説明

中間温度適用のための電解質材料、熱電池要素、および熱電池

【課題】KOHとNaOHの共晶調剤物を電解質または電解質-セパレーターとして用いる。
【解決手段】アノード102、および/またはカソード106は、KOHとNaOHの共晶調剤物を含むことができる。電池100は、KOHとNaOHの共晶調剤物を伴う電解質-セパレーター104、アノード、および/またはカソードを含むことができる。電解質-セパレーターにおける電解質は、それを一定の高温適用のためのパイロテクニックデバイスを必要としない熱電池での使用に適するものにする約170℃から約300℃までの融点を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景として、この開示の分野は、概して、熱電池における使用のための電解質材料に関する。本開示はまた、電解質材料を含む電極および電解質の複合物に、そして、電解質材料を含む電池および/または電解質材料を含むカソードおよび/またはアノードに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電池は、比較的長い貯蔵寿命、高エネルギー密度を有し、比較的簡単な手入れしか必要としない傾向を有し、そして比較的高温に耐えることができる。熱電池はまた、比較的短い期間にわたり一気に出力を提供する傾向がある。一気は、1秒未満から1時間またはそれよりも長く、典型的には約1ワットまたはそれよりも少ないものからキロワットにまでわたる出力で及ぶことがある。そのような特性は、熱電池を軍部(たとえば、ミサイル誘導システム用の電池)および宇宙探査用途に適したものにする。熱電池はまた、電気自動車のような他の用途でも用いることができる。
【0003】
典型的な熱電池は、アノードと、カソードと、周囲温度で非導電性である固体電解質が含まれる電解質-セパレーターと、熱源を電池に提供するパイロテクニック材料(例は、ヒートペレットで、それはたとえば、Fe-KClO4粉末を含むことができる。)とを含む。電池操作が望まれるとき、外部刺激が電池に適用される。たとえば、電流は、電気マッチまたは電気活性なスキブを誘発するために、電池に適用することができ、または機械的な力(例は、機械的衝撃)は、震動プライマーを誘発するために適用することができる。外部刺激は、パイロテクニック材料に火をつけ、そして熱を帯び始める原因になる。パイロテクニック材料から生じる熱は、予め固体電解質が溶け、そして導通するようになるようにし、それは電池が望ましい用途のために出力を提供することを可能にさせる。
【0004】
熱電池のアノードは、通常、アルカリまたはアルカリ土類金属または合金から形成される。典型的なアノードには、リチウム金属またはリチウム合金、たとえば、リチウムアルミニウム、リチウムシリコン、またはリチウムホウ素のようなものが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱電池と共に使用するための電解質は、塩化リチウムと塩化カリウムとバインダー(バインダー)〔たとえば、MgO、ヒュームドシリカ(二酸化ケイ素)またはカオリン〕の共晶混合物(即ち、個々の構成要素の各々よりも低い温度で溶融する混合物)を含むことが多く、それは溶けることにより、たとえば、毛管作用、表面張力、またはそれらの双方によって熱電池アセンブリー(組立体)内での電解質の含有に関与する。典型的な熱電池電解質と共に、バインダーは、電解質材料が電池中に分散するのを防ぎ、それはセルでの望ましくないシャント(分路)または短絡を引き起こすものである。不運にも、バインダーはイオン伝導に比較的耐性を示す傾向があり、そしてこのように、バインダーの包含は電池のインピーダンスを上昇させることがある。
【0006】
熱電池のためのカソード物質は、さまざまなデザインパラメーターに従って変動することがあり、そして一般には金属酸化物または金属硫化物が含まれる。例として、酸化鉄(Fe3O4)、二硫化鉄(鉄ジスルフィド)(FeS2)または二硫化コバルト(CoS2)が、カソード物質として使われルことが多い。
【0007】
熱電池はしばしば、電解質、カソード、および熱源の各々が、ウエハーに形成されるように、ペレット技術を用いて形成される。この場合、それぞれのセル構成要素の化学物質は粉体に加工され、そして粉体はウエハー(またはペレット)を形成するために一緒に加圧される。各々の構成要素は別々の部分として形成することができ、またはアノードおよび/またはカソードはその構成要素の伝導率を改善するために電解質材料を含む(即ち、それで満たされる)ことができる。アノードおよびカソードにおいて電解質材料は、バインダーを含んでよく、または含まなくてよい。
