説明

中空耐圧成形品およびその製造方法

【課題】耐圧性と気密性とが要求される中空耐圧成形品の製造方法およびこの製造方法で得られる中空耐圧成形品を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が開放している端部を有する筒部材の該端部を蓋部材で超音波溶着してなり、筒部材および蓋部材は、熱可塑性および結晶性を有する同じ樹脂の成形体であり、超音波溶着される接合部の筒方向断面は、一方が凸形状で、他方が凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ凸形状の凸部先端面幅が凹形状の凹部底面幅よりも大きい形状であり、凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有し、かつ凸形状の突起高さが凹形状の溝深さよりも大きくなっており、超音波溶着は、凸部の側面と凹部の側面との接触溶融、および凸部先端面と凹部底面との接触溶融によりなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶着により中空耐圧成形品を製造する方法、およびこの方法により得られる中空耐圧成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野および浄水器分野においては、内部に活性炭や中空糸などのろ過材を充填した中空成形品がカートリッジ容器として用いられている。
従来、トナー容器など、射出成形等では得られにくい形状の樹脂成形品に、接着剤を使用しない超音波溶着を用いた接合方法が採用されている。
例えば、中空糸モジュールで、従来のネジとO−リングによる方法、また超音波溶着による方法の問題点を解決するべく、ネジ止めと超音波溶着を組み合わせた方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、この方法は、ねじ部の成形やO−リング部材の追加など部品点数が増加するため製造コストが多大になるという問題がある。
また、中空部材と蓋部材とを有する容器では、従来からネジ式の接着方法が用いられている。しかし、ネジ式では使用時に緩むなどの問題があり、また、大量生産の観点からも非効率なため、超音波溶着が開示されている(特許文献2)。しかしながら、ここで用いられる超音波溶着時の溶着形状はエネルギーダイレクター方式であり、凹凸嵌合形状の底面部の当接部が起点となり溶融するために結晶性樹脂の場合は、結晶固化のために溶融嵌合部分に充填されにくく、気密漏れなどの問題が生じるという問題がある。
【0003】
また、一方が凸形状で、他方がその凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有し、かつ凸形状の凸部先端幅が凹形状の凹部底面幅よりも大きい形状で嵌合されつつ超音波溶着されてなる円筒トナー容器が開示されている(特許文献3)。
【0004】
しかしながら、医療分野および浄水器分野におけるカートリッジ容器は、内容物が液体であること、内圧が高くなっても液漏れが許されないこと等から、耐圧性と気密性とが要求されている。また、カートリッジ容器に用いられる樹脂材料は機械的強度、非汚染性に優れていることなどからポリプロピレン樹脂が用いられる場合がある。
このポリプロピレン樹脂は、比較的硬度が低いことから、樹脂の軟らかさが振動を吸収するために超音波振動が十分に伝達されずに超音波溶着が不十分となる。また、ポリプロピレン樹脂は結晶性樹脂であり、超音波振動による摩擦熱により部分的な溶融(結晶部の溶融)を生じることで、更に超音波振動の伝達が妨げられる。そのため、ポリプロピレン樹脂は、超音波溶着が困難であり、気密性・機械的強度・寸法精度・外観形状などの品質を維持することが困難であり、超音波溶着を行なう場合には過大な超音波振動エネルギー出力が必要となる。
これに対して、溶着形状として溶着受け凹部とそれに対応する凸部を設けることにより、溶着状態が良好となるキャップが開示されている(特許文献4)。しかしながら、単純な凹凸形状だけでは、十分な気密性、耐圧性を有する中空部品の製造が効率よくできないという問題がある。
また、超音波振動で与えることができるエネルギーには装置的な限界があり、ある程度の大きさ・形状までしか対応することができないという問題がある。
また、医療用容器等での耐圧容器に用いられるポリプレピレン樹脂成形体を従来の超音波溶着すると、溶着強度が不足するとい状態が多くみられ、強度を向上する溶着方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−181420号
