説明

乗り物識別マーキング・システム

対象物を識別する方法は、ウレタン系塗料等の少なくとも1つの塗料層を一表面に有する乗り物を設けることからなる。固有の英数字識別標識が、選択された秘密位置に蛍光材料によって塗料層に適用される。過剰の蛍光材料が少なくとも1つの塗料層に残留するが、蛍光材料は少なくとも1つの塗料層内に移行することを許される。その後、過剰蛍光材料が少なくとも1つの塗料層から溶剤によって除去される。少なくとも1つの塗料層に移行された蛍光材料によってつくられた固有の別個識別標識は、紫外線を使用せずに、対象物表面に垂直な角度では実質的に認識できないが、対象物表面に対して鋭角度で認識できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物およびその他の対象物を識別するためのマーキング・システムに関し、特に、ほとんど認識できない固有の英数字識別標識をこのような乗り物またはその他の対象物につくるためのマーキング・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物識別番号(VIN)および車体識別番号(HIN)は、乗り物用の固有の英数字識別標識を与えるために、長年に亘って自動車およびボートにそれぞれ用いられてきた。これらのVINおよびHIN英数字識別標識は、乗り物が正しく登録されているか否かを決定するさいに、ならびに盗難乗り物を発見しかつ戻すために、有用である。連邦法および州法は、この目的のために自動車にVINおよびボートにHINのマーキングを要求している。これらのVINおよびHINは、製造者および特定の自動車の識別を許す基準、選択的には自動車の製造年月日および自動車の備品に基づいて識別標識を製造者によって自動車に広く適用される。陸上乗り物の場合には、連邦法は、車体およびキー乗り物部品の秘密位置に記録されるべきVINを要求している。連邦法はまた、認識できかつ番号の除去または変更をするいかなる試みを示す仕方でボートに記録されるべきHINを要求している。
【0003】
連邦法によって要求されている規定を越えて自動車の他の部品にVINを記録することが一般的になってきた。例えば、盗難車から剥ぎ取られた部品の追跡を許すために、VINが自動車のガラスに食刻または記録される。コネチカット州チェーシャー所在のVice Script Incorporatedによって採用されたシステムは、この点に関しては特に成功している。
【0004】
このような乗り物に対するマーキング要求にもかかわらず、VINおよびHIN標識の位置は泥棒にとっては広く知られている。その結果、乗り物が盗まれた後には、VINまたはHIN標識を除去または変更する試み、ある場合には、偽番号との入替え、乗り物が盗まれた事実の隠蔽の試みがしばしばなされている。
【0005】
泥棒にとっては困難であるが、対象物が回収された場合に容易に識別できるようにする仕方および位置に乗り物またはその他の対象物に固有の識別標識を記録できることが有用であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、従来技術の問題および欠点を考慮に入れて、本発明の目的は、改良された乗り物識別記録システムを提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、乗り物の秘密位置に適用されうる乗り物識別記録システムを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、識別標識が乗り物表面に垂直な角度で見たときに昼光では実質的に認識できないが、鋭角度では認識できる乗り物識別記録システムを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、乗り物表面、その表面上の1またはそれを超える塗料層等に埋め込まれてもよい乗り物識別記録システムを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、上方塗料層が取り除かれるかまたは表面が再塗装されても、識別標識が残る乗り物識別記録システムを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、剥き出しの金属、塗装表面、ファイバグラスに使用されてもよい改良された乗り物識別記録システムを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、周囲状態においても容易に適用され得る秘密乗り物識別標識を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
