説明

中空構造積層板の端末処理方法及び端末処理装置

【課題】表皮材を貼着してなる中空構造積層板の端末処理を低コストで短納期に対応できる端末処理方法、及び端末処理装置を提供すること。
【解決手段】(1)表皮材/表面シート/芯材/裏面シートの端部を溶着一体化した成形体を得る熱溶着工程、(2)前記熱溶着工程により得られた成形体を、トムソン抜き型にセットし、溶着部の不要部を含む外周を除去する裁断工程、を有する端末処理方法、及び中空構造積層板10の外形輪郭に対応して設置された加熱溶着刃31と、該加熱溶着刃内周側に当接されたフレキシブルヒーターを内蔵した加熱ブロック32とを、基板33に配置してなる端部溶着装置と、中空構造積層板の外形輪郭に対応して設置された切断刃を有し、前記端部溶着装置による溶着部の不要部を含む中空構造積層板の外周を切断除去可能なトムソン抜き型とを、備えた端末処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる中空構造板材の少なくとも一表面に表皮材を貼着してなる中空構造積層板の端末処理方法及び端末処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃費向上は自動車開発において重要項目であるが、これを解決する方法として車輌の軽量化が挙げられ、様々な自動車部品の軽量化が活発に行われている。
その中の1つとしてラゲッジボード等自動車内装材に関しては、従来ハードボード等木質系板材が使用されていたが、森林伐採による環境破壊、或いはバインダーとして用いられているフェノール樹脂が人体に悪影響を及ぼすこともあり、プラスチックダンボール等軽量且つ剛性の高い中空樹脂板材に切り替わりつつある。
この中空樹脂板材を基材とし、少なくとも一表面に不織布等の表皮材を貼り合せ意匠性を高め、各自動車内装部品形状に裁断して使用することが一般的であり、厚み5mm、目付け1500g/m2程度の中空樹脂板材が広く使用されている。
しかし、この中空樹脂板材は剛性が低く、板材下の受けがしっかりしていないと重量物を載せた際に大きく撓んでしまうため、適用部位は限定される。
【0003】
一方、本出願人は、軽量化を損なわず剛性を向上させることが可能な板材を鋭意検討して、熱可塑性樹脂シートに突設された中空錐台状の凸部同士を突き合せた状態で熱融着してなる芯材の製造方法を提案し、該方法で得られた芯材の両面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材を貼り合わせた中空構造板材を商品名「ツインコーン(登録商標)」として上市している。ツインコーンは、軽量であり、断面ハーモニカ構造のポリプロピレン(以下、「PP」ということがある。)中空プレートと比べて方向性が少なく、且つ厚みが9〜15mm前後であるので合板の代替品に適し、自動車内装材に限らず、物流資材、建材資材等に使用されつつある。
【0004】
ところで、これら中空樹脂板材を自動車内装基材として使用する上で、部品形状に裁断しただけでは中空であるが故に、板材端面が露出した状態となるため、板材内部にゴミが入る等衛生上の問題や、意匠性も損なわれる。したがって、板材の端末を封止する端末処理加工が必須となってくる。
これらの問題を解決する方法としては、例えばある部品形状に裁断するための切断刃の内側または内外両側に加熱溶着部を設け、打ち抜きにより得られる中空樹脂板材の端部にシール部を設けた中空樹脂板材の端部処理方法が挙げられる(特許文献1参照)。
この方法は一度の工程で中空樹脂板材の端末を封止しながら形状裁断ができるものの、切断刃に加熱溶着部を設けると、打ち抜いた際にシール部が発生するため、自動車内装材等人が手を触れるような部品の場合、指を切ったりする恐れがあり、また見栄えが悪い。
そこで、端末封止後に更にこのシール部を裁断すると、加熱溶着時の温度が低いため、口が開いてしまう。加熱溶着時の温度を上げるためには、上型及び下型の温度を上げればよいが、この方法は両型に隣接している熱板からの熱伝導で溶着する装置であり、熱板の温度を高温にすると、プレス機自体が高温により歪むため、大規模な断熱仕様にする必要があり、費用が嵩む。
【0005】
