説明

乗客コンベアの走行状態診断装置及び診断方法

【課題】簡素な装置構成及び優れた運搬性を実現するとともに、ハンドレールと踏段の走行に関わる複数の点検項目を同時に診断可能としてメンテナンス効率の向上を図る。
【解決手段】踏段6上に設置され、踏段面の走行時の加速度を検出して加速度信号を出力する踏段加速度測定装置19と、ハンドレール8の任意の場所に設置され、当該ハンドレール8の駆動状態における加速度を検出して加速度信号を出力するハンドレール加速度測定装置17と、前記各測定装置17,19で測定された加速度信号に基づいて踏段レール15、案内ガイド14及びハンドレール8の少なくとも2つの走行状態を並行して診断する診断処理装置22を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの走行状態診断装置及び診断方法に係り、特に、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアの走行状態を診断する診断装置及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアの走行状態を診断する装置としては、例えば特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1には、無端状に連結された多数のステップと手摺ベルトとを互いに同期させながら循環移動させる乗客コンベアの異常診断システムであって、前記手摺ベルトにおける任意の位置に設置された情報記憶媒体と、前記手摺ベルトの循環移動経路近傍に設置され、前記手摺ベルトの循環移動により前記情報記憶媒体が接近したときに前記情報記憶媒体から非接触でデータを読み取る読取装置と、前記読取装置による前記情報記憶媒体からのデータ読み取り動作を監視して、当該データ読み取り動作の監視結果に基づいて乗客コンベアの異常を診断する診断装置と、を備えることを特徴とする異常診断システムが記載されている。
【0003】
また、他の従来技術として、例えば特許文献2に記載された技術も公知である。特許文献2には、エスカレータの一方の手摺に設置され、運転開始させたときの運転方向が停止状態直前の運転方向と逆方向である場合の加速度を検出して加速度信号を出力する加速度検出手段と、該加速度検出手段から出力された加速度信号に基づき上記手摺が動作開始するまでの起動遅延時間を算出する起動遅延時間検出手段と、該起動遅延時間検出手段により算出された起動遅延時間と予め設定した閾値を比較してチェーンの弛み又は伸びを判定する判定手段とを備えたチェーン異常診断装置が記載されている。
【特許文献1】特開2009−173364公報(段落0016、図1,図2)
【特許文献2】特開2008−037602公報(段落0010〜0011、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載された従来技術は、ハンドレールの滑り、伸びに起因するハンドレールの循環速度のみを診断するものであり、ハンドレールの案内ガイドの異常、ハンドレールの蛇行を同時に診断することはできない。また、乗客を安全に搬送するには、踏段とハンドレールが蛇行やガタつくことなく同期して走行することが重要である。このようにハンドレールの走行速度のみを診断対象とした場合には、踏段とハンドレール速度の同期、踏段の走行ガタ、ハンドレールの蛇行及びハンドレールの走行を案内する案内ガイドなどについては、別途診断する必要がある。すなわち、メンテナンスを行う際には案内ガイドを点検するためハンドレールを外す、あるいは踏段の点検には別の診断装置を使うなどの必要があり、当然、メンテナンスにかかる時間も多くなる。
【0005】
特許文献2に記載された従来技術は、ハンドレールの駆動に掛かるチェーンの伸びを診断するためのものであり、特許文献1記載の従来技術同様に、複数項目の診断をするには、それぞれの診断装置と診断作業が必要となり、同じくメンテナンスに時間を要する。
【0006】
これらのことから、従来技術の問題点として、
1)エスカレータの走行状態を短時間で診断する際は、点検作業者が多くの診断装置を運搬する必要がある。
2)機器毎にそれぞれの診断作業を行うのでメンテナンスにかける時間が長くなる。
