説明

中空成形容器用ポリエチレン組成物およびそれから得られる容器

【課題】高透明、高光沢、表面平滑であって、剛性が高く容器としての自立性が良く、軽量化も可能であり、しかも成形時及び製品での取り扱い性の点でも満足でき、製品物性として変形時に生じる白化等の問題の生じないポリエチレン組成物、およびそれから得られるブロー成形品の提供。
【解決手段】フィリップス系触媒によって製造されたポリエチレン(A)45〜95重量%及びチーグラー系触媒によって製造されたポリエチレン(B)55〜5重量%からなるポリエチレン組成物であって、下記(a)〜(d)の物性を有することを特徴とする中空成形容器用ポリエチレン組成物等により達成。
(a)密度が0.942〜0.953g/cm
(b)MFRが0.5〜2.0g/10分
(c)重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が5.0〜10.0
(d)成形品のヘイズ(H)と密度(D)とが次の(式1)に示す関係式を満足する
50≦H≦1200D−1064 (式1)
(式中、Hの単位は%、Dの単位はg/cmである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形容器用ポリエチレン組成物およびそれから得られる容器に関し、更に詳しくは、成形加工性、機械特性、耐環境応力亀裂性等のバランスが良好であって、しかも、併せて透明性、光沢及び表面平滑性が高度に優れ、かつリサイクル性に優れた、高級感のある中空成形容器用に好適なポリエチレン組成物およびそれから得られる中空成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャンプー、リンス、化粧品、医療用等の容器やチューブ容器の分野において、プラスチック製の中空成形品が広く使用されている。この中空成形品用のプラスチックには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートといった樹脂が広く使用されている。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンは、性能、価格等の点から好ましいものとして使用されており、透明性を改良した材料や成形品が数多く提案されている。
特に、近年の原料価格の上昇傾向の中で、ポリエチレンは価格、性能、リサイクル性の面で他の樹脂に置き換わり得る材料として、その重要性が更に高まっている。
【0003】
中空成形容器に適したポリエチレンとして、成形加工性、機械特性、耐環境応力亀裂性等の改良された材料として、例えば、特許文献1〜9に開示されたようなクロム系触媒を用いて製造されたポリエチレンとチーグラー触媒を用いて製造されたポリエチレンとからなる材料が提案されている。しかしながら、これらの材料は、成形加工性、機械特性、耐環境応力亀裂性等のバランスは比較的良好であるものの、成形品の透明性、表面光沢及び表面平滑性も上記特性と併せて充分に優れたレベルに到達しているとは必ずしも言えない。成形加工性、機械特性、耐環境応力亀裂性等のバランスが良好であり、なおかつ成形品の透明性、光沢及び表面平滑性も高度に優れ、かつリサイクル性に優れた材料が、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートといった樹脂を代替できる分野において強く求められている。
近年、こうした需要に対応する試みとして、例えば、特許文献10、11に開示されたような材料が提案されている。
【0004】
特許文献10には、クロム系触媒で重合されたハイロードメルトフローレートが10〜50g/10分、密度が0.940〜0.950g/cmのエチレン系共重合体(A)とチタン系触媒で重合されたハイロードメルトフローレートが10〜50g/10分、密度が0.950〜0.965g/cmのエチレン系共重合体(B)とを(A)が30〜45重量%及び(B)を70〜55重量%含有する樹脂組成物からなる中空成形用ポリエチレン系樹脂成形材料であって、メルトフローレートが0.1〜0.5g/10分、ハイロードメルトフローレート10〜50g/10分、密度が0.950〜0.960g/cmである材料が提案されている。しかしながら、この材料は、曲げ弾性率が高く、ピンチオフ肉盛が良く、高ESCR化されているものの、さらに高透明、高光沢及び表面平滑な容器を達成するには至っていない。
【0005】
特許文献11には、クロム系触媒で重合されたハイロードメルトフローレートが10〜50g/10分、密度が0.940〜0.950g/cmのエチレン系共重合体(A)とチタン系触媒で重合されたハイロードメルトフローレートが0.1〜2.0g/10分、密度が0.920〜0.940g/cmのエチレン系共重合体(B)及び(C)、(但し、成分(B)と成分(C)は異なる)、チタン系触媒で重合されたメルトフローレートが10〜200g/10分、密度が0.960〜0.970g/cmのエチレン系重合体(D)を、(A)が30〜45重量%、(B)が5〜20重量%、(C)が5〜20重量%、(D)が30〜60重量%含有する樹脂組成物からなる中空成形用ポリエチレン系樹脂材料であって、メルトフローレートが0.1〜0.5g/10分、ハイロードメルトフローレートが10〜50g/10分、密度が0.950〜0.960g/cmである材料が提案されている。しかしながら、この材料も、曲げ弾性率が高く、ピンチオフ肉盛が良く、高ESCR化されているものの、さらに高透明、高光沢及び表面平滑な容器を達成するには至っていない。
【0006】
一方、ポリオレフィン系樹脂の透明性を改良する手段としては、次に紹介するような各種の透明化剤(核剤)を用いる技術が提案されている。
例えば、特許文献12には、ポリエチレン100重量部に造核剤0.05〜1重量部添加したもので、密度が0.93〜0.96g/cm、分子末端二重結合が1個/1000炭素以下である中空容器用樹脂組成物であって、均一な肉厚に成形でき、収縮率が少なく、透明性及び強度に優れた中空容器を製造できることが提案されている。しかしながら、特許文献12には、樹脂の加工特性にかかわる粘度特性、すなわち、分子量、分子量分布、HLMFR等が特定されておらず、しかも成形性、高透明性、高光沢性及び表面平滑性が共に充分に優れたものが開示されているとは言えない。
【0007】
特許文献13には、結晶性合成樹脂100重量部に対しジベンジリデンソルビトール誘導体0.01〜5重量部及び芳香族有機リン酸エステルの金属塩0.01〜5重量部配合してなる結晶性合成樹脂組成物により、透明性及び機械的物性等が改善されることが提案されている。しかしながら、実施例等を参照すると、高密度ポリエチレンの曲げ弾性率の改善効果は開示されているものの、高透明性、高光沢性及び表面平滑性が充分に優れた好適な高密度ポリエチレンに関しては何ら提案されていない。
【0008】