一方、このシール部の問題を解決する方法として、端部を屈曲させ溶着させる方法も提案されている(特許文献2、3参照)。これらの方法は板材の端部を見栄えよく加工できるが、非常に高価な金型を必要とし、且つ複雑な工程であるため、製品のコストアップにつながる。すなわち、金型によるプレス加工品は、中空板の外形寸法ごとに金型が必要な、いわゆる1種類1型での対応が必要で、その金型代は、例えば1m角程度の大きさの成形を対象とした場合でも、100万円以上と高額なので10,000枚以上/回の生産量がないとコスト競争が出来なく、且つ金型の納期もかかる。
【0006】
また、溶融押出しされたプラスチックシートを成形して多数のキャップ状の突起を有するキャップシートとし、そのキャップの底面と頂面とに平坦なバックシートおよびライナーシートを貼ってなるプラスチック気泡ボードの端面の処理方法として、板材端面に向かって熱線を照射して加熱することにより、端面に露出したキャップの壁および(または)端面近くに並んだキャップの壁、ならびにバックシートの縁およびライナーシートの縁の各部分を軟化させたのち、バックシートの縁とライナーシートの縁とを圧着して端面を処理する方法が提案されている(特許文献4参照)。
この特許文献4に記載の端面処理方法は、比較的安価且つ簡単な端末処理方法であるが、長方形等単純な製品形状には適用可能であるが、局所的な切込みや、小さいアール面がある自動車内装材等複雑な形状には不向きである。
【0007】
さらに、板材を刃受け熱ブロック上に載置し、その上方から押切刃を徐々に下降させ、その押切刃で板材を押し曲げながら、刃受け熱ブロックに接近させ、軟化溶融させたのち、その底面位置で切断する端末処理方法が提案されている(特許文献5)。
この特許文献5に記載の端末処理方法は、装置も比較的安価で簡易な端末処理方法であり、中空板材(ハニカムボード)の厚みが3〜10mm程度と薄い場合は有効であるが、上述した中空樹脂板材(ツインコーン)では、全体厚みが9〜15mmと大きく、且つ平面圧縮強度が高いため、刃受け部のみで板材下面から加熱しただけでは、熱伝導による軟化溶融が不充分であり、芯材凸部の反発力により端末封止後、口開きが生じてしまう。
【0008】
さらにまた、特許文献6には、熱可塑性プラスチックを材料とするダンボールの片面または両面に貼着されている表皮材とからなる内装材について、ダンボールの端面から熱刃をコア部分に押し当て、コア部分を軟化しかつ内側へ若干押し込み、上側から押刃によって表皮材を上側のライナーと共に端面に屈曲せしめ融着固定する内装材の端末処理方法が提案されている。しかし、この端末処理方法は、直線部分の端末処理には有効と思われるが、湾曲部などや切り欠き部を有する外形状物の端末処理にも応用するには、押刃や熱刃を外形状ごとに準備する、いわゆる1種類1型での対応が必要となり、前述の問題がある。
このように、いずれの特許文献に記載の端末処理方法も、全体厚みが9〜15mmと比較的厚い中空樹脂板材には適用し難いのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−50399号公報
【特許文献2】特許第3759725号明細書
【特許文献3】特許第3159903号明細書
【特許文献4】特開2005−35071号公報
【特許文献5】特開平6−305062号公報
【特許文献6】特許第4218892号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の熱可塑性中空板の端末シールにおける問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、表皮材を貼着してなる中空構造積層板の端末処理を低コストで短納期に対応できる端末処理方法、及び端末処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するため鋭意研究した結果、(1)表皮材/表面シート/芯材/裏面シートの端部を溶着一体化した成形体を得る熱溶着工程、(2)前記熱溶着工程により得られた成形体を、トムソン抜き型にセットし、溶着部の不要部を含む外周を除去する裁断工程とすることで上記問題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、
