説明

中継端子および車両用駆動装置

【課題】雄端子の位置ずれを吸収し、端子の接続を円滑にする中継端子およびその中継端子が用いられる車両用駆動装置、を提供する。
【解決手段】中継端子80は、雌端子81と、雌端子82とを備える。雌端子81には、長手方向と短手方向とを有して開口する挿入口83が形成される。挿入口83には、短手方向に位置が規制され、長手方向に移動が許容された状態でタブ71が挿入される。雌端子82には、長手方向と短手方向とを有して開口する挿入口84が形成される。挿入口84には、短手方向に位置が規制され、長手方向に移動が許容された状態でタブ72が挿入される。雌端子81は、雌端子82と一体的に設けられる。雌端子81および雌端子82は、挿入口83の長手方向と挿入口84の長手方向とが直交するように組み合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、中継端子および車両用駆動装置に関し、より特定的には、両端に雌端子を備える中継端子およびその中継端子が用いられる車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の中継端子に関し、たとえば、特開平2−273481号公報には、相手方の雄端子に生じる位置ずれに対応することを目的とした中継端子が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された中継端子は、両側から雄端子が嵌合接続される雌−雌端子である。各雌端子には、接続された雄端子に弾性力を作用させるための弾性接触片が設けられている。各雌端子に設けられた弾性接触片は、弾性を有する連接部によって互いに接続されている。
【0003】
また、特開2007−99121号公報には、インバータを一体化し、小型化することを目的としたハイブリッド車両の駆動装置が開示されている(特許文献2)。特許文献2では、モータジェネレータ、動力分割機構およびパワー制御ユニットが、金属製のケースに収容されて一体化されている。
【特許文献1】特開平2−273481号公報
【特許文献2】特開2007−99121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、雌端子に嵌合接続される雄端子に弾性力を作用させて、雌端子と雄端子との接続状態を確実にする端子構造がある。このような端子構造においては、弾性力が作用する方向に雄端子の位置が規制される。このため、雌端子に対する雄端子の接続時、弾性力が作用する方向の雄端子の位置ずれを吸収できず、端子の接続が円滑に行なわれないおそれが生じる。また、特許文献1では、弾性を有する連接部によって弾性接触片を可動自在とし、位置ずれを吸収しようとするが、弾性接触片の撓み量が小さい場合、位置ずれを十分に吸収できない。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、雄端子の位置ずれを吸収し、端子の接続を円滑にする中継端子およびその中継端子が用いられる車両用駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った中継端子は、第1雌端子と、第2雌端子とを備える。第1雌端子には、長手方向と短手方向とを有して開口する第1挿入口が形成される。第1挿入口には、短手方向に位置が規制され、長手方向に移動が許容された状態で第1雄端子が挿入される。第2雌端子には、長手方向と短手方向とを有して開口する第2挿入口が形成される。第2挿入口には、短手方向に位置が規制され、長手方向に移動が許容された状態で第2雄端子が挿入される。第2雌端子は、第1雌端子と一体的に設けられる。第1雌端子および第2雌端子は、第1挿入口の長手方向と第2挿入口の長手方向とが直交するように組み合わされる。
【0007】
なお、第1挿入口および第2挿入口は、長手方向において相対的に大きい開口長さを有し、短手方向において相対的に小さい開口長さを有する。
【0008】
このように構成された中継端子によれば、第1挿入口の長手方向と第2挿入口の長手方向とを直交させることにより、第1挿入口に挿入される際の第1雄端子の短手方向の位置ずれを、長手方向に沿った第2雄端子の移動により吸収し、第2挿入口に挿入される際の第2雄端子の短手方向の位置ずれを、長手方向に沿った第1雄端子の移動により吸収することができる。これにより、第1雌端子および第2雌端子に対する第1雄端子および第2雄端子の接続を円滑にできる。
【0009】
また好ましくは、中継端子は、第1雄端子および第2雄端子に弾性力を作用させ、第1雄端子および第2雄端子をそれぞれ第1雌端子および第2雌端子に圧接させる弾性部材をさらに備える。第1雄端子および第2雄端子に弾性力が作用する方向と、第1挿入口および第2挿入口の短手方向とがそれぞれ一致する。このように構成された中継端子によれば、メス端子との圧接によって短手方向の雄端子の位置が規制される中継端子において、上述の効果を得ることができる。
【0010】
また好ましくは、中継端子は、複数組の第1雌端子および第2雌端子と、複数組の第1雌端子および第2雌端子を間隔を設けて一体に保持し、絶縁材料から形成される保持部材とを備える。このように構成された中継端子によれば、隣り合う端子間の絶縁を確保するとともに、複数組の第1雌端子および第2雌端子を一体に扱うことができる。
【0011】