などが挙げられる。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡素な装置構成及び優れた運搬性を実現するとともに、ハンドレールと踏段の走行に関わる複数の点検項目を同時に診断できるようにしてメンテナンス効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第1の手段は、駆動モータを含む駆動装置と、踏段チェーンに係止され、前記駆動装置の動力に同期して踏段レール上を走行する複数の踏段と、前記踏段の側方に立設される欄干に設けられた案内ガイドと、案内ガイドに案内されて走行するハンドレールと、を有する乗客コンベアの走行状態を診断する乗客コンベアの走行状態診断装置であって、前記踏段上に設置され、踏段面の走行時の加速度を検出して加速度信号を出力する踏段加速度検出手段と、前記ハンドレールの任意の場所に設置され、当該ハンドレールの駆動状態における加速度を検出して加速度信号を出力するハンドレール加速度検出手段と、前記各検出手段で検出された加速度信号に基づいて前記踏段レール、前記案内ガイド及び前記ハンドレールの少なくとも2つの走行状態を並行して診断する診断手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
第2の手段は、駆動モータを含む駆動装置と、踏段チェーンに係止され、前記駆動装置の動力に同期して踏段レール上を走行する複数の踏段と、前記踏段の側方に立設される欄干に設けられた案内ガイドと、案内ガイドに案内されて走行するハンドレールと、を有する乗客コンベアの走行状態を診断する乗客コンベアの走行状態診断方法であって、前記踏段上に設置された踏段加速度検出手段により踏段面の走行時の加速度を検出して加速度信号を出力する工程と、前記ハンドレールの任意の場所に設置されたハンドレール加速度検出手段により当該ハンドレールの駆動状態における加速度を検出して加速度信号を出力する工程と、前記各工程で出力された加速度信号に基づいて前記踏段レール、前記案内ガイド及び前記ハンドレールの少なくとも2つの走行状態を並行して診断する工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な装置構成及び優れた運搬性を実現するとともに、ハンドレールと踏段の走行に関わる複数の点検項目を同時に診断することができる。その結果、メンテナンスの効率向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る乗客コンベアとしてのエスカレータの一般的構成の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る走行装置の診断装置を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態における診断手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における診断装置でのエンベロープ波形の比較による診断手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る乗客コンベアとしてのエスカレータの一般的構成の概略を示す図である。
同図において、エスカレータEは、駆動モータ1、ドライビングチェーン5、踏段6、踏段チェーン7、ハンドレール8、ハンドレール駆動装置9、ハンドレール駆動チェーン10、搬送レール駆動ローラ11、従動ローラ12などから基本的に構成されている。
【0014】
駆動モータ1の駆動軸には駆動プーリが設けられ、減速機3に駆動ベルト2を介して駆動力を伝達し、踏段1及びハンドレール8を駆動する。駆動モータ1は、供給電力をインバータ等で制御する制御盤4によって回転速度、トルクなどが制御される。減速機3は、ドライビングチェーン5によって踏段6が軸支されている踏段チェーン7と連結され、さらに、ハンドレール駆動チェーン10と連結され、ハンドレール8を駆動するハンドレール駆動装置9へ動力を伝達する。これにより、減速機3の回転に同期して踏段6とハンドレール8が回転する。
【0015】
ハンドレール8は、減速機3に同期するが、ハンドレール駆動装置9は駆動ローラ11と従動ローラ12とによってハンドレールを所定圧で挟み込んで摩擦力を付与する摩擦駆動のため、減速機3とチェーン駆動で同期する踏段6に対して少し遅れる場合もある。ハンドレール8は、踏段6の側方に立設される欄干13に設けられた樹脂などで成型された案内ガイド14上を摺動走行して循環する。案内ガイド14が欄干13にビス止めされたものである場合、案内ガイド14がハンドレール8との摺動摩擦により摩耗すると、案内ガイド14の固定ビスがハンドレール8に引っ掛かり、ハンドレール8を損傷させる場合がある。そこで、案内ガイド13は、メンテナンス時に摩耗の進行が認められると、交換を行うなどして対処している。
【0016】
踏段6は、左右にローラを有し、踏段チェーン7に連結され、減速機3の回転に同期して踏段レール15上を循環走行する。踏段レール15上に埃などが堆積した場合、エスカレータEの走行中に踏段6がガタつくことがある。そこで、メンテナンスでは、保守員が官能で乗り心地を確認するなどしている。
【0017】
ハンドレール8が欄干内部に入る場所においては、子供の手の巻き込まれ、あるいは異物が駆動部へ進入することを防止するために、エスカレータ停止装置6が一般に設けられている。エスカレータ停止装置6は、ハンドレールと欄干部の隙間が一定以上小さくなったとき接点するマイクロスイッチを備え、マイクロスイッチが動作すると制御盤からの電力供給を停止し、エスカレータを停止させる。