〔1〕熱可塑性樹脂シートに突設された中空錐台状の凸部同士を突き合せた状態で熱融着してなる芯材の両面に、熱可塑性樹脂からなる表裏面シートを貼り合わせた中空構造板材の少なくとも一表面に表皮材を貼着してなる中空構造積層板の端末処理方法であって、(1)プレス機に設置された所望の中空構造積層板の外形に対応した加熱溶着刃とそれに隣接する加熱ブロックとがセットされた端部溶着装置に中空構造積層板の原反を配置して、加熱溶着刃によって表皮材側から溶着部近傍を加熱しつつ変形させて、表皮材/表面シート/芯材/裏面シートを溶着一体化した成形体を得る熱溶着工程、(2)前記熱溶着工程により得られた成形体を、プレス機に設置された中空構造積層板の外形寸法に対応したトムソン抜き型にセットし、溶着部の不要部を含む外周を除去する裁断工程、
を有することを特徴とする中空構造積層板の端末処理方法、
〔2〕前記熱溶着工程における加熱溶着刃が幅0.8〜2.0mmの押罫である前記〔1〕に記載の中空構造積層板の端末処理方法、
〔3〕前記熱溶着工程において、前記端部溶着装置をプレス機の下プレス面にセットして成形する、前記〔1〕または〔2〕に記載の端末処理方法、
〔4〕前記裁断工程において、前記トムソン抜き型をプレス機の下プレス面にセットして裁断する、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の端末処理方法、及び
〔5〕前記中空構造積層板の端末処理装置であって、中空構造積層板の外形輪郭に対応して設置された加熱溶着刃と、該加熱溶着刃内周側に当接されたフレキシブルヒーターを内蔵した加熱ブロックとを、基板に配置してなる端部溶着装置(1)と、中空構造積層板の外形輪郭に対応して設置された切断刃を有し、前記端部溶着装置による溶着部の不要部を含む中空構造積層板の外周を切断除去可能なトムソン抜き型(2)とを備え、前記端部溶着装置(1)及びトムソン抜き型(2)は、同一又は異なるプレス機のプレス面に設置され、連携して使用される、ことを特徴とする中空構造積層板の端末処理装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の中空構造積層板の端末処理方法は、加熱溶着刃として通常ダンボール加工用に使用される押罫(厚み1.0〜1.5mm程度)を使用でき、従来のように専用の複雑な加熱溶着刃を要することなく自動車内装材等複雑な形状でも容易に加工できるので、金型は非常に安価となり、低コストな熱溶着工程によって端末溶着処理ができる。また、端末溶着処理後、切断刃としてトムソン刃を備え、熱溶着工程を経た板材の端部溶着により生じた溶着部(凹み)に対応した形状のトムソン抜き型により、不要部を裁断するので、裁断のための正確な位置合せを必要とせず、作業の簡略化を図ることができる。
本発明の中空構造積層板の端末処理装置は、簡素な構造の端部溶着装置とトムソン抜き型から構成されるので、設備コストが低く、且つ熱シールサイクル、裁断サイクルも速いので、中空構造積層板の端末処理の低コスト化、短納期化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に用いる中空構造積層板の部分断面説明図である。
【図2】本発明の実施形態の中空構造積層板による成形品の一例としてのラゲッジボードの平面図である。
【図3】(a)本発明の端末処理装置を構成する端部溶着装置の一例の斜面図、(b)(a)のX−X線拡大断面図である。
【図4】(a)本発明の端末処理方法における熱溶着工程の始動前の状態の模式図、(b)熱溶着終了状態の模式図、(c)熱溶着完了後の成形中間体の右側端面の拡大模式図である。
【図5】(a)本発明の端末処理装置を構成するトムソン抜き型の斜面図、(b)(a)のY−Y線拡大断面図である。
【図6】(a)本発明の端末処理方法における裁断工程の始動前の状態の模式図、(b)裁断終了状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の中空構造積層板の端末処理方法は、熱可塑性樹脂シートに突設された中空錐台状の凸部同士を突き合せた状態で熱融着してなる芯材の両面に、熱可塑性樹脂からなる表裏面シート(ライナー)を貼り合わせた中空構造板材の少なくとも一表面に表皮材を貼着してなる中空構造積層板の端末処理方法であって、(1)プレス機に設置された所望の中空構造積層板の外形寸法に対応した内径寸法と、加熱ブロック及びそれに隣接する加熱溶着刃がセットされた端部溶着装置に中空構造積層板原反をセットして、加熱溶着刃によって表皮材側から溶着部近傍を加熱しつつ変形させて、表皮材/表面シート/芯材/裏面シートを溶着一体化した成形体を得る熱溶着工程、(2)前記熱溶着工程により得られた成形体を、プレス機に設置された中空構造積層板の外形寸法に対応したトムソン抜き型にセットし、溶着部の不要部を含む外周を除去する裁断工程、を有している。
