説明

丸鋼管の製造設備

【課題】例え厚肉、大径であったとしても、手作業による精整作業を行うことなく、丸鋼管を容易に確実に製造し得る丸鋼管の製造設備を提供する。
【解決手段】幅方向の両端に開先2を形成した所定幅Wの鋼板1をプレス手段10によりプレス成形したのち、溶接手段により溶接結合する丸鋼管の製造設備である。プレス手段は、丸鋼管の外径に対応する半径Rの凹状成形面16を所定長さに形成した外型15と、丸鋼管の内径に対応する半径rの凸状成形面18を所定長さに形成しかつ外型に対して接近離間動自在な内型17と、外型の両側外方に遊転自在に配設したローラ体20とからなる。ローラ体を、外型に対して接近離間自在に配設するとともに、付勢体23により接近方向へ付勢し、ローラ体を外型に接近させたとき、その外周20aの一部が凹状成形面の延長面16Aよりも内側に突出すべく構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば建築用の柱材に使用される大径で厚肉の丸鋼管を得るのに採用される丸鋼管の製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の丸鋼管は、次のような方法で製造していた。すなわち、所定の幅でかつ所定の長さのパイプ用原板を準備しておき、このパイプ用原板における幅方向の端部に対して、プレス加工により所定幅の端曲げを行う。次に、端曲げされたパイプ用原板のほぼ中央部をさらにプレス加工することにより、断面形状がほぼU字状になるように曲げ成形する。そして、半円状の成形面を有する一対の成形型からなるプレス加工手段によって、断面形状がほぼ円形になるように成形する。このとき、凹部と凸部が係合される。なお、断面形状がほぼ円形になるように成形したのち、端部間(継目部)を溶接接合する方法もある(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−234511号公報(第3−5頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した従来方法によると、製造されたパイプは断面形状がほぼ円形で真円状にはなり難く、真円状にするためには手作業による精整作業を長時間に亘って行わなければならない。
【0004】
なお、たとえば厚肉の曲げ方式としては、幅方向の多数箇所(たとえば、直径が600mmの場合には40〜50箇所)をプレス加工することで、ほぼ円形になるように成形する方法もある。この場合には、多数箇所のプレス加工によって製造時間が大になるとともに、真円状にするためには手作業による精整作業を長時間に亘って行わなければならない。
【0005】
そこで本発明の請求項1記載の発明は、例え厚肉、大径であったとしても、手作業による精整作業を行うことなく、丸鋼管を容易に確実に製造し得る丸鋼管の製造設備を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明の請求項1記載の丸鋼管の製造設備は、幅方向の両端に開先を形成した所定幅の鋼板をプレス手段によりプレス成形したのち、溶接手段により開先間を溶接結合する丸鋼管の製造設備であって、プレス手段は、丸鋼管の外径に対応する半径の凹状成形面を所定長さに形成した外型と、丸鋼管の内径に対応する半径の凸状成形面を所定長さに形成しかつ前記外型に対して接近離間動自在な内型と、前記外型の両側外方に遊転自在に配設したローラ体とからなり、両ローラ体を、外型に対して接近離間自在に配設するとともに、付勢体により接近方向へ付勢し、ローラ体を外型に接近させたとき、その外周の一部が凹状成形面の延長面よりも内側に突出すべく構成したことを特徴としたものである。
【0007】
したがって請求項1の発明によると、外型に対して内型を離間動させた状態で、これら外型と内型との間に鋼板のプレス相当部分を位置させる。このとき両ローラ体は、付勢体による付勢力によって外型側の接近限に位置しており、そして外周の一部を凹状成形面の延長面よりも内側に突出して鋼板を受け止めている。この状態で、外型に対して内型を接近動させることで、外型の凹状成形面と内型の凸状成形面とによってプレス相当部分を曲げ形成し得る。このとき、凹状成形面の半径が丸鋼管の外径に対応し、そして凸状成形面の半径が丸鋼管の内径に対応していることで、プレス成形によるプレス相当部分の曲げ形成は、丸鋼管の外径に同等状の形状として、かつ所定長さで行われる。
