説明

乗客コンベアの警告装置

【課題】過積載状態による電動機過負荷状態とならないように、又は、早急に緩和ができる乗客コンベアの警告装置を提供する。
【解決手段】乗客コンベアを駆動する誘導電動機1の電源線に流れる通電電流を検出する外付けの電流センサー5,6と、この通電電流が、過積載状態を示す所定値以上のときに、乗客コンベア50への乗り込み抑制を促す過積載信号を出力する警告制御部7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアへの乗り込み抑制を促す過積載信号を出力する乗客コンベアの警告装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアの駆動回路を含む制御装置90としては、図6の接続図に示すものがある。
【0003】
図6に示すように、乗客コンベア100の上階側に収納された乗客コンベア駆動用の誘導電動機1と、この誘導電動機1に電力を供給する三相電源2と、回路保護用の過電流遮断器4と、三相電源2から供給される三相電力の相順を切り換えて、誘導電動機を正転又は逆転させるために設けられた上昇運転用電磁接触機3Uと、同じく下降運転用電磁接触機3Dから構成されている。
【0004】
乗客コンベア100は、一定速度(例えば、30m/分)で運転されるために、誘導電動機1は電源周波数に同期した速度で駆動されるが、負荷の増加によって滑りが発生するので、その分だけ駆動速度が遅れる。しかし、通常はその範囲が数%以内で、無負荷時には、30m/分の駆動速度となるように、回転数と減速機が選定される。したがって、過積負荷が増えると、滑りも増え、ほぼそれに比例して出力トルクも増え、平衡したところで運転される。
【0005】
但し、乗客コンベア100の場合にはエレベータと異なり、無端であって利用者が一方の端部では次々に乗り込んでくると同時に、他方の端部からも次々降りてくるために、過積負荷を直接検出することはできない。
【0006】
そのため、最近では乗客コンベア100の新規設置時には、電流センサー等により過積載検出機能を有するものが殆どであるが、既に設置されている乗客コンベア100の中には、過積載状態を検出する手段がないものがある。
【0007】
しかしながら、既に設置されている乗客コンベア100も、実際に運転されるときには過積載状態に陥るような負荷が掛かる場合があり、特に駅のホーム等で使用される乗客コンベア100の場合には、時間帯によってこの過積載の状態がかなり長時間にわたって続くこともある。
【0008】
そのため、特許文献1においては、電動機の1次側に電力計を設置し、この電力計で計測した電力に基づいて、警告や案内放送を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−206353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の構成では、乗客コンベアの制御装置における回路変更が伴うため、乗客コンベアの製造元でないと、既設の乗客コンベアに適用することが困難であるという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、過積載状態による電動機過負荷状態とならないように、又は、早急に緩和ができる乗客コンベアの警告装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、乗客コンベアを駆動する電動機と、前記電動機の電源線に流れる通電電流を検出する外付けの検出器と、前記検出器が検出した前記通電電流が、過積載状態を示す所定値以上のときに、前記乗客コンベアへの乗り込み抑制を促す過積載信号を出力する警告制御部と、を有することを特徴とする乗客コンベアの警告装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外付けの検出器を有する警告装置を設けるだけで、乗客コンベアへの乗り込み抑制を促す過積載信号を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例に係る乗客コンベアの全体図である。
【図2】警告制御部のブロック図である。
【図3】警告装置の全体図である。
【図4】乗り込み口にある表示部の一例である。
【図5】乗り込み口にある表示部の他の表示例である。
【図6】従来の乗客コンベアの全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例の乗客コンベア50について図1〜図5に基づいて説明する。
【0016】
この乗客コンベア50は、駆動回路を含む制御装置40と、乗客コンベア50への乗り込み抑制を促す過積載信号を出力するための警告装置30とを有している。
【0017】
まず、図1に基づいて乗客コンベア50の制御装置40について説明する。
【0018】
乗客コンベア50の上階側に収納された乗客コンベア駆動用の誘導電動機1と、この誘導電動機1に電力を供給する三相電源2と、回路保護用の過電流遮断器4と、三相電源2から供給される三相電力の相順を切り換えて、誘導電動機を正転又は逆転させるために設けられた上昇運転用電磁接触機3Uと、同じく下降運転用電磁接触機3Dから構成されている。
【0019】
ここで、上昇運転用電磁接触機3Uと下降運転用電磁接触機3Dは、三相電源2のうち二相が逆に接続され相順が変わっているために、それらの電磁接触機3U,3Dの切り換えによって、回転磁界の方向を変え、誘導電動機1の回転方向を逆転させ、乗客コンベア50は、上昇又は下降運転をされる。この場合、一般的に乗客コンベアは、30m/分の一定速度で駆動される。
【0020】
すなわち、乗客コンベア50を上昇運転する場合には、上昇運転用電磁接触機3Uを投入して誘導電動機1を正転して駆動し、下降運転する場合には、下降運転用電磁接触機3Dを投入し、第一相と第三相を入れ換えて誘導電動機1を逆転して駆動する。
【0021】
次に、警告装置30について説明する。
【0022】
警告装置30は、図1〜図3に示すように、警告制御部7、電流センサー5,6、下階側の表示部8、上階側の表示部9、音声合成装置10、監視装置12を有している。
【0023】
