説明

中継装置、通信ネットワークシステム、及び、負荷分散方法

【課題】複数LSN(Large Scale Nat)装置が設置されたネットワークにおいて加入者セッションを複数のLSNへ均等に分散させる。
【解決手段】中継装置300にてネットワーク内の複数のLSN装置が保持しているセッション数を定期的に取得し、加入者からパケットを受信した場合に最も保持しているセッション数が少ないLSN装置へ、又は、予め定めた閾値よりセッション数が少ないLSN装置へ加入者からのパケットを振り分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置、通信ネットワークシステム、及び、負荷分散方法に係り、特に、LSNを使用するネットワークシステムの通信を中継する中継装置及び通信ネットワークシステム、セッション負荷分散を行う負荷分散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、未配分のIPv4(Internet Protocol version 4)アドレスの在庫が少なくなってきており、2011年〜2012年にIPv4アドレスは枯渇するかもしれないという予測がなされている。
そこでIPv4アドレス枯渇対策の一案として、通信事業者が提供するFTTH(Fiber To The Home)やADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)の集約点にてNAT(Network Address Translation)を実施し、複数の加入者に一つのグローバルアドレスを割り当てるLSN(Large Scale Nat:非特許文献1)が検討されている。
【0003】
LSNの特徴のひとつは従来加入者宅内で加入者宅内の装置に対し小規模で実施されていたNATを通信事業者のネットワークシステム内で大規模に実施する点である。
また、特許文献1には、既存の通信端末とDHCPサーバに変更を加えることなく、ルータの負荷を考慮したデフォルトルータの分散による負荷分散を行うルータ設定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−348136号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Internet Draft、Common requirements for IP address sharing schemes
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に、従来のネットワーク構成図を示す。
従来、LSNを実施するLSN装置(図1:102)は通信事業者のネットワークシステム(図1:101)で他通信事業との接続点やグローバルアドレス空間との接続点に設置される。加入者発・加入者宛のパケットは、ルーチングプロトコル等で動的もしくは保守運用者の設定により静的に生成された各装置の経路表に従い、通信事業者の中継網(図1:103)を経由してLSN装置(図1:102)や加入者宅内(図1:105)に転送される。そしてLSN装置(図1:102)は受信したパケットのヘッダとLSN装置(図1:102)内部のNATセッションテーブルに従い、NAT処理を実施する。
【0007】
ここで、LSN装置(図1:102)を複数設置した場合、加入者のパケットに対しNAT処理を行うLSN装置(図1:102)はネットワークシステム内の各装置の経路表に基づき決定されることと、加入者の使用するセッション数は動的に変化することから、各LSN装置(図1:102)に対し、保持するセッション数を均等に分散させることは、通常困難となる。
【0008】
また、特許文献1では、ルータは、現在のパケット転送機能の負荷状態を複数のルータ間で交換する機能を持ち、二つのネットワークを接続する複数のルータ間で、最も負荷の低いルータを認識する手段を持つことが必要となる。また、通信端末が、自アドレスやデフォルトルータのアドレスなどの設定パラメータ獲得のためにDHCPメッセージをブロードキャストする必要がある。
【0009】
本発明では、以上の点に鑑み、通信事業者内の中継網にてLSN装置等のルータ装置の負荷分散を行う中継装置、通信ネットワークシステム、及び、負荷分散方法を提供することを目的とする。本発明は、通信事業者内の中継網に設置された中継装置にて、各LSN装置等のルータ装置が保持しているセッション数に基づきセッションの分散を行うことで、複数設置されたLSN装置等のルータ装置を効率的に使用することを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によると、
