説明

中継装置,帯域制御方法,帯域制御装置,帯域制御プログラム,及び、帯域制御プログラムを格納したコンピュータ可読媒体

遠隔監視システムのネットワークは、複数のIPスイッチ装置(11)を備える。各IPスイッチ装置(11)には、複数のQoS定義テーブル(112)が格納されている。各QoS定義テーブル(11)には、第1イーサネットポート(11a)から受け取った音声データの最大出力帯域と、第2イーサネットポート(11b)から受け取った画像データの最大出力帯域と、第3イーサネットポート(11c)から受け取った画像データの最大出力帯域とをそれぞれ定義する情報が、記述されており、最大出力帯域の組み合わせが、テーブル(112)毎に異なっている。IPスイッチ装置(11)は、パーソナルコンピュータ(17)上に生成される画像処理プロセス及び設定変更処理プロセスによって、何れのテーブル(112)を使うかが、指示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、通信品質非保証型の通信を行う中継装置,このような中継装置においてその出力帯域を制御するための帯域制御方法,このような帯域制御方法を実現するための帯域制御装置,このような帯域制御装置としてコンピュータを機能させるための帯域制御プログラム,及び、このような帯域制御プログラムを格納したコンピュータ可読媒体に、関する。
【背景技術】
周知のように、河川や山間などで起こる自然界の変動は、人類に多くの被害を及ぼす。このような被害を最小限に食い止めることを目的として、自然界の変動を監視するための遠隔監視システムが、開発されている。遠隔監視システムは、一般に、一つの中央ユニットと複数の監視地点ユニットとを、備えている。
各監視地点ユニットは、水門,堰,砂防ダム,トンネル等の監視対象又はその近傍にそれぞれ設置されており、監視対象における自然界の変動に関する各種の情報を収集するための機器として、電話機や監視カメラや観測用計器を、備えている。なお、観測用計器は、水位,水質,水温,気温,湿度,降水量,風力,振動などの状態量を測定する。これら電話機や監視カメラや観測用計器は、中継装置を介して基幹通信線に接続されている。
一方、中央ユニットは、この遠隔監視システムの監視地域から外れた地域にある集中監視センター内に、設置されており、電話機と中央制御装置とを、備えている。これら電話機や中央制御装置は、中継装置を介して基幹通信線に接続されている。電話機には、何れかの監視対象又はその近傍に設置された監視地点ユニットにある電話機との間で音声データを遣り取りするための機能が、備えられている。中央制御装置は、監視カメラによって得られる動画像と観測用計器によって得られる測定値とを大型スクリーンに表示するためのモニタリング機能を、少なくとも備えている。
従来、災害発生前後において情報を一般市民へ正確且つ迅速に提供するため、監視地点ユニット内の各装置と中央ユニット内の各装置とを結ぶネットワークには、通信品質保証型(ギャランティ型)のプロトコルに従った通信を行う中継装置が、採用されてきた。しかし、近年のIP[Internet Protocol]ネットワーク環境の普及に因り、安価で且つ拡張性のある遠隔監視システムが求められるようになった。そのため、最近では、通信品質非保証型(ベストエフォート型)のプロトコルに従った通信を行う中継装置をそのネットワークの末端部又は全部に採用して遠隔監視システムを構築することが、主流となりつつある。
【特許文献1】 日本特開2000−105137号公報
【特許文献2】 日本特開平10−243018号公報
【発明の開示】
ところで、何れかの監視対象において自然界の変動の規模が大きくなりすぎてしまった場合(例えば河川の水位が危険水位を超えて洪水状態になった場合)、観測用計器によって得られる測定値(上記例においては水位)は、所定の限界値(上記例においては危険水位)を大きく超えているため、これを監視する必要性は、かなり低くなる。その一方で、その監視対象にいる担当者から電話機を通じて直接伝達される情報と、監視カメラによって得られるその監視対象の動画像とは、多くの情報量を持つとともに、高い速報性を持つ。そのため、災害発生時には、担当者との会話や動画像の監視が、測定値の監視に優先されるべきである。
しかしながら、遠隔監視システムのネットワークの末端部又は全部に対し、前述したような通信品質非保証型の通信を行う中継装置が採用されていると、電話機からの音声データや監視カメラからの映像データの帯域(単位時間当たりのデータ量)が保証されていないので、様々な要因によってそれらデータの帯域が狭くなることがある。そのため、被災地となった監視対象にいる担当者の電話機からの音声や、大型スクリーンに映し出された被災地の動画像が、途切れてしまう虞があった。
本発明は、上述したような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、通信品質非保証型のプロトコルに従って通信を行うものとして遠隔監視システムのネットワークの末端部又は全部に採用された場合であっても、被災地の担当者からの音声や被災地の映像が途切れることをできるだけ防止し得る中継装置を、提供することにある。また、本発明の課題は、このような中継装置においてその出力帯域を制御するための帯域制御方法と、このような帯域制御方法を実現するための帯域制御装置と、このような帯域制御装置としてコンピュータを機能させるための帯域制御プログラムと、このような帯域制御プログラムを格納したコンピュータ可読媒体とを、提供することにある。
上記の課題を解決するために発明された中継装置は、通信品質非保証型のプロトコルに従ったデータの受信を行う複数の入力ポートと、データの送信を行う少なくとも1つの出力ポートと、前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータの持つ情報に対応するクラスに振り分けるクラス分け部と、前記各出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する配分比率を示す比率情報を格納した複数のテーブルを記憶する記憶部と、何れかのテーブルを使用するように指示する情報を取得する指示取得部と、前記指示取得部が取得した情報に基づいて前記記憶部内の複数のテーブルの中から選択したテーブルに格納されている比率情報にて示される配分比率にて、前記出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する帯域制御部とを備えることを、特徴としている。