特許文献14には、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し有機ホスファイト化合物0.001〜5重量部、ソルビトール化合物0.001〜5重量部、塩基性無機アルミニウム化合物及び炭素原子数8〜30の脂肪族カルボン酸のアルミニウム塩から選ばれるアルミニウム化合物0.001〜5重量部を配合した合成樹脂組成物により、透明性、着色性、加工安定性に優れたものが得られることが開示されている。しかしながら、実施例等を参照すると、高密度ポリエチレンのブルーム、臭気の改善効果は開示されているものの、高透明性、高光沢性及び表面平滑性が充分に優れた好適な高密度ポリエチレンに関しては何ら提案されていない。
【0009】
特許文献15には、ポリエチレン樹脂100重量部と安息香酸系化合物0.001〜10重量部とからなり、成形サイクル向上、剛性あるいは透明性に優れたポリエチレン樹脂組成物が提案されている。しかしながら、低密度ポリエチレンでの改善例はあるものの、高透明性、高光沢性及び表面平滑性が充分に優れた好適な高密度ポリエチレンに関しては何ら提案されていない。
【0010】
こうした状況下に、高透明、高光沢、表面平滑であって、剛性が高く容器としての自立性が良く、軽量化も可能であり、しかも成形時及び製品での取り扱い性の点でも満足でき、製品物性として変形時に生じる白化等の問題の生じないポリエチレン材料の早期開発が求められている。
【0011】
【特許文献1】特開昭59−196345号公報
【特許文献2】特開昭59−196346号公報
【特許文献3】特開2003−128848号公報
【特許文献4】特開2003−165873号公報
【特許文献5】特開2003−213053号公報
【特許文献6】特開2004−059650号公報
【特許文献7】特開2004−091739号公報
【特許文献8】特開2004−168817号公報
【特許文献9】特開2005−298811号公報
【特許文献10】特開2008−056769号公報
【特許文献11】特開2008−056770号公報
【特許文献12】特開平07−330973号公報
【特許文献13】特開平08−003364号公報
【特許文献14】特開平08−217924号公報
【特許文献15】特開平09−031255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、高透明、高光沢、表面平滑であって、剛性が高く容器としての自立性が良く、軽量化も可能であり、しかも成形時及び製品での取り扱い性の点でも満足でき、製品物性として変形時に生じる白化等の問題の生じないポリエチレン組成物を提供すること、さらには、成形加工性、機械特性、耐環境応力亀裂性等のバランスが良好であって、しかも、併せて透明性、光沢及び表面平滑性が高度に優れ、かつリサイクル性に優れた、高級感のあるブロー成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の2種のポリエチレン系材料を特定の割合で配合してなる、特定の特性を有するポリエチレン組成物を用いると、これらの課題を解決した中空成形容器等のポリエチレン成形品が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、フィリップス系触媒によって製造されたポリエチレン(A)45〜95重量%及びチーグラー系触媒によって製造されたポリエチレン(B)55〜5重量%からなるポリエチレン組成物であって、下記(a)〜(d)の物性を有することを特徴とする中空成形容器用ポリエチレン組成物が提供される。
(a)密度が0.942〜0.953g/cm
(b)温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるメルトフローレート(MFR)が0.5〜2.0g/10分
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が5.0〜10.0
(d)JIS K7105:1981に準拠して測定される成形品のヘイズ(H)と密度(D)とが次の(式1)に示す関係式を満足する
50≦H≦1200D−1064 (式1)
(式中、Hの単位は%、Dの単位はg/cmである。)
【0015】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が、20〜150g/10分であることを特徴とする中空成形容器用ポリエチレン組成物が提供される。
本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、HLMFR/MFRが、40〜110であることを特徴とする中空成形容器用ポリエチレン組成物が提供される。
【0016】
本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、ポリエチレン(A)は、密度が0.933〜0.948g/cm、温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるMFRが0.1〜1.5g/10分、GPCにより測定されるMw/Mnが5.0〜10.0であり、一方、ポリエチレン(B)は、密度が0.950〜0.962g/cm、温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるMFRが10〜50g/10分、GPCにより測定されるMw/Mnが3.0〜7.0であることを特徴とする中空成形容器用ポリエチレン組成物が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、ポリエチレン(A)及びポリエチレン(B)の合計100重量部に対して、ソルビトール系結晶核剤、カルボン酸金属塩系結晶核剤、有機リン酸金属塩系結晶核剤、及びロジン系結晶核剤からなる群から選択される少なくとも1種の結晶核剤0.001〜5.0重量部を添加することを特徴とする中空成形容器用ポリエチレン組成物が提供される。
【0017】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明に係る中空成形容器用ポリエチレン組成物を中空成形してなる容器が提供される。
【0018】