【0008】
熱電池は、単一の一連の積重ね(スタック)セルまたは一連の積重ねセルの2またはそれよりも多くの平行スタックからなることができる。セルスタック(群)は、ステンレス鋼で形成することができる容器中に置かれ、できるだけ完全に絶縁することができ、そして容器は、たとえば、気密シールを形成するために、溶接によってのように密閉される。電気接続は、標準的なガラスを通して金属シールに提供することができる。
【0009】
酸化銀亜鉛(SOZ)電池は一般に、Ag2OまたはAgOカソードおよびZnアノードから構成される。SOZ電池で普通に使われる電解質は、KOHまたはNaOHの水溶液である。SOZ電池は高いエネルギー密度を有し、柔軟な構成を可能にさせ、優れた電圧制御を有し、そして安全で、かつ信頼できることが証明されていた。しかし、SOZ電池は概して2〜5年の貯蔵寿命があるだけで、そしてSOZ電池は一般に、たとえば、4℃と70℃の間でのような低温で動作される。このように、SOZの化学性質は、少なくとも部分的に、上記の欠陥のため、熱電池において用いられなかった。
【0010】
引き続く必要性が、信頼できる低温熱電池材料のために存在する。継続した必要性はまた、そのような材料を組み込み、そのような改善された性能を示す、たとえば、熱電池のような一次電池のために存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要として、熱電池のカソードおよびアノードを含むもので使用するための改良された電解質材料を提供する。概して、電解質として使用されるKOHとNaOHの共晶調剤物が提供され、電解質-セパレーターにおいて、アノードにおいて、および/またはカソードにおいて、SOZ電池の信頼性および性能を熱電池に付与する。
【0012】
ある見地においては、電解質はKOHとNaOHの共晶調剤物を含むことが提供される。共晶調剤物は、約57重量%KOHおよび約43重量%NaOHを含むことができる。
【0013】
別の見地では、電解質-セパレーターは、KOHとNaOHの共晶調剤物を含むことが提供される。共晶調剤物は、約57重量%のKOHおよび約43重量%のNaOHを含むことができる。電解質-セパレーターは、MgOのような、結合剤(バインダー)を含むことができる。電解質-セパレーターは、電解質-セパレーターの全体重量に関してバインダーの約20重量%〜約50重量%を含むことができる。
【0014】
別の見地では、カソードは、KOHとNaOHの共晶調剤物を含むことが提供される。共晶調剤物は、約57重量%のKOHおよび約43重量%のNaOHを含むことができる。カソードはまた、Ag2O、PbO2、およびMnO2のような、他の材料を含むことができる。カソードはカソードの全重量に対して、他の材料の約70重量%〜約85重量%を含むことができる。カソードはバインダーを含んでもよく、または含まなくてもよい。
【0015】
別の見地では、アノードは、KOHとNaOHの共晶調剤物を含むことが提供される。共晶調剤物は、約57重量%のKOHおよび約43重量%のNaOHを含むことができる。アノードはまた、他の材料、たとえば、Znのようなものを含んでもよい。アノードはアノードの全重量に対して、他の材料の約70重量%〜約90重量%を含むことができる。アノードはバインダーを含んでもよく、または含まなくてもよい。
【0016】
別の見地では、熱電池は、アノード、カソード、および電解質-セパレーターを含むことが提供される。アノード、カソード、および電解質-セパレーターの少なくとも一つは、KOHとNaOHの共晶調剤物を含む。
【0017】
KOHとNaOHの共晶調剤物を用いる電解質-セパレーターおよび電極は、約170℃から約300℃までの電解質融点を有する電池または電池要素を提供することができ、それは、一定の高温用途におけるパイロテクニックまたは他の活性化機構を必要とせずに、電池または電池要素を、熱電池または電池要素として使用するために適したものにする。170℃〜300℃の電解質融点は、慣習的な熱電池の電解質融点よりもはるかに低い。
【0018】