このように構成されるので、電話機や監視カメラや観測用計器が各入力ポートに接続された時には、電話機からの音声データがそれ用のクラスに、監視カメラからの画像データがそれ用のクラスに、観測用計器からの測定値データがそれ用にクラスに振り分けられるように設定しておくことができるとともに、音声データや画像データのクラスの出力帯域に対する測定値データのクラスの出力帯域の割り合いが徐々に小さくなるように、記憶部内の各テーブルに格納される配分比率を設定しておくことができる。
そして、このように設定されていると、自然界の変動の規模が大きいときには、音声データや画像データの配分比率が測定値データの配分比率に対して大きく定義されているテーブルを使用するように指示し、自然界の変動の規模が小さいときには、音声データや画像データの配分比率が測定値データの配分比率と同程度となるように定義されているテーブルを使用するように指示すれば、災害の段階が高まって危険度が増したときほど、監視カメラや電話機からのデータの帯域をより多く確保することができる。
このように、自然界の変動の規模が高まって危険度が増したときほど、監視カメラや電話機からのデータの帯域が、観測用計器からのデータに優先して確保されれば、たとえ通信品質非保証型のプロトコルに従った通信を行うものとして遠隔監視システムのネットワークの末端部又は全部に採用されていても、被災地の担当者の音声や被災地の映像が途切れることができるだけ防止されることとなる。
なお、本発明による中継装置においては、各出力ポートは、通信品質非保証型のプロトコルに従った通信を行うものであっても良いし、通信品質保証型のプロトコルに従った通信を行うものであっても良い。
また、上記の課題を解決するために発明された帯域制御方法は、通信品質非保証型のプロトコルに従ったデータの受信を行う複数の入力ポートと、データの送信を行う少なくとも1つの出力ポートとを備え、前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータの持つ情報に対応するクラスに振り分ける中継装置においてその出力帯域を制御するための帯域制御方法であって、制御装置が、前記中継装置の少なくとも1つの入力ポートに入力されるデータと同じデータを通信装置を通じて受信し、受信したデータに基づいて災害の段階を示す制御値を取得し、取得した制御値に応じて、前記中継装置の前記各出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する配分比率を、変化させることを、特徴としている。
従って、この帯域制御方法によれば、前述した本発明の中継装置におけるその出力帯域を制御することができることになる。
また、上記の課題を解決するために発明された帯域制御装置は、通信品質非保証型のプロトコルに従ったデータの受信を行う複数の入力ポートと、データの送信を行う少なくとも1つの出力ポートとを備え、前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータの持つ情報に対応するクラスに振り分ける中継装置においてその出力帯域を制御するための帯域制御装置であって、前記中継装置の少なくとも1つの入力ポートに入力されるデータと同じデータを受信する受信部と、前記受信部が受信したデータに基づいて災害の段階を示す制御値を取得する取得部と、前記中継装置の前記各出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する配分比率を、前記取得部が取得した前記制御値に応じて変化させる制御部とを備えることを、特徴としている。
従って、この帯域制御装置は、前述した本発明の帯域制御方法を実現した装置と同等に機能することとなる。
また、上記の課題を解決するために発明された帯域制御プログラム,及び、上記の課題を解決するために発明されたコンピュータ可読媒体に格納される帯域制御プログラムは、以下に記述されるように、構成されている。
すなわち、帯域制御プログラムは、通信品質非保証型のプロトコルに従ったデータの受信を行う複数の入力ポートと、データの送信を行う少なくとも1つの出力ポートとを備え、前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータの持つ情報に対応したクラスに振り分ける中継装置においてその出力帯域を制御するための帯域制御プログラムであって、コンピュータを、前記中継装置の少なくとも1つの入力ポートに入力されるデータと同じデータを通信装置を通じて受信する受信手段,前記受信手段が受信したデータに基づいて災害の段階を示す制御値を取得する取得手段,及び、前記中継装置の前記各出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する配分比率、前記取得手段が取得した前記制御値に応じて変化させる制御手段として機能させることを、特徴としている。
従って、この帯域制御プログラムによれば、上述した本発明の帯域制御装置と同等な装置としてコンピュータを機能させることができることになる。
なお、本発明による帯域制御プログラムおいては、受信手段が取得するデータは、監視カメラが出力する画像データであっても良いし、観測用計器が出力する測定値データであっても良い。つまり、受信手段が取得するデータは、災害の段階を示す制御値を取得することを可能にするデータであれば、どの種のデータでも構わない。
以上に説明したように、本発明によれば、通信品質非保証型のプロトコルに従って通信を行う中継装置が遠隔監視システムのネットワークの末端部又は全部に採用されている場合であっても、被災地の担当者の音声や被災地の映像が途切れることをできるだけ防止することができる。そして、その結果として、災害発生前後において情報を一般市民へ正確且つ迅速に提供することが妨げられることをできるだけ防止することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明を実施するための形態である遠隔監視システムを概略的に示す構成図である。
第2図は、監視地点ユニットを概略的に示す構成図である。
第3図は、QoS定義テーブルに定義されるクラス別の最大帯域の組み合わせを三個のテーブル間で比較するために作成された比較表である。
第4図は、パーソナルコンピュータを概略的に示す構成図である。
第5図は、画像処理の内容を説明するためのフローチャートである。
第6図は、設定変更処理の内容を説明するためのフローチャートである。
第7図は、光ケーブルの最大帯域の中で音声データ,画像データ,測定値データに配分された最大の配分帯域が表現された概念図である。
第8図は、危険度1の時にIPスイッチ装置に用いられるQoS定義テーブルの具体例である。
第9図は、危険度2の時にIPスイッチ装置に用いられるQoS定義テーブルの具体例である。
第10図は、危険度3の時にIPスイッチ装置に用いられるQoS定義テーブルの具体例である。