【0008】
さらにプレス成形時には、凹状成形面の延長面よりも内側に突出しているローラ体の外周にもプレス相当部分の近くが圧接することになって、このプレス相当部分の近くを曲げる状態になり、これにより所期のプレス成形を助長して、プレス相当部分曲げ形成を円滑かつ正確に行えることになる。その際に、ローラ体に掛かる圧接力により、このローラ体を付勢体による付勢力に抗して離間動させて、その外周を凹状成形面の延長面上または外側に位置させることになり、以てプレス相当部分の近くの曲げは無理なく好適に行えることになる。
【0009】
このようにして1回目のプレス成形を行ったのち、外型に対して内型を離間動させ、そして鋼板を所定量だけ移動させることで、成形部に連なる次のプレス相当部分を、外型と内型との間に位置し得、次いで外型に対して内型を接近動させることで、同様にして鋼板の次のプレス相当部分を曲げ形成し得る。そして、同様なプレス成形の繰り返しによって、真円状の丸形状鋼管を成形(造管)し得る。このようにして所期のプレス成形を行ったのち、丸形状鋼管をプレス手段から取り出し、溶接手段に搬入し、その開先間の溶接結合を行うことで、所定の外径の丸鋼管を製造し得る。
【0010】
また本発明の請求項2記載の丸鋼管の製造設備は、上記した請求項1記載の構成において、外型の所定長さの凹状成形面と内型の所定長さの凸状成形面とによる1回のプレス成形長さが、丸鋼管の周長さの複数分の1であり、複数回のプレス成形によって丸形状に成形することを特徴としたものである。
【0011】
したがって請求項2の発明によると、プレス成形による鋼板の曲げ形成は、丸鋼管の外径に同等状の形状として、かつ丸鋼管の周長さの複数分の1に相当して行える。
そして本発明の請求項3記載の丸鋼管の製造設備は、上記した請求項1または2記載の構成において、幅方向の両端に開先を形成した所定幅の鋼板を加熱手段により加熱し、この加熱した鋼板をプレス手段により熱間プレス成形することを特徴としたものである。
【0012】
したがって請求項3の発明によると、鋼板を加熱手段に通して全体加熱したのち、プレス手段による複数回の熱間プレス成形によって丸形状鋼管に曲げ形成し得、そして溶接接合により丸鋼管を製造し得る。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明の請求項1によると、離間動させた外型と内型との間に鋼板のプレス相当部分を位置させ、このとき両ローラ体は、付勢体による付勢力によって外型側の接近限に位置して、外周の一部を凹状成形面の延長面よりも内側に突出して鋼板を受け止めており、この状態で、外型に対して内型を接近動させることで、外型の凹状成形面と内型の凸状成形面とによってプレス相当部分を曲げ形成できる。このとき、凹状成形面の半径が丸鋼管の外径に対応し、そして凸状成形面の半径が丸鋼管の内径に対応していることで、プレス成形によるプレス相当部分の曲げ形成は、丸鋼管の外径に同等状の形状として、かつ所定長さで行うことができる。
【0014】
さらにプレス成形時には、凹状成形面の延長面よりも内側に突出しているローラ体の外周にもプレス相当部分の近くが圧接することになって、このプレス相当部分の近くを曲げる状態になり、これにより所期のプレス成形を助長して、プレス相当部分曲げ形成を円滑かつ正確に行うことができる。その際に、ローラ体に掛かる圧接力により、このローラ体を付勢体による付勢力に抗して離間動させて、その外周を凹状成形面の延長面上または外側に位置させることになり、以てプレス相当部分の近くの曲げは無理なく好適に行うことができる。
【0015】
このようにして1回目のプレス成形を行ったのち、外型に対して内型を離間動させ、そして鋼板を所定量だけ移動させることで、成形部に連なる次のプレス相当部分を、外型と内型との間に位置でき、次いで外型に対して内型を接近動させることで、同様にして鋼板の次のプレス相当部分を曲げ形成できる。そして、同様なプレス成形の繰り返しによって、真円状の丸形状鋼管を成形(造管)できる。このようにして所期のプレス成形を行ったのち、丸形状鋼管をプレス手段から取り出し、溶接手段に搬入し、その開先間の溶接結合を行うことで、所定の外径の丸鋼管を製造できる。
【0016】