上述の見地に関連して述べた特長の様々な改良がある。さらなる特長はまた、上記の見地に組み込むことができる。上記の見地、改良点、および追加的特長は、個別または任意の組み合わせで存在することができる。例として、例示した具体化のいずれかに関連して以下に説明する様々な特長を、本開示の上記見地中に、単独または任意の組み合わせのいずれかで組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本開示の種々の具体例に従った電気化学的装置を例示する。
【図2】1.0Aおよび200℃での具体例による熱電池セルの電圧痕跡図を例示する。
【図3】0.2Aおよび200℃での具体例による熱電池セルの電圧痕跡図を例示する。
【0020】
熟練した技術者は、図中の要素が単純さおよび明快性のために例示され、そして必ずしも一定の比率で描かれてはいないと認める。たとえば、図中の若干の要素の寸法は、本開示の具体化の理解が高められるのに役立つように、他の要素と比較して誇張することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
具体化の詳しい説明として、本開示は、概して、熱電池の構成要素への包含に適する電解質調剤物に、そして電解質材料を含む電池に関する。図1は、種々の具体化に従った熱電池100を例示し、そしてアノード102、電解質-セパレーター104、およびカソード106を含む。本開示の電解質材料は、これらの電池構成要素の何らか、またはすべてにおいて構成物質として適切である。
【0022】
ここに用いるように、「電気化学的装置(デバイス)」は、さもなければ、電池(そして若干の具体化では、「熱電池」)、キャパシター、セル、電気化学的セル、またはその種の他のものと称されることがある。これらの参照が制限されないことを理解すべきであり、そして電極および電解質間で電子移動に関与するどんな装置も、本開示の範囲内で考えられる。さらに、電気化学的装置は、負荷にエネルギーを供給することができる単一の、または複数の関係のある電気化学的装置、電気化学的セル、電池またはキャパシターに言及することができ、そしてここでの少しの特定の装置への参照の何らも、どんな形であれ、その開示を制限するために考慮されない。本開示の一つまたはそれよりも多くの具体例において、電気化学的装置は熱電池である。
【0023】
熱電池100の構成要素は、ペレット(即ち、ウエハー)を生産するために、機械プレスの操作を介して粉体を固めることによって調製することができる。加圧された構成要素を用いる熱電池は、特定の電池設計および用途に適用できる場合、スタック、いろいろな構成要素、たとえば、アノード102、電解質-セパレーター104、およびカソード106、そして、随意に、熱源ペレットのようなものにおいて組み立てることによって用意することができる。アノード102、電解質-セパレーター104、およびカソード106の一つずつの組立体(アセンブリー)は、単一の電気化学的セルを含む。複数のセルは、熱電池を生産するために、連続して積み重ねることができる。このことに関して、図1で示すもの以外の熱電池設計が、本開示の範囲を離れないで用いられうることを理解すべきである。加えて、積重ねられるペレットへの粉体固化以外の方法を、熱電池構築のために用いることができる。これには、たとえば、ゼリーロール電池で用いられるもののようなペレットまたは非ペレット構成要素を得るために、テープキャスティング(鋳造)、ウェブコーティングまたはペースト操作のような方法が含まれる。
【0024】
KOHとNaOHの共晶調剤物は、電解質-セパレーター、カソード、および/またはアノード中の電解質として用いることができる。様々な見地において、KOHとNaOHの共晶調剤物は、約7重量%から約85重量%までのKOHを含むことができ、および約15重量%から約93重量%までのNaOHを含むことができる。たとえば、KOH対NaOHの重量比は、約40:60重量%、たとえば、約41:59重量%、約42:58重量%、約43:57重量%、約44:56重量%、約45:55重量%、約46:54重量%、約47:53重量%、約48:52重量%、約49:51重量%、約50:50重量%、約51:49重量%、約52:48重量%、約53:47重量%、約54:46重量%、約56:44重量%、約57:43重量%、約58:42重量%、約59:41重量%、約60:40重量%、約61:39重量%、約62:38重量%、約63:37重量%、約64:36重量%、または約65:35重量%のようなものでありうる。
【0025】