【0015】
本発明の中空構造積層板の端末処理方法に用い得る中空構造積層板は、熱可塑性樹脂シートに多数突設された中空錐台状の凸部同士を突き合せた状態で熱融着してなる芯材の表面に、熱可塑性樹脂からなる表裏面シート(ライナー)を貼り合せた中空構造板材の少なくとも一表面に表皮材を貼着してなるものである。
当該中空構造板材は、本出願人によるWO2003/080326号パンフレットに開示された中空構造板材の製造方法によって製造することができ、ツインコーンの商品名で市販されている中空構造板を好適に用いることができる。
本発明において、中空錘台状とは、中空円錐台状又は中空角錐台状をいい、これらのいずれであってもよい。
以下に、本発明の端末処理方法が適用できる中空構造積層板の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施形態における中空構造積層板10の主体部を示す模式断面図である。
【0016】
図1に部分断面を示す中空構造積層板10は、熱可塑性樹脂シートからなる2枚の中空突起体シート1a、1bの凸部頂点同士を融着により貼り合わせて構成した芯材1の両面に表裏面シート2a、2bを貼り合わせた中空構造板3に表皮材4を貼り合わせて積層して構成したものである。
【0017】
中空突起体シートの材料としては、特に限定されるものではない。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロック状ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂およびこれらのコモノマー若しくはコモノマーと他のモノマーとの共重合体、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ABS、AAS、AES、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルケトン及びこれらのコモノマー若しくはコモノマーと他のモノマーとの共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用しても併用してもよい。以上のように各種の熱可塑性樹脂を用いることができるが、コスト面、成形性、物性、耐低温性、耐熱性等の特性とのバランスを考慮すると、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、また、自己消火性が要求される場合にはポリカーボネート系樹脂が好ましい。
中空突起体シート1の剛性を高める目的で、フィラーを副材料として配合しても良い。
副材料は、特に限定されるものではないが、コスト面、成形性、取り扱い性等とのバランスを考慮すると、タルク、炭酸カルシウム等が好ましい。フィラーの添加量が増加すると、コスト高、比重の増大につながるので、これらのバランスを考慮すると、添加量は総重量に対してタルクの場合は5〜30質量%、炭酸カルシウムの場合は20質量%程度以下とするのが好ましい。
さらに、前記フィラーの他に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、抗菌剤、難燃剤、光安定剤、滑剤等を必要に応じて添加もしてもよい。
【0018】
本発明に用いられる中空構造板は、中空構造積層板としての連続使用性の観点から、JIS Z 0403−1に準拠した荷重速度10mm/分での平板圧縮試験による、平面圧縮強度が300〜3000kN/m2であるシートを用いることができる。
特に平面圧縮強度が1500kN/m2以上であれば、例えば自動車用ラゲッジボードとしての耐圧性を備え、継続使用においても、クリープ等によるへたり(厚み減少)が少ない。
【0019】
中空構造板としては、厚み9〜15mm程度、目付け1000〜4000g/m2程度のものを使用できる。
中空構造積層板の表皮材4としては、不織布、立毛した布、人工皮革様シート、合成樹脂フィルムなどの表皮、或いはそれらの表皮にクッション材を裏打ちしたものを挙げることができる。これらの表皮材は、中空構造板に接着剤や熱融着によって予め積層されているものを用いる。中空構造板としてツインコーンを用いる場合の表皮材として不織布を用いる場合は、ポリエステル繊維単独または、ポリエステル繊維にポリプロピレン繊維が0〜20質量%混合された混合繊維からなる目付け20〜500g/m2のニードルパンチ不織布が好適である。