加入者からのパケットに対しNAT処理を行う複数のLSN装置と、該LSN装置との間の通信を中継する中継装置とを備え、
前記中継装置は、
加入者からパケットを受信すると受信したパケットの送信元IPアドレス、送信先IPアドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号を基に経路表を検索し、転送先の決定、LSNセッション管理部より選択されたLSN装置に対する経路情報を経路表に更新する経路制御部と、
定期的にLSN装置の保持するセッション数をLSNセッション表に登録し、経路表に登録されていないパケットを受信した場合に、LSNセッション表より最も保持するセッション数の少ないLSN装置を転送先として選択するLSNセッション管理部を備えた中継装置が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によると、
加入者からのパケットに対しNAT処理を行う複数のLSN装置と、該LSN装置との間の通信を中継する中継装置とを備え、加入者からのパケットをLSN装置に対しセッションを均等に分散するセッション負荷分散方法であって、
定期的にLSNの保持するセッション数を取得し、LSNセッション表を更新するステップと、
受信したパケットに対し、経路表を検索することでLSN装置へ振り分け済みのセッションか判定するステップと、
未振り分けのセッションの場合、LSNセッション表より最も保持するセッション数が少ないLSN装置を選択するステップと、
振り分けたセッションの情報を経路表に追加するステップと
を含むセッション負荷分散方法が提供される。
【0012】
本発明の第1の解決手段によると、
加入者からのパケットに対しネットワーク・アドレス変換処理を行う複数のルータ装置と、該各ルータ装置と加入者との間の通信を中継する中継装置とを備えた通信ネットワークシステムにおける、前記中継装置であって、
送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポートの組み合わせを記憶する経路表と、
ルータ装置のアドレス、ルータ装置の保持するセッション数、ルータ装置の転送先ポートの組み合わせを記憶するセッション表と、
受信したパケットに対し、前記経路表に基づきパケットの転送処理を行う経路制御部と、
各ルータ装置の保持するセッション数を前記セッション表に登録し、受信したパケットに対し転送先のルータ装置選択を実施するセッション管理部と、
備え、

受信パケットが加入者側より受信されたパケットである場合、前記経路制御部は、受信したパケットの送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号を基に前記経路表を検索し、該当するデータがあれば、該当する転送先ポートへパケットを転送し、
前記経路制御部は、該当するデータがなければ、前記セッション管理部に対しルータ装置選択を依頼し、
前記セッション管理部は、前記経路制御部からルータ装置選択を依頼されると、前記セッション表を参照して、最も保持するセッション数の少ない又は予め定められた閾値よりセッション数の少ないルータ装置を転送先として選択して転送先ポートを求め、
前記経路制御部は、前記セッション管理部より選択されたルータ装置の転送先ポートへパケットを転送し、選択されたルータ装置の転送先ポートを含む経路情報を前記経路表に更新する
中継装置が提供される。
【0013】
本発明の第2の解決手段によると、
加入者からのパケットに対しネットワーク・アドレス変換処理を行う複数のルータ装置と、該各ルータ装置と加入者との間の通信を中継する中継装置とを備えた通信ネットワークシステムにおいて、
前記中継装置は、
送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポートの組み合わせを記憶する経路表と、
ルータ装置のアドレス、ルータ装置の保持するセッション数、ルータ装置の転送先ポートの組み合わせを記憶するセッション表と、
受信したパケットに対し、前記経路表に基づきパケットの転送処理を行う経路制御部と、
各ルータ装置の保持するセッション数を前記セッション表に登録し、受信したパケットに対し転送先のルータ装置選択を実施するセッション管理部と、
備え、

受信パケットが加入者側より受信されたパケットである場合、前記経路制御部は、受信したパケットの送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号を基に前記経路表を検索し、該当するデータがあれば、該当する転送先ポートへパケットを転送し、