電解質-セパレーター、カソード、および/またはアノードでの電解質として用いられるKOHとNaOHの共晶調剤物は、約170℃から約330℃までの融点を有することができる。たとえば、KOHとNaOHの共晶調剤物は、約160℃から約315℃まで、約160℃から約310℃まで、約165℃から約305℃まで、約170℃から約300℃まで、約175℃から約295℃まで、約180℃から約290℃まで、約185℃から約285℃まで、約190℃から約280℃まで、195℃から約275℃まで、約200℃から約270℃まで、約205℃から約265℃まで、約210℃から約260℃まで、約215℃から約255℃まで、約220℃から約250℃まで、約225℃から約245℃まで、約230℃から約240℃まで、または約235℃の融点を有することができる。
【0026】
このような融点を有する共晶調剤物は、熱電池の、電解質-セパレーターにおいて、カソードにおいて、および/またはアノードにおいて電解質として用いることができる。共晶調剤物の比較的低い融点は、上記の熱電池の構成要素が、高温適用、たとえば、坑内採掘操作(downhole mining operations)のようなものの間に、パイロテクニック装置、または他の活性化構成要素の必要性を伴わずに、活性化されること(例は、溶融)を可能にすることができる。
【0027】
電解質-セパレーターは、所望の比率のKOHとNaOH(KOH /NaOH共晶)を、バインダー〔例は、MgO、Y2O3、Al2O3、BN、AlN、ヒュームドシリカ、またはクレイミネラル(粘土鉱物)でカオリナイト(カオリナイトが豊富であることが知られているカオリン粘土を含む)のようなもの〕と物理的に混合すること、随意に、混合したKOH/NaOHの共晶およびバインダーを高温(例は、約300℃±50℃)で溶融すること、溶融したKOH/NaOHの共晶およびバインダーを粉砕(磨砕)すること、および随意に粉砕生成物を篩に通過させることによって形成することができる。
【0028】
バインダーの任意の望ましい量を電解質-セパレーターにおいて用いることができる。一つの見地では、電解質-セパレーターは、電解質-セパレーターの合計重量に対してバインダーの少なくとも30重量%を含有することができる。具体化では、電解質-セパレーターは、たとえば、電解質-セパレーターの合計重量に対して、重量で約5%、重量で約10%、重量で約15%、重量で約20%、重量で約25%、重量で約30%、重量で約35%、重量で約36%、重量で約37%、重量で約38%、重量で約39%、重量で約40%、重量で約41%、重量で約42%、重量で約43%、重量で約44%、重量で約45%、重量で約50%、または重量で約55%のバインダーを含むことができる。
【0029】
出発物質は、粉体または粒状の形態のいずれであってもよく、そして吸収された水分(もしあれば)のある量を除去するのに十分な温度で乾燥させることができる。水分は、極力経済的に実用的で、そして選択された製造プロセスを考慮してできるだけ実用的に除去することができる。概して、水分の量はNaOHまたはKOHのどちらのアノード物質の酸化または潮解の許容できない量を起こさないレベルにまで低減する必要がある。電解質-セパレーターの出発物質は、材料から水分を除去するために、たとえば、約100℃から約300℃までの温度に加熱することができる。
【0030】
物理的混合は、任意の機械的混合方法、たとえば、手で出発物質を撹拌し、タービュ(Turbula)ブレンダーにおいて原料をかき混ぜ、ジャーミル上で容器を回転させ、その他を介して進行させることができる。混合(ミキシング)は、出発物質の合計量および混合の仕方に応じて、15分から約2時間までに進行させることができる。
【0031】
混合が完了した後、混合粉体を、混合容器から取り出し、そしてKOH/NaOHの共晶およびバインダー材料を高温で融合するのに適したるつぼ中に置くことができる。模範的なるつぼは、KOH/NaOHの共晶およびバインダー材料を溶融させ、溶融した電解質-セパレーター材料の腐食作用に耐性であることが必要とされる高温に耐えることができる耐熱材料で形成することができる。KOH/NaOHの共晶およびバインダー材料は、少なくとも混合物のバルクを溶融するのに十分な温度、たとえば、少なくとも約200℃または少なくとも約300℃または少なくとも約350℃でさえのようなもので溶融される。溶融プロセスは、KOH/NaOHの共晶およびバインダーの均質な混合物を形成することができる。KOH対NaOHの比率に応じて、混合物の一部分のみが完全に溶融プロセス中に溶融することがある。