【0020】
本発明の端末処理方法における熱溶着工程について、自動車用ラゲッジボードの端末処理を例に説明する。図2は、最大寸法L1を有する自動車用ラゲッジボード100の平面を示している。
本発明の端末処理方法における熱溶着工程は、図3(a)に斜視図として概要を示す端部溶着装置により行うことができる。同図に示す端部溶着装置30は、ラゲッジボードの外周寸法に対応する内周寸法l1で環(閉曲線)状に配置された加熱溶着刃31と、当該加熱溶着刃31を固定し、かつ所定温度に維持するための加熱ブロック32、これらを固定するための基板33とからなっている。加熱ブロックは図3(b)に拡大断面図として示すように、加熱ブロック32の内部の電気ヒーター34を収納するための溝35を有している。また、加熱ブロックは、端末処理に際して、中空構造積層板の端部近傍を加熱軟化するに充分な熱容量をもつ大きさを有している。加熱溶着刃31は、先端部が平坦状又はR状で通常段ボール加工用の押罫として使用される厚みwが0.8〜2mm程度のものを用いることができる。加熱溶着刃の厚みwは、1〜1.5mmであることがより好ましい。加熱溶着刃が0.8〜2mm程度の厚みであれば、ラゲッジボード等の複雑な形状の自動車内装材に対応して変曲加工でき、かつ装置(金型)も非常に安価とできる。
熱源としての電気ヒーター34は、加熱溶着刃31に沿って、加熱ブロック32内に収納されるので、変曲性のあるフレキシブルヒーターが好ましい。また、フレキシブルヒーターであれば、端末処理対象物の大きさが変わった場合でも、使い回しができるメリットがある。
【0021】
次いで、本発明の中空構造積層板の端末処理方法について図4により説明する。図4(a)は、プレス機の下面20Bに端部溶着装置30をセットし、該端部溶着装置の加熱溶着刃31上に、中空構造積層体(ブランク)10を載置して、端末処理加工を開始する状態を示す模式図である。図4(b)は、プレス機の上面20Aが下降して中空構造積層板の所定端部が熱溶着された状態を示している。図4(c)は、加熱溶着処理後の溶着端部の拡大模式図であり、加熱溶着刃による押圧作用により溶着部Mが、溝状凹部5の底に形成された成形体6を示している。
成形中間体6の溶着部Mでは、中空構造板3の表裏ライナー2a、2b及び表皮材4が、溶融、固化して融着されており、平坦状の融着部M'と残端7は、次の裁断工程で除去される。
なお、端部溶着装置は、プレス機の上面、下面の何れにも設置できるが、上面に設置する場合は、固定部品等を要するので、プレス機の下面に設置することが好ましい。
また、加熱溶着に先立って、端末処理加工装置近傍に設置した遠赤外線ヒーターやオーブン等の各種加熱装置を設置して、中空構造積層板の原反(ブランク)を予熱し、所定の温度としてから、端部溶着装置にセットすれば、完全な加熱溶着を行うことができ、端部融着部の剥離等の不具合を防止することができる。
【0022】
予熱は、中空構造積層板を構成する中空構造板及び表皮材の材質、厚み、目付け等によって異なるが、ポリプロピレンを主原料とするツインコーン12mm厚のものを用い、表皮材としてポリエステル繊維系の不織布を貼り合せた中空構造積層板の場合で、表皮材の表面温度が概ね70〜110℃、より好ましくは、80〜100℃とすることが好ましい。
また、熱溶着工程において、中空構造積層板の原反(ブランク)の裏面シート側をプレス面により加熱すると、端部融着が容易となり、熱溶着サイクルの短縮化と融着の完全化を図ることができる。
また、加熱溶着刃の温度は、加熱ブロックも含めて一定の温度に制御される。制御温度としては、上記と同様の中空構造積層板の場合で、170〜230℃、より好ましくは180〜200℃である。温度が低いと端末の封止性に乏しくなったり、封止されていても不織布が伸びきらずに、樹脂部が剥き出しになることがある。逆に高すぎると折り曲げる前に溶断されてしまう。或いはコーン内部の空気が膨張して製品表面が膨れ上がり、外観に支障をきたす。
【0023】