この発明に従った車両用駆動装置は、上述のいずれかに記載の中継端子が用いられる車両用駆動装置である。車両用駆動装置は、駆動力を発生する回転電機と、回転電機の制御を行なうパワー制御ユニットと、パワー制御ユニットが固定されるケース体とを備える。第1雄端子および第2雄端子は、それぞれパワー制御ユニットおよびケース体に設けられる。このように構成された車両用駆動装置によれば、ケース体に対するパワー制御ユニットの組み付けと同時に、パワー制御ユニットに設けられた第1雄端子およびケース体に設けられた第2雄端子間の接続を行なうことができる。この際、中継端子によって、ケース体に対するパワー制御ユニットの位置ずれを吸収することができる。
【0012】
また好ましくは、回転電機はケース体に収容されており、回転電機とパワー制御ユニットとが一体化される。このように構成された車両用駆動装置によれば、回転電機とパワー制御ユニットとが一体化された車両用駆動装置において、上述の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、この発明に従えば、雄端子の位置ずれを吸収し、端子の接続を円滑にする中継端子およびその中継端子が用いられる車両用駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0015】
図1は、ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。ハイブリッド自動車は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能な2次電池(バッテリ)から電力供給されるモータとを動力源とする。
【0016】
図1を参照して、ハイブリッド自動車は、バッテリユニット40と、車両用駆動装置20と、図示しないエンジンとを含む。車両用駆動装置20は、電動機および発電機として機能する回転電機としてのモータジェネレータMG1,MG2と、図示しないエンジンおよびモータジェネレータMG1,MG2の間で動力を分配する動力分割機構26と、モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なうパワー制御ユニット(PCU:Power Control Unit)21とを含む。
【0017】
バッテリユニット40には端子41,42が設けられている。車両用駆動装置20にはDC端子43,44が設けられている。端子41とDC端子43との間および端子42とDC端子44との間は、それぞれケーブル6およびケーブル8によって電気的に接続されている。車両用駆動装置20には、PCU21とモータジェネレータMG1との間を電気的に接続するMG1端子台58と、PCU21とモータジェネレータMG2との間を電気的に接続するMG2端子台59とが設けられている。
【0018】
バッテリユニット40は、バッテリBと、バッテリBの正極と端子41との間に接続されるシステムメインリレーSMR2と、バッテリBの負極と端子42との間に接続されるシステムメインリレーSMR3と、バッテリBの正極と端子41との間に直列に接続される、システムメインリレーSMR1および制限抵抗Rとを含む。システムメインリレーSMR1〜SMR3は、後述の制御装置30から与えられる制御信号SEに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0019】
バッテリユニット40は、バッテリBの端子間の電圧VBを測定する電圧センサ10と、バッテリBに流れる電流IBを検知する電流センサ11とを含む。バッテリBとしては、ニッケル水素、リチウムイオン等の2次電池や、燃料電池などを用いることができる。バッテリBに代わる蓄電装置として、電気二重層コンデンサ等の大容量キャパシタを用いることもできる。
【0020】
PCU21は、モータジェネレータMG1,MG2にそれぞれ対応して設けられるインバータ22,14と、インバータ22,14に共通して設けられる昇圧コンバータ12と、制御装置30とを含む。
【0021】
昇圧コンバータ12は、DC端子43,44間の電圧を昇圧する。昇圧コンバータ12は、一方端が端子43に接続されるリアクトル32と、昇圧用IPM(Intelligent Power Module)13と、平滑用コンデンサ33とを含む。昇圧用IPM13は、昇圧後の電圧VHを出力する昇圧コンバータ12の出力端子間に直列に接続されるIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを含む。平滑用コンデンサ33は、昇圧コンバータ12によって昇圧された電圧を平滑化する。
【0022】
リアクトル32の他方端は、IGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続されている。ダイオードD1のカソードは、IGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードは、IGBT素子Q1のエミッタと接続されている。ダイオードD2のカソードは、IGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードは、IGBT素子Q2のエミッタと接続されている。
【0023】
インバータ14は、車輪を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ14は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき、昇圧コンバータ12は、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
【0024】
インバータ14は、走行用IPM18を構成するU相アーム15、V相アーム16およびW相アーム17を含む。U相アーム15,V相アーム16およびW相アーム17は、昇圧コンバータ12の出力ライン間に並列に接続されている。