【0032】
溶融後、得られた溶融KOH/NaOHの共晶物質およびバインダーを粉にすることができる。粉砕は、手で少量についてモルタル-乳棒を用い、または大量の場合、クエーカーミルなどのような大型研削盤(グラインダー)を用いてどちらでも行うことができる。粉砕後、粉体KOH/NaOHの共晶物質を、磨砕ステップでは見逃された任意の大きな粒子を除去するためにスクリーンを通過させることができる。大きな粒子は、スクリーンを通過し、そのサイズを減らすために二回目に磨砕されることができる。スクリーンのメッシュサイズは、ユーザーの好みや用途に応じて可変である。
【0033】
概して、粉砕した電解質-セパレーターの粒子の大きさは絶対的ではない。しかし、粒径は、この技術における熟練者(当業者)によって理解される電池設計に依存して、典型的な電池製造操作と整合的であるべきである。たとえば、テープキャスティング方法は、概してペレットを加圧する方法よりも小さい粒子を用いる。ペレットを加圧する方法が電解質-セパレーターを形成するために用いられるとき、電解質-セパレーターの粒子は、まだそれらがパンチとダイ(鋳型)との間のギャップを浸透しないように十分な大きさであるが、ダイの適切な充填を可能にするのに十分小さいようにスクリーニング(選別)を行うべきである。テープキャスティング法では、粒子は薄いテープのキャスティングを可能になるのに十分小さくなければならない。適切な粒径範囲は、当業者によって難なく決定することができる。
【0034】
結果として生じる粉体は、混合、融合、粉砕、および篩別後、電解質-セパレーターとして使用するために次いで、ペレット(即ち、ウエハー)に加圧することができる。ペレットは、粉体材料がペレットダイに導入されて平らにされる(機械的に、または手のどちらでもで)液圧プレスによって形成することができる。液圧パンチは下げられ、そして粉体をペレット(即ち、ウエハー)に圧縮する。造粒圧は絶対的でなく、しかし、造粒機材において機材の機械的限界の範囲内(例は、パンチおよびダイ材料)で最も高い能力の圧力の近くの圧力を用いるのが好ましい。
【0035】
アノード物質は、SOZ電池における使用に適する任意の材料を含むことができる。アノードは、亜鉛または亜鉛合金、たとえば、Ba-Zn、Ca-Zn、Cd-Zn、Ce-Zn、MgZn、Ni-Zn、Sb-Zn、またはYb-Zn合金のようなものを含むことができる。亜鉛または亜鉛合金は、典型的に粉末の形態である。熱電池の性能を改善するため、たとえば、アノード物質の所定の量のために電池の寿命を延ばすように、アノードはアノード-電解質複合物を形成するように「満たされる(flooded)」ことができ、そこでは電解質が、アノード物質粉体と混合され、そして加圧されるアノードペレットの一部である。満たされることで、イオンがちょうどアノードの内部の端からでなく、アノードペレットのバルクからも流れることを可能にする。
【0036】
アノードが満たされると、アノード-電解質複合物は、任意の機械的な混合方法、たとえば、手によって出発物質を撹拌し、タービュブレンダーにおいて原材料をかき混ぜ、容器をジャーミル上に転がし、またはその種の他のものによってもKOH/NaOHの共晶およびアノード物質を混合することによって形成することができる。混合は、出発物質の合計量および混合の仕方に応じて、15分から約2時間まで続行することができる。
【0037】
一つの見地において、アノード-電解質複合物は、アノード-電解質複合物の合計重さに対して、少なくとも10重量%のKOH/NaOHの共晶を含むことができる。たとえば、アノード-電解質複合物には、以下のものを含むことができる。すなわち、アノード-電解質複合物の合計重さに対して、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、または約50重量%のKOH/NaOHの共晶である。KOH-NaOH共晶構成要素を含むアノードは、バインダー材料を含んでよく、または含まなくてもよい。
【0038】
アノード物質または混合したアノード-電解質複合物は、アノードとしての使用のためのペレット(即ち、ウエハー)に加圧することができる。ペレットは、粉体材料をペレットダイ中に導入し、そして平らにする(機械的に、または手でのどちらでも)液圧プレスによって形成することができる。液圧パンチは下げられ、そして粉体をペレット(即ち、ウエハー)に圧縮される。ペレット化の圧力は絶対的でないが、しかし、ペレット化器材において、器材の機械的限界の範囲内で最も高い能力の圧力の近くの圧力を用いるのが好ましい(例は、パンチおよびダイ材料)。
