説明

丸葉留紅草抽出物を含有する糖尿病治療用医薬組成物

本発明は、丸葉留紅草(Quamoclit angulata)抽出物を含有する糖尿病及びその合併症の治療用医薬組成物に関し、より詳細には、丸葉留紅草抽出物及びこれを含有する糖尿病及びその合併症の予防または治療用医薬組成物、老化防止または遅延用医薬組成物及び癌の予防または治療用医薬組成物に関するものである。本発明に係る組成物は、優れた血糖降下、インシュリン分泌促進、尿蛋白阻害作用、及び水晶体混濁度減少効果を示し、糖尿病及びこれによる各種合併症の予防または治療に優れた効果を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸葉留紅草(Quamoclit angulata)抽出物を含有する糖尿病及びその合併症治療用医薬組成物に関し、より詳細には、丸葉留紅草抽出物及びこれを含有する糖尿病及びその合併症の予防または治療用医薬組成物、老化防止または遅延用医薬組成物及び癌の予防または、治療用医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病(diabetes)とは、インシュリンの分泌欠陥またはインシュリン作用の欠陥から起因した慢性高血糖症(hyperglycemia)の特徴を表す多重的病因の代謝障害のことをいい、血中のブドウ糖が異常に高い状態が長期間持続する場合、慢性的な代謝障害とこれに係る慢性的血管損傷で種々の合併症が発生する。
【0003】
糖尿病は、代表的な成人性代謝疾患で、世界人口の約5%が病んでおり、それによる人命的、経済的損失は実に莫大なものである。糖尿病患者の多くは、経口用治療剤を服用しているが、現在まで安全な治療剤が開発されていないのが実情である。インシュリン抵抗性(insulin resistance)が、最も重要な機序的原因として知られているが、正確な機序はいまだに明確ではなく、ただ遺伝的な素因と環境の複合的な原因が作用することが明らかになっている。糖尿病は、世界的に3番目の死亡原因である病気で、2010年まで約2億5千万人の糖尿病患者が予想され、国内の場合にも継続的な増加が予想されている。国内死亡原因中7番目に高く、全体糖尿病患者の90%以上を占めているインシュリン非依存性糖尿病(non-insulin dependent diabetes,NIDDM)は、主に40代以後に発病して、成人型糖尿病と呼ばれ、インシュリンを十分に生成させることができないか適切に利用できないことによって引き起こされる代謝障害である。NIDDMの発病原因は、明らかになっていないが、西洋化された食生活及び生活方式等の環境的要因と肥満及び運動不足のような遺伝的な要因が全て働くものと考えられる。NIDDMは、通常、食事療法及び運動療法の治療を先に試みて、この方法による治療効果が充分でない場合、一般に薬物が利用されるが、多くの場合、インシュリンが用いられる。
【0004】
インシュリンは、食事療法と経口血糖降下剤で血糖が調節されない患者に必要であるが、インシュリンは蛋白質であるため、消化管では加水分解されて、非活性化されるため、口腔では摂取できず、静脈や皮下内に注射しなければならない短所がある。
【0005】
経口血糖降下剤は、細胞のインシュリンレセプターの感度を向上させて、すい臓を刺激してインシュリンの分泌を促すため、NIDDM患者の血糖を調節するために用いられる。
【0006】
しかし、NIDDMの治療のための経口治療法は、低血糖症、吐き気、嘔吐、下痢、発疹などを起こし、特に致命的な乳酸アシドーシスのような深刻な副作用を引き起こす。この他にも経口血糖降下剤は、長期間使用時の心血管系障害や胃腸管及び肝の障害を誘発させるため、長期間の使用は推奨されない。
【0007】
このような欠点及び副作用があるため、現在の治療剤において、満足できる効能を示すと共に安全性が高く副作用の側面においても安心であり、全ての糖尿病患者に適用できる薬物が殆どないため、糖尿病、特にNIDDMを治療するためのより効率的な薬物の開発が切に求められている。
【0008】
糖尿病にかかった後10年が経つと、体内のほぼ全器官が損傷を受けて、合併症が誘発される。このような合併症中、急性合併症としては、低血糖症、ケトン酸血症、高浸透圧性非ケトン性高血糖症、高血糖性昏睡、糖尿病性酸血症、低血糖症等が挙げられ、慢性合併症としては、糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎疾患、糖尿病性神経障害、心血管系合併症、ウイルス感染等が挙げられる。慢性糖尿病性腎症は、血液透析治療及び末期腎不全の最も重要な原因になっており、糖尿病性白内障は、失明を招いて最終的には死に至る。
【0009】
このような糖尿病合併症を誘発する機序としては、大きく蛋白質の非酵素的な糖化反応(nonenzymatic glycation of protein)、及びポリオール経路(polyol pathway)等で説明されている。
【0010】
蛋白質の非酵素的な糖化反応とは、蛋白質のリシン残基等のアミノ酸グループと還元糖が酵素作用なしに縮合反応、即ちメイラード反応が生じるもので、この反応の結果で最終糖化産物が生成される。蛋白質の非酵素的な糖化反応は、(1)蛋白質のリシン残基等のアミノ酸グループと還元糖のアルデヒドまたはケトンが酵素作用なしに求核付加反応を行って初期工程産物であるシッフ塩基(schiff base)を形成し、前記シッフ塩基と隣接したケトアミンアダクト(ketoamine adduct)が互いに縮合して、可逆的なアマドリ(amadori)型の早期糖化産物が生成される工程と、(2)高血糖状態が持続して可逆的なアマドリ型の早期糖化産物が分解されず再配列(rearrangement)されて蛋白質と交差結合(cross-linking)して、非可逆的な最終糖化産物が生成される工程とに分けられる。
【0011】