このように丸鋼管は、所定長さのプレス成形の繰り返しにより、すなわち、少ない回数のプレス成形と溶接接合により製造でき、これにより丸鋼管は、例え厚肉、大径であったとしても、手作業による精整作業を行うことなく、短時間で能率良く得ることができる。
【0017】
また上記した本発明の請求項2によると、プレス成形による鋼板の曲げ形成は、丸鋼管の外径に同等状の形状として、かつ丸鋼管の周長さの複数分の1に相当して行うことができる。
【0018】
そして上記した本発明の請求項3によると、鋼板を加熱手段に通して全体加熱したのち、プレス手段による複数回の熱間プレス成形によって丸形状鋼管に曲げ形成でき、そして溶接接合により丸鋼管を製造できる。その際に、熱間プレス成形によって、残留応力がなく、かつ十分な靱性を有する均質の丸鋼管を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施の形態1]
以下に、本発明の実施の形態1を、図1〜図13に基づいて説明する。
丸鋼管の製造設備は、図12、図13に示すように、丸鋼管に対応した所定幅Wでかつ所定の板厚T、所定長さLの鋼板1を長さ方向に搬送する搬送経路7中に、鋼板1における幅方向の両端部分に溶接用の開先2を形成するためのトリミング開先加工機8と、開先2を形成した鋼板1を加熱する加熱手段9と、加熱した鋼板1を熱間プレス成形するプレス手段10と、熱間プレス成形したのち開先2間を溶接結合する溶接手段30とを、上手から下手へと順に配設することで構成される。
【0020】
前記プレス手段10は、図1に示すように、本体11側に嵌め込み状で固定された保持体12を有し、この保持体12の上面で中央部分には着脱用凹部13が形成され、そして着脱用凹部13の左右両側にはローラ体ガイド部14が形成されている。ここでローラ体ガイド部14は、上下方向において保持体上面12aと着脱用凹部13の底面13aとの間に位置される水平状のガイド面14aを有し、これらガイド面14aの外端に連続してストッパ面14bが上方への円弧状として形成されている。
【0021】
前記着脱用凹部13には外型(下型)15が着脱自在に嵌め込まれ、この外型15の上面は、最終製品である丸鋼管5(図11参照。)の外径Φに対応する半径Rの凹状成形面16が、所定長さで上向きに形成されている。そして外型15の上方には内型(上型)17が設けられ、この内型17の下面は、丸鋼管5の内径Φsに対応する半径rの凸状成形面18が、所定長さで下向きに形成されている。ここで内型17は、昇降動装置(図示せず。)に着脱自在な昇降体19の下端に連結され、以て前記外型15に対して接近離間動自在に構成されている。これにより、外型15の凹状成形面16と内型17の凸状成形面18とによってプレス成形が可能となり、その際に所定長さの凹状成形面16と所定長さの凸状成形面18とによる1回のプレス成形長さPLは、丸鋼管5の周長さのほぼ7分の1(複数分の1)に設定されている。
【0022】
前記外型15の両側外方にはローラ体20が配設され、これらローラ体20はローラ軸21に対して遊転自在に構成されている。両ローラ体20はガイド面14a上に載置され、遊転により外型15に対して接近離間自在に構成されている。そして両ローラ体20は、保持体12の左右外端に設けられた受け部材22とローラ軸21側との間に圧縮ばね(付勢体の一例)23が配設されることで、接近方向へ付勢されている。その際に接近限は外型15の左右側面に当接することで規制され、また離間限はストッパ面14bに当接することで規制されている。さらにローラ体20を外型15に接近させたとき、すなわち、外型15の左右側面に当接させた接近限のとき、その外周20aの一部が凹状成形面16の延長面16Aよりも内側(上方)に突出すべく構成されている。以上の11〜23などにより、プレス手段10の一例が構成される。
【0023】
前記溶接手段30は、図10、図13に示すように、上手の仮付け溶接部31と下手の本溶接部32とからなる。ここで仮付け溶接部31や本溶接部32は、下位と左右との3列(複数列)の外側ロール33群により丸形状鋼管3を外周から拘束して、その開先(遊端)2を相当接させた状態で、溶接機34により仮付け溶接や本溶接を行うに構成されている。その際に、外側ロール33群は鼓型であって、その凹円弧状面33aは、前述した丸鋼管5の外周面に対応するように形成されている。
【0024】
以下に、上記した実施の形態1における作用を説明する。