【0025】
U相アーム15は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードは、IGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードは、IGBT素子Q3のエミッタと接続されている。ダイオードD4のカソードは、IGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードは、IGBT素子Q4のエミッタと接続されている。
【0026】
V相アーム16は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードは、IGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードは、IGBT素子Q5のエミッタと接続されている。ダイオードD6のカソードは、IGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードは、IGBT素子Q6のエミッタと接続されている。
【0027】
W相アーム17は、直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードは、IGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードは、IGBT素子Q7のエミッタと接続されている。ダイオードD8のカソードは、IGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードは、IGBT素子Q8のエミッタと接続されている。
【0028】
各相アームの中間点は、モータジェネレータMG2の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMG2は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中性点に共に接続されている。U相コイルの他方端は、IGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続されている。V相コイルの他方端は、IGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続されている。W相コイルの他方端は、IGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続されている。
【0029】
電流センサ25は、モータジェネレータMG1に流れる電流をモータ電流値MCRT1として検出し、モータ電流値MCRT1を制御装置30に出力する。電流センサ24は、モータジェネレータMG2に流れる電流をモータ電流値MCRT2として検出し、モータ電流値MCRT2を制御装置30に出力する。
【0030】
インバータ22は、昇圧コンバータ12に対してインバータ14と並列的に接続される。インバータ22は、モータジェネレータMG1に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ22は、昇圧コンバータ12から昇圧された電圧を受けてたとえばエンジンを始動させるためにモータジェネレータMG1を駆動する。
【0031】
また、インバータ22は、エンジンのクランクシャフトから伝達される回転トルクによってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき、昇圧コンバータ12は降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。なお、インバータ22の内部の構成はインバータ14と同様であるため、詳細な説明は繰返さない。
【0032】
制御装置30は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VB,VL,VH、電流IBの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動信号IGONを受ける。
【0033】
ここで、トルク指令値TR1,モータ回転数MRN1およびモータ電流値MCRT1は、モータジェネレータMG1に関するものであり、トルク指令値TR2,モータ回転数MRN2およびモータ電流値MCRT2は、モータジェネレータMG2に関するものである。電圧VBは、バッテリBの電圧であり、電流IBは、バッテリBに流れる電流である。電圧VLは、昇圧コンバータ12の昇圧前電圧であり、電圧VHは、昇圧コンバータ12の昇圧後電圧である。
【0034】
制御装置30は、昇圧コンバータ12に対して昇圧指示を行なう制御信号PWU,降圧指示を行なう制御信号PWDおよび動作禁止を指示する信号CSDNを出力する。
【0035】
制御装置30は、インバータ14に対して昇圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。制御装置30は、インバータ22に対して直流電圧をモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
【0036】
続いて、図1中の車両用駆動装置20の構造について説明する。図2は、ハイブリッド自動車のエンジンルームを示す平面図である。
【0037】
図2を参照して、ハイブリッド自動車の車両前方には、エンジン52を搭載するエンジンルーム51が設けられている。エンジンルーム51は、フロントバンパ53とダッシュボードパネル54との間に形成されている。ダッシュボードパネル54は、エンジンルーム51と車両室内との間を区画するパネルである。