可逆的なアマドリ型の早期糖化産物とは異なり、最終糖化産物は、非可逆的な反応産物であるため、一旦生成されると血糖が正常に回復されても分解されず蛋白質生存期間の間、組織に蓄積されて、組織の構造と機能を異常に変化させて、組織のあちこちに合併症を誘発させる。
【0012】
例えば、ブドウ糖と多種の蛋白質が反応して生成された最終糖化産物の中一つである糖化アルブミンは、慢性糖尿病性腎症を起こす重要な要因として作用する。糖化アルブミンは、糖化が進行されない正常アルブミンに比べてさらに容易に腎糸球体細胞内に流入し、高濃度のブドウ糖は、メサンギウム細胞を刺激して細胞外基質(extracellular matrix)合成を増加させる。過度に流入した糖化アルブミンと増加した細胞外基質によって腎糸球体の繊維化が引き起こされる。このような機序で腎糸球体が損傷を受け続けることになって、血液透析または臓器移植等の極端な治療法を用いるほかはない工程に達することになる。また、慢性糖尿病によって動脈壁ではコラーゲンが、腎糸球体では基底膜タンパク質が最終糖化産物と結合されて組織に蓄積されることが報告された。
【0013】
このように非酵素的蛋白質糖化反応によって基底膜、血漿アルブミン、水晶体蛋白質、フィブリン、コラーゲン等の蛋白質で糖化が起き、生成された最終糖化産物が組織の構造と機能を異常に変化させて、糖尿病性網膜病症(diabetic retinopathy)、糖尿病性白内障(diabetic cataract)、糖尿病性腎症(diabetic nephropathy)、糖尿病性神経病症(diabetic neuropathy)等の慢性糖尿病合併症を誘発させる。従って、糖尿病合併症の発病を遅らせたり予防または治療するためには、最終糖化産物の形成を抑制することが大変重要なことが明らかになった。
【0014】
また、最終糖化産物は、血管内皮細胞成長因子であるVEGF mRNAと蛋白質を過剰発現して非増殖性または増殖性糖尿病性網膜病症を誘発する。異常な新生血管形成または新生血管の病理的(pathogenic)成長は、多くの状態と係っている。このような状態は、糖尿病性網膜病症、乾癬、滲出性または濡れ性(wet)加齢黄斑変性(ARMD)、リューマチ関節炎及びその他炎症性疾患、及び多くの癌を含む。このような状態と係る病気にかかった組織または腫瘍でVEGFは異常な高水準で発現し、血管新生または血管透過性が増加している。特に、ARMDは、臨床的に重要な血管新生疾患である。この疾患は、老人の片目または両目の脈絡膜で新生血管が形成されるのを特徴とし、先進国で失明の主要要因となっている。種々の治療法で用いられた抗新生血管形成製剤は、単にVEGFまたはVEGFレセプターの化学量的減少を誘導できるのみであり、これら製剤の効果は、疾病にかかった組織における異常な高濃度で生成されたVEGFによって抑えられる。
【0015】
そこで、本発明者等は、糖尿病及びそれによる合併症治療のための副作用が少ない天然生薬物質を探そうと鋭意努力した結果、丸葉留紅草抽出物がヒト網膜色素上皮細胞株でVEGFを抑制すると同時にすい臓β細胞株でインシュリン分泌を促す役割を果たし、高脂肪食餌群マウス及び糖尿病モデルマウスに丸葉留紅草抽出物を共に摂取させる場合、糖尿病の指標が減少することを確認して、本発明の完成に至った。
【発明の要約】
【0016】
本発明の目的は、糖尿病及びそれによる合併症治療のための天然生薬物質である丸葉留紅草抽出物を提供することである。
本発明の他の目的は、このような丸葉留紅草抽出物を含有する糖尿病及びその合併症の予防または治療用医薬組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記丸葉留紅草抽出物を含有する老化防止または遅延用医薬組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記丸葉留紅草抽出物を含有する癌の予防または治療用医薬組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記丸葉留紅草抽出物の製造方法を提供することである。
【0017】
前記目的を達成するために、本発明は丸葉留紅草抽出物を含有する糖尿病及びその合併症の予防または治療用医薬組成物を提供する。
本発明はまた、丸葉留紅草抽出物を含有する糖尿病及びその合併症の予防用健康機能食品を提供する。
本発明はまた、丸葉留紅草抽出物を含有する老化防止または遅延用医薬組成物を提供する。
本発明はまた、丸葉留紅草抽出物を含有する老化防止または遅延用健康機能食品を提供する。
本発明はまた、丸葉留紅草抽出物を含有する癌の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明はまた、(a)丸葉留紅草の全草を細切して、水、アルコール、有機溶媒及びこれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出して、抽出液を取得する工程;及び(b)前記抽出液をろ過して、減圧濃縮して、丸葉留紅草抽出物を取得する工程を含む丸葉留紅草抽出物の製造方法を提供する。
【0019】
本発明は、(c)前記(b)工程で取得した丸葉留紅草抽出物を、活性炭を利用して分離精製して、減圧濃縮して丸葉留紅草抽出物を取得する工程をさらに含む。
【0020】
本発明はまた、前記方法で製造されて、VEGF抑制効果、インシュリン分泌促進効果、血糖降下効果、尿蛋白減少効果及び水晶体混濁度減少効果(lenticular opacity reducing effects)を持つ丸葉留紅草抽出物を提供する。
本発明はまた、前記丸葉留紅草抽出物を対象に投与する工程を含む、糖尿病及びその合併症の予防または治療方法を提供する。
本発明はまた、前記丸葉留紅草抽出物を対象に投与する工程を含む、老化防止または遅延方法を提供する。
本発明はまた、前記丸葉留紅草抽出物を対象に投与する工程を含む、癌の予防または治療方法を提供する。
本発明はまた、前記丸葉留紅草抽出物の糖尿病及びその合併症の治療及び予防の用途を提供する。
本発明はまた、前記丸葉留紅草抽出物の老化防止または遅延の用途を提供する。