【0039】
粉体が混合され、そして加圧されるように、カソード物質はアノード物質と同じか、または同様な方法で調製することができる。開示の種々の具体化に従って、カソードはカソードにおける活物質として金属(例は、Ag、Pb、またはMn)または金属酸化物(例は、Ag2O、PbO2、MnO2)を含む。
【0040】
アノード粉体と同様、カソード粉体は、電池性能を改善するように満たされたカソードを提供するために、電解質と混合することができる。カソードが満たされると、任意の機械的混合方法によってでも、KOH/NaOHの共晶およびカソード物質を混合することによって、カソード-電解質複合物を形成することができる。一つの見地おいて、カソード-電解質複合物は、カソード-電解質複合物の合計重さに対して、少なくとも15重量%のKOH/NaOHの共晶を含むことができる。たとえば、カソード-電解質複合物には、以下のものが含まれる。すなわち、カソード-電解質複合物の合計重さに対して、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、または約40重量%、または約45重量%、または約50重量%のKOH/NaOHの共晶である。次いで、カソード物質または混合されたカソード-電解質材料は、カソードとして用いるために、ペレット(即ち、ウエハー)に加圧することができる。KOH-NaOH共晶構成要素は、バインダーを含んでよく、または含まないでよい。
【0041】
一旦加圧された構成要素がペレットに固化されると、熱電池を、スタックにおいて、アノード102、電解質-セパレーター104、およびカソード106が含まれるいろいろな構成要素を組み立てることによって用意することができる。特定の電池設計に適用できるなら、熱源ペレットは随意に、スタックに加えることができる。アノード102、電解質-セパレーター104、およびカソード106の一つずつの組立体は、単一のセルを構成する。複数のセルは、熱電池を生産するために、連続して積み重ねることができる。電解質-セパレーター104の融解温度、またはそれよりも高い温度を有する環境において電池を用いる場合、熱源ペレットを含むことは必要でない。
【実施例】
【0042】
以下記載の次の非制限的な例は、本開示の一定の模範的な具体化のいろいろな局面の実例である。その中で反映される組成、方法およびいろいろなパラメータは、本開示の種々の見地および具体化を例証することだけを意図し、およびクレームの範囲を制限することを意図しない。
【0043】
例1
【0044】
KOHとNaOHの共晶調剤物を含む電解質-セパレーターおよびカソード有するセルのテスト。
【0045】
電解質材料として、56.9:43.1重量%のKOH対NaOHの比率を有するKOHおよびNaOHの共晶調剤物を用いて、熱電池を用意する。
【0046】
KOHおよびNaOHの上記比率を秤量し、そしてKOH/NaOHの共晶調剤物およびMgOバインダーの合計重さに対して40重量%でMgOバインダーを添加することによって、電解質-セパレーターを調製し、秤量およびすべての以降の操作を、乾燥室で実行する。粉体を、三十(30)分間、ロールミルにおいて混合する。混合後、混合したKOH/NaOHの共晶-バインダー粉体をアルミナるつぼへ移す。混合したKOH/NaOH共晶-バインダー粉体を、二(2)時間300℃で溶融する。融解材料を取り出し、室温に冷却し、そしてすり鉢およびすりこぎを用いて磨砕する。粉砕した粉体を、標準的な方法を用いてペレットに加圧する。
【0047】
上記KOH/NaOH共晶調剤物(バインダーを伴わない)および酸化銀粉体を混合することによって、酸化銀-電解質カソードを調製する。KOH/NaOH共晶調剤物の三十(30)重量%を、非溶融粉体として、粉末状酸化銀に加える。KOH/NaOH共晶の重量百分率は、KOH/NaOH共晶および酸化銀粉体の合計重さに基づく。混合は三十(30)分間ロールミルにおいて実行し、そして混合粉体を標準的な方法を用いてペレットに加圧する。
【0048】