当業者にとっては明らかである上記およびその他の目的は、対象物を識別する方法に向けられた本発明において達成される。対象物を識別する方法は、少なくとも1つの塗料層を一表面に有する乗り物を設けること、英数字識別標識等の対象物に対する固有の個別識別標識を決定することからなる。固有の個別識別標識は、好ましくは選択された秘密位置に蛍光材料によって表面の塗料層に適用される。過剰の蛍光材料が少なくとも1つの塗料層に残留するが、蛍光材料は少なくとも1つの塗料層内に移行することを許される。その後、過剰蛍光材料が少なくとも1つの塗料層から溶剤によって除去される。少なくとも1つの塗料層に移行された蛍光材料によってつくられた固有の別個識別標識が、紫外線を使用せずに、対象物表面に垂直な角度では実質的に認識できないが、対象物表面に対して鋭角度で認識できる。
【0014】
対象物は自動車であり、塗料層が自動車の金属表面を覆っている。本方法は、塗料がウレタン系塗料からなる場合には特に有用である。好ましくは、対象物は表面に複数の塗料層を有する。固有の個別識別標識が上方塗料層に適用され、蛍光材料が上方塗料層を通過し、少なくとも1つの下方塗料層内に移行し、過剰蛍光材料が上方塗料層に残留する。対象物および蛍光材料が全過程中ほぼ室温に留まっている。
【0015】
好ましくは、蛍光材料は液体、例えば、非水系紫外線インクであり、また、溶剤は非水系溶剤である。固有の個別識別標識がブラシによって塗料層に塗布され、また、個別識別標識の切抜きを含むステンシルを使用することによってさらに塗料層に適用されることもできる。
【0016】
別の観点においては、本発明は対象物を識別する次の方法に向けられている。この方法は、複数の塗料層(好ましくは、ウレタン系塗料)を一表面に有する対象物を設けること、対象物に対する固有の個別識別標識を決定すること、固有の個別識別標識を蛍光材料によって複数の塗料層のうち上方層に適用することからなる。過剰の蛍光材料が上方塗料層に残留するが、蛍光材料が上方塗料層を通過しかつ上方塗料層下の少なくとも1つの追加塗料層内に移行することを許される。本方法は次いで、過剰の蛍光材料を上方塗料層から溶剤によって除去し、それにより、少なくとも1つの追加塗料層に移行された蛍光材料によってつくられた固有の別個識別標識がそこに留まり、上方塗料層の除去のさいに認識できるか、または別の塗料層の追加によっても認識できる。
【0017】
さらに別の観点においては、本発明は対象物を識別する次の方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの塗料層を一表面に有する対象物を設けること、対象物に対する固有の個別識別標識を決定すること、固有の個別識別標識を、ブラシを用いて液体蛍光材料によって表面上の少なくとも1つの塗料層にほぼ室温で塗布することからなる。過剰の蛍光材料が少なくとも1つの塗料層に残留するが、蛍光材料が少なくとも1つの塗料層内にほぼ室温で移行することを許される。過剰の蛍光材料を少なくとも1つの塗料層から溶剤によって除去し、それにより、少なくとも1つの塗料層に移行された蛍光材料によってつくられた固有の別個識別標識が認識できる。
【0018】
さらに別の観点においては、本発明は対象物を識別する次の方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの塗料層を一表面に有する対象物を設けること、対象物に対する固有英数字識別標識を決定することからなる。次の段階によって固有英数字識別標識のステンシルがつくられる。その段階は、剥離シートに取り付けられた接着剤裏当て層を有するステンシル・シートを設けること、剥離シートに切込みを入れずに英数字識別標識をステンシル・シート内に切込みを入れること、切込みを入れられた英数字識別標識および接着剤裏当て層と共にステンシル・シートを剥離シートから取り除くことを含む。切込みを入れられた英数字識別標識および接着剤裏当て層と共にステンシル・シートが第2接着剤層の上に置かれ、そして、ステンシル・シートおよび接着剤裏当て層は切込みを入れられた英数字識別標識なしに第2接着剤層から取り除かれ、ステンシル・シートに切抜き開口をつくりかつ第2接着剤層に切込みを入れられた英数字識別標識を残す。ステンシル・シートおよび接着剤裏当て層は切抜き開口と共に対象物表面の少なくとも1つの塗料層に続いて置かれ、蛍光材料が切抜き開口を介してかつ表面上の少なくとも1つの塗料層にステンシル・シートに塗布される。ステンシル・シートおよび接着剤裏当て層が対象物の表面から取り除かれ、固有英数字識別標識の形体の蛍光材料を少なくとも1つの塗料層に残す。本方法は、過剰の蛍光材料が少なくとも1つの塗料層に残留するが、蛍光材料が少なくとも1つの塗料層内に移行することを許すこと、ならびに過剰の蛍光材料を少なくとも1つの塗料層から除去することを含み、それにより、少なくとも1つの塗料層内に移行された蛍光材料によってつくられた固有英数字識別標識が認識できる。