本発明はまた、前記丸葉留紅草抽出物の癌の予防または治療の用途を提供する。
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る丸葉留紅草抽出物がヒト網膜色素上皮細胞株でVEGF(vascular endothelial growth factor)の発現を抑制する効果を確認したものである。
【図2】本発明に係る丸葉留紅草抽出物がヒト網膜色素上皮細胞株でVEGF蛋白質産生を阻害することを示したものである。
【図3】本発明に係る丸葉留紅草抽出物がマウスすい臓β細胞株でインシュリン蛋白質産生を促すことを示したグラフである。
【図4】本発明に係る丸葉留紅草抽出物が高脂肪食餌群マウスの体重に及ぼす影響を示したものである。
【図5】本発明に係る丸葉留紅草抽出物が高脂肪食餌群糖尿病合併症モデル動物の血糖抑制効果を示したものである。
【図6】本発明に係る丸葉留紅草抽出物が高脂肪食餌群糖尿病合併症モデル動物の尿蛋白減少効果を示したものである。
【図7】本発明に係る丸葉留紅草抽出物が糖尿病モデル動物の血糖抑制効果を示したものである。
【図8】本発明に係る丸葉留紅草抽出物が糖尿病モデル動物の糖化ヘモグロビン抑制効果を示したものである。
【図9】本発明に係る丸葉留紅草抽出物が糖尿病モデル動物の尿蛋白減少効果を示したものである。
【図10】本発明に係る丸葉留紅草抽出物がマウス水晶体の混濁度減少効果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法及び以下で詳述する実験方法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
一観点において、本発明は丸葉留紅草抽出物を含有する糖尿病及びその合併症の予防または治療用医薬組成物及び健康機能食品に関する。
本発明で用いられた丸葉留紅草(Quamoclit angulata)は、ナス目ヒルガオ科ツル性一年草である。熱帯アメリカ原産であり、主に観賞用で栽培されており、ツルはアサガオのように生長しながら左に巻き上がる特徴がある。全草の長さは3m前後である。葉は長い葉柄を持ち交互についており、心臓型円形をなす。葉先が尖って、下の部分の両側端が尖った角となる。花は8〜9月に咲き黄色を帯びた紅色であり、長い花茎の端に3〜5個ずつ垂れ下がる。花はアサガオを縮小したような形を取っており、萼・雄蕊は、各々5個ずつであり、雌蕊は1個である。実はさく果で丸く、9月に熟して萼が残る。留紅草と似ているが、葉が分かれない。
【0024】
本発明に係る丸葉留紅草抽出物は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、水、アルコール、有機溶媒、またはこれらの混合物から選択される溶媒によって抽出でき、好ましくは、水またはアルコールを利用して抽出でき、追加的に活性炭を利用して分離精製することができる。
【0025】
本発明の一様態で、丸葉留紅草抽出物は、破砕した丸葉留紅草51gを水、アルコール、アルコール水溶液、有機溶媒、及びその混合溶液からなる群から選択される溶媒を利用して、超音波抽出機を用いて室温で2時間毎に15分ずつ、2〜3日の間、抽出した。前記抽出された抽出物は、常温で真空回転濃縮機で減圧濃縮した後、抽出した残渣を真空凍結乾燥機で乾燥し、水で可溶化した丸葉留紅草抽出物を得た。
【0026】
また、前記取得された丸葉留紅草抽出物は、活性炭が充填されたカラムを通過させて、丸葉留紅草の有効性分を吸着させ、活性炭が充填されたカラムを蒸溜水で洗浄して、非吸着成分を取り除いた。このように非吸着成分が取り除かれた活性炭充填カラムに10〜50%(v/v)エタノール等の有機溶媒を連続的または工程的に濃度を高めながら供給して、活性炭に吸着された丸葉留紅草の有効性分を溶出させて、分離精製した後、丸葉留紅草抽出物を取得した。このように精製された丸葉留紅草抽出物は、真空回転濃縮機を利用して常温で減圧濃縮し、前記濃縮された抽出物を真空凍結乾燥させ、水で可溶化させて、水に溶解した丸葉留紅草抽出物を取得した。
【0027】
本発明の一実施例では、糖尿病の指標として、体重、血糖、蛋白尿に関して確認した。丸葉留紅草抽出物を、高脂肪食餌法で肥満が誘導されたマウスを利用して、4週間投与した結果、血糖降下活性を示すことが確認され、尿蛋白の減少を通じて糖尿病性腎症では初期兆候である蛋白尿が減少することを確認することによって、本発明に係る丸葉留紅草抽出物が糖尿病を予防する可能性があることを確認した。
【0028】
本発明の他の実施例では、丸葉留紅草抽出物を糖尿病マウス(Male C57BL/Ks DB/DB mouse)を利用して、丸葉留紅草を12週間投与した結果、血糖降下活性を示すことが確認され、糖化ヘモグロビンの数値が低くなることが確認できた。また、尿蛋白の減少を通じて糖尿病性腎症における初期兆候である蛋白尿が減少することを確認することによって、このような丸葉留紅草抽出物が糖尿病を治療できることを確認した。
【0029】
また、本発明に係る丸葉留紅草抽出物は、マウス肝毒性検査によって、肝毒性はないことを確認した。従って、ほ乳動物に適宜投与して、毒性を示さずに、糖尿病及びその合併症を有意に改善、治療及び予防することができる。
【0030】
ここで、「予防または治療」とは、糖尿病またはその合併症を治療したり、あらかじめ予防したり、または糖尿病またはその合併症による健康状態を好転させたり、改善させる全ての形態を意味する。
【0031】
また、丸葉留紅草抽出物は、このような糖尿病だけでなく、糖尿病に係る合併症を予防または治療することができ、前記合併症としては、慢性高血糖症、アテローム性動脈硬化症、微小血管症、腎臓疾患、心臓疾患、糖尿病性網膜症、及びその他一つ以上の眼科疾患からなる群より選択されるものである。本発明のまた他の実施例では、糖尿病の一合併症である白内障の抑制有無を確認するために、マウスのレンズ培養によって、丸葉留紅草抽出物が白内障の形成を抑制することを確認した。