本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、容器胴部表面は、JIS K7105:1981に準拠して測定されるヘイズが40〜78%、全光線透過率が68〜99%であることを特徴とする容器が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高透明、高光沢、表面平滑であって、剛性が高く容器としての自立性が良く、軽量化も可能であり、しかも成形時及び製品での取り扱い性の点でも満足でき、製品物性として変形時に生じる白化等の問題の生じないポリエチレン組成物が得られる。さらに、本発明のポリエチレン組成物を用いると、成形加工性、機械特性、耐環境応力亀裂性等のバランスが良好であって、しかも、併せて透明性、光沢及び表面平滑性が高度に優れ、かつリサイクル性に優れた、高級感のあるブロー成形品が得られるので、産業上の有用性は非常に高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物は、フィリップス系触媒によって製造されたポリエチレン(A)45〜95重量%、及びチーグラー系触媒によって製造されたポリエチレン(B)55〜5重量%からなり、しかも下記(a)〜(d)の条件を満足することを特徴とするものである。
(a)密度が0.942〜0.953g/cmである。
(b)温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるメルトフローレート(MFR)が0.5〜2.0g/10分である。
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が5.0〜10.0である。
(d)JIS K7105:1981に準拠して測定される成形品のヘイズ(H)と密度(D)との関係が(式1)を満足する。
50≦H≦1200D−1064 (式1)
(式中、Hの単位は%、Dの単位はg/cmである。)
【0021】
(a)密度
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物の密度は、0.942g/cm以上0.953g/cm以下であり、好ましくは0.945g/cm以上0.952g/cm以下、更に好ましくは0.946g/cm以上0.950g/cm以下である。密度が0.942g/cm未満では、成形された容器の剛性が小さく、薄肉製品での自立性が保たれにくくなる。一方、密度が0.953g/cmを超えると、成形された容器の透明性が低下する傾向がある。ここで、密度は、JIS K6922−1,2:1997に準じて測定される値である。
密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができる。
【0022】
(b)MFR
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物の温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.5g/10分以上2.0g/10分以下であり、好ましくは0.7g/10分以上1.8g/10分以下、更に好ましくは0.8g/10分以上1.7g/10分以下である。MFRが0.5g/10分未満では、ブロー成形機で押出されたパリソンの表面肌が荒れる傾向にあり、成形された容器の表面肌も荒れる傾向にある。一方、MFRが2.0g/10分を超えると、ブロー成形時のパリソンがドローダウンし易くなり、ブロー成形された容器の肉厚分布を調整しにくくなる。ここで、MFRは、JIS K6922−2:1997「プラスチック−ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準じて、測定される値である。
MFRは、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより分子量を下げて、結果としてMFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより分子量を上げて、結果としてMFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより分子量を下げて、結果としてMFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより分子量を上げて、結果としてMFRを小さくすることができる。
【0023】
また、本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物の温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)は、20g/10分以上150g/10分以下のものが好適であり、好ましくは30g/10分以上140g/10分以下、更に好ましくは40g/10分以上130g/10分以下である。HLMFRが20g/10分未満では、ブロー成形機で押出されたパリソンの表面肌が荒れる傾向にあり、成形された容器の表面肌も荒れる傾向にある。一方、150g/10分を超えると、ブロー成形時のパリソンがドローダウンし易くなり、ブロー成形された容器の肉厚分布を調整しにくくなる。ここで、HLMFRは、JIS K6922−2:1997「プラスチック−ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準じて、測定される値である。
HLMFRも、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、他の物性とのバランスをとりつつ所望のものを得ることができる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより分子量を下げて、結果としてHLMFRを大きくすることができ、また、重合温度を下げることにより分子量を上げて結果として、HLMFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより分子量を下げて、結果としてHLMFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより分子量を上げて、結果としてHLMFRを小さくすることができる。
【0024】
(c)GPCにより測定される重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物のGPCにより測定される重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、5.0〜10.0であり、好ましくは5.5〜9.5、更に好ましくは6.0〜9.0である。Mw/Mnが5.0未満ではブロー成形機で押出されたパリソンにメルトフラクチャーが発生しやすくなり、特に高速成形時にメルトフラクチャーが発生しやすくなる。Mw/Mnが10.0を超えると、MFR値が低い場合はパリソンに肌荒れが生じやすく、ブロー成形された容器に肌荒れが発生しやすくなり、また、MFR値が高い場合はパリソンの表面肌が異常に光った部分が発生し、ブロー成形時のエアー抜き性が悪くなり、成形された容器にあばたが発生する傾向がある。