第11図は、IPスイッチ装置内のクラス分け定義テーブルの内容を更新する際に中央制御装置によって用いられるシステム定義テーブルの具体例である。
【発明を実施するための最良の形態】
次に、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
第1図は、本発明を実施するための形態である遠隔監視システムを概略的に示す構成図である。第1図に示されるように、この遠隔監視システムは、複数の監視地点ユニット10と、一つの中央ユニット20とを、備えている。
各監視地点ユニット10は、この遠隔監視システムの監視地域内の各地点における自然界の変動に関する各種の情報を収集するためのユニットである。これら各監視地点ユニット10は、例えば河川であれば、ダム,堰,水門,堤防,橋などの監視対象の近傍にある簡易施設に、設置され、例えば山間であれば、砂防ダム,噴火口,トンネル,落石防止柵,防土堤などの監視対象の近傍にある簡易施設に、設置される。なお、第1図は、本実施形態の遠隔監視システムが河川に適用された例を、示している。
一方、中央ユニット20は、各監視地点ユニット10から各種の情報を収集するためのユニットであり、後述するように、一般的な既存の遠隔監視システムの中央ユニットと同等の機能を、備えている。この中央制御装置20は、河川や山間における自然界の変動の影響を受けにくい地域に建設されている集中監視センターの内部に、設置されている。
さらに、この遠隔監視システムは、監視地域内に張り巡らされた光ケーブルを、基幹通信線として備えており、各監視地点ユニット10及び中央ユニット20は、この光ケーブルを介して接続されることによって、リング型のネットワークトポロジーを形成している。
第2図は、一つの監視地点ユニット10を概略的に示す構成図である。第2図に示されるように、監視地点ユニット10は、IP[Internet Protocol]スイッチ装置11,電話機12,監視カメラ13,IPエンコーダ14,観測用計器15,IPテレメータ16,及び、パーソナルコンピュータ17を、備えている。
IPスイッチ装置11は、レイヤ3スイッチ装置とも称されており、広く一般に販売されて使用されている中継装置である。このIPスイッチ装置11は、少なくとも四個のイーサネットポート11a〜11dと、IPスイッチングエンジン11eとを、備えている。
IPスイッチングエンジン11eは、パケットについてのバッファリング,ルーティング,IPアドレスMAC[Media Access Control]アドレス変換,フィルタリング,キューイング等の処理を行う機能であり、そのうちの一部の処理が、ASIC[Application Specific Integrated Circuit]というハードウエア上にて実現され、残りの処理が、CPUによって実行されるソフトウエアによって実現されている。なお、どの処理がハードウエア化されているかは、IPスイッチ装置11の仕様に依る。
また、このIPスイッチ装置11は、いわゆるPOS[Packet Over SONET/SDH]装置としての機能を、備えている。具体的には、このIPスイッチ装置11は、SONET[Synchronous Optical Network]/SDH[Synchronous Digital Hierarchy]というプロトコルに従って光ケーブルを通じてパケットを送受信するための2個の光ポート11f,11gを、備えており、上述したIPスイッチングエンジン11eは、イーサネットとSONET/SDHとの間のプロトコル変換を行うための機能も、有している。
さらに、このIPスイッチ装置11は、前述のルーティング,IPアドレスMACアドレス変換,フィルタリング,キューイングに用いられる各テーブルが格納されたメモリに、クラス分け定義テーブル111と三個のQoS[Quality of Service]定義テーブル112とを、格納している。なお、このメモリは、記憶部に相当する。
クラス分け定義テーブル111は、各イーサネットポート11a〜11dから入力された各パケットを幾つかのクラスに振り分ける際に用いられるものとして一般的に使用されているテーブルであり、このクラス分け定義テーブル111には、そのクラス分けの条件となる各種の情報が、記録される。なお、上述したIPスイッチングエンジン11eは、前述の中央ユニット20からネットワークを通じて送信されてくる情報をこのクラス分け定義テーブル111内の情報に上書きする機能を、備えているので、このクラス分け定義テーブル111にクラス分け条件として記録される各種の情報は、更新可能となっている。このような上書き更新機能は、一般的な既存のIPスイッチ装置にも備えられている。
本実施形態では、このクラス分け定義テーブル111には、第1イーサネットポート11aを通過するパケットを第1クラスへと振り分け、第2イーサネットポート11bを通過するパケットを第2クラスへと振り分け、第3イーサネットポート11cを通過するパケットを第3クラスへと振り分ける旨の情報が、記録されている。
但し、第1クラスは、最高レベルの優先度をもって帯域を確保されるべきパケットが所属する“最優先クラス”である。第2クラスは、その下位の中位レベルの優先度をもって帯域を確保されるべきパケットが所属する“優先クラス”である。第3クラスは、その下位の最低レベルの優先度をもって帯域を確保されるべきパケットが所属する“非優先クラス”である。
一方、QoS定義テーブル112は、クラス分けされた各パケットを光ケーブルへ出力する際に、どのクラスのパケット群に対してどの程度の帯域(単位時間当たりのデータ量、単位はbits per second)を優先的に配分するかが定義されているテーブルである。
より具体的には、三つのQoS定義テーブル112の何れにも、光ケーブルの最大帯域(光ケーブルが単位時間に送信することができる最大のデータ量)のうちのそのクラスのパケット群に対して配分し得る最大の配分帯域とそのクラスの識別情報とを対応付けるレコードが、三個のクラスのそれぞれについて、記録されている。また、三つのQoS定義テーブル112は、各クラスのパケット群に対してそれぞれ配分される最大帯域の組み合わせが互いに異なるように、それぞれ作成されている。
第3図は、QoS定義テーブル112に定義されるクラス別の最大帯域の組み合わせを三個のテーブル112間で比較するために作成された比較表である。第3図に示されるように、本実施形態では、一つ目のQoS定義テーブル112には、最優先クラスのパケット群に対し、最大で全帯域の35%を配分し、優先クラスのパケット群に対し、最大で全帯域の35%を配分し、残りの非優先クラスのパケット群に対し、量大で全帯域の30%を配分することが、定義されている(第3図の比較表における“危険度1用”の行を参照)。