【0032】
ここで、糖尿病は、第1型糖尿、第2型糖尿、若者に発生する成人型糖尿病、潜在性自己免疫性糖尿病、すい臓糖尿病等のあらゆる種類の糖尿病を含み、糖尿病以外にも、糖尿病関連疾患として、合併症で前記した高血糖症、高インシュリン血症(hyperinsulinemia)、耐糖能異常(ompaired glucose tolerance)、空腹血糖障害(impaired fasting glucose)、脂質代謝異常(dyslipidemia)、高中性脂肪血症(hypertriglyceridemia)またはインシュリン抵抗等を含む。
【0033】
ここで、眼科疾患は、糖尿病性網膜症以外にも、白内障、黄斑変性症、外眼筋マヒ、紅彩毛様体炎、視神経炎、緑内障、網膜退行、眼底出血、屈折異常、結膜下出血、硝子体出血等の糖尿病によって誘発される全ての眼科疾患を意味する。
【0034】
本発明に係る医薬組成物は、丸葉留紅草抽出物を必須成分とし、これを単独で含んだり、一つ以上の薬学的に許される担体、賦形剤または希釈剤を含んで医薬組成物として提供されてもよく、従来、知られている糖尿病またはその合併症の治療剤と混合して提供されてもよい。本発明の丸葉留紅草抽出物の使用量は、患者の年齢、性別、体重によって異なるが、一般に0.01〜200mg/kgの量、好ましくは0.1〜40mg/kgの量を一日1〜数回に分けて投与してもよい。また、丸葉留紅草抽出物は、糖尿病及びその合併症の種類、及びそれの重症程度、患者の年令、体重、健康状態、性別、投与経路、及び治療期間等により適切な、薬学的に有効な量として医薬組成物に含まれても良い。
【0035】
前記において「薬学的に許容される組成物」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、通常胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似する反応を起こさない組成物のことをいう。薬学的に許される担体とは、例えば、ラクトース、でん粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸のような経口投与用担体及び水、適宜のオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコールのような非経口投与用担体等が挙げられる。前記医薬組成物は、安定化剤、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含んでもよい。好適な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤が挙げられる。好適な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチルまたはプロフィル・パラベン及びクルロブタノールがある。その他の薬学的に許される担体としては、下記の文献に記載されているものを参考にすることができる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995)。
【0036】
また、本発明の医薬組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延された放出を提供することができるよう当業界に公知の方法を用いて剤形化される。剤形は、粉末、顆粒、精製、エマルジョン、シロップ、エアゾール、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であってもよい。
【0037】
本発明の医薬組成物はラット、マウス、家畜、及びヒト等のほ乳動物に多様な経路で投与でき、投与の全ての方式は予想され、例えば、経口、組織、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内、髄腔内または脳血管内の注射によって投与される。また、本発明の医薬組成物は、糖尿病の予防または治療する効果を持つ公知の化合物と並行して投与してもよい。
【0038】
従って、本発明は、前記丸葉留紅草抽出物を含有する医薬組成物を治療学的に有効な量として哺乳動物に投与する工程を含む、糖尿病及びその合併症の予防または治療方法に関する。
また、本発明の丸葉留紅草抽出物は、糖尿病及びその合併症の予防または改善するための目的で食品の形態で製造することができる。従って、本発明は、丸葉留紅草抽出物を有効性分として含有する食品組成物である健康機能食品に関する。
【0039】
本発明に係る健康機能食品は、食品組成物として、機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)及び食品添加剤(food additives)等の全ての形態を含む。前記類型の健康機能食品は、当業界に公知の通常の方法により多様な形態で製造することができる。例えば、健康食品としては、本発明の丸葉留紅草抽出物自体を茶、ジュース及びドリンク状で製造して飲用するようにしたり、顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取してもよい。また、機能性食品としては、飲料(アルコール性飲料含む)、果実及びその加工食品(例:果物缶詰め、瓶詰、ジャム、マーマレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例:ハム、ソーセージ、コンビーフ等)、パン類及び麺類(例:うどん、ザルソバ、ラーメン、スパゲッティ、マカロニ等)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例:バター、チーズ等)、食用植物油脂、マーガリン、植物性蛋白質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例:味噌、醤油、ソース等)等に本発明の丸葉留紅草抽出物を添加して製造してもよい。
【0040】