前記経路制御部は、該当するデータがなければ、前記セッション管理部に対しルータ装置選択を依頼し、
前記セッション管理部は、前記経路制御部からルータ装置選択を依頼されると、前記セッション表を参照して、最も保持するセッション数の少ない又は予め定められた閾値よりセッション数の少ないルータ装置を転送先として選択して転送先ポートを求め、
前記経路制御部は、前記セッション管理部より選択されたルータ装置の転送先ポートへパケットを転送し、選択されたルータ装置の転送先ポートを含む経路情報を前記経路表に更新する
通信ネットワークシステムが提供される。
【0014】
本発明の第3の解決手段によると、
加入者からのパケットに対しネットワーク・アドレス変換処理を行う複数のルータ装置と、該各ルータ装置と加入者との間の通信を中継する中継装置とを備えた通信ネットワークシステムにおいて、加入者からのパケットをルータ装置に対しセッションを均等に分散するための負荷分散方法であって、
前記中継装置は、
送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポートの組み合わせを記憶する経路表と、
ルータ装置のアドレス、ルータ装置の保持するセッション数、ルータ装置の転送先ポートの組み合わせを記憶するセッション表と、
受信したパケットに対し、前記経路表に基づきパケットの転送処理を行う経路制御部と、
各ルータ装置の保持するセッション数を前記セッション表に登録し、受信したパケットに対し転送先のルータ装置選択を実施するセッション管理部と、
備え、

受信パケットが加入者側より受信されたパケットである場合、前記経路制御部は、受信したパケットの送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号を基に前記経路表を検索し、該当するデータがあれば、該当する転送先ポートへパケットを転送し、
前記経路制御部は、該当するデータがなければ、前記セッション管理部に対しルータ装置選択を依頼し、
前記セッション管理部は、前記経路制御部からルータ装置選択を依頼されると、前記セッション表を参照して、最も保持するセッション数の少ない又は予め定められた閾値よりセッション数の少ないルータ装置を転送先として選択して転送先ポートを求め、
前記経路制御部は、前記セッション管理部より選択されたルータ装置の転送先ポートへパケットを転送し、選択されたルータ装置の転送先ポートを含む経路情報を前記経路表に更新する
負荷分散方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のLSN装置等のルータ装置が設置されたネットワークシステムにおいて、各LSN装置等のルータ装置のセッション数を均等に分散させることにより、各LSN装置等のルータ装置を効率的に使用することが可能である。また、大規模なLSN装置を使用せず、小規模なNAT装置を複数台使用し、ネットワークシステムを構築することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のネットワーク構成図である。
【図2】本実施形態のネットワーク構成図である。
【図3】本実施形態の中継装置の構成図である。
【図4】本実施形態の経路表のデータ構造を示す図である。
【図5】本実施形態のLSNセッション表のデータ構造を示す図である。
【図6】本実施形態の経路制御部のパケット受信処理フローを示す図である。
【図7】本実施形態の経路制御部の経路表更新フローを示す図である。
【図8】本実施形態のLSNセッション管理部のLSN装置選択フローを示す図である。
【図9】本実施形態のLSNセッション管理部のLSNセッション表更新フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.構成
図2に、本実施形態のネットワーク構成図を示す。
本実施形態に係る中継装置は、中継装置(図2:203)にてネットワーク内の複数のLSN装置(図2:202)が保持しているセッション数を定期的に取得し、加入者からパケットを受信した場合に最も保持しているセッション数が少ないLSN装置、又は、予め定められた閾値より保持しているセッション数が少ないLSN装置(図2:202)へ加入者からのパケットを振り分けることでLSN装置(図2:202)のセッション負荷分散を可能とする。
【0018】
中継装置(図2:203)は、例えば、加入者からのパケットに対しNAT処理を行う複数のLSN装置(図2:202)との間の通信を中継するものであって、次の構成を備える。
・各LSN装置(図2:202)の保持するセッション情報の取得、受信したパケットに対し接続先LSN装置(図2:202)の選択を実施するLSNセッション管理部、