まず図12(a)に示すように、丸鋼管に対応した幅(所定幅の一例)Wでかつ所定の板厚T、所定長さLの鋼板1を準備する。そして図13に示すように、この鋼板1を搬送経路7上で搬送しながら、トリミング開先加工機8に通して、図12(b)に示すように、幅方向における両端に開先2を加工する。次いで鋼板1を、たとえば加熱炉に入れての燃焼加熱方式からなる加熱手段9に通して、所定温度の一例であるA変態点(たとえば850〜1050℃)の近辺(前後)にまで全体加熱する。そして加熱した鋼板1を長さ方向に搬送してプレス手段10に供給し、このプレス手段10による7回(複数回)の熱間プレス成形によって丸形状鋼管3に曲げ形成する。
【0025】
すなわち図1に示すように、外型15に対して内型17を上昇により離間動させた状態で、保持体上面12a上から一方のローラ体20の外周20a上に亘って鋼板1をセットし、外型15と内型17との間に鋼板1の一端部(プレス相当部分)を位置させる。このとき両ローラ体20は、圧縮ばね23による付勢力によって外型15の左右側面に当接した接近限に位置しており、そして外周20aの一部を凹状成形面16の延長面16Aよりも内側に突出させている。
【0026】
このように外型15と内型17との間に鋼板1の一端部を位置させたのち、外型15に対して内型17を下降により接近動させることで、図2に示すように、外型15の凹状成形面16と内型17の凸状成形面18とによって鋼板1を曲げ形成し得る。すなわち、プレス手段10による1回目の熱間プレス成形によって、鋼板1の一端部を曲げ形成(端曲げ)し得る。このとき、凹状成形面16の半径Rが丸鋼管5の外径Φに対応し、そして凸状成形面18の半径rが丸鋼管5の内径Φsに対応していることで、1回目の熱間プレス成形による鋼板1の一端部の曲げ形成は、丸鋼管5の外径Φ(直径)に同等状の形状として、かつ丸鋼管5の周長さのほぼ7分の1に相当して行われる。
【0027】
さらに熱間プレス成形時には、一方のローラ体20における外周20aの一部が凹状成形面16の延長面16Aよりも内側に突出していることで、このローラ体20にも鋼板1の一端部近くが圧接することになって、一端部の近くを曲げる状態になり、これにより外型15と内型17とによる所期の1回目の熱間プレス成形を助長して、一端部の曲げ形成を円滑かつ正確に行えることになる。その際に、ローラ体20に掛かる圧接力によって、このローラ体20を圧縮ばね23による付勢力に抗して離間動させて、その外周20aを凹状成形面16の延長面16A上または外側に位置させることになり、以て一端部近くの曲げは無理なく好適に行えることになる。
【0028】
このようにして1回目の熱間プレス成形を行ったのち、外型15に対して内型17を離間動させ、そして鋼板1を他方側に所定量だけ移動させることで、図3に示すように、成形した一端部に連なる(連続した)次のプレス相当部分を、外型15と内型17との間にセットし得る。次いで外型15に対して内型17を接近動させることで、図4に示すように、プレス手段10による2回目の熱間プレス成形によって、1回目と同様にして、外型15の凹状成形面16と内型17の凸状成形面18とにより鋼板1を曲げ形成し得る。このとき、両ローラ体20に鋼板1が圧接し、上述と同様に作用することになる。そして、同様な繰り返しにより、図5に示すように、プレス手段10による3回目の熱間プレス成形によって、鋼板1のさらに次のプレス相当部分を曲げ形成し得る。
【0029】
このようにして、一端部側に対して3回の熱間プレス成形を行ったのち、鋼板1を他方側に大きく移動させて、その他端部を外型15と内型17との間セットすることにより、図6に示すように、4回目の熱間プレス成形によって鋼板1の他端部を曲げ形成し得る。そして、図7に示す5回目の熱間プレス成形、図8に示す6回目の熱間プレス成形を同様にして行うことで、鋼板1を、その長さ方向の中央部分を残した状態で丸形近似状に熱間成形し得る。
【0030】
次いで図9に示すように、残っていた中央部分に対して7回目の熱間プレス成形を同様にして行うことで、真円状の丸形状鋼管3を成形(造管)し得る。このとき、開先2側の端面は昇降体19の両側面に当接され、以て丸形状鋼管3は、最終製品である丸鋼管の外径Φに相当する真円状に対して、昇降体19の厚さ分だけ自らの弾性に抗して変形した形態となる。
【0031】