【0038】
車両用駆動装置20は、エンジンルーム51に収容されている。車両用駆動装置20は、エンジン52に対して車両幅方向に隣り合って設けられている。エンジン52に隣接する位置には、モータジェネレータMG1が配置されている。モータジェネレータMG1に対してエンジン52の反対側には、モータジェネレータMG2が配置されている。エンジン52、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は、車両幅方向に並ぶ。モータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2との間には、動力分割機構26が配置されている。
【0039】
モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の回転中心となる軸が、それぞれ回転軸201および回転軸202として表されている。回転軸201と回転軸202とは、互いに平行に車両幅方向に延びる。モータジェネレータMG1は、回転軸201とエンジン52のクランクシャフトとが同軸になるように配置されている。モータジェネレータMG2は、回転軸202が回転軸201よりも車両後方にオフセットされるようにモータジェネレータMG1に対して位置決めされている。このような構成により、モータジェネレータMG2の車両前方に空間が形成され、この空間にPCU21が配置されている。
【0040】
車両用駆動装置20は、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構26とを収容するモータケース60を含む。モータケース60は、アルミニウム等の金属から形成されている。モータケース60には、PCU21が固定されている。
【0041】
モータケース60は、モータジェネレータMG1を収容するMG1ケース61と、モータジェネレータMG2およびPCU21を収容するMG2・インバータケース62とから構成されている。MG1ケース61は、エンジン52から車両幅方向に筒状に延びる形状を有する。MG2・インバータケース62は、MG1ケース61と車両幅方向に隣り合って配置され、MG1ケース61に連結されている。
【0042】
モータケース60内には、モータジェネレータMG1,MG2を収容する空間56と、PCU21を収容する空間57とが形成されている。モータケース60は、空間56と空間57とを区画する壁部65を含む。壁部65は、MG2・インバータケース62に形成されている。壁部65は、第1壁部としての正面部64と、第2壁部としての側部63とを含む。正面部64は、車両幅方向に延在し、モータジェネレータMG2とPCU21との間を隔てる。側部63は、正面部64の周縁から立ち上がり、車両前後方向に延在する。側部63は、モータジェネレータMG1とPCU21との間を隔てる。既に説明した図1中のMG1端子台58が側部63に設けられ、MG2端子台59が正面部64に設けられている。
【0043】
モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は、それぞれ雄端子であるタブ78およびタブ77を含む。タブ78およびタブ77は、それぞれ、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2に直接設けられている。タブ78およびタブ77は、それぞれ、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2のステータから延出する。タブ78およびタブ77は、それぞれMG1端子台58およびMG2端子台59に接続されている。
【0044】
PCU21は、雄端子であるタブ71およびタブ76を含む。タブ71およびタブ76は、PCU21に直接設けられている。タブ71およびタブ76は、図1中の走行用IPM18および昇圧用IPM13を含んで構成されるIPM27から延出する。タブ71およびタブ76は、それぞれMG2端子台59およびMG1端子台58に接続されている。
【0045】
図3は、図2中のMG2端子台に内蔵された、この発明の実施の形態における中継端子を示す斜視図である。図3を参照して、中継端子80は、タブ71が接続される雌端子81と、タブ72が接続される雌端子82とを含む。雌端子81と雌端子82とは、一体的に設けられている。すなわち、雌端子81と雌端子82とは、互いに分離不能な形態に設けられている。雌端子81および雌端子82に対してタブ71およびタブ72は、同一軸線上に沿った互いに反対方向から接続されている。中継端子80は、金属から形成されており、雌端子81に接続されたタブ71と雌端子82に接続されたタブ72との間を導通させる。
【0046】
雌端子81には、タブ71が挿入される挿入口83が形成され、雌端子82には、タブ72が挿入される挿入口84が形成されている。挿入口83は、長手方向(矢印101に示す方向)と短手方向(矢印102に示す方向)とを有する略矩形形状に開口する。挿入口83は、長手方向に相対的に大きい開口幅を有し、短手方向に相対的に小さい開口幅を有する。挿入口84は、長手方向(矢印103に示す方向)と短手方向(矢印104に示す方向)とを有する略矩形形状に開口する。挿入口84は、長手方向に相対的に大きい開口幅を有し、短手方向に相対的に小さい開口幅を有する。本実施の形態では、挿入口83の長手方向と短手方向とが直交し、挿入口84の長手方向と短手方向とが直交する。
【0047】
なお、挿入口83および挿入口84の開口面は、長手方向と短手方向とを有して形成されていればよく、たとえば楕円や長円、多角形等に形成されてもよい。