GPC測定によるMw/Mnは、触媒の種類、助触媒の種類、重合温度、重合反応器内の滞留時間、重合反応器の数などで調整でき、また、仕上げ押出機の温度、圧力、剪段速度などにより、調整可能である。好ましくは、高分子量成分と低分子量成分の組成割合を調整することにより増減することができ、重合温度や連鎖移動剤量を重合反応中に変化させることにより分子量が異なる重合体成分が生成し、結果として全体の重合体の分子量分布を変化させることができる。また、重合条件の異なる重合を多段で行なうことにより分子量分布を増減させることも可能である。
【0025】
GPCの測定条件及び測定方法、並びに分子量計算方法は以下の通りである。
(i)測定条件
ーターズ社製150C型を使用して、下記の条件でGPC測定を行い、重量平均分子量(Mw)を求める。
カラム:昭和電工社製Shodex HT−G 1本及び同・HT−806M 2本
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
温度:140℃
流量:1.0ml/分
注入量:300μl
(ii)サンプル調整
市販の4mlスクリュートップバイアル瓶に試料約3mg及び溶媒3.0mlを量り採り、センシュー科学社製SSC−9300型攪拌機を用い、温度150℃で2時間振とうを行なう。
(iii)分子量の計算
GPCクロマトデータは1点/秒の頻度でコンピュータに取り込み、森定雄著・共立出版社発行の「サイズ排除クロマトグラフィー」第4章の記載に従ってデータ処理を行い、Mw値を計算する。
(iv)カラムの較正
カラムの較正は、昭和電工社製単分散ポリスチレン(S−7300、S−3900、S−1950、S―1460、S−1010、S−565、S−152、S−66.0、S−28.5、S−5.05)、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの各0.2mg/l溶液を用いて、一連の単分散ポリスチレンの測定を行い、それらの溶出ピーク時間と分子量の対数の関係を4次多項式でフィットしたものを較正曲線とする。
なお、ポリスチレンの分子量は、次式を用いてポリエチレンの分子量に換算する。
PE=0.468×MPS
【0026】
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物のHLMFR/MFRは、40〜110であることが好適であり、好ましくは45〜105、更に好ましくは50〜100である。HLMFR/MFRが40未満では、ブロー成形機で押出されたパリソンにメルトフラクチャーが発生しやすくなり、特に高速成形時にメルトフラクチャーが発生しやすくなる。また、HLMFR/MFRが110を超えると、MFR値が低い場合はパリソンに肌荒れが生じやすく、ブロー成形された容器の肌荒れが発生しやすくなる。また、MFR値が高い場合はパリソンの表面肌が異常に光った部分が発生し、ブロー成形時のエアー抜き性が悪くなり、成形された容器にあばたが発生する傾向がある。
HLMFR/MFRは、触媒の種類、助触媒の種類、重合温度、重合反応器内の滞留時間、重合反応器の数などで調整でき、また、仕上げ押出機の温度、圧力、剪段速度などにより、調整可能である。好ましくは、高分子量成分と低分子量成分の組成割合を調整することにより増減することができ、重合温度や連鎖移動剤量を重合反応中に変化させることにより分子量が異なる重合体成分が生成し、結果として全体の重合体の分子量分布を変化させることができる。また、重合条件の異なる重合を多段で行なうことにより分子量分布を増減させることも可能である。
【0027】
(d)JIS K7105:1981に準拠して測定される成形品のヘイズ(H)と密度(D)との関係
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物において、JIS K7105:1981に準拠して測定される成形品ヘイズ(H)と密度(D)との関係が、(式1)を満足することが重要である。
50≦H≦1200D−1064 (式1)
ここで、Hの単位は%、Dの単位はg/cmである。
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物の成形品ヘイズを測定するための成形品は、以下の方法によって得られる。
即ち、φ50mmのダイレクトブロー成形機にて、スクリュー回転数30rpmにて成形樹脂温度205℃に調整し、パリソンを押出し、約400mlの偏平容器形状(縦約19cm、幅約7cm、最大奥行き約5cmであって、外径約2cm、高さ約2cmのネジ形状口部を有する容器)のブロー金型(キャビティー面ブラスト仕上げ、キャビティー面粗さRa値0.7μmの金型)、金型温度20℃、ブロー圧力6kg/cm、ボトル重量26g、成形サイクル12秒にて、ブロー成形を行ない、容器の胴中央平坦部より、大きさ5cm×5cm、厚さ約0.85mmの試験片を切り取り、JIS K7105:1981に準拠して成形品ヘイズ(H)を測定する。
成形品ヘイズ(H)と密度Dとの関係は、50≦H≦1200D−1064、好ましくは52≦H≦1200D−1065、更に好ましくは53≦H≦1200D−1066である。成形品のヘイズ(H)と密度Dとの関係が上記上限値を外れると、良好な透明性を発揮することができず、下限値を外れたものは透明性以外の性能が必ずしも充分でない。
本発明のポリエチレン組成物の成形品ヘイズ(H)と密度Dとの関係が(式1)を満足するためには、密度、MFR及び分子量分布(Mw/Mn)を上記(a)〜(c)の範囲内で選択し、特に核剤効果を有するフィリップス系触媒で製造されたポリエチレンを含むようにすることが必要である。
【0028】
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物においては、ポリエチレン(A)成分として、密度が0.933〜0.948g/cm、温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるMFRが0.1〜1.5g/10分、GPCにより測定されるMw/Mnが5.0〜10.0であるポリマーを、また、ポリエチレン(B)成分として、密度が0.950〜0.962g/cm、温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるMFRが10〜50g/10分、GPCにより測定されるMw/Mnが3.0〜7.0であるポリマーを用いることが好ましい。
上記複数種のポリエチレン成分を用いることにより、フィリップス系触媒で製造されたポリエチレンによる核剤効果及びチーグラー系触媒で製造されるポリエチレンによる流動性、表面平滑性付与効果を最大限に発揮することが可能である。
本発明のポリエチレン組成物における各成分の配合割合は、ポリエチレン(A)が45〜95重量%であり、好ましくは47〜93重量%、更に好ましくは50〜90重量%であり、一方、ポリエチレン(B)が55〜5wt%、好ましくは53〜7重量%、更に好ましくは10〜50重量%の範囲である。上記範囲を外れると、核剤効果、流動性、表面平滑性付与効果の両者を極めて顕著に発揮させることが難しくなる。