・受信したパケットに対し、経路表に基づきパケットの転送処理を行う経路制御部
【0019】
経路制御部は、加入者より受信したパケットの送信元IPアドレス、送信先IPアドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号を基に当該パケットが経路表に存在するかどうか判定し、経路表に存在する場合は経路表に従い転送処理を実施し、経路表に存在しない場合は接続先LSN装置(図2:202)の選択処理をLSNセッション管理部に依頼し、LSNセッション管理部より選択されたLSN装置(図2:202)に対する経路情報を経路表に更新する。LSNセッション管理部は、セッション表の情報を定期的に更新し、接続先LSN装置(図2:202)の選択を行う。
また、中継装置(図2:203)は、経路表と、LSN装置(図2:202)の保持するセッション数を保持するLSNセッション表と、を備える。
【0020】
図3は、本実施の形態の中継装置を示す図である。
中継装置(図3:300)は、次の構成を備える。
・複数の加入者宅内装置(図2:206)と通信を行う複数の加入者側ポート(図3:301)、
・複数のLSN装置(図2:202)と通信を行う複数のLSN側ポート(図3:302)、
・各ポートへパケット転送処理を行う内部転送制御部(図3:303)、
・送信元IPアドレス・ネットワークマスク、送信先IPアドレス・ネットワークマスク、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポート、経路有効時間(秒)を含む経路表(図3:305)、
・受信パケットに基づき経路表(図3:305)を検索し、受信パケットの転送先を決定し、経路表(図3:305)の更新処理を行う経路制御部(図3:304)
・、各LSN装置(図2:202)のIPアドレス、各LSN装置の保持するセッション数、転送先ポート、からなるLSNセッション表(図3:306)、
・経路制御部(図3:303)からの依頼により、受信したパケットに対しLSNセッション表(図3:306)に基づき、接続先LSN装置(図2:202)の選択を実施するLSNセッション管理部(図3:304)
【0021】
加入者(図2:206)は、ブロードバンドルータ相当の加入者宅内装置を用いてADSLやFTTHサービスを利用している。
中継装置(図3:300)とLSN装置(図2:202)は、通信事業者ネットワークシステム(図2:201)内に設置される装置で、加入者(図2:206)に対しインターネット接続サービスを提供するルータ装置である。LSN装置(図2:202)は加入者(図2:206)より受信したパケットに対しNAT処理を実施する。
【0022】
加入者側 ポート(図3:301)は、通信事業者ネットワークシステム(図2:201)内で加入者(図2:206)との通信を行うためのインターフェースである。LSN側ポート(図3:302)は、通信事業者ネットワークシステム(図2:201)内でLSN(図2:202)との通信を行うためのインターフェースである。パケット通信は、加入者側ポート(図3:301)とLSN側ポート(図3:302)を介して行われる。なお、加入者側ポート(図3:302)とLSN側ポート(図3:302)は加入者(図2:206)やLSN装置(図2:202)と直接接続される必要はなく、加入者収容ルータ(図2:205)など、他の中継装置経由で接続されてもよい。
【0023】
内部転送制御部(図3:303)は、加入者側ポート(図3:301)やLSN側ポート(図3:302)から受信したパケットに対し、経路制御部(図3:304)からの指示に従って該当パケットを加入者側ポート(図3:301)やLSN側ポート(図3:302)へ転送する。
経路制御部(図3:304)は、ルーチングプロトコルや保守運用者の設定により経路表(図3:305)の更新、内部転送制御部(図3:303)より受信したパケットに対し、IPヘッダ情報に基づき、経路表(図3:305)を検索し転送先ポートの決定、加入者側ポート(図3:301)から受信したパケットに対し、転送先が経路表に存在しない場合は、LSNセッション管理部(図3:306)に対して、LSN装置の選択を依頼し、LSNセッション管理部(図3:306)からの転送先ポートの通知に基き、転送先の決定と経路表の更新、を行う。
【0024】
図4に、経路表(図3:305)のデータ構造を示す。