このようにして7回(全て)の熱間プレス成形を行ったのち、外型15に対して内型17を離間動させ、そして丸形状鋼管3を管軸心方向に抜き出すことにより、プレス手段10から丸形状鋼管3を取り出し得る。その際に抜き出しは、昇降体19の両側面に対して開先2側の端面を摺接させながら行われる。そして、プレス手段10から取り出した丸形状鋼管3は、自らの弾性復元力によって、開先2側の端面同士を相当接させた丸形状鋼管3となる。
【0032】
このように、プレス手段10から取り出した丸形状鋼管3を溶接手段30に搬入し、この丸形状鋼管3を外周から拘束しながら、その開先2側の端面(遊端)同士を相当接(相対向)させた状態で溶接結合を行う。すなわち図10に示すように、仮付け溶接部31では、外側ロール33群により丸形状鋼管3を外周から拘束し、その端面同士を相当接させた状態で、溶接機34により開先2間を仮付け溶接4Aする。次いで本溶接部32では、外側ロール33群により丸形状鋼管3を外周から拘束して、溶接機34により溶接結合4する。このように、開先2を利用した溶接結合4を行うことで、図11に示すように、所定の外径Φでかつ長さLの丸鋼管(最終製品)5を製造(造管)し得る。
【0033】
その際に丸鋼管5は、1回のプレス成形長さPLに基づいて7回の熱間プレス成形により、すなわち、少ない回数(複数回)の熱間プレス成形と溶接接合4により製造し得、したがって丸鋼管5は、例え厚肉、大径であったとしても、手作業による精整作業を行うことなく、能率良く安価に得られることになる。また熱間プレス成形によって、残留応力がなく、かつ十分な靱性を有する均質の丸鋼管5を製造し得る。
【0034】
以上によって、たとえば厚さが25〜120mm、直径が1200mm以上、長さが7000mm以上の丸鋼管5、すなわち大径で極厚肉の丸鋼管5であっても好適に製造し得る。なお、溶接手段30の箇所から取り出した丸鋼管5は、必要に応じて、図示していない矯正装置、先端切断装置、後端切断装置、洗浄装置、防錆装置などへと搬送され、それぞれで処理されたのち、製品としてストレージされる。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2を、図14に基づいて説明する。
【0035】
すなわち、昇降体19の所定箇所に、上下方向で所定長さの遊転ローラ25が設けられている。ここで遊転ローラ25は、昇降体19の一側面よりも少し突出される一方側の遊転ローラ25と、他側面よりも少し突出される他方側の遊転ローラ25とが、長さ方向(管軸心方向)において交互に複数配設されている。
【0036】
したがって、残っていた中央部分に対して最後の熱間プレス成形を行って真円状の丸形状鋼管3を成形したとき、開先2側の端面は遊転ローラ25群の外周面に当接される。これにより、丸形状鋼管3を管軸心方向に抜き出してプレス手段10から取り出す際に、開先2側の端面により遊転ローラ25群を遊転させることになって、その取り出しは摩擦抵抗など少なくして円滑に行えることになる。
【0037】
上記した実施の形態において、本体11の上面を遊転ローラ群により形成したときには、鋼板1の幅方向の移動をより円滑に行えることになる。
上記した実施の形態において、外径Φの異なる丸鋼管5を製造するときには、保持体12に対して、凹状成形面16の半径Rが異なる外型15を嵌め込み、そして昇降動装置に対して、凸状成形面18の半径rが異なる内型17を取り付ければよい。また板厚Tの変化に対しては、昇降動装置に対して、凸状成形面18の半径rが異なる内型17を取り付ければよい。
【0038】
上記した実施の形態では、7回のプレス成形を行うことで丸形状鋼管3を形成しているが、これは凹状成形面16や凸状成形面18の所定長さ、すなわち1回のプレス成形長さPLによっては、6回以下のプレス成形や9回以上のプレス成形で、少ない回数のプレス成形を行うことも可能である。
【0039】
上記した実施の形態では、付勢体として圧縮ばね23を採用した形式が示されているが、これは油圧利用の付勢方式を採用した形式などであってもよい。
上記した実施の形態では、溶接手段30の外側ロール33として、丸鋼管5の外径Φに対応した凹円弧状面33aを形成した形式が示されているが、これは丸鋼管5の外径Φの変化に応じた凹円弧状面を形成している外側ロールを任意に交換、配設し得るものである。
【0040】