単一セルテストを、金属格子上での標準的なSOZ亜鉛アノード、加圧された電解質-セパレーターペレット、および加圧された酸化銀カソードペレットを用いて実行する。セルは200℃で2つの加熱したプラテンの間での不活性雰囲気グローブボックス中に置いた。図2はこの例に従う単一セルの放電プロファイルを示す。〜1.5VのOCV(開路電圧)から負まで落ち、回復し、そしてほとんど五(5)分間、〜1.2Vでの1Aベース負荷で操作する前、電流が5Aパルスで六十(60)秒おきに適用されるとき、セルは初期電圧ディップを有する。
【0049】
例2
【0050】
KOHとNaOHの共晶調剤物を含む電解質-セパレーター、アノード、およびカソードを有する電池のための電圧痕跡。
【0051】
例1で用いる比率を有するKOHとNaOHの共晶調剤物を用いて、単一セルを造る。MgOバインダーがKOH/NaOH共晶調剤物の合計重さに対して45重量%で存在したことを除いて例1の電解質セパレーターと同じ様式で電解質-セパレーターを調製し、秤量およびすべてのその後の操作を乾燥室で実行する。
【0052】
この例で用いるカソードは、酸化銀粉体が、KOH/NaOH共晶および酸化銀の合計重さに対して非溶融KOH/NaOH共晶の20重量%と混合されることを除き、例1のカソードと同様に形成される。
【0053】
粉末状の亜鉛と、KOH/NaOH共晶および亜鉛の合計重さに対して例1のKOHとNaOHの非融解共晶調剤物の15重量%とを混合することによって、アノードを調製する。混合は三十(30)分間ロールミルにおいて実行し、そして混合粉体は標準的な方法を用いてペレットに加圧する。
【0054】
単一セルテストに従って、ペレットを互いに接触させて保持するために、セルスタックを圧縮下に200℃の温度まで加熱する。0.2Aの電流引き込みを適用する。図3は、この例に従う単一セルの放電プロファイルを示す。単一セルは、およそ2,300秒間〜1.2Vより上で駆動した。単一セルテストは寿命を短くされることなく、または異常に短縮した寿命を経験することなく、そして熱電池において電解質-セパレーターペレットとして役立つために、電解質の有用性を示す。
【0055】
本開示のいろいろな原理を具体例で記述した。しかし、本開示の実践において用いる上記の調剤物、割合、要素、材料、および構成要素の多くの組合せおよび修飾は、特に記述されないものに加えて、変動することができ、そして特にそれらの原理から離れないで特定の環境および操作の必要条件に適合することができる。本開示の他の変形および修飾はこの技術の通常の技量を有する者に明らかであり、そしてそれはそのような変形および修飾がこの開示によって保護されるという意図である。
【0056】
本開示またはその好適例(群)の要素を導入するとき、冠詞「a(ある)」、「an」、「the(その)」は、1またはそれよりも多い要素があることを意味することを意図する。用語「含み」、「包含し」および「有し」は、リストされた要素以外のさらなる要素があるかもしれないことを含めて、およびそれを意味することを意図する。
【0057】
いろいろな変化が本開示の範囲から離れないで上記の機器および方法において行うことができるので、上記の説明に含まれ、添付の図に示されるすべての事項が例示として解釈され、そして制限的意義でないことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
KOHとNaOHの共晶調剤物
を含む電解質材料であり、周囲温度で固態である、電解質材料。
【請求項2】
KOHとNaOHの共晶調剤物においてKOH対NaOHの比率は約40:60重量%から約65:35重量%までである、請求項1に従う電解質材料。
【請求項3】
KOHとNaOHの共晶調剤物においてKOH対NaOHの比率は約57:43重量%である、請求項2に従う電解質材料。
【請求項4】
請求項1の電解質材料、および
バインダー
を含む、電解質−セパレーター。
【請求項5】
バインダーは、MgO、Y2O3、Al2O3、BN、AlN、ヒュームドシリカ、およびカオリンからなる群より選ばれる、請求項4に従う電解質−セパレーター。
【請求項6】
バインダーはMgOである、請求項4に従う電解質−セパレーター。
【請求項7】
電解質−セパレーターは電解質−セパレーターの合計重量に関して少なくとも約20重量%のバインダーを含む、請求項4に従う電解質−セパレーター。
【請求項8】
電解質−セパレーターはKOHとNaOHとバインダーの共晶調剤物の均質な混合物である、請求項4に従う電解質−セパレーター。
【請求項9】
約170℃〜約300℃の融点を有する、請求項1に従う電解質材料。
【請求項10】
カソード物質またはアノード物質、