【0029】
本発明のポリエチレン(A)は、フィリップス系触媒によって製造されるもので、密度(JIS K6922−1,2:1997に準じて測定される)は、0.933〜0.948g/cm、好ましくは0.936〜0.947g/cm、更に好ましくは0.940〜0.946g/cmである。密度が0.933g/cm未満では、成形された容器の剛性が小さく、薄肉製品での自立性の容器に対応しにくくなり、密度が0.948g/cmを超えると、成形された容器の透明性が悪くなる。
【0030】
本発明のポリエチレン(A)の温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるMFR(JIS K6922−2:1997「プラスチック−ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準じて測定される)は、0.1〜1.5g/10分、好ましくは0.15〜1.0g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では、ブロー成形機で押し出されたパリソンの表面肌が荒れる傾向にあり、成形された容器の表面の肌も荒れる傾向になる。その結果、成形された容器の透明性が低下する傾向にある。また、MFRが1.5g/10分を超えると、ブロー成形時のパリソンがドローダウンしやすくなり、ブロー成形時の成形容器の肉厚分布調整がしにくくなる。
【0031】
ポリエチレン(A)の温度190℃、荷重21.6Kgにて測定されるメルトフローレート(JIS K6922−2:1997「プラスチック−ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準じて測定される)は、5〜150g/10分、更に好ましくは10〜100g/10分のものが好適である。HLMFRが5g/10分未満では、ブロー成形機で押し出されたパリソンの表面肌が荒れる傾向にあり、成形された容器の表面の肌も荒れる傾向になる。その結果、成形された容器の透明性が低下する傾向にある。また、MFRが150g/10分を超えるとブロー成形時のパリソンがドローダウンしやすくなり、ブロー成形時の成形容器の肉厚分布調整がしにくくなる。
【0032】
本発明のポリエチレン(A)のGPCにより測定されるMw/Mn(測定方法は上記の方法と同じ)は、5.0〜10.0、好ましくは6.0〜8.0である。Mw/Mnが5.0未満ではブロー成形機で押出されたパリソンにメルトフラクチャーが発生しやすくなり、特に高速成形時にメルトフラクチャーが発生しやすくなる。Mw/Mnが10.0を超えると、MFR値が低い場合はパリソンに肌荒れが生じやすく、ブロー成形された容器の肌が荒れる傾向にある。また、MFR値が高い場合はパリソンの表面肌が異常に光り、ブロー成形時のエアー抜き性が悪くなり、成形された容器にあばたが発生する傾向がある。
【0033】
ポリエチレン(A)のHLMFR/MFRは、50〜100、好ましくは55〜98が好適である。HLMFR/MFRが50未満では、ブロー成形機で押出されたパリソンにメルトフラクチャーが発生しやすくなり、特に高速成形時にメルトフラクチャーが発生しやすくなる。HLMFR/MFRが100を超えると、MFR値が低い場合はパリソンに肌荒れが生じやすく、ブロー成形された容器の肌が荒れる傾向にある。また、MFR値が高い場合は、パリソンの表面肌が異常に光り、ブロー成形時のエアー抜き性が悪くなり、成形された容器にあばたが発生する傾向がある。
【0034】
一方、本発明のポリエチレン(B)は、チーグラー系触媒によって製造されるもので、密度(JIS K6922−1,2:1997に準じて測定される)は、0.950〜0.962g/cm、好ましくは0.952〜0.961g/cm、更に好ましくは0.954〜0.960g/cmである。密度が0.950g/cm未満では成形された容器の剛性が低下し、密度が0.960g/cmを超えると、成形された容器の透明性が悪くなる。
【0035】
本発明のポリエチレン(B)の温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるMFR(JIS K6922−2:1997「プラスチック−ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準じて測定される)は、10〜50g/10分、好ましくは15〜40g/10分である。MFRが10g/10分未満では、ブロー成形機で押し出されたパリソンの表面肌が荒れる傾向にあり、成形された容器の表面の肌も荒れる傾向になる。その結果、成形された容器の透明性が低下する傾向にある。また、MFRが50g/10分を超えると、パリソンの肌が異常に光り、外観不良を引き起こす傾向にある。
【0036】
ポリエチレン(B)の温度190℃、荷重21.6Kgにて測定されるメルトフローレート(JIS K6922−2:1997「プラスチック−ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準じて測定される)は、250〜2500g/10分のものが好適である。HLMFRが250g/10分未満では、ブロー成形機で押し出されたパリソンの表面肌が荒れる傾向にあり、成形された容器の表面の肌も荒れる傾向になる。その結果、成形された容器の透明性が低下する傾向にある。また、HLMFRが2500g/10分を超えるとパリソンの肌が異常に光り、外観不良を引き起こす傾向にある。
【0037】
本発明のポリエチレン(B)のGPCにより測定されるMw/Mn(測定方法は上記の方法と同じ)は、3.0〜7.0、好ましくは3.5〜6.0である。Mw/Mnが3.0未満では、ポリエチレン(A)とブレンドした場合、高速で押出されたパリソンにメルトフラクチャーが発生しやすくなる。Mw/Mnが7.0を超えると、ポリエチレン(A)とブレンドした場合、押出されたパリソンの肌あれ改善効果が少ない。
【0038】
ポリエチレン(B)のHLMFR/MFRは、25〜50、好ましくは28〜40が好適である。HLMFR/MFRが25未満では、ポリエチレン(A)とブレンドした場合、高速で押出されたパリソンにメルトフラクチャーが発生しやすくなる。Mw/Mnが50を超えると、ポリエチレン(A)とブレンドした場合、押出されたパリソンの肌あれ改善効果が少ない。
【0039】