また、二つ目のQoS定義テーブル112には、最優先クラスのパケット群に対し、最大で全帯域の40%を配分し、優先クラスのパケット群に対し、最大で全帯域の40%を配分し、残りの非優先クラスのパケット群に対し、最大で全帯域の20%を配分することが、定義されている(第3図の比較表における“危険度2用”の行を参照)。
さらに、三つ目のQoS定義テーブル112には、最優先クラスのパケット群に対し、最大で全帯域の50%を配分し、優先クラスのパケット群に対し、最大で全帯域の50%を配分し、残りの非優先クラスのパケットに対し、帯域を全く配分しないことが、定義されている(第3図の比較表における“危険度3用”の行を参照)。
そして、IPスイッチングエンジン11eは、平常状態では、これら三個のQoS定義テーブル112を使用しない。平常状態では、IPスイッチングエンジン11eは、光ケーブルの帯域が最大帯域に達していなければ、各イーサネットポート11a〜11dから入力されるパケットを、そのまま光ケーブルへ出力し、光ケーブルの帯域が瞬間的に最大帯域を超えるようであれば、各イーサネットポート11a〜11dから入力されるパケットを、シェーピングを行いながら、光ケーブルへ出力する。なお、シェーピングとは、各イーサネットポート11a〜11dから入力されるパケットを一旦バッファに蓄積して、光ケーブルの帯域が限界速度を超えないようにしながら、バッファからパケットを少しずつ読み出して出力することにより、パケット破棄量を減少させる技術を言う。
また、IPスイッチングエンジン11eは、後述のパーソナルコンピュータ17からの指示によって、三個のQoS定義テーブル112のうちの何れか一つを選択する機能を、備えている。なお、この機能は、指示取得部に相当する。
そして、この機能により、例えば一つ目のQoS定義テーブルを使用するようにパーソナルコンピュータ17によって指示された場合、IPスイッチングエンジン11eは、以下に詳述するような処理を実行する。
すなわち、IPスイッチングエンジン11eは、各イーサネットポート11a〜11dからパケットが入力されると、各パケットを、クラス分け定義テーブル111に従って、最優先クラス,優先クラス,非優先クラスの何れかに振り分ける。この処理を実行するIPスイッチングエンジン11eは、クラス分け部に相当する。また、これと同時に、IPスイッチングエンジン11eは、最優先クラスのパケット群を光ケーブルの最大帯域の35%以下の配分帯域にて光ケーブルへ出力させ、優先クラスのパケット群を光ケーブルの最大帯域の35%以下の配分帯域にて光ケーブルへ出力させ、非優先クラスのパケット群を光ケーブルの最大帯域の30%以下の配分帯域にて光ケーブルへ出力させる。なお、この処理を実行するIPスイッチングエンジン11eは、帯域制御部に相当する。
ここで、以上に詳述した各処理は、一つ目のQoS定義テーブル112についてのものであったが、IPスイッチングエンジン11eは、二つ目及び三つ目のQoS定義テーブル112を使用するようにパーソナルコンピュータ17によって指示された場合でも、前述の各処理と同様の処理を、実行する。
電話機12は、音波を音声データに変換して出力するとともに入力された音声データを音波に変換するための通話用端末機器であり、音声データや発呼信号や着呼信号などの情報を載せたパケットを他の電話機との間で遣り取りする機能を、備えている。この電話機12は、前述の簡易施設内に設置されるとともに、イーサネットケーブルを介してIPスイッチ装置11の第1イーサネットポート11aに接続される。
監視カメラ13は、対物光学系によって形成される所定視野の像を画像データに変換し、NTSC[National Television System Standdard Committee]信号というアナログ信号の形態で画像データを出力するための機器である。この監視カメラ13は、前述の監視対象にその視野を向けた状態で簡易施設の屋根や樋や柱や梁などに設置され、同軸ケーブルを介してIPエンコーダ14に接続される。
IPエンコーダ14は、監視カメラ13がNTSC信号の形態で出力する画像データを例えばMPEG2[motion picture expert group 2]形式の画像データに変換し、この画像データを載せたパケットを出力するための装置である。このIPエンコーダ14は、前述の簡易施設内に設置されるとともに、イーサネットケーブルを介してIPスイッチ装置11の第2イーサネットポート11bに接続される。なお、このIPエンコーダ14は、画像データを載せたパケットをIPスイッチ装置11を通じて後述のパーソナルコンピュータ17へ送信するように、設定されているとともに、IPスイッチ装置11及び前述の光ケーブルを通じて中央ユニット20へ送信するように、設定されている。
観測用計器15は、水位,水質,水温,気温,湿度,降水量,風力,振動などの状態を数値化することによって測定値データを取得して出力するための機器である。この観測用計器15は、前述の監視対象に直接設置されるとともに、所定のケーブルを介してIPテレメータ16に接続される。
IPテレメータ16は、観測用計器15が出力する測定値データを受信し、この測定値データを載せたパケットを出力するための装置である。このIPテレメータ16は、前述の簡易施設内に設置されるとともに、イーサネットケーブルを介してIPスイッチ装置11の第3イーサネットポート11cに接続される。なお、このIPテレメータ16は、測定値データを載せたパケットをIPスイッチ装置11を通じて後述のパーソナルコンピュータ17へ送信するように、設定されているとともに、IPスイッチ装置11及び前述の光ケーブルを通じて中央ユニット20へ送信するように、設定されている。
パーソナルコンピュータ17は、監視カメラ13が出力する画像データや観測用計器15が出力する測定値データを一時的に記録しておくための装置である。本実施形態では、このパーソナルコンピュータ17に、IPスイッチ装置11における出力帯域を制御するための本発明に係る機能が、付加されている。
第4図は、そのパーソナルコンピュータを概略的に示す構成図である。第4図に示されるように、パーソナルコンピュータ17は、CPU[Central Processing Unit]17a,RAM[Random Access Memory]17b,表示装置17c,入力装置17d,通信制御装置17e,FDD[Flexible Disk Drive]17f,CDD[Compact Disk Drive]17g,及び、HDD[Hard Disk Drive]17hを、備えており、これらハードウエア17a〜17hは、バスBを介して互いに接続されている。
CPU17aは、このパーソナルコンピュータ17全体を制御する中央処理装置である。RAM17bは、CPU17aが各種プログラムを実行するに際しての作業領域が展開される主記憶装置である。