次いで、成形中間体6から不要部である融着部M'と残端7を除去するための裁断工程について説明する。図5(a)は、裁断工程に用いられるトムソン抜き型の概要を示す斜視図である。同図に示すトムソン抜き型40は、前記加熱溶着刃と同様に切断後の寸法がl1となるように切断刃41が基板42に環(閉曲線)状に配置されている。切断刃41は、図5(b)に拡大断面図として示すように、基板42に所定の高さで設置される。切断刃は、先端が鋭利な通常段ボールの抜き型で使用されているトムソン型の刃を使用できる。
【0024】
図6(a)は、成形中間体6を裁断するため、トムソン抜き型40をプレス機〔或いはオートン(打ち抜き機)〕の下面20Bに設置し、切断刃41の先端に、成形中間体の溝状凹部5が当接するように配置した状態を示している。図6(b)は、プレス機の上面板が下降して、裁断している状態を示している。裁断が完了すると、図4(c)に示した、平坦状の融着部M'及び残端7が切断除去される。
トムソン抜き型は、図6に示すようにプレス機の下面に設置する方が、当該抜き型の切断刃に沿って成形中間体の溝凹部5を容易にセットでき、位置合せ作業が極めて簡易にできるので好適である。
【0025】
本発明の中空構造積層板の端末処理方法において、熱溶着工程に連続して、裁断工程を行う場合は、2台のプレス機を準備し、各工程専用のプレス機としてこれらを並列に使用すればよい。
一方、端末処理量との関係や、プレス機を多用途に使用するなどの事情がある場合は、1台のプレス機に、熱溶着処理装置、トムソン抜き型を交互にセットして、相互に連携してバッチ式に処理すればよい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0027】
〔中空構造積層板の製造〕
芯材の熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂からなる目付け1000g/m2の芯材を得た。なお得られた芯材は、芯材の突起は、中空円錐台状であって、突起の配置が千鳥格子状、中空円錐台の先端部径がφ2mm、基部径がφ6mm、凸部の隙間間隔が2mm、円錐台の高さが6mmであり、シート部の厚さが0.75mm、突起もしくはその近傍における最薄部が0.45mm、突起先端部間の最短距離に対する基部間の最短距離の比が3:1のものである。
さらに、この芯材の表裏両面に、ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー製:E601)をシート状に押出して表面材とし、該表面材の厚み0.5mm、目付け500g/m2の樹脂シートを熱融着により芯材の表裏両面に貼り合わせた全体厚みが12.8mm、目付け2000g/m2の中空構造板材を得た。
この中空構造板材の一方の表面に表皮材として、ポリエステル繊維からなるニードルパンチ不織布(目付け100g/m2)を熱融着により貼り合せて、目付け2100g/m2の中空構造積層板を得た。不織布を含む見かけの厚みは13.2mmであった。
【0028】
実施例1
〔熱溶着工程〕
図2に示すL1の寸法が900mm、L2が400mmの端末処理されたラゲッジボードを製造するべく端末処理を行った。
先ず、端部端部溶着装置は、図3に示す構成のもので、加熱溶着刃31は基板33からの高さh1が15mm、刃幅wが1.5mm、加熱ブロック32は、高さh2が12mm、幅w2が40mm、収納溝35に外径8.5mmのフレキシブルヒーター(ドイツ・ホットセット社製)34を収納した構造であり、これを目標とするラッゲジボードの外形寸法に合せて環状に配置した。これを、図4に示すようにプレス機の下面に固定し、加熱溶着刃及び加熱ブロックの温度が200℃となるように制御した。
図外の加熱装置で表面温度が100℃に予熱された大きさ略950×450mmで、目標とするラッゲジボードの外形寸法より約50mm大き目の中空構造積層板10の原反を、図4(a)に示すように、表皮材4が加熱溶着刃31に接するようにしてセットし、プレス速度2mm/minで、上面プレス20Aを下死点迄下降させて、図4(b)に示すような状態で、端部の熱溶着を行った。プレスのサイクルは90秒として溶着端部を形成した。
成形後の溶着端部は、図4(c)に拡大模式図として示すように、加熱溶着刃31に相当する平坦状溶着部M'と溝状凹部5が形成され、成形中間体6の本体側の右端部は、表皮材4/表面シート2a/芯材1/裏面シート2bが溶融一体化されていた。
【0029】
〔裁断工程〕