他の観点において、本発明は、丸葉留紅草抽出物を含有する老化防止または遅延用医薬組成物及び健康機能食品に関する。
糖尿病と糖尿病合併症に係る研究から糖尿病が酸化的ストレスと密接な関連があることが報告されている。糖尿病において現れる慢性的な高血糖は、ブドウ糖の自動酸化、蛋白質糖化等多様な経路を介して遊離基の生成を増加させて、反応性の高いこれらの物質によって酸化的ストレスが高まる。本発明の丸葉留紅草抽出物は、最終糖化産物(advanced glycation end products,AGEs)の生成を抑制して、異物による酸化的ストレス誘発を減少させて、老化防止及び老化を遅らせる効果が期待される。
【0041】
このような医薬組成物は、前述した薬学的に許される担体、賦形剤等を含んで提供され、従来知られている老化遅延、防止物質と混合して提供されてもよい。また、老化の程度、目的とする効果の程度により丸葉留紅草抽出物の投与量が異なって、患者の年齢、性別、体重、投与期間等により異なり、公知の技術を利用して多様な形態で製剤化され、多様な投与経路を介して投与可能である。従って、本発明は、前記丸葉留紅草抽出物を対象に投与する工程を含む老化防止または遅延方法に関する。それと共に、前記健康機能食品も、食品組成物機能性食品、栄養補助剤、健康食品、食品添加剤などの多様な形態を含むものであり、当業界に公知の通常の方法により多様な形態、例えば、前述した丸葉留紅草抽出物自体を茶、ジュース、及びドリンクの形状で製造したり、顆粒化、カプセル化、粉末化したり、このような抽出物を飲料、果実及び加工食品、魚類、肉類及びその加工食品、パン類、麺類、調味料等各種食品に添加して製造することによって提供してもよい。
【0042】
また他の観点において、本発明は、丸葉留紅草抽出物を含有する癌の予防または治療用医薬組成物に関する。
【0043】
本発明の丸葉留紅草抽出物は、最終糖化産物生成を抑制して、異物による癌誘発を抑制させて、癌の予防及び/または治療効果が期待される。最終糖化産物が、老化と発癌(carcinogenesis)を誘発することが既に報告されており(Tokuda, H., et al., Book of Abstract of 53rd GA Congress joint with SIF, P076, 2005)、丸葉留紅草抽出物がVEGF生成を阻害することで、癌の予防または治療的効果が期待される。
【0044】
本発明において、このような癌は、VEGFにより誘導された新生血管形成と係る疾患の一つであり、癌の種類は、例えば、肺癌、胃癌、肝癌、及びすい臓癌等、従来知られている全種類の癌を包括する。また、癌の予防または治療とは、VEGF生成を阻害することによって癌の増殖及び転移を同時に防げ、さらには癌を予防できることを意味する。
【0045】
このような医薬組成物は前述した薬学的に許される担体、賦形剤等を含んで提供され、従来に知られている癌予防、治療物質と混合して提供されてもよい。また、癌の種類、癌の進行程度により丸葉留紅草抽出物の投与量が異なり、患者の年齢、性別、体重、及び投与期間等により異なり、公知の技術を利用して多様な形態で製剤化され、多様な投与経路を介して投与可能である。
従って、本発明は、前記丸葉留紅草抽出物を対象に投与する工程を含む、癌の予防または治療方法に関する。
【0046】
また他の観点において、本発明は、(a)丸葉留紅草の全草を細切して、水、アルコール、有機溶媒及びこれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出して、抽出液を取得する工程;及び(b)前記抽出液をろ過して、減圧濃縮して、丸葉留紅草抽出物を取得する工程を含む丸葉留紅草抽出物の製造方法に関する。
【0047】
前記工程(a)において、有機溶媒は、ヘキサン、エーテル、ベンゼン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトニトリル、メタノールなど従来公知の抽出溶媒であればいずれも適用可能である。本発明の一実施形態においては水及びアルコールが用いられているが、これに制限されることはない。
【0048】
本発明において、(c)前記(b)工程で取得した丸葉留紅草抽出物を、活性炭を利用して分離精製して、減圧濃縮して丸葉留紅草抽出物を取得する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0049】
前記(c)工程では、活性炭を利用して丸葉留紅草の有効性分を回収、ろ過して、減圧濃縮する工程であって、このような活性炭を利用する方法は具体的に、前記(b)工程で減圧濃縮して得られた濃縮液を水に懸濁して、活性炭が充填されたクロマトグラフィーカラムを用いてエタノール50%を移動相で溶出させて分離精製する方法を利用することができる。
【0050】
本発明はまた、前記方法で製造されて、VEGF抑制効果、インシュリン分泌促進効果、血糖降下効果、尿蛋白減少効果及び水晶体混濁度減少効果を持つ丸葉留紅草抽出物に関する。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業界において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0052】
実施例1:丸葉留紅草抽出物の製造
丸葉留紅草は、済州(チェジュ)南郡安徳面(アンドクミョン)、ソグァンリで採集し、丸葉留紅草51gをアルコール100%で室温で超音波抽出機で2時間毎に15分ずつ2〜3日の間、抽出した。抽出した後、抽出物を真空回転濃縮機で、常温で減圧濃縮し、抽出された残渣を真空凍結乾燥機で乾燥し、乾燥された丸葉留紅草抽出物7gを水に0.075mg/mLになるよう溶解した。
【0053】
実施例2:活性炭を利用した丸葉留紅草抽出物の製造