経路表(図3:305)は、経路制御部(図3:304)が転送先ポートを決定する際に使用される、送信元アドレス・ネットワークマスク、送信先アドレス・ネットワークマスク、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポート、経路有効時間(例、秒)の組み合わせを記憶するデータベースである。データベースの更新は、例えば、ルーチングプロトコルによる経路の学習や保守運用者により経路の設定が行われたタイミング、LSNセッション管理部(図3:306)より受信パケットに対してLSN装置(図2:202)が選択されたタイミング、受信パケットに対しLSN装置(図2:202)が割り当てられてから一定時間経過したタイミング等で実施される。
【0025】
LSNセッション管理部(図3:306)は通信事業者ネットワークシステム(図2:201)内に存在するLSN装置(図2:202)より定期的にSNMP(Simple Network Management Protocol)などで保持するセッション数を取得し、LSNセッション表(図3:307)の更新、経路制御部(図3:304)より依頼があった場合は、受信したパケットに対してLSNセッション表(図3:307)より最も保持しているセッション数が少ないLSN装置を接続先LSN装置として選択、を行う。
【0026】
図5に、LSNセッション表(図3:307)のデータ構造を示す。
LSNセッション表(図3:307)はLSNセッション管理部(図3:306)が接続先LSN装置を選択する際に使用され、LSN装置のIPアドレス、LSN装置の保持するセッション数、転送先ポートの組み合わせを記憶するデータベースである。LSN装置のIPアドレスはLSN装置の識別、アクセスのために使用され、セッション数は各LSNが保持するセッション数を示し、転送先ポートは該当のLSNがどのLSN側ポートに接続されているかを示す。データベースのデータ更新は例えば、上述の通り、LSNセッション管理部(図3:306)がLSN装置(図2:202)から定期的に情報を取得したタイミング等で実施される。
【0027】
2.処理
2−1.受信処理
図6に、本実施形態の経路制御部(図3:304)のパケット受信処理のフロー図を示す。
まず経路制御部(図3:304)は、内部転送制御部(図3:303)よりパケットを受信する(ステップ600)と、パケットがLNS側ポート(図3:302)より受信されたか判定する(ステップ601)。
【0028】
そしてLSN側ポート(図3:302)より受信されたパケットであれば、受信パケットの送信先IPアドレスを用いて、経路表(図3:305)を検索する(ステップ601がYES、602)。検索の結果、経路表(図3:305)に該当のデータがあれば、該当の転送先ポートに対し、パケット転送を行うよう内部転送制御部(図3:303)に指示する(ステップ603がYES、604)。経路表(図3:305)に該当のデータがなければ、受信パケットを破棄する。(ステップ603がNO、605)。
【0029】
また受信パケットが加入者側ポート(図3:301)より受信されたパケットであれば、受信パケットの送信元IPアドレス、送信先IPアドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号を用いて、経路表(図3:305)を検索する(ステップ601がNO、606)。検索の結果、経路表(図3:305)に該当のデータがあれば、該当の転送先ポートに対し、パケット転送を行うよう内部転送制御部(図3:303)に指示する(ステップ607がYES、604)。経路表(図3:305)に該当のデータがなければ、LSN装置未選択のパケットと判断し、LSNセッション管理部(図3:306)に対し、LSN装置の選択を依頼する(ステップ608)。LSNセッション管理部(図3:306)においてLSN装置選択を実施後(ステップ800)、LSNセッション管理部(図3:306)より選択されたLSN装置の転送先ポートへパケットを転送するよう内部転送制御部(図3:303)に指示する(ステップ609)。
【0030】
図8に、本実施形態のLSNセッション管理部(図3:306)のLSN装置選択のフロー図を示す。
まずLSNセッション管理部(図3:306)は、経路制御部(図3:304)よりLSN装置選択を依頼される(ステップ800)と、LSNセッション表(図3:307)より最もセッション数の少ないLSN装置の転送先ポートを受信パケットの転送先として選択する(ステップ801)。なお、予め定めた閾値よりセッション数の少ないLSN装置の転送先ポートを選択するようにしてもよい。
そして転送先として選択した転送先ポートを経路制御部(図3:304)に通知する。
【0031】
2−2.更新処理
図7に、本実施形態の経路制御部(図3:304)の経路表(図3:305)更新のフロー図を示す。