【0018】
図2は、図1に示されるエスカレータに備えられる本発明の実施形態に係る走行装置の診断装置を示す機能ブロック図である。
【0019】
図2に示すように、本実施形態に係る走行状態の診断装置100は、ハンドレール加速度計測装置17、ハンドレール加速度無線通信装置18、踏段加速度計測装置19、踏段加速度無線通信装置20、加速度信号受信装置21及び診断処理装置22から構成されている。また、本実施形態では、図2に示すようにハンドレール8に設置されたハンドレール加速度計測装置17の前後方向の近傍にくさび形状のストッパ23が設置されている。
【0020】
ハンドレール加速度計測装置17はハンドレール8の任意の場所に3軸の加速度を検出して加速度信号を出力し、ハンドレール加速度無線通信装置18は前記ハンドレール加速度計測装置17から出力される加速度信号を無線で加速度信号受信装置21に送信する。踏段加速度計測装置19は、任意の場所に設置されたハンドレール加速度計測装置17の直下の踏段6上に設置され、踏段面の走行に対し水平、直角及び垂直方向となる3軸の加速度を検出して加速度信号を出力し、踏段加速度無線通信装置20は、前記踏段加速度計測装置19に設置され、踏段加速度計測装置19から出力される加速度信号を無線で加速度信号受信装置21に送信する。
【0021】
加速度信号受信装置21はハンドレール加速度無線通信装置18及び加速度無線通信装置20から送信される加速度信号を受信し、受診した加速度信号を診断処理装置22に出力する。診断処理装置22は例えば汎用コンピュータから構成され、加速度信号受信装置21で受け取った加速度信号データを演算して診断判定を行う。汎用コンピュータは、CPU、ROM、RAMを少なくとも備え、ROMに記憶されたプログラムコード、あるいはダウンロードされ、不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムコードを読み出し、RAMに展開してプログラムコードで定義されたプログラムを実行することにより、後述の制御が行われる。
【0022】
図3は実施形態における診断手順を示すフローチャートである。この診断手順は診断処理装置22を構成する汎用コンピュータ、さらには当該汎用コンピュータのCPUによって実行される。
【0023】
図3において、最初に、点検者がハンドレール8の任意の場所にハンドレール加速度計測装置17及びハンドレール加速度無線通信装置18を、またハンドレール加速度計測装置17を取り付けた直下の踏段6上に踏段加速度計測装置19と、踏段加速度無線通信装置20を取り付ける(ステップS1)。さらに、ハンドレール加速度計測装置17の前後にくさび形状のストッパ23を取り付け(ステップS2)、加速度信号受信装置21をエスカレータEのターミナルなどに設置し(ステップS3)、加速度信号計測における診断装置100をセットする。
【0024】
次いで、診断準備動作(安全装置の動作試験)を行う。診断準備動作では、点検者は、ストッパ23がエスカレータEの上部又は下部の欄干13の入口に設置されたエスカレータ停止装置16の場所に到達するまでエスカレータEを動かし続ける(ステップS4)。そして、ストッパ23がハンドレール8とハンドレール欄干入口の隙間に当接して当該隙間が狭くなったことが検出され、エスカレータ停止装置16が動作してエスカレータEが停止したか否か確認する(ステップS5)。ステップS5の判定でエスカレータEの停止が確認されたということは、本診断運転においてエスカレータEが損壊しないことを事前に確認できたということを意味する。
【0025】
ステップS5での確認がとれると、診断計測動作が開始される。診断計測動作では、点検者は、ハンドレール加速度信号及び踏段加速度信号を加速度信号受信装置21によって受信し、計測を開始する(ステップS6)。次いで、点検者は、ステップS4でエスカレータを起動した向きとは反対側にエスカレータEを起動し、さらにステップS4と同様に、ストッパ23がエスカレータEの上部又は下部の欄干入口に設置されたエスカレータ停止装置16の場所に到達するまでエスカレータEを動かし続ける(ステップS8)。次いで、ストッパ23によって、前述の同様にしてハンドレールとハンドレール欄干入口の隙間が狭くなったことを検出し、エスカレータ停止装置16が動作してエスカレータEが停止したことを確認する(ステップS9)。
【0026】
点検者は、エスカレータEが停止したことを確認し、さらに、ストッパ23がエスカレータ停止装置16から、上部又は下部の反対側のエスカレータ停止装置16まで移動した際の加速振動を計測できたことを確認してハンドレール8ならびに踏段6の加速度信号の計測を終了する(ステップS10)。