KOHとNaOHの共晶調剤物が含まれる電解質材料、および
随意のMgOバインダー
を含む複合電極−電解質。
【請求項11】
KOHとNaOHの共晶調剤物においてKOH対NaOHの比率は約40:60重量%から約65:35重量%までである、請求項10に従う複合電極−電解質。
【請求項12】
KOHとNaOHの共晶調剤物においてKOH対NaOHの比率は約57:43重量%である、請求項11に従う複合電極−電解質。
【請求項13】
カソード物質を含み、カソード物質は金属酸化物である、請求項10に従う複合電極−電解質。
【請求項14】
カソード物質は、酸化銀、二酸化鉛、および二酸化マンガンからなる群より選ばれる、請求項13に従う複合電極−電解質。
【請求項15】
カソード物質は酸化銀である、請求項14に従う複合電極−電解質。
【請求項16】
カソード物質を含み、カソード物質は酸化銀である、請求項12に従う複合電極−電解質。
【請求項17】
複合電極−電解質は電極−電解質の合計重量に関して共晶調剤物の少なくとも15重量%を含む、請求項14に従う複合電極−電解質。
【請求項18】
アノード物質を含み、アノード物質は亜鉛または亜鉛合金である、請求項10に従う複合電極−電解質。
【請求項19】
複合電極−電解質は、電極−電解質の合計重量に関して、共晶調剤物の少なくとも10重量%を含む、請求項18に従う複合電極−電解質。
【請求項20】
アノード物質を含み、アノード物質は亜鉛または酸化亜鉛である、請求項12に従う複合電極−電解質。
【請求項21】
アノード物質、
カソード物質、および
KOHとNaOHの共晶調剤物、およびバインダーが含まれる電解質−セパレーター
を含む、電池。
【請求項22】
KOHとNaOHの共晶調剤物においてKOH対NaOHの比率は約40:60重量%から約65:35重量%までである、請求項21に従う電池。
【請求項23】
KOHとNaOHの共晶調剤物においてKOH対NaOHの比率は約57:43重量%である、請求項22に従う電池。
【請求項24】
バインダーは、MgO、Y2O3、Al2O3、BN、AlN、ヒュームドシリカ、およびカオリンからなる群より選ばれる、請求項21に従う電池。
【請求項25】
バインダーはMgOである、請求項21に従う電池。
【請求項26】
電解質−セパレーターは電解質−セパレーターの合計重量に関して約40重量%のバインダーを含む、請求項21に従う電池。
【請求項27】
カソード物質は、
KOHとNaOHの共晶調剤物、
酸化銀、二酸化鉛、および二酸化マンガンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物、および
随意のバインダー
を含む、請求項21に従う電池。
【請求項28】
少なくとも一種の化合物は酸化銀である、請求項27に従う電池。
【請求項29】
カソードはカソードの合計重量に関して共晶調剤物の少なくとも15重量%を含む、請求項27に従う電池。
【請求項30】
アノード物質は、
KOHとNaOHの共晶調剤物、
亜鉛または亜鉛合金、および
随意のバインダー
を含む、請求項21に従う電池。
【請求項31】
アノードはアノードの合計重量に関して共晶調剤物の少なくとも10重量%を含む、請求項30に従う電池。
【請求項32】
アノード物質は、
KOHとNaOHの共晶調剤物、
亜鉛または亜鉛合金、および
随意のバインダー
を含む、請求項27に従う電池。
【請求項33】
KOHとNaOHの共晶調剤物においてKOH対NaOHの比率は約57:43重量%であり、
カソードはカソードの合計重量に関して共晶調剤物の少なくとも15重量%を含み、
アノードはアノードの合計重量に関して共晶調剤物の少なくとも10重量%を含む、請求項32に従う電池。
【請求項34】
電解質−セパレーターにおいて電解質の融点は約170℃から約300℃までである、請求項21に従う電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−69689(P2013−69689A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−208572(P2012−208572)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(510238959)イーグルピッチャー テクノロジーズ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】