まず経路制御部(図3:304)は、保守運用者より設定された経路情報(送信元IPアドレス/ネットワークマスク、送信先IPアドレス/ネットワークマスク、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポート、経路有効時間(秒))が経路表にあるか判定を行い(ステップ701)、保守運用者により設定された経路情報が経路表にあれば、経路表(図3:305)に、設定された経路情報(送信元IPアドレス/ネットワークマスク、送信先IPアドレス/ネットワークマスク、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポート、経路有効時間(秒))の登録(追加)や削除を実施する(ステップ701のYES、702)。
【0032】
次に経路制御部(図3:304)は、保守運用者より設定された経路情報が経路表にない(ステップ701のNO)もしくは経路表の更新(ステップ702)を実施後、ダイナミックルーチングプロトコル等の各種の予め定められたルーチングプロトコルにより学習した経路情報があるか判定を行う(ステップ703)。ルーチングプロトコルの経路情報更新メッセージを受信し、新たに登録(追加)もしくは削除すべきか学習した経路情報があれば、経路表(図3:305)に学習した経路情報(送信先IPアドレス・ネットワークマスク、転送先ポート、経路有効時間(秒))の登録(追加)や削除を実施する(ステップ703のYES、704)。
【0033】
次に経路制御部(図3:304)は、ルーチングプロトコルにより学習した新たな経路情報がない(ステップ703のNO)もしくは経路表の更新(ステップ704)を実施後、LSNセッション管理部によりLSN装置選択が実施されたか判定を行う(ステップ705)。LSNセッション管理部によりLSN装置選択が実施されていれば(ステップ705のYES、706)、経路表(図3:305)に該当LSNに関する経路情報(送信先IPアドレス・ネットワークマスク、送信先IPアドレス・ネットワークマスク、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポート、経路有効時間(秒))の登録を実施する(ステップ705のYES、706)。なお、ステップ705の判定は、例えば、経路表の更新フローの実行される周期又はタイミングにおいて、又は、予め定められた所定期間内又は所定タイミングにおいて実施することができる。また、例えば、LSN装置選択が実施されたか否かを表すフラグを設定しておき、それを参照することで判定を行うことができる。
【0034】
そして、経路表(図3:305)の経路有効時間(秒)を予め定めた時間減算し(ステップ707)、経路有効時間(秒)を超過した経路があるか判定する(ステップ708)。経路有効時間(秒)を超過(この例では、経路有効時間が0又はマイナス)した経路がある場合、該当の経路情報を経路表(図3:305)から削除する(ステップ709)。
経路有効時間(秒)を超過したパケットがない(ステップ707のNO)もしくは経路表から経路の削除(ステップ708)を実施後、ステップ701に戻る。
【0035】
図9に、本実施形態のLSNセッション管理部(図3:306)のLSNセッション表(図3:307)更新のフロー図を示す。
まずLSNセッション管理部(図3:306)は、定期的にLSN装置からセッション情報を取得するために、一定時間経過したか判定を行う(ステップ901)。一定時間経過後であれば(ステップ901のYES)、LSNセッション管理部(図3:306)は、LSNセッション表(図3:307)のLSN装置IPアドレス毎にセッション数を取得する(ステップ902)。
【0036】
そして、LSNセッション管理部(図3:306)は、セッション数に変化があるか判定を行い(ステップ903)、変化があれば該当LSN装置のセッション数を取得した値に更新する(ステップ903のYES、904)。セッション数に変化がない(ステップ903のNO)もしくはセッション表を更新(ステップ904)後、ステップ901に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、LSN装置を複数したネットワークシステムの中継装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
100、200:The Internet
101、201:通信事業者ネットワークシステム
102、202:LSN(Large Scale NAT)装置
103、204:通信事業者中継網
104、205:加入者収容ルータ
106、206:加入者
203、300:中継装置
301:加入者側ポート
302:LSN側ポート
303:内部転送制御部
304:経路情報制御部
305:経路表