【0027】
加速度信号の計測が終了すると、ステップS11,S12,S13の処理を同時に並行して開始する。すなわち、加速度信号の計測が終了すると、ステップS11の処理を開始し、ステップS11−1ないしS11−6でハンドレール8の先行量診断処理(1)を実行する。この処理は、踏段6に対するハンドレール8の先行量異常を判定する処理で、ステップS6ないしS10において計測したハンドレール8及び踏段6それぞれの加速度検出信号について、まず、走行面に対し水平方向の加速度信号を2回積分してハンドレール8及び踏段6の移動距離を算出する(ステップS11−1,2)。次に、ハンドレール移動距離と踏段移動距離との差を
先行量=ハンドレール移動距離−踏段移動距離
から求め、踏段6に対するハンドレール8の移動先行量を算出する(ステップS11−3)。
【0028】
次いで、算出した先行量に基づいて正常か異常かを判定するが、その判定は、計測した前記先行量が一定値以内あるか否かによって判定する(ステップS11−4)。判定式は、A,Bを予め設定した閾値として、
A≦先行量≦B
のようになる。この判定式の判定結果が、先行量が閾値A,B以内にある場合、踏段6に対するハンドレール8の先行量は正常(ステップS11−5)、外れている場合、異常(ステップS11−6)と判定する。
【0029】
また、加速度信号の計測が終了すると、ステップS12でハンドレール案内ガイド14の先行量診断処理(2)を実行する。この処理は、踏段6に対するハンドレール案内ガイド14の先行量異常を判定する処理である。この処理では、ステップS6ないしS10において計測したハンドレール8表面の鉛直方向の加速度信号をエンベロープ処理し(ステップS12−1)、図4に示すように計測され、ステップS12−1で処理されたエンベロープ波形(図4(b))と予め記憶した正常時のエンベロープ波形(図4(a))とを比較し(ステップS12−2)、図4(c)に示したように測定したエンベロープ波形の振幅と正常時のエンベロープ波形の振幅との差が一定値C以上の場合(ステップS12−3)、案内ガイド14異常と判定する(12−5)。もちろん一定値C未満であれば、正常と判定する(ステップS12−4)。
【0030】
さらに、加速度信号の計測が終了すると、ステップS13で踏段レール15の先行量診断処理(3)を実行する。この処理は、踏段に対する踏段レール15の先行量以上を判定する処理である。この処理では、ステップS6ないしS10において計測した踏段6の鉛直方向の加速度信号をエンベロープ処理し(ステップS13−1)、図4に示すように計測され、ステップS13−1で処理されたエンベロープ波形(図4(b))と予め記憶した正常時のエンベロープ波形(図4(a))とを比較し(ステップS13−2)、図4(c)に示したように測定したエンベロープ波形の振幅と正常時のエンベロープ波形の振幅との差が一定値D以上の場合(ステップS13−3)、案内ガイド14異常と判定する(13−5)。もちろん一定値D未満であれば、正常と判定する(ステップS13−4)。
【0031】
このように構成した実施形態によれば、簡易的な診断装置100を用いるのみで複数の診断作業を行うことが可能となり、また複数の診断装置100を持ち運ぶ必要がなく、運搬性も向上する。さらに、1回の計測でステップS11,12,13に示すように複数の診断を並行して行うことができるので、短時間での診断作業も可能となり、高効率で、保守員の判定能力に依存することのないエスカレータの走行状態の診断を実現することができる。
【0032】
また、点検者の判定能力に依存することなく機械的な診断判定を実現することできる。
【0033】
なお、特許請求の範囲における駆動モータは実施形態では符号1に、駆動装置は駆動モータ1、駆動ベルト2、減速機3及び制御盤4に、踏段チェーンは符号7に、踏段レールは符号15に、踏段は符号6に、欄干は符号13に、案内ガイドは符号14に、走行状態診断装置は診断装置100に、踏段加速度検出手段は踏段加速度計測装置17に、ハンドレール加速度検出手段はハンドレール加速度計測装置19に、診断手段は診断処理装置22に、ストッパ手段はストッパ23に、停止手段はエスカレータ停止装置16に、乗客コンベアはエスカレータEに、それぞれ対応する。
【0034】
さらに、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 駆動モータ
2 駆動ベルト
3 減速機
4 制御盤
6 踏段
7 踏段チェーン
8 ハンドレール
9 ハンドレール駆動装置
13 欄干
14 案内ガイド
15 踏段レール
16 エスカレータ停止装置
17 ハンドレール加速度計測装置
19 踏段加速度計測装置
22 診断処理装置
23 ストッパ
100 診断装置
E エスカレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータを含む駆動装置と、