表示装置17cは、CPU17aによって生成された画像データに基づいて画像を表示するための装置であり、具体的にはブラウン管ディスプレイや液晶ディスプレイである。入力装置17dは、操作者からの入力を受け付けるための装置であり、具体的にはキーボードやマウスやタッチスクリーンである。
通信制御装置17eは、前述のIPスイッチ装置11との間で有線通信にてデータの送受信を行う装置であり、具体的には、LAN[Local Area Network]接続ボードである。この通信制御装置17eは、イーサネットケーブルを介してIPスイッチ装置11の第4イーサネットポート11dに接続されている。
FDD17f及びCDD17gは、コンピュータ可読媒体であるフレキシブルディスクFDやコンパクトディスクCDからデータやプログラムを読み出したりこれらディスクFD,CDに書き込んだりするための装置である。なお、FDD17f及びCDD17gによって各ディスクFD,CDから読み出されたデータやプログラムは、HDD17hにインストールされる。
HDD17hは、パーソナルコンピュータ17に内蔵され、或いは外付けされる外部補助記憶装置であり、CPU17aによってRAM17b上に読み出されて実行される各種プログラムを格納している。
このHDD17hが格納しているプログラムには、ハードウエアとソフトウエアとを統合的に管理するためのOS[Operating System]プログラムの他、監視カメラ13が出力する画像データや観測用計器15が出力する測定値データをHDD17hに一時的に記録しておくためのプログラムが、含まれている。
さらに、このHDD17hが格納しているプログラムには、本発明に係る画像処理プログラム171,及び、設定変更プログラム172が、含まれている。なお、画像処理プログラム171の処理内容については、第5図を参照しながら後述する。また、設定変更プログラム172の処理内容については、第6図を参照しながら後述する。
ところで、第1図に示された中央ユニット20は、前述の電話機12と同等に機能する電話機と、各種の情報処理を行う中央制御装置とを、備えている。但し、これらは図示されていない。これら電話機と中央制御装置は、前述のIPスイッチ装置11と同等に機能するIPスイッチ装置に対し、イーサネットケーブルにて接続されており、このIPスイッチ装置が、光ケーブルを介して監視対象にあるIPスイッチ装置11と接続されている。
そして、中央制御装置は、各監視対象にあるIPスイッチ装置11内のクラス分けテーブル111の内容を更新するための情報をそのIPスイッチ装置11に送信するための機能を、備えている。また、この中央制御装置は、各監視地点ユニット10の監視カメラ13及び観測用計器15から送られてくる画像データ及び測定値データを蓄積するためのデータベース機能を、備えている。さらに、この中央制御装置は、その画像データや測定値データに基づいて大型スクリーンに動画像や測定値を表示するためのモニタリング機能をも、備えている。なお、これらの機能は、一般的な既存の中央制御装置にも備えられている。
以下、以上のように構成される遠隔監視システムのパーソナルコンピュータ17において実行される処理について、説明する。
パーソナルコンピュータ17のCPU17aは、監視カメラ13から通信制御装置17eを通じて一つの画像データを受信する(この処理を行うCPU17aは、受信手段に相当する)と、その受信をトリガとして画像処理プログラムをHDD17hからRAM17bに読み込む。すると、このパーソナルコンピュータ17には、その画像データを処理対象とした画像処理プロセスが生成される。なお、監視カメラ13からは、動画像を表示するために複数の画像データが連続的に繰り返し送られてくるので、パーソナルコンピュータ17には、一つの画像データを受信する毎に、一つの画像処理プロセスが生成されることとなる。
第5図は、画像処理プロセスの内容を説明するためのフローチャートである。第5図に示されるように、画像処理プロセスは、S101からS107までのステップよりなる。
最初のステップS101では、CPU17aは、この画像処理プロセスより以前に生成された画像処理プロセスの中で最新のものによってRAM17bに記録された画像データ(直前画像データ)を特定し、続いて、その直前画像データと、この画像処理プロセスの処理対象である画像データとの差分を、算出する。なお、2つの画像データの差分を算出する処理については、「土石流検出方法及び土石流検出装置」という発明についての日本特許出願の公開公報である日本特開2000−105137号公報に、解説されている。従って、二つの画像データ間の差分を算出する処理については簡単に説明する。
二つの画像データ間の差分を算出する処理としては、先ず、二つの画像データにおける同じ座標にある画素同士の差分の絶対値を、全ての座標について算出する。続いて、全ての座標のそれぞれについて、その差分が所定の閾値よりも大きいか否かを判別する。そして、所定の閾値よりも大きい場合には、その座標の値を1とし、所定の閾値よりも小さい場合には、その座標の値を0とする。このようにして、二値画像データを生成した後、この二値画像データにおける1の値の画素の個数を計数する。そして、この画素数を、直前画像データと処理対象画像データとの差分とする。
CPU17aは、このような処理を実行することによって、直前画像データと処理対象画像データとの差分を算出した後、ステップS102へ処理を進める。
ステップS102では、CPU17aは、ステップS101において算出した差分が所定の三つの閾値の何れを超えているか否かを、判別する。なお、この所定の三つの閾値は、何れも、監視カメラ13の視野内にある監視対象の平常状態での画像とその監視対象において自然界の変動の規模が高まっている状態での画像との差分に基づいて適宜設定された限界値である。但し、三つの閾値は、互いに異なる大きさとなっている。そして、三つの閾値のうち、最小のものが、自然界の変動の規模が小さいことを表し、閾値が大きくなるにつれて、自然界の変動の規模が大きくなっていくことを表している。つまり、閾値が大きくなるにつれて、危険度が高くなっていくことを表している。
そして、CPU17aは、ステップS101において算出した差分が所定の三つの閾値の何れも超えていなかった場合(S102;NO)には、監視対象が前述の平常状態であるとして、ステップS107へ処理を進め、ステップS101において算出した差分が所定の三つの閾値の何れかを超えていた場合(S102;YES)には、監視対象において自然界の変動の規模が高くなったとして、ステップS103へ処理を進める。