306:LSNセッション管理部
307:LSNセッション表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加入者からのパケットに対しネットワーク・アドレス変換処理を行う複数のルータ装置と、該各ルータ装置と加入者との間の通信を中継する中継装置とを備えた通信ネットワークシステムにおける、前記中継装置であって、
送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポートの組み合わせを記憶する経路表と、
ルータ装置のアドレス、ルータ装置の保持するセッション数、ルータ装置の転送先ポートの組み合わせを記憶するセッション表と、
受信したパケットに対し、前記経路表に基づきパケットの転送処理を行う経路制御部と、
各ルータ装置の保持するセッション数を前記セッション表に登録し、受信したパケットに対し転送先のルータ装置選択を実施するセッション管理部と、
備え、

受信パケットが加入者側より受信されたパケットである場合、前記経路制御部は、受信したパケットの送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号を基に前記経路表を検索し、該当するデータがあれば、該当する転送先ポートへパケットを転送し、
前記経路制御部は、該当するデータがなければ、前記セッション管理部に対しルータ装置選択を依頼し、
前記セッション管理部は、前記経路制御部からルータ装置選択を依頼されると、前記セッション表を参照して、最も保持するセッション数の少ない又は予め定められた閾値よりセッション数の少ないルータ装置を転送先として選択して転送先ポートを求め、
前記経路制御部は、前記セッション管理部より選択されたルータ装置の転送先ポートへパケットを転送し、選択されたルータ装置の転送先ポートを含む経路情報を前記経路表に更新する
中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の中継装置において、
前記経路制御部は、
受信したパケットが、ルータ装置側ポートより受信されたか、加入者側ポートより受信されたかを判定し、
受信パケットがルータ装置側ポートより受信されたパケットであれば、受信パケットの送信先アドレスを用いて、前記経路表を検索し、該当の転送先ポートに対し、パケット転送を行い、前記経路表に該当のデータがなければ、受信パケットを破棄する
ことを特徴とする中継装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の中継装置において、
前記経路表は、各データに対して経路有効時間をさらに含み、
前記経路制御部は、
前記セッション管理部によりルータ装置選択が実施されたか判定を行い、
前記セッション管理部によりルータ装置選択が実施されていれば、前記経路表に該当ルータ装置に関する、送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポート、経路有効時間を含む経路情報の登録を実施し、
該経路情報の経路有効時間を減算し、予め定められた経路有効時間を超過した経路がある場合、該経路情報を前記経路表から削除する
ことを特徴とする中継装置。
【請求項4】
請求項3に記載の中継装置において、
前記経路制御部は、
保守運用者より設定された経路情報に従い、前記経路表に該経路情報の登録及び/又は削除を実施し、
予め定められたルーチングプロトコルにより学習した経路情報に従い、前記経路表に学習した経路情報の登録及び/又は削除を実施する
ことを特徴とする中継装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の中継装置において、
前記セッション管理部は、
一定時間経過後に、前記セッション表のルータ装置アドレス毎にセッション数を取得し、
セッション数に変化があるか判定を行い、変化があれば該当ルータ装置のセッション数を取得した値に更新する
ことを特徴とする中継装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の中継装置において、
送信元アドレス及び/又は送信先アドレスは、さらにネットワークマスクを含むことを特徴とする中継装置。
【請求項7】
加入者からのパケットに対しネットワーク・アドレス変換処理を行う複数のルータ装置と、該各ルータ装置と加入者との間の通信を中継する中継装置とを備えた通信ネットワークシステムにおいて、
前記中継装置は、
送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポートの組み合わせを記憶する経路表と、