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物は、ポリエチレン(A)とポリエチレン(B)とを混合して得ることができる。該組成物は、1基の反応器でポリエチレン(A)を製造し、別途1基の反応器でポリエチレン(B)を製造し、又は、1基の反応器でポリエチレン(B)を製造し、別途1基の反応器でポリエチレン(A)を製造し、ポリエチレン(A)及びポリエチレン(B)を混合することにより、製造することができる。また、該組成物は、2基又はそれ以上の反応器を直列及び/又は並列に用いて製造することができる。この場合、ポリエチレン(A)について、複数の反応器に分けて製造し、それぞれで製造した重合体を合わせて全体として一つの重合体(ポリエチレン(A))としてもよく、ポリエチレン(B)について、複数の反応器に分けて製造し、それぞれで製造した重合体を合わせて全体として一つの重合体(ポリエチレン(B))としてもよい。好ましくは、樹脂の均一性等の理由から、ポリエチレン(A)とポリエチレン(B)を順次連続的に重合して、又はポリエチレン(B)とポリエチレン(A)を順次連続的に重合して得られたものが望ましい。
【0040】
本発明の組成物に用いられるポリエチレンは、エチレンの単独重合、又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等との共重合により得られる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は40モル%以下、好ましくは30モル%以下である。
【0041】
本発明の組成物に用いられるポリエチレンは、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法、高圧重合法などの製造プロセスにより製造することができ、好ましくはスラリー重合法が望ましい。ポリエチレンの重合条件のうち重合温度としては、0℃以上300℃以下の範囲から選択することができる。スラリー重合においては、生成ポリマーの融点より低い温度で重合を行う。重合圧力は、大気圧〜約100kg/cmの範囲から選択することができる。実質的に酸素、水等を断った状態で、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下でエチレン及びα−オレフィンのスラリー重合を行うことにより製造することができる。
【0042】
上記重合において、重合器に供給される水素は、連鎖移動剤として消費され、生成するポリエチレンの平均分子量を決定するほか、一部は溶媒に溶解して重合器から排出される。溶媒中への水素の溶解度は、小さく、重合器内に大量の気相部が存在しない限り、触媒の重合活性点付近の水素濃度は低い。そのため、水素供給量を変化させれば、触媒の重合活性点における水素濃度が速やかに変化し、生成するポリエチレンの分子量は、短時間の間に水素供給量に追随して変化する。従って、短い周期で水素供給量を変化させれば、より均質な製品を製造することができる。このような理由から、重合法としてスラリー重合法を採用することが好ましい。また、水素供給量の変化の態様は、連続的に変化させるよりも不連続的に変化させる方が、分子量分布を広げる効果が得られるので、好ましい。
また、本発明に係るポリエチレンにおいては、水素供給量を変化させることが重要であるが、その他の重合条件、例えば重合温度、触媒供給量、エチレンなどのオレフィンの供給量、1−ブテンなどのコモノマーの供給量、溶媒の供給量等を、適宜に水素の変化と同時にまたは別個に変化させることも重要である。
【0043】
本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物は、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができる。また、上記のポリエチレン組成物には、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、パール顔料、光輝材、偏光パール顔料、架橋剤、発泡剤、中和剤、熱安定剤、結晶核剤、無機または有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。着色方法としてはベース樹脂に必要量添加したコンパウンドでも、高濃度添加したマスターバッチを後ブレンドしてもよい。結晶核剤は、マスターバッチにてブロー成形時に添加しても差し支えない。
【0044】
また、添加剤として、例えば酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上適宜併用することができる。充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能である。いずれの場合でも、上記ポリエチレンに、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
【0045】
本発明のポリエチレン組成物は、結晶核剤を使用しなくても充分な透明性を発揮することができるが、さらに結晶核剤を配合することにより、一層優れた透明性を発揮することができる。即ち、本発明の中空成形容器用ポリエチレン組成物には、ポリエチレン(A)及びポリエチレン(B)の合計100重量部に対して、ソルビトール系結晶核剤、カルボン酸金属塩系結晶核剤、有機リン酸金属塩系結晶核剤、およびロジン系結晶核剤からなる群から選択される少なくとも1種の結晶核剤0.001〜5.0重量部を添加すると、透明性が更に向上する。
【0046】
ソルビトール系結晶核剤としては、例えば、特開平8−3364号公報に記載のジベンジリデンソルビトール誘導体や、1・3,2・4−ジベンジリデンソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−メチルベンジリデン−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−p−エチルベンジリデン−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−p−メチルベンジリデン−2・4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−エチルベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(p−n−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(2’,4’−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−メチルベンジリデン−2・4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1・3−p−エチルベンジリデン−2・4−p−クロルベンジリデンソルビトールおよび1・3,2・4−ジ(p−クロロベンジリデン)ソルビトールなどが挙げられ、中でもビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(エトキシベンジリデン)ソルビトールなどが好ましい。
カルボン酸金属塩系結晶核剤としては、例えばアジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸アルミニウム、セバシン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム等が挙げられる。