ステップS103では、CPU17aは、ステップS101において算出した差分が前述の三つの閥値のうちのどの閾値まで到達したかを、判別する。そして、当該差分が三つの閾値のうちで最小の第1閾値のみを超えていた場合(S103;第1閾値)には、CPU17aは、ステップS104へ処理を進める。
ステップS104では、CPU17aは、設定変更プログラム172をHDD17hからRAM17bに読み込むことによって、設定変更処理プロセスを生成する。なお、この設定変更処理プロセスは、画像処理プロセスと並行に実行される。そして、CPU17aは、この設定変更処理プロセスに対し、危険度1を示す情報を通知する。通知後、CPU10aは、ステップS107へ処理を進める。
また、ステップS103において、ステップS101で算出した差分が三つの閾値のうちで最小の第1閾値とその次に小さい第2閾値とを超えて最大の第3閾値を超えていなかった場合(S103;第2閾値)には、CPU17aは、ステップS105へ処理を進める。
ステップS105では、CPU17aは、前述したのと同様の手順によって設定変更処理プロセスを生成し、この設定変更処理プロセスに対し、危険度2を示す情報を通知する。通知後、CPU10aは、ステップS107へ処理を進める。
また、ステップS103において、ステップS101で算出した差分が三つの閾値の何れをも超えていた場合(S103;第3閾値)には、CPU17aは、ステップS106へ処理を進める。
ステップS106では、CPU17aは、前述したのと同様の手順によって設定変更処理プロセスを生成し、この設定変更処理プロセスに対し、危険度3を示す情報を通知する。通知後、CPU10aは、ステップS107へ処理を進める。
ステップS107では、CPU17aは、この画像処理プロセスの処理対象である画像データをRAM17bに記憶し、この画像処理プロセスを終了する。なお、この画像処理プロセスは、取得部及び取得手段に相当する。
第6図は、設定変更処理プロセスの内容を説明するためのフローチャートである。第6図に示されるように、設定変更処理プロセスの開始後、最初のステップS201では、CPU17aは、IPスイッチ装置11に対し、画像処理プロセスから通知された危険度に対応するQoS定義テーブル(第3図参照)112を選択して使用するように指示する情報を、送信する。送信後、CPU17aは、設定変更処理プロセスを終了する。なお、この設定変更処理プロセスは、制御部及び制御手段に相当する。
以上に示される処理がパーソナルコンピュータ17において実行されるので、本実施形態の遠隔監視システムは、以下に説明するように、作用する。なお、以下の説明では、第7図を参照すると視覚的に理解し易くなる。
第7図は、光ケーブルの最大帯域の中で音声データ,画像データ,測定値データに配分された最大の配分帯域が表現された概念図である。
まず、或る監視地点ユニット10が設置された監視対象が、自然界の変動の規模が極めて小さい平常状態にあるときには、その監視地点ユニット10のIPスイッチ装置11は、出力帯域を制御しない(S101,S102;NO,S107)。従って、電話機12からの音声データや監視カメラ13からの画像データとともに、観測用計器15からの多くの測定値データや、パーソナルコンピュータ17からの各種のデータが、前述の集中監視センター内の中央制御装置へ送られる。従って、集中監視センター内の担当者は、監視対象にいる担当者と会話できるとともに、監視対象の映像を観察することもできるが、大型スクリーンに表示される各種の測定値に基づいて、監視対象における自然界の変動状態を多角的に監視することができ、さらに、パーソナルコンピュータ17を用いて中央制御装置との間で例えば電子メール等を遣り取りすることもできる。
そして、この監視対象が、自然界の変動の規模が多少大きくなった危険度1の状態(例えば、単位時間当たりの雨量がやや多めとなることによって監視カメラの視界がやや霞んでいる状態、河川の水かさが増している状態、河川の水流が普段よりやや早くなっている状態、噴火口から蒸気が多少噴出されている状態)になると、この監視地点ユニット10のパーソナルコンピュータ17において、画像処理プロセスが、危険度1を示す情報を設定変更処理プロセスへ通知し(S101,S102,S103;第1閾値,S104,S107)、設定変更処理プロセスが、IPスイッチ装置11のIPスイッチングエンジン11eに対し、危険度1に対応するQoS定義テーブル112を選択して使用するように指示する(S201)。
すると、電話機12からの音声データや監視カメラ13からの画像データに対しては、光ケーブルの最大帯域の35%がそれぞれ確保され、観測用計器15からの測定値データに対しては、光ケーブルの最大帯域の30%が確保され、パーソナルコンピュータ17からの各種のデータに対しては、帯域が確保されなくなる(第7図の危険度1を参照)。つまり、危険度が低位レベルにある場合には、音声データや画像データに或る程度の帯域が確保されるとともに、この帯域と同程度の帯域が、測定値データに対しても確保され、パーソナルコンピュータ17と前述の集中監視センター内の中央制御装置との通信が遮断される。従って、集中監視センター内の担当者は、監視対象にいる担当者と会話でき、監視対象の映像を観察することもでき、さらに、大型スクリーンに表示される各種の測定値に基づいて、監視対象における自然界の変動状態を多角的に注意深く監視することができる。
また、この監視対象が、自然界の変動の規模がやや大きくなった危険度2の状態(例えば、単位時間当たりの雨量が多くなることによって監視カメラの視野内が白くなった状態、河川が溢れる寸前にあるような状態、河川の水流が普段よりかなり早くなっている状態、噴火口から蒸気が沢山噴出して当たり一面真っ白な状態)になると、この監視地点ユニット10のパーソナルコンピュータ17において、画像処理プロセスが、危険度2を示す情報を設定変更処理プロセスへ通知し(S101,S102,S103;第2閾値,S105,S107)、設定変更処理プロセスが、IPスイッチ装置11のIPスイッチングエンジン11eに対し、危険度2に対応するQoS定義テーブル112を使用するように指示する(S201)。
すると、電話機12からの音声データや監視カメラ13からの画像データに対しては、光ケーブルの最大帯域の40%がそれぞれ確保され、観測用計器15からの測定値データに対しては、光ケーブルの最大帯域の20%が確保される(第7図の危険度2を参照)。つまり、危険度が中位レベルにある場合には、被災した監視対象での測定値があまり意味をなさなくなるため、測定値データには、あまり多くの帯域が確保されなくなり、その一方で、その監視対象にいる担当者から直接得られる情報やその監視対象の映像から得られる情報の重要性が増すため、測定値データに割り当てられる帯域が減った分、音声データや画像データに割り当てられる帯域が増やされることとなる。