【特許文献2】特開2008−238437号
【特許文献3】特許第3965458号公報
【特許文献4】特許第3921879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、耐圧性と気密性とが要求される中空耐圧成形品の製造方法およびこの製造方法で得られる中空耐圧成形品の提供を目的とする。また、特に超音波溶着を適用し難い樹脂として知られているポリプロピレン樹脂を用いた中空耐圧成形品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の中空耐圧成形品の製造方法は、少なくとも一方が開放している端部を有する筒部材の該端部を蓋部材で超音波溶着してなる製造方法であって、
上記筒部材および蓋部材は、熱可塑性および結晶性を有する同じ樹脂の成形体であり、
超音波溶着される接合部の筒方向断面は、一方が凸形状で、他方が上記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ上記凸形状の凸部先端面幅が上記凹形状の凹部底面幅よりも大きい形状であり、上記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有し、かつ上記凸形状の突起高さが上記凹形状の溝深さよりも大きくなっており、
超音波溶着は、上記凸部の側面と上記凹部の側面との接触溶融、および上記凸部先端面と上記凹部底面との接触溶融によりなされることを特徴とする。
【0008】
また、超音波溶着される接合部の筒方向断面は、一方が凸形状で、他方が上記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ上記凸形状の凸部側面の少なくとも一方の側面に凸部基端幅を上記凸部先端面幅よりも広くする方向の傾斜面を有し、かつ上記凸形状の突起高さが上記凹形状の溝深さよりも大きくなっていることを特徴とする。
【0009】
本発明の中空耐圧成形品の製造方法は、上記超音波溶着における接触溶融において、上記傾斜面を有する側面と、その対面の側面の高さまたは溝深さを、異なる高さまたは溝深さにすることを特徴とする。
また、熱可塑性および結晶性を有する樹脂が、ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする。
【0010】
本発明の中空耐圧成形品は、上記製造方法により製造される、医療用途における血液浄化に用いられるフィルターを収納する中空耐圧成形品、または浄水器に用いられるフィルターを収納する中空耐圧成形品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の中空耐圧成形品の製造方法は、超音波溶着が凸部の側面と凹部の側面との接触溶融、および凸部先端面と凹部底面との接触溶融の2つの面によりなされるので、液体に対する耐圧性に優れた中空耐圧成形品が得られる。また、熱可塑性および結晶性を有する樹脂同士であっても容易に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法の一実施形態により得られた中空耐圧成形品の斜視図である。
【図2】図1に示す中空耐圧成形品の組立斜視図である。
【図3】図1におけるA−A線一部断面図である。
【図4】図3における接合部の超音波溶着前の状態を示す断面図である。
【図5】他の実施態様での図1におけるA−A線一部断面図である。
【図6】図5における接合部の超音波溶着前の状態を示す断面図である。
【図7】その他の実施態様での超音波溶着前の状態を示す断面図である。
【図8】従来例における超音波溶着を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の中空耐圧成形品の製造方法を、超音波溶着により少なくとも一端が閉塞され、内部に血液浄化あるいは水浄化に用いられるフィルターを収容する円筒状中空耐圧成形品に適用した例に基づき、図面を用いて具体的に説明する。
図1は本発明の製造方法の一実施形態により得られる中空耐圧成形品の斜視図であり、図2は図1に示す中空耐圧成形品の組立斜視図である。なお、図1および図2において、液体の注入口および排出口は省略してある。
図1および図2に示すように、中空耐圧成形品1は、中空かつ両端部が開放されて成形された樹脂成形体である円筒部材2と、この円筒部材2の両端部にそれぞれ取り付けられる蓋部材3とから構成される。ここで、蓋部材3も円筒部材2と同種の樹脂からなる成形体であり、円筒部材2の両端部に形成された凸形状2aの凸部と、蓋部材3の片面に形成された凹形状3aの凹部とが嵌合して超音波溶着され、接合部4を形成する。凸部と凹部とは円周上にそれぞれ形成される。
