中空細管を利用した試験管中の液体突沸防止方法およびそれに利用する中空細管。

【課題】本方法は、小さな口径の試験管中での液体の加熱濃縮を実施できることに関する。またこの技術を利用した汗中グルコースの非侵襲測定の実施に関する。
【解決手段】本発明は、4−10ミリの小口径試験管中での試料水溶液の加熱濃縮の際に、内径0.1−0.6ミリメートルを有する中空細管を試験管にいれることにより、試験管底部の加熱に伴い発生する気泡中の蒸気を中空細管より取り除き、水溶液の加熱濃縮において突沸をせずに加熱濃縮を可能にした。またこの中空細管を用いた加熱濃縮を汗中のグルコース測定に用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小口径の試験管中での液体の加熱濃縮の際に用いる突沸防止用中空細管およびこの細管を用いた加熱濃縮測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸留を実施するときに突沸を防ぐために沸石を蒸留する容器に入れる。たとえば丸底フラスコを用いて蒸留を実施して溶液を加熱濃縮する際に沸石を丸底フラスコ底部にいれて実施し、加熱に伴い発生する丸底フラスコの底部での気泡を常に沸石から供給される気泡により気泡があまり大きくならないうちに小さな気泡の塊として液面から、すなわち気液界面から取り除くことがなされている。
【0003】
丸底フラスコなどでの加熱濃縮の際に、突沸を防ぐために沸石の代わりに一方を閉じたガラス細管を加熱液体中に入れることも有効である。また細管を通じてたとえば窒素ガスを液体中に気泡として連続的に送り込むことも有効である。
【0004】
しかしながら小さな口径の試験管中での液体の加熱濃縮は非常に難しく、内径3−10ミリメートル程度の試験管の中に分析することを目的とする化学物質を含む試料溶液を2ml以下いれて、溶液を加熱濃縮することは非常に困難であった。もし加熱による突沸が生じるとすべての液体が、試験管から外部に放出されてしまうことがしばしば起こるからである。
【0005】
ヒト汗を噴霧法により採取し、その採取液を加熱濃縮後、その濃縮された溶液中のグルコース濃度を測定し、血中のグルコース濃度を判定する方法において、汗の採集液0.5ml程度の少量の溶液を数分のオーダーで加熱濃縮することが課題であった(特許文献1)。
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開2003−315340
【特許文献2】特許公開2000−287942
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
小さな口径の試験管中での液体の加熱濃縮は非常に難しく、内径3−10ミリ程度の試験管の中の溶液の加熱濃縮は困難であった。本発明は小さな試験管中での加熱濃縮を実施する際の底部からの加熱に伴う気泡の取出しがスムーズに実施できることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
試験管底部で加熱に伴い発生する気泡を取り除くために、溶液が水溶性である場合には撥水性を持つ微小内径を有する中空細管を液体中に挿入すると、底部に発生した気泡をスムーズに液体中から取り除ける。すなわち気泡の内部に存在する加熱された水蒸気を中空細管の内部の中空部分を通じて取り除く。かつ気泡が取り除かれた後に試験管底部おいて、たとえば水溶液が細管先端に達したときは、細管先端に撥水性が付与されている中空細管を用いているので、水溶液は細管先端部に近づけない。このような中空細管を挿入することにより、小口径試験管での効率よい濃縮が実施できる。図1に中空細管を試験管に入れた図を示した。
【0009】
中空細管としては、水溶液の濃縮には撥水性を有するポリフロロエチレン製およびポリフロロプロピレン製などの多フッ化炭化水素ポリマー製の中空細管や撥水性を付与したガラス製中空細管を供することができる。
【実施例】
【0010】
実施例1を説明する。
内径8ミリ、たけ50ミリ長のガラス製試験管に0.3mlの試料水溶液を入れる。内径0.5ミリ、長さ65ミリのポリフロロエチレンチューブを前期試験管に入れる。ついでこの試験管底部を加熱した金属製のプレートに接触させた。底部で発生した気泡はポリフロロエチレンチューブ内部を通過して水面より上部に位置する細管先端から放出されるので、非常にスムーズに試料水溶液が濃縮され、試料溶液の最初の体積0.3mlから約2分間で0.1mlまで3倍に濃縮できた。
【0011】
実施例2を説明する。
内径8ミリ、たけ50ミリ長のガラス製試験管に0.5mlの試料水溶液を入れる。内径0.4ミリ、長さ65ミリのガラス製中空毛細管を前記試験管に入れる。このガラス製毛細中空管はあらかじめオクタデシルジメチルモノクロロシランで内部および外部を撥水性に修飾した。ついでこの試験管底部を加熱した金属製のプレートに接触させた。底部で発生した気泡はガラス製中空毛細管を経由して外部に放出され、底部で発生した気泡はガラス製中空毛細管内部を通過して水面より放出されるので、非常にスムーズに試料水溶液が濃縮され、試料溶液の体積が約3分間で0.1mlまで5倍に濃縮できた。
【0012】
実施例3を説明する。
実施例2と同様の実験を複数2本および3本の内径0.5ミリ、長さ65ミリのポリフロロエチレンチューブを束ねた形態で用いて実施したところ、試験管底部で発生した気泡はポリフロロエチレンチューブの内部を通過し、スムーズに濃縮された。
【0013】
実施例4を説明する。
汗中のグルコースを測定することを特徴とする測定方法と手段である。試料水溶液として、人差し指の第二関節から指の先端までの部分を1%エタノールを含む水溶液の噴霧により皮膚表面にたまったグルコースを採取した。同時に指先の発汗量については、反対側の同一の指の発汗量を測定して得た。この手順は特許文献1および特許文献2に開示されている。実施例2と同じ方法を用いた。すなわち、試料水溶液として皮膚表面から得た汗を含む水溶液を小型試験管に入れ、ついでこの試験管の底部を加熱したおわん形の金属容器に接触させて加熱濃縮を実施したところ、濃縮が2〜5分で達成された。