図5に示すように、切断刃41が目標とするラゲッジボードの外形寸法に合せて環状に基板42に配置されたトムソン抜き型40を準備した。切断刃は厚みw3が1.0mmで基板(合板製)42に高さh3を、15mmとしてセットした。
このトムソン抜き型をプレス機の下面に固定した。
図6(a)に示すように、成形中間体6の溝状凹部5が切断刃42に接するようにセットし、プレス機の上面板20Aを下降させ、上面板20Aの下死点まで降下させて図6(b)のような状態として、成形中間体の平坦状融着部M'及び残端7を切断除去した。
得られたラゲッジボードの端末部は、端末傾斜部の最下端の接線部分で切断されており、表皮材4に覆われ、かつ平坦状の融着部は除去されており、見栄えのよい美麗な仕上がりであり、ラゲッジボードとして充分実用可能なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の中空構造積層板の端末処理方法は、熱溶着工程及び裁断工程の低コスト化、作業の簡略化を図ることができる方法として有効に利用できる。
本発明の中空構造積層板の端末処理装置は、簡素な構造の端部溶着装置とトムソン抜き型から構成されるので、設備コストが低く、且つ熱シールサイクル、裁断サイクルも速い中空構造積層板の端末処理方法に利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 芯材
1a、1b 中空突起体シート
2、2a、2b 表裏面シート(ライナー)
3 中空構造板
4 表皮材
5 溝状凹部
6 成形中間体
7 残端
10 中空構造積層板
12 中空突起体シートベース面
13 下底側が開口した中空円錐台状凸部(凸部)
20A プレス機上面
20B プレス機下面
30 端部溶着装置
31 加熱溶着刃
32 加熱ブロック
33 基板
34 電気ヒーター(フレキシブルヒーター)
35 ヒーター収納溝
40 トムソン抜き型
41 切断刃
42 基板
M、M' 溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートに突設された中空錐台状の凸部同士を突き合せた状態で熱融着してなる芯材の両面に、熱可塑性樹脂からなる表裏面シートを貼り合わせた中空構造板材の少なくとも一表面に表皮材を貼着してなる中空構造積層板の端末処理方法であって、(1)プレス機に設置された所望の中空構造積層板の外形に対応した加熱溶着刃とそれに隣接する加熱ブロックとがセットされた端部溶着装置に中空構造積層板の原反を配置して、加熱溶着刃によって表皮材側から溶着部近傍を加熱しつつ変形させて、表皮材/表面シート/芯材/裏面シートを溶着一体化した成形体を得る熱溶着工程、(2)前記熱溶着工程により得られた成形体を、プレス機に設置された中空構造積層板の外形寸法に対応したトムソン抜き型にセットし、溶着部の不要部を含む外周を除去する裁断工程、
を有することを特徴とする中空構造積層板の端末処理方法。
【請求項2】
前記熱溶着工程における加熱溶着刃が幅0.8〜2.0mmの押罫である請求項1に記載の中空構造積層板の端末処理方法。
【請求項3】
前記熱溶着工程において、前記端部溶着装置をプレス機の下プレス面にセットして成形する、請求項1または2に記載の端末処理方法。
【請求項4】
前記裁断工程において、前記トムソン抜き型をプレス機の下プレス面にセットして裁断する、請求項1〜3のいずれかに記載の端末処理方法。
【請求項5】
前記中空構造積層板の端末処理装置であって、中空構造積層板の外形輪郭に対応して設置された加熱溶着刃と、該加熱溶着刃内周側に当接されたフレキシブルヒーターを内蔵した加熱ブロックとを、基板に配置してなる端部溶着装置(1)と、中空構造積層板の外形輪郭に対応して設置された切断刃を有し、前記端部溶着装置による溶着部の不要部を含む中空構造積層板の外周を切断除去可能なトムソン抜き型(2)とを備え、
前記端部溶着装置(1)及びトムソン抜き型(2)は、同一又は異なるプレス機のプレス面に設置され、連携して使用されることを特徴とする中空構造積層板の端末処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−194666(P2010−194666A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41792(P2009−41792)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】