検出器である電流センサー5,6は、乗客コンベア50の駆動用の誘導電動機1に電源線によって供給される三相の交流電流を測定するために、電源線の第一相と第二相に設けられたクランプ式の電流センサーである。この電流センサー5,6が検出した検出電流信号は、警告制御部7に信号線5a,6aによって出力される。
【0024】
警告制御部7は、図2に示すように、数値読込部71、演算部72、入力部74、表示部75、記憶部73、監視装置出力部76、表示出力部77、音声出力部78を有する。
【0025】
この警告制御部7は、マイコンによって実現することができ、例えば、図2に示すように、入力ポート14、CPU15、メモリ16、出力ポート17より構成することができる。
【0026】
数値読込部71には、電流センサー5,6からの信号線5a,6aが接続され、2つの電流センサー5,6からの検出電流信号が入力される。この数値読込部71は、入力ポート14に対応する。
【0027】
演算部72においては、記憶部73に記憶されている誘導電動機1の定格電流と、入力した検出電流信号の実効値とを比較し、定格電流よりも、検出電流信号の実効値が大きければ、過積載であることを表す過積載信号を監視装置出力部76、表示出力部77、音声出力部78に出力する。ここで、2つの電流センサー5,6から2つの検出電流信号が入力されるため、演算部72において比較する検出電流信号としては、2つの検出電流信号の実効値の平均値、又は、大きい方の検出電流信号の実効値で演算を行う。
【0028】
入力部74は、図3に示すようにテンキーより構成され、誘導電動機1の定格電流を入力するためのものである。
【0029】
表示部75は、例えば液晶パネルから構成され、入力した定格電流と、乗降率等を表示する。ここで「乗降率」とは、検出した検出電流信号が、定格電流に対してどれぐらいの負荷割合で駆動しているかを示す値であり、演算部72によって計算される。
【0030】
監視装置出力部76、表示出力部77、音声出力部78は、出力ポート17に対応するものであり、それぞれ下階側の表示部8、上階側の表示部9、音声合成装置10、監視装置12に過積載信号を出力する。
【0031】
下階側の乗り込み口の表示部8、上階側の乗り込み口にある表示部9には、例えば図4に示すような「満員です。一列に並んでお乗り下さい。」のような表示や、図5に示すように前記計算した乗降率を表示して、利用者に対し乗り込みの抑制を行うよう促す。
【0032】
また、音声合成装置10においては、「満員です。一列に並んでお乗り下さい。」や、乗降率が110%であることを音声合成によってスピーカ11から出力して、同様に利用者の乗り込みの抑制を行う。
【0033】
監視装置12においても、過積載信号が入力されると、この乗客コンベアの管理者へ過積載である旨を警告する。
【0034】
警告装置30の電源は、商用電源から得るものであり、コンセント79から供給されている。そして、既設の乗客コンベア50の制御装置40とは完全に分離しているため、既設の乗客コンベア50への適用が容易となる。
【0035】
本実施例によれば、積載荷重を通電電流から検出し、誘導電動機が過負荷で加熱する前に、新たな乗り込みを抑制することにより、誘導電動機1の加熱を未然に防止することができる。そのため、乗客コンベア50の失速や逆転を防止し、乗客コンベア50の安全を確保することができる。したがって、既設の乗客コンベアの制御装置の保護機能の向上することができる。
【0036】
また、電流センサー5,6はクランプ式であって、外付けであるため、既設の乗客コンベア制御装置40に容易に取り付けることができる。そのため、既設の乗客コンベア50に簡単に乗り込み抑制を警告する警告装置を搭載することができる。
【0037】
また、電流センサーを複数設けているため、正確な電流値を検出できる。
【0038】
本発明は上記各実施例に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0039】
例えば、電流センサーは1個でもよく、また、各相に1個づつ設けてもよい。
【0040】
また、検出器である電流センサーは、外付けが可能であれば、クランプ式でなくてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 誘導電動機
2 三相電源
5 電流センサー
6 電流センサー
7 警告制御部
8 表示部
9 表示部
10 音声合成装置
12 監視盤
30 警告装置
40 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアを駆動する電動機と、
前記電動機の電源線に流れる通電電流を検出する外付けの検出器と、
前記検出器が検出した前記通電電流が、過積載状態を示す所定値以上のときに、前記乗客コンベアへの乗り込み抑制を促す過積載信号を出力する警告制御部と、
を有することを特徴とする乗客コンベアの警告装置。
【請求項2】
検出した前記通電電流から前記所定値に対する負荷割合を求める演算手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの警告装置。
【請求項3】
前記所定値が、前記電動機の定格電流値である、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの警告装置。
【請求項4】
前記検出器が、前記電動機の電源線に複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの警告装置。
【請求項5】
前記警告制御部の電源が、前記乗客コンベアの制御装置の電源と異なる、
ことを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベアの警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−63399(P2011−63399A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216537(P2009−216537)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】