防止部24Dを設けた形状としたものである。そして、このような変形形態では、4個のブリッジ部24a〜24dを結ぶ4個のブリッジ横振れ防止部24Dが設けられているので、より一層の横振れ防止効果を得ることができる。
【0089】
さらに、前記第1実施形態では、各ブリッジ部24a〜24dの先端外周面24Cを、傾斜面部24mと直線面部24nとで形成し、ブリッジ保持面25Cを、傾斜面部25mと直線面部25nとで形成したが、これに限らない。例えば、先端外周面24Cおよびブリッジ保持面25Cの全面をそれぞれ直線面部としてもよい。そして、このようにしても、焼き嵌め時にホルダー25を加熱、膨張させる結果、ブリッジ保持面25C内周面内径が大きくなっているので、スパイダー22の各ブリッジ部24a〜24dをホルダー25のブリッジ保持面25C内に挿入させることができる。
このような変形形態では、各ブリッジ部24a〜24dの先端外周面24Cの加工およびブリッジ保持面25Cの加工が容易となる。
【0090】
また、前記第2実施形態では、第1ブリッジ部74aおよび第4ブリッジ部74dとホルダー75とに凹凸構造77が、第2ブリッジ部74bおよび第3ブリッジ部74cとホルダー75とに段差構造78がそれぞれ設けられているが、これに限らない。
例えば、全部のブリッジ部74a〜74dに上記凹凸構造77と同様の形状の凹凸構造77を設けてもよく、あるいは、全部のブリッジ部74a〜74dに上記段差構造78と同様の形状の段差構造78を設けてもよい。
【0091】
そして、全部のブリッジ部74a〜74dに凹凸構造77と同様の凹凸構造77を設けた場合は、ホルダー75のブリッジ保持面部75Cの全周をその凹凸構造77に対応させればよい。
このような構造では、第1〜第4ブリッジ部74a〜74dの先端外周に凹凸構造77を構成する同一種類の突出面部77aを形成し、ホルダー75のブリッジ保持面部75Cの全周に同一種類の凹面部77bを形成すればよいので、前記第2実施形態に比べて加工が容易である。
【0092】
また、段差構造78と同様の形状の段差構造78を設けた場合は、ホルダー75のブリッジ保持面部75Cの全周をその段差構造78に対応させればよい。
このような構造では、第1〜第4ブリッジ部74a〜74dの先端外周に段差面部74fを形成し、ホルダー75のブリッジ保持面部75Cに段差受け面部75bを形成すればよいので、前記第2実施形態に比べて加工が容易である。
【0093】
また、前記第2実施形態では、全部のブリッジ部74a〜74dの先端外周面部74Cは、傾斜面部74mの途中に凹凸構造77、段差構造78が形成され、その先端に直線部74nが形成されているが、これに限らない。
各ブリッジ部74a〜74dの先端外周面部74Cに、凹凸構造77、段差構造78が形成されており、これらの凹凸構造77、段差構造78がホルダー75のブリッジ保持面部75Caと焼き嵌めにより接合されるので、ビレットBを押し出す際にスパイダー72がホルダー75のブリッジ保持面部75Cから抜け出るおそれはない。そのため、第2実施形態のように、ブリッジ部74a〜74dの先端外周面部74Cの先端に直線部74nを形成しなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本願発明の押出しダイスは、高力系合金、特に、いわゆる7000系といった高強度アルミ合金からなる中空形材を成形する際に利用される。
【符号の説明】
【0095】
1 断面目の字状の中空形材
10 中空形材成形用押出しダイス(第1実施形態)
10A 中空形材成形用押出しダイス(第2実施形態)
10B 中空形材成形用押出しダイス(第3実施形態)
20 オス型
22 スパイダー
23 マンドレル
23B 内側成形突起部
24 ブリッジ部
24a〜24d 第1〜第4のブリッジ
24m 傾斜面部
24n 直線部
24C ブリッジ先端外周面
25 ホルダー
25C ブリッジ保持面
25m 傾斜面部
25n 直線部
30 メス型
30B 形材外形用開口
50 形材形成用孔部
51 形材形成用孔部
70 中空形材成形用押出しダイス(第2実施形態)
80 中空形材成形用押出しダイス(第3実施形態)
A ビレットの押出方向
B ビレット
S ビレットの導入空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から送られてくるアルミ合金からなるビレットを下流側に押出して中空形材の内側形状を成形するオス型と、このオス型を保持すると共に前記中空形材の外側形状を成形するメス型とを備えた中空形材成形用押出ダイスであって、
前記オス型を、前記内側形状を成形するスパイダーと、このスパイダーを保持するホルダーとで構成し、
前記スパイダーを、前記中空形材の内側形状に対応するマンドレルと、このマンドレルと一体的に設けられると共に当該マンドレルの周囲から外方に向かって突出した複数のブリッジ部とで形成し、
前記各ブリッジ部の先端外周面と前記ホルダーの内周面部とを焼き嵌めにより接合したことを特徴とする中空形材成形用押出ダイス。
【請求項2】
請求項1に記載の中空形材成形用押出ダイスにおいて、
前記各ブリッジ部の先端外周面を、前記上流側から下流側に向かって拡がる傾斜面部と、この傾斜面部の下流側端部に形成され前記ビレットの押出し方向に沿ってなる直線面部とで形成し、
前記ホルダーの内周面部を、前記ブリッジ部の先端外周面の傾斜面部と直線面部とにそれぞれ対応する傾斜面部と直線面部で形成したことを特徴とする中空形材成形用押出ダイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の中空形材成形用押出ダイスにおいて、
前記各ブリッジ部を、それぞれ4個で構成すると共にそれらを平面形状がX字状となるように配置し、
前記各4個のブリッジ部のうち隣り合う2個のブリッジ部相互間で前記下流側の端部に、前記ホルダーの内周面部に沿って横振れ防止用のブリッジ横振れ防止部を設け、
このブリッジ横振れ防止部を、前記マンドレルを挟んで少なくとも2箇所に設けたことを特徴とする中空形材成形用押出ダイス。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の中空形材成形用押出ダイスにおいて、
前記各4個のブリッジ部のうち2個のブリッジ部の前記先端外周面の前記傾斜面部の途中位置に前記ホルダーの内周面部側に突出した突出面部を設け、
前記各4個のブリッジ部のうち残り2個のブリッジ部の前記先端外周面の前記傾斜面部の途中位置に前記ホルダーの内周面部側に突出した段差面部を設け、
前記ホルダーの内周面部全体を、前記ブリッジ部の先端外周面の傾斜面部と直線面部とにそれぞれ対応する傾斜面部と直線面部で形成すると共にその傾斜面部の途中に、前記2個のブリッジ部の突出面部に対応する凹面部と、前記残り2個のブリッジ部の段差面部に対応する段差受け面部とを形成したことを特徴とする中空形材成形用押出ダイス。
【請求項5】
請求項1に記載の中空形材成形用押出ダイスにおいて、
前記各ブリッジ部の先端外周面を、前記上流側から下流側に向かって拡がる傾斜面部と、この傾斜面部の前記下流側の端部に形成され前記ホルダーの中心側に向かってすぼまる形状の逆傾斜面部とで形成し、
前記ホルダーの内周面部を、前記ブリッジ部の先端外周面の傾斜面部に対応する傾斜面部と、前記逆傾斜面部と対応し当該逆傾斜面部を保持するブリッジ保持面部とで形成したことを特徴とする中空形材成形用押出ダイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−59792(P2013−59792A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199793(P2011−199793)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(502444733)日軽金アクト株式会社 (107)
【Fターム(参考)】