韓国済州(チェジュ)南郡安徳面(アンドクミョン)、ソグァンリで採集した丸葉留紅草50gを細切し、前記細切した丸葉留紅草から水を溶媒として、室温で、超音波抽出機で2時間毎に15分ずつ2〜3日抽出した。前記抽出された抽出液をろ過した後、減圧濃縮し、濃縮液を取得した。前記濃縮液を水に懸濁して、活性炭が充填されたカラムクロマトグラフィーによりエタノール50%を移動相で溶出させて、分離精製し、前記分離精製された丸葉留紅草抽出物を減圧濃縮させた後、前記濃縮された丸葉留紅草抽出物5gに水を可溶して丸葉留紅草抽出物の濃度が20mg/mLになるよう溶解させた。
【0054】
実験例1:丸葉留紅草全草抽出物のVEGF抑制能確認
実施例1と実施例2で製造された丸葉留紅草抽出物で処理されたヒト網膜色素上皮細胞株であるARPE19細胞株で糖尿病性網膜病症等の糖尿病合併症を誘発する血管内皮細胞成長因子(VEGF)の抑制能を確認した。
【0055】
ARPE19細胞株は、DMEM;F12mediaに10%FBS(fetal bovine serum)を添加して培養した。ARPE19細胞株でVEGF mRNAと蛋白質の発現を誘導するために、60Φプレートに1×10cell/プレート濃度で細胞を播種して、DMEM低グルコース培地に10%FBS無血清を添加して24時間培養後、DMEM低グルコース培地に25mM及び30mMグルコースを添加した培養液に取り替え、実施例1と実施例2の丸葉留紅草抽出物の最終濃度が0.2μg/mLなるように添加した後、VEGFのmRNA発現抑制を確認するためには24時間培養し、VEGF蛋白質産生を確認するために72時間培養した。この時、対照群として5.5mMグルコースを処理してVEGFが発現しない細胞自体を基準とし、25mM及び30mMグルコースを処理した時、VEGFの発現の程度を確認して、丸葉留紅草抽出物のVEGF発現抑制能を比較した。実験に用いられる25mM及び30mMグルコース濃度は、各実験でVEGFの発現誘導を最適にする条件の濃度である。
【0056】
(1)VEGF mRNA発現抑制効能
前記方法で培養されたARPE19細胞からトータルRNAを分離するために、培地を取り除いた後、TRIzol reagentを用いて分離し、配列番号1〜2のプライマーを利用して、RT−PCR(reverse transcriptase-polymerase chain reaction)を行って、VEGF mRNAの発現を確認した。
その結果、図1に示したように、実施例1で製造された丸葉留紅草抽出物を処理した実験群でVEGF mRNA発現が抑制されることを確認した。
配列番号1:TTGCCTTGCTGCTCTACCTC
配列番号2:AAATGCTTTCTCCGCTCTGA
【0057】
(2)VEGF分泌蛋白質発現阻害効能
前記方法で培養されたARPE19細胞の培養液を取得して、VEGF ELISA kit(R&D,UK)を利用して分泌されるVEGFの量を測定した。
その結果、図2に示したように、実施例1と実施例2で製造された丸葉留紅草抽出物を処理した実験群でVEGF発現が減少することを確認した。
【0058】
実験例2:丸葉留紅草抽出物のインシュリン分泌促進確認
実施例1と実施例2で製造された丸葉留紅草抽出物で処理されたマウスすい臓β細胞株のMin6細胞株でインシュリン分泌促進の有無を確認した。
【0059】
Min6(ATCC,USA)は、HDMEM mediaに15%FBSを添加して培養した。Min6細胞株でインシュリン発現を誘導するために、96wellプレートに1×10cell/プレート濃度で細胞を播種して、DMEM高グルコース培地に15%FBS無血清を添加して72時間培養後、PBS緩衝溶液で洗浄して、HBSS緩衝溶液に2時間培養後、25mMグルコースを添加したHBSS緩衝溶液に取り替えて、丸葉留紅草抽出物を最終濃度が0.2μg/mLなるように添加した後、インシュリン発現促進の有無を確認するために2時間培養した。この時、対照群として5.5mMグルコースを処理してインシュリン発現が誘導されない細胞自体のインシュリンを基準とし、25mMグルコースを処理した時に、インシュリンが発現される程度を確認して、丸葉留紅草抽出物のインシュリン発現の促進を比較分析した。前記方法で培養されたMin6細胞の培養液を取得して、インシュリンELISA kit(R&D,UK)を利用して分泌されるインシュリンの量を測定した。その結果、図3に示したようにインシュリン発現が増加することを確認でき、特に実施例2の活性炭を利用して製造された丸葉留紅草抽出物の場合、さらに高いインシュリン分泌能を示した。
【0060】
実験例3:丸葉留紅草抽出物の処理によるマウス糖尿病の指標変化測定
正常マウスに実施例1で製造された丸葉留紅草抽出物を処理することによって、糖尿病の指標として、体重、血糖、及び尿蛋白の変化を調べた。
【0061】
5週齢のマウス(Male C57BL/6J,19g,コアテク,平澤(ピョンテク))を購入して、一定の温度(25℃)と湿度(50%)下で1週間適応させた後、実験に用いた。マウスを各群あたり4匹として、対照群では一般飼料を餌とする一般食餌群、高脂肪飼料を食べる高脂肪食餌群に分けて、飲用水としては一般物を供給し、実験群では高脂肪飼料を食べる高脂肪食餌に飲用水として実施例1で製造された丸葉留紅草抽出物を0.075mg/mL濃度で希釈した水を供給した。各対照群と実験群を4週間飼育した。毎週体重と血糖の変化を測定し、さらに、投与4週後に、尿を採取して尿蛋白濃度を測定した。
【0062】
その結果、図4に示したように、丸葉留紅草抽出物を摂取した実験群の体重は、高脂肪食餌群と比較して有意に減少した。
【0063】
血糖変化においては、高脂肪食餌群は一般食餌群と比較して血糖が上昇されているが、高脂肪食餌に丸葉留紅草抽出物0.075mg/mL濃度で希釈した水を供給した群では、有意な降下効果を示した(図5)。
【0064】
糖尿病患者の場合、腎臓と心臓合併症が伴うことが多い。蛋白尿(proteinuria)が減少したことは、腎臓機能が回復したことを意味する。丸葉留紅草抽出物の腎臓に及ぼす影響を調べるための尿蛋白分析は、丸葉留紅草抽出物を4週間投与したマウスの尿を採取して、ELISAキット(Exocell,America)を利用して測定した。