【0019】
本発明は、別の観点において、対象物を秘密に識別する方法に向けられている。この方法は、表面を有する乗り物を設けること、乗り物表面の一部に所望の秘密位置を選択することからなる。対象物に対する固有の個別識別標識は、乗り物表面を垂直に見たとき昼光では普通に認識できないマーキング流体によって乗り物表面の秘密位置に適用される。マーキング流体は、過剰のマーキング流体を乗り物表面に残すが、秘密位置において固有の個別識別標識の形体で乗り物表面に埋め込まれることを許される。本方法は、乗り物表面の過剰のマーキング流体を除去することを含む。乗り物表面に埋め込まれたマーキング流体によって形成された固有の個別識別標識が乗り物表面に対して鋭角度でまたは昼光以外の光線を用いることによって秘密位置において認識できる。本方法はまた、乗り物が識別されるべきことを要求された場合に、検索用探索データベースに固有の個別識別標識および乗り物表面の秘密位置を記録することを含む。
【0020】
乗り物表面は金属からなり、マーキング流体によって形成された固有の個別識別標識が金属に埋め込まれる。乗り物表面はたとえばウレタン系塗料などの塗装表面からなり、マーキング流体によって形成された固有の個別識別標識が表面の塗料に埋め込まれる。代案として、乗り物表面はファイバグラスからなり、マーキング流体によって形成された固有の個別識別標識がファイバグラスに埋め込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
新規であると信じられる本発明の特徴および本発明の要素の特性は、特に特許請求の範囲と共に述べられる。添付図面は説明の目的のためだけであり、縮尺通りに描かれてはいない。しかし、本発明それ自体は、構成および動作の方法に関して、添付図面と関連してなされている詳細な記載を参照することによって、最もよく理解されるであろう。
【0022】
本発明の好適実施例を記載するに当たり、同様の参照番号が本発明の同様な特徴を参照している図面の図1−9に対してここに言及される。
【0023】
本発明は、固有の個別識別標識が記録されることを許す対象物の金属、塗装金属、ファイバグラス表面に事実上は認識できないが容易に識別できる個別のマーキングをつくる方法およびシステムを提供する。本発明は、自動車、トラック、ボート等の乗り物に特に有用であるが、盗難を受けやすいかさもなければ追跡される必要がある他の対象物に対しても用いられてもよい。固有の識別標識は、対象物が識別される必要がある場合に、探索データベースに記憶されてもよい。ネットワークに固有の識別標識をつくり追跡する方法は、本願と同日に出願された係属中の米国特許願第 号(代理人事件整理番号第VIC100002000)に開示されている。
【0024】
自動車またはその他の対象物が追跡されることがあるためには、固有の個別識別標識が対象物に対して設けられなければならない。この固有の個別識別標識は、それが置かれる背景から識別できる別個の記号、例えば、英数字記号またはロゴでなければならない。陸上乗り物およびボートの場合には、製造者は乗り物の既知位置に記録されかつ乗り物の登録のさいに行政機関に提出されたVINおよびHIN識別子をそれぞれ通常は設けている。本発明は、乗り物の1またはそれを超える追加の通常は秘密または暴露されていない位置に記録されるべきこのようなまたはその他の固有の個別識別子を提供する。乗り物はここで以下に記載された好適実施例において用いられるが、本発明は記録に適した表面を有する任意の対象物に広く適用され得ることを理解されたい。
【0025】