【0014】
この濃縮液を電気化学検出機能を有するチップ(血糖測定装置のオートディスクセンサーのひとつのセンサーを取り出して検出用チップとして使用、バイエルメディカル株式会社製)上に滴下し、このチップからの信号を電流/電圧変換し、ついでデーターロガ(キーエンス株式会社製)を用いて信号を検出したところ、水溶液中のグルコース濃度が定量できた。汗中のグルコース検出システムは、汗を採集した水溶液を得る過程、この水溶液の濃縮、濃縮液中のグルコース濃度の検出の3工程を含んでいる。
【0015】
実施例4の汗中のグルコース検出システムをさらに詳しく記述する。すなわち、本発明を汗中のグルコース検出を可能とする測定方法に適用するための方法を示す。人の皮膚上の汗を水溶液の噴霧により採取、次いで本発明により加熱濃縮し、濃縮された汗を含む溶液をグルコースオキシダーゼを用いた反応電極を有するチップセンサーに移す。次いでこれに必要な反応システム電圧を印加し、その信号電流を電流/電圧増幅回路により電圧信号にして増幅し、さらに信号処理回路であるデーターロガによりA/D変換し、数平均処理を加えた後コンピューターで出力を表示する。
【0016】
図3は標準採集溶液を用いて行った汗中のグルコース検出システムのリニア特性検証例である。また図4は被験者の汗成分からのグルコース成分検出値と被験者の血液からのグルコース値の相関を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明を実施するための最良の形態として、内径5〜10ミリ、たけ50ミリ長のガラス製試験管に0.5mlの試料水溶液を入れる。内径0.5ミリ、長さ65ミリのポリフロロエチレンチューブを前記試験管に入れる。ついでこの試験管底部を加熱した金属製のプレートに接触させ、試料水溶液を濃縮する試料溶液の体積が約3分間で0.1mlまで5倍に濃縮できる。
【0018】
汗中グルコース測定システムとしては、人差し指の第二関節から指の先端までの部分に1%エタノール水溶液を噴霧することにより皮膚表面にたまったグルコースの試料水溶液0.5mlを得て、本発明の濃縮方法で試験管を用いて濃縮し、ついでこの濃縮液を電気化学検出機能を有するチップ上に滴下し、このチップからの電気信号を電流/電圧変換しデーターロガを用いて検出する。
【0019】
チップの応答性について、標準グルコース採集液を用いて調べた。この結果を図3に示した。
【0020】
実際に被験者3名による汗中のグルコース濃度の測定を実施し、同時に被験者の血液を採取し血中のグルコース値を測定し、汗中のグルコース濃度と毛中のグルコース濃度の関係を調べ、この結果を図4に示す。図4より得られた血中グルコース値と汗中グルコース値は良い相関を示しており、これは汗中のグルコース濃度の測定により血中のグルコース濃度の判定ができることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は少量の試料水溶液の加熱濃縮に用いることができる。分析の前処理としては非常に重要な濃縮が迅速に達成できる。すなわち、これまで少量の試料溶液には凍結乾燥、真空遠心加熱濃縮などの方法を用いていったが、これらの方法では数10分とかなりの時間が必要であったが、本発明により濃縮に必要とする時間が数分に短縮できる。分析測定分野では非常に重要な発明である。試料濃縮過程の時間は分析所要時間においてかなりの割合を占めるので、この短縮は、分析所要時間を短時間化でき、工業製品の生産プロセスなどの品質管理にも有効である。
【0022】
グルコースの非侵襲測定として、汗中のグルコースの測定に本方法が適用できる。グルコースの非侵襲測定は、多数の糖尿病疾患への適用が可能で、非常に期待されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】試験管に撥水性中空細管入れ、金属製のプレート上で加熱している状態を示した。
【図2】3本の細管から構成した撥水性中空細管
【図3】標準汗採集液中のグルコース濃度とグルコースセンサーの出力
【図4】被験者3名を用いた汗成分のグルコース濃度検出値と血糖値の相関
【符号の説明】
【0024】
1.試験管
2.試料水溶液
3.中空細管
4.発生した気泡
5.加熱プレート
6.3つの中空部を持つ細管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型試験管を用い試験管内部に入れた溶液を加熱濃縮するときに、内径0.1〜0.6ミリメートルの中空細管を試験管に投入して、中空細管の上端が小型試験管内にいれた溶液の液面より上方に位置させて加熱濃縮することを特徴とする中空細管を利用した試験管中の液体突沸防止方法
【請求項2】
内径が0.1〜0.6ミリメートルであり、その細管の内外側表面が撥水性を有することを特徴とする中空細管
【請求項3】
請求項2の中空細管として多フッ化炭化水素ポリマー製である中空細管
【請求項4】
請求項2の中空細管として撥水性を付与したガラス製中空細管
【請求項5】
皮膚表面に存在するグルコースを液体の噴霧または少量の液体に接触させることにより採取し、その後加熱濃縮し、次いで濃縮液中のグルコースを分析装置にて測定する汗よりのグルコース測定法であり、その濃縮工程に中空細管を挿入した小型試験管を用いて加熱濃縮する請求項1記載の中空細管を利用した試験管中の液体突沸防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−48792(P2010−48792A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243290(P2008−243290)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(504253980)有限会社ピコデバイス (11)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】