【0065】
その結果、図6に示したように、高脂肪食餌群は一般食餌群と比較すると、尿蛋白の上昇を示したが、高脂肪食餌に丸葉留紅草0.075mg/mL濃度で希釈した水を供給した群で有意な減少を示した。これは、高脂肪食餌で糖尿病が誘導されたマウスで特徴的に現れる腎臓の機能を改善させることによって、尿蛋白濃度が減少することを示唆する。
【0066】
実験例4:丸葉留紅草抽出物の処理による糖尿病マウスの糖尿病の指標観察実験
正常マウスと実際に糖尿病にかかったマウスに実施例2で製造された丸葉留紅草抽出物を処理することによって、糖尿病の指標の血糖、糖化ヘモグロビン及び尿蛋白の変化を確認した。
【0067】
6週齢のマウス(Male C57BL/6J mouse,20g,中央実験動物,ソウル)と6週齢の糖尿病マウス(Male C57BL/Ks DB/DB mouse,20g,中央実験動物,ソウル)を購入して、一定の温度(25℃)と湿度(50%)下で1週間適応させた後、実験に用いた。
【0068】
マウスを各群当り5匹にして、正常マウス対照群、糖尿病マウス対照群、及び実施例2で製造された丸葉留紅草活性炭抽出物を0.1mg/mL濃度で希釈した水を供給した群に分けて、12週間飼育した。2週毎に血糖の変化を測定し、また6週毎に尿を採取して尿蛋白濃度を測定し、12週間飼育した後、血液を採取して糖化ヘモグロビン濃度を測定した。
【0069】
その結果、血糖変化においては、図7に示したように、糖尿病マウス対照群は、正常マウス対照群と比較して血糖が上昇したが、糖尿病マウスに丸葉留紅草0.1mg/mL濃度で希釈した水を供給した群では有意な降下効果を示した。
糖尿病治療を受ける患者に発生する合併症を減らすためには、血糖値を適切なレベルに維持することが大事である。ある時点において測定する血糖値は、多くの要因によって変動が生じることがあるため、長期間の血糖調節推移を把握する目的で最も広く用いられる検査が糖化ヘモグロビン(HbA1c)である。糖化ヘモグロビンは、赤血球に正常に存在する血色素に糖が結合された形態で、血糖が高く維持された場合に糖化ヘモグロビン数値も高まる。糖化ヘモグロビンは、2〜4ヶ月の間の平均血糖値を反映するため、長期間の血糖調節程度を把握するのに役立つ。
【0070】
丸葉留紅草活性炭抽出物の糖化ヘモグロビンに対する影響を確認するために、6週に一回ずつ正常マウス対照群、糖尿病マウス対照群、及び実施例2で製造された丸葉留紅草を0.1mg/mL濃度で希釈した水を供給した群の血液を採取して、ELISAキット(Cusabio biotech,Japan)を利用して測定した。
【0071】
その結果、図8に示したように、糖化ヘモグロビンの数値で糖尿病マウス対照群は、正常マウス対照群と比較して、血糖が異常に上昇した数値を示したが、糖尿病マウスに丸葉留紅草抽出物0.1mg/mL濃度で希釈した水を供給した群では、正常マウス対照群に対して有意な降下効果を示した。
【0072】
糖尿病患者の場合、腎臓と心臓合併症を伴う場合が多い。蛋白尿が減少したことは、腎臓機能が回復したことを意味する。丸葉留紅草抽出物の腎臓に及ぼす影響を調べるために尿蛋白の分析実験を実施した。実施例2で製造された丸葉留紅草抽出物を12週間投与したマウスの尿を採取して、ELISAキット(Exocell,America)を利用して測定した。
【0073】
その結果、図9に示したように、糖尿病マウス対照群は、正常マウス対照群と比較して、尿蛋白が上昇した数値を示したが、糖尿病マウスに丸葉留紅草0.1mg/mL濃度で希釈した水を供給した群では有意に減少する数値を示した。
【0074】
実験例5:糖尿病マウスの肝毒性検査
6週齢のマウスと6週齢の糖尿病マウスを購入して、一定の温度(25℃)と湿度(50%)下で1週間適応させた後、肝毒性検査に用いた。
【0075】
マウスを各群当り5匹にして、正常マウス対照群、糖尿病マウス対照群、及び実施例2で製造された丸葉留紅草抽出物を0.1mg/mL濃度で希釈した水を供給した群に分けて、12週間飼育した。12週間飼育した後、血液を採取して、アラニントランスアミナーゼ濃度を測定した。
【0076】
アラニントランスアミナーゼは、アミノ酸の代謝酵素であって、診断及び経過観察の代表的な検査として活用される。アラニントランスアミナーゼの濃度が維持されたことは、肝の損傷がないことを示唆する。
【0077】
丸葉留紅草抽出物間に対する影響を確認するために、12週間飼育した後、正常マウス対照群、糖尿病マウス対照群、及び実施例2で製造された丸葉留紅草抽出物を0.1mg/mL濃度で希釈した水を供給した群の血液を採取して、ELISAキット(Cusabio biotech,Japan)を利用して、アラニントランスアミナーゼ濃度の変化を測定した。
【0078】
その結果、下記表1に示したように、糖尿病マウス対照群に丸葉留紅草抽出物が0.1mg/mL濃度で希釈された水を供給した群が、正常マウス対照群と類似の数値を示し、この抽出物による肝毒性がないことが確認された。
【0079】
【表1】

【0080】
実験例6:マウスの肝毒性検査
6週齢のマウス(Male C57BL/6J mouse,20g,中央実験動物,ソウル)を購入して、一定の温度(25℃)と湿度(50%)下で1週間適応させた後、肝毒性検査に用いた。
【0081】
マウスを各群当り5匹にして、対照群、実施例2で製造された丸葉留紅草抽出物投与群に分けて、1000mg/kg濃度で3回投与した後、血液を採取して、アラニントランスアミナーゼ濃度を測定した。
【0082】
アラニントランスアミナーゼは、アミノ酸の代謝酵素であって、診断及び経過観察の代表的な検査として活用される。アラニントランスアミナーゼの濃度が維持されたことは、肝の損傷がないことを証明する。丸葉留紅草抽出物間に対する影響を確認するために、対照群、丸葉留紅草抽出物投与群の血液を採取して、ELISAキット(Cusabio biotech,Japan)を利用して測定した。