【0014】
中空耐圧成形品1の接合部4の実施態様例を図3および図4により説明する。図3は図1におけるA−A線一部断面図を、図4は図3における接合部4の超音波溶着前の状態を表す断面図をそれぞれ示す。
図4に示すように、超音波溶着される接合部4の断面は、円筒部材2の接合部断面が凸形状2aで、蓋部材3の接合部断面が凹形状3aであって、相互に嵌合できる形状をしており、かつ凸部先端幅Dが凹形状の凹部底面幅d2よりも大きい形状である。詳細には、蓋部材3の凹形状3aが、内側面3cおよび3dと、凹部底面3eとから構成され、内側面3cに凹部の上部内幅d1を狭くする方向の傾斜面3bを有している。傾斜面3bを有する凹形状3aに凸形状2aを嵌合して超音波振動を印加することにより、接触部における変形歪の発熱が凸形状2aの先端面2bのエッジ部2dと、凹形状3aの傾斜面3bを起点として、側面2cと3fとで発生する。
【0015】
また、凹形状3aの深さd4を凸形状2aの長さd3より短くしているので、凹部底面3eと凸形状2aの先端面2bとが衝合して、その衝合面でも超音波振動による発熱が発生する。
その結果、円筒部材2と蓋部材3とは、凸形状2aの側面2cと凹形状3aの側面3fは樹脂溶融しながら侵入するために気密性が向上し、かつ凹部底面3eと凸形状2aの先端面2bとで超音波溶着されることにより密に溶着され、樹脂接合体1の気密性および超音波溶着部5の溶着強度が向上する。
【0016】
傾斜面3bの形状としては、凹部の内幅d1が底面3e方向に向かって狭くなる形状で、図4に示す角度αが、30°〜90°の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、角度αが45°の場合である。
また、凹形状3aの深さd4を凸形状2aの長さd3より浅くする。余剰溶融物は4a部に留まり、超音波溶着後の4b部分は、空隙部分となる。
凸形状2aの長さd3と凹形状3aの深さd4との関係は、(d3−d4)>0.1mm、好ましくは0.15mm超、0.5mm以下である。0.1mm超とすることにより、4c部の溶着層厚さを0.1mm、4b部分の空隙を0.1mm程度とすることができる。
【0017】
円周上に形成される凸形状2aの形状は、樹脂の種類、溶着形状により異なるが、その径方向の先端幅Dを凹部の上部内幅d1よりも約0.05mmのクリアランスをもたせた形状とすることが好ましい。該形状とすることにより、溶着振動をかける前に嵌合先端部の凹凸を誘い込ませて円筒部材2と蓋部材3とを押えて変形などを矯正させることができる。その押えを保持しながら溶着振動をかけることによって全周を均一に溶着することが可能となる。
また、傾斜面3bは内側面3cまたは内側面3dの片側面、あるいは内側面3cおよび内側面3dの両側面にあってもよい。
【0018】
中空耐圧成形品1の接合部4の他の実施態様例を図5および図6により説明する。図5は図1におけるA−A線一部断面図を、図6は図5における接合部4の超音波溶着前の状態を表す断面図をそれぞれ示す。
この接合部4の他の例は、凸形状2の凸部先端面2bの幅Dと凹形状3の凹部幅d1とは上記クリアランスを持たせた形状である。また、凸形状2には凸部基端2fを有している。凸形状2の凸部側面2cの少なくとも一方の側面は、凸部基端幅d2を凸部先端面幅Dよりも広くする方向の傾斜面2eを有し、かつ凸形状2の突起高さd3が凹形状の溝深さd4よりも大きくなっている。また、蓋部材3の凹形状3aの内側面3cに傾斜面を有していない以外は図3および図4に示す接合部4と同一である。凸形状2aの長さd3と凹形状3aの深さd4との関係、および傾斜面2eの傾斜角度も図3および図4に示す例と同一である。また、超音波振動による発熱過程も略同一である。この場合においても、円筒部材2と蓋部材3とは、凸形状2aの側面2cと凹形状3aの側面3cと共に、凹部底面3eと凸形状2aの先端面2bとで超音波溶着されることにより密に溶着され、樹脂接合体1の気密性および超音波溶着部5の溶着強度が向上する。
また、凹形状3aの一方の側面の深さを深く、または浅くすることによっても上記と同様の効果が得られる。
【0019】
中空耐圧成形品1の接合部4のその他の実施態様例を図7により説明する。
この例は、凸形状2aの一方の凸部側面2cの長さd3と、その対面2c’の長さd'3とを異なる高さにする例である。対面2c’の長さd'3を凸部側面2cの長さより長くすることにより、超音波溶着時の傷の発生を防ぐことができ、機械的強度に優れた中空耐圧成形品1が得られる。
【0020】