有機リン酸金属塩系結晶核剤としては、例えば、特開平8−3364号公報に記載の芳香族有機リン酸エステルの金属塩や、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(例えばADEKA社製アデカスタブNA−11)、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム(例えばADEKA社製アデカスタブNA−10)等が挙げられる。
ロジン系結晶核剤としては、ロジンの金属塩、例えば市販品では荒川化学工業社製結晶核剤のパインクリスタルKM−1500等が挙げられる。
【0047】
本発明の中空成形容器は、通常のダイレクトブロー成形機を用いて製造することができる。成形条件は、求める成形品の大きさ、形状によって適宜設定可能であり、必ずしも限定されないが、厚みとして、好ましくは0.2〜1.1mm、より好ましくは0.4〜0.8mmである。また、ダイレクトブロー成形で発生するバリ等を粉砕しベース樹脂にブレンドし使用しても差し支えない。
【0048】
本発明の容器にスクリーンによる印刷等や、ブロー成形時に金型内にラベルを挿入し成形するインモールドラベルや、シュリンクフイルム並ぶにストレッチフイルム等でのデコレーッションを施しても差し支えない。
【0049】
本発明の中空成形容器の製造に用いられる冷却金型は、通常ブロー成形時の金型を用いることができる。金型のキャビティー面は、サンドブラスト仕上げがされており、金型キャビティー面でパリソンを挟み、エアーピンでパリソンを膨らませた時に金型キャビティーとパリソンの間に存在するエアーを抜くために施されていることが多い。
また、ダイレクトブロー成形用金型のキャビティー面は、ブラスト仕上げが、JIS−B0601:1982に準拠して測定される表面粗さRa値が0.2〜0.9μmの範囲であることが好ましく、こうした表面粗さの各金型にて成形を行うことにより表面が平滑な容器を得ることが出来る。金型キャビティー面の表面粗さRa値が0.9μmを超えると、金型キャビティー面を転写してしまい成形された容器の表面は平滑性が低下したものになってしまう。また、表面粗さRa値が0.20μm未満では、エアー抜きが悪く成形された容器の表面に不均一模様が発生してしまう。
【0050】
本発明の中空成形容器は、ブロー成形法によりブロー成形品、特にダイレクトブロー成形機、ロータリーブロー成形機、多層ブロー成形機でブロー成形品とすることができる。また、ホットパリソン法延伸ブロー成形機、コールドパリソン法延伸ブロー成形機やインジェクションブロー成形等でも可能である。ブロー成形品の大きさは特に限定されないが10mlから2000ml程度が望ましい。また、容器の形状は、特に限定されない。得られたブロー成形品は透明性があり、優れた高級感のあるプラスチック成形品であり、また、透明性のみならず、肌触り等に優れ、取り扱い性、落下衝撃強度等の物性に優れ、容器に外力が加わり変形した場合に白化等の問題の生じない等に優れ、シャンプー、リンス、化粧品、医療用等の容器、食用油等の食品用容器等として好適に用いることができ、産業上の有用性は非常に高い。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。なお、実施例で用いた測定方法は以下の通りである。
(1)密度:JIS K6922−1,2:1997に準じて測定した。
(2)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR):JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(3)温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR):JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(4)GPCの測定条件及び測定方法並びに分子量計算方法:
(i)測定条件
ーターズ社製150C型を使用して、下記の条件でGPC測定を行い、重量平均分子量(Mw)を求めた。
カラム:昭和電工社製Shodex HT−G 1本及び同・HT−806M 2本
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
温度:140℃
流量:1.0ml/分
注入量:300μl
(ii)サンプル調整
市販の4mlスクリュートップバイアル瓶に試料約3mg及び溶媒3.0mlを量り採り、センシュー科学社製SSC−9300型攪拌機を用い、温度150℃で2時間振とうを行なった。
(iii)分子量の計算
GPCクロマトデータは1点/秒の頻度でコンピュータに取り込み、森定雄著・共立出版社発行の「サイズ排除クロマトグラフィー」第4章の記載に従ってデータ処理を行い、Mw値を計算した。
(iv)カラムの較正
カラムの較正は、昭和電工社製単分散ポリスチレン(S−7300、S−3900、S−1950、S―1460、S−1010、S−565、S−152、S−66.0、S−28.5、S−5.05)、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの各0.2mg/l溶液を用いて、一連の単分散ポリスチレンの測定を行い、それらの溶出ピーク時間と分子量の対数の関係を4次多項式でフィットしたものを較正曲線とした。
なお、ポリスチレンの分子量は、次式を用いてポリエチレンの分子量に換算した。
PE=0.468×MPS
【0052】
(5)ヘイズ:
φ50mmのダイレクトブロー成形機にて、スクリュー回転数30rpmにて成形樹脂温度205℃に調整し、パリソンを押出し、約400mlの偏平容器形状(縦約19cm、幅約7cm、最大奥行き約5cmであって、外径約2cm、高さ約2cmのネジ形状口部を有する容器)のブロー金型(キャビティー面ブラスト仕上げ、キャビティー面粗さRa値0.7μmの金型)、金型温度20℃、ブロー圧力6kg/cm、ボトル重量26g、成形サイクル12秒にて、ブロー成形を行ない、容器の胴中央平坦部より、大きさ5cm×5cm、厚さ約0.85mmの試験片を切り取り、JIS K7105:1981に準拠して成形品ヘイズ(H)を測定した。
(6)曲げ弾性率:試験片として190℃にてプレス成形し、4×10×80mmのサイズに加工したものを用い、JIS K6922−2に準拠して測定した。
(7)全光線透過率:JIS K7105:1981に準拠して測定した。
(8)パリソン(プリフォーム)温度:押出された樹脂を棒状熱電対温度計にて測定した。
(9)表面粗さ:JIS B0601:1982に準拠して金型キャビティー面の表面粗さ及びブロー成形容器壁面を測定した。