ルータ装置のアドレス、ルータ装置の保持するセッション数、ルータ装置の転送先ポートの組み合わせを記憶するセッション表と、
受信したパケットに対し、前記経路表に基づきパケットの転送処理を行う経路制御部と、
各ルータ装置の保持するセッション数を前記セッション表に登録し、受信したパケットに対し転送先のルータ装置選択を実施するセッション管理部と、
備え、

受信パケットが加入者側より受信されたパケットである場合、前記経路制御部は、受信したパケットの送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号を基に前記経路表を検索し、該当するデータがあれば、該当する転送先ポートへパケットを転送し、
前記経路制御部は、該当するデータがなければ、前記セッション管理部に対しルータ装置選択を依頼し、
前記セッション管理部は、前記経路制御部からルータ装置選択を依頼されると、前記セッション表を参照して、最も保持するセッション数の少ない又は予め定められた閾値よりセッション数の少ないルータ装置を転送先として選択して転送先ポートを求め、
前記経路制御部は、前記セッション管理部より選択されたルータ装置の転送先ポートへパケットを転送し、選択されたルータ装置の転送先ポートを含む経路情報を前記経路表に更新する
通信ネットワークシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の通信ネットワークシステムにおいて、
前記経路制御部は、
受信したパケットが、ルータ装置側ポートより受信されたか、加入者側ポートより受信されたかを判定し、
受信パケットがルータ装置側ポートより受信されたパケットであれば、受信パケットの送信先アドレスを用いて、前記経路表を検索し、該当の転送先ポートに対し、パケット転送を行い、前記経路表に該当のデータがなければ、受信パケットを破棄する
ことを特徴とする通信ネットワークシステム。
【請求項9】
加入者からのパケットに対しネットワーク・アドレス変換処理を行う複数のルータ装置と、該各ルータ装置と加入者との間の通信を中継する中継装置とを備えた通信ネットワークシステムにおいて、加入者からのパケットをルータ装置に対しセッションを均等に分散するための負荷分散方法であって、
前記中継装置は、
送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、転送先ポートの組み合わせを記憶する経路表と、
ルータ装置のアドレス、ルータ装置の保持するセッション数、ルータ装置の転送先ポートの組み合わせを記憶するセッション表と、
受信したパケットに対し、前記経路表に基づきパケットの転送処理を行う経路制御部と、
各ルータ装置の保持するセッション数を前記セッション表に登録し、受信したパケットに対し転送先のルータ装置選択を実施するセッション管理部と、
備え、

受信パケットが加入者側より受信されたパケットである場合、前記経路制御部は、受信したパケットの送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号を基に前記経路表を検索し、該当するデータがあれば、該当する転送先ポートへパケットを転送し、
前記経路制御部は、該当するデータがなければ、前記セッション管理部に対しルータ装置選択を依頼し、
前記セッション管理部は、前記経路制御部からルータ装置選択を依頼されると、前記セッション表を参照して、最も保持するセッション数の少ない又は予め定められた閾値よりセッション数の少ないルータ装置を転送先として選択して転送先ポートを求め、
前記経路制御部は、前記セッション管理部より選択されたルータ装置の転送先ポートへパケットを転送し、選択されたルータ装置の転送先ポートを含む経路情報を前記経路表に更新する
負荷分散方法。
【請求項10】
請求項9に記載の負荷分散方法において、
前記経路制御部は、
受信したパケットが、ルータ装置側ポートより受信されたか、加入者側ポートより受信されたかを判定し、
受信パケットがルータ装置側ポートより受信されたパケットであれば、受信パケットの送信先アドレスを用いて、前記経路表を検索し、該当の転送先ポートに対し、パケット転送を行い、前記経路表に該当のデータがなければ、受信パケットを破棄する
ことを特徴とする負荷分散方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−156698(P2012−156698A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13077(P2011−13077)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】