本発明の中空耐圧成形品を構成する樹脂材料としては、溶着が可能な熱可塑性および結晶性を有する樹脂であれば任意の樹脂材料を使用でき、樹脂接合体の用途に応じて適宜決定できる。
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。
これらの中で、中空耐圧成形品としての機械的強度に優れるポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0021】
各樹脂材料は、相溶性があるものであれば2種以上の混合物として用いることができる。また、上記各樹脂材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で各種強化材、添加剤等の充填材を含有させて用いることができる。
【0022】
次に本発明の中空耐圧成形品の製造方法について上記各図を参照して説明する。
(1)熱可塑性樹脂組成物を用いて、中空かつ両端部が開放された円筒部材2と、この円筒部材2の両端部にそれぞれ取り付けられる蓋部材3とをそれぞれ射出成形する。円筒部材2の両端部および蓋部材3の片面には、例えば、図4に示す凹凸形状を設けておく。
(2)円筒部材2の凸形状2aと蓋部材3の凹形状3aとを嵌合させ、超音波振動を発生させながら加圧して、相互に圧入する。この工程により、凸形状2aの側面2cと凹形状3aの側面3f、および凸形状2aの底面2bと凹形状3aの底面3eとが超音波溶着される。
超音波溶着条件は、樹脂材料、凹凸形状等によって異なるが、超音波振動ホーンの振幅は、凹凸形状の嵌合上下方向に25〜100μm、周波数は15〜40kHzで行なうのが溶着強度および気密度を高めるので好ましい。
なお、蓋部材3側に凸形状を、円筒部材2側に凹形状を設けてもよい。
【0023】
上記では円筒状の中空耐圧成形品を例に挙げ、円筒部材の両端部おいて、溶着部を周状に形成する場合について説明したが、本発明の中空耐圧成形品の製造方法は、筒状体であれば、円筒状に限らず、楕円体であっても、異形円体であっても、多角形体であっても適用できる。
【実施例】
【0024】
実施例1
中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凸形状を形成して成形された、外径60mmφ、内径54mmφ、高さ150mmのポリプロピレン樹脂成形体である円筒部材と、片面に上記凸形状に嵌合でき、内側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有する凹形状を形成して成形されたポリプロピレン樹脂成形体である蓋部材を準備した。凸形状の高さは1.50mm、幅は1.55mm、凹形状の深さは1.30mm、幅は1.30mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。
超音波溶着は、BRANSON2000Xシリーズ(日本エマソン社製)を使用して、周波数20kHz、振幅50μmの条件にて、凸形状の凹形状への沈み込み量を1.0mmとして設定して行なったところ、0.3秒間で溶着が完了した。
得られた中空耐圧成形品について、接合部の隙間および傷の有無による外観を目視で確認した。隙間および傷が見られた場合を×、見られない場合を○とした。また以下の気密試験および耐圧試験に供した。結果を表1に示す。
【0025】
気密試験
得られた中空耐圧成形品において、蓋部材側の中央部に穴をあけ、この穴からエアーを加圧(0.02 MPa)し、水中にて樹脂接合体からの気泡の発生の有無を確認した。気泡が発生しなかったものを「○」、気泡が発生したものを「×」として表した。
【0026】
耐圧試験
上記と同様に、蓋部材側の中央部にあけた穴より水を投入し、0MPaから0.1MPaステップにて圧力を上げる。各圧力に達した後、5分間その圧力を保持し破壊水漏れがなければ、さらに圧力を上昇させる。中空耐圧成形品が水圧により破壊され水漏れが発生する圧力を測定した。
【0027】
比較例1
図8に示すように、円筒部材を接合する一方の面に突起を設け、他方の面を平面とした接合形状を用いる以外は、実施例1で使用した円筒部材を用いて、実施例1と同条件により超音波溶着を行なった。なお、溶着時間は0.3秒間で行なった。得られた中空耐圧成形品は、気密試験で「×」となり、耐圧評価を行なうことができなかった。
【0028】
比較例2
実施例1で使用した円筒部材の凸部寸法を短くし、溶着後凹底部に空間が残る形状とした。凸形状の高さは1.10mm、幅は1.55mm、凹形状の深さは1.30mm、幅は1.30mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。