本発明に関連して利用されるべき好適マーキング材料は、紫外線源を使用せずには、昼光では普通に認識できない蛍光材料である。このような蛍光材料は、クマリン、p−ジアミノスチルベンジスルホン酸およびシアヌル酸塩化物の反応によって生成されたジアミン、p−ジステリルビフェニル、ナフトトリアゾリルスチルベン、ならびに1,3−二基置換ピラゾリン等の蛍光白色化剤を含み、適切な乗り物に配合される。例として、アルキルアミノクマリン、例えば、7−ジメチルアミノ−4−メチルクマリン等のジローアのアルキルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−4−メチルクマリン等を含む。その他の適切な材料は、4,4’−ビス[(4−アニリン−6−モルホリノ−s−トリアジン−2−yl)アミノ]2,2’−スチルベンジスルホン酸、4,4’−ビス{{4−アニリン−6−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−s−トリアジン−2−yl}アミノ}−2,2’−スチルベンジスルホン酸、4,4’−ビス[(4,6−ジアニリン−s−トリアジン−2−yl)アミノ]−2,2’−スチルベンジスルホン酸、4,4’−ビス[[4−アニリン−6−[(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]−s−トリアジン−2−yl]アミノ]−2,2’−スチルベンジスルホン酸ジソジウム塩、および4,4’−ビス[[4−アニリン−6[N−2−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ]−s−トリアジン−2−yl]アミノ]−2,2’−スチルベンジスルホン酸ジソジウム塩、2,2’−(4,4’−ビフェニル ジビニル)ジベンゼンスルホン酸ジソジウム塩等の置換p−ジスチリルビフェニル、4−(2H−ナフト[1,2−d]トリアゾル−2−yl)−2−スチルベンスルホン酸ソジウム塩等の置換ナフトトリアゾリルスチルベン、およびp−[3−(p−クロロフェニル)−2−ピラゾリン−1−y1]ベンゼンスルホンアミド等の1,3−二基置換ピラゾリンを含む。
【0026】
実質的に無色蛍光材料は、液体の形体で、好ましくはケトンまたはエーテル等の非水溶媒系を有する溶液として好ましくは供給される。この場合、蛍光材料は約0.5−4重量%からなる。適切な蛍光材料は、テキサス州アービング所在のOrganic Products Companyによって供給されているF−UV紫外線インクである。このような蛍光マーキング液は、液体のブラシ塗布、噴霧等による任意の通常の仕方で個別識別標識を塗布するように用いられてもよい。しかし、蛍光マーキング液を塗布する好ましい仕方は、ステンシルを介してである。適切なステンシル・マーカは、テキサス州シャーマン所在のSign Warehouse.comから入手できるLynx Sign Cutter,Model S−60である。
【0027】
図1および2に示すように、ステンシル20は、剥離層26によって保護された接着剤層24を底面に有するステンシル材料22の従来層からなる。固有の個別識別標識30は、乗り物それ自体の個別識別標識ばかりではなく、識別標識を適用または委任する実体を確認する連続文字および番号30からなる。図1に示す例では、VINMARKは識別標識を適用する実体であり、また、VINABCD1234は本発明のマーキングが適用されるべき乗り物に対して製造者によって事前に割り当てられた固有の乗り物識別番号である。図2に示すように、英数字30は、上面から延びるスリット32によってステンシル層22に部分的にではあるが完全にではなく切り込まれている。
【0028】
ステンシルを乗り物表面に貼着するために、図3に示すように、剥離層が取り除かれ、残留するステンシル・シート22および接着剤層24が別の接着剤層34に貼着される。好ましくは、従来のマスキング・テープが採用される。マスキング・テープは、マスキング・テープ接着剤34が塗布されるテープ層36を含む。英数字30の切抜きをつくるために、ステンシル材料22および接着剤層24がマスキング・テープ接着剤34から注意深く剥がされて、英数字30のステンシル部分がマスキング・テープに残るが、残留ステンシルは、図4に示すように英数字30が除去された切抜き開口30′を有する。ステンシル材料22および接着剤層24は、乗り物の表面に貼着される準備ができる。
【0029】