さらに、この監視対象が、自然界の変動の規模が極めて大きくなった危険度3の状態(例えば、単位時間当たりの雨量が極めて多くなることによって監視カメラの視野内での視界がほぼゼロとなった状態、河川の堤防が決壊しているような状態、河川の水流が激流となっている状態、噴火口においてマグマが沸騰している状態)になると、この監視地点ユニット10のパーソナルコンピュータ17において、画像処理プロセスが、危険度3を示す情報を設定変更処理プロセスへ通知し(S101,S102,S103;第3閾値,S106,S107)、設定変更処理プロセスが、IPスイッチ装置11のIPスイッチングエンジン11eに対し、危険度3に対応するQoS定義テーブル112を使用するように指示する(S201)。
すると、電話機12からの音声データや監視カメラ13からの画像データに対しては、光ケーブルの最大帯域の50%が確保され、観測用計器15からの測定値データに対しては、帯域が確保されなくなる(第7図の危険度3を参照)。つまり、危険度が高位レベルにある場合には、測定値についての通信は遮断され、大型スクリーンには、測定値は表示されない。このような災害発生状態では、各種の測定値は、意味をなさないため、測定値が表示されなくても問題ない。逆に、被災地にいる担当者から直接得られる情報や被災地の映像から得られる情報の重要性が非常に高くなっているが、音声データや画像データの帯域が多く確保されているので、音声や画像についての通信が停滞したり遮断されたりすることがない。このため、集中監視センター内の担当者は、被災地における被害状況を的確に把握することができる。
第8図乃至第10図は、IPスイッチ装置11のメモリに格納される三個のQoS定義テーブル112の具体例を、示している。このうち、第8図には、危険度1の時に用いられるQoS定義テーブル112が示されており、第9図には、危険度2の時に用いられるQoS定義テーブル112が示されており、第10図には、危険度3の時に用いられるQoS定義テーブル112が示されている。
第8図乃至第10図の何れにおいても、“class0_max”が、光ケーブルの最大帯域(この具体例では2.4Gbps)のうち、最優先クラスに割り当てられ得る最大の配分帯域(単位は[Mbps])を定義しており、“class1_max”が、光ケーブルの最大帯域のうちの優先クラスに割り当てられ得る最大の配分帯域(単位は[Mbps])を定義しており、“class2_max”が、光ケーブルの最大帯域のうちの非優先クラスに残された最大の配分帯域を定義している。
また、第11図は、IPスイッチ装置11内のクラス分け定義テーブル111の内容を更新する際に中央制御装置によって用いられるシステム定義テーブルの具体例を、示している。このシステム定義テーブルが適用される遠隔監視システムのネットワークは、四つのIPスイッチ装置11から構成されており、第11図のシステム定義テーブルには、これら四つのIPスイッチ装置11の設定事項を定義する欄を示す四つの“node”が、記述されている。そして、各“node”欄における“port1”,“port2”,“port3”には、それぞれ、最優先クラスを示す“class0”,優先クラスを示す“class1”,非優先クラスを示す“class2”が定義されている。前述の集中監視センター内の中央制御装置は、この第11図に示されるようなシステム定義テーブルを用いて、遠隔監視システム内の全てのIPスイッチ装置11のクラス分け定義テーブル111の内容を変更する。
なお、以上に説明した本実施形態の遠隔監視システムでは、各監視地点ユニット10内のパーソナルコンピュータ17にインストールされている画像処理プログラム171及び設定変更プログラム172が、同じ監視地点ユニット10内のIPスイッチ装置11に対し、QoS定義テーブル112の使用を指示していたが、これに限定されるものではない。
例えば、遠隔監視システム内の何れかのIPスイッチ装置11においてQoS定義テーブル112を使用することとなった場合に、そのIPスイッチ装置11が、そのQoS定義テーブル112に対応する危険度を、隣接するIPスイッチ装置11へ通知するようにしても良い。この場合、危険度が通知されたIPスイッチ装置11は、その危険度に応じたQoS定義テーブル112の使用を開始することができるとともに、さらに、隣接するIPスイッチ装置11へその危険度を通知することができる。このように、危険度が隣接のIPスイッチ装置11へと連鎖的に順次通知されると、全ての監視対象からの音声データや映像データの帯域を確保することができるので、一部の監視対象で危険度が高まった際に、集中監視センター内では、全ての監視対象からの映像を途切れなくモニタすることができ、各地の映像を中心に各種の情報を収集することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信品質非保証型のプロトコルに従ったデータの受信を行う複数の入力ポートと、
データの送信を行う少なくとも1つの出力ポートと、
前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータの持つ情報に対応するクラスに振り分けるクラス分け部と、
前記各出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する配分比率を示す比率情報を格納した複数のテーブルを記憶する記憶部と、
何れかのテーブルを使用するように指示する情報を取得する指示取得部と、
前記指示取得部が取得した情報に基づいて前記記憶部内の複数のテーブルの中から選択したテーブルに格納されている比率情報にて示される配分比率にて、前記出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する帯域制御部と
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記各入力ポートから受け取った各データがそれぞれ持つ情報は、前記各入力ポートを識別するための識別情報であり、
前記クラス分け部は、前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータが入力された入力ポートの識別情報に対応するクラスに振り分けることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の中継装置。
【請求項3】
前記各入力ポートを識別するための識別情報は、三個のクラスのうちの何れか一つに対応付けられている
ことを特徴とする請求の範囲第2項に記載の中継装置。
【請求項4】
前記各入力ポートのうち、第1入力ポートには、音声データを出力する電話機が接続され、第2入力ポートには、画像データを出力する監視カメラが接続され、