実施例1と同様の条件で超音波溶着を行なった。得られた中空耐圧成形品について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0029】
実施例2
実施例1で使用した円筒部材を、凹部に高さ調整面を有すること以外は実施例1と同様の条件で超音波溶着を行なった。高さ調整は図7に示す一方の凸部側面2cの長さd3を1.40mm、その対面2c’の長さd'3を1.50mmに設定した。
得られた中空耐圧成形品について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
実施例1で使用した円筒部材を、図6に示すように、傾斜面の設定が凹部ではなく、凸部に設定することを除いて実施例1と同様の条件で超音波溶着を行なった。凸部の大きさおよび傾斜角度は実施例1と同様である。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
各実施例は、気密性および耐圧性に優れたポリプロピレン樹脂製の中空耐圧成形品が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の中空耐圧成形品の製造方法は、ポリプロピレン樹脂製であっても、気密性および耐圧性などの品質を確保できるので、ろ過材を充填したカートリッジ容器として医療分野および浄水器分野に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 中空耐圧成形品
2 円筒部材
3 蓋部材
4 接合部
5 溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が開放している端部を有する筒部材の前記端部を蓋部材で超音波溶着してなる中空耐圧成形品の製造方法であって、
前記筒部材および前記蓋部材は、熱可塑性および結晶性を有する同じ樹脂の成形体であり、
前記超音波溶着される接合部の筒方向断面は、一方が凸形状で、他方が前記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ前記凸形状の凸部先端面幅が前記凹形状の凹部底面幅よりも大きい形状であり、前記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有し、かつ前記凸形状の突起高さが前記凹形状の溝深さよりも大きくなっており、
前記超音波溶着は、前記凸部の側面と前記凹部の側面との接触溶融、および前記凸部先端面と前記凹部底面との接触溶融によりなされることを特徴とする中空耐圧成形品の製造方法。
【請求項2】
前記超音波溶着される接合部の筒方向断面は、一方が凸形状で、他方が前記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ前記凸形状の凸部側面の少なくとも一方の側面に凸部基端幅を前記凸部先端面幅よりも広くする方向の傾斜面を有し、かつ前記凸形状の突起高さが前記凹形状の溝深さよりも大きくなっていることを特徴とする請求項1記載の中空耐圧成形品の製造方法。
【請求項3】
前記接触溶融において、前記傾斜面を有する側面とその対面の側面との高さまたは溝深さを、異なる高さまたは溝深さにすることを特徴とする請求項1および請求項2記載の中空耐圧成形品の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性および結晶性を有する樹脂が、ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項3記載の中空耐圧成形品の製造方法。
【請求項5】
医療用途における血液浄化に用いられるフィルターを収納する中空耐圧成形品であって、この中空耐圧成形品が請求項4記載の製造方法で製造されることを特徴とする中空耐圧成形品。
【請求項6】
浄水器に用いられるフィルターを収納する中空耐圧成形品であって、この中空耐圧成形品が請求項4記載の製造方法で製造されることを特徴とする中空耐圧成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−188527(P2010−188527A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31971(P2009−31971)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(505474256)佐藤ライト工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】