本発明の識別標識が適用されてもよい表面は、自動車のエンジン・ブロックまたは無塗装下部表面等の剥き出しの金属表面でもよい。ボートの場合には、表面はファイバグラスでもよく、それは一般にファイバグラス強化コアを覆うゲル・コートからなる。このようなファイバグラス系は通常はポリエステルまたはエポキシ樹脂系を使用し、また、ゲル・コート樹脂は炭酸カルシウム、酸化アルミニウム三水和物、タルク、珪酸エステル粒子、二酸化チタン、および着色顔料を追加的に含んでもよい。自動車またはトラックの場合には、マーキングは塗装本体表面に適用されてもよく、それは金属、ファイバグラス、またはプラスチック本体パネルの1またはそれを超える層からなる。すべての場合において、マーキングは、フェンダまたはドアパネルの下端等、乗り物の秘密、非暴露、目立たない位置に適用されることが好ましい。マーキングが適用されるべき表面の形式にかかわらず、それはオイルおよびグリースを除去するために慣用の洗浄製品(好ましくは溶媒)によって十分に洗浄されなければならない。
【0030】
図5および6に示すように、ステンシルおよび接着剤層24は、シート金属パネル50からなる塗装本体パネルの上面58に確実に塗布される。シート金属パネル50上には、一次塗料層52、一次またはベース色彩塗料層54、および透明被覆層等の上塗り塗料層56が貼着される。通常は、これらの層の各々は、多層被覆状に貼着される。ベースおよび上塗り(透明)塗料層は、通常はポリウレタン等のウレタン化合物またはウレタン系である。その場合、ベース塗料層は、分散された金属剥片を選択的に伴った色彩顔料を含有する。一次層は、腐食抑制層、通常はウレタン系である。全塗料層の厚みは、約0.003in(0.075mm)から約0.006in(0.15mm)の範囲内で、通常は0.010in(0.25mm)未満である。各塗料層は約0.0005in(0.0125mm)から約0.002in(0.05mm)の範囲内にある。
【0031】
ステンシル接着剤層24が乗り物表面に貼着された後に、図5および6に示すように、無色蛍光マーキング液40が英数字識別標識用の切抜き開口30′内に塗布される。マーキング液40は、英数字切抜き開口30′内およびその上に過剰に通常は塗布される。好ましくは、ブラシが蛍光マーキング液40をステンシルに塗布するように用いられる。蛍光マーキング液が1またはそれを超える塗料層を通過して移行し、実質的な水平移行なしにそこに埋め込まれるので、固有の識別標識が個別に留まる。所定の時間(例えば、5分)、マーキング流体を乾燥させた後に、ステンシル材料22および接着剤層24が取り除かれ、本体パネル(図7)の上面58にマーキング流体部分40aを残す。加熱が乾燥および移行過程を加速するが、マーキング液の塗布は実質的に室温(約25℃以下の温度)で加熱なしになされてもよいことがわかった。
【0032】
ステンシルの除去後、埋込マーキング液40′が好ましくはすべての塗料層52、54、56に浸透するように、追加の時間が許されてもよい。続いて、表面58上のマーキング流体40aの一部が洗浄されるかさもなければ除去される(図8)。これは、乾燥マーキング流体を表面からほぼ完全に除去するように、アルコールまたはその他の適切な溶剤を塗布することによってなされてもよい。
【0033】
実質的に無色かつ認識不能蛍光マーキング液によって形成された埋込英数字40′が紫外線光線62を放射するUV光源60の使用によって容易に認識されてもよいが、本発明に基づく英数字識別標識を形成する埋込マーキング流体40′がUV光源60を必要とせずに認識されることが驚くべきことにわかった。図8の線66に示すように、上面58に垂直な方向で見たとき、昼光または常態の屋内照明では実質的に認識できないが、図8の線68に示すように、表面に対して鋭角度θの方向で見たとき、英数字は約1メートルの範囲内で昼光または常態の屋内照明で認識できる。
【0034】
このようにして、埋込識別標識が事実上は認識できないので、本発明のマーキング・システムは、対象物の外観を損なわずに自動車またはその他の対象物表面の可視装飾パネルに適用されてもよい。特別のマークを近づいて鋭角度で見るだけで、固有の英数字識別標識が見られる。乗り物の既知の位置にあるVINまたはHIN番号を普通に除去または変更する泥棒は、本発明によって設けられたような秘密のVINまたはHIN識別標識に通常では気付かないであろう。
【0035】
さらに驚異的なことには、乗り物が再塗装されたとしても、マーキングはいぜんとして認識できることがわかった。例えば、上方透明コートおよび顔料ベース塗料層のいくつかまたはすべてが、別のマーキングなしに、上述した仕方で記録されかつ再塗装された領域から除去された。このような場合に、最初の層に埋め込まれた英数字識別標識40′の存在、または新たに塗布された塗料層の下に残るベースもしくは一次層52は、図8に関連して記載された仕方で新たに塗布された塗料を介して英数字識別標識を認識できるようにする。したがって、再塗装された乗り物は、本発明のマーキング・システムによっていぜんとして追跡されかつ識別される。