(10)成形品外観:ブロー成形品である容器の外観を目視判定により、その状態を評価し、ムラがなく肌が細かく均一な肌感の良いもの又はそれに近いものを「良好」、肌が荒れており又は均一な肌感のないものを「肌荒れ発生」、金型キャビティーでのエアー抜きの悪いものを「あばた発生」とした。
【0053】
(11)ドローダウン:パリソンがダイ先端から60cmに到達する時間(T60)とダイ先端から12cmに到達する時間(T12)の比(T60/T12)が3.5未満の場合をドローダウン有、3.5以上の場合をドローダウン無とした。
(12)使用樹脂
ブロー用樹脂は表1及び表2に示したポリエチレン(A−1)〜(A−5)及びポリエチレン(B−1)〜(B−3)を使用した。
【0054】
[実施例1]
φ50mmのダイレクトブロー成形機にて、スクリュー回転数30rpmにて成形樹脂温度205℃に調整し、パリソンを押出し、約400mlの偏平容器形状(縦約19cm、幅約7cm、最大奥行き約5cmであって、外径約2cm、高さ約2cmのネジ形状口部を有する容器)のブロー金型(キャビティー面ブラスト仕上げ、キャビティー面粗さRa値0.7μmの金型)、金型温度20℃、ブロー圧力6kg/cm、ボトル重量26g、成形サイクル12秒にて、ブロー成形を行なった。
樹脂としてポリエチレン(A−1)80重量%とポリエチレン(B−2)20重量%をブレンドしたもの使用し、中空容器を得た。この得られた容器の諸物性を表1に示した。
【0055】
[実施例2〜19]
表1、2に示す条件以外は、実施例1と同様に行った。得られた重合体の評価結果を表1、2に示した。得られた重合体は、実施例1と同様に曲げ弾性率などの機械物性に優れ、なおかつ透明性(へイズ)が適性値であった。また表面の肌荒れが少なく、光沢も良好であった。さらに実施例9〜19では、結晶核剤を入れた場合と入れない場合の両者を評価した結果、結晶核剤による更なる透明性(ヘイズ)の改善効果が得られることがわかる。
【0056】
[比較例1〜16]
表1、2に示す条件以外は、実施例1と同様に行った。得られた重合体の評価結果を表1、2に示した。表1、2より、比較例1〜14は曲げ弾性率のわりには透明性(ヘイズ)のレベルが低く、表面の肌荒れが大きい傾向にあることがわかる。また、比較例2、3、5、7、10及び13は、ドローダウン性が大きく、成形上問題を生ずるものとなった。さらに、比較例15及び16は、結晶核剤による透明性改善効果が十分ではなかった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、高透明、高光沢、表面平滑であって、剛性が高く容器としての自立性が良く、軽量化も可能であり、しかも成形時及び製品での取り扱い性の点でも満足でき、製品物性として変形時に生じる白化等の問題の生じないポリエチレン組成物が得られ、その組成物を用いると、高密度ポリエチレン樹脂製容器であって、透明性、光沢及び表面平滑性に優れ、しかも剛性に優れた高級感のある容器、シャンプー、リンス、化粧品、医療用等の容器やチューブ容器等の分野で広く利用でき、リサイクル利用可能性の高い容器を提供できるので、産業上の有用性は非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例に記載の中空成形容器用ポリエチレン組成物におけるヘイズ(H)と密度(D)との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィリップス系触媒によって製造されたポリエチレン(A)45〜95重量%及びチーグラー系触媒によって製造されたポリエチレン(B)55〜5重量%からなるポリエチレン組成物であって、
下記(a)〜(d)の物性を有することを特徴とする中空成形容器用ポリエチレン組成物。
(a)密度が0.942〜0.953g/cm
(b)温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるメルトフローレート(MFR)が0.5〜2.0g/10分
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が5.0〜10.0
(d)JIS K7105:1981に準拠して測定される成形品のヘイズ(H)と密度(D)とが次の(式1)に示す関係式を満足する
50≦H≦1200D−1064 (式1)
(式中、Hの単位は%、Dの単位はg/cmである。)
【請求項2】
温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が、20〜150g/10分であることを特徴とする請求項1に記載の中空成形容器用ポリエチレン組成物。
【請求項3】
HLMFR/MFRが、40〜110であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空成形容器用ポリエチレン組成物。
【請求項4】
ポリエチレン(A)は、密度が0.933〜0.948g/cm、温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるMFRが0.1〜1.5g/10分、GPCにより測定されるMw/Mnが5.0〜10.0であり、一方、ポリエチレン(B)は、密度が0.950〜0.962g/cm、温度190℃、荷重2.16Kgにて測定されるMFRが10〜50g/10分、GPCにより測定されるMw/Mnが3.0〜7.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空成形容器用ポリエチレン組成物。
【請求項5】
ポリエチレン(A)及びポリエチレン(B)の合計100重量部に対して、ソルビトール系結晶核剤、カルボン酸金属塩系結晶核剤、有機リン酸金属塩系結晶核剤、及びロジン系結晶核剤からなる群から選択される少なくとも1種の結晶核剤0.001〜5.0重量部を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中空成形容器用ポリエチレン組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の中空成形容器用ポリエチレン組成物を中空成形してなる容器。
【請求項7】
容器胴部表面は、JIS K7105:1981に準拠して測定されるヘイズが40〜78%、全光線透過率が68〜99%であることを特徴とする請求項6に記載の容器。

【図1】
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【公開番号】特開2010−47677(P2010−47677A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212401(P2008−212401)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】