踏段チェーンに係止され、前記駆動装置の動力に同期して踏段レール上を走行する複数の踏段と、
前記踏段の側方に立設される欄干に設けられた案内ガイドと、
案内ガイドに案内されて走行するハンドレールと、
を有する乗客コンベアの走行状態を診断する乗客コンベアの走行状態診断装置であって、
前記踏段上に設置され、踏段面の走行時の加速度を検出して加速度信号を出力する踏段加速度検出手段と、
前記ハンドレールの任意の場所に設置され、当該ハンドレールの駆動状態における加速度を検出して加速度信号を出力するハンドレール加速度検出手段と、
前記各検出手段で検出された加速度信号に基づいて前記踏段レール、前記案内ガイド及び前記ハンドレールの少なくとも2つの走行状態を並行して診断する診断手段と、
を備えていることを特徴とする乗客コンベアの走行状態診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の乗客コンベアの走行状態診断装置であって、
前記診断装置は、
前記踏段加速度検出手段及び前記ハンドレール加速度検出手段から出力されるそれぞれの加速度検出信号について、走行面に対し水平方向の加速度信号を2回積分して前記踏段及び前記ハンドレールの移動距離を算出し、
算出された移動距離を比較し、その比較結果に基づいて踏段に対するハンドレールの先行量異常を判定すること
を特徴とする乗客コンベアの走行状態診断装置
【請求項3】
請求項1記載の乗客コンベアの走行状態診断装置であって、
前記診断装置は、
前記ハンドレールの加速度信号をエンベロープ処理し、
エンベロープ処理されたエンベロープ波形と予め記憶した正常時のエンベロープ波形とを比較し、その比較結果に基づいて案内ガイドの異常を判定すること
を特徴とする乗客コンベアの走行状態診断装置。
【請求項4】
請求項1記載の乗客コンベアの走行状態診断装置であって、
前記診断装置は、
前記踏段の加速度信号をエンベロープ処理し、
エンベロープ処理されたエンベロープ波形と予め記憶した正常時のエンベロープ波形とを比較し、その比較結果に基づいて踏段レール異常を判定すること
を特徴とする乗客コンベアの走行状態診断装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の乗客コンベアの走行状態診断装置であって、
前記踏段加速度検出手段及び前記ハンドレール加速度検出手段は、走行方向に対して水平、直角及び垂直方向となる3軸の加速度を検出すること
を特徴とする乗客コンベアの走行状態診断装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の乗客コンベアの走行状態診断装置であって、
前記踏段加速度検出手段及び前記ハンドレール加速度検出手段によって検出された加速度信号を前記診断装置側に送信する送信手段を備えていること
を特徴とする乗客コンベアの走行状態診断装置。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の乗客コンベアの走行状態診断装置であって、
前記ハンドレール加速度検出手段の走行方向の前後近傍にくさび形状のストッパ手段と、
前記ハンドレールの回転によりこのストッパ手段が前記ハンドレールとハンドレール欄干入口との間に位置し、前記ハンドレールと前記ハンドレール欄干入口の隙間が一定以上小さくなった場合に、乗客コンベアの動力を遮断し、乗客コンベアを停止させる停止手段と、
を備えていることを特徴とする乗客コンベアの走行状態診断装置。
【請求項8】
駆動モータを含む駆動装置と、
踏段チェーンに係止され、前記駆動装置の動力に同期して踏段レール上を走行する複数の踏段と、
前記踏段の側方に立設される欄干に設けられた案内ガイドと、
案内ガイドに案内されて走行するハンドレールと、
を有する乗客コンベアの走行状態を診断する乗客コンベアの走行状態診断方法であって、
前記踏段上に設置された踏段加速度検出手段により踏段面の走行時の加速度を検出して加速度信号を出力する工程と、
前記ハンドレールの任意の場所に設置されたハンドレール加速度検出手段により当該ハンドレールの駆動状態における加速度を検出して加速度信号を出力する工程と、
前記各工程で出力された加速度信号に基づいて前記踏段レール、前記案内ガイド及び前記ハンドレールの少なくとも2つの走行状態を並行して診断する工程と、
を備えていることを特徴とする乗客コンベアの走行状態診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49558(P2013−49558A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189370(P2011−189370)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】