【0036】
本発明に基づいて記録された乗り物または対象物を追跡できるようにするために、乗り物の位置ばかりではなく固有の個別識別標識が探索データベースに記憶される。ここに用いられたように、探索データベースと言う用語は、記録された乗り物の一部または全体が一旦回収されたとき、乗り物所有者、乗り物特徴、固有識別標識を適用した固有の個別識別標識および位置を含めたファイルが配置されたコンピュータに組み込まれたデータベースを言う。通常は、探索データベースは、固有の識別標識を適用する実体によって維持され、選択的にこのような情報が行政機関に伝送されてもよい。このようなデータベース・システムは、同日に出願された係属中の米国特許願第 号(代理人事件整理番号第VIC100002000)に開示されている。
【0037】
本発明は特別に好適な実施例に関連して格別に記載されてきたが、多くの変更、修正、変形が上述の記載に照らして当業者にとって明らかであることは、明白である。従って、添付特許請求の範囲はこのような変更、修正、変形を本発明の真実の範囲および精神に入る限り、包摂していることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】部分切抜き固有英数字識別標識を含むステンシルの上面図である。
【図2】図1の2−2線から見たステンシルの縦断面図である。
【図3】図2のステンシルの縦断面図であって、剥離層が除去され、別の接着テープ層に貼着された状態のステンシルを示す。
【図4】図3のステンシルの縦断面図であって、テープ層が除去された後に英数字識別標識の切抜きを残した状態のステンシルを示す。
【図5】塗装面に貼着された図4のステンシルの縦断面図であって、蛍光マーキング材料がステンシル切抜き部に塗布された状態を示す。
【図6】図5のステンシルおよびマーキング材料の上面図である。
【図7】ステンシルが除去された後の図5および6の塗装面の縦断面図であって、塗装面に過剰マーキング材料が残った状態を示す。
【図8】過剰マーキング材料を除去した後における図7の塗装面の縦断面図であって、紫外線ランプを用いて塗料層に埋め込まれた英数字識別標識の状景を示す。
【図9】図8の埋込マーキング流体の上面図であって、英数字識別標識を示す。
【符号の説明】
【0039】
20 ステンシル
22 ステンシル材料
24 接着剤層
26 剥離層
30 個別識別標識
30’ 切抜き開口
32 スリット
34 接着剤層
36 テープ層
40 無色蛍光マーキング液
40’ 埋込マーキング液
40a マーキング流体部分
50 シート金属パネル
52 一次塗料層
54 ベース色彩塗料層
56 上塗り塗料層
58 表面
60 UV光源
62 紫外線光線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの塗料層を一表面に有する対象物を設けること、
前記対象物に対する固有の個別識別標識を決定すること、
前記固有の個別識別標識を蛍光材料によって前記表面上の前記少なくとも1つの塗料層に適用すること、
過剰の蛍光材料が前記少なくとも1つの塗料層に残留するが、該蛍光材料が前記少なくとも1つの塗料層内に移行することを許すこと、ならびに
前記過剰の蛍光材料を前記少なくとも1つの塗料層から溶剤によって除去することからなり、それにより、前記少なくとも1つの塗料層に移行された蛍光材料によってつくられた固有の別個識別標識は、対象物表面に垂直な角度では実質的に認識できないが、紫外線を使用せずに対象物表面に対して鋭角度で認識できる、
対象物を識別する方法。
【請求項2】