【0048】
図4は、図3中のIV−IV線上に沿った中継端子の断面図である。図5は、図4中のV−V線上に沿った中継端子の断面図である。
【0049】
図3から図5を参照して、中継端子80は、挿入口83内部に設けられた弾性部材としての板ばね86を含む。板ばね86は、挿入口83の短手方向に沿った弾性力をタブ71に作用させ、その弾性力によってタブ71は雌端子81に圧接される。このような構成により、タブ71は、タブ71に弾性力が作用する挿入口83の短手方向において位置が規制された状態で挿入口83に挿入される。一方、挿入口83の長手方向における開口幅は、同方向におけるタブ71の幅よりも大きく、挿入口83の長手方向においてタブ71と雌端子81の内壁との間には、隙間が形成されている。このような構成により、タブ71は、挿入口83の長手方向において移動可能な状態で挿入口83に挿入される。雌端子82は雌端子81と同様の形状を有し、タブ72は、タブ72に弾性力が作用する挿入口84の短手方向において位置が規制され、挿入口84の長手方向において移動可能な状態で挿入口84に挿入される。
【0050】
図3を参照して、雌端子81と雌端子82とは、挿入口83の長手方向と挿入口84の長手方向とが直交するように組み合わされている。本実施の形態では、雌端子81と雌端子82とが、挿入口83の短手方向と挿入口84の短手方向とが直交するように組み合わされている。すなわち、雌端子81と雌端子82とは、挿入口83の長手方向と挿入口84の短手方向とが一致し、挿入口83の短手方向と挿入口84の長手方向とが一致するように組み合わされている。
【0051】
図6は、図2中のMG2端子台を示す斜視図である。図7は、図2中のMG2端子台を示す分解組み立て図である。図6および図7を参照して、MG2端子台59は、モータジェネレータMG2のU相,V相,W相に対応して設けられた中継端子80U,80V,80Wを含む。
【0052】
MG2端子台59は、基台89と、保持部材としてのハウジング87とを含む。ハウジング87は、絶縁材料から形成されている。ハウジング87には複数の挿入孔88が形成されており、各挿入孔88に中継端子80U,80V,80Wが挿入されている。中継端子80U,80V,80Wは、ハウジング87によって互いに間隔を隔てて保持されている。このような構成により、U相,V相,W相の端子間の絶縁が確保されている。基台89は、図2中のMG2・インバータケース62に固定されている。基台89上にはハウジング87が設置されている。タブ72は、基台89を貫通して設けられており、基台89を貫通するタブ72の一方端が雌端子82に接続されている。雌端子81の挿入口83は、MG2・インバータケース62内部の空間に露出して設けられている。
【0053】
図8は、図6中のMG2端子台にIPMを接続する工程を示す斜視図である。図8を参照して、IPM27には、モータジェネレータMG2のU相,V相,W相に対応した複数のタブ71が設けられている。タブ71は、IPM27に直接設けられている。
【0054】
図6および図8を参照して、車両用駆動装置20の組み立て時、まずMG2・インバータケース62にMG2端子台59を組み付けておく。そのMG2・インバータケース62内にIPM27を組み付けると同時に、タブ71を中継端子80U,80V,80Wの挿入口83に挿入する。この際、MG2・インバータケース62に対してIPM27の組み付け誤差が生じる場合であっても、挿入口83の長手方向においては、タブ71が挿入される挿入口83の開口幅に余裕があるため、IPM27の組み付け誤差を吸収することができる。また、挿入口83の短手方向においては、挿入口84に挿入された状態のタブ72が挿入口84の長手方向に移動することにより、IPM27の組み付け誤差を吸収することができる。結果、IPM27のタブ71を円滑に中継端子80U,80V,80Wに接続することができる。
【0055】
なお、図8中には図示されていないが、MG2・インバータケース62の外側に延出するタブ72の他方端には、ハウジング87に保持された中継端子80U,80V,80Wが接続されている。その中継端子80U,80V,80Wには、MG2・インバータケース62に対するモータジェネレータMG2の組み付け時にタブ77が接続される。この際、中継端子80U,80V,80Wによって、MG2・インバータケース62に対するモータジェネレータMG2の組み付け誤差を吸収することができる。また、図2中のMG1端子台58に、以上に説明した中継端子80の構造が適用されてもよい。
【0056】
図9は、図3中の中継端子の変形例を示す図である。図中には、雌端子81の形状のみが示されている。図9(A)を参照して、本変形例では、図3中の板ばね83に替えて、2股に分かれて延出する挟持片91,92が雌端子81に設けられている。挟持片91と挟持片92との間には挿入口83が形成されている。挟持片91,92は、挿入口83に挿入されたタブ71に対して挿入口83の短手方向(矢印102に示す方向)の弾性力を作用させ、挿入口83の短手方向においてタブ71の位置を規制する。
【0057】
図9(B)を参照して、本変形例における雌端子81は、板状の底部95と、底部95の周縁から立ち上がり、U字状を描いて湾曲するカール部94とを含む断面形状を有する。底部95とカール部94との間には挿入口83が形成されている。カール部94は、挿入口83に挿入されたタブ71に対して挿入口83の短手方向(矢印102に示す方向)に沿った弾性力を作用させ、挿入口83の短手方向においてタブ71の位置を規制する。これらの形態で設けられた中継端子80であっても、挿入口83の長手方向と挿入口84の長手方向とを直交させる構造により、上述の効果を同様に得ることができる。