【0083】
その結果、下記表2に示したように、丸葉留紅草抽出物投与群が対照群と類似の数値を示して、この抽出物による肝毒性がないことが確認された。
【0084】
【表2】

【0085】
実験例7:マウスのレンズ培養実験
糖尿患者の場合には、白内障が早期に始まり、また急速に悪化して視力が急速に落ちる。糖尿病にかかると、水晶体に不透明現象が促される。そこで、レンズ培養実験を介して、糖尿病性白内障発生抑制効能を調べた。
【0086】
マウスの眼球を摘出して、ヨード溶液に入れてしばらく消毒後、レンズだけを摘出した。M199培地に入れて、細胞培養装置で培養した。培地に20mMキシロースを入れて培養すると、水晶体の混濁を誘発し、CCDカメラを利用して、水晶体の混濁度を測定した。
【0087】
その結果、図10に示したように、白内障誘発を抑制する物質として知られるquercetin(ケルセチン)を処理した陽性対照群よりも実施例2で製造された丸葉留紅草活性炭抽出物投与群で水晶体混濁度がさらに抑制されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上述べたように、本発明に係る組成物は、優れた血糖降下、インシュリン分泌促進、尿蛋白阻害作用、及び水晶体混濁度減少効果を示し、糖尿病及びこれによる各種合併症の予防または治療に優れた効果を持つ。
【0089】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸葉留紅草(Quamoclit angulata)抽出物を含有する糖尿病及びその合併症の予防または治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記抽出物は、水、アルコール、有機溶媒及びこれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出されることを特徴とする請求項1に記載の糖尿病及びその合併症の予防または治療用医薬組成物。
【請求項3】
前記合併症は、慢性高血糖症、アテローム性動脈硬化症、微小血管症、腎臓疾患、心臓疾患、糖尿病性網膜症、及びその他一つ以上の眼科疾患からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の糖尿病及びその合併症の予防または治療用医薬組成物。
【請求項4】
丸葉留紅草抽出物を含有する糖尿病及びその合併症の予防用健康機能食品。
【請求項5】
前記抽出物は、水、アルコール、有機溶媒及びこれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出されることを特徴とする請求項4に記載の糖尿病及びその合併症の予防用健康機能食品。
【請求項6】
前記合併症は、慢性高血糖症、アテローム性動脈硬化症、微小血管症、腎臓疾患、心臓疾患、糖尿病性網膜症、及びその他一つ以上の眼科疾患からなる群より選択されることを特徴とする請求項4に記載の糖尿病及びその合併症の予防用健康機能食品。
【請求項7】
(a)丸葉留紅草の全草を細切して、水、アルコール、有機溶媒及びこれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出して、抽出液を取得する工程;及び
(b)前記抽出液をろ過して、減圧濃縮して、丸葉留紅草抽出物を取得する工程を含む丸葉留紅草抽出物の製造方法。
【請求項8】
(c)前記(b)工程で取得した丸葉留紅草抽出物を、活性炭を利用して分離精製して、減圧濃縮して丸葉留紅草抽出物を取得する工程をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記(c)工程が、活性炭が充填されたクロマトグラフィーカラムを用いて行われることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれかに記載の方法により製造されて、VEGF抑制効果、インシュリン分泌促進効果、血糖降下効果、尿蛋白減少効果及び水晶体混濁度減少効果を持つ丸葉留紅草抽出物。
【請求項11】
丸葉留紅草抽出物を含有する老化防止または遅延用医薬組成物。
【請求項12】
前記抽出物は、水、アルコール、有機溶媒及びこれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出されることを特徴とする請求項11に記載の老化防止または遅延用医薬組成物。
【請求項13】
丸葉留紅草抽出物を含有する老化防止または遅延用健康機能食品。
【請求項14】
前記抽出物は、水、アルコール、有機溶媒及びこれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出されることを特徴とする請求項13に記載の老化防止または遅延用健康機能食品。
【請求項15】
丸葉留紅草抽出物を含有する癌の予防または治療用医薬組成物。
【請求項16】
前記抽出物は、水、アルコール、有機溶媒及びこれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出されることを特徴とする請求項15に記載の癌の予防または治療用医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−520411(P2013−520411A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553821(P2012−553821)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001128
【国際公開番号】WO2011/102690
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(506272301)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (17)
【Fターム(参考)】