前記対象物は表面に複数の塗料層を有し、前記固有の個別識別標識が上方塗料層に適用され、前記蛍光材料が前記上方塗料層を通過し、少なくとも1つの下方塗料層内に移行し、過剰蛍光材料が前記上方塗料層に残留する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象物および前記蛍光材料がほぼ室温に留まっている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記蛍光材料が液体であり、前記溶剤が非水系溶剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象物が自動車であり、前記塗料層が自動車の金属表面を覆っている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固有の個別識別標識は、選択された秘密の位置で前記物体に適用される英数字識別標識である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記蛍光材料が液体であり、前記固有の個別識別標識がブラシによって前記塗料層に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光材料が液体であり、前記固有の個別識別標識が個別識別標識の切抜きを含むステンシルを使用することによって前記塗料層に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記蛍光材料は液体であり、固有の個別識別標識が英数字識別標識の切抜きを含むステンシルの使用によって塗料層に塗布され、該ステンシルは、(a)剥離シートに取り付けられた接着剤裏当て層を有するステンシル・シートを設けること、(b)剥離シートに切込みを入れずに英数字識別標識をステンシル・シートに切込みを入れること、(c)切込みを入れられた英数字識別標識および接着剤裏当て層と共に前記ステンシル・シートを前記剥離シートから取り除くこと、(d)切込みを入れられた英数字識別標識および接着剤裏当て層と共に前記ステンシル・シートを第2接着剤層の上に置くこと、(e)前記ステンシルおよび接着剤裏当て層を、切込みを入れられた英数字識別標識なしに前記第2接着剤層から取り除き、前記ステンシル・シートに切抜き開口をつくりかつ前記第2接着剤層に切込みを入れられた英数字識別標識を残すことによってつくられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光材料は非水系紫外線インクからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記塗料はウレタン系塗料である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数の塗料層を一表面に有する対象物を設けること、
前記対象物に対する固有の個別識別標識を決定すること、
前記固有の個別識別標識を蛍光材料によって複数の塗料層のうち上方層に適用すること、
過剰の蛍光材料が前記上方塗料層に残留するが、該蛍光材料が前記上方塗料層を通過しかつ該上方塗料層下の少なくとも1つの追加塗料層内に移行することを許すこと、ならびに
前記過剰の蛍光材料を前記上方塗料層から溶剤によって除去することからなり、それにより、前記少なくとも1つの追加塗料層に移行された蛍光材料によってつくられた固有の別個識別標識が、そこに留まり、上方塗料層の除去のさいに認識できる、
対象物を識別する方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの追加塗料層内に移行された蛍光材料によってつくられた固有の個別識別標識が前記追加塗料層に残留し、上方塗料層除去および別の塗料層追加のさいに認識できる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塗料がウレタン系塗料である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの塗料層を一表面に有する対象物を設けること、
前記対象物に対する固有の個別識別標識を決定すること、
前記固有の個別識別標識を、ブラシを用いて液体蛍光材料によって前記表面上の前記少なくとも1つの塗料層にほぼ室温で塗布すること、
過剰の蛍光材料が前記少なくとも1つの塗料層に残留するが、該蛍光材料が前記少なくとも1つの塗料層内にほぼ室温で移行することを許すこと、ならびに
前記過剰の蛍光材料を前記少なくとも1つの塗料層から溶剤によって除去することからなり、それにより、前記少なくとも1つの塗料層に移行された蛍光材料によってつくられた固有の別個識別標識が認識できる、
対象物を識別する方法。
【請求項16】
前記塗料がウレタン系塗料である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの塗料層を一表面に有する対象物を設けること、
前記対象物に対する固有英数字識別標識を決定すること、