上記した実施の形態では、両ローラ体20の接近限を、外型15の左右側面に当接することで規制しているが、これは別に設けたストッパー体にローラ軸21を当接させることにより規制してもよい。
【0041】
上記した実施の形態では、加熱手段9に通して加熱した鋼板1を、プレス手段10によって熱間プレス成形する形式が示されているが、これは加熱していない鋼板1をプレス手段10によって冷間プレス成形する形式などであってもよい。この場合、特に板厚Tの薄い丸鋼管の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1を示し、丸鋼管の製造設備における一端部のプレス成形前の正面図である。
【図2】同丸鋼管の製造設備における一端部のプレス成形時の正面図である。
【図3】同丸鋼管の製造設備における2回目のプレス成形前の正面図である。
【図4】同丸鋼管の製造設備における2回目のプレス成形時の正面図である。
【図5】同丸鋼管の製造設備における3回目のプレス成形時の正面図である。
【図6】同丸鋼管の製造設備における4回目のプレス成形時の正面図である。
【図7】同丸鋼管の製造設備における5回目のプレス成形時の正面図である。
【図8】同丸鋼管の製造設備における6回目のプレス成形時の正面図である。
【図9】同丸鋼管の製造設備における7回目のプレス成形時の正面図である。
【図10】同丸鋼管の製造設備における溶接手段部分の正面図である。
【図11】同丸鋼管の製造設備で製造した丸鋼管の正面図である。
【図12】同丸鋼管の製造設備における鋼板を示し、(a)は使用される鋼板の斜視図、(b)は開先が形成された鋼板の一部切り欠き正面図である。
【図13】同丸鋼管の製造設備における工程の概略説明図である。
【図14】本発明の実施の形態2を示し、丸鋼管の製造設備における7回目のプレス成形時の正面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 鋼板
2 開先
3 丸形状鋼管
4 溶接結合
5 丸鋼管
7 搬送経路
8 トリミング開先加工機
9 加熱手段
10 プレス手段
11 本体
12 保持体
14 ローラ体ガイド部
15 外型
16 凹状成形面
16A 延長面
17 内型
18 凸状成形面
19 昇降体
20 ローラ体
20a 外周
21 ローラ軸
22 受け部材
23 圧縮ばね(付勢体)
25 遊転ローラ
30 溶接手段
31 仮付け溶接部
32 本溶接部
W 所定幅
T 板厚
L 所定長さ
Φ 丸鋼管の外径
Φs 丸鋼管の内径
R 凹状成形面16の半径
r 凸状成形面18の半径
PL 1回のプレス成形長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の両端に開先を形成した所定幅の鋼板をプレス手段によりプレス成形したのち、溶接手段により開先間を溶接結合する丸鋼管の製造設備であって、プレス手段は、丸鋼管の外径に対応する半径の凹状成形面を所定長さに形成した外型と、丸鋼管の内径に対応する半径の凸状成形面を所定長さに形成しかつ前記外型に対して接近離間動自在な内型と、前記外型の両側外方に遊転自在に配設したローラ体とからなり、両ローラ体を、外型に対して接近離間自在に配設するとともに、付勢体により接近方向へ付勢し、ローラ体を外型に接近させたとき、その外周の一部が凹状成形面の延長面よりも内側に突出すべく構成したことを特徴とする丸鋼管の製造設備。
【請求項2】
外型の所定長さの凹状成形面と内型の所定長さの凸状成形面とによる1回のプレス成形長さが、丸鋼管の周長さの複数分の1であり、複数回のプレス成形によって丸形状に成形することを特徴とする請求項1記載の丸鋼管の製造設備。
【請求項3】
幅方向の両端に開先を形成した所定幅の鋼板を加熱手段により加熱し、この加熱した鋼板をプレス手段により熱間プレス成形することを特徴とする請求項1または2記載の丸鋼管の製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−90406(P2007−90406A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285720(P2005−285720)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000110446)ナカジマ鋼管株式会社 (37)
【Fターム(参考)】