前記クラス分け部は、前記第1入力ポートから受け取った音声データと、前記第2入力ポートから受け取った画像データとを、異なるクラスにそれぞれ振り分ける
ことを特徴とする請求の範囲第3項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記各出力ポートは、通信品質保証型のプロトコルに従ってデータの送信を行う
ことを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項の何れかに記載の中継装置。
【請求項6】
前記各入力ポートは、イーサネットに従った通信を行い、前記各出力ポートは、SONET/SDHに従った通信を行う
ことを特徴とする請求の範囲第1項乃至第5項の何れかに記載の中継装置。
【請求項7】
通信品質非保証型のプロトコルに従ったデータの受信を行う複数の入力ポートと、データの送信を行う少なくとも1つの出力ポートとを備え、前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータの持つ情報に対応するクラスに振り分ける中継装置においてその出力帯域を制御するための帯域制御方法であって、
制御装置が、前記中継装置の少なくとも1つの入力ポートに入力されるデータと同じデータを通信装置を通じて受信し、受信したデータに基づいて災害の段階を示す制御値を取得し、取得した制御値に応じて、前記中継装置の前記各出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する配分比率を、変化させる
ことを特徴とする帯域制御方法。
【請求項8】
通信品質非保証型のプロトコルに従ったデータの受信を行う複数の入力ポートと、データの送信を行う少なくとも1つの出力ポートとを備え、前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータの持つ情報に対応するクラスに振り分ける中継装置においてその出力帯域を制御するための帯域制御装置であって、
前記中継装置の少なくとも1つの入力ポートに入力されるデータと同じデータを受信する受信部と、
前記受信部が受信したデータに基づいて災害の段階を示す制御値を取得する取得部と、
前記中継装置の前記各出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する配分比率を、前記取得部が取得した前記制御値に応じて変化させる制御部と
を備えることを特徴とする帯域制御装置。
【請求項9】
通信品質非保証型のプロトコルに従ったデータの受信を行う複数の入力ポートと、データの送信を行う少なくとも1つの出力ポートとを備え、前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータの持つ情報に対応したクラスに振り分ける中継装置においてその出力帯域を制御するための帯域制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記中継装置の少なくとも1つの入力ポートに入力されるデータと同じデータを通信装置を通じて受信する受信手段,
前記受信手段が受信したデータに基づいて災害の段階を示す制御値を取得する取得手段,及び、
前記中継装置の前記各出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する配分比率、前記取得手段が取得した前記制御値に応じて変化させる制御手段
として機能させる
ことを特徴とする帯域制御プログラム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記中継装置に対し、前記各出力ポートからデータを出力する際の単位時間当たりの最大データ量をクラス別に配分する配分比率を格納した複数のテーブルの中から一つのテーブルを選択し、選択したそのテーブルに格納されている配分比率にて、前記出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分するように、指示する
ことを特徴とする請求の範囲第9項に記載の帯域制御プログラム。
【請求項11】
前記受信手段は、前記中継装置の少なくとも1つの入力ポートがそれに接続された監視カメラから入力される画像データと同じ画像データを受信し、
前記取得手段は、前記受信手段が受信した画像データとその直前に前記受信手段が受信した画像データとの差分に基づいて制御値を取得する
ことを特徴とする請求の範囲第9項及び第10項に記載の帯域制御プログラム。
【請求項12】
前記取得手段は、レベルの異なる複数の閾値のうち、前記差分が到達した中で最大の閾値を、制御値として取得する
ことを特徴とする請求の範囲第11項に記載の帯域制御プログラム。
【請求項13】
前記取得手段は、レベルの異なる三個の閾値のうち、前記差分が到達した中で最大の閾値を、制御値として取得する
ことを特徴とする請求の範囲第12項に記載の帯域制御プログラム。
【請求項14】
前記中継装置が、前記各入力ポートから受け取ったデータを、それぞれ、三個のクラスの中からそのデータの持つ情報に対応するものとして決定した一個のクラスに、振り分ける
ことを特徴とする請求の範囲第9項に記載の帯域制御プログラム。
【請求項15】
通信品質非保証型のプロトコルに従ったデータの受信を行う複数の入力ポートと、データの送信を行う少なくとも1つの出力ポートとを備え、前記各入力ポートから受け取ったデータをそれぞれそのデータの持つ情報に対応したクラスに振り分ける中継装置においてその出力帯域を制御するための帯域制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記中継装置の少なくとも1つの入力ポートに入力されるデータと同じデータを通信装置を通じて受信する受信手段,
前記受信手段が受信したデータに基づいて災害の段階を示す制御値を取得する取得手段,及び、
前記中継装置の前記各出力ポートから単位時間に出力される最大データ量をクラス別に配分する配分比率、前記取得手段が取得した前記制御値に応じて変化させる制御手段
として機能させる
ことを特徴とする帯域制御プログラムを格納したコンピュータ可読媒体。

【国際公開番号】WO2005/050931
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510749(P2005−510749)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014720
【国際出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】