次の段階(a)−(e)によって前記固有英数字識別標識のステンシルをつくること、
(a)剥離シートに取り付けられた接着剤裏当て層を有するステンシル・シートを設けること、(b)剥離シートに切込みを入れずに英数字識別標識をステンシル・シートに切込みを入れること、(c)切込みを入れられた英数字識別標識および接着剤裏当て層と共に前記ステンシル・シートを前記剥離シートから取り除くこと、(d)切込みを入れられた英数字識別標識および接着剤裏当て層と共に前記ステンシル・シートを第2接着剤層の上に置くこと、(e)前記ステンシル・シートおよび接着剤裏当て層を、切込みを入れられた英数字識別標識なしに前記第2接着剤層から取り除き、前記ステンシル・シートに切抜き開口をつくりかつ前記第2接着剤層に切込みを入れられた英数字識別標識を残すこと、
前記ステンシル・シートおよび接着剤裏当て層を前記切抜き開口と共に前記対象物表面の前記少なくとも1つの塗料層に適用すること、
前記蛍光材料を、前記切抜き開口を介してかつ前記表面上の前記少なくとも1つの塗料層に前記ステンシル・シートへ塗布すること、
前記ステンシル・シートおよび接着剤裏当て層を前記対象物の表面から取り除き、前記固有英数字識別標識の形体の蛍光材料を前記少なくとも1つの塗料層に残すこと、
過剰の蛍光材料が前記少なくとも1つの塗料層に残留するが、該蛍光材料が前記少なくとも1つの塗料層内に移行することを許すこと、ならびに
前記過剰の蛍光材料を前記少なくとも1つの塗料層から除去することからなり、それにより、前記少なくとも1つの塗料層に移行された蛍光材料によってつくられた固有英数字識別標識が認識できる、
対象物を識別する方法。
【請求項18】
前記塗料はウレタン系塗料である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
表面を有する乗り物を設けること、
前記乗り物表面の一部に所望の秘密位置を選択すること、
対象物に対して固有の個別識別標識を決定すること、
乗り物表面を垂直に見たとき昼光では普通に認識できないマーキング流体によって前記乗り物表面の前記秘密位置に前記固有の個別識別標識を塗布すること、
過剰のマーキング流体を前記乗り物表面に残すが、前記マーキング流体を前記秘密位置に前記固有の個別識別標識の形体で前記乗り物表面に埋め込まれることを許すこと、
前記乗り物表面の前記過剰のマーキング流体を除去し、これにより前記乗り物表面に埋め込まれたマーキング流体によって形成された前記固有の個別識別標識が前記乗り物表面に対して鋭角度でまたは昼光以外の光線を用いることによって前記秘密位置において認識できるようにすること、ならびに
乗り物が識別されるべきことを要求された場合に、検索用探索データベースに前記固有の個別識別標識および前記乗り物表面の秘密位置を記録することからなる、
乗り物を秘密に識別する方法。
【請求項20】
前記乗り物表面は金属からなり、前記マーキング流体によって形成された前記固有の個別識別標識が前記金属に埋め込まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記乗り物表面は塗装表面からなり、前記マーキング流体によって形成された前記固有の個別識別標識が前記表面の塗料に埋め込まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記乗り物表面はウレタン系塗料によって塗装された表面からなり、前記マーキング流体によって形成された前記固有の個別識別標識が前記表面の塗料に埋め込まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記乗り物表面はファイバグラスからなり、前記マーキング流体によって形成された前記固有の個別識別標識が前記ファイバグラスに埋め込まれる、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−522915(P2007−522915A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541664(P2006−541664)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/039359
【国際公開番号】WO2005/051718
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506165140)
【Fターム(参考)】