【0058】
この発明の実施の形態における中継端子80は、第1雌端子としての雌端子81と、第2雌端子としての雌端子82とを備える。雌端子81には、長手方向と短手方向とを有して開口する第1挿入口としての挿入口83が形成される。挿入口83には、短手方向に位置が規制され、長手方向に移動が許容された状態で第1雄端子としてのタブ71が挿入される。雌端子82には、長手方向と短手方向とを有して開口する第2挿入口としての挿入口84が形成される。挿入口84には、短手方向に位置が規制され、長手方向に移動が許容された状態で第2雄端子としてのタブ72が挿入される。雌端子81は、雌端子82と一体的に設けられる。雌端子81および雌端子82は、挿入口83の長手方向と挿入口84の長手方向とが直交するように組み合わされる。
【0059】
このように構成された、この発明の実施の形態における中継端子80によれば、MG端子台59に内蔵した中継端子80によって、MG2・インバータケース62に対するIPM27の組み付け誤差を吸収し、IPM27のタブ71をMG2端子台59に円滑に接続することができる。これにより、MG2端子台59における端子の接続不良、異常応力といった不具合を回避することができる。また、タブ71を挿入口83に導くためのガイドをMG2端子台59に設ける必要がなく、部品点数やコストの増大を抑制できる。
【0060】
なお、本実施の形態では、内燃機関とバッテリとを動力源とするハイブリッド自動車に本発明を適用したが、これに限定されず、燃料電池とバッテリとを動力源とする燃料電池ハイブリッド自動車(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)、または電気自動車(EV:Electric Vehicle)に本発明を適用することもできる。本実施の形態におけるハイブリッド自動車では、燃費最適動作点で内燃機関を駆動するのに対して、燃料電池ハイブリッド自動車では、発電効率最適動作点で燃料電池を駆動する。また、バッテリの使用に関しては、両方のハイブリッド自動車で基本的に変わらない。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。
【図2】ハイブリッド自動車のエンジンルームを示す平面図である。
【図3】図2中のMG2端子台に内蔵された、この発明の実施の形態における中継端子を示す斜視図である。
【図4】図3中のIV−IV線上に沿った中継端子の断面図である。
【図5】図4中のV−V線上に沿った中継端子の断面図である。
【図6】図2中のMG2端子台を示す斜視図である。
【図7】図2中のMG2端子台を示す分解組み立て図である。
【図8】図6中のMG2端子台にIPMを接続する工程を示す斜視図である。
【図9】図3中の中継端子の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
21 パワー制御ユニット(PCU)、60 モータケース、80,80U,80V,80W 中継端子、81,82 雌端子、83,84 タブ、86 板ばね、87 ハウジング、91,92 挟持片、94 カール部、MG1,MG2 モータジェネレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と短手方向とを有して開口する第1挿入口が形成され、前記第1挿入口に、短手方向に位置が規制され、長手方向に移動が許容された状態で第1雄端子が挿入される第1雌端子と、
長手方向と短手方向とを有して開口する第2挿入口が形成され、前記第2挿入口に、短手方向に位置が規制され、長手方向に移動が許容された状態で第2雄端子が挿入され、前記第1雌端子と一体的に設けられる第2雌端子とを備え、
前記第1雌端子および前記第2雌端子は、前記第1挿入口の長手方向と前記第2挿入口の長手方向とが直交するように組み合わされる、中継端子。
【請求項2】
前記第1雄端子および前記第2雄端子に弾性力を作用させ、前記第1雄端子および前記第2雄端子をそれぞれ前記第1雌端子および前記第2雌端子に圧接させる弾性部材をさらに備え、
前記第1雄端子および前記第2雄端子に弾性力が作用する方向と、前記第1挿入口および前記第2挿入口の短手方向とがそれぞれ一致する、請求項1に記載の中継端子。
【請求項3】
複数組の前記第1雌端子および前記第2雌端子と、
前記複数組の第1雌端子および第2雌端子を間隔を設けて一体に保持し、絶縁材料から形成される保持部材とを備える、請求項1または2に記載の中継端子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の中継端子が用いられる車両用駆動装置であって、
駆動力を発生する回転電機と、
前記回転電機の制御を行なうパワー制御ユニットと、
前記パワー制御ユニットが固定されるケース体とを備え、
前記第1雄端子および前記第2雄端子は、それぞれ前記パワー制御ユニットおよび前記ケース体に設けられる、車両用駆動装置。
【請求項5】
前記回転電機は、前記ケース体に収容され、
前記回転電機と前記パワー制御ユニットとが一体化される、請求項4に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−140705(P2009−140705A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